説明

ガラスもしくはガラスセラミックからなる調理面用の耐引掻性のシリコーン被覆

【課題】市販のシリコーン層よりも引掻に強く、500℃未満の焼成温度で得ることができ、変色することなく、350℃までの温度負荷で短時間耐え、250℃まででは持続的に耐え、不透明であり、熱伝導ペースト及び接着剤に対して不透過性であり、十分な付着強度があり、基材の強度を下げないガラスセラミックもしくはガラスからなる被覆系を有する機能エレメント、特に調理面を提供する。
【解決手段】前記被覆上に、未架橋のポリシロキサンを有するカバー層を施与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスもしくはガラスセラミックからなる平坦な基材を有する機能エレメント、特に調理面もしくは操作パネルであって、該基材上に、架橋されたポリシロキサンを有する被覆が施与されている機能エレメント、特に調理面もしくは操作パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
目下、調理面は、基材として無色のガラス(例えばBorofloat(登録商標)、ソーダ石灰ガラス)もしくは無色のガラスセラミックを使用し、その下面(利用者と反対側の面)に有色被覆を設ける場合には、是認しうる費用で非常に様々な色で製造することができる。シリコーンを基礎とする被覆系が特に好ましいものと見なされる。それというのも、該被覆系によって熱伝導ペーストに対する必要な気密性と、熱負荷に際しての必要な色安定性が達成されるからである。
【0003】
DE3503576号C2、EP1267593号B1、JP H10−273342号及びJP2005038622号は、下面被覆として、第一の層(基板下面の直上)として顔料着色されたガラス層からなり、かつ第二の層としてシリコーン層からなる二層系を挙げている。
【0004】
これらの系は、JP2001233636号に挙げられるように、とりわけ、下面のガラス層が基材強度を大きく低下させるという欠点を有する。
【0005】
JP2001233636号、JP2001233637号、JP2001213642号及びJP2003086337号においては、従って、第一の層のために、とりわけバインダーとしてシリコーン樹脂を使用し、その上にガラスセラミック、チタン酸アルミニウムもしくは貴金属調製物を基礎とする第二の層を施与し、そして両方の層を同時に800℃より高い温度で焼成することが提案されている。その焼成に際して、シリコーンは完全に分解して、無機のケイ素酸化物網目構造を形成する。基材上に形成されるその構造は、上述のガラスを基礎とする系の場合よりも軟質なので、基材の強度は大きく低下されない。
【0006】
ガラス、チタン酸アルミニウム、貴金属もしくはガラスセラミックから高温(700〜850℃)で無機層を得る費用のかかる焼成工程を削減するために、JP2003086337号には、二層の耐熱性樹脂からなる系にふれている。その際、第一の層は、効果顔料を含有する。効果顔料がその真珠光作用を発揮しうるために、耐熱性樹脂が黒色に顔料着色されている第二の層が、第一の層の不透明な背面印刷として施与される。両方の層は、わずか200℃で硬化される。
【0007】
更に、調理面用の下面被覆としては一層のシリコーン層系が知られている:
DE2506931号C3は、アルミニウム、雲母鉄鋼及び黒色染料を有してよいシリコーン系の塗料を挙げている。該被覆は、しかし、調理面の色彩的様式のためではなく、赤外加熱される加熱領域中の調理面の伝熱性の向上のために用いられる。
【0008】
JP2005298266号は、調理面の下面被覆及び色彩的様式のために、バインダーとして三官能性のメチルフェニルポリシロキサンを有する一層の被覆を挙げている。該被覆の焼成は、200〜350℃で行われる。層厚は、10μm及びそれ未満である。シリコーンの三次元的な架橋に基づき、該被覆は、熱伝導ペーストに対して気密性である。
【0009】
US2005214521号A1は、700℃までの熱負荷で色安定なままであるガラス製の及びガラスセラミック製の調理面用の一層のシリコーン被覆を記載している。20〜700℃の温度範囲における色安定性は、400℃以降でシリコーンが分解すると思われるにもかかわらず、使用されるシリコーン樹脂が有機基を十分に含まないことによって達成される。
【0010】
調理面上の色付与用の下面被覆としてのシリコーン被覆の効果的な使用のために、色安定性及び不透明性の他に、熱伝導ペーストに対する気密性、付着強度及び引掻強さなどの特性が重要である。特に、下面のシリコーン被覆の高い引掻強さは、調理面を無傷で輸送し取り付けることができるかどうかのために決定的である。シリコーン被覆の引掻強さが高い場合に、欠陥を伴って製造されたプレートの数を削減でき、かつ調理面の組立を容易にすることができる。こうして仕上げと組立ての間に欠陥商品が減ることで、大きな費用削減が可能となる。
【0011】
市販されているシリコーン被覆を有する調理面(上述の付加的なガラス層、ガラスセラミック層、チタン酸アルミニウム層もしくは貴金属層を含まない)の引掻強さの測定により、200〜300gの負荷をかけた場合に既に、丸められた硬質金属先端部(アール:500μm)が被覆に侵入して、利用者の視点から傷が認識できることが判明した。その際に、シリコーン被覆が、前記のように、二層の架橋されたシリコーン層から構成されているか、又は一層のみの未架橋の、架橋されたもしくは熱分解されたシリコーン樹脂から成っているかどうかは、重要ではない。該被覆は、それぞれ100gの負荷をかけた場合に、遅くとも300gの負荷をかけた場合に、硬質金属先端部によって基材に至るまで除去される。
【0012】
