説明

ガス貯蔵材料および装置

本発明によれば、水素のようなガスを貯蔵するのに使用できる多孔性の金属−有機骨格構造体が提供される。また二官能性の金属の架橋基および3個またはそれ以上の連結点を有する有機ノードを含んで成る金属−有機骨格構造体であって、該骨格構造体は1種またはそれ以上の貯蔵ガス分子を包含するのに適した1個またはそれ以上のキャビティーをもっていることを特徴とする金属−有機骨格構造体が提供される。さらに本発明によれば1個またはそれ以上のキャビティーの中に入り込んだ、貯蔵ガスと反応し得る有機官能基を含んで成る金属−有機骨格構造体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【政府による基金】
【0001】
本発明はNational Science Foundationによって授与されたGrant Number DMR−0133138の名称の政府の支援によって行われた。米国政府は本発明において一定の権利を所有している。
【背景技術】
【0002】
水素のようなガスを貯蔵し放出する化学系にかなりの興味がもたれている。このような系は多様な応用分野において水素燃料電池として大規模な用途を見出だされることが期待されている。現在まで、水素を貯蔵するためには二つの主要な化学的研究方法が使用されてきた(非特許文献1参照)。第1の方法は低密度の多孔性材料の内部に水素を吸着させる方法である。この方法では、炭素性の固体(例えばカーボンナノチューブ)および珪素に富んだ固体(例えばゼオライト)が著しい吸着能力を示すことが示されている。第2の方法は、反応性をもった高密度の材料、例えば金属水素化物により水素を吸収させる方法である。この方法では、水素化物は水素と相互作用をして分子を解離させる。2個の水素原子が再結合して脱着過程を容易にする。
【0003】
上記の研究方法は現実的な水素貯蔵系の開発に対して有望であるが、それぞれ著しい欠点をもっている。密度が低い軽量の貯蔵材料は将来性を約束されているが、その吸着系はあまりよく分かっていない構造(例えばノナ構造をもった炭素)に基づいているか、或いは水素とあまり有利には相互作用をしない親水性の表面をもっている(例えばゼオライト)。吸着過程を容易にするためには典型的には高圧が必要である。金属水素化物の場合、多くの実用的な目的に対してはこのような固体が高密度であることは許容できないと考えられている。
【0004】
これに加えて、特許文献1には水素を貯蔵するために或る種の特定なシクロファンを使用することが報告されている。しかし、シクロファンを液体(例えば有機溶媒)に溶解して吸着過程を容易にしなければならないために、この方法の使用には限界がある。
【0005】
構造ブロックとして金属−有機成分を使用し、剛性をもった直線状の有機架橋基により1次元(1D)、2次元(2D)または3次元(3D)において或る幾何学的形状をもつ配位をした金属ノード(node)が次第に増殖してゆく多孔性の結晶性固体に非常に多くの興味がもたれるようになってきた。(最近の代表的な例は非特許文献2〜15に含まれている)。
【0006】
このような金属−有機骨格構造体(MOF)は、ゼオライト(非特許文献16)のような通常の多孔性固体、およびメソ多孔性(中間的な多孔性、mesoporous)材料(MCM)(非特許文献17)に似た性質を示し、さらにこれを改良するように設計されている。
【0007】
しかし多くの多孔性のMOFは、ゼオライトおよびMCMとは対照的に、頑丈な多孔性固体としての性質をもっていない(非特許文献18〜21)。相互進入および骨格構造体の脆弱性のために、ホストのキャビティーが自己包含される傾向があり同時にゲストの除去によってしばしばホストの構造が潰れるような過程が妨げられてきた。(非特許文献22〜25)。
【0008】
しかし最近になってホストの設計(非特許文献26)に対し相互侵入および骨格構造体の脆弱さに関するこのような問題は二次構造単位として金属クラスターを使用することにより大部分回避されるようになった。SBU(例えば金属−カルボキシレート)は、その大きさが大きく空隙空間が充填されることを妨げることができ、包含および触媒作用を支持し得る安定した多孔性の固体を生じることができるために、相互侵入の傾向を減少させる(非特許文献27〜29)。
【0009】
SBUは安定な細孔をもったMOFをつくるのにうまく使用されてきたが、MCMとは対照的にこのような固体を有機基で被覆(lining、ライニング)することは困難である。何故なら労力の多い直線的な有機架橋基を共有結合的に合成するにはしばしば簡単な(例えば−Me)且つ多様な(例えばキラルな)官能基を導入する必要があるからである(非特許文献30;MCMは後合成によるグラフト化により容易に官能基をつけることができる:非特許文献31参照)。
【0010】
従って現在もガス(例えば水素)を貯蔵するのに使用できる新規化学系が必要とされている。このような系は例えば燃料電池の製造のような多くの用途に有用であると思われる。
【特許文献1】米国特許第4,359,327号明細書。
【非特許文献1】Schlapbach,L.,Ztittel,A.Nature 2001,414,353。
【非特許文献2】J.S.Seo,et al.,Nature 2000,404,982〜986。
【非特許文献3】S.M.−F.Lo,et al.,J.Am.Chem.Soc.2000,122,6293〜6294。
【非特許文献4】H.Li,et al.,Nature 1999,402,276〜279。
【非特許文献5】B.Moulton,et al.,Chem.Commun.1999,1327〜1328。
【非特許文献6】S.W.Keller,S.Lopez,J.Am.Chem.Soc.1999,121,6306〜6307。
【非特許文献7】ID.Ranford,et al.,Angew.Chem.1999,111,3707〜3710。
【非特許文献8】ID.Ranford,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.1999,38,3498〜3501。
【非特許文献9】L.R.MacGillivray,et al.,J.Am.Chem.Soc.1998,120,2676〜2677。
【非特許文献10】M.J.Zaworotko,Angew.Chem.2000,112,3180〜3182。
【非特許文献11】M.J.Zaworotko,Angew.Chem.Int.Ed.Engl 2000,39,3052〜3054。
【非特許文献12】D.Venkataraman,et al.,J.Am.Chem.Soc.1995,117,11600〜11601。
【非特許文献13】C.J.Kepert,MJ.Rosseinsky,Chem.Commun.1999,375〜376。
【非特許文献14】K.Biradha,et al.,Angew.Chem.2000,112,4001−4003。
【非特許文献15】K.Biradha,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2000,39,3843〜3845)
