説明

ガス絶縁開閉器

【課題】地球温暖化への影響が小さく、かつ優れた性能と品質を有し、かつ安全性の高いガス絶縁開閉器を提供する。
【解決手段】消弧性ガスで充たされた密閉容器1内に電気接点を配置し、通電時には電気接点を接触状態に保つことで通電を行ない、電流遮断時には電気接点を解離させて消弧性ガス中にアーク放電を発生させ、そのアーク8を消弧することで電流を遮断せしめるよう構成されたガス絶縁開閉器である。消弧性ガスの主成分はCHガスである。または、消弧性ガスが、NガスとCHガスを主成分とする混合ガスであって、CHガスを30%以上含む混合ガスである。または、消弧性ガスが、COガスとCHガスを主成分とする混合ガスであって、CHガスを5%以上含む混合ガスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はガス絶縁開閉器に関し、特に、温室効果ガスの使用を抑制したガス絶縁開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
電流遮断機能を有する開閉器には、その使用目的、必要とされる機能に応じて、負荷開閉器、断路器、遮断器など様々なものが存在する。その多くはガス中に機械的に開閉可能な電気接点を配置し、通電時には両者を接触状態に保つことで通電を行ない、電流遮断時には電気接点を解離させて前記ガス中にアーク放電を発生させ、そのアークを消弧することで電流を遮断する方式のものである。
【0003】
近年、より高い電流遮断性能を得るために、ピストンによる機械的な圧縮だけでなく、アークの熱エネルギーをパッファ室内に積極的にとりこむことで、より高い吹付け圧力を得る方式が提案されている。たとえば、遮断動作の初期に、可動側熱ガス流を中空ロッドに設けた穴を通じてパッファ室内へ取り込む方式が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
あるいは、パッファ室を軸方向に2分割し、アークに近い方のパッファ室の容積を限定することで、特に大電流遮断時にアークへの高い吹付け圧力を獲得し、なおかつパッファ室の分割部に逆止弁を設けることでピストンに直接高い圧力が作用するのを避け、可動接触部を駆動する力を低減する方式などが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
近年普及している開閉器においては、前記消弧性ガスとして、SFガス、あるいは空気が使用されることが多い。SFガスは、アークを消滅させる性能(消弧性能)、および電気絶縁性能に優れており、特に高電圧用の開閉器においては広く使用されている。また、空気はコストが安いこと、安全で環境にも優しいことから、特に小形の開閉器において使用されることが多い。
【0006】
ところで、SFガスは特に高電圧用の開閉器において非常に適したガスといえるが、高い地球温暖化作用を有することが知られており、近年その使用量の削減が望まれている。地球温暖化作用の大きさは一般に地球温暖化係数、すなわちCOガスを1とした場合の相対値により表わされ、SFガスの地球温暖化係数は23,900に及ぶことが知られている。また、空気は安全性や環境保全の面では優れているが、その消弧性能および電気絶縁性能はSFガスよりも大幅に劣るため、高電圧用の開閉器に広く適用するのは困難であり、低から中電圧への適用に限られると考えられている。
【0007】
上記の背景で、開閉器における消弧性ガスとしてCOガスを適用することが提案されている(非特許文献1参照)。COガスは地球温暖化作用がSFガスに比べて非常に小さいため、COガスをSFガスの代わりに開閉器に適用することで、地球温暖化への影響を大幅に抑制することが可能である。また、COガスの消弧性能および電気絶縁性能はSFガスに比べると劣るものの、空気に比べると消弧性能ははるかに優れ、また絶縁性能も同等かそれ以上であることが知られている。したがって、COガスをSFガスあるいは空気の代わりに適用することで、概ね良好な性能を有し、かつ地球温暖化への影響を抑制した環境に優しい開閉器を提供することが可能である。
【0008】
また、COガス以外にも、上記と同じ理由により、開閉器の消弧性ガスとしてCFガスなどのパーフルオロカーボン、CHガスなどのハイドロフルオロカーボンを適用すること(非特許文献2)、CFIガスを適用すること(特許文献3)が提案されている。これらのガスもSFガスに比べると地球温暖化への影響が小さく、比較的高い消弧性能、および絶縁性能を有するため、開閉器の環境負荷低減に有効であるとされている。
【0009】
さらに、上記のようなC元素を含むガスを開閉器に適用する場合、Oガス、Hガスを適量混合させることにより、電流遮断時に発生する遊離カーボンの生成量を抑制し、遊離カーボン生成による電気的な品質低下を防止する方策が提案されている(特許文献4)。
【特許文献1】特公平7−109744号公報
【特許文献2】特公平7−97466号公報
【特許文献3】特開2000−164040号公報
【特許文献4】特開2007−258137号公報
【非特許文献1】内井、河野、中本、溝口、「消弧媒体としてのCO2ガスの基礎特性と実規模モデル遮断器による熱的遮断性能の検証」、電気学会論文B、124巻、3号、pp.469〜475、2004年
【非特許文献2】「SF6の地球環境負荷とSF6混合・代替ガス絶縁」、電気学会技術報告841号、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のように、COガス、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、CFIガスを開閉器の電気絶縁媒体、消弧媒体として適用し、従来のSFガスを利用した開閉器に比べて地球温暖化への影響を低減し、なおかつ、概ね良好な性能を有する開閉器を提供することが提案されている。