調理面の下面での温度測定によって、高価な誘導調理コンロ(Induktions−Kochmulde)の場合に、しかし特定構造のガス調理器の場合にも、通常の使い方では150〜250℃しか達成されず、最も不利な場合(空の鍋を最大加熱出力で)に350℃が達成される(600℃より高い温度までに達する赤外線加熱エレメントを有する調理コンロに対して)ことが判明した。誘導調理コンロの温度制御は、その際、実質的に、設置された回路及び制御回路の効果並びに調理面下の温度センサの位置に依存している(DE102005031392号A1、DE102006023704号A1、DE19646826号C2)。US3,742,174号において、精巧な技術をもって、プラスチックからなる調理面すら議論されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】DE3503576号C2
【特許文献2】EP1267593号B1
【特許文献3】JP H10−273342号
【特許文献4】JP2005038622号
【特許文献5】JP2001233636号
【特許文献6】JP2001233637号
【特許文献7】JP2001213642号
【特許文献8】JP2003086337号
【特許文献9】DE2506931号C3
【特許文献10】JP2005298266号
【特許文献11】US2005214521号A1
【特許文献12】DE102005031392号A1
【特許文献13】DE102006023704号A1
【特許文献14】DE19646826号C2
【特許文献15】US3,742,174号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、ガラスセラミックもしくはガラスからなる被覆系を有する機能エレメント、特に調理面であって、
− 市販のシリコーン層よりも引掻に強く、
− 500℃未満の焼成温度で得ることができ、
− 変色することなく、350℃までの温度負荷で短時間耐え、250℃まででは持続的に耐え、
− 不透明であり、
− 熱伝導ペースト及び接着剤に対して不透過性であり、
− 十分な付着強度があり、
− 基材の強度を下げない、
機能エレメント、特に調理面を提供することである。
【0015】
殊に特定の場合において、該被覆系は、静電容量タッチスイッチのために適していることが望ましい。更に、ある特定の場合には、該被覆剤は、
− パターン形成して施与可能であること、
− 長い加工時間を有すること(8時間以上)、
− 高い貯蔵安定性を有すること(顔料と充填剤の重大な沈殿がない)
が好ましいことがある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の本発明の課題は、該被覆上に、未架橋のポリシロキサンを有するカバー層を施与することによって解決される。
【0017】
従って、二層から構成されたシリコーン被覆系であって、その基材の下面の直上の第一の色付与用の層としての被覆が、架橋されたポリシロキサン、顔料及び場合により薄片型の充填剤からなり、かつその第二の層としてのカバー層が、付加的にタルクもしくは別の層状ケイ酸塩を含有してよい未架橋のポリシロキサンからなるシリコーン被覆系が使用される。
【0018】
前記被覆系の個々の層は、スクリーン印刷によって、しかしながらまた吹き付け、パッド印刷もしくは押印法などの他の方法を用いてガラスもしくはガラスセラミックからなる基材上に順次適用することができる。その際、該被覆(第一の層)は、200〜500℃で被膜形成性のシリコーン樹脂の架橋のために焼成され、それからカバー層(第二の層)が施与され、その後に20〜180℃だけで乾燥させる。各層の層厚は、一般に、10〜50μm、特に15〜30μmである。二層の系の全層厚は、引掻強さ500gが達成されるためには、少なくとも20μmであることが望ましい。層厚は、更により高い引掻強さを達成するためには、通常は25〜65μm、理想的には30〜50μmである。
【0019】
係る層系によって、硬質金属先端部(アール500μm)は、500〜1000gの負荷をかけた場合でさえも基材まで突き抜けることはできない。優れた引掻強さは、基材の直上にある硬質の第一の層(架橋されたポリシロキサン)と、カバー層としての軟質の蝋様の第二の層との組合せに基づくものである。硬質金属先端部(もしくは他の引っ掻いて削り取る対象物)は、係る層系では確かに外側のカバー層中に侵入しうるが、その際、相当の圧力をかけた場合でさえも、蝋様のシリコーンと場合により層状ケイ酸塩とからなるカバー層の組成に基づいて、架橋によって硬化された色付与用の(第一の)層上を滑る。
【0020】
まず、色付与用の層の組成を記載する。
【0021】
被覆用のシリコーン樹脂としては、色付与用の層の生成のためには、有機基としてメチル基もしくはフェニル基を有し、かつ官能基(それにより180℃より高い温度での焼成による熱的架橋が行われる)としてヒドロキシ基、アルコキシ基もしくはビニル基を有する固形もしくは液状のポリシロキサンが適している。官能基の割合は、1〜10質量%であることが望ましく、分子量は、1000〜6000g/モルであることが望ましい。特に色安定性の被覆は、2〜5質量%の割合のヒドロキシ基と、1500〜2000g/モルの分子量を有するヒドロキシ官能性のフェニルポリシロキサンにより得られる。焼成された被覆中のシリコーン樹脂の割合は、40〜70質量%、特に好ましくは50〜60質量%であることが望ましい。
【0022】