【非特許文献16】J.V.Smith,Chem.Rev.1988,88,149〜182)。
【非特許文献17】Selvam,S.K.Bhatia,C.G.Sonwane,Ind.Eng.Chem.Res.2001,40,3237〜3261。
【非特許文献18】MJ.Zaworotko,Angew.Chem.2000,112,3180〜3182。
【非特許文献19】Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2000,39,3052〜3054。
【非特許文献20】S.R.Batten,R.Robson,Angew.Chem.1998,110,1558〜1595。
【非特許文献21】S.R.Batten,R.Robson,Angew.Chem,Int.Ed.Engl.1998,37,1460〜1494。
【非特許文献22】S.R.Batten,R.Robson,Angew.Chem.1998,110,1558〜1595。
【非特許文献23】S.R.Batten,R.Robson,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1998,37,1460〜1494。
【非特許文献24】M.J.Zaworotko,Angew.Chem.2000,112,3180〜3182。
【非特許文献25】M.J.Zaworotko,Angew.Int.Ed.Engl.2000,39,3052〜3054。
【非特許文献26】M.Eddoudi,et al.,Ace.Chem.Res.2001,34,319〜330。
【非特許文献27】j.S.Seo,et al.,Nature 2000,404,982−986。
【非特許文献28】S.M.−F. Lo, et al.,J.Am.Chem.Soc.2000,122,6293〜6294。
【非特許文献29】H.Li,,et al.,Nature 1999,402,276〜279。
【非特許文献30】Selvam,S.K.Bhatia,C.G.Sonwane,Ind.Eng.Chem.Res.2001,40,3237〜3261。
【非特許文献31】M.H.Lim,et al.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,4090〜409。
【発明の開示】
【0011】
本発明の概要
MOFの新規グループは、SBUが直線状の架橋として作用し有機配位子がノードとして作用するようにSBUおよび直線状の有機架橋の構造的な役割を逆転させることによって製造することができる。(直線状の架橋としての金属リンカー(連結子、linker)を含む研究に対しては次の文献を参照のこと:K.S.Min,M.P.Suh,Chem.Eur.J.2001,,303〜313;Y.−H.Kiang,et al.,J.Am.Chem.Soc.1999,121,8204〜8215;L.Carlucci,et al.,Chem.Commun.1997,631〜632;M.−L.Tong,et al.,Chem.Commun.1999,561〜562;B.F.Abrahams,et al.,J.Am.Chem.Soc.1991,113,3606〜3607)。この設計において典型的には、骨格構造体を支持するSBUの結合は、SBUの残りの配位部位が該骨格構造体を修飾する有機基で充填され得るように最低限度(即ち二つ)に抑制されている。さらに、このような逆転した金属−有機骨格構造体(IMOF)は、共有結合的な合成とは対照的に、SBUの第2の球状領域が分子上においてホストの壁を被覆するようにすることができ、この場合先が細くなった(convergent)末端基は固体の構造を規定しその性質を認識するようにつくることができる。(M.C.T.Fyfe,J.F.Stoddart,Ace.Chem.Res.1997,30,393〜401;A.R.Renslo,J.Rebek,Jr.,Angew.Chem.2000,112,3419〜3421;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2000,39,3281〜3283;K.Choi,A.D.Hamilton,J.Am.Chem.Soc.2001,123,2456〜2457)。
【0012】
本発明の出願人は、水素のようなガスを貯蔵するのに使用できる多孔性の金属−有機骨格構造体を発見した。従って本発明によれば、二官能性の金属架橋基および3個またはそれ以上の連結点をもった有機ノードを含んで成る金属−有機骨格構造体において、該骨格構造体は1個またはそれ以上の貯蔵ガス分子を含むのに適した1個またはそれ以上のキャビティーを有する骨格構造体が提供される。
【0013】
また本発明によれば、貯蔵ガスと反応し得る1個またはそれ以上のキャビティーの方へ入り込んだ(dircted)有機官能基を含んで成る本発明の金属−有機骨格構造体が提供される。
【0014】
また本発明によれば、本発明の金属−有機骨格構造体を含んで成る燃料貯蔵電池が提供される。
【0015】
また本発明によれば、ガスが該骨格構造体のキャビティーの中に入るのに適した条件下において本発明の金属−有機骨格構造体をガスと接触させるガスを貯蔵する方法が提供される。
【0016】
さらに本発明によれば、本発明の金属−有機骨格構造体と接触させることから成るガスを貯蔵する方法において、ガスが該骨格構造体のキャビティーの中に入り該有機基と反応して該有機基に固定されるのに適した条件下で、金属−有機骨格構造体のキャビティーの中に入り込み、或いはそれを被覆する有機官能基をガスと接触させる過程を含む方法が提供される。
【0017】
さらに本発明によれば、二官能性の金属架橋基および3個またはそれ以上の連結点をもった有機ノードを含んで成り、該骨格構造体は1個またはそれ以上の貯蔵ガス分子を包含するのに適したキャビティーをもち、各金属架橋基は銅を含んで成り、各有機ノードは1,2,3−トリス(4−ピリジル)シクロプロパン、ビス(4−ピリジル)シクロブタン、テトラキス(4−ピリジル)シクロブタン、ペンタキス(4−ピリジル)シクロペンタン、ヘキサキス(4−ピリジル)シクロヘキサン、またはヘキサキス(4−ピリジル)ベンゼンであり、各キャビティーの容積は約20〜2000立方Åである金属−有機骨格構造体が提供される。
【0018】
さらにまた、金属の架橋基と3個またはそれ以上の可能な連結点を有する有機ノードとを適当な溶媒の中で反応させ、金属−有機骨格構造体をつくる本発明の金属−有機骨格構造体を製造する方法が提供される。
【0019】
また本発明によれば、本発明の金属−有機骨格構造体を製造するのに有用な本明細書記載の新規合成法および中間体が提供される。
【0020】
本発明の詳細な説明
特記しない限り下記の定義を使用する。
【0021】
「金属−有機骨格構造体」と言う言葉は、3個またはそれ以上の連結点を有する有機基(即ちノード)に連結した架橋基を含む二官能性の金属からつくられた固体材料を意味する。本発明の金属−有機骨格構造体は貯蔵ガス分子を包含するのに十分な大きさをもったキャビティーを有している。
