説明

ガラスセラミック複合構造物の生成方法

【課題】高強度で耐久性のある構成部品の接着を達成でき、構成部品間の接着部の密閉性をできるだけ高い程度まで到達できるガラスセラミック複合構造物を生成する方法を提供する。
【解決手段】第1(16)および少なくとも1つの第2(18)のガラス構成部品を、ガラスからなる接合材(20)の中間層をその間に挟んで組み立てて被接合複合構造物を形成し、前記接合材(20)は接合する前記構成部品(16,18)よりも高い放射線吸収能を有し、前記被接合複合構造物は少なくとも前記接合材(20)の領域に、前記接合材(20)が前記構成部品(16,18)と前記接合材(20)とを接着させるのに十分軟化するまで、例えばIRエネルギーで照射することによって、複合ガラス状構造物を作製し、その後セラミック化処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミック複合構造物を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼロ膨張材料からなる複合構造物を作製する方法、およびそれを作製する方法は特許文献1により公知である。
この公報は、ゼロ膨張材料、すなわち例えばLASガラスセラミックからなり、少なくとも1つの接着層で接着する様々な構成部品を記述している。できるだけ薄い接着層を使用することにより欠点をできるだけ少なくしている。しかし、当然このような接着部は高温に耐えられないことに加え、比較的安定性も低い。また、ゼロ膨張材料の有利な特性に悪影響を及ぼす。
【0003】
特許文献2は、繊維強化ガラスまたはガラスセラミック材料をセラミック材料などの他の材料と接合する方法を開示しており、ガラスまたはガラスセラミック材料と他の材料を2つの材料の界面で高温で圧着することによって熱融着接合を形成する。ホットプレス操作は接合の向上を目的としている。
この方法の欠点はホットプレス操作に伴う比較的高い費用にある。また、プレス加工は大型構成部品の場合には必ず困難を伴う。最後に、このように作製した接合部の強度は限定される。
【0004】
特許文献3によると、ガラスまたはガラスセラミック製の構成部品の接合に使用する接着材料は、低軟化点のガラス粉末と高軟化点のガラス粉末との混合粉末からなり、混合粉末は構成部品の接着剤としてその後焼結および結晶化処理を施して一体化するようにしたものである。
このプロセスは比較的高価で、それでも焼結プロセスのために高強度の接合部とはならない。
【0005】
特許文献4によると、接着するガラス製の複数の構成部品を炉内で軟化させ、熔着し、互いに接着する。このようにして得られた構造物をその後熱処理して結晶化する。
同様に、特許文献5は、接着するガラス製の複数の構成部品を、まず緑色ガラスの状態で溶接接合してからセラミック化する。
そうするためには、2つの構成部品の端部を軟化点をはるかに超える温度まで加熱しなければならず、2つの端部を圧着するときに強力な接着部を確実に得るためには、これを意図的に同時にかつ全長にわたり均質にすることが重要である。これは極めて難しく、接合する端部が長い場合は特にそうなる。さらに、緑色ガラス成分の望ましくないセラミック化プロセスが始まる前に接合操作を完了するのに利用できる時間はわずかしかない(数秒台)。
【0006】
ガラスセラミックの接合に関して、例えば特許文献6に記述される種類のセラミック化プロセスも公知である。
この場合、接着部の強度はセメントの粘着性とその機械的特性による。しかもゼロ膨張特徴をもつ2つのガラスセラミック材料を接着できる真のゼロ膨張セメントはない。また、このような接着部は原則として、ガラスセラミック材料が通常耐える高熱応力に耐えられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/034775 A1号
【特許文献2】独国特許出願公開第198 21 679 A1号
【特許文献3】特開昭63−319230号
【特許文献4】特開2005−061747号
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0014008 A1号
【特許文献6】米国特許第3,715,196号
【特許文献7】米国特許第7,000,430 B1号
【特許文献8】米国特許第7,017,370 B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高強度で耐久性のある構成部品の接着を達成でき、構成部品間の接着部の密閉性をできるだけ高い程度まで到達できるガラスセラミック複合構造物を生成する方法を提供することである。
