説明

ガラスラン及びその組付構造

【課題】ドアガラスの振動音をスポンジ材などを使用することなく効率的に防止しうるガラスランを提供する。
【解決手段】車両のドア1に設けられた枠体2に沿って嵌装され、昇降するドアガラス3を溝部4に案内する、車外側側壁部51と車内側側壁部52とそれらを結ぶ連結壁部53からなる断面略コ字状の本体部を有し、両側壁部51,52の内面に、連結壁部53側に延び、ドアガラス3に摺接するアウタリップ部54とインナリップ部55が形成されたもので、車内側側壁部52の車外側から延びるとともに先端部が車内側側壁部52側に湾曲し、インナリップ部55がドアガラス3に摺接したとき、インナリップ部55に抑えつけられ車内側側壁部52方向へ撓むサブリップ56と、車内側側壁部52の車内側から枠体2側に向かって斜めに延びて枠体2に弾接し、インナリップ部55がドアガラス3に摺接したとき、先端部が車内側側壁部52に近づく方向に撓む側壁リップ57を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに設けられた枠体に沿って嵌装され、昇降するドアガラスを案内するガラスラン及びそのガラスランの組付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7及び図8に示すように、車両のドア1に設けられたドアサッシュ21などからなる枠体2には昇降するドアガラス3を溝部4に案内するガラスラン10が、その枠体2に沿って嵌装されている。なお、図8は図7のA−A線拡大断面図に相当するものである。
【0003】
ガラスラン10は、ドアサッシュ21の内周部位21A側に設けられ、ドアサッシュ21とそのドアサッシュ21を車外側から覆うモール材22で構成される枠体2に嵌装されている。なお、モール材22は装飾が施されたモール部22Aと、ドアサッシュ21にリベット23で取付けられるリテーナ部22Bが略T字状に形成されてなる。
また、ドアサッシュ21の外周部位21B側には、ドア1の閉時にボディパネル100のドア開口縁に弾接する中空シール部32とサブシール部33が取付基部31に一体成形されてなるドアウェザーストリップ30が取付けられている。
【0004】
ガラスラン10は、内側に溝部4を形成する断面略コ字状の本体部を有し、2つの側壁部、すなわち車外側側壁部11と車内側側壁部12と、そして車外側側壁部11と車内側側壁部12とを結ぶ連結壁部13によって形成されている。そして、車外側側壁部11の内面、すなわち、車外側側壁部11の車内側には連結壁部13側に延びるアウタリップ部14が形成され、また、車内側側壁部12の内面、すなわち、車内側側壁部12の車外側には同じく連結壁部13側に延びるインナリップ部15が形成されている。アウタリップ部14とインナリップ部15は、ドアガラス3を挟持するように設けられ、ドアガラス3の表面に摺接する。
そして、ガラスラン10は、ドアサッシュ21の車内側に取付けられたサッシュインナーガーニッシュ5のフランジ5Aを、車内側側壁部12に形成された溝部12Aに挿入して引掛けるようにして固定されている。
【0005】
このようなガラスラン10において、ドアガラス3を少なくともインナリップ部15に摺接する程度、少し下げた状態でドア1を閉めると、ドアガラス3とインナリップ部15間に振動音(ラトル音)が発生するといった問題があった。
この対策として、図8に示すように、車内側側壁部12の車外側にサブリップ16を設け、インナリップ部15がドアガラス3に摺接したとき、インナリップ部15に抑えつけられることによってサブリップ16を撓ませて振動音を吸収することが知られている。
【0006】
しかしながら、これによるとドアガラス3の振動可能範囲は、サブリップ16が車内側側壁部12の車外側面に弾接して撓み切る底付け状態までであるので、振動音を十分に抑えることができない場合があった。
なお、ガラスランにおける風切音を防止したり、車外からの騒音や雑音を防いで遮音性の向上を図った発明は知られているが(例えば、特許文献1,2)、ドアガラス3を少し下げた状態でドア1を閉めたときに発生する振動音を防止したものではない。また、特許文献2に記載の発明では、高価な高発泡スポンジゴムが必要となる。
【0007】
一方、ドアサッシュ21をドアインナーパネル21Xの車外側にレインフォースメント21Yを固定し、枠体2の車内側をレインフォースメント21Yとしたガラスラン10の組付構造では、図9に示すように、スポット溶接による溶接面と溶接治具スペースの確保のため、ドアインナーパネル21Xとレインフォースメント21Yの端部同士の重なり幅Lを約12mm程度大きく採る必要がある。