色安定性が250℃まで達成され、350℃で短時間達成されるためには、該色付与用の被覆中で高価な無機着色顔料を使用する必要がある。調理面被覆の場合に、該顔料は、電気機器及び電子機器に関する法規定に基づき、鉛、6価クロム(Cr+VI)もしくはカドミウムを含有すべきでない。無機着色顔料及び黒色顔料、例えば酸化鉄顔料、酸化クロム顔料又はルチルもしくはスピネル構造を有する酸化物混合相顔料及び無機白色顔料(酸化物、炭酸塩、硫化物)が適している。カーボンブラックは適していない。それというのも、それは300℃を超える熱的負荷をかけた場合に徐々に分解するからである。好適な顔料のための例としては、ヘマタイト(α−Fe23)からなる酸化鉄赤−顔料、おおよその組成Fe34を有する酸化鉄黒−顔料並びに混合相顔料のコバルトブルーCoAlO4、亜鉛鉄ブラウン(Zn,Fe)FeO4、クロム鉄ブラウン(Fe,Cr)24、鉄マンガン黒(Fe,Mn)(Fe,Mn)24、スピネルブラックCu(Cr,Fe)24が挙げられ、白色顔料としてTiO2及びZrO2が挙げられる。
【0023】
色付与に際して特殊な効果を達成するために、また、無機光沢顔料(金属効果顔料、真珠光沢顔料及び干渉顔料)を使用することもできる。
【0024】
大抵は薄片形の顔料は、更に色付与用の層の機械的強度を高める。金属効果顔料としては、アルミニウム合金、銅合金もしくは銅−亜鉛合金からなる薄片形の粒子は、特にそれらが熱的負荷に際しての色安定性の向上のために、例えば酸化ケイ素で被覆されている場合に適している。該層の水、油、接着剤、とりわけ液体に対する気密性を高めるために、浮遊型(リーフィング顔料)が使用できる。真珠光沢顔料及び干渉顔料としては、例えばTiO2、SiO2もしくはFe23で被覆されている雲母が適している。
【0025】
塗料ペースト(Farbpaste)を通常のスクリーン幅(54−64、それは115μmのメッシュ幅に相当する、又は100−40、それは57μmのメッシュ幅に相当する)を用いて問題なく印刷できるためには、顔料の粒径は、20μm未満(好ましくは10μm未満)であることが望ましく、薄片形顔料は、100μm未満(好ましくは75μm未満)の辺長を有することが望ましい。焼成された被覆中の顔料割合は、上述の層厚で十分に不透明な被覆を達成できるためには、20〜40質量%、特に有利には24〜36質量%であることが望ましい。
【0026】
既に述べたように、薄片形顔料は、被覆の機械的強度を高める。すなわち、該顔料は、層中の亀裂形成を抑え、最悪の場合でも層の剥離を防ぐ。同じ効果は、無色の薄片形の充填剤の添加によっても、従って例えば雲母、カオリンもしくはタルクなどの層状ケイ酸塩の添加によって達成することができる。焼成された被覆中の薄片形の充填剤の割合は、0〜30質量%であってよく、その際、該被覆が既に薄片形の顔料を含有する場合には、より低い割合(0〜15質量%)を選択することができる。特に、基材としてガラスセラミックである場合に、十分な付着強度を達成するために、シリコーン層が機械的に補強されていることが望ましい。
【0027】
シリコーン樹脂と、顔料と、充填剤とからスクリーン印刷に適した塗料ペーストを得るために、シリコーン樹脂が溶解し、並びに顔料と充填剤が分散しうる溶剤をさらに添加せねばならない。シリコーン樹脂に応じて、脂肪族もしくは芳香族の炭化水素が適しており、ヒドロキシ官能性のフェニルシロキサンの場合にはエステルが有効であることが実証された。特にスクリーン印刷用途のためには、塗料が溶剤の蒸発によって既にスクリーン中で固化しないために、高沸点溶剤(蒸発数>35)を使用することが望ましい。例えばメトキシプロパノール、2−ブトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテートもしくはブチルジグリコールが適している。こうして、8時間より長い加工時間を達成することができる。
【0028】
ガラス基材もしくはガラスセラミック基材の湿潤を最適化するために、塗料ペーストに消泡剤、湿潤剤及び均展剤を添加することができる。貯蔵の間の顔料と充填剤の沈殿に抵抗するためには、増粘剤(例えばセルロース誘導体、ポリアクリレート、ポリエーテルポリオール、キサンタン)もしくはチキソトロピー剤(例えば層状ケイ酸塩、熱分解法シリカ、ベントナイト)を添加することができる。しかしながら、前記の添加は、例えば付着強度などの他の特性に悪影響を及ぼさないためにも、低い質量%(1〜5質量%)に制限されるべきである。シリコーン塗料(Siliconfarbe)の粘度は、スクリーン印刷のためには、1000〜3000mPa・s、好ましくは2000〜2500mPa・s(23℃、せん断勾配200s-1)であることが望ましい。
【0029】
記載した塗料ペーストは、例えば細かさ54−64の布を用いたスクリーン印刷によってガラスもしくはガラスセラミック上に全面に施与される。しかしながら、色付与用の第一の層(被覆)は、また、部分的に抜き取られていてもよい、例えばディスプレイ表示及び別の機能領域の範囲内で、又はカバー層との組合せにより色コントラストの作成のために抜き取られていてよい。ディスプレイ領域において(もしくは別の領域で、例えば調理区域標識として)、ガラス基材もしくはガラスセラミック基材は、また、既に別の被覆(例えばDE102006027739号もしくはDE102005046570号に記載されるような貴金属被覆からなる被覆)を有してよい。
【0030】
スクリーン幅は、第一の塗料層(Farblage)が十分に厚く、不透明であるためには、54−64であることが望ましい。しかしながら、特に高充填された塗料では、得られた塗料層がなおも不透明のままである限り、より細かい布(例えば100−40もしくは140−31)を使用することもできる。
【0031】
該塗料を基材上に施与した後で、被覆を焼成せねばならない。
【0032】
