説明

ガラスびんの出荷方法

【課題】 出荷先での設備コストを低減し得るガラスびんの出荷方法の提供。
【解決手段】 ガラスを加熱溶融してびん形状に成形するびん成形工程、および該びん成形工程で成形された成形物を徐冷する徐冷工程を経て製造されたガラスびんの少なくとも口部および内部を洗浄および殺菌し、前記ガラスびんの口部に封止部材(パッキン)を装着して口部を封止する封止工程を経て出荷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスびんの出荷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にガラスびんは、加熱して溶融状態としたガラスをびん成形機に吹込んで所定の形状に成形する成形工程と、成形工程で成形されたガラスを徐冷する徐冷工程を経て製造される(例えば、特許文献1参照)。さらに、徐冷されたガラスびんはその品質を検査する検査工程を経て、さらに包装用フィルムや結束バンドなどを用いて包装(例えば、バルク包装)する包装工程を経て出荷される。
【0003】
ガラスびんは徐冷工程を終了した直後はその温度は100°C程度となっている。したがってその時までガラスびんは、無菌状態に近い。しかしながら、検査工程にはいる際にはガラスびんはさらに冷却されており、場合によっては室温にまで冷却されている。つまり、検査工程では既に無菌状態は期待できない。その後に包装工程にはいるが、この場合、セパレートシートがガラスびんの口部に直接接触する。ガラスびんはこのような状態で倉庫等に保管され、必要時に出荷される。ガラスびんは、出荷先において洗浄設備によって洗浄されて、飲料水、酒類、調味料等の内容物が充填されることになる。
【特許文献1】特開平05−000821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、ガラスびんは、検査工程では既に無菌状態ではなく、さらにガラスびんは包装用フィルムで包装された状態で保管され、出荷されるから上記のように出荷先では洗浄する必要がある。このため、出荷先では洗浄設備や、洗浄後の水を浄化する浄化設備等が必要になって、出荷先での設備コストが高くなるという課題がある。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、出荷先での設備コストを低減し得るガラスびんの出荷方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガラスびんの出荷方法は、ガラスを加熱溶融してびん形状に成形するびん成形工程、および該びん成形工程で成形された成形物を徐冷する徐冷工程を経て製造されたガラスびんの少なくとも口部および内部を洗浄および殺菌し、前記ガラスびんの口部に封止部材を装着して口部を封止する封止工程を経て出荷することを特徴としている。
【0007】
ガラスびんは、少なくとも口部および内部を洗浄および殺菌してから口部に封止部材をして封止した状態で出荷するから、出荷先で封止部材を取外した後は、ガラスびんを改めて洗浄、殺菌する必要がなくなる。このため、出荷先へのサービス性が向上するとともに、出荷先での洗浄設備や殺菌設備が不要になり、出荷先のこれらの設備コストをなくすか、大幅に低減することが可能となる。
【0008】
本発明のガラスびんの出荷方法では、封止部材は、ガラスびんの口部に装着された際に該口部の内周面に径方向で弾性的に嵌合する嵌合部と、口部の縁を覆う鍔部とを有していることを特徴としている。
【0009】
上記方法によれば、嵌合部により封止部材はガラスびんの口部の内周面に密着するから、ガラスびんの内部に塵芥等が入り込むことを効果的に防止でき、さらに鍔部により封止部材はガラスびんの口部の縁を覆うから、ガラスびんの口部全体を衛生的な状態に確保することになる。
【0010】
本発明のガラスびんの出荷方法では、封止部材は抗菌処理が施された樹脂から形成されていることを特徴としている。
【0011】
上記方法によれば、ガラスびんの口部に封止部材を装着してもその抗菌処理によりガラスびんを衛生的な状態に確保することになる。
【0012】
本発明のガラスびんの出荷方法は、封止部材を装着した複数のガラスびんを包装する包装工程を経て出荷することを特徴としている。
【0013】
包装工程においてガラスびんにセパレートシートが接触した状態にあっても、ガラスびんの口部には封止部材を装着して封止されているから、ガラスびんの内部は衛生的な状態を維持し続けることになる。
【0014】
本発明のガラスびんの出荷方法は、徐冷工程と封止工程との間に、ガラスびんをマイナスイオンの雰囲気中で除電する除電工程を含むことを特徴としている。
【0015】
