説明

ガラスラン

【課題】中空部が潰れることによる不具合を抑制でき、ドアガラス閉時における衝突音を効果的に抑制することができるガラスランを提供する。
【解決手段】ガラスラン1の上辺部2は、基底部18、車外側側壁部19及び車内側側壁部20を有する断面略コ字形状の本体部21を備えている。また、車外側側壁部19の略先端にはシールリップ16が形成されている。一方、車内側側壁部20の略先端には、本体部21の内側(基底部18方向)に向けて延び、かつ、基底部18の車外側端部18aの内側に連結されたシール部26が形成されている。シール部26、基底部18及び車内側側壁部20により、断面略L字形状の中空部27が形成されている。さらに、基底部18の中央部18は、ドアサッシュDSとの間に所定の空間23を隔てるように構成されているとともに、軟質層24を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに設けられたドアサッシュに取付けられるガラスランに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両のドアには、ドアガラスの周縁を保持、シール等するためのガラスランが装着されている。ガラスランは、例えばドアの窓枠形状に沿って前縦辺部、上辺部及び後縦辺部からなる。また、ガラスランは、基底部及び該基底部から延びる一対の側壁部よりなる断面略コ字状の本体部と、前記両側壁部の略先端から本体部内側に延びる一対のシールリップとを有している。上記ガラスランは、本体部がドアサッシュに取着され、ドアガラスの車内側及び車外側が前記一対のシールリップによりシールされるようになっている。
【0003】
従来、ドアガラスを閉じ切り状態とする場合、ドアガラスがガラスランの上辺部に当接する際の衝撃に起因して、「ドスン」という衝突音が発生するという問題がある。そこで、かかる衝突音を低減させるべく、図9に示すように、基底部51に対応して、その内側に中空部52を有する断面略コ字状のクッション機構53を設けたガラスラン54が考えられる(例えば、特許文献1参照。)。この場合、該クッション機構53を介してドアガラスの上縁が基底部51に当たるため、衝撃が緩和されて衝突音が軽減される。
【特許文献1】特許第3312554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、所定のサイズを維持しつつ、シールリップによるシール性の低下を招くことなく基底部51にクッション機構53を設けようとした場合、上記中空部52を比較的狭く、小さくせざるを得ない。このため、ガラスラン54の押出成形時にクッション機構53が基底部51に付着し、中空部52が潰れてしまうおそれがある。また、中空部の潰れを防止するために、中空部内にエアーを吹き込みつつ押出成形するといった対策が行われているが、中空部が小さな場合、製造方法が非常に複雑化してしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、中空部が潰れることによる不具合を抑制でき、ドアガラス閉時における衝突音を効果的に抑制することができるガラスランを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0007】
手段1.基底部及び該基底部から延びる車内側側壁部及び車外側側壁部よりなり断面略コ字状をなす本体部を有し、前記本体部がドアサッシュに取着されてなるガラスランであって、ドアガラスの上辺側に対応するガラスランの上辺部に関し、前記車内側側壁部の略先端部から延び、かつ、ドアサッシュ取着状態で少なくとも前記基底部及び前記車内側側壁部にほぼ沿ったシール部を一体に成形するとともに、前記シール部と本体部とにより、断面略コ字状の本体部内側に中空部を形成し、前記中空部は、少なくとも前記基底部側に対応した部位に空間を有し、当該基底部から前記車内側側壁部または前記車外側側壁部に沿って連続した断面略L字形状の1つの空間となるように構成したことを特徴とするガラスラン。
【0008】
