説明

ガラスドアのしなり防止機構

【課題】 一枚ガラスによるガラスドアのしなりを抑止乃至抑制できる機構を提供すること。
【解決手段】 矩形の板ガラスを主体としその一側がヒンジで支持されて開閉されるように設けられるガラスドアGDにおいて、そのガラスドアGDのヒンジ側の側縁の略全高に亘りしなり防止用の補強材5を取付けると共に、戸先側の側縁近傍に、当該ドアGDの高さ方向の略全域に及ぶ縦向きのドア引手6,7を設けたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明ガラスドアの撓り(しなり)防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物や屋内の出入口や間仕切壁などに、光量の取込みや景観などのため、一枚ガラスを用いたガラスドアが設置されることがある。
【0003】
一枚ガラスによるガラスドアは、その設置目的に鑑みると、ドア表面の内部側(内側)に補強部材など光量の取込みや景観性を阻害するおそれのある部材を設けにくい。このため、使用するガラス板を厚くしたり、強化ガラスや合せガラスを用いるなどの強度の強化対策が採られるが、ガラスドアの大きさ、特に高さ或は高さと幅が大きいと、ガラス自体の材質や構造では十分な強度が得られないことがある。
【0004】
特に、背が高いガラスドアであって、一側の上,下にドア開閉の中心になるピボット点がやヒンジ設定されたドアでは、ピボット点(ヒンジ)側は上下端部が固定されているため、開閉の度に中間部がしなりが生じ、また、戸先側(非ピボット点[非ヒンジ]側)では、上,下端が自由であるためその上下端側にしなりが発生し、これらのしなりがガラスドアに低周波の揺れをもたらす。
【0005】
大形ガラスドアの上記のようなしなり挙動やそのしなりによるドアの揺れは、ガラスドアが大形(幅もあって背も高い)である程大きく現われ、そのドアを開閉する者や回りにいる者にガラスドアである故の不安感を抱かせてしまうという問題がある。しかし、特許文献1などの従来技術に上記のようなガラスドアのしなりに着目した技術は開示されていない。
【特許文献1】実用新案登録第3283199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明では、一枚ガラスによるガラスドアのしなりを抑止乃至抑制できる機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明しなり防止機構の構成は、矩形の板ガラスを主体としその一側がヒンジで支持されて開閉されるように設けられるガラスドアにおいて、そのガラスドアのヒンジ側の側縁の略全高に亘りしなり防止用の補強材を取付けると共に、戸先側の側縁近傍に、当該ドアの高さ方向の略全域に及ぶ縦向きのドア引手を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明は、上記構成において、引手はガラスドアの表裏両面に設け、一方の引手の取付けと他方の引手の取付けを、当該ドアを通して結合した構成とする。この場合において、両引手の取付け手段であるブラケットの位置を同一にし、各ブラケットの位置に対応した部位のガラスドアに両ブラケットの結合用穴を設ける。
【0009】
本発明ではまた、戸先側に設ける引手の取付け手段をドアに取付け保持するため、戸先側の側縁にその上下全域に亘るしなり防止用の補強材を設け、当該補強材に引手取付け手段、例えば、ブラケットを保持させる構成とすることもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、矩形の板ガラスを主体としその一側がヒンジで支持されて開閉されるように設けられガラスドアにおいて、そのガラスドアのヒンジ側の側縁の略全高に亘りしなり防止用の補強材を取付けると共に、戸先側の側縁近傍に、当該ドアの高さ方向の略全域に及ぶ縦向きのドア引手を設けてガラスドアのしなり防止機構としたので、ガラスドアの特色や特長を殆んど損なうことなく、そのしなりを効果的に防止することができる。
また、本発明しなり防止機構は、至って簡単な構造であるから、低コストで容易に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明しなり防止機構の一例の実施の形態について、図を参照して説明する。
図1は本発明しなり防止機構の幅方向中間を省略した正面図、図2は図1の右側面図、図3は図1のA−A矢視拡大図である。
【0012】
図において、Fは建物の床、Cは天井である。本発明機構を適用するガラスドアGDは、図1の左側端近傍の上,下端部において、天井C側のドアクローザ1の軸1aと床F側のドア受け2の軸2aにピボット支持されることにより、両軸1a,2aを結ぶ線Lを回転中心として開閉動作をするように形成されている。ここで、ガラスドアGDの本体であるガラスには、強化合せガラスの板を使用しているが、本発明を適用するガラスドアは、そのガラスの材質,構造を問ず、いずれのガラス板にも適用可能である。合せガラスを使用すると、シート状接着剤の色,模様などを自由に選択,設定できるので、デザインの高い自由度が得られる。