【0011】
しかしながら、その場合に以下の4点の重大な課題があった。
【0012】
まず、一つ目の課題として、上記のガスはいずれもC元素を含むため、これらのガスを開閉器に適用した場合、電流遮断時に発生する高温のアークによりガスが解離、再結合する過程において、遊離したカーボンが発生する課題があった。
【0013】
電流遮断にともなって発生したカーボンが、たとえば絶縁スペーサなどの固体絶縁物の表面に付着した場合、同部の電気絶縁性を著しく劣化させる恐れがあり、開閉器の品質が損なわれる懸念があった。
【0014】
さらに、上記のガスをパッファ形ガス遮断器に適用し、かつ、遮断性能を向上させるために、パッファ室の圧力上昇手段としてアークの熱エネルギーを積極的に利用するよう構成した場合、従来のピストンによる機械的圧縮を主体としたガス遮断器に比べ、ガスの温度は必然的に高くなる。ガスの温度が高くなると、具体的には約3000K以上にまでガスの温度が高くなると、ガス分子の解離が顕著に進行し、カーボンが生成されやすくなる。したがって、当該ガスをパッファ形ガス遮断器に適用し、なおかつアークの熱エネルギーを積極的に利用して高いパッファ室圧力を得ようとすると、それだけカーボンが生成されやすくなり、品質が損なわれる懸念があった。
【0015】
これを回避するためには、カーボンが発生しないようにアークの熱エネルギーの利用を制限する必要があるため、結果的に小さい遮断電流の適用に限るか、もしくは大電流遮断に必要な吹付け圧力上昇を機械的な圧縮主体で行なうこととなり、大形で高コストな開閉器となる傾向にあった。
【0016】
二つ目の課題として、上記に挙げたガスのうちパーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、CFIガスは、地球温暖化係数はSFよりは低いものの、SFガス同様に天然には存在しない人工ガスであるため、これらが開閉器に適用され大量に生産されるようになると、それだけ地球上に新たに温暖化ガスを生み出すこととなり、必ずしも環境に優しいとはいえなかった。
【0017】
三つ目の課題として、CFIガス、およびパーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンに属する大部分のガスは、分子構造が複雑であるため、一旦アークで分子が解離されると、再結合過程において別の分子になる可能性が高かった。遮断する電流値やガスの条件にもよるが、たとえば、CFIガスは一旦アークで解離されると、IとC等に再結合されたり、Cガスは同様にさらに分子構造が簡単なCFなどに変化してゆく可能性があった。このため、これらのガスを開閉器に適用した場合、電流を遮断するたびにガスの組成が変化してゆき、当初期待していた性能が徐々に得られなくなる可能性があった。
【0018】
四つ目の課題は、COとO、もしくはCOとHの混合ガスに係わるものである。これらのガスについては、全て自然由来のガスであり、真に環境に優しいといえる。また、既に特許文献4にて提案されているように、OおよびHを適量混合させることにより、COを使用しながらも一つ目の課題として挙げた電流遮断後の遊離カーボンの生成をある程度抑制することができる。
【0019】
しかしながら、Oガスは有機材料や金属の劣化を促進する代表的な物質であるため、特に通電により高温環境に曝されている金属導体部分や、ゴムパッキン、絶縁物、潤滑グリスなどの有機物の劣化を著しく促進させ、結果として機器寿命が短縮されたり、機器の保守点検回数が増えるなどの課題があった。特に絶縁ノズルは、数万度にも達するアークに曝されるため、支燃性を有するOガスの濃度が高くなるにつれて損傷が激しくなり、電流値やガス圧力などが高い場合には燃焼してしまう可能性もあった。
【0020】
また、COとHの混合ガスは、安全性、電気絶縁性、気密性の点で課題があった。Hガスは可燃性ガスの中でも燃焼速度が極めて速いガスであり、空気中での爆発範囲は4〜75%と極めて広く、万が一にでも機器運用時やガスハンドリング時に漏洩した場合、爆発を引き起こす危険性が高かった。また、Hガスは電流遮断性能には優れるものの、絶縁性能はきわめて低く、COガスの1割程度以下の性能である。このため、Hを混合させると絶縁性能を十分に確保させるために絶縁ギャップ長を増やす必要があり、このため機器の大形化を招いていた。またHガスは分子が小さいため、気密性を確保することが難しく、機密性を確保させるためにガスパッキンを2重化するなどの工夫が必要であった。
【0021】
本発明は、上記の課題を全て解消し、地球温暖化への影響が小さく、かつ優れた性能と品質を有し、かつ安全性の高いガス絶縁開閉器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の係るガス絶縁開閉器の一つの態様は、消弧性ガスで充たされた密閉容器内に少なくとも1対の電気接点を配置し、通電時には前記電気接点を接触状態に保つことで通電を行ない、電流遮断時には前記電気接点を解離させて前記消弧性ガス中にアーク放電を発生させ、そのアークを消弧することで電流を遮断せしめるよう構成されたガス絶縁開閉器において、前記消弧性ガスの主成分がCHガスであることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の係るガス絶縁開閉器のたの一つの態様は、消弧性ガスで充たされた密閉容器内に少なくとも1対の電気接点を配置し、通電時には前記電気接点を接触状態に保つことで通電を行ない、電流遮断時には前記電気接点