上記手段1によれば、ガラスランの上辺部には、車内側側壁部の略先端部から延び、かつ、前記基底部及び前記車内側側壁部にほぼ沿ったシール部が一体成形されている。ドアガラス閉時には、シール部がドアガラスの上端面及び上縁部の車内壁面に当接させられ、ドアガラスをシールすることができる。また、シール部と本体部とによって、少なくとも基底部側に対応した部位と基底部との間に中空部が形成されている。このため、ドアガラスを閉じ切る際における、ドアガラスの当接に基づく衝撃をシール部と中空部とによって、十分に吸収させることができる。従って、ドアガラスを閉じ切られる際の衝突音を飛躍的に低減させることができる。さらに、基底部のみに対応した比較的小さな中空部が形成されている従来技術と異なり、手段1では、基底部から車内側側壁部または車外側側壁部に沿って略L字形状の比較的大きな中空部が形成されている。また、一般に、ガラスランの押出成形では、車内側側壁部及び車外側側壁部の先端側を本体部の外側に開くようにして成形される。この点、本手段では、前記略L字形状の中空部の空間を変化させることにより広げた状態で成形することが可能である。このため、上辺部の押出成形時等において、シール部が本体部に付着して中空部が潰れてしまうといった事態を抑制できる。その結果、中空部が潰れることによる不具合を抑制できる。さらに、シール部はドアガラスの車内側に当接させられるため、当接による反発応力がドアガラスに加えられ、ドアガラスが車外側へ押圧され易くなる。そのため、ドアガラス閉時におけるフラッシュサーフェス化(車体の外表面とドアガラス外表面との面一化)を図りやすいというメリットがある。
【0009】
手段2.基底部及び該基底部から延びる車内側側壁部及び車外側側壁部よりなり断面略コ字状をなす本体部を有し、前記本体部がドアサッシュに取着されてなるガラスランであって、ドアガラスの上辺側に対応するガラスランの上辺部に関し、前記車外側側壁部の略先端から前記断面略コ字状の本体部内側に延びるシールリップと、前記車内側側壁部の略先端部から前記本体部内側に延び、前記基底部における前記車外側端部に連結され、かつ、前記ドアガラスの上端面、及び、上縁部の車内壁面に当接可能なドアガラス当接面を有するシール部と、を一体に成形するとともに、前記シール部と本体部とから形成される中空部は、ドアサッシュ取着状態で少なくとも前記基底部側に対応した部位に空間を有し、前記基底部から前記車内側側壁部に沿って連続した断面略L字形状の1つの空間となるように構成したことを特徴とするガラスラン。
【0010】
上記手段2によれば、基本的に手段1と同様の作用効果が奏される。また、ドアガラス閉時には、車外側のシールリップとシール部のドアガラス当接面とが、ドアガラスの車外壁面、上端面及び車内壁面に当接させられるため、ドアガラスを確実にシールすることができる。特に、車外側のシールは、車外側シールリップにより行われるので、リップの可撓性により、バラツキを吸収できるとともに、反発力によって、シール性を向上させている。
【0011】
手段3.基底部及び該基底部から延びる車内側側壁部及び車外側側壁部よりなり断面略コ字状をなす本体部を有し、前記本体部がドアサッシュに取着されてなるガラスランであって、ドアガラスの上辺側に対応するガラスランの上辺部に関し、前記車外側側壁部及び前記車内側側壁部の略先端部同士を連結するとともに、前記断面略コ字状の本体部内側に延び、前記本体部に沿って断面略U字形状をなすシール部を一体に形成するとともに、前記シール部と本体部とにより、前記断面略コ字状の本体部内側に中空部を形成し、前記中空部は、少なくとも前記基底部側に対応した部位に空間を有するように構成することを特徴とするガラスラン。
【0012】
上記手段3によれば、基本的に手段1と同様の作用効果が奏される。また、シール部が断面略U字形状をなすため、ドアガラス閉時には、シール部がドアガラスの車外壁面、上端面及び車内壁面に沿ってほぼ隙間なく当接させられる。これにより、ドアガラスのシール性をより向上させることができる。
【0013】
手段4.前記シール部は、前記本体部よりも柔軟性のある材質により構成されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のガラスラン。
【0014】
上記手段4によれば、柔軟性のある材質によりシール部を構成することで、シール性を確保しつつ、より一層の衝突音の低減を図ることができる。
【0015】
手段5.前記シール部は、そのほぼ中央において前記基底部の車内側端部と連結する柱部を一体に形成したことを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載のガラスラン。