除電工程により、徐冷工程と包装工程との間では塵芥がガラスびんに付着するのを防止している。
【0016】
本発明のガラスびんの出荷方法は、徐冷工程から包装工程に至るガラスびんを区画された搬送路内を搬送し、該搬送路内をクリーンエアーで充満させていることを特徴としている。
【0017】
この方法によれば、ガラスびんの搬送途中においてもクリーンエアーによってガラスびんを衛生的な状態に確保することになる。
【0018】
本発明のガラスびんの出荷方法は、洗浄装置からのエアーの吹付けによりガラスびんの内部を洗浄し、紫外線照射ランプからの紫外線の照射によりガラスびんを殺菌することを特徴としている。
【0019】
上記方法によれば、エアーの吹付けによりガラスびんの内部表面が洗浄され、紫外線の照射によってガラスびんの表面が殺菌されるからガラスびんを衛生的な状態に確保することになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のガラスびんの出荷方法によれば、ガラスびんを成形する材料が冷えて無菌状態を保証できない温度となったとしても、ガラスびんの口部および内部を、洗浄および殺菌した後に口部に封止部材をして封止するから、ガラスびんを衛生的な状態で出荷することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るガラスびんの出荷方法を、図面に基づいて説明する。図1は、ガラスびんの製造工程のうち殺菌工程を示す説明図、図2は殺菌工程の後にガラスびんの口部にパッキンを装着する封止工程の説明図、図3はパッキンの構成を示す断面図、図4は包装工程を示す説明図、図5はガラスびんの出荷方法の手順を示す概略図である。
【0022】
これらの図に基づいて、先ず、ガラスびん1の製造方法の概略を説明する。ガラスびん1は、製びん工場において、ガラスびんを製造する際に一般に行われるよう加熱して溶融状態にあるガラス(ガラスびんの成形材料)をびん形状に成形するびん成形工程が行われる。その後、びん成形工程で成形されたガラスを徐冷する徐冷工程、ガラスびん1の品質を検査する検査工程、ガラスびん1の(少なくとも)口部2および内部3を洗浄する洗浄工程、ガラスびん1を殺菌する殺菌工程によって製造される。洗浄工程として、エアーリンサー(洗浄装置の一例)からのエアーの吹付けによりガラスびん1の内部表面を洗浄するようにしている。
【0023】
検査工程は、検査器を用いて一般的なガラスびん1の品質検査をするもので、口部2の寸法等の検査が行われる。検査器のうち、特に口部2の検査を行うべく口部2に接触する部分については抗菌処理された部材が用いられている。これにより、検査工程において、なるべくガラスびん1(特にその口部2や内部3)に雑菌等が付着しにくくしている。すなわち、検査器がガラスびん1に接触してもその抗菌処理により、ガラスびん1を衛生的な状態に確保することになる。
【0024】
この実施形態に係るガラスびん1の出荷方法は、上記のようにして製造されたガラスびん1の口部2にパッキン4(封止部材の一例)を装着して口部2を封止する封止工程、パッキン4を装着した複数のガラスびんを包装する包装工程を経る。包装工程における包装は、図4に示すようなバルク包装Cが実施される。なお、パッキン4が装着されるガラスびん1は、前記検査工程において所定の品質に合格したものに限っている。
【0025】
また、上記バルク包装Cでは、ガラスびん1をパレット40(後述する)の上に並べる際に、セパレートシート41(後述する)を介して所定段数積み重ねて結束バンド43(後述する)で梱包し、包装用フィルム45(後述する)で巻回する。したがって、セパレートシート41がガラスびん1の口部2に接触するが、ガラスびん1の口部2にはパッキン4を装着して封止されているから、ガラスびん1の内部は衛生的な状態を維持し続けることになる。
【0026】
ガラスびん1を殺菌する殺菌工程を行う際の殺菌装置5を、図1に基づいて説明する。先ず、殺菌装置5は、ガラスびん成形工程を終えて封止工程に至るまでガラスびん1を立てた状態で搬送する搬送装置6(例えばベルトコンベアが用いられる)によって決められる搬送路7の途上に配置されるものである。
【0027】
搬送路7のうち、特に、殺菌工程における搬送路7の搬送領域8は、搬送方向に長い一対の側壁10,11と、この側壁10,11をその上方で亙す天壁12とによって区画されている。側壁10,11の下部領域に搬送装置6が搬送方向に配置されている。
【0028】
殺菌装置5は、紫外線照射ランプ13と、不図示のクリーンエアー発生器およびマイナスイオン発生器とを備える。天壁12には紫外線照射ランプ13が配置されており、上記側壁10,11、天壁12で区画された搬送領域8内にあるガラスびん1に紫外線照射ランプ13によって紫外線が照射され、ガラスびん1の表面が殺菌されるから、ガラスびんを衛生的な状態に確保することになる。