被覆されたガラスプレートもしくはガラスセラミックプレートの取り扱いを容易にし、かつ印刷されたての第一の塗料層に焼成炉中に被覆されたプレートを取り付けることによって生じうる損傷を回避するためには、シリコーン樹脂として固体樹脂を使用し(40℃を超える、特に60℃を超える融点もしくは軟化点)、かつ該塗料を焼成前に乾燥させる(例えば20〜180℃で1〜60分)ことが推奨される。第一の塗料層の引掻強さは低く、この状態では、例えば約100〜200gでしかない。
【0033】
後続の200〜500℃(1〜24時間、好ましくは1〜4時間)での焼成において、シリコーン樹脂は、官能基(ヒドロキシ基、メトキシ基など)を開裂させつつ架橋され、主にSi−O結合を介した三次元的な網状構造を形成する。焼成によって、被覆の機械的耐久性が高まり、被覆はより硬質となり、引っ掻き傷がより付きづらくなる。(焼成後の被覆の引掻強さは、200〜300gである)。更に、シリコーン樹脂の化学的変換に基づいて、被覆の色調は変化し、こうして色付与用の層は、焼成によって最終的な色調を帯びる。
【0034】
非常に高い温度(約400℃以上)で、シリコーン樹脂は熱分解をはじめる。すなわち、有機基(フェニル基、メチル基)を開裂しつつ分解し、それによって、被覆の多孔性は、熱分解度に応じて大幅に高めることができる。分解生成物によって、該被覆は一般に褐色に呈色する。
【0035】
従って、焼成の間のシリコーン樹脂の熱分解による分解は、通常望ましくない。しかしながら、色付与用のシリコーン層の部分的な熱分解(シリコーン樹脂に応じて、400〜500℃で10分〜5時間の焼成)によって、後の操作において考えられる変色を先取りできるので、部分的に熱分解された層は、単に架橋されたシリコーン樹脂(例えば200〜350℃で1〜24時間の焼成)を含有するだけの層に比べて高い色安定性の点で優れていることが示された。
【0036】
本発明は、色付与用の層上にシリコーン樹脂層の更なる一層を施与することが予定される。該被覆系が後の使用において十分に色安定性であるためには、該色付与用の層(被覆)は不透明でなければならず、かつカバー層(第二のシリコーン層)から完全に透過してはならない。カバー層に対する不透明性と遮断作用は、層厚、上述の顔料割合、場合により被覆(第一の塗料層)中の薄片形の成分の割合及び/又は200〜350℃でのシリコーン樹脂の架橋によって、僅かな熱分解(400〜500℃で最大5時間)でも保証される。第一の層が不透明でないか又はその層が高い多孔性に基づき第二の層から透過する場合に、調理面の操作において、利用者に認識できる変色が生ずる。やはり、調理面の使用において生ずる温度(250℃、短時間では350℃)では、カバー層は徐々に架橋し、それによりほぼその色を変える。
【0037】
この場所で、被覆系の引掻強さは、操作時に250℃より高い温度に加熱される調理面の領域で、カバー層中のシリコーン樹脂が徐々に架橋するため徐々に低下することがわかる。引掻強さの低下は、しかしながらこの場合には、もはや欠点ではない。それというのも、引掻強さは、実質的に、輸送と組立に際して必要となるからである。
【0038】
調理コンロの動作において、耐摩耗性、従って擦れる作用に対する耐久性は、より大きな役割をになう(例えば調理面の下面とコイルとの間の誘導コイルの断熱のために取り付けられている雲母プレート又は温度制御のために調理面の下面にまで達している温度センサは擦れることがある)。カバー層中の未架橋のシリコーン樹脂でも架橋されたシリコーン樹脂でも、あらゆる場合に少なくとも20μmの層厚によって十分な耐摩耗性が与えられている。
【0039】
以下に、カバー層の組成を記載する。
【0040】
カバー層用のシリコーン樹脂としては、とりわけ、色付与用の層のためのものと同じ被膜形成剤が適している(官能基としてヒドロキシ基、アルコキシ基もしくはビニル基を有するメチル−もしくはフェニル−ポリシロキサン)が、それは20〜40℃で固体の樹脂(固体樹脂、その軟化点もしくは融点は、40℃より高い、特に60℃より高いことが望ましい)である。こうして、カバー層は乾燥後に固体である(かつ流動性でない)ことが保証される。その際、カバー層は仕上げ工程で架橋されないので、固体樹脂は、着色被覆されたプレートを取扱可能にするために適している。カバー層は、該層が色付与用の機能を満たすべきでない場合には顔料着色を有する必要はない。
【0041】
カバー層は、タルク、カオリンもしくは他の層状ケイ酸塩(例えば雲母)を含有してよい。カバー層中の層状ケイ酸塩は、層系の引掻強さを更に向上させる。それというのも、該カバー層は、蝋様の未架橋のシリコーン樹脂の他に、その際にまたなおも潤滑性の充填剤を含有するからである。硬質の色付与用の層と蝋様のカバー層との組み合わせによって、高い引掻強さの点で優れた層系が生ずる。それというのも、硬質の対象物は、カバー層中への侵入後にその蝋様の粘稠度に基づいて、その下にある色付与用の層上を、これを貫くことなく滑るからである。生産、輸送もしくは組立に際して調理面被覆と接触する硬質の対象物は、従って、層系を突き抜けることができないか、あるいは明らかにより高い負荷がかかった場合にはじめて突き抜けることができる。
【0042】
層状ケイ酸塩の更なる機能は、調理面の操作によって加熱領域中で徐々に硬化するカバー層を、シリコーン樹脂が操作温度で架橋するので機械的に補強することである。なぜならば純粋なシリコーン樹脂は、(特にフェニルシロキサンである場合には)、高い熱膨張に基づいて、色付与用の層の架橋された脆い状態で剥離することがあるからである。層状ケイ酸塩の添加が必要であるかどうかは、あらゆる樹脂型について試験によって決定せねばならない。
【0043】
層状ケイ酸塩粒子の最大寸法は、10〜30μmであることが望ましく、平均粒度は、1〜20μmであることが望ましい。最大粒度15μm(D98)及び平均粒度1〜10μm(D50)を有する微細なタルク型が理想的である。乾燥された層中の層状ケイ酸塩、特にタルクの割合は、最大で、50質量%、特に10〜25質量%であってよい。層状ケイ酸塩以外にも、グラファイトもしくは窒化ホウ素などの別の固体潤滑剤を、引掻強さの向上のために添加することができる。