【0016】
手段5によれば、柱部がシール部と基底部とを連結しているため、ドアサッシュに取着した際におけるシール部の形状を安定させることができる。また、ドアガラスを閉じる際にも、シール部の位置を車外側や車内側に振れにくくさせることができる。このため、ドアガラスが当接時の衝撃によって位置ずれしてしまうといった事態を抑制でき、ドアガラスをより安定的に所定の位置に収めることができる。加えて、柱部が、基底部の中央部でなく、車内側端部に連結されているため、ドアガラスを閉じ切る際に、シール部の変形の妨げにならず、シール部をスムーズに変形させることができる。従って、衝突音をより一層低減させることができる。なお、「前記基底部の車内側端部と連結する」に代えて、「前記基底部の車内側端部と斜め方向に又は湾曲して連結する」としてもよい。
【0017】
手段6.前記基底部の前記本体部外側に、前記本体部よりも柔軟性のある材質により構成された軟質層を設けたことを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載のガラスラン。
【0018】
ドアガラスを閉じ切る際には、シール部が変形して基底部に当接する。このとき、ドアガラスによって前記シール部を介して基底部にも押圧力が加わる場合がある。このような場合においても、この手段6によれば、基底部の本体部外側に設けられ、本体部よりも柔軟性のある材質により構成された軟質層により、ドアサッシュに当接させられる際の衝撃をも吸収することができ、ドアガラスの当接に基づく衝突音を一層確実に低減させることができる。
【0019】
手段7.前記基底部において、少なくとも車内側と車外側との中間部分が、前記ドアサッシュとの間に所定の空間を隔てて取着されるように構成したことを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載のガラスラン。
【0020】
ドアガラスを閉じ切る際にシール部を介して基底部にも押圧力が加わる場合があるが、このような場合においても、この手段7によれば、基底部の中間部分が、ドアサッシュとの間に所定の空間を隔てて取着されているので、前記基底部への押圧力を、基底部が外側に変形することで吸収できる。従って、ドアサッシュに当接させられる際の衝撃を吸収することができ、ドアガラスの当接に基づく衝突音を一層確実に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
自動車ドアには、ドアガラスの外周縁に対応して、ガラスランが取付けられるようになっている。より詳しく説明すると、図2に示すように、ドアDFにはドアサッシュDSが設けられており、該ドアサッシュDSの内周に本実施形態のガラスラン1が取付けられるようになっている。
【0023】
ガラスラン1は、ドアサッシュDSの上辺側に対応する上辺部2と、前側及び後側に対応する縦辺部3,4と、上辺部2と各縦辺部3,4との端部同士を接続するコーナー部5,6とから構成される。上辺部2及び両縦辺部3,4は、図示しない押出成形機によりほぼ直線状に(長尺状に)押出成形される。コーナー部5,6は、上辺部2と各縦辺部3,4とが所定の角度をなした状態で相互に接続されるように図示しない金型装置にて型成形される。また、コーナー部5,6の上辺側に対応する部分は、上辺部2の押出断面形状と略同一形状となっている。一方、コーナー部5,6の前側及び後側に対応する部分は、縦辺部3,4の押出断面形状と略同一形状となっている。前記上辺側に対応する部分と、前側及び後側に対応する部分との間では、互いの形状に徐々に近づくように構成されている。
【0024】
さて、前記両縦辺部3,4は、ほぼ同一の断面形状をなしている。図3に示すように、縦辺部3,4は、前記ドアサッシュDSに嵌め込まれる本体部11を備えている。本体部11は、基底部12及び該基底部12から延びる車外側側壁部13及び車内側側壁部14により断面略コ字形状に構成されている。縦辺部3,4の長手方向に直交する断面においては、車内側側壁部14のほうが、車外側側壁部13よりも長く形成されている。また、前記両側壁部13,14の略先端には、それぞれ本体部11の内側(基底部12方向)に向かって延びるシールリップ15,16が形成されている。これらシールリップ15,16によりドアガラスDGの端部の車外側面及び車内側面がそれぞれシールされるようになっている。なお、縦辺部3,4は、1種類の材質からなり、該材質としてはEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合体)等のソリッド材、又は、それらの微発泡材が採用されている。