そのため、ガラスラン10の車内側側壁部12に相対向するレインフォースメント21Yの部位21Yaを車内側に凹ませて、車内側から車外側に向けて延びるドアインナーパネル21X及びレインフォースメント21Yの端部同士の重なり幅Lを大きくしている。
【0008】
しかしながら、レインフォースメント21Yの部位21Yaを車内側に凹ませると、ガラスラン10とレインフォースメント21Yとの間には大きな隙間が生じてしまい、その結果、ガラスラン10の剛性が低下するとともに遮音性が悪化するので、これを防止するため、図9に示すように、車内側側壁部12の車内側に突出部17を設けてガラスラン10とレインフォースメント21Yとの隙間を埋める必要がある。
これによれば、隙間を埋める分、ガラスラン10の断面積が大きくなるので、ガラスラン10の重量が重くなるとともに材料費も余分にかかる。
なお、スポット溶接を施すためにパネル形状を変化させる発明は知られているが(例えば、特許文献3)、それにともないガラスランの断面積を必然的に大きくするようなものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−224095号公報
【特許文献2】特開2007−76441号公報
【特許文献3】特開平11−222040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的とするところは、ドアガラスの振動音をスポンジ材などを使用することなく効率的に防止しうるガラスランを提供することにある。
また、他の目的は、ガラスランの断面形状を特に大きくすることのないガラスランの組付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1に係るガラスランは、車両のドア(1)に設けられた枠体(2)に沿って嵌装され、昇降するドアガラス(3)を溝部(4)に案内する、車外側側壁部(51)と車内側側壁部(52)とそれらを結ぶ連結壁部(53)からなる断面略コ字状の本体部を有し、両側壁部(51,52)の内面に、前記連結壁部(53)側に延び、前記ドアガラス(3)に摺接するアウタリップ部(54)とインナリップ部(55)が形成されたガラスラン(50)であって、
前記車内側側壁部(52)の車外側から、車外側に向かって斜めに延びるとともにその先端部が前記車内側側壁部(52)側に湾曲し、前記インナリップ部(55)がドアガラス(3)に摺接したとき、前記インナリップ部(55)に抑えつけられ前記車内側側壁部(52)方向へ撓むサブリップ(56)と、
前記車内側側壁部(52)の車内側から前記枠体(2)側に向かって斜めに延びて前記枠体(2)に弾接し、前記インナリップ部(55)がドアガラス(3)に摺接したとき、その先端部が前記車内側側壁部(52)に近づく方向に撓む側壁リップ(57又は67)を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記車内側側壁部(52)に対する前記側壁リップ(57又は67)の付け根部の位置を、前記サブリップ(56)の付け根部の位置にするか、又は前記サブリップ(56)の付け根部の位置と前記連結壁部(53)との連結位置の間にしたことを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記車内側側壁部(52)は、車内側に突出した曲線状の断面形状の部位(52Y)を有することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載のガラスランの組付構造は、前記請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のガラスラン(50)を前記枠体(2)に沿って嵌装するガラスランの組付構造であって、
前記枠体(2)の車内側は、ドアインナーパネル(21X)の車外側に固定されたレインフォースメント(21Y)からなり、
前記ドアインナーパネル(21X)と前記レインフォースメント(21Y)を固定する溶接部分(Z)と固定しない非溶接部分を前記ドア(1)の周方向に交互に設け、
前記溶接部分(Z)では、前記ガラスラン(50)の車内側側壁部(52)に相対向する前記レインフォースメント(21Y)の部位(21Ya)を車内側に凹ませて、車内側から車外側に向けて延びる前記ドアインナーパネル(21X)及び前記レインフォースメント(21Y)の端部同士の重なり幅(L)を前記非溶接部分の重なり幅と比較して大きく確保して前記溶接部分(Z)の重なり幅分溶接し、