【0044】
溶剤としては、既に上述の物質を使用することができ、更に、均展及び貯蔵安定性は添加剤(湿潤剤、分散剤、チキソトロピー剤)によって最適化することができる。シリコーン塗料の粘度は、スクリーン印刷のためには、1000〜3000mPa・s、好ましくは2000〜2500mPa・s(23℃、せん断勾配200s-1)であることが望ましい。
【0045】
特定の場合には、カバー層の組成は、該被覆(色付与用の層)の組成と同一であってよい。この変法に関しては、とりわけ論理的及び製造技術的な理由がある(一方の塗料だけを貯蔵せねばならず、製造時に該塗料の混同が排除される)。
【0046】
カバー層用の被膜形成剤としての蝋(パラフィン、カルナウバ蝋、ポリエチレン)は引掻強さを同様に高めるが、それでもやはり不適切である。それというのも、それらの蝋は、ポリシロキサンの耐熱性を達成しない(蝋の分解は、150℃以上で激しい発煙を伴って起こる)からである。
【0047】
下面被覆された調理面が静電容量的に機能するタッチスイッチ(例えばE.G.O.社のタッチ−コントロール−ユニット)のために適していることが望ましくば、二層のシリコーン層系が導電性でないことが必要である。すなわち、下面被覆の電気的表面抵抗が、メガΩ範囲、より良好にはギガΩ範囲(109Ω/平方)でなければならないことが必要である。当該特性は、導電性の顔料(例えば金属粉末、アルミニウムフレーク)もしくは充填剤(グラファイト)を色付与用の層もしくはカバー層に使用しないか、又は少なくとも該被覆中の導電性物質の割合が、十分に高い表面抵抗が保証されるほど少量に制限されることによって達成される。該被覆の導電性は、アルミニウムフレークもしくは別の導電性の顔料が使用される場合に、その顔料を非導電性の層で取り囲む(例えば酸化ケイ素で被覆されたアルミニウムフレーク)ことによっても阻止することができる。
【0048】
カバー層は、色付与用の層と同じ方法(スクリーン印刷、吹き付け塗布、タンポ印刷、スタンプ法)で施与することができる。パターンの簡単な施与の可能性の故に好ましいスクリーン印刷に際して、細かさ54−64及び100−40の布が有効であることが実証された。
【0049】
該被覆系用の基材材料としては、例えばLi2O−Al23−SiO2型のガラスセラミック、特に、温度範囲30〜500℃で熱膨張率−10・10-7-1ないし+30・10-7-1を有する無色のガラスセラミックが適しており、その公知の組成は、とりわけ以下の第1表に示されるものである:
第1表: 好適なガラスセラミック基材の組成
【表1】

【0050】
アルミノシリケートガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸塩ガラスもしくはアルカリ土類金属ケイ酸塩ガラスからなるロール法もしくはフロート法のガラスプレートも、特に該プレートが化学的にもしくは熱的に(EP1414762号B1に記載されているように)予備圧縮(vorspannen)されている場合に適している。
【0051】
本発明による被覆系は、調理面のために使用する他に、ガラスプレートもしくはガラスセラミックプレートが熱的負荷される操作パネル又は別の用途のためにも適している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の実施態様の側面図を示す。
【図2】図2は、本発明のガラスセラミック基材上の被覆系の断面の電子顕微鏡写真を示す。
【実施例】
【0053】
実施例1: メタリック効果を有する耐引掻性のライトグレー色のシリコーン被覆
EP1837314号A1による組成(第1表、右欄)を有する両側が平滑な無色のガラスセラミックプレート(約60cm幅、80cm長、かつ4mm厚)を、DE19721737号C1によるセラミック装飾塗料(Dekorfarbe)で上面側にドットマトリックスで被覆し、そしてセラミック化した。
【0054】
引き続き、該セラミックされたガラスセラミックプレートの下側に、第2表による組成(A)を有するシリコーン塗料をスクリーン印刷(スクリーン布54−64)によって全面に施与した。該シリコーン塗料の粘度は、2100mPa・s(23℃、せん断勾配200s-1)であった。
【0055】
第2表: 塗料組成
【表2】

【0056】
該被覆を150℃で1時間乾燥させ、引き続き450℃で4時間焼成した(加熱と冷却は、3K/分で実施した)。焼成された被覆上に、配合(A)の更なる層を全面に印刷(スクリーン布54−64)し、乾燥(150℃で1時間)させた。
【0057】
二層系の層厚は、40〜45μmであった。図2(電子顕微鏡写真)は、該ガラスセラミック基材上の被覆系の断面を示している。その際、両方の層は、焼成もしくは乾燥による異なる圧縮に基づいて、よく区別することができる。
【0058】
下面に印刷された系の引掻強さは、極めて高かった。丸められた硬質金属先端部(アール:500μm)は、該層系を、1000gの負荷がかかった場合でさえも突き抜けることができない。調査される調理面の上から(利用者の視点から)の観察に際して、損傷は確認できなかった。
【0059】
引掻強さの測定は、それぞれの重さ(100g、200g、…、1000g)の負荷がかけられた硬質金属先端部を垂直に該被覆上に載せ、20〜30cm/sの速度で該被覆上を約30cm動かすことで行った。
【0060】
不透明性の評価は、調理コンロに取り付けられたガラスセラミック−調理面での実践に即した照明で行った。取り付けられた調理面を通じて調理コンロ内部への傍観が極めて短い観察距離(10cm)でさえも不可能であったので、下面被覆は不透明である。下面被覆されたガラスセラミックのスペクトル透過率は、可視光領域でτvis≦1%(DIN EN 410により光源D65で測定)である。