【0025】
ここで、本実施形態の特徴である前記上辺部2に関して、ドアサッシュDSに嵌め込まれ、かつ、ドアガラスDGが開いた状態での断面形状について説明する。図1に示すように、上辺部2も、縦辺部3,4と同様に基底部18及び該基底部18から延びる車外側側壁部19及び車内側側壁部20を有する断面略コ字形状の本体部21を備えている。また上辺部2の長手方向に直交する断面においては、車内側側壁部20のほうが、車外側側壁部19よりも長く形成されている。該本体部21の材質としては、EPDMのソリッド材が採用されている。
【0026】
前記基底部18において、車外側側壁部19及び車内側側壁部20に連結される端部18a,18bは、ドアサッシュDSに当接されるように構成されているとともに、他の大部分である中央部18cはドアサッシュDSに対して所定の空間23を隔てるように構成されている。また、中央部18cのドアサッシュDS側には、柔軟性のあるEPDMのスポンジ材からなる軟質層24が形成されている。
【0027】
前記車外側側壁部19の略先端には、縦辺部3,4と同様のシールリップ25が形成されている。一方、車内側側壁部20略先端には、前記縦辺部3,4のシールリップ16に代えて、本体部21の内側(基底部18方向)に向けて延び、かつ、基底部18の車外側端部18aの内側に連結されたシール部26が形成されている。該シール部26は、ドアガラスDGの上端面及び上縁部の車内壁面に沿うように湾曲したドアガラス当接面を備えている。前記シールリップ25とシール部26とにより、ドアガラスDGの車外側、上端面及び車内側がシールされるようになっている。また、シール部26、基底部18及び車内側側壁部20により、中空部27が形成されているとともに、該中空部27は、ドアサッシュDS取着状態において、少なくとも前記基底部18側に対応した部位に空間を有し、基底部18と車内側側壁部20とに沿った断面略L字形状をなしている。なお、前記シール部26の材質としては、前記軟質層24と同様のEPDMのスポンジ材が採用されている。
【0028】
上記上辺部2を押出成形する際には、図4に示すように、車外側側壁部19及び車内側側壁部20の先端側を本体部21の外側に向けて開いた状態で、図示しない押出成形機のダイスから押し出される。このとき、中空部27は、ドアサッシュDSに嵌め込まれた状態よりも空間が大きくなり、シール部26と基底部18との間隔及びシール部26と車内側側壁部20との間隔も広くなる。これにより、押出成形時に、シール部26の基底部18や車内側側壁部20への付着を抑制することができる。
【0029】
次に、ドアガラスDGを閉じ切る際の上記上辺部2の変形動作について説明する。ドアガラスDGが上辺部2内に進入させられると、シール部26に当接し、シール部26はドアガラスDGの上端面から押圧力を受けることとなる。このとき、図5に示すように、シール部26が、ドアガラスDGの上端面及び車内壁面に沿って変形し、基底部18に当接させられる。上記のとおり、シール部26はスポンジ材により構成され、かつ、基底部18との間に中空部27を有するよう構成されている。このため、ドアガラスDGの当接に基づく衝撃を十分に吸収させることができ、もって、衝突音を飛躍的に低減させることができる。
【0030】
さらに、ドアガラスDGが上昇させられた場合には、図6に示すように、ドアガラスDGの押圧力によって前記シール部26を介して基底部18が変形させられ、ドアサッシュDSに当接させられる。前記基底部18には軟質層24が形成されているとともに、軟質層24とドアサッシュDSの間には所定の空間23が設けられている。このため、ドアサッシュDSに当接させられる際の衝撃をも吸収することができ、ドアガラスDGの当接に基づく衝突音をより一層確実に低減させることができる。
【0031】
