説明

ガス遮断器

【課題】再閉路動作時でも、小さな駆動力で大電流遮断を実施できる、優れた遮断性能を有するガス遮断器を提供する。
【解決手段】自力室11と機械圧縮室12とを仕切る連結板10に形成された連通穴13に設置された逆止弁14の内径側に、この逆止弁14の内径側端部が当接する封止壁20を形成する。自力室11内の圧力上昇が機械圧縮室12の圧力上昇よりも低下して逆止弁14が開放される際には、その内径側端部が封止壁20の表面と接触しながら、図中上方に移動するように構成する。これにより、連通穴13から逆止弁14を介して自力室11内に供給される消弧性ガス1の流路を、逆止弁14の外径方向へ導くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電系統や配電系統を保護するために、線路の地絡故障や線間短絡故障などによる電流を遮断するガス遮断器に係わり、特に、再閉路動作による遮断性能の向上を図るべく消弧室の構成に改良を施したガス遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統において電流開閉を行うガス遮断器は、現在パッファ形と呼ばれるタイプが広く普及している。特に近年では、電流遮断する際に必要な駆動力を低減することが可能な直列パッファ形とよばれる方式が知られている。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
図3は、従来から用いられている直列パッファ形ガス遮断器の内部構造を示した断面図であり、中心線より左側が開極途中の状態、右側が開極後の状態を示したものである。なお、この直列パッファ形ガス遮断器の全体構造は、中心線を回転軸とした回転対称形状となっている。
【0004】
すなわち、従来から用いられている直列パッファ形ガス遮断器においては、図3に示すように、消弧性ガス1が充填された図示していない容器内に、対向アーク接点2及び対向通電接点3が、可動アーク接点4及び可動通電接点5と同心軸上に向かい合って配置されている。なお、消弧性ガス1としては、アーク遮断性能(消弧性能)及び電気絶縁性能ともに優れたSF6ガスが使用されることが通常であるが、その他の媒体も用いられている。
【0005】
本図では図示されていないが、閉極状態においては、対向側及び可動側の接点は接触状態にあり、電流通電が行なわれる。一方、電流を遮断する必要が生じた際には、図3の左側に示した開極途中から可動アーク接点4及び可動通電接点5は、中空状の駆動ロッド6により図において下方向に駆動され、対向アーク接点2と可動アーク接点4の間にアーク放電7が発生するように構成されている。なお、図3に示すように対向側の接点が固定されているもののほか、可動側の接点の動きに相対して動作するように構成されているものもある。
【0006】
このような開極動作に伴い、後述するメカニズムにより、消弧性ガス1が絶縁ノズル8により整流されてアーク放電7に対して強力に吹付けられ、これによりアーク放電7はその導電性を失い、電流は遮断される。一般に高い電流遮断性能を得るためには、高い吹きつけ圧力及び豊富な消弧性ガス流量が必要である。
【0007】
次に、開極動作においてアーク放電7に消弧性ガス1が吹付けられるメカニズムについて説明する。前述の可動アーク接点4、可動通電接点5、絶縁ノズル8、及びパッファシリンダ9は一体構造となっており、それらは前述の駆動ロッド6と共に同時に駆動されるように構成されている。また、パッファシリンダ9と駆動ロッド6に囲まれた空間は、中心軸に垂直に配置された連結板10により、アーク放電側の自力室11とそれとは反対側の機械圧縮室12とに仕切られている。
【0008】
前記機械圧縮室12は、連結板10と常に静止状態にあるパッファピストン15とに囲まれて形成されている。この連結板10には連通穴13と、それに付随する逆止弁14が設けられており、機械圧縮室12の圧力が自力室11の圧力よりも高い場合には、逆止弁14が開放状態となり、機械圧縮室12から自力室11に消弧性ガス1が流入されるように構成されている。また、逆に自力室11の圧力が機械圧縮室12の圧力よりも高い場合には、逆止弁14が閉止状態となり、自力室11の圧力の影響が機械圧縮室12へと及ばないように構成されている。