を解離させて前記消弧性ガス中にアーク放電を発生させ、そのアークを消弧することで電流を遮断せしめるよう構成されたガス絶縁開閉器において、前記消弧性ガスが、NガスとCHガスを主成分とする混合ガスであって、CHガスを30%以上含むことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の係るガス絶縁開閉器のたの一つの態様は、消弧性ガスで充たされた密閉容器内に少なくとも1対の電気接点を配置し、通電時には前記電気接点を接触状態に保つことで通電を行ない、電流遮断時には前記電気接点を解離させて前記消弧性ガス中にアーク放電を発生させ、そのアークを消弧することで電流を遮断せしめるよう構成されたガス絶縁開閉器において、前記消弧性ガスが、COガスとCHガスを主成分とする混合ガスであって、CHガスを5%以上含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、地球温暖化への影響が小さく、かつ優れた性能と品質を有し、かつ安全性の高いガス絶縁開閉器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、図面を参照しながら本発明に係るガス絶縁開閉器の実施形態を説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0027】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係るガス絶縁開閉器の第1の実施形態の要部縦断面図であって、遮断動作途中の状態を示している。このガス絶縁開閉器は、たとえば72kV以上の高電圧送電系統の保護用開閉器であって、パッファ形ガス遮断器である。図1に示す各部品は基本的に、図1の左右方向に延びる中心軸(図示せず)の周りに軸対称な同軸円筒形状である。
【0028】
図1に示すように、接地された金属あるいは碍子等からなる密閉容器1内には、消弧性ガス31aとしてCHガスが充填されている。ここで使用するCHガスは、好ましくは、大気中より回収したもの、もしくは有機性廃棄物処理過程などで発生し成り行きでは大気放出されるものを回収、精製したものを利用する。
【0029】
密閉容器1内には固定接触部21および可動接触部22が対向して配置されており、固定接触部21および可動接触部22にはそれぞれ固定アーク接触子7aおよび可動アーク接触子7bが設けられている。これら固定アーク接触子7aおよび可動アーク接触子7bは通常運転時では接触導通状態にあり、遮断動作時は軸方向相対移動により開離すると共に固定アーク接触子7aと可動アーク接触子7bの間の空間にアーク8を発生させるようになっている。固定アーク接触子7aおよび可動アーク接触子7bは、アークに対する溶損が少なく、かつ機械的強度も高い材料、たとえば銅タングステン合金を用いるのが好ましい。
【0030】
可動接触部22側にはアーク8に対し消弧性ガス31aであるCHガスをガス流にして吹き付けるガス流発生手段が設置されている。ガス流発生手段としては、ここではピストン3、シリンダ4、パッファ室5、絶縁ノズル6が設けられている。また、固定接触部21側には固定側熱ガス流11aが通過可能な金属製の排気筒9が取付けられている。可動接触部22側には可動側熱ガス流11bが通過可能な中空ロッド12が可動アーク接触子7bに連なって設けられている。
【0031】
接触子部など運転時に高電圧が印加される部分は、固体絶縁物23により絶縁性を確保しつつ機械的に支持される。固体絶縁物23は、たとえばシリカなどの充填物を配合したエポキシ系材料が使用される。なお、消弧性ガスとしてSFガスを使用する従来の技術では、アーク遮断過程によりHFなどの分解ガスが発生し、シリカがHFガスに侵されて特性が劣化する恐れがあるため、通常アルミナ充填材料を使用することが多い。これに対して本実施形態では、シリカなどの充填物を配合したエポキシ系材料を用いることができる。
【0032】
以上の構成を有するガス遮断器の遮断過程において、可動接触部22が図の左方向に動作すると、固定されているピストン3がシリンダ4の内部空間であるパッファ室5を圧縮してパッファ室5内の圧力を上昇させる。そして、パッファ室5内に存在する消弧性ガス31aが高圧力のガス流となってノズル6に導かれ、固定アーク接触子7aと可動アーク接触子7bの間に発生したアーク8に対して強力に吹き付けられる。これにより、固定アーク接触子7aと可動アーク接触子7bの間に発生した導電性のアーク8は消滅し電流は遮断される。一般的に、パッファ室5内の圧力が高いほど、消弧性ガス31aが強力にアーク8へと吹き付けられるため、より高い電流遮断性能が得られることが知られている。
【0033】
なお、高温のアーク8に吹き付けられた消弧性ガス31aは高温状態となり、固定側熱ガス流11aおよび可動側熱ガス流11bとして両アーク接触子間の空間より遠ざかるように流れ、最終的には密閉容器1内へ放散される。また、シリンダ4とピストン3の隙間などの摺動部分には、摩擦を低減するために図示しないグリスが塗布されることが多い。
【0034】
パッファ室5の圧力上昇は、ピストン3による機械的圧縮だけでなく、アーク8からの熱エネルギーを積極的にパッファ室5内に取り込むことによりもたらされるように構成する。この実施形態では、図1に示すように、ガイド32により、中空ロッド12を流れる可動側熱ガス流11bが連通穴33を通ってパッファ室5内に取り込まれ、同部の圧力上昇に寄与するよう構成されている。
【0035】