以上詳述したように、上辺部2には、スポンジ材からなり、かつ、中空部27を有するシール部26が形成されているため、該シール部26によりドアガラスDGの当接に基づく衝撃を十分に吸収させることができる。従って、ドアガラスDGが閉じ切られる際の衝突音を飛躍的に低減させることができる。
【0032】
また、さらにドアガラスDGが上昇して基底部18がドアサッシュDSへ当接させられる場合であっても、ドアサッシュDSと基底部18との間に所定の空間が存在するため、基底部18を本体部21の外側(上側)に変形させることができ、基底部18によるドアサッシュDSへの押圧力を吸収できる。これに加えて、スポンジ材からなる軟質層24により前記衝撃を吸収させることができる。従って、前記衝突音を一層確実に低減させることができる。
【0033】
さらに、基底部のみに対応した小さな中空部を有するクッション機構を備える従来技術と異なり、本実施形態では基底部18及び車内側側壁部20に沿って断面略L字形状の比較的大きな中空部27を有している。また、押出成形時には、中空部27が一層広がる状態となり、シール部26が本体部21に付着して中空部27が潰れてしまうと言った不具合を抑制できる。
【0034】
さらに、シール部26はドアガラスDGの上縁部の車内側面に当接させられるため、当接による反発応力がドアガラスDGに加えられ、ドアガラスDGが車外側へ押圧されることとなる。そのため、ドアガラスDG閉時におけるフラッシュサーフェス化を図りやすいというメリットがある。
【0035】
併せて、上辺部2は、縦辺部3,4の断面形状と非常に相似しており、形状の異なるシール部26においても、車内側側壁部20の先端に対して延びる方向が縦辺部3,4のシールリップ16と同一方向となっている。このため、上辺部2と、両縦辺部3,4とを接続するコーナー部5,6では、上辺部2接続側と縦辺部3,4接続側との形状を著しく変更させる必要が無いため、当該コーナー部5,6の形状設計の複雑化を抑制できる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本第2の実施形態では、図7に示すように、上辺部32は、基底部33及び該基底部33から延びる車外側側壁部35及び車内側側壁部36を有する本体部37を備えている。前記基底部33において、車外側側壁部35及び車内側側壁部36に連結される端部33a,33bには、本体部37外側に向けて突出するリップ部38a,38bが形成されている。該リップ部38a,38bにより、基底部33の中央部33cはドアサッシュDSに対して所定の空間40を隔てるようなっている。また、中央部33cのドアサッシュDS側には、EPDMのスポンジ材からなる軟質層41が形成されている。
【0037】
前記車外側側壁部35及び車内側側壁部36の略先端は、シール部44によって連結されている。該シール部44は、両側壁部35,36の略先端から本体部37の内側(基底部33方向)に向けて延びており、ガラスランの上辺部32のドアサッシュDSへの取着状態において本体部37に沿って断面略U字形状をなしている。このため、シール部44により、ドアガラスDGの上端面及び上縁部の車外側面と車内側面がシールされるようになっている。
【0038】
また、シール部44と本体部37(車外側側壁部35、基底部33及び車内側側壁部36)との間には、少なくとも前記基底部33側に対応した部位に空間を有して、断面略U字形状の中空部45が形成される。また、シール部44の断面長手方向略中央近傍と、基底部33の車内側端部33bの内側とは、柱部46によって傾斜状にまたは湾曲状に連結されている。これにより、前記中空部45は、車外側側壁部35及び基底部33に対応する断面略L字形状の空間45aと、車内側側壁部36に対応する空間45bとに分割される。なお、柱部46とシール部44とは、EPDMのスポンジ材により構成されている。
【0039】
上記上辺部32を押出成形する際には、図8に示すように、車外側側壁部35及び車内側側壁部36の先端側を本体部37の外側に向けて開いた状態で、図示しない押出成形機のダイスから押し出される。このとき、特に中空部45aは、ドアサッシュDSに嵌め込まれた状態よりも空間が大きくなり、シール部44と基底部33との間隔及びシール部44と車外側側壁部35との間隔との間隔も広くなる。これにより、押出成形時に、シール部44の本体部37への付着を抑制することができる。
【0040】