【0013】
上記のガラスドアGDにおいては、上端と下端の縁には、一例として金属製ビーム材や幅木材などによる上,下の縁部材3,4が取付けられており、前記ドアの回転軸1a,2aは前記縁部材3,4に設けられた受け部3aと同4aに支持される。縁部材3,4は、図示しないが2枚の金属板や断面U字状(又は逆U字状)の板部材により接着剤や滑り止め帯材、並びに、反力金具やスペーサを介してガラスドアGDの上,下端縁を表裏から挟み、挟んだ状態で板材同士をボルト締結して、ガラスドアGDの上下端縁を緊結している。この縁部材3,4によりガラスドアGDの幅方向でのしなりを抑止している。
【0014】
図1のガラスドアGDの左側端には、その側端のほぼ全高に亘り平断面略コ字状をなす補強材5が取付けられている。補強材5の材質は、金属,プラスチックのいずれでもよい。この補強材は、一例として接着剤によってガラスドアGDの側端縁に被せた状態で固着されている。なお、固着手段は接着剤に限られない。例えば、ビス止めやビス止めと接着剤の併用などであってもよい。
【0015】
上記補強材5の装着により、ガラスドアGDのヒンジ(軸1a,2a)側の、開閉に伴い現われるしなり(撓り)乃至そのしなりによるドアの揺れを抑止乃至抑制することができる。
【0016】
一方、上記ドアGDの戸先側には、通常、ドア開閉用の引手が設けられるが、本発明ではこの引手を、戸先側における当該ドアGDのほぼ全高に亘る長さを有する引手6,7であって、しかも、その引手6,7をドアGDの表裏両面に設ける構成を採った。8,9は上記引手6,7をガラス面から浮かせた状態で取付けるためのブラケットで、図の例ではガラスドアGDの戸先側の高さ方向4箇所に穴10をあけ、両面の各ブラケット8,9をボルト11により引寄せて締結し結合する取付け態様にしている。
【0017】
引手6,7の上記配設と取付け態様によって、このガラスドアGDの戸先側に生じていたドア開閉に伴うしなり(撓り)乃至このしなりによる揺れを、ほぼ完全に抑制することができる。引手6,7の取付けの別態様として、戸先側の縁に補強材5と同旨の補強材(図示せず)を設け、この補強材に、一例として前記ブラケット8,9の連結支持部(又は結合支持部)を形成し、この支持部にブラケット8,9を取付けるようにすることもできる。なお、上記の引例6又は7は、ガラスドアGDにおける一面側にのみ設ける態様もある。また、一面側の引手6又は7をガラスドアの上下幅ほぼ一ぱいの長さで設け、他面側の引例に通常長さの引手を取付けることもある。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は以上の通りであって、ヒンジで支持されて開閉されるガラスドアにおいて、ガラスドアのヒンジ側の側縁の略全高に亘りしなり防止用の補強材を取付けると共に、戸先側の側縁近傍に、当該ドアの高さ方向の略全域に及ぶ縦向きのドア引手を設けてガラスドアのしなり防止機構にしたので、簡単な構造で長大なガラスドアの開閉に伴うしなりを効果的に防止することができる。
【0019】
しかも、その防止機構は、ガラスドアのヒンジ側の縁に取付けられる目立ち難い縁部材のような補強材と通常設けられる引手態様の引手によって形成したので、本発明撓り防止機構を備えないガラスドアと見た目も殆んど変らず、しなり防止機構が目障りになることもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明しなり防止機構の幅方向中間を省略した正面図。
【図2】図1の右側面図。
【図3】図1のA−A矢視拡大図。
【符号の説明】
【0021】
GD ガラスドア
1 ドアクローザ
2 ドア受け
3,4 上,下縁部材
5 補強材
6,7 表裏の引手
8,9 ブラケット
10 穴
11 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の板ガラスを主体としその一側がヒンジで支持されて開閉されるガラスドアにおいて、ガラスドアのヒンジ側の側縁の略全高に亘りしなり防止用の補強材を取付けると共に、戸先側の側縁近傍に、当該ドアの高さ方向の略全域に及ぶ縦向きのドア引手を設けたことを特徴とするガラスドアのしなり防止機構。
【請求項2】
引手はガラスドアの表裏両面に設け、一方の引手の取付けと他方の引手取付けを、当該ドアを通して結合した請求項1のガラスドアのしなり防止機構。
【請求項3】
戸先側の側縁にその上下ほぼ全高に亘るしなり防止用の補強材を設け、当該補強材に引手の取付け手段を保持させるようにした請求項1のガラスドアのしなり防止機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−108517(P2009−108517A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279548(P2007−279548)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】