前記ガラスラン(50)の断面形状を前記溶接部分(Z)及び前記非溶接部分にかかわらず不変とするとともに、前記側壁リップ(57又は67)を前記非溶接部分の前記レインフォースメント(21Y)に弾接させたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、前記側壁リップ(67)の長さを、前記溶接部分(Z)における前記レインフォースメント(21Y)の凹んだ部位(21Ya)にも弾接する長さにしたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、前記溶接は、スポット溶接であることを特徴とする。
【0017】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0018】
本発明のガラスランによれば、断面略コ字状の本体部を構成する車内側側壁部の車外側には、車外側に向かって斜めに延びるとともにその先端部が車内側側壁部側に湾曲するサブリップを設けるとともに、車内側側壁部の車内側には、枠体側に向かって斜めに延びて枠体に弾接する側壁リップを設け、インナリップ部がドアガラスに摺接したとき、サブリップはインナリップ部に抑えつけられ車内側側壁部方向へ撓む(このとき車内側側壁部に弾接してもよい)のに加えて、側壁リップもその先端部が車内側側壁部に近づく方向に撓むので、インナリップ部に対するドアガラスの振動可能範囲は、車内側側壁部にサブリップだけを設けた場合と比較して拡大する。
すなわち、インナリップ部にドアガラスが当接することによって発生する振動音はサブリップの撓みと側壁リップの撓みによって吸収されるので、例えば、ドアガラスを少なくともインナリップ部に摺接する程度、少し下げた状態でドアを閉めたときに発生する振動音(ラトル音)は軽減される。
これによれば、従来例で示したように、高価な高発泡スポンジゴムを使用することなく車内側側壁部にリップを設けるだけでよいので、ガラスラン全体を単一材料により一体的に押出成形すれば容易に製造することができる。
【0019】
また、本発明のガラスランによれば、車内側側壁部に対する側壁リップの付け根部の位置を、サブリップの付け根部の位置にすることもできるが、サブリップの付け根部の位置と連結壁部との連結位置の間にしてサブリップの付け根部の位置とずらすことにより、インナリップ部にドアガラスが当接するときに荷重が集中することを避けることができる。
【0020】
さらに、本発明のガラスランによれば、車内側側壁部は、車内側に突出した曲線状の断面形状の部位を有するので、インナリップ部にドアガラスが当接したときのサブリップの撓み量を大きくとることができる。
【0021】
本発明のガラスランの組付構造によれば、ガラスランが嵌装された枠体の車内側は、ドアインナーパネルの車外側にレインフォースメントが固定される構成で、ドアインナーパネルとレインフォースメントを固定する溶接部分と固定しない非溶接部分をドアの周方向に交互に設け、溶接部分では、レインフォースメントの部位を車内側に凹ませてドアインナーパネル及びレインフォースメントの端部同士の重なり幅を大きく確保するので、十分な溶接平面と溶接治具を設置するためのスペースが得られる。
よって、例えば、スポット溶接を、ドアの周方向の全周にかけて施す必要はなく、交互に設けられた溶接部分だけに施すだけでもドアインナーパネルとレインフォースメントを強固に固定することができる。
また、溶接部分ではレインフォースメントの部位を車内側に凹ませるためガラスランの車内側側壁部とレインフォースメントとの間に大きな隙間が発生するが、交互に設けられた非溶接部分では、車内側側壁部に設けられた側壁リップを非溶接部分のレインフォースメントに弾接させるので枠体内でガラスランを安定して組付けることができる。
【0022】
このように、ガラスランの断面形状を溶接部分及び非溶接部分にかかわらず不変とした状態で、ドアインナーパネルとレインフォースメントの固定と、ガラスランの組付けを安定して行うことができるので、ガラスランの断面積を特に大きくする必要はない。
よって、ガラスランの重量が特別重くなったり余分に材料費がかかりコスト高になることが防止される。
【0023】
また、本発明のガラスランの組付構造によれば、側壁リップの長さを、溶接部分におけるレインフォースメントの凹んだ部位にも弾接する長さにしたので、組付け時の保持力が一層増加する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施形態に係るガラスランを示す図7のA−A線拡大断面図である。