次に、ドアガラスDGを閉じ切る際の上記上辺部32の変形動作について説明する。ドアガラスDGが上辺部32内に進入させられた際には、シール部44は、ドアガラスDGの上縁部、車外壁面及び車内壁面に沿って変形し、基底部33に当接させられる。このとき、シール部44及び中空部45の存在により、ドアガラスDGの当接に基づく衝撃を十分に吸収させることができ、もって、衝突音を飛躍的に低減させることができる。さらに、ドアガラスDGが上昇させられた場合にも、軟質層41と、ドアサッシュDSとの間に設けられた所定の空間40により、ドアサッシュDSに当接させられる際の衝撃をも吸収することができ、ドアガラスDGの当接に基づく衝突音を一層確実に低減させることができる。
【0041】
以上詳述したような構成のため、基本的には本第2の実施形態においても前記第1の実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0042】
また、柱部46がシール部44と基底部33とを連結しているため、上辺部32のドアサッシュDSへの取着状態にあっては、シール部44の断面略U字形状を安定して維持することができる。また、ドアガラスDGを閉じる際にも、シール部44の位置を車外側や車内側に振れにくくさせることができる。このため、ドアガラスDGが当接時の衝撃によって位置ずれしてしまうといった事態を抑制でき、ドアガラスDGをより安定的に所定の位置に収めることができる。
【0043】
さらに、シール部44が断面略U字形状をなすため、ドアガラスDGを閉じた際に、当該ドアガラスDGの先端において上縁部、車内側壁部及び車外側壁部に沿ってほぼ隙間なく当接するため、シール性の一層の向上を図ることができる。
【0044】
加えて、柱部46が、基底部33の中央部33cでなく、車内側端部33bに連結され、しかも傾斜状又は湾曲状に連結されているため、ドアガラスDGを閉じる際に、シール部44の変形の妨げにならず、シール部44をスムーズに変形させることができる。従って、衝突音をより一層低減させることができる。
【0045】
併せて、車外側側壁部35の先端及び車内側側壁部36の先端からのシール部26の延びる方向が、それぞれ縦辺部3,4のシールリップ15,16の延び方向とほぼ同一となっている。このため、上辺部32と、両縦辺部3,4とを接続するコーナー部5,6では、上辺部32接続側と縦辺部3,4接続側との形状を著しく変更させる必要が無いため、当該コーナー部5,6の形状設計の複雑化を抑制できる。
【0046】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0047】
(a)上記各実施形態におけるガラスラン1を構成する素材としては、EPDMが採用されているが、その外にも、例えばTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)をはじめとする種々の弾性を有する素材を採用することができる。
【0048】
(b)上記実施形態では、基底部18,33に軟質層24,41が形成されているとともに、該軟質層24,41とドアサッシュDSとの間には所定の空間23,40が設けられるようになっているが、軟質層24,41を省略してもよいし、あるいは、所定の空間23,40を設けなくても差し支えない。また、双方を省略してもよい。
【0049】
(c)第2の実施形態では、柱部46は、シール部44の断面長手方向略中央近傍に連結されているが、柱部46の形成位置は若干ずれていても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施形態におけるガラスランの上辺部の構造を示す断面図である。
【図2】ガラスランが取着されているドアを示す斜視図である。
【図3】ガラスランの縦辺部の構造を示す断面図である。
【図4】第1の実施形態における上辺部の押出成形時の形状を示す断面図である。
【図5】第1の実施形態におけるドアガラス閉時の上辺部の変形状態を説明するための図であって、シール部が変形させられた状態の断面図である。
【図6】第1の実施形態におけるドアガラス閉時の上辺部の変形状態を説明するための図であって、基底部がドアサッシュに当接させられた状態の断面図である。
【図7】第2の実施形態におけるガラスランの上辺部の構造を示す断面図である。