さらに、接着部はできるだけ高温耐熱であるのが望ましく、作製される複合構造物は本質的にモノリシック部品が有するのと同じ材料特性をもつのが望ましい。そこで本発明の目的は、これらの有利な特徴を持つガラスセラミック複合構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガラス系材料製の構成部品を接合する方法は、第1および少なくとも1つの第2の構成部品を、接合材の中間層をその間に挟んで組み立てて被接合複合構造物を形成し、前記接合材は接合する構成部品よりも高い放射線吸収能を有し、前記被接合複合構造物は少なくとも前記接合材の領域に、前記接合材が前記構成部品と前記接合材とを接着するのに十分軟化されるまで放射エネルギーで照射されて複合構造物を作製し、前記構成部品と前記接合材は熱処理することによってガラスセラミックに転移できるガラスからできており、前記複合構造物は前記ベースガラス構成部品と前記ガラス接合材とからガラス状複合構造体に形成されて、その後セラミック化される。
【0010】
本発明はさらに、ガラスセラミック、好ましくはLASガラスセラミック製の少なくとも1つの第1および1つの第2構成部品を含み、これらを、前記第1および前記第2構成部品よりも高い放射線吸収能を有するガラスセラミックからなる接合材で互いに接着してなる複合構造物により達成される。
本発明は高強度で耐久性のある接着部をガラスまたはガラスセラミック製の複数の構成部品間で簡単に達成でき、作製される接着部の特性は様々な構成部品の特性とほぼ一致することから、特に、例えばゼロ膨張材料を使用する場合に、全体として高い強度が得られ、熱膨張係数を損なわずにすむ。
【0011】
また、接着した構成部品の最高適用温度に一致する最高適用温度におおむね合わせた高温耐熱性の接着部を得ることが可能である。
本発明によると、接着する構成部品および接合材はその緑色ガラスの状態で使用して、その後セラミック化する複合構造物を得るため、構成部 品の一または複数を接合前にセラミック化する場合に進展する亀裂を防止できる。
【0012】
接合材を使用して作製する接着部は放射エネルギーおよび局所的な軟化の適用および/または接合材の溶融により得られるため、そのように実現される方法は非常に効率的で、省エネである。接着する構成部品の放射線吸収能に比べて、接合材の放射線吸収能が高いため、接合材の軟化または溶融中に接着する構成部品の軟化を防止できる。その結果、高強度で寸法の安定した複合構造物を作製できる。
【0013】
また、本方法は一般的に比較的大型の構成部品を接着するのにも適する。
最後に、本発明によると、ガラスセラミック構成部品同士の効率的な接着も可能になる。複合構造物は個々の構成部品がもっていた同じ特性をもってもよい。
例えば、接着する構成部品は、Zerodur(登録商標)(ドイツのSchott AG社が製造するLASガラスセラミック)などのゼロ膨張材料から構成してもよい。この適用では、ゼロ膨張材料は、例えば0℃から50℃の適用範囲でゼロに近い(±1・10−6/K未満)CTE(熱膨張係数)を有する材料と見なされる。より具体的には、CTEは±0.5・10−6/K未満であり、特に±0.1・10−6/K未満であり、特に±0.05・10−6/K未満であり、より具体的には±0.02・10−6/K未満である。また、複合セラミック構造は本質的に同じCTEを有していてもよい。
【0014】
本発明は、あらゆる種類のガラスセラミック、またCERAN(登録商標)、Clearceram(登録商標)およびROBAX(登録商標)(すべてドイツのSchott AG社製)などの他の公知のゼロ膨張LASガラスセラミックに適用できる。また、MAS(マグネシウムアルミノケイ酸塩)ガラスセラミックも対象としてもよい。
本発明の別の実施形態によると、接合材は少なくともUV範囲、可視光範囲、IR範囲、またはマイクロ波範囲で放射線吸収能が高い。したがって、UV放射、可視光、IR放射、マイクロ波放射またはレーザ放射を使って照射を行うことができる。
【0015】
有利なことに、接合材は接着する構成部品の間に薄板または細棒の形態で配置する。
本発明の別の実施形態によると、使用する接合材は赤外線範囲で吸収するガラス、好ましくはIR範囲で吸収する成分を含有するLASガラスセラミック(本質的に着色成分)であり、その緑色ガラスの状態で使用する。
吸収成分は、Co,Fe,Mn,Ni,Cr,Sn,Ti,Zn,V,Nb,Au,Ag,Cu,Mo,Rh,Dy,Pr,Nd,Ce,Eu,Tm,ErおよびYbからなる群から、個別にまたは組み合わせて選択してもよい。
【0016】
好ましくは、使用する接合材は、吸収成分の総含有量が少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、より好ましくは少なくとも0.3重量%、最も好ましくは少なくとも0.4重量%のものである。好ましくは、最大値は5重量%、または2重量%、または1重量%であってもよい。