【0009】
また、パッファピストン15には、排気穴16と機械圧縮室吸気穴17が設けられており、前記排気穴16には放圧弁18が、また機械圧縮室吸気穴17には機械圧縮室吸気弁19が設置されている。そして、開極動作により連結板10が図中下方に移動し、機械圧縮室12の圧力がある設定値以上にまで上昇すると、前記放圧弁18の作用により、機械圧縮室12の内部の消弧性ガス1を放出し、機械圧縮室12の過剰な圧力上昇を抑えられるように構成されている。
【0010】
反対に、開極状態から閉極状態へと動作する際などに機械圧縮室12の圧力が消弧性ガス1の充填圧力よりも低くなる場合には、前記機械圧縮室吸気弁19の作用により、機械圧縮室12に消弧性ガス1が吸い込まれてガスを補充するように構成されている。
【0011】
このように構成された直列パッファ形ガス遮断器において大電流を遮断する際の動作について説明する。すなわち、大電流遮断時においてアーク放電7は非常に高温となるため、周囲の消弧性ガス1の温度を著しく上昇させる。この作用により自力室11の圧力は著しく上昇し、アーク放電7を消弧せしめるに十分な圧力を得ることができる。
【0012】
パッファピストン15に作用する圧力、すなわち機械圧縮室12の圧力は、開極駆動する際の駆動反力として作用するが、自力室11の高い圧力は逆止弁14の作用により機械圧縮室12へ及ばないため、駆動反力に影響しない。機械圧縮室12においては、パッファピストン15による圧縮動作により圧力が上昇するが、放圧弁18の作用により、ある設定値以上にまでは上昇することはない。
【0013】
以上の通り、大電流遮断時においては、アーク放電7の加熱作用により自力室11の圧力は遮断に十分な圧力にまで上昇し、且つ、逆止弁14及び放圧弁18の作用により機械圧縮室12の過剰な圧力上昇を回避できるため、小さな駆動力で大電流遮断を行うことが可能である。
【0014】
また、中小電流を遮断する際の動作では、アーク放電7の加熱作用は小さいため、その作用のみによる自力室11の十分な圧力上昇は期待できない。このような場合には、パッファピストン15の圧縮作用により機械圧縮室12の圧力の方が自力室11の圧力よりも相対的に高くなるために逆止弁14が開き、機械圧縮室12から連通穴13を介して自力室11にガスが流れ込み、電流遮断に必要な圧力と消弧性ガスの流量を確保することができる。
【0015】
上述したような大電流遮断時の閉極状態から開極状態へのストロークカーブを図4に、本直列パッファ形ガス遮断器の大電流遮断時の自力室圧力と機械圧縮室圧力曲線を図5に示した。
【0016】
図5に示すように、自力室11の圧力は、アーク放電7の加熱作用が大きく影響するため、交流電流波高値付近で最大圧力となる。一方、機械圧縮室12の圧力は、駆動する連結板10と固定されたパッファピストン15とで形成された空間の機械的な圧縮作用により上昇するが、逆止弁14が閉じていて自力室11へ消弧性ガスを供給しない場合には、パッファピストン15に配置された動作圧力を設定してある放圧弁18により、機械圧縮室12の過剰な圧力上昇を抑制することができる。
【0017】
以上の通り、直列パッファ形ガス遮断器においては、大電流を遮断する際は、アーク放電7による加熱作用を利用した自力室11の圧力上昇を主に利用して電流遮断を行い、中小電流を遮断する際には、アーク放電7による加熱作用に加えて、パッファピストン15の圧縮作用により機械圧縮室12から消弧性ガス1を供給して電流遮断を行う。これにより、パッファピストン15へ作用する過剰な圧力を抑制することができ、小さな駆動力で電流遮断を行なうことができる。
【特許文献1】米国特許第4139734号
【特許文献2】ヨーロッパ特許第0035581号
【特許文献3】特公平7−109744号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
一般にガス遮断器においては、系統の早急な復旧のために再閉路動作(開極→閉極→開極)を行うことが標準動作責務として要求されているが、従来の直列パッファ形ガス遮断器においては、遮断動作に必要となる駆動力を低減することは可能であるものの、高速再閉路動作のような連続動作で大電流を遮断する際に、優れた遮断性能が得られないという問題点があった。