【図8】第2の実施形態における上辺部の押出成形時の形状を示す断面図である。
【図9】従来におけるガラスランの上辺部の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…ガラスラン、2…上辺部、18…基底部、18a…車外側端部、19…車外側側壁部、20…車内側側壁部、21…本体部、23…空間、24…軟質層、26…シール部、27…中空部、32…上辺部、33…基底部、35…車外側側壁部、36…車内側側壁部、37…本体部、40…空間、41…軟質層、44…シール部、45…中空部、46…柱部、DS…ドアサッシュ、DG…ドアガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基底部及び該基底部から延びる車内側側壁部及び車外側側壁部よりなり断面略コ字状をなす本体部を有し、
前記本体部がドアサッシュに取着されてなるガラスランであって、
ドアガラスの上辺側に対応するガラスランの上辺部に関し、
前記車内側側壁部の略先端部から延び、かつ、ドアサッシュ取着状態で少なくとも前記基底部及び前記車内側側壁部にほぼ沿ったシール部を一体に成形するとともに、
前記シール部と本体部とにより、断面略コ字状の本体部内側に中空部を形成し、
前記中空部は、少なくとも前記基底部側に対応した部位に空間を有し、当該基底部から前記車内側側壁部または前記車外側側壁部に沿って連続した断面略L字形状の1つの空間となるように構成したことを特徴とするガラスラン。
【請求項2】
基底部及び該基底部から延びる車内側側壁部及び車外側側壁部よりなり断面略コ字状をなす本体部を有し、
前記本体部がドアサッシュに取着されてなるガラスランであって、
ドアガラスの上辺側に対応するガラスランの上辺部に関し、
前記車外側側壁部の略先端から前記断面略コ字状の本体部内側に延びるシールリップと、
前記車内側側壁部の略先端部から前記本体部内側に延び、前記基底部における前記車外側端部に連結され、かつ、前記ドアガラスの上端面、及び、上縁部の車内壁面に当接可能なドアガラス当接面を有するシール部と、を一体に成形するとともに、
前記シール部と本体部とから形成される中空部は、ドアサッシュ取着状態で少なくとも前記基底部側に対応した部位に空間を有し、前記基底部から前記車内側側壁部に沿って連続した断面略L字形状の1つの空間となるように構成したことを特徴とするガラスラン。
【請求項3】
基底部及び該基底部から延びる車内側側壁部及び車外側側壁部よりなり断面略コ字状をなす本体部を有し、
前記本体部がドアサッシュに取着されてなるガラスランであって、
ドアガラスの上辺側に対応するガラスランの上辺部に関し、
前記車外側側壁部及び前記車内側側壁部の略先端部同士を連結するとともに、前記断面略コ字状の本体部内側に延び、前記本体部に沿って断面略U字形状をなすシール部を一体に形成するとともに、
前記シール部と本体部とにより、前記断面略コ字状の本体部内側に中空部を形成し、
前記中空部は、少なくとも前記基底部側に対応した部位に空間を有するように構成することを特徴とするガラスラン。
【請求項4】
前記シール部は、前記本体部よりも柔軟性のある材質により構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガラスラン。
【請求項5】
前記シール部は、そのほぼ中央において前記基底部の車内側端部と連結する柱部を一体に形成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のガラスラン。
【請求項6】
前記基底部の前記本体部外側に、前記本体部よりも柔軟性のある材質により構成された軟質層を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガラスラン。
【請求項7】
前記基底部において、少なくとも車内側と車外側との中間部分が、前記ドアサッシュとの間に所定の空間を隔てて取着されるように構成したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のガラスラン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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