このように、赤外線放射を使用した複合構造物の加熱中に接合材のみを軟化して構成部品を接着するが、接着する構成部品は軟化せず、本質的にその寸法が変化しないようにするのに十分高い接合材の赤外線吸収能を得ることができる。
【0017】
赤外線エネルギーを生成するために、本発明の有利な更なる展開によるIRヒータユニットを使用する。
ヒータユニットは、特許文献7または特許文献8から一般的に公知なとおり、1500K、好ましくは少なくとも2000K、より好ましくは少なくとも2700K、最も好ましくは少なくとも3000Kの放射温度を発するIR加熱素子を備えるヒータユニットでもよい。
【0018】
指定のラジエータ温度を備えるヒータユニットを使用すると、接合材が特に効率的に結合して、できるだけ短い期間内に接合材の急速な加熱を確保する一方、接着する構成部品は過度に加熱されない短波赤外線放射を生成することができるので、軟化による寸法変化を防止することができる。
接合する構成部品は、例えば、以下の成分(酸化物基準の重量%)を有するベースガラスを含むLAS(リチウムアルミノケイ酸塩)ガラスセラミックから構成してもよく、
LiO: 2〜5
Al: 18〜28
SiO: 50〜70
この場合、接合材は以下の成分(重量%)を含む。
LiO: 2〜5
Al: 18〜28
SiO: 50〜70
吸収成分: 0.1〜5
より具体的には、構成部品は以下の成分(酸化物基準の重量%)を含むベースガラスから構成してもよい。
SiO: 50〜70
Al: 18〜28
LiO: 2〜5
NaO: 0〜3
O: 0〜3
MgO: 0〜3
CaO: 0〜3
SrO: 0〜3
BaO: 0〜4
ZnO: 0〜3
TiO: 0〜6
ZrO: 0〜4
SnO: 0〜2
ΣTiO+ZrO+SnO: 2.5〜6
: 0〜8
F: 0〜1
: 0〜2
清澄剤: 0〜2
As,Sb,SnOなどの清澄剤は、通常少なくとも0.1重量%の量で存在してもよい。
【0019】
接合材は好ましくは、さらに0.1〜2重量%の着色酸化物を添加した同じベースガラスを含んでもよい。
本発明の有利な更なる成果によると、被接合複合構造物を照射する前に、構成部品をガラス転移温度Tを超える温度まで予熱するのが好ましい。
比較的大型の構成部品を接合する場合、接合材を照射エネルギーで局所的に加熱するときに生じるおそれのある熱応力による悪影響をこのようにして防ぐことができる。
【0020】
特に比較的大型の構成部品を接着する場合、このようにして熱応力を低減できる。
本発明による方法は、一連の連続工程により複数の個々の構成部品から組成されるより複雑な性質の構造体の作製にも適する。
例えば、少なくとも1つの第1構成部品および少なくとも1つの第2構成部品と接合材の中間層とからの照射により作製される第1複合構造物を、接合材の中間層を介して別の構成部品に接合して別の被接合複合構造物を形成してもよく、その後構成部品が接着するように十分軟化するまで接合材を照射してもよい。
【0021】
このように、三次元構造体を形成するためにさらに複雑な構成部品の作製することも容易に可能である。これらはガラスセラミック製のオーブン、ミラーベース、暖炉用シールド、建築用パネル材等であってもよい。
本発明の有利な更なる成果によると、第1複合構造物をまずTを超える温度まで予熱した後で、少なくとも1つの別の構成部品とともに接合材を赤外線エネルギーで照射する。
【0022】
このようにして、特に比較的大型の構成部品で生じるおそれのある応力を防ぐ。
上記述べた本発明の特徴および以下にこれから説明する特徴は、明示するそれぞれの組み合わせだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく他の組み合わせまたは単独でも使用できることは了解される。
セラミック化は必ず接合材の接着後に行う。そのため、構成部品および接合材はその緑色ガラスの状態で使用して、接着プロセスの後でのみセラミック化する。
【0023】
例えば、LASベースガラスの接着を行うための典型的な加熱サイクルは以下のようになるであろう。
(a)少なくとも600℃の予熱温度まで予熱する
(b)1分経たないうちに、好ましくは最長で30秒以内に接合材を、接合材の接着温度、好ましくは1100℃から1350℃までIR放射により加熱する
(c)接着温度を最長120秒まで、好ましくは5〜60秒間保持して、複合構造物の接着を行う、および
(d)その後冷却する
好ましくは、複合構造物は10分経たないうちにセラミック化温度以下の温度まで冷却し、好ましくは1〜5分以内に750℃以下に冷却する。
【0024】