【図2】図1に示すガラスランにドアガラスが案内された状態を示す図7のA−A線拡大断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る別のガラスランを示す図7のA−A線拡大断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係るガラスランが組付けられたドアの外観側面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係るガラスランを示す図4のB−B線拡大断面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る別のガラスランを示す図4のB−B線拡大断面図である。
【図7】ドアの外観側面図である。
【図8】従来例に係るガラスランを示す図7のA−A線拡大断面図である。
【図9】従来例に係る別のガラスランを示す図7のA−A線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第一実施形態)
図1,図2及び図7を参照して、本発明の第一実施形態に係るガラスラン50について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るガラスラン50を示す断面図であり、図7のA−A線拡大断面図に相当する。また、図2は、図1に示すガラスラン50にドアガラス3が案内された状態を示している。従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0026】
本発明の第一実施形態に係るガラスラン50は、従来例と同様に車両のヒドンタイプのドア1に設けられた枠体2に嵌装され、昇降するドアガラス3を溝部4に案内するものである。
枠体2は、本実施形態ではドアサッシュ21とそのドアサッシュ21を車外側から覆うモール材22で構成されている。モール材22は装飾が施されたモール部22Aと、ドアサッシュ21にリベット23で取付けられるリテーナ部22Bが略T字状に形成されてなる。このようなモール材22は、「光モール」と呼ばれるもので、モール部22Aが銀色で鏡面に仕上げられており、銀色に光っているように見せることで自動車に高級感を与えている。
【0027】
ガラスラン50は、ドアサッシュ21の内周部位21A側に設けられ、枠体2に嵌装されていて、ドアサッシュ21の外周部位21B側には、ドア1の閉時にボディパネル100のドア開口縁において車内側と車外側にそれぞれ弾接する中空シール部32とサブシール部33が取付基部31に一体成形されてなるドアウェザーストリップ30が取付けられている。
【0028】
ガラスラン50は、内側に溝部4を形成する断面略コ字状の本体部を有し、その本体部は、2つの側壁部である車外側側壁部51と車内側側壁部52と、そして車外側側壁部51と車内側側壁部52とを結ぶ連結壁部53によって形成されている。そして、車外側側壁部51の内面、すなわち、車外側側壁部51の車内側には連結壁部53側に延びるアウタリップ部54が形成され、また、車内側側壁部52の内面、すなわち、車内側側壁部52の車外側には同じく連結壁部53側に延びるインナリップ部55が形成されている。アウタリップ部54とインナリップ部55は、ドアガラス3を車外側及び車内側から挟持するように設けられ、ドアガラス3の表面に摺接する。
【0029】
また、車内側側壁部52の先端、すなわち、インナリップ部55との連結部付近には溝部52Aが形成されている。溝部52Aはドアガラス3のガラス面に略平行に延びるように形成されている。
この溝部52Aには、ドアサッシュ2の車内側に取付けられたサッシュインナーガーニッシュ5の先端が折れ曲がってなるフランジ5Aが挿入され、係止されている。フランジ5Aも溝部52Aと同様にドアガラス3のガラス面に略平行に延びるように設けられている。
【0030】
そして、車内側側壁部52の車外側には、車外側に向かって、より具体的には本体部の開口部側に向かって斜めに延びる(図1では斜め右下側に延びる)サブリップ56が設けられている。サブリップ56は、その先端部が車内側側壁部52側に湾曲していて、図2に示すように、インナリップ部55の車外側面がドアガラス3に摺接したとき、インナリップ部55の車内側面が覆い被さるにして抑えつけられ、サブリップ56の車内側面が車内側側壁部52方向へ撓む。図2では、サブリップ56は車内側側壁部52に弾接している。断面形状におけるサブリップ56の長さは、インナリップ部55の長さよりも短く半分程度である。
【0031】
一方、車内側側壁部52の車内側には、枠体2側、すなわちドアサッシュ21側に向かって斜めに延びる(図1では斜め左下側に延びる)側壁リップ57が設けられている。側壁リップ57は、その先端部が車内側側壁部52側に湾曲していて、図1に示すように、インナリップ部55がドアガラス3に摺接していないときでもその先端部の車内側面がドアサッシュ21に弾接している。そして、図2に示すように、インナリップ部55がドアガラス3に摺接したとき、ドアガラス3からの荷重をインナリップ部55を介して受け、側壁リップ57の先端部は車内側側壁部52に近づく方向に撓み、その先端部の車内側面がドアサッシュ21に弾接する量は大きくなる。また、側壁リップ57は車内側側壁部52に弾接してもよい。断面形状における側壁リップ57の長さは、サブリップ56の長さと同程度である。