【0061】
食用油、熱伝導ペースト及び接着剤に対する耐久性は、該被覆系上に一滴(9cm2に約0.1gを広げる)の前記物質を与え、20℃で24時間後の変色と350℃での1時間の焼成後の変色を評価することで調査した。両方の場合に利用者の視点から変色が確認されなかったので、該被覆系は前記物質に対して色安定性である。
【0062】
更に、耐熱性は、被覆されたガラスセラミック−調理面を350℃で80時間加熱し、引き続き該被覆されたガラスセラミックの色調変化と曲げ強さ並びに下面被覆の付着強度を調査することで調べた。
【0063】
熱的負荷の前と後の色値を第3表に挙げる。それらの色値を、分光光度計(Mercury 2000、データカラー社)を用いて、利用者の視点から、すなわち基材を通じて測定した(光源:D65、観察角:10゜)。色値の表記は、CIELAB系(DIN 5033、パート3 "表色値")により行う。DIN6174によれば、色差はたったのΔE=0.6であり、正視眼での試験の場合には色差は確認できなかった。
【0064】
第3表: 熱的負荷の前と後の色値"ライトグレー色"
【表3】

【0065】
より強力な熱的負荷(例えば450℃で1時間)をかけた場合に、該被覆に、正視眼である特定の照明条件下である特定の観察角からのみ(特に良好には、直接的な太陽光で、入射する太陽光線の方向から約30゜の観察角において)確認できるにすぎない僅かな明色化が起こる。該被覆の変色は、熱的負荷が長期にわたり続けば続くほど、かつその温度が高ければ高いほど強くなる。ここで、例えば450℃で10時間の負荷をかけた場合に、正視眼でよく確認できる変色(黄変)が生じた。色差は、係る負荷の後にΔE=1.6(DIN6174)であった。下面に対して350℃を超える温度で加熱する調理面のためには、従って該シリコーン系は不適切である。
【0066】
ガラスセラミック調理面の曲げ強さは、熱的負荷の前と後に、通常の少なくとも110MPa(DIN EN 1288−5に従って測定した平均値)の水準を超える175MPaであった。シリコーン層の強度の増大は、観察されなかった。
【0067】
付着強度は、熱的負荷後にも十分であった。該被覆を、"Tesa−テスト"で調査した。その際、下面被覆に透明な接着フィルムのストリップを擦り付け、次いで急激に引き離す(テサフィルム 104型、バイヤスドルフ株式会社)。その接着ストリップに確かに幾つかの粒子がカバー層から付着したままであるが、色付与用の層は基材から剥離しないので、利用者の視点からの調理面の観察に際して損傷は確認できず、かつ付着強度は、全く十分であると評価された。
【0068】
更に、該被覆系は、静電容量タッチスイッチのために適している。それというのも、高価な被覆されたアルミニウム顔料が使用されていたからである。グレー色のシリコーン被覆の範囲内の静電容量タッチセンサの機能は、E.G.O.社のタッチ−コントロール−ユニットを用いて調査した。そのタッチスイッチによって、調理領域を問題なく制御することができた。その際、電気的表面抵抗は、20GΩ/平方を超えていた。
【0069】
表面抵抗は、比較的簡単に抵抗計で、測定機器の両方の電極をできる限り隣接して(約0.5〜1mmの間隔で)被覆上に載せることで測定することができる。測定機器によって表示される抵抗は、ほぼその被覆の表面抵抗に相当する。
【0070】
実施例2: 耐引掻性のダークグレー色のシリコーン被覆
実施例1と同様にして、ガラスセラミックプレートを配合(B)(第2表)で被覆した。すなわち、まず、基材上にダークグレー色の配合(B)の塗料層を印刷し、乾燥させ、そして焼成(450℃で4時間)し、次いでカバー層として更なる層配合(B)を施与し、それはさらに乾燥(150℃で1時間)させただけであった。メタリック効果を有するダークグレー色の調理面が得られた。
【0071】
二層系の層厚は、32〜37μmであり、引掻強さは、1000gより高かった。該系は不透明である。食用油、熱伝導ペーストもしくは接着剤は、しみ通っていない(利用者の視点からは変色は確認できない)。
【0072】
350℃までの熱的負荷をかけた場合に、該系は色安定性である:350℃で80時間の負荷後の色差は、正視眼で確認できず、DIN6174によれば色差はたったのΔE=0.2であった。
【0073】
第4表: 熱的負荷の前と後の色値"ダークグレー色"
【表4】

【0074】
ダークグレー色に被覆されたガラスセラミック調理面の曲げ強さは、熱的負荷の前と後に、通常の少なくとも110MPa(DIN EN 1288−5に従って測定した平均値)の水準を超える176〜187MPaであった。
【0075】
また、付着強度は十分("ライトグレー色"の系と比較して)であった。該系は、静電容量タッチスイッチのために適している。それというのも、その表面抵抗が20GΩ/平方を超えているからである。
【0076】
実施例3: 黒色のカバー層を有する耐引掻性のライトグレー色のシリコーン被覆
実施例1と同様にして、ガラスセラミックプレートを配合(A)(第2表)で被覆した。すなわち、まず、基材上にライトグレー色の配合(A)の塗料層を印刷し、乾燥させ、そして焼成(450℃で4時間)し、次いでカバー層として黒色の配合(C)の一層を施与し、それはさらに乾燥(150℃で1時間)させただけであった。利用者の視点からライトグレー色のメタリック効果を有する調理面が得られた。
【0077】
二層系の層厚は、42〜47μmであり、引掻強さは、1000gより高かった。該系は不透明である。食用油、熱伝導ペーストもしくは接着剤は、しみ通っていない(利用者の視点からは変色は確認できない)。