その後、典型的なセラミック化サイクルを始めてもよい。これは、例えば、複合構造物を750℃の核形成温度に加熱するステップと、1時間保持するステップと、900℃まで加熱するステップと、1時間保持するステップと、その後室温まで冷却するステップとを含んでもよい。
本発明の別の特徴および利点は、図面を参照して、以下の一定の好適な実施形態の説明から明らかになるであろう。図面において、
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】接着する2つの構成部品と、接合材の中間層とを赤外線エネルギーで照射できるIRヒータユニットを示す模式図である。
【図2】接着する2つの構成部品を予熱するローラ型の加熱炉と、その下に、その後赤外線エネルギーを使用して予熱した構成部品を接合材の中間層に接着するIR加熱ステーションとを示す模式図である。
【図3】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図4】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図5】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図6】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図7】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図8】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図9】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図10】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図11】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図12】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図13】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図14】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図15】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【図16】それぞれ接合材で接合するさまざまなガラスセラミック構成部品のためのアプリケーションを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、ガラスまたはガラスセラミック製の2つの構成部品16,18を、薄いガラス板の形態をした接合材20の中間層で接着できる赤外線ヒータユニット(IRヒータユニット)10を示す模式図である。
IRヒータユニット10は特許文献7または特許文献8で公知の種類のIRヒータユニットであってもよく、両特許は参照により完全にこれに組み込む。
【0027】
使用するヒータは、例えば、色温度が3000Kで放射最大値が約960nmの範囲である石英ラジエータであってもよい。放出される放射線の最大の部分は500nmから5000nmの範囲である。
接着する構成部品、例えばLASガラスセラミック製の2枚の板16,18を、好ましくは緑色ガラスの状態で、薄板の形態をした接合材の中間層20とともにIRヒータユニット10の内部14に載置する。接合材20は、例えば、高い赤外線吸収が得られる高吸収成分を含有するLASガラスセラミック材料から構成してもよい。
【0028】
そのように形成された被接合複合構造物はさらに、IRユニットの石英ラジエータ22により放出される赤外線エネルギーを使って、2枚の構成部品16,18を接着するのに十分に接合材20が軟化するまで照射する。2枚の構成部品16,18はその界面で接合材20に溶融し、後者がより高い温度まで加熱されたら、重力の影響で物質結合になる。
加熱は例えば30秒の短時間内で行ってもよく、その後は、加熱素子のスイッチを切ることによって生じるクールダウン段階にしても、または応力を減らすために、きちんと定めたクールダウンプロセスにしてもよい。
【0029】
好ましくは、接合する構成部品16,18および接合材20は緑色ガラスの状態で使用し、そのように作製された複合構造物をその後、例えばローラコンベア炉でセラミック化する。
特に比較的大型の構成部品を接着する場合、図2を参照してこれ以降説明する方法が選択できる。
【0030】
この場合、接着する構成部品16,18は炉30、例えばローラコンベア炉で、ガラス転移温度Tより明らかに高い温度まで加熱でき、さらに局所的に、実質的には接合材20の領域をIR加熱ステーション32のIRヒータユニットによって、接合材20が構成部品16,18を接着するのに十分に軟化されるまで加熱できる。