【0032】
また、車内側側壁部52に対する側壁リップ57の付け根部の位置を、サブリップ56の付け根部の位置と同位置にすることもできるが、本実施形態では車内側側壁部52に対する側壁リップ57の付け根部の位置を、連結壁部53との連結位置の間にしている。また、車内側側壁部52に対する側壁リップ57の付け根部の位置を、インナリップ部55がドアガラス3に摺接したとき、車内側に撓んだインナリップ部55の先端部が弾接する車内側側壁部52の位置と同じ位置かそれよりもサブリップ56の付け根部の位置側にしている。
【0033】
さらに、ここでは、車内側側壁部52を、その断面形状において、連結壁部53側に延びる直線状の部位52Xと、インナリップ部55側に延びる曲線状の部位52Yとで形成している。曲線状の部位52Yは、略中央部が車内側に突出するように湾曲している。直線状の部位52Xと曲線状の部位52Yとの連結位置の車外側からサブリップ56は延設されている。
【0034】
なお、車内側側壁部52には連結壁部53との連結位置から車内側に向けてリップ58が延設され、その先端部はドアサッシュ21に弾接している。また、車外側側壁部51には連結壁部53との連結位置から車外側に向けてリップ59が延設され、その先端部はモール材22に弾接している。さらに、連結壁部53にもリベット23を車外側と車内側から挟む位置に2つのリップ60,61が延設されていて、それら先端部はドアサッシュ21の内周部位21Aに弾接している。
【0035】
以上のように構成された本実施形態に係るガラスラン50によれば、断面略コ字状の本体部を構成する車内側側壁部52の車外側には、本体部の開口部側に向かって斜めに延びるとともにその先端部が車内側側壁部52側に湾曲するサブリップ56を設けるとともに、車内側側壁部52の車内側には、ドアサッシュ21側に向かって斜めに延びてドアサッシュ21に弾接する側壁リップ57を設け、インナリップ部55がドアガラス3に摺接したとき、サブリップ56はインナリップ部55に抑えつけられ車内側側壁部52方向へ撓む(車内側側壁部に弾接してもよい)のに加えて、側壁リップ57もその先端部が車内側側壁部52に近づく方向に撓むので、インナリップ部55に対するドアガラス3の振動可能範囲は、車内側側壁部52にサブリップ56だけを設けた場合と比較して拡大する。
すなわち、インナリップ部55にドアガラス3が当接することによって発生する振動音はサブリップ56の撓みと側壁リップ57の撓みによって吸収されるので、例えば、ドアガラス3を少なくともインナリップ部55に摺接する程度、少し下げた状態でドア1を閉めたときに発生する振動音(ラトル音)は軽減される。
【0036】
また、車内側側壁部52に対する側壁リップ57の付け根部の位置を、サブリップ56の付け根部の位置と連結壁部53との連結位置の間にして、サブリップ56の付け根部の位置とずらしたので、インナリップ部55にドアガラス3が摺接するときに荷重が集中することを避けることができる。
【0037】
さらに、車内側側壁部52は、車内側に突出した曲線状の断面形状の部位52Yを有するので、インナリップ部55にドアガラス3が当接したときのサブリップ56の撓み量を大きくとることができる。
なお、図3に示すように、車内側側壁部52を全体的に直線状の断面形状にすることもできるが、ドアガラス3との摺接時にインナリップ部55が覆い被さる部分を、曲線状の部位52Yとするとドアガラス3に直接当接するインナリップ部55の撓み量を大きくとることができるので、ドアガラス3の振動音を大きく軽減させることができる。
【0038】
なお、本発明の第一実施形態では、枠体2についてはドアサッシュとモール材で構成したが、これにかえてドアサッシュ単体あるいはドアフレーム単体で構成された枠体に嵌装されるガラスランにも適用可能である。
【0039】
ここでは、ラトル音を軽減するに相応しい形態の第一実施例を上記したが、例えば、インナリップ部55の先端部は、ドアガラス3に摺接したときにサブリップ56に当接してもよく、また、サブリップ56の付け根部と側壁リップ57の付け根部は、車内側側壁部52を挟んで同じ位置でもよい。そして、側壁リップ57の付け根部がサブリップ56の付け根部より内周側(図1では下側)にあることも適用可能である。