【0019】
すなわち、従来の直列パッファ形ガス遮断器においては、アーク放電7による加熱作用を利用して自力室11の圧力を効果的に上昇させるため、アーク放電7により加熱された高温ガスを、絶縁ノズル8を通じて自力室11に導く。この時、自力室11に導かれた高温ガスと自力室11内に元々存在していた低温ガスの混合状態が不均一になると、大電流遮断直後では高温・低密度のガスが自力室11内に留まることとなる。
【0020】
また、遮断動作完了後の再閉路動作では、機械圧縮室12の容積が増加し、機械圧縮室12内部のガス圧力は負圧となる。このため、自力室11と機械圧縮室12とを仕切る連結板10に形成された連通穴13に設置された逆止弁14は閉じたままの状態となる。
【0021】
そのため、連続遮断動作の間の閉路動作中に自力室11に消弧性ガス1を供給する手段がなく、高速再閉路動作中の自力室11への外部からの消弧性ガス1の供給は、1回目の電流遮断動作の後半、または動作終了後と2回目の電流遮断動作時のアーク放電7が開始されるまでの短い時間領域において、自力室11内の圧力上昇が機械圧縮室12の圧力上昇よりも低下して、逆止弁14が開放した時にのみ行なわれる。
【0022】
この短い時間領域に機械圧縮室12から自力室11に供給される消弧性ガス1は、図3の右側に示すように、逆止弁14の内径側と外径側でほぼ同じ流量で自力室11内に供給されるため、ガス容積の大きい自力室11の外径方向に停滞している高温・低密度のガスを効果的に撹拌することは困難であった。
【0023】
また、このような高温・低密度のガスが停滞した状態で故障継続による再閉路動作を連続して実施した場合、次の遮断動作時の遮断性能が低下するため、必ずしも優れた遮断性能が得られないといった問題点があった。
【0024】
このように、従来の直列パッファ形ガス遮断器においては、高速再閉路動作後の電流遮断までに自力室11内部の消弧性ガスを均一に混合し、密度を回復することができないといった問題点があった。
【0025】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解消するために提案されたものであって、その目的は、再閉路動作時でも、小さな駆動力で大電流遮断を実施できる、優れた遮断性能を有するガス遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、消弧性ガスが充填された密閉容器内に、対向アーク接点及び対向通電接点が、可動アーク接点及び可動通電接点と同心軸上に向かい合って配置され、閉極状態においては、これら対向側接点及び可動側接点は互いに接触状態にあって電流通電が行なわれるように構成され、前記可動アーク接点及び可動通電接点は、駆動ロッドにより軸方向に駆動され、前記可動側接点及び対向側接点の開離時には、可動アーク接点と対向アーク接点の間にアーク放電が発生し得るように構成され、前記アーク放電に対して、このアーク放電を囲むように配置された絶縁ノズルにより前記消弧性ガスが吹付けられるように構成されたガス遮断器であって、前記アーク放電に対して前記消弧性ガスを吹付けるための蓄圧手段を有し、前記蓄圧手段は、前記可動側接点と一体となって駆動するパッファシリンダと、常に静止状態にあるパッファピストンとから構成され、前記パッファシリンダの内部は、中心軸に対して垂直に配置された連結板により、前記アーク放電側の自力室と、それとは反対側の機械圧縮室とに仕切られ、前記機械圧縮室は、前記連結板及び前記パッファピストンにより挟まれた空間として形成され、前記連結板には、前記自力室と前記機械圧縮室とを連通する連通穴と、それに付随する逆止弁が設けられ、前記逆止弁は、前記自力室から前記機械圧縮室へのガスの流れを制約し、前記自力室の圧力が前記機械圧縮室の圧力よりも低い場合にのみその圧力差により開放されるように構成されたガス遮断器において、前記逆止弁が開放された場合に、前記機械圧縮室から前記自力室へのガス流路が、前記自力室の外径方向となるように構成されていることを特徴とするものである。
【0027】