このようにした構成部品16,18の加熱は、接合材20を局所的に加熱するときに生じるおそれのある高い応力を防ぐために推奨できる。
【0031】
ガラスは熱伝導率が低いため、最初の加熱をTを明らかに超える温度、例えば750℃まで行えば、その後赤外線エネルギーを使った接着操作中に過度に高い応力を防ぐのに十分である。
必要なら、従来の炉でIR加熱ステーション32を付加的に格納すると、より均一な加熱がおおむね保証されるとともに、接着操作中に構成部品をTを超える温度に維持できるであろう。
【0032】
本発明はさらに、複雑な構造体向けの三次元構成部品を、これも複数の連続ステップで作製するのに適する。
これ以降、図3から図16を参照して、さまざまなアプリケーションを説明する。
図3による複合構造物24bまたは図4による24cは、例えば、異なる色合いのガラスセラミック製の第1構成部品16と第2構成部品18とを含み、これらを接合材20を使って接着する。
【0033】
図5によると、複合構造物24dは、ガラスセラミック板の第1構成部品と、その上にそれぞれ接合材20の中間層を使って載せる円形の第2ガラスセラミック構成部品18と、六角形の第3構成部品19とを含む。
図6によると、複合構造物24eは、ガラスセラミック製の第1構成部品16と、ガラスセラミック製の第2構成部品18とを含み、これらを接合材20の中間層を介してフレームとして接着する。
【0034】
図7から図10によると、パネルの形の複合構造物24fを、構造化された底面を有する第1ガラスセラミック構成部品16と、滑らかな底面を有する第2構成部品18とから、接合材20の中間層を使って形成し、および/またはパネルの形の複合構造物24gはどちらも滑らかな底面を有するが厚さの異なる2枚のガラスセラミック構成部品16,18を含んで、および/または溝の形の複合構造物24hはどれも滑らかな底面を有するが厚さの異なる3枚のガラスセラミック構成部品16,18,19から、および/またはトレイの形の複合構造物24iはどれも滑らかな底面を有する3枚のガラスセラミック構成部品16,18,19から、いずれも接合材20の中間層を使って形成する。
【0035】
図11は網の形の複合構造物24jを示し、図12は鍋つかみの形の複合構造物24kを示す。第1構成部品16は2枚の円板18,19を接合材20の中間層を介して載せるガラスセラミック板の形をとる。
図13は構成部品16,18,19,21からなる囲い形の複合構造物24lを示しており、接合材20の各中間層とともに、合わせて断面が四角形または長方形の構造を形成するように互いに補い合う。作製は複数の連続ステップで行う。第1被接合複合構造物は構成部品16,18と接合材20の中間層とから形成し、第2被接合複合構造物は構成部品19,21と接合材20の中間層とから形成する。2つの被接合複合構造物はさらに、接合材20の中間層で接着すると、複合構造物24lが形成される。
【0036】
全体としての複合構造物は、例えば、ガラスセラミック製のオーブン用の管またはガラスセラミック製の閉鎖型暖炉インサートであってもよい。
図14は、U字形構成部品16と板状構成部品18とから接合材の中間層を使用して作製する囲い形の長方形の複合構造物24mによる別のアプリケーションを示す。
図15および図16は、それぞれ円筒形または半円筒形の複合構造物24nまたは24oを示しており、平らな縁部18,19を装着している。
【0037】
接着する構成部品は重力の影響で接着するのが好ましい。
【実施例】
【0038】
〈実施例1〉
接着する構成部品は、Schott AG社が商品番号8721で販売するLASガラスセラミック材料であるRobax(登録商標)の2枚の長方形板からなる。使用する接合材は、Schott AG社がCeran‐Color(登録商標)の商品名で商品番号8557で販売する高IR吸収ガラスセラミック材料である。
【0039】
250×150mmの寸法の板として接着する構成部品を、1mm厚さの板としてCeran‐Color(登録商標)からなる接合材の中間層とともに、IRヒータユニットに重ねて置き、その後40秒間加熱する。
Ceran‐Color(登録商標)はCo,Fe,MnおよびNiをそれぞれ0.1重量%から0.3重量%の濃度で含有するLASガラスセラミック材料であり、すなわち着色成分の総含有量が0.4重量%から1.2重量%である。
【0040】
クールダウンした後、2つの構成部品を接合材で生成される物質結合を介して複合構造物に接合する。
接着する構成部品と接合材はどちらも緑色ガラスの状態で使用し、その後作製された複合構造物を適切な温度処理で、例えば、750℃に加熱し、1時間保持し、900℃まで加熱し、1時間保持し、さらに室温まで冷却してセラミック化した。