【0022】
「二官能性の金属架橋基」という言葉は遷移金属を含む化合物または錯体であって、有機基(ノード)に連結するために使用できる二つの部位を有するものを意味する。典型的には二官能性の金属架橋基は60°に等しいかまたはそれ以上の(外側に広がった)結合の配置をもっている。この二官能性の金属架橋基は直線状の架橋を与える。一具体化例においては、二官能性の金属架橋基は第1列の遷移金属、例えば銅を含んでいることができる。二官能性の金属架橋基と言う言葉にはカルボキシレートの二核錯体または外輪型の(paddle−wheel)錯体、例えばLei,X.,Eur.J.Inorg.Chem.1998,1835〜1836に記載された錯体が含まれる。直線状の金属架橋基の例には[Cu(OCCH(HO)]、[Cu(OCCH=CH(HO)]、[Cu(OCC(CH)=CH(HO)] [Cu(OCC≡CH)(HO)]および[Cu(OCCHC≡CH)(HO)]が含まれる。
【0023】
二官能性の金属架橋基の特定の一例は式[Cu(OCR)(L)]の化合物であり、ここでRは(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、アリール、ヒドロキシ、(C〜C)アルカノイル、またはアミノであり;LはHO、ROH、アミノ、またはピリジルであり;Rは水素、(C〜C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリールまたは(C〜C)アルカノイルである。
【0024】
「3個またはそれ以上の連結点を有する有機ノード」という言葉は、直線状の金属架橋基と静電的な結合または配位結合的な共有結合をつくり、適切なキャビティーをもつ骨格構造体を与え得る3個またはそれ以上の官能基をもった有機分子を意味する。典型的には有機ノードは平面的な構造をもっていない。有機ノードの例には1,2,3−トリス(4−ピリジル)シクロプロパン、ビス(4−ピリジル)シクロブタン、テトラキス(4−ピリジル)シクロブタン、ペンタキス(4−ピリジル)シクロペンタン、ヘキサキス(4−ピリジル)シクロヘキサン、およびヘキサキス(4−ピリジル)ベンゼンが含まれる。一具体化例においては各有機ノードは少なくとも4個の連結点をもっている。他の具体化例においては各有機ノードは4個の連結点をもっている。
【0025】
「貯蔵ガス分子」と言う言葉は本発明の骨格構造体に貯蔵され得る任意のガス分子を含んでいる。例えばこの言葉は単原子分子のガス、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、およびラドン、二原子分子ガス、例えば水素、酸素および窒素、並びに多原子分子ガス、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、および関連したハロゲン化炭素(即ちフレオン)を含んでいる。一具体化例においては貯蔵ガスは放射性をもっている。
【0026】
「1種またはそれ以上の貯蔵ガス分子を含むのに適したキャビティー」と言う言葉は、貯蔵ガス分子を収納するのに十分な大きさをもった金属−有機骨格構造体の内部の細孔または空隙の空間を意味する。キャビティーの大きさは骨格構造体の用途および貯蔵すべきガス分子の大きさに依存して変わる。例えばキャビティーの大きさは典型的には約20〜約2000立方Åの範囲であるが、これよりも大きい或いは小さい容積も可能である。一具体化例においては、各キャビティーの容積は約50〜約1000立方Åである。他の具体化例においては各キャビティーの容積は20立方Åより大きい。他の具体化例においては各キャビティーの容積は約2000立方Åより小さい。
【0027】
本発明の金属−有機骨格構造体はガス貯蔵電池に使用することができる。本明細書において「ガス貯蔵電池」または「燃料貯蔵電池」という言葉は、ガスまたは燃料を貯蔵するための構造物、容器またはアセンブリー、例えば燃料電池を含むが、これだけに限定されるものではない。本発明の1種またはそれ以上の金属−有機骨格構造体は、ガスまたは燃料を貯蔵するのに必要な機素を含むアセンブリー、容器または構造物の封入された、包囲されたまたは他の方法で加工された部材であることができる。これらの機素は開口部および出口、通路、孔、流出口および流入口および流路を含むが、これだけには限られない。ガス貯蔵電池は一般に水素の製造、水酸素燃料電池、または他の電気化学的な用途に使用することができる。
【0028】
原子団、置換基、および範囲に対する下記の特定の値は単に例示のためのものである。これらの値は他の定義された値および原子団および置換基に対する該定義された範囲内における他の値を排除するものではない。特定的に示せば、(C〜C)アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、ペンチル、3−ペンチル、またはヘキシルであることができ;(C〜C)アルケニルはビニル、アリル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルであることができ;(C〜C)アルキニルはエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、または5−ヘキシニルであることができ;(C〜C)アルカノイルはアセチル、プロパノイルまたはブタノイルであることができ;アリールはフェニル、インデニルまたはナフチルであることができる。
【0029】
本発明の一態様に従えば、金属−有機骨格構造体は金属−有機骨格構造体のキャビティーの中に入り込むかまたはこれを被覆する有機官能基(例えばC=CおよびC≡C基)、および/または金属有機基(例えばクラスター)、および/または無機基(例えばPR)を含んでいる。このような基は典型的には貯蔵ガスと反応してガスをキャビティーの中に永久的にまたは一時的に固定することができる。本発明の一具体化例においては、有機基は水素、窒素または酸素のようなガスと反応してガスをキャビティーの中に保持し、次いで例えば反応を逆転させることによりガスを放出する。本発明の他の具体化例においては、有機基はガスと反応してこのガスをキャビティーの中に永久的に固定する。一好適具体化例においては、各直線状の金属架橋基は[Cu(OCCH(HO)]であり、各有機ノードはテトラキス(4−ピリジル)シクロブタンである。他の好適な具体化例においては、各直線状の金属架橋基は[Cu(OCCH=CH(HO)],[Cu(OCC(CH)=CH(HO)],[Cu(OCC≡CH)(HO)]および[Cu(OCCHC≡CH)(HO)]から成る群から選ばれ、各有機ノードはテトラキス(4−ピリジル)シクロブタンである。他の好適な具体化例においては、各直線状の金属架橋基は[Cu(OCC(CH)=CH(HO)]であり、各有機ノードはテトラキス(4−ピリジル)シクロブタンである。
【0030】
ガスの貯蔵に使用する他に、本発明の有機基骨格構造体はまたガス状の汚染物を除去するのにも使用することができる。例えば本発明の骨格構造体は放射性のガスを捕捉し保存するために使用することができる。
【0031】