【0029】
クリーンエアー発生器およびマイナスイオン発生器は、それぞれ側壁10,11、天壁12によって区画された搬送領域8に、ガラスびん1の搬送方向上流側Aから、クリーンエアー14a、マイナスイオン14bを混合気体14として送る構成として、少なくともガラスびん1の搬送領域8内を搬送中はクリーンエアー14aによって搬送領域8内の清浄性を確保しており、マイナスイオン14bによって除電工程が行われて静電気発生防止および殺菌性を確保している。
【0030】
ガラスびん1は、殺菌工程を終えて封止工程を行うべく搬送装置6によってキャッパーを設置してある下流側Bの所定場所まで順次搬送される。このキャッパーは、ガラスびん1の口部2に対してパッキン4を装着するのに一般的に用いられているもので、図2の仮想線で示すように、パッキン4を保持した保持部15により、ガラスびん1の口部2に上方からパッキン4を装着するものである。
【0031】
ここで、図3に基づいてパッキン4の構成を具体的に説明する。パッキン4は、ガラスびん1の口部2の内周面2bに弾性的に嵌合する円筒状の嵌合部20と、円板状部21とから形成され、嵌合部20と円板状部21とは抗菌処理が施された合成樹脂から一体的に形成されている。
【0032】
嵌合部20について説明すると、その内周面は一定曲率の円筒面24である。嵌合部20の外周面22の上下方向途中には、径方向外方に向けて突出する断面円弧状の弾性係合部23が、環状に一体的に形成されている。弾性係合部23は、径方向に最大に突出した頂点25から下方に向けて斜め径方向内方に延長される円錐面26を有しており、これによって円筒面24の上端部の厚みt1に比べて、下端部の厚みt2が小さくなるよう漸縮されている。換言すれば、嵌合部20の下部の外周面は、口部2に上方から嵌合し易くすべく、テーパー面に形成されている。
【0033】
円板状部21は、嵌合部20の上端部を覆う被覆部31と、被覆部31から径方向外方へ突出する鍔部32とを有する。嵌合部20と鍔部32との境界部下面に、上方に突出する環状の凹部33が形成されている。この凹部33を設けることにより、鍔部32の外周縁部は、径方向外方斜め下方に垂下する鍔縁部32aを有する。被覆部31の上面中心寄りは外径側に対して段付き面34を介して薄い厚みに形成され、さらに被覆部31の中心は下方に凹となるよう湾曲した湾曲凹部31aが形成されている。なお、前記凹部33の径方向幅b1は、種々のガラスびん1の口部2の上端面2aの径方向幅b2に対応できる幅に設定されている。
【0034】
パッキン4を装着したガラスびん1は所定の場所まで搬送されて、バルク包装Cされる。すなわち、パレット40の上にセパレートシート41を載置し、その上にガラスびん1を整然と並べ、それらの上にセパレートシート41を亙すように載置し、さらにセパレートシート41の上にガラスびん1を整然と並べる。これら段積みされたガラスびん1の上に天フレーム42を載置して、パレット40および天フレーム42を、結束バンド43を用いて締結して、ガラスびん1どうしを上下方向で不動に保持する。このようにして纏めたガラスびん群44の外側部に包装用フィルム45を巻回することでバルク包装Cをした状態とし、ガラスびん1がガラスびん群44の側方に崩れないように保持し、このバルク包装C状態で管理(例えば倉庫に保管)しておく。なお、ガラスびん群44とするガラスびん1の段数やパレット上に並べる個数は任意であるが、出荷の際にバルク包装C状態が崩れないよう、無理のない個数や段数に設定することは当然である。ガラスびん1(ガラスびん群44)の出荷の際は、上記のようにしてバルク包装Cをしたガラスびん群44を必要分だけ運搬車両Dに載積して、出荷先に出荷する。
【0035】
出荷先でバルク包装Cを解除されたガラスびん1は、デキャッパーを用いてパッキン4を取外す。デキャッパーは、ガラスびん1の口部2からパッキン4(キャップ)を取外すのに一般的に用いられているものである。この場合、例えばパッキン4のうち、薄手に形成されている被覆部31の中心に取外し具50(図2の三点鎖線で示す)を差込んで引抜くようにすれば、容易にパッキン4を取外すことが可能である。なお、パッキン4の取外し方法は、例えばバキューム装置によりパッキン4を吸いとる方法など、他の方法であってもよい。
【0036】