請求項2は、機械圧縮室から自力室へのガス流路が自力室の外径方向となるように構成する具体的な手段を規定したものであって、前記逆止弁の内径側に、この逆止弁の内径側端部が当接する壁面を形成し、前記逆止弁が開放される際には、その内径側端部が前記壁面と接触しながら移動するように構成したことを特徴とするものである。
【0028】
請求項3は、機械圧縮室から自力室へのガス流路が自力室の外径方向となるように構成する具体的な手段を規定したものであって、前記連通穴が、所定の角度の傾斜をつけた傾斜型連通穴とされていることを特徴とするものである。
【0029】
上記のような構成を有する請求項1〜請求項3の発明によれば、遮断動作後半または遮断動作終了直後と次の遮断動作開始直後に、機械圧縮室から自力室内へ供給される低温・高密度状態の消弧性ガスを、ガス容積の大きな自力室の外径方向に導くことができるので、自力室内に停滞した高温・低密度のガスを低温ガスと均一に混合することができる。これにより、再閉路動作時における遮断性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、再閉路動作時でも、小さな駆動力で大電流遮断を実施できる、優れた遮断性能を有するガス遮断器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係るガス遮断器の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
(1)第1実施形態
(1−1)構成
本実施形態においては、自力室11と機械圧縮室12とを仕切る連結板10に形成された連通穴13に設置された逆止弁14の内径側に、この逆止弁14の内径側端部が当接する封止壁20が形成されている。そして、上述したように、自力室11内の圧力上昇が機械圧縮室12の圧力上昇よりも低下して前記逆止弁14が開放される際には、その内径側端部が封止壁20の表面と接触しながら、図中上方に移動するように構成されている。これにより、連通穴13から前記逆止弁14を介して前記自力室11内に供給される消弧性ガス1の流路を、逆止弁14の外径方向へ導くことができるように構成されている。
【0033】
なお、前記逆止弁14は、前記自力室11から前記機械圧縮室12へのガスの流れは常に制約し、前記自力室11の圧力が前記機械圧縮室12の圧力よりも低い場合にのみその圧力差により開放されるように構成されている。その他の構成は、図3に示した従来の直列パッファ形ガス遮断器と同様であるので、説明は省略する。
【0034】
(1−2)作用
上記のような構成を有する本実施形態のガス遮断器が遮断動作を開始すると、駆動ロッド6が図中下方に移動し、この駆動ロッド6に連結されたパッファシリンダ9が移動することにより、固定されているパッファピストン15とパッファシリンダ9とが相対移動することにより、機械圧縮室12が圧縮され、内部の消弧性ガス1の圧力が上昇する。
【0035】
一方、対向アーク接点2と可動アーク接点4が開極すると、両接点間に発生するアーク放電7の加熱作用によりアーク空間は高温・高圧の状態となり、自力室11に高温・高圧のガスが取り込まれる。これにより自力室11は著しく昇圧し、自力室11と機械圧縮室12の間に差圧が発生すると、逆止弁14には後方への力が作用して動作し、連通穴13は閉じた状態となる。さらに、電流零点に達すると、アーク放電7は減衰し、残留アークプラズマ状態となってアーク空間の圧力、密度及び温度が減少する。
【0036】
これにより、絶縁ノズル8のスロート部は十分に開口し、可動アーク接点4と絶縁ノズル8との間のガス流路から対向アーク接点2に向かって流れるガス流と、可動アーク接点4の中空部から駆動ロッド6内部を通じて開口部に向かって流れるガス流の2方向のガス流が発生し、相乗的に強力に冷却されて消弧され、電流遮断が達成される。
【0037】
この時、自力室11内部のガス圧力は低下し、自力室11の内部に高温・低密度のガスが留まることになる。また、アークによる加熱作用により高温化したガスが絶縁ノズル8を通して自力室11内に供給された時に、自力室11内に元々存在していた低温ガスとの混合が不均一な場合には、高温・低密度のガスが低温のガスを自力室11から押し出し、絶縁ノズル8の流路から離れた、ガス流があまり発生しない自力室の外径方向に高温・低密度のガスが停滞する可能性がある。