本発明の一態様においては、水素のようなガスを貯蔵し得る結晶性の固体である金属−有機骨格構造体が提供される。本発明のこの金属−有機骨格構造体は典型的には該固体がガスを捕捉し放出し得るような二つの構造的な特徴をもっている。第1に、該骨格構造体はガス分子を中に捕捉するのに適した大きさおよび形の内部キャビティーまたは細孔をもっている。このようなカプセル化系は原則として、ゼオライトのような伝統的な多孔性の結晶性の固体と同様に、一次元、二次元または三次元の方向に到達し得る(accessible)細孔をもっている。第2に、該骨格構造体のキャビティーまたは細孔は、ゼオライトとは対照的に、ガスと可逆的に反応する官能基で修飾し得る壁をもっている。このような反応は、図1に示されているように、それぞれ分子中の原子を解離させまた再会合させることによりガス(例えば水素)の貯蔵および放出を容易にすると期待される。
【0032】
本発明の骨格構造体は、水素のようなガスに対し反応性をもった低密度の貯蔵材料として金属−有機骨格構造体(MOF)を使用することにより、高圧、高密度、および表面が相容性をもたない問題を回避している。本発明の骨格構造体は金属を一次元、二次元または三次元的に架橋させている有機配位子と組み合わせて組み立てられた遷移金属イオンを含んでいる。さらに、適切な架橋を使用することにより、MOFはゼオライトと同様に典型的には非常に低い密度(例えば0.59mg/m)をもつ多孔性の構造を示すように設計してつくることができる。しかしゼオライトとは対照的に、MOFの細孔は典型的には反応性をもった金属および有機基で被覆されている。不飽和の遷移金属イオンおよび有機基(例えばC=CまたはC≡C)が水素のようなガスと反応できるために、MOFのキャビティーは典型的には水素ガスを貯蔵し放出するように設計することができる。
【0033】
本発明の骨格構造体がガス分子を捕捉し得る能力はガスの吸着の研究により決定することができる(例えばKruk,M.,Jaroniec,M.Chem.Mater.,2001,13,3169参照のこと)。
【0034】
本発明の金属−有機骨格構造体はPapaefstathiou,G.S.,MacGillivray,L.R.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2002,41,2070に記載されたのと同様な合成法を用いてつくることができる。また本発明の金属−有機骨格構造体は下記実施例に記載されたのと同様な方法でつつくることができる。また本発明によれば下記実施例に記載された合成法および中間体が提供される。
【0035】
例えば本発明によれば、式[Cu(OCR)(L)]の化合物、
但し式中Rは(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、アリール、ヒドロキシ、(C〜C)アルカノイル、またはアミノであり;LはHO、ROH、アミノ、またはピリジルであり;Rは水素、(C〜C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリール、または(C〜C)アルカノイルである、
を3個またはそれ以上の連結点を有する有機ノード(例えば1,2,3−トリス(4−ピリジル)シクロプロパン、ビス(4−ピリジル)シクロブタン、テトラキス(4−ピリジル)シクロブタン、ペンタキス(4−ピリジル)シクロペンタン、ヘキサキス(4−ピリジル)シクロヘキサン、およびヘキサキス(4−ピリジル)ベンゼン)と反応させて本発明の金属−有機骨格構造体をつくる本発明の金属−有機骨格構造体の製造法が提供される。また本発明によればこの方法によってつくられた金属−有機骨格構造体が提供される。
[実施例]
【0036】
下記実施例により本発明を例示する。これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0037】
序論
下記においてノードとして鋳型指向(L.R.MacGillivray,Cryst.Eng.Commun.2002,,1〜5; G.S.Papaefstathiou,et al.,Chem.Commun.2001,2462〜2463;L.R.MacGillivray,et al,J.Am.Chem.Soc.2000,122,7817〜7818)固相[2+2]光二量化法(G.M.J.Schmidt,Pure Appl.Chem.1971,27,647〜678)により誘導された分子(図2)を使用して上記のような多孔性のIMOFを構築する戦略を説明する。多岐に亙る多数のルイス塩基の官能基が存在するために、この固相法による生成物であるrctt−テトラキス(4−ピリジル)シクロブタン(4,4’−tpcb)(A.J.Blake,et al.,Chem.Commun.1997,1675〜1676)は、Cu−外輪型錯体[Cu(OCR)]と反応させると、4点で連結されたノードとして働き、多孔性をもった二次元のIMOFの内部でアキシャル方向に配位することによって直線状のSBUとして二金属錯体を次々に増殖させることを期待した。(拡張された骨格構造体の中の直線状の架橋としての外輪型錯体の研究については次の文献を参照のこと:B.Moulton,et al.,J.Am.Chem.Soc.2001,123,9224〜9225;F.A.Cotton,et al.,Chem.Commun.2001,ll〜12;S.R.Batten,et al.,Chem.Commun.2000,1095〜1096;H.Miyasaka,et al.,Angew.Chem.2000,112,3989〜3993;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2000,39,3831〜3835;J.L.Wesemann,M.H.Chisholm,Inorg.Chem.1997,36,3258〜3267,およびその中の引用文献:B.Moulton,M.J.Zaworotko,Chem.Rev.2001,101,1629〜1658;P.J.Hagrman,et al.,Angew.Chem.1999,111,2798〜2848;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1999,38,2638〜2684)。
【0038】
さらに平面の有機ノード(例えば4,4’−ビピリジン)(アキシャルの位置を通って架橋しているマルチトピック(multitopic)な配位子を含む外輪型錯体をベースにした二次元の骨格構造体は平面のリンカーを含んでいた(FyfeおよびStoddart,Ace.Chem.Res.1997,30,393〜401参照))とは対照的に、固相合成法から誘導された配位子はピリジル基をシクロブタン環に関して強く捩らせ、それによりピリジルは二次元の骨格構造体の平面に関して直交するように配向すると思われるため、深い内容積をもったキャビティーが生じると期待された(図3)。SBUのR基は容易に変性できる(F.A.Cotton,R.A.Walton,Multiple Bonds Between Metal Atoms,第2版;Oxford University Press:英国、Oxford,1993年発行)ので、深くなったキャビティーの壁を有機官能基で修飾する容易な手段がこれによって得られるであろう。