また、サブリップ56は、ガラスラン50の本体部の開口側、図1では斜め右下に延びているが、連結壁部53側、つまり図1では斜め右上に延びるようにしてもよく、さらに、側壁リップ57も、ドア内周側、図1では斜め左下に延びているが、ドア外周側、つまり図1では斜め左上に延びるようにしてもよい。
【0040】
(第二実施形態)
次に、図4及び図5を参照して、本発明の第二実施形態に係るガラスラン50の組付構造について説明する。図4は、本発明の第二実施形態に係るガラスラン50が組付けられたドア1の外観側面図であり、図5は、図4のB−B線拡大断面図である。第一実施形態で示したものと同様の部分には同一符号を付した。
【0041】
本発明の第二実施形態は、図5に示すように、枠体2の車内側は、ドアサッシュ21となるドアインナーパネル21Xの車外側に補強用のレインフォースメント21Yがスポット溶接によって固定されたものであり、図4に示すように、ドア1の周方向に沿って溶接部分Zと非溶接部分とを交互に設けて、溶接部分Zと非溶接部分とでレインフォースメント21Yの形状を可変したものである。
【0042】
溶接部分Zにおける断面形状は、図5に示すように、ガラスラン50の車内側側壁部52に相対向するレインフォースメント21Yの部位21Yaを車内側に略三角状に凹ませて、車内側から車外側に向けて延びるドアインナーパネル21X及びレインフォースメント21Yの端部同士の重なり幅Lを非溶接部分の重なり幅と比較して大きく確保して、円滑なスポット溶接を可能にしている。
また、非溶接部分における断面形状、すなわち、図4のC−C線拡大断面図は、図1に示すものと同様であり、レインフォースメント21Yが部分的に大きく車内側に凹ませられる構造ではない。よって、ドアインナーパネル21X及びレインフォースメント21Yの端部同士の重なり幅は、溶接部分Zと比懐して小さくその部分には特にスポット溶接は施されていない。
【0043】
そして、枠体2に嵌装されるガラスラン50の断面形状は溶接部分Z及び非溶接部分にかかわらず不変であり、第一実施形状で示したものと同一である。
すなわち、ガラスラン50の車内側側壁部52の車内側に延設された側壁リップ57は、非溶接部分ではインナリップ部55にドアガラス3が摺接しないときでもレインフォースメント21Yに弾接して組付けられたガラスラン50を十分保持している。なお、側壁リップ57は、溶接部分Zではインナリップ部55にドアガラス3が摺接しないときには、図5に示すように、レインフォースメント21Yに弾接していないが、弾接するように設定してもよい。
【0044】
このようなガラスラン50の組付構造によれば、ドアインナーパネル21Xとレインフォースメント21Yを固定する溶接部分Zと固定しない非溶接部分をドア1の周方向に交互に設け、溶接部分Zでは、レインフォースメント21Yの部位21Yaを車内側に凹ませてドアインナーパネル21X及びレインフォースメント21Yの端部同士の重なり幅Lを大きく確保するので、スポット溶接するときに、十分な溶接平面と溶接治具を設置するためのスペースが得られる。
これによれば、スポット溶接を、ドアの周方向の全周にかけて施す必要はなく、交互に設けられた溶接部分だけに施すだけでもドアインナーパネル21Xとレインフォースメント21Yを強固に固定することができる。
また、溶接部分Zではレインフォースメント21Yの部位21Yaを車内側に凹ませるためガラスラン50の車内側側壁部52とレインフォースメント21Yとの間に大きな隙間が発生するが、非溶接部分では、車内側側壁部52に設けられた側壁リップ57を非溶接部分のレインフォースメント21Yに弾接させるので枠体2内でガラスラン50を安定して組付けることができる。
【0045】
このように、ガラスラン50の断面形状を溶接部分Z及び非溶接部分にかかわらず不変とした状態で、ドアインナーパネル21Xとレインフォースメント21Yの固定と、ガラスラン50の組付けを安定して行うことができるので、ガラスラン50の断面積を特に大きくする必要はない。なお、溶接部分Zと非溶接部分は交互に設けられるため、溶接部分Zにおいて車内側側壁部52とレインフォースメント21Yとの間に大きな隙間が生じても風切音の影響はあまりない。
【0046】
なお、図6に示すように、断面形状における側壁リップ67の長さを側壁リップ57よりも長くして、溶接部分Zにおけるレインフォースメント21Yの凹んだ部位21Yaにも弾接する程度にすることもできる。
これによれば、枠体2に対するガラスラン50の組付け時の保持力が一層増加する。
【0047】
なお、本発明の第二実施形態では、ドアインナーパネル21Xとレインフォースメント21Yをスポット溶接によって固定する場合について説明したが、他の固定方法でも適用しうる。
【0048】
また、本実施形態では、フロントドア1のルーフ断面を用いて説明したが、これに限定されず、リヤドアであってもよく、またピラー側に適用してもよい。