ここで、消弧性ガスとして従来のSFガスに代えてCHガスを用いることの利点について説明する。CHガスの地球温暖化係数は21といわれており、従来開閉器の絶縁・消弧媒体として広く使用されているSFガスが23,900であることに比べると、地球環境に及ぼす影響は極めて小さい。また、SFガスや、その代替媒体として提案されているパーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、CFIガスなどとは異なり、天然に存在する自然由来のガスなので、人工的な環境被害を生み出す可能性はほとんどない。さらに、ここで使用するCHガスは、そもそも大気中より回収、もしくは本来は大気中に放出されていたものを回収して使用したものなので、本目的としてCHガスを使用しても、地球上に新たにCHガスを生み出しているわけではない。したがって、開閉器の絶縁・消弧媒体としてCHガスを使用することで環境におよぼす影響を極めて小さくすることができる。
【0036】
図2は、CHガス、COガス、CO+CH混合ガス、CO+O混合ガス中でアークを発生した場合における遊離カーボンの生成量解析値を示すグラフである。図2に示すように、電流遮断後に発生する遊離カーボン量は従来SFガスの代替媒体として提案されているCOガス(図2のOもしくはCH含有率が0%の値)に比べて、CHガスを使用した場合(同じくCH含有率が100%の値)の方がはるかに少ない。これはアーク部で一旦解離し再結合する過程において、CとOとの反応性よりも、CとHとの反応性の方が高いからだと考えられる。したがって、CHガスを使用することで、たとえば絶縁スペーサなどの固体絶縁物の表面にカーボンが付着するなどして電気的特性が劣化する危険性は激減される。
【0037】
また、これにより、カーボンが発生しないようにパッファ室圧力上昇に対するアーク熱の利用度を制限する必要が無くなる、もしくは緩和されるため、小形でかつ大電流が遮断可能な開閉器を提供することができる。
【0038】
ガス自身の性能としてもCHガスはCOよりも優れている。図3は、CHガス、COガス、Nガス、CO+CH混合ガス、N+CH混合ガスのアーク消弧性能を示すグラフである。また、図4は、CHガス、COガス、Nガス、CO+CH混合ガス、N+CH混合ガスの絶縁耐力を示すグラフである。図3および図4に示すとおり、CHガスの消弧性能、絶縁性能は、COガスと比べてそれぞれ約2倍、約1.2倍と高い性能を有している。
【0039】
従来、1対の電気接点、すなわち1遮断点のみで十分な遮断性能が出せない場合は、電気接点を2対直列に接続して性能を確保することがあるが、本実施形態によれば、CHガスの優れた特性により、1遮断点のみでも高い遮断性能が得られるため、小形かつ低コストの開閉器を提供することができる。
【0040】
CHはCとHから構成されるガスの中では最も低位な、すなわち簡単な分子構造であるため、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンに属するガス、CFIガスのような複雑な分子構造のガスとは異なり、一旦アークで分子が解離され再結合する過程においても別の分子構造に変化する可能性はほとんど無く、たとえ多数回電流を遮断しても、機器特性が変化するような事態は起こらず、安定した品質を長期にわたり維持することができる。
【0041】
CHガスは可燃性を有する、すなわち酸素Oと化合して熱量を発生させるが、本実施形態では密閉した空間内で使用されているため、酸素と反応する機会は全く無く、安全上特に問題は生じない。
【0042】
接触子部など運転時に高電圧が印加される部分は、固体絶縁物23により絶縁性を確保しつつ機械的に支持される。従来のSFガスを使用した開閉器においては、アーク遮断過程においてHFなどの分解ガスが発生するため、通常アルミナ充填材料を使用することが一般的であった。本実施形態においてはCHを消弧性ガスとして使用しているため、基本的にHFが発生することはなく、そのため、アルミナ配合絶縁物に比べて低誘電率で機械的強度も高く、また重量も軽いシリカ配合の絶縁物を使用することが可能である。これにより、さらに小形で信頼性の高い開閉器を実現することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、地球温暖化への影響が小さく、かつ優れた性能と品質を有し、小形、低コスト、かつ安全性の高いガス絶縁開閉器を提供することが可能となる。
【0044】
[第2の実施形態]
図5は、本発明に係るガス絶縁開閉器の第2の実施形態の要部縦断面図であって、遮断動作途中の状態を示している。基本的な構成は図1に示した第1の実施形態と同じであるが、下記の点に相違がある。
【0045】
第2の実施形態では、密閉容器1内に封入する消弧性ガス31bとして、COガスとCHガスの混合ガスであってCHガスを5%以上含むものを採用する。ここでは具体的にCO(70%)+CH(30%)の混合ガスを例にとって説明する。
【0046】
ここで使用されるCOガスとCHガスは、大気中より回収したもの、もしくは発電過程、他の化学工業製品等の製造過程、あるいは有機性廃棄物処理過程などで発生し成り行きでは大気放出されるもの等を回収、精製したものを利用するのが好ましい。
【0047】
密閉容器1には内部点検用の蓋36が設けられており、締付ボルト37で密封されている。蓋36の接合部にはパッキン38を設け、内部に充填された消弧性ガス31bの気密性を保持する。パッキン38には、たとえば、二トリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、ハイパロン、EVA樹脂のいずれかを使用する。
【0048】
前記固定アーク接触子7aおよび可動アーク接触子7bを解離動作する際に摺動する面、具体的にはたとえばシリンダ4の外周面には、摩擦を低減するために潤滑性のグリス39を塗布する。このグリスにはシリコーングリスを用いる。