【0039】
実験の部:化合物・3ベンゼン
[Cu(OCCH(HO)](0.06g)および4,4’−tpcb(0.025g)をメタノール中に含む溶液(15mL)を室温においてベンゼン(25mL)を用い層にした。放置すると3週間以内で・3ベンゼンの緑色の結晶が成長し、これを濾過して75%の収率で分離した。IR(KBrペレット):υ=1630(s),1610(s),1579(sh,br),1428(s,br),1346(m),1223(m),1071(w),1022(m),835(m),682(m),527(m),565(m)cm−1・3ベンゼンに対する結晶データ:単斜晶形,C2/m,a=14.354(3),b=27.238(5),c=8.064(2)Å,β=93.56(3)°,V=3147.0(ll)Å,2θ=45°,Z=2およびR=0.037に対してMoκα放射線(λ=0.71070Å)。の加熱した試料に対する結晶データ:三斜晶形、空間群P1、a=8.002(2),b=13.956(3),c=15.409(3)Å,α=64.33(3)°,β=88.01(3)°,γ=83.39(3)°,V=1540.3(5)Å,2θ=40°,Z=1およびR=0.128に対するMoκα放射線(λ=0.71070Å)。・3ベンゼンおよびの加熱した試料は100KにおいてNonius Kappa CCDの単結晶X線回折計で測定した。すべての非水素原子の異方性を微調整した後、芳香族、メチルおよびメチンの水素を理想化された位置に配置し、それが結合している原子の上に載せることができた。・3ベンゼンおよびの加熱した試料の両方におけるシクロブタン部分は二つの位置を横切って無秩序に位置することが観測された。これに対応して、環の炭素原子はそれぞれ0.50/0.50および0.55/0.45の固定した部位占有率をもつように微調整された。・3ベンゼンの無秩序に位置したゲスト分子はベンゼンと矛盾しない方法で無秩序に位置していた。原子は炭素原子として取り扱い、等方性の熱パラメータおよび固定した部位占有率を用いて微調整した。の加熱した試料のモザイク状の性質のために、反射データを正確に積分することは困難であり、2θ>40°をもつ正確な構造を得ることはできなかった。すべての結晶学的な計算はIBMと互換性があるpentiumベースのPCを局所的に実装したSHELXL−97[28]を用いて行った。CCDC−172946(・3 ベンゼン)およびCCDC−172947()はこの論文に対する補充的な結晶学的データを含んでいる。これらのデータはww.ccdc.cam.ac.uk/conts/retrieving.html(またはCambridge Crystallographic Data Centre,12,Union Road,Cambridge,CB21EZ,UK;fax:(+44)1223−336−033;またはdeposit@ccdc.cam.ac.uk)から無償で入手できる。
【0040】
考察
[Cu(OCCH(HO)](0.06g)および4,4’−tpcb(0.025g)をメタノール中に含む溶液(15mL)を室温においてベンゼン(25mL)を用い層にした場合、約3週間で・3(ベンゼン)の緑色の結晶が成長した(収率75%)。・3(ベンゼン)の組成を単結晶X線回折法(図4)、X線粉末回折法および熱分析で確めた。
【0041】
これらの成分は集合して組み立てられ多孔性の二次元IMOFをつくる。結晶学的な反転中心の周りにそれぞれ位置した各4,4’−tpcbは4個の外輪型錯体によって取り囲まれており、各錯体は有機基単位が4点で連結された頂点としての働きをするように鏡面によって二分されている。期待されるようにピリジル環はシクロブタン環に関してほぼ直交するように捩れており(二面角:139.8°)、従ってピリジル環は二次元の骨格構造体を「厚く」している。(拡張された骨格構造体の直線状の架橋としての外輪型錯体の最近の研究については次の文献を参照されたい:B.Moulton,et al.,J.Am.Chem.Soc.2001,123,9224〜9225;F.A.Cotton,et al,Chem.Commun.2001,ll〜12;S.R.Batten,et al,Chem.Commun.2000,1095〜1096;H.Miyasaka,et al.,Angew.Chem.2000,112,3989〜3993;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2000,39,3831〜3835;J.L.Wesemann,M.H.Chisholm,Inorg.Chem.1997,36,3258〜3267およびそこに引用された文献)(アキシャルの位置を通って架橋する平面のリンカーを含んだマルチトピックな配位子を含む外輪型錯体をベースにした二次元の骨格構造体に対してはFyfeおよびStoddart,Ace.Chem.Res.,1997,30,393−401を参照のこと)。
【0042】
組み立てが行われる過程の結果として、寸法が約17.2×17.2×5.0Åで、隅の角度が約75°および105°の非常に大きな斜方形のキャビティーをもつ二次元のIMOFが生じる。4,4’−tpcbが(4,4)−骨格構造体の内部でSBUを次々と増殖させる能力のために、は直線状のビピリジンと遷移金属イオンを用いて設計されたキャビティーを含む斜方形格子および正方形格子の骨格構造体の新規反転類似体と見做すことができる(B.Moulton,M.J.Zaworotko,Chem.Rev.2001,101,1629〜1658;P.J.Hagrman,et al,Angew.Chem.1999,111,2798〜2848;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1999,38,2638〜2684)。のキャビティーは大部分の金属−(4,4’−ビピリジン)斜方形格子および正方形格子の骨格構造体(寸法約12.0×12.0Å)(B.Moulton,M.J.Zaworotko,Chem.Rev.2001,101,1629〜1658;P.J.Hagrman,et al.,Angew.Chem.1999,111,2798〜2848;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1999,38,2638〜2684)よりも大きく、長さを長くした直線状の架橋を用いて設計された金属−ビピリジン正方形格子[{Ni(4,4’−ビス(4−ピリジル)ビフェニル)(NO](寸法約20.0×20.0Å)(K.Biradha,et al.,Angew.Chem.2000,112,4001〜4003;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2000,39,3843〜3845)に優に匹敵している。
【0043】