そして、図示しないが、第一実施形態においても第二実施形態においても、車内側側壁部52の先端の溝部52Aとフランジ5Aの間R、又は、連結壁部53と車外側側壁部51の連結位置のリップ59と連結壁部53の車外側のリップ60の間P、そして、連結壁部53と車内側側壁部52の連結位置のリップ58と連結壁部53の車内側のリップ61の間Qに各々、又は、2ケ所又は全てに比重0.05〜0.4のスポンジ材を設けることでドアガラス3とインナリップ部55間の振動音(ラトル音)をより一層抑制することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ドア
2 枠体
3 ドアガラス
4 溝部
5 サッシュインナーガーニッシュ
5A フランジ
10 ガラスラン
11 車外側側壁部
12 車内側側壁部
12A 溝部
12X
12Y
13 連結壁部
14 アウタリップ部
15 インナリップ部
16 サブリップ
17 突出部
21 ドアサッシュ
21A 内周部位
21B 外周部位
21C 凹部
21X ドアインナーパネル
21Y レインフォースメント
21Ya レインフォースメント21Yの凹んだ部位
22 モール材
22A モール部
22B リテーナ部
23 リベット
30 ドアウェザーストリップ
31 取付基部
32 中空シール部
33 サブシール部
50 ガラスラン
51 車外側側壁部
52 車内側側壁部
52A 溝部
53 連結壁部
54 アウタリップ部
55 インナリップ部
56 サブリップ
57 側壁リップ
58〜61 リップ
100 ボディパネル
L 重なり幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられた枠体に沿って嵌装され、昇降するドアガラスを溝部に案内する、車外側側壁部と車内側側壁部とそれらを結ぶ連結壁部からなる断面略コ字状の本体部を有し、両側壁部の内面に、前記連結壁部側に延び、前記ドアガラスに摺接するアウタリップ部とインナリップ部が形成されたガラスランであって、
前記車内側側壁部の車外側から、車外側に向かって斜めに延びるとともにその先端部が前記車内側側壁部側に湾曲し、前記インナリップ部がドアガラスに摺接したとき、前記インナリップ部に抑えつけられ前記車内側側壁部方向へ撓むサブリップと、
前記車内側側壁部の車内側から前記枠体側に向かって斜めに延びて前記枠体に弾接し、前記インナリップ部がドアガラスに摺接したとき、その先端部が前記車内側側壁部に近づく方向に撓む側壁リップを設けたことを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
前記車内側側壁部に対する前記側壁リップの付け根部の位置を、前記サブリップの付け根部の位置にするか、又は前記サブリップの付け根部の位置と前記連結壁部との連結位置の間にしたことを特徴とする請求項1に記載のガラスラン。
【請求項3】
前記車内側側壁部は、車内側に突出した曲線状の断面形状の部位を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスラン。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のガラスランを前記枠体に沿って嵌装するガラスランの組付構造であって、
前記枠体の車内側は、ドアインナーパネルの車外側に固定されたレインフォースメントからなり、
前記ドアインナーパネルと前記レインフォースメントを固定する溶接部分と固定しない非溶接部分を前記ドアの周方向に交互に設け、
前記溶接部分では、前記ガラスランの車内側側壁部に相対向する前記レインフォースメントの部位を車内側に凹ませて、車内側から車外側に向けて延びる前記ドアインナーパネル及び前記レインフォースメントの端部同士の重なり幅を前記非溶接部分の重なり幅と比較して大きく確保して前記溶接部分の重なり幅分溶接し、
前記ガラスランの断面形状を前記溶接部分及び前記非溶接部分にかかわらず不変とするとともに、前記側壁リップを前記非溶接部分の前記レインフォースメントに弾接させたことを特徴とするガラスランの組付構造。
【請求項5】
前記側壁リップの長さを、前記溶接部分における前記レインフォースメントの凹んだ部位にも弾接する長さにしたことを特徴とする請求項4に記載のガラスランの組付構造。
【請求項6】
前記溶接は、スポット溶接であることを特徴とする請求項4又は5に記載のガラスランの組付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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