【0049】
接触通電を行なわない金属表面の少なくとも一部、具体的にはたとえば固定接触部21と可動接触部22の外周面、および排気筒9の内面には、燐酸処理皮膜、アルミナ皮膜、フッ素系コーティング、塗装などの表面処理皮膜40を施す。
【0050】
密閉容器1内には、水分を優先的に吸収可能な吸着剤34を配置する。吸着剤34はケース35により密閉容器1内に保持される。
【0051】
密閉容器1内にCOガスもしくはOガスの検出手段を設ける。具体的には、密閉容器1内にCOガスもしくはOガスを検出可能なセンサ51を設置し、その情報を分析装置52において読み取るよう構成する。あるいは、密閉容器1内のガスを少量だけサンプリング容器53に採取可能なように構成し、その採取ガスにおけるCOガスおよびガスの含有量を別途分析装置により分析することでも良い。
【0052】
密閉容器1の外部、特にパッキン38により密閉している部分の周辺に、CHガスを検知し、検知した場合は何らかの手段でその情報を知らせる警報装置41を配置する。
【0053】
ここで、消弧性ガス31bとして、COガスとCHガスの混合ガスであってCHガスを5%以上含むものを用いることの利点について説明する。
【0054】
COガス、CHガスの地球温暖化係数はそれぞれ1および21といわれており、従来開閉器の絶縁・消弧媒体として広く使用されているSFガスが23,900であることに比べると、地球環境に及ぼす影響は極めて小さい。また、SFガスや、その代替媒体として提案されているパーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、CFIガスなどとは異なり、天然に存在する自然由来のガスなので、人工的な環境被害を生み出す可能性はほとんどない。さらに、ここで使用するCOガス、CHガスは、そもそも大気中より回収、もしくは本来は大気中に放出されていたものを回収して使用したものなので、本目的としてCOガス、CHガスを使用しても、地球上に新たにこれらのガスを生み出していることにはならない。したがって、開閉器の絶縁・消弧媒体としてCOガスとCHガスの混合ガスを使用することで、環境におよぼす影響を極めて小さくすることができる。
【0055】
COガスにCHガスを混合させることで、カーボン生成の発生量を大幅に抑制することができる。図2に示すように、CHを5%混入することで、純粋COガスを適用した場合に比べカーボンの生成量は略半分にまで減少し、十分実効的な効果が得られる。本実施形態の例のように、CHを30%まで混合させれば、カーボン発生量を1割程度まで抑制させることができ、カーボン生成に伴う品質低下を防止することができる。
【0056】
また、これにより、カーボンが発生しないようにパッファ室圧力上昇に対するアーク熱の利用度を制限する必要が無くなる、もしくは緩和されるため、小形でかつ大電流が遮断可能な開閉器を提供することができる。
【0057】
ガス自身の性能もCHガスを混合することでCO単体よりも向上する。図3および図4に示すとおり、たとえばCHを30%混ぜることで、CO単体の時と比べて遮断性能、絶縁性能ともにそれぞれ約1.7倍、1.1倍にまで性能を上げることができる。このため、1遮断点のみでも高い遮断性能が得られるため、多遮断点構成とする必要がなく、小形かつ低コストの開閉器を提供することが可能となる。
【0058】
COおよびCHはC、O、H元素から構成される分子の中で最も低位な、すなわち簡単な分子構造であるため、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンに属するガス、CFIガスのような複雑な分子構造のガスとは異なり、一旦アークで分子が解離されても再結合する過程においても別の分子構造に変化する可能性はほとんど無く、基本的にほぼ完全にもとの混合比のままCOとCHに戻る。そのため、たとえ多数回電流を遮断しても、機器特性が変化するような事態は起こらず、安定した品質を長期にわたり維持することができる。条件によってはごくわずかな水分HOが生成される可能性も否定できないが、水分は吸着剤34により選択的に吸着除去されるため、これより絶縁性が劣化したり、腐食が発生するなどの不具合は生じない。
【0059】
一般的に良く知られているように、CHガス1モルはOガス2モルと化合して、すなわち燃焼して熱量を発生させる。COガスとCHガスとの混合ガス中で加熱してもCOガス2モルが解離するために必要な熱量と解離して発生した2モルのOと1モルのCHとが化合して発生する熱量には大きな差がないため、燃焼、爆発などの危険は生じない。ただし、当該混合ガスが密閉容器から大気中に漏洩した場合は火災などを引き起こす危険性がある。本実施形態においては、第1の実施形態と異なり可燃性のCHガスの濃度はCOガスにより希釈されているので、万が一大気中に封入ガスが漏洩した際の安全性が高い。また、警報装置41が配置されているため、漏洩の発生を常に監視することができる。
【0060】
なお、前述の通り、電流遮断に伴うカーボン生成を抑制するためにCOガスにO、Hを混ぜることが提案されている。しかしながら、Oガスは有機材料や金属の劣化を促進する代表的な物質であるため、特に通電により高温環境に曝されている金属導体部分や、ゴムパッキン、絶縁物、潤滑グリスなどの有機物の劣化を著しく促進させ、結果として機器寿命が短縮されたり、機器の保守点検回数が増えるなどの課題があった。絶縁ノズル6は、数万度にも達するアーク8に曝されるため、支燃性を有するOガスの濃度が高くなるにつれて損傷が激しくなり、電流値やガス圧力などが高い場合には燃焼してしまう可能性もあった。また、Hガスは、安全性、電気絶縁性、気密性の点で課題があった。