のキャビティーは、金属−ビピリジン格子(B.Moulton,M.J.Zaworotko,Chem.Rev.2001,101,1629〜1658;P.J.Hagrman,et al.,Angew.Chem.1999,111,2798〜2848;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1999,38,2638〜2684)とは異なり、先が細くなった有機官能基で修飾され、配位子が各キャビティーをさらに分割して3個の小部屋になるように4個のメチル基が斜方形のキャビティーの中に入り込んでいる(図5)。寸法が約20.0×9.5×5.0Åの大きな矩形の箱を規定している最大の小部屋は隅の角度が鈍角の対角線に沿って走り、1個の規則tekini配向したベンゼンゲストおよび2個の無秩序な配向をもつベンゼンゲストによって占められている。約7.0×7.0×5.0Åの寸法の中程度の大きさの正方形の箱を規定する2個のそれよりも小さい小部屋は残りの隅に位置し、各キャビティーの上方および下方に向かった隣接した格子のメチル基によって充填されている。(透視図に対してこの小さい正方形のキャビティーは大きさがFe(ピラジン)(NCS)のキャビティーと同等である;J.A.Real,et al.,Inorg.Chem.1991,30,2701〜2704参照)。図6に示されているように、メチル基が包含されている結果(図6a)結晶学的なc−軸に沿って格子が斜めに傾いて積み重なり(層間の間隔5.7Å)、これによってMCM−41(Selvam, et al.,Ind.Eng.Chem.Res.2001,40,3237−3261)(MCMは後合成グラフト化により有機基で容易に官能化される:M.H.Lim,et al.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,4090−4091参照)と同様に、約12×10Åの寸法の分離されたID通路をもつ多孔性の三次元MOFを生じる(図6b)。通路は規則的な(1キャビティー当たり1個)および無秩序な(1キャビティー当たり2個)ベンゼン溶媒の分子で占められ、これらの分子は縁と面とが結合し(図6c)、単位格子の容積の約40%を占めている(P.van der Sluis,A.L.Spek,Acta.Crystallogr.,Sect.A 1990,A46,194〜201)。従ってSBUの有機官能基は層を被覆する際メチル基を「釘(peg)」として使い、通路をつくるるように予め格子を加工する。我々の知る限り、MOFの内部におけるこのような分子の区分け(compartmentalization)は今まで実現されていない(分子の小部屋を示す金属−有機性の籠型構造については次の文献を参照されたい:P.N.W.Baxter,et al.,Angew.Chem.1993,105,92〜95;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1993,32,89〜90;P.N.W.Baxter,et al.,Chem.Eur.J.1999,,102〜112。分子の区画を示す有機性の籠型構造についてはD.M.Rudkevich,et al.,J.Org.Chem.1995,60,6585〜6587を参照のこと)。
【0044】
熱重力分析法(TGA)および示差走査型熱量測定分析法(DSC)はX線粉末回折法および光学顕微鏡法と共に、の構造が27〜180℃の間で保持されることを示唆している。この温度変化の間、ゲストは27℃(2個のゲスト)および75℃(1個のゲスト)において2回遊離して質量の損失が生じる。これはそれぞれ無秩序なゲストおよび規則性をもったゲストによるものとすることができる(D.Venkataraman,et al.,J.Am.Chem.Soc.1995,117,11600〜11601)。このことに対してはDSCおよび光学顕微鏡は相変化の証拠を示さない。さらに、温度の上昇と共に回折ピークの幅の広がりが観測されるが、ゲストを除去した後の試料に対して行われた単結晶のX線分析の結果はの構造を確認しており、この骨格構造が有機成分の大きな熱運動を除いては実質的にゲストが充填されたと同じであることを示している(の加熱した試料の斜方形のキャビティーは寸法が17.1×17.1×5.0Åであり、隅の角度は約72°および180°である。キャビティーの形が僅かに歪むと単位格子の高い対称性が低下して三斜晶形になる)。実際はゲストの除去に対して安定な単結晶をもつMOFの稀な例である(D.Venkataraman,et al.,J.Am.Chem.Soc.1995,117,11600〜11601;C.J.Kepert,M.J.Rosseinsky,Chem.Commun.1999,375〜376;K.Biradha,et al.,Angew.Chem.2000;112,4001−4003;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2000,39,3843〜3845)。予備的な結果によれば、ベンゼンの再導入はをほぼ純粋なベンゼンの中に入れ、溶媒を約70℃に加熱することにより達成されることが示されている。注目すべきことは、ゲストの取り込みにより回折ピークの幅がさらに広くなるが、このことは有機基がさらに無秩序になるためであるとすることができる。ゲストの再導入によりピークの幅がさらに広くなることはの単結晶の構造の決定を不可能にしている。180℃より高い温度に加熱すると、この固体は分解する。
【実施例2】
【0045】
化合物 ・2ベンゼン
実施例1に記載したのと同様な方法を用いたが、そこで使用した[Cu(OCCH(HO)]の代りに[Cu(OCC(CH)=CH(HO)]を用い、本発明の骨格構造体(化合物・2ベンゼン)をつくった。この骨格構造体をX線結晶解析法で特性付け、約17.2×17.2×5.0Åのキャビティーをもち、このキャビティーの中に不飽和のアクリレート結合が入り込んでいることが見出だされた。
【0046】
有機官能基でキャビティーを分子上で修飾し得る多孔性のMOF構造をつくるための戦略を次に説明する。内部の被覆は直線状のSBUの先が細くなった末端配位子および鋳型指向固相有機合成法の生成物を使用して達成される(A.R.Renslo,J.Rebek,Jr.,Angew.Chem.2000,112,3419〜3421;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2000,39,3281〜3283;K.Choi,A.D.Hamilton,J.Am.Chem.Soc.2001,123,2456〜2457;M.Eddoudi,et al.,Ace.Chem.Res.2001,34,319〜330;L.R.MacGillivray,Cryst.Eng,Commun.2002,,1〜5;G.S.Papaefstathiou,et al.,Chem.Commun.2001,2462〜2463;L.R.MacGillivray,et al.,J.Am.Chem.Soc.2000,122,7817〜7818参照のこと)。
【0047】