【0078】
350℃までの熱的負荷をかけた場合に、該系は色安定性である:350℃で80時間の負荷後の色差は、正視眼で確認できず、DIN6174によれば色差はたったのΔE=0.4であった。
【0079】
第5表: 熱的負荷の前と後の色値"ライトグレー色+黒色"
【表5】

【0080】
被覆されたガラスセラミック調理面の曲げ強さは、熱的負荷の前と後に、通常の少なくとも110MPa(DIN EN 1288−5に従って測定した平均値)の水準を超える173MPaであった。
【0081】
付着強度はさらに十分であった。それというのも、利用者の視点から、色付与用の層で調べた領域内で変色が確認できなかったからである。しかしながら、付着強度は、熱的負荷(350℃で80時間)後に、実施例1と実施例2からの2種類の別の系の場合よりも低かった。それというのも、カバー層は、熱的負荷後に、Tesa−テストにおいてほぼ完全に剥離しえたからである。
【0082】
該系は、静電容量タッチスイッチのために適している。それというのも、その表面抵抗が20GΩ/平方を超えているからである。
【0083】
反証例1: 低い引掻強さを有する一層のライトグレー色のシリコーン被覆
EP1837314号A1による組成(第1表、右欄)を有する両側が平滑な無色のガラスセラミックプレート(約60cm幅、80cm長、かつ4mm厚)を、DE19721737号C1によるセラミック装飾塗料で上面側にドットマトリックスで被覆し、そしてセラミック化した。
【0084】
引き続き、該セラミックされたガラスセラミックプレートの下側に、第2表による組成(A)を有するシリコーン塗料をスクリーン印刷(スクリーン布54−64)によって全面に施与した。該被覆を、150℃で45分間乾燥させた。
【0085】
メタリック効果を有するライトグレー色のガラスセラミック調理面が得られた。該シリコーン被覆の層厚は、20±2μmであった。下面に施与されたシリコーン層の引掻強さは、非常に低かった。丸められた硬質金属先端部(アール:500μm)は、該層系を200gの負荷をかけた場合でさえ完全に突き抜けることができたので、引掻跡は利用者の視点から(調理面の上方からの観察)明らかに確認できた。
【0086】
反証例2: 低い引掻強さを有する一層のダークグレー色のシリコーン被覆
両面が平滑で無色のガラスセラミックプレートを、反証例1と同様に、その下側に第2表による組成(B)のシリコーン塗料で被覆した。該被覆を、150℃で45分間乾燥させた。
【0087】
メタリック効果を有するダークグレー色のガラスセラミック調理面が得られた。該シリコーン被覆の層厚は、20±2μmであった。下面に施与されたシリコーン層の引掻強さは、非常に低かった。丸められた硬質金属先端部(アール:500μm)は、該層系を200gの負荷をかけた場合でさえ完全に突き抜けることができたので、引掻跡は利用者の視点から(調理面の上方からの観察)明らかに確認できた。
【0088】
反証例3: 低い引掻強さを有する一層の架橋されたシリコーン被覆
両面が平滑で無色のガラスセラミックプレートを、反証例2と同様に、その下側に第2表による組成(B)のシリコーン塗料で被覆した。該被覆を150℃で45分間乾燥させ、引き続き450℃で4時間焼成した。
【0089】
メタリック効果を有するダークグレー色のガラスセラミック調理面が得られた。該シリコーン被覆の層厚は、19±2μmであった。下面に施与されたシリコーン層の引掻強さは、非常に低かった。丸められた硬質金属先端部(アール:500μm)は、該層系を100gの負荷をかけた場合でさえ完全に突き抜けることができたので、引掻跡は利用者の視点から(調理面の上方からの観察)明らかに確認できた。
【0090】
反証例4: 低い引掻強さを有する二層のダークグレー色のシリコーン被覆
両面が平滑で無色のガラスセラミックプレートを、反証例2と同様に、まずその下側に第2表による組成(B)のシリコーン塗料で被覆した。該被覆を150℃で45分間乾燥させ、引き続き450℃で4時間焼成した。
【0091】
焼成された被覆上に、次いで、配合(B)の更なる一層を全面に印刷(スクリーン布54−64)し、同様に150℃で45分間乾燥させ、そして引き続き450℃で4時間焼成した。2層の硬化された(架橋された)シリコーン層からなる該系の層厚は、32〜37μmであった。
【0092】
この系の引掻強さは、極めて低かった。丸められた硬質金属先端部(アール:500μm)は、該層系を200gの負荷をかけた場合でさえ完全に突き抜けることができたので、引掻跡は調査される調理面の上方から(利用者の視点から)の観察によって明らかに確認できた。
【0093】
図面において、本発明の実施例は、側面図で図示されている。この図解から理解できるように、ガラスもしくはガラスセラミックからなる基材1の下面の直上に、架橋されたポリシロキサンからなる被覆2が施与されている。該被覆2は、未架橋のポリシロキサンからなるカバー層3で覆われている。
【符号の説明】
【0094】
1 ガラスもしくはガラスセラミックからなる基材、 2 架橋されたポリシロキサンからなる被覆、 3 未架橋のポリシロキサンからなるカバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスもしくはガラスセラミックからなる平坦な基材(1)を有する機能エレメント、特に調理面もしくは操作パネルであって、該基材上に、架橋されたポリシロキサンを有する被覆(2)が施与されている機能エレメント、特に調理面もしくは操作パネルにおいて、前記被覆(2)上に、未架橋のポリシロキサンを有するカバー層(3)が施与されていることを特徴とする機能エレメント。
【請求項2】
被覆(2)及び/又はカバー層(3)の層厚が、10〜50μmであることを特徴とする、請求項1に記載の機能エレメント。
