説明

ガラス基板収納トレイ及びトレイ集合体

【課題】トレイに収容されたガラス基板に割れや欠けが存在するか否かを検知することが可能なガラス基板収納トレイを提供すること。
【解決手段】