現在の場合には、有機官能基が二次元の多孔性のIMOFの斜方形のキャビティーを区分けし、三次元のナノメーター尺度の多孔性をもった固体が生じるように予め骨格構造体を加工して組み立てる(分子の小部屋を示す金属−有機基の籠型の構造に対しては次の文献を参照のこと;P.N.W.Baxter,et al.,Angew.Chem.1993,105,92〜95;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1993,32,89〜90;P.N.W.Baxter,et al.,Chem.Eur.J.1999,,102〜112;分子の小部屋を示す有機基の籠型の構造に対してはD.M.Rudkevich,et al.,J.Org.Chem.1995,60,6585〜6587を参照されたい)。鋳型指向固相有機合成法(L.R.MacGillivray,Cryst.Eng.Commun.2002,7,1−5;G.S.Papaefstathiou,et al.,Chem.Commun.2001,2462〜2463;L.R.MacGillivray,et al.,J.Am.Chem.Soc.2000,122,7817〜7818;G.M.J.Schmidt,Pure Appl.Chem.1971,27,647−678)でノードが得られたこともまた、溶液中においてあまり行われないかまたは完全に行われなかったMOFへの到達(の場合におけるような到達)がこの場合には容易に実現できることをを示唆している。(このような固体状態での反応性は潜在的な化学的挙動と呼ばれている。E.Cheung,et al.,Chem.Commun.2000,2309〜2310参照)。
【0048】
上記のすべての刊行物、特許および特許文献は、G.S.Papaefstathiou,L.R.MacGillivray,Angew.Chem.Int.Ed.,2002,41,2070〜2073を含め、それぞれが個別的に参照されているが、すべて参照文献として本発明に包含される。上記においては本発明を多くの特定の且つ好適な具体化例および方法を参照して説明した。しかし多くの変形および変更は本発明の精神および範囲内において行い得ることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】分子中の原子の解離および再結合によりガス(例えば水素)を貯蔵および放出する図。
【図2】(a)骨格構造体の模式図。(b)金属および無機成分を含む設計戦略。(c)下記の実施例1においてつくられた本発明の永久的な多孔性の骨格構造体[Cu(4,4−tpcb)(COCHに対する、固体の細孔(大きさ10Å)の中に入り込んだX線結晶構造(即ち−CH基)の空間充填表示。
【図3】二次元の骨格構造体の面に垂直なピリジル基の配向(空間充填表示)。
【図4】のORTEP透視図。選ばれた原子間距離は[Å];Cul−Nl 2.148(3),Cul−Ol 1.971(3),Cul−O2 1.980(3),Cul−O3 1.968(2),Cul−O4 1.965(2),Cul−Cula 2.600(1)。
【図5】の斜方形のキャビティーの空間充填表示による図。キャビティーはSBUから分岐する有機官能基によって小分割され、1個の矩形の小部屋および2個の正方形の小部屋をつくっている。
【図6】ID通路をつくり、ゲストの包含を可能にするの格子の積み重なりを例示する空間充填表示による図。(a)正方形の小部屋の内部にメチル基を包含する、即ち「釘留めする」様子を示す2個の格子の積み重なり(明瞭に示すために水素原子は省略されている)。(b)もっと大きな小部屋から生じるIDの楕円状の通路。(c)規則的なおよび無秩序なベンゼンのゲスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二官能性の金属架橋基および3個またはそれ以上の連結点を有する有機ノードを含んで成る金属−有機骨格構造体であって、該骨格構造体は1種またはそれ以上の貯蔵ガス分子を包含するのに適した1個またはそれ以上のキャビティーをもっていることを特徴とする金属−有機骨格構造体。
【請求項2】
各金属架橋基は二つの部位で有機ノードに連結していることを特徴とする請求項1記載の金属−有機骨格構造体。
【請求項3】
各金属架橋基は直線状であることを特徴とする請求項1記載の金属−有機骨格構造体。
【請求項4】
各金属架橋基は第1列の遷移金属を含んで成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項5】
各金属架橋基は銅を含んで成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項6】
各金属架橋基は外輪型の錯体であることを特徴とする請求項1記載の金属−有機骨格構造体。
【請求項7】
各金属架橋基は式[Cu(OCR)(L)]の化合物であり、ここでRは(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、アリール、ヒドロキシ、(C〜C)アルカノイルまたはアミノであり;LはHO、ROH、アミノまたはピリジルであり;Rは水素、(C〜C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、アリールまたは(C〜C)アルカノイルであることを特徴とする請求項1記載の金属−有機骨格構造体。
【請求項8】
各金属架橋基は[Cu(OCCH(HO)]、[Cu(OCCH=CH(HO)]、[Cu(OCC(CH)=CH(HO)] [Cu(OCC≡CH)(HO)]および[Cu(OCCHC≡CH)(HO)]から成る群から独立に選ばれるがことを特徴とする請求項1記載の金属−有機骨格構造体。
【請求項9】
各有機ノードは平面でないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項10】
各有機ノードは3個の連結点をもっていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項11】
各有機ノードは少なくとも4個の連結点をもっていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項12】
各有機ノードは4個の連結点をもっていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項13】
各有機ノードは1,2,3−トリス(4−ピリジル)シクロプロパン、ビス(4−ピリジル)シクロブタン、テトラキス(4−ピリジル)シクロブタン、ペンタキス(4−ピリジル)シクロペンタン、ヘキサキス(4−ピリジル)シクロヘキサン、またはヘキサキス(4−ピリジル)ベンゼンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項14】
各有機ノードはテトラキス(4−ピリジル)シクロブタンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項15】
各キャビティーの容積は約20〜約2000立方Åであることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項16】