その後、図5に示すように出荷先においてガラスびん1にそれぞれアルコール類などの飲料Wを充填することになる。ところで、ガラスびん1の製造工程において、ガラスは溶融状態では高温であり、また徐冷工程を終了した直後はその温度はまだ無菌状態を確保できる温度となっている。しかし、それ以降ガラスびん1は冷却されていくから無菌状態は期待できないことになる。しかしながら、ガラスびん1の少なくとも口部および内部を洗浄および殺菌し、ガラスびん1の口部にパッキン4を装着して口部を封止することで、衛生的な状態でガラスびん1を出荷することになる。そして、本発明の出荷方法によれば、予め洗浄・殺菌されているガラスびん1の口部2にパッキン4を装着しているから、徐冷工程を終了したガラスびん1であっても、ガラスびん1の内部は衛生的な状態を保つことになる。さらに、バルク包装Cを施してガラスびん群44とした際に、セパレートシート41や包装用フィルム45がガラスびん1に接触した状態にあったとしても、パッキン4に覆われた部分(特に口部2)、ガラスびん1の内部3は洗浄・殺菌された状態を保持している。したがって、ガラスびん1のうちパッキン4に覆われた部分、内部3の洗浄・殺菌を、出荷先において改めて行う必要がない。このため、出荷先での洗浄設備や、洗浄後の水を浄化する浄化設備等が不要になり、その分だけ設備コストを低減することが可能になる。
【0037】
なお、パッキン4はガラスびん1の口部2に装着し易く、取外し易い形状で、少なくとも内部3を確実に封止可能なものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態を示すガラスびんの製造工程のうち殺菌工程を示す説明図
【図2】同じく殺菌工程の後にガラスびんの口部にパッキンを装着する封止工程の説明図
【図3】同じくパッキンの構成を示す断面図
【図4】同じく包装工程を示す説明図
【図5】同じくガラスびんの出荷方法の手順を示す概略図
【符号の説明】
【0039】
1…ガラスびん、2…口部、2b…内周面、3…内部、4…パッキン、5…殺菌装置、6…搬送装置、7…搬送路、8…搬送領域、10,11側壁、12…天壁、13…紫外線照射ランプ、14…混合気体、14a…クリーンエアー、14b…マイナスイオン、15…保持部、20…嵌合部、21…円板状部、23…弾性係合部、24…円筒面、25…頂点、26…円錐面、30…上端部、31…被覆部、31a…湾曲凹部、32…鍔部、32a…鍔縁部、33…凹部、34…段付き面、40…パレット、41…セパレートシート、42…天フレーム、43…結束バンド、44…ガラスびん群、45…包装用フィルム、50…取外し具、C…バルク包装、D…運搬車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスを加熱溶融してびん形状に成形するびん成形工程、および該びん成形工程で成形された成形物を徐冷する徐冷工程を経て製造されたガラスびんの少なくとも口部および内部を洗浄および殺菌し、前記ガラスびんの口部に封止部材を装着して口部を封止する封止工程を経て出荷することを特徴とするガラスびんの出荷方法。
【請求項2】
封止部材は、ガラスびんの口部に装着された際に該口部の内周面に径方向で弾性的に嵌合する嵌合部と、口部の縁を覆う鍔部とを有していることを特徴とする請求項1記載のガラスびんの出荷方法。
【請求項3】
封止部材は抗菌処理が施された樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のガラスびんの出荷方法。
【請求項4】
封止部材を装着した複数のガラスびんを包装する包装工程を経て出荷することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のガラスびんの出荷方法。
【請求項5】
徐冷工程と封止工程との間に、ガラスびんをマイナスイオンの雰囲気中で除電する除電工程を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載のガラスびんの出荷方法。
【請求項6】
徐冷工程から包装工程に至るガラスびんを区画された搬送路内を搬送し、該搬送路内をクリーンエアーで充満させていることを特徴とする請求項4に記載のガラスびんの出荷方法。
【請求項7】
洗浄装置からのエアーの吹付けにより少なくともガラスびんの口部および内部を洗浄し、紫外線照射ランプからの紫外線の照射によりガラスびんを殺菌することを特徴とする請求項1記載のガラスびんの出荷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−269364(P2007−269364A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97208(P2006−97208)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000178826)日本山村硝子株式会社 (140)
【Fターム(参考)】