【0061】
図6はHガス、CHガスの空気中での爆発範囲を示すグラフである。Hガスは可燃性ガスの中でも燃焼速度が極めて速いガスであり、図6に示すように、空気中での爆発範囲は4〜75%と極めて広く、万が一運用時やガスハンドリング時に漏洩した場合、爆発の危険性があった。なお、CHの空気中での爆発範囲は5〜14%である。
【0062】
図7は、COガス、Oガス、CHガス、Hガスの耐電圧性能の相対比較を示す表である。Hガスは電流遮断性能には優れるものの、絶縁性能はきわめて低く、図7に示すようにCOガスの1割以下の性能である。このため、Hを混合させると絶縁性能を十分に確保させるために絶縁ギャップ長を増やす必要があり、このため機器の大形化を招いていた。またHガスは分子が小さいため、気密性を確保することが難しく、機密性を確保させるためにガスパッキンを2重化するなどの工夫が必要であった。COに混合するガスをCHとすることで、これらの課題も全て同時に解決できる。すなわち、Oガスのような劣化・損傷の懸念は無くなり、またHガスのような安全性、大形化、気密性等の懸念も解消される。
【0063】
ところで、密閉容器1内で何らかの絶縁不良があり、部分放電が持続的に発生していると、その放電により継続的にCOガス、あるいはOガスが生成される。したがって、これらのガスの有無、あるいは濃度を前記センサ51、あるいはサンプリング容器53を用いることで分析、監視することで、絶縁破壊の前駆現象である部分放電が発生していることを知ることができる。これにより完全な絶縁破壊が生じる前にその異常を早期発見し、適切な処置をとることで機器故障の被害を最小限にとどめることができる。
【0064】
ガスはパッキン38に使われるゴム類を変質劣化させる作用が強く、ガス漏洩など開閉器の品質や安全性の低下につながる懸念がある。パッキンに、たとえば二トリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、ハイパロン、EVA樹脂などのOに対して耐性の強い材料を使用することで、パッキン38の劣化を防ぐことができる。
【0065】
また、Oガスの発生は、摺動面に使用される潤滑グリス39の酸化劣化を促進させる可能性がある。これらに対する耐性が強いシリコーングリスを用いることで、潤滑性を維持することができる。
【0066】
また、接触通電を行なわない金属表面に燐酸処理皮膜、アルミナ皮膜、フッ素系コーティング、塗装などの表面処理を施すことにより、水分やO発生による同部の酸化腐食、変質などをより確実に防止することができる。
【0067】
以上説明した第2の実施形態によれば、地球温暖化への影響が小さく、かつ優れた性能と品質を有し、小形、低コスト、かつ安全性の高いガス絶縁開閉器を提供することが可能となる。さらに、機器の状態を把握することができ、適正な点検および更新の時期の判断を行なうことができる。
【0068】
[第3の実施形態]
つぎに本発明に係るガス絶縁開閉器の第3の実施形態について説明する。この第3の実施形態の基本的な構成は、第1または第2の実施形態と同様であるので図示は省略する。
【0069】
第3の実施形態では、消弧性ガスとして、NガスとCHガスの混合ガスであってCHガスを30%以上含むものを用いる。ここでは具体的にN(70%)+CH(30%)の混合ガスを例とする。
【0070】
ここで使用されるCHガスは、大気中より回収したもの、もしくは有機性廃棄物処理過程などで発生し成り行きでは大気放出されるものを回収、精製したものを利用するのが好ましい。
【0071】
本実施形態における作用は第2の実施形態、すなわちCOガスとCHガスの混合ガスの場合と同様であるが、Nは地球温暖化係数が0で、かつ大気の主成分のため、COの代わりにNガスを用いることで、さらに環境への影響を小さくすることができる。また、工業的にも多量に流通しており、安価である。
【0072】
また、NはC元素を含まないため、それ自体としてカーボン生成に全く寄与しない。
【0073】
ただし、NガスはCOガスに比べて消弧性能、絶縁性能ともに劣るため、機器の大形化、性能低下を招く恐れがある。ただし、図3および図4に示す通り、NガスにCHを30%以上混ぜることで、略COガス単体と同程度の遮断性能、絶縁性能を得ることができる。
【0074】
第3の実施形態によれば、地球温暖化への影響が小さく、かつ優れた性能と品質を有し、小形、低コスト、かつ安全性の高いガス絶縁開閉器を提供することが可能となる。
【0075】
[第4の実施形態]
図8は、本発明に係るガス絶縁開閉器の第4の実施形態の密閉容器内の要部を示す部分縦断面図であって、遮断動作途中の状態を示している。第4の実施形態の基本的な構成は、第1、第2、および第3の実施形態と概ね同じであるが、下記の2点に相違がある。
【0076】
第4の実施形態では、消弧性ガス31cとして、CHガス、もしくはCOガスとCHガスの混合ガスとし、さらにこれらのガスに対しOもしくはHガスをさらにその2%以下の範囲で添加したガスを採用する。ここでは、たとえば消弧性ガスをしてCOガスとCHガスの混合ガスであって、それに対しさらに全体の2%に相当するOガスを混ぜたものとする。
【0077】
また、アーク8、もしくはアーク8により熱せられたガス流に曝される位置に、O元素もしくはH元素を含む固体素子61を配置する。具体的な配置場所としては、たとえばガイド32の表面付近、およびシリンダ4の内部などである。固体素子61の材料は、たとえばポリエチレン、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリアセタールなどを用いる。
【0078】