【0038】
このような状態においても、本実施形態のガス遮断器では、自力室11内の連結板10に形成された連通穴13に設置された逆止弁14の内径側に封止壁20が形成されているため、(逆止弁外径側のガス流路断面積)≫(逆止弁内径側のガス流路断面積)の関係にすることができる。その結果、連通穴13を通して機械圧縮室12から自力室11に供給される低温・高密度状態の消弧性ガス1を、自力室11の外径方向に導くことができるので、自力室11の外径方向に停滞している高温・低密度のガスを撹拌して、自力室11内部の密度を効果的に均一にすることができる。
【0039】
(1−3)効果
上記の構成とすることにより、直列パッファ方式ガス遮断器の特徴である低駆動力を維持しつつ、電流遮断後の自力室内の消弧性ガスの密度の不均一をなくし、低温・高密度な状態に回復させて、再閉路動作における遮断性能の低下を防止したガス遮断器を提供することができる。
【0040】
(2)第2実施形態
(2−1)構成
本実施形態においては、自力室11と機械圧縮室12を仕切る連結板10に形成される連通穴が、機械圧縮室12から自力室11へのガス流路を、自力室11の外径方向に導くことができるように、所定の角度の傾斜をつけた傾斜型連通穴21とされている。その他の構成は、図3に示した従来の直列パッファ形ガス遮断器と同様であるので、説明は省略する。
【0041】
なお、前記傾斜型連通穴21の傾斜角度は、中心軸方向を角度0°として時計周りで角度を設定した場合、20°〜65°が望ましい。20°以下であると、ガスが外径側に導かれる効果が少なく、65°以上であると、穴の加工が難しく、且つ、通過する際のガスの抵抗が大きくなり、流れがスムースでなくなるためである。
【0042】
(2−2)作用
上記のような構成を有する本実施形態のガス遮断器は、以下のように作用する。すなわち、ガス遮断器が遮断動作を開始した直後と、遮断動作後半または遮断動作後に、自力室11内の圧力上昇が低下し、機械圧縮室12内の圧力上昇値が上回ると、逆止弁14が動作して機械圧縮室12から自力室11内部への消弧性ガス1の供給が開始される。
【0043】
この場合、本実施形態においては、自力室11と機械圧縮室12間を仕切る連結板10に形成される連通穴が、自力室11の外径方向に傾斜した傾斜型連通穴21とされているため、逆止弁14が開放された状態では、逆止弁14にガス流路を妨げられることなく、傾斜型連通穴21を通して自力室11の外径方向に低温・高密度の消弧性ガス1を供給することができる。その結果、自力室11の外径方向に停滞している高温・低密度のガスを撹拌して、自力室11内部の密度を効果的に均一にすることができる。
【0044】
(2−3)効果
上記の構成とすることにより、直列パッファ方式ガス遮断器の特徴である低駆動力を維持しつつ、電流遮断後の自力室内の消弧性ガスの密度の不均一をなくし、低温・高密度な状態に回復させて、再閉路動作における遮断性能の低下を防止したガス遮断器を提供することができる。
【0045】
(3)他の実施形態
本発明は、上述したような実施形態に限定されるものではなく、大電流遮断後に自力室11内の消弧性ガス1を高温・低密度状態から回復させるために、機械圧縮室12から自力室11内部へ供給される消弧性ガス1を自力室11の外径方向に供給することができるように逆止弁14のガス流路を形成するものであれば、各部材の構成は適宜変更可能である。
【0046】
また、上述したようなガス遮断器においては、従来から、消弧性ガスとして、優れた消弧性能及び電気絶縁性能を有するSF6ガスが使用されているが、SF6ガスは二酸化炭素ガスの23、900倍の地球温暖化効果を有するといわれており、その使用を避けることが望ましい。
【0047】
しかしながら、環境への影響が小さいガス、具体的にはSF6ガスよりも地球温暖化係数の小さい空気、窒素、二酸化炭素などを代替として使用すると、消弧性能及び電気絶縁性能がSF6ガスよりも劣るため、再閉路動作のような連続動作で大電流を遮断する際に、遮断性能が低下する可能性がある。
【0048】