各キャビティーの容積は約50〜約1000立方Åであることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項17】
金属−有機骨格構造体のキャビティーの中に入り込んだまたはそれを被覆した有機官能基を含んでいることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項18】
該有機基は炭素−炭素間の二重結合または三重結合を含んで成ることを特徴とする請求項17記載の金属−有機骨格構造体。
【請求項19】
該有機基は貯蔵ガスと反応してガスをキャビティーの内部に一時的に固定し得ることを特徴とする請求項17記載の金属−有機骨格構造体。
【請求項20】
該有機基は貯蔵ガスと反応してガスをキャビティーの内部に永久的に固定し得ることを特徴とする請求項17記載の金属−有機骨格構造体。
【請求項21】
貯蔵ガスと反応してガスをキャビティーの中に固定し得る、キャビティーを被覆している金属を含んでいることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項22】
貯蔵ガスと反応してガスをキャビティーの中に永久的に固定し得る、キャビティーを被覆している金属−有機基および/または無機基を含んでいることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項23】
各直線状の金属架橋基は式[Cu(OCCH(HO)]であり、各有機ノードはテトラキス(4−ピリジル)シクロブタンであることを特徴とする請求項1記載の金属−有機骨格構造体。
【請求項24】
各直線状の金属架橋基は[Cu(OCCH=CH(HO)]、[Cu(OCC(CH)=CH(HO)]、[Cu(OCC≡CH)(HO)]および[Cu(OCCHC≡CH)(HO)]から成る群から選ばれ,各有機ノードはテトラキス(4−ピリジル)シクロブタンであることを特徴とする請求項1記載の金属−有機骨格構造体。
【請求項25】
各直線状の金属架橋基は[Cu(OCC(CH)=CH(HO)]であり,各有機ノードはテトラキス(4−ピリジル)シクロブタンであることを特徴とする請求項1記載の金属−有機骨格構造体。
【請求項26】
貯蔵ガスは単原子ガスであることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項27】
貯蔵ガスは二原子ガスであることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項28】
貯蔵ガスは多原子ガスであることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項29】
貯蔵ガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンまたはラドンであることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項30】
貯蔵ガスは水素、酸素または窒素であることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項31】
貯蔵ガスは水素であることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項32】
貯蔵ガスはメタン、エタン、プロパン、ブタンまたは関連したハロゲン化炭素であることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項33】
貯蔵ガスは放射性ガスであることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体を含んで成ることを特徴とするガス貯蔵電池。
【請求項35】
請求項1〜33のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体を含んで成ることを特徴とする燃料貯蔵電池。
【請求項36】
ガスが骨格構造体のキャビティーの中に入って貯蔵されるのに適した条件下において、請求項1〜33のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体をガスと接触させることを特徴とするガスを貯蔵する方法。
【請求項37】
ガスが骨格構造体のキャビティーの中に入り有機基と反応して有機基に固定されるのに適した条件下において、請求項17〜20のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体をガスと接触させることを特徴とするガスを貯蔵する方法。
【請求項38】
金属の架橋基および3個またはそれ以上の連結点をもった有機ノードを適当な溶媒の中で反応させ、金属−有機骨格構造体をつくることを特徴とする請求項1〜33のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体を製造する方法。
【請求項39】
二官能性の金属の架橋基および3個またはそれ以上の連結点を有する有機ノードを含んで成る金属−有機骨格構造体であって、該骨格構造体は1種またはそれ以上の貯蔵ガス分子を包含するのに適した1個またはそれ以上のキャビティーをもっており、
各金属架橋基は銅を含んで成り、
各有機ノードは1,2,3−トリス(4−ピリジル)シクロプロパン、ビス(4−ピリジル)シクロブタン、テトラキス(4−ピリジル)シクロブタン、ペンタキス(4−ピリジル)シクロペンタン、ヘキサキス(4−ピリジル)シクロヘキサン、またはヘキサキス(4−ピリジル)ベンゼンであり、
各キャビティーの容積は約20〜約2000立方Åであることを特徴とする金属−有機骨格構造体。
【請求項40】
金属−有機骨格構造体のキャビティーの中に入り込んだまたはそれを被覆した有機官能基を含み、該有機基は貯蔵ガスと反応してキャビティーの内部にガスを永久的に固定することを特徴とする請求項39の金属−有機骨格構造体。
【請求項41】
貯蔵ガスはヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンまたはラドンであることを特徴とする請求項39〜40のいずれか一つに記載された金属−有機骨格構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図6c】
image rotate


【公表番号】特表2006−503104(P2006−503104A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549914(P2004−549914)
【出願日】平成15年6月19日(2003.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/019304
【国際公開番号】WO2004/042270
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
PENTIUM
【出願人】(304030305)ユニバーシテイ・オブ・アイオワ・リサーチ・フアウンデーシヨン (3)
【Fターム(参考)】