なお、消弧性ガス31cにOもしくはHガスを添加することと、O元素もしくはH元素を含む固体素子61を配置することは同じ作用を得るためのものであり、両方同時に適用しなくても、どちらか一つのみでも十分実効的な効果を得ることができる。ここでは、両者を含めた実施形態として説明する。
【0079】
また、ここでは、絶縁ノズル6として、ポリテトラフルオロエチレンを使用したとする。
【0080】
非常に高温なアーク8近傍では、CO、CHなどのガス分子は解離しており、様々なイオン粒子および電子に分離された状態となっている。電流遮断過程でアークの温度は低下し、各粒子は再び結合しガス分子へと戻る。この際、固定アーク接触子7aおよび可動アーク接触子7bなどの金属の酸化にOイオンが消費され、COガスに復元するために必要なOが一部不足した状態となるため、COガスが生成される。また、同様にCHガスに復元するために必要なHが、絶縁ノズル6が蒸発して混入したFイオンと結合してHFガスとなることに消費され一部不足した状態となるため、結果としてたとえばCなどのCH以外の炭化水素系のガスが生成される。このため、電流遮断を繰り返すと徐々に密閉容器内のガスの組成が変化してゆき、結果として開閉器の性能が変化してしまう。また、COガスは毒性のガスであるため、その生成は極力抑制するのが好ましい。
【0081】
ここでOガスもしくはHガスをあらかじめ適量混合させておくことで、たとえアーク接触子などの酸化によりOが消費されても、またHF生成のためにHが消費されても、元のCO、CHに戻るためのO、Hイオンが不足する事態にはならず、電流遮断後もCO、CHのガス量は維持される。これにより、安定した開閉器の性能を維持することができる。また、有毒なCOガスも発生しない。
【0082】
図9は、CH+H混合ガス中にて大電流を多数回遮断後のCH、H、HF、Oガス以外の分解ガス生成量を示すグラフである。また、図10は、CH+CO+H混合ガス、CH+CO+O混合ガス中にて大電流を多数回遮断後のCH、CO、H、O、HF、Oガス以外の分解ガス生成量を示すグラフである。これらの図は、いずれも遮断電流は28.4kAを20回遮断した後の値を示している。このように、HガスもしくはOガスを2%程度付加的に混合させることで、上記の分解ガスの生成量が著しく低下することが分かる。ここで、もともと充填されているCH、CO、H、O以外にもHF、Oを除外しているのは、これら二つのガスは反応性が高く、たとえ生成されてもある程度の時間が経てば二次的な反応もしくは密閉容器内の金属表面等に吸着されて概ね消滅してしまうからである。
【0083】
付加的に混合させるHガスもしくはOガスは全体の2%以下に限定しているので、これらの付加ガスの混合により開閉器の性能が大きく変わることはない。
【0084】
このように、HガスもしくはOガスを付加的に2%を超えない範囲で混合させることで、開閉器の特性をほとんど変化させずに、COなどの本来存在しなかったガスの生成を顕著に抑制することができる。
【0085】
また、あらかじめO、Hガスを混ぜておく以外にも、図8に示すように、アーク8もしくはアーク8により熱せられたガス流に曝される位置に、O元素もしくはH元素を含む固体素子61を配置することでも同様の作用が得られる。これは、電流遮断時において固体素子61が高温のアークあるいは高温のガス流に曝されることにより溶融、気化され、これにより電流遮断時にアーク近傍にOあるいはHが局所的に供給されるためである。
【0086】
開閉器に混合ガスを適用する場合には、当初設計値どおりの性能が常に得られるように、運用時にはその混合比を監視する必要がある。したがって、混合するガスの種類は極力少ない方が機器運用時の管理面で好ましい。固体素子61の溶融、気化現象を利用することで、OやHガスをあらかじめ混合しなくてすむようになるため、機器管理面の手間が省ける。
【0087】
以上の構成により、地球温暖化への影響が小さく、かつ優れた性能と品質を有し、小形、低コスト、かつ安全性の高いガス絶縁開閉器を提供することが可能となる。特に本実施形態によれば、有毒なCOガスなど本来存在しなかったガスが生成される可能性を著しく低減することができる。
【0088】
[他の実施形態]
以上説明した各実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。たとえば、各実施形態で例示した消弧性ガスの成分は主たる成分を示したものであって、他の不純物ガスが含まれていてもよい。また、各実施形態の特徴を種々に組み合わせてもよい。また、上記実施形態ではパッファ形ガス遮断器の例を示したが、本発明は他のガス絶縁開閉器にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係るガス絶縁開閉器の第1の実施形態の要部縦断面図。
【図2】CHガス、COガス、CO+CH混合ガス、CO+O混合ガス中でアークを発生した場合における遊離カーボンの生成量解析値を示すグラフ。
【図3】CHガス、COガス、Nガス、CO+CH混合ガス、N+CH混合ガスのアーク消弧性能を示すグラフ。
【図4】CHガス、COガス、Nガス、CO+CH混合ガス、N+CH混合ガスの絶縁耐力を示すグラフ。
【図5】本発明に係るガス絶縁開閉器の第2の実施形態の要部縦断面図。
【図6】Hガス、CHガスの空気中での爆発範囲を示すグラフ。
【図7】COガス、Oガス、CHガス、Hガスの耐電圧性能の相対比較を示す表。
【図8】本発明に係るガス絶縁開閉器の第4の実施形態の密閉容器内の要部を示す部分縦断面図。
【図9】CH+H混合ガス中にて大電流を多数回遮断後のCH、H、HF、Oガス以外の分解ガス生成量を示すグラフ。