【0041】
このように作製された複合構造物は、例えば、暖炉用シールドとして利用してもよい。
〈実施例2〉
Schott AG社が商品番号8724で販売している材料のClertrans(登録商標)製の、接着する2つの構成部品を、接合材としてCeran‐Color(登録商標)を使用し、他は実施例1と同じ条件で接合した。
〈実施例3〉
Schott AG社が商品番号8701で販売している材料のSuprema(登録商標)LASガラスセラミック製の2つの構成部品を、Schott AG社が商品番号8575で販売している材料のCeran‐Hightrans(登録商標)からなる接合材の中間層を使用して、他は実施例1と同じ条件で接着した。
【0042】
Ceran‐Hightrans(登録商標)は、着色成分としてバナジウムを0.4重量%から1.2重量%の割合で含有するLASガラスセラミック材料である。
そのように作製された複合構造物は特にセラミックトッププレートに採用してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス系材料製構成部品(16,18)を接合する方法であって、
第1(16)構成部品および少なくとも1つの第2(18)構成部品を、接合材(20)の中間層をその間に挟んで組み立てることによって被接合複合構造物を形成し、前記接合材(20)は接合する前記構成部品(20)よりも高い放射線吸収能を有し、前記被接合複合構造物の少なくとも前記接合材(20)の領域に、前記接合材(20)が前記構成部品(16,18)と前記接合材(20)とを接着して複合構造物を作製するのに十分軟化されるまで、放射エネルギーを照射し、
前記構成部品(16,18)および前記接合材(20)は熱処理によりガラスセラミックに転移できるガラスからできており、さらに前記複合構造物は前記ベースガラス構成部品(16,18)および前記ガラス接合材からガラス状複合構造物に形成されて、その後セラミック化されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記接合材(20)は、少なくともUR範囲、可視範囲、IR範囲またはマイクロ波範囲でより高い放射線吸収能を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照射は、IR放射、UV放射、可視光、マイクロ波放射またはレーザ放射を使って行うことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
接着する前記構成部品(16,18)は、緑色ガラスの状態のリチウムアルミノケイ酸塩ガラスセラミック(LASガラスセラミック)からなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記赤外線範囲で吸収するガラスであり、好ましくは接合する前記構成部品と同じガラス成分を実質的に含むとともに、さらに前記IR範囲での吸収力が強い成分を含む接合材(20)を使用することを特徴とする、前述の請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
Co,Fe,Mn,Ni,Cr,Sn,Ti,Zn,V,Nb,Au,Ag,Cu,Mo,Rh,Dy,Pr,Nd,Ce,Eu,Tm,ErおよびYbの酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの吸収成分を含む接合材(20)を使用することを特徴とする、前述の請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
吸収成分の総含有量が少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、さらに好ましくは少なくとも0.3重量%、最も好ましくは少なくとも0.4重量%である接合材(20)を使用することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
吸収成分の最高総含有量が、1重量%、または2重量%、または5重量%である接合材(20)を使用することを特徴とする、前述の請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記構成部品は以下の成分(酸化物基準の重量%)
LiO: 2〜5
Al: 18〜28
SiO: 50〜70
を含むベースガラスからなり、前記接合材は(重量%で)
LiO: 2〜5
Al: 18〜28
SiO: 50〜70
吸収成分: 0.1〜5