【請求項3】
被覆(2)及び/又はカバー層(3)の層厚が、15〜30μmであることを特徴とする、請求項2に記載の機能エレメント。
【請求項4】
被覆(2)の層厚とカバー層(3)の層厚との合計である全層厚が、少なくとも20μmであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の機能エレメント。
【請求項5】
全層厚が、25〜65μmの範囲、好ましくは30〜50μmの範囲であることを特徴とする、請求項4に記載の機能エレメント。
【請求項6】
被覆(2)用の被覆材料が、シリコーン樹脂として、メチル基もしくはフェニル基を有機基として有し、かつヒドロキシ基、アルコキシ基もしくはビニル基を官能基として有する固体もしくは液体のポリシロキサンを有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の機能エレメント。
【請求項7】
官能基の割合が、1〜10質量%であり、かつ/又はその分子量が、1000〜6000g/モルであることを特徴とする、請求項6に記載の機能エレメント。
【請求項8】
被覆(2)用の被覆材料が、2〜5質量%の割合のヒドロキシ基と、1500〜2000g/モルの分子量を有するヒドロキシ官能性のフェニルポリシロキサンを有することを特徴とする、請求項6又は7に記載の機能エレメント。
【請求項9】
架橋された被覆中のシリコーン樹脂の割合が、40〜70質量%の範囲、好ましくは50〜60質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の機能エレメント。
【請求項10】
被覆(2)が、無機着色顔料、白色顔料及び/又は黒色顔料を含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の機能エレメント。
【請求項11】
被覆(2)が、ヘマタイトからなる酸化鉄赤−顔料、酸化鉄黒−顔料、混合相顔料、亜鉛鉄ブラウン、クロム鉄ブラウン、鉄マンガン黒、スピネルブラック、TiO2及び/又はZrO2を有することを特徴とする、請求項10に記載の機能エレメント。
【請求項12】
前記被覆が、無機光沢顔料を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の機能エレメント。
【請求項13】
前記無機光沢顔料が、被覆された及び/又は被覆されていない薄片形の顔料粒子として形成されていることを特徴とする、請求項12に記載の機能エレメント。
【請求項14】
無機着色顔料、黒色顔料及び/又は白色顔料が、20μm未満の、好ましくは10μm未満の粒径を有することを特徴とする、請求項10から13までのいずれか1項に記載の機能エレメント。
【請求項15】
薄片形の光沢顔料を使用する場合に、該顔料が、辺長≦100μm、好ましくは≦75μmを有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の機能エレメント。
【請求項16】
架橋された被覆(2)中の着色顔料及び/又は黒色顔料及び/又は白色顔料の割合が、20〜40質量%の範囲、好ましくは24〜36質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の機能エレメント。
【請求項17】
被覆(2)及び/又はカバー層(3)が、薄片形の充填剤を有することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の機能エレメント。
【請求項18】
前記充填剤が、層状ケイ酸塩、例えば雲母、カオリン及び/又はタルクからなることを特徴とする、請求項17に記載の機能エレメント。
【請求項19】
架橋された被覆(2)中の充填剤の割合が、>0〜30質量%の範囲、好ましくは>0〜15質量%の範囲であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の機能エレメント。
【請求項20】
層状ケイ酸塩粒子の寸法が、最大で10〜30μmの範囲であり、かつ平均粒度が、1〜20μmであることを特徴とする、請求項18に記載の機能エレメント。
【請求項21】
カバー層(3)中の層状ケイ酸塩の割合が、≦50質量%、好ましくは10〜25質量%であることを特徴とする、請求項20に記載の機能エレメント。
【請求項22】
被覆(2)の材料の軟化点もしくは融点が、≧40℃、特に≧60℃であることを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載の機能エレメント。
【請求項23】
カバー層(3)が、固体潤滑剤、例えばグラファイト及び/又は窒化ホウ素を有することを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載の機能エレメント。
【請求項24】
被覆(2)及びカバー層(3)が、同じ被覆材料から作製されていることを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の機能エレメント。
【請求項25】
被覆(2)及びカバー層(3)からなる被覆系が、表面抵抗≧109Ω/cm2を有することを特徴とする、請求項1から24までのいずれか1項に記載の機能エレメント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−120846(P2010−120846A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266605(P2009−266605)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】