【図10】CH+CO+H混合ガス、CH+CO+O混合ガス中にて大電流を多数回遮断後のCH、CO、H、O、HF、Oガス以外の分解ガス生成量を示すグラフ。
【符号の説明】
【0090】
1…密閉容器
3…ピストン
4…シリンダ
5…パッファ室
6…絶縁ノズル
7a…固定アーク接触子
7b…可動アーク接触子
8…アーク
9…排気筒
11a…固定側熱ガス流
11b…可動側熱ガス流
12…中空ロッド
21…固定接触部
22…可動接触部
23…固体絶縁物
31a、31b、31c…消弧性ガス
32…ガイド
33…連通穴
34…吸着剤
35…ケース
36…蓋
37…締付ボルト
38…パッキン
39…グリス
40…表面処理皮膜
41…警報装置
51…センサ
52…分析装置
53…サンプリング容器
61…固体素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消弧性ガスで充たされた密閉容器内に少なくとも1対の電気接点を配置し、通電時には前記電気接点を接触状態に保つことで通電を行ない、電流遮断時には前記電気接点を解離させて前記消弧性ガス中にアーク放電を発生させ、そのアークを消弧することで電流を遮断せしめるよう構成されたガス絶縁開閉器において、
前記消弧性ガスの主成分がCHガスであることを特徴とするガス絶縁開閉器。
【請求項2】
消弧性ガスで充たされた密閉容器内に少なくとも1対の電気接点を配置し、通電時には前記電気接点を接触状態に保つことで通電を行ない、電流遮断時には前記電気接点を解離させて前記消弧性ガス中にアーク放電を発生させ、そのアークを消弧することで電流を遮断せしめるよう構成されたガス絶縁開閉器において、
前記消弧性ガスが、NガスとCHガスを主成分とする混合ガスであって、CHガスを30%以上含むことを特徴とするガス絶縁開閉器。
【請求項3】
消弧性ガスで充たされた密閉容器内に少なくとも1対の電気接点を配置し、通電時には前記電気接点を接触状態に保つことで通電を行ない、電流遮断時には前記電気接点を解離させて前記消弧性ガス中にアーク放電を発生させ、そのアークを消弧することで電流を遮断せしめるよう構成されたガス絶縁開閉器において、
前記消弧性ガスが、COガスとCHガスを主成分とする混合ガスであって、CHガスを5%以上含むことを特徴とするガス絶縁開閉器。
【請求項4】
前記消弧性ガスが、OもしくはHガスが2%以下の範囲で添加された混合ガスであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のガス絶縁開閉器。
【請求項5】
前記アーク、もしくは前記アークにより熱せられた消弧性ガス流に曝される位置に、O元素もしくはH元素を含む固体材料が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のガス絶縁開閉器。
【請求項6】
前記密閉容器内に形成されて前記消弧性ガスを蓄積し、前記アークの熱エネルギーにより内部空間内の前記消弧性ガスの圧力が上昇するように構成された蓄圧空間と、
前記蓄圧空間と前記アークとを結ぶガス流路と、
を有し、
前記蓄圧空間に蓄積されて前記アークの熱エネルギーによって昇圧された前記消弧性ガスが前記ガス流路を通って前記アークに吹き付けられるように構成されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のガス絶縁開閉器。
【請求項7】
前記密閉容器内において電圧が印加される部分を電気的に絶縁し、かつ機械的に支持するための固体絶縁支持物が、シリカを配合したエポキシ系材料で製作されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のガス絶縁開閉器。
【請求項8】
前記密閉容器内に、水分を優先的に吸収可能な吸着剤が設置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のガス絶縁開閉器。
【請求項9】
前記密閉容器は、前記消弧性ガスを密封するためのパッキンとして、二トリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、ハイパロン、EVA樹脂のいずれか少なくとも一種を用いていることを特徴とする請求項3ないし請求項8のいずれか一項に記載のガス絶縁開閉器。
【請求項10】
前記電気接点を解離動作する際の摺動面に潤滑性のシリコーングリスが塗布されていることを特徴とする請求項3ないし請求項9のいずれか一項に記載のガス絶縁開閉器。
【請求項11】
接触通電を行なわない金属表面の少なくとも一部に、燐酸処理皮膜、アルミナ皮膜、フッ素系コーティング、塗装のいずれかの表面処理が施されていることを特徴とする請求項3ないし請求項10のいずれか一項に記載のガス絶縁開閉器。
【請求項12】
前記密閉容器内のCOガスもしくはOガスを検出する検出手段を有することを特徴とする請求項3ないし請求項11のいずれか一項に記載のガス絶縁開閉器。
【請求項13】
前記密閉容器内に充填するCHガスまたはCOガスは、大気中より回収したもの、もしくは成り行きでは大気放出されるものを回収、精製して利用するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載のガス絶縁開閉器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−289566(P2009−289566A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140413(P2008−140413)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】