この場合、上述したような各実施形態のガス遮断器を適用することにより、自力室11内に停滞している高温・低密度のガスを、機械圧縮室12から供給される低温のガスにより撹拌する効果が上がり、自力室11内のガスを低温・高密度に回復させることができるため、SF6ガスよりも地球温暖化係数の小さいガスを使用した場合であっても、再閉路動作による遮断性能の低下を防止することができ、且つ地球温暖化への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るガス遮断器の第1実施形態の構成を示す断面図。
【図2】本発明に係るガス遮断器の第2実施形態の構成を示す断面図。
【図3】従来の直列パッファ形ガス遮断器の構成を示す断面図。
【図4】直列パッファ形ガス遮断器の閉極から開極へのストローク曲線。
【図5】直列パッファ形ガス遮断器の圧力曲線。
【符号の説明】
【0050】
1…消弧性ガス
2…対向アーク接点
3…対向通電接点
4…可動アーク接点
5…可動通電接点
6…駆動ロッド
7…アーク放電
8…絶縁ノズル
9…パッファシリンダ
10…連結板
11…自力室
12…機械圧縮室
13…連通穴
14…逆止弁
15…パッファピストン
16…排気穴
17…機械圧縮室吸気穴
18…放圧弁
19…機械圧縮室吸気弁
20…封止壁
21…傾斜型連通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消弧性ガスが充填された密閉容器内に、対向アーク接点及び対向通電接点が、可動アーク接点及び可動通電接点と同心軸上に向かい合って配置され、
閉極状態においては、これら対向側接点及び可動側接点は互いに接触状態にあって電流通電が行なわれるように構成され、
前記可動アーク接点及び可動通電接点は、駆動ロッドにより軸方向に駆動され、前記可動側接点及び対向側接点の開離時には、可動アーク接点と対向アーク接点の間にアーク放電が発生し得るように構成され、
前記アーク放電に対して、このアーク放電を囲むように配置された絶縁ノズルにより前記消弧性ガスが吹付けられるように構成されたガス遮断器であって、
前記アーク放電に対して前記消弧性ガスを吹付けるための蓄圧手段を有し、
前記蓄圧手段は、前記可動側接点と一体となって駆動するパッファシリンダと、常に静止状態にあるパッファピストンとから構成され、
前記パッファシリンダの内部は、中心軸に対して垂直に配置された連結板により、前記アーク放電側の自力室と、それとは反対側の機械圧縮室とに仕切られ、
前記機械圧縮室は、前記連結板及び前記パッファピストンにより挟まれた空間として形成され、前記連結板には、前記自力室と前記機械圧縮室とを連通する連通穴と、それに付随する逆止弁が設けられ、
前記逆止弁は、前記自力室から前記機械圧縮室へのガスの流れを制約し、前記自力室の圧力が前記機械圧縮室の圧力よりも低い場合にのみその圧力差により開放されるように構成されたガス遮断器において、
前記逆止弁が開放された場合に、前記機械圧縮室から前記自力室へのガス流路が、前記自力室の外径方向となるように構成されていることを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
前記逆止弁の内径側に、この逆止弁の内径側端部が当接する壁面を形成し、前記逆止弁が開放される際には、その内径側端部が前記壁面と接触しながら移動するように構成し、前記機械圧縮室から自力室へのガス流路を自力室の外径方向に導くことができるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記連通穴が、前記機械圧縮室から自力室へのガス流路を自力室の外径方向に導くことができるように、所定の角度の傾斜をつけた傾斜型連通穴とされていることを特徴とする請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記消弧性ガスとして、六弗化硫黄ガスよりも地球温暖化係数の小さいガスを使用したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−56023(P2010−56023A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221982(P2008−221982)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】