を含むことを特徴とする、前述の請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記構成部品は以下の成分(酸化物基準の重量%)
SiO: 50〜70
Al: 18〜28
LiO: 2〜5
NaO: 0〜3
O: 0〜3
MgO: 0〜3
CaO: 0〜3
SrO: 0〜3
BaO: 0〜4
ZnO: 0〜3
TiO: 0〜6
ZrO: 0〜4
SnO: 0〜2
ΣTiO+ZrO+SnO: 2.5〜6
: 0〜8
F: 0〜1
: 0〜2
清澄剤: 0〜2
を含むベースガラスからなり、前記接合材は0.1〜2重量%の着色酸化物をさらに含むことを特徴とする、前述の請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記赤外線エネルギーを生成するために、放射温度が少なくとも1500K、好ましくは少なくとも2000K、より好ましくは少なくとも2700K、最も好ましくは少なくとも3000KのIRヒータユニット(10)を使用することを特徴とする、前述の請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記構成部品(16,18)を、好ましくは前記被接合複合構造物を照射する前に前記ガラス転移温度Tを超える温度まで予熱することを特徴とする、前述の請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
好ましくはLASガラスからなる前記構成部品を少なくとも600℃の予熱温度まで予熱し、前記接合材は1分経たないうちに、好ましくは最長で30秒以内に前記接合材の接着温度、好ましくは1100℃から1350℃までIR放射により加熱して、最長で120秒まで、好ましくは5〜60秒間前記接着温度で保持することによって前記複合構造物の接着を行い、その後冷却することを特徴とする、前述の請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記複合構造物を10分経たないうちにセラミック化温度未満の温度に冷却し、好ましくは1〜5秒以内に750℃未満まで冷却することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複合構造物は接着後に、セラミック化サイクルを開始する前に、前記構成部品の前記ガラス転移温度T以下まで冷却することを特徴とする、前述の請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの第1(16)構成部品および1つの第2(18)構成部品と、接合材(20)の中間層とから照射により作製された第1複合構造物を、接合材の中間層を介して別の構成部品と接合して別の被接合複合構造物を形成し、その後前記接合材(20)を、前記接合材(20)が前記構成部品を接着するのに十分に軟化するまで照射することを特徴とする、前述の請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
接着する前記構成部品(16,18)はゼロ膨張材料からなることを特徴とする、前述の請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ガラスセラミック製、好ましくはLASガラスセラミック製の少なくとも1つの第1および1つの第2構成部品(16,18)からなり、ガラスセラミックからなるとともに、前記第1および第2構成部品より高い放射線吸収能を有する接合材(20)を介して互いに接着する複合構造物。
【請求項19】
前記接合材(20)は、赤外線範囲で吸収するガラスセラミック、好ましくはLASガラスセラミックからなることを特徴とする、請求項18に記載の複合構造物。
【請求項20】
使用される前記接合材(20)は、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、さらに好ましくは少なくとも0.3重量%、最も好ましくは少なくとも0.4重量%で、最高で5重量%、好ましくは最高で1重量%までの吸収成分の総含有量を含むLASガラスセラミックであることを特徴とする、請求項18または19に記載の複合構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−519810(P2011−519810A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507819(P2011−507819)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003144
【国際公開番号】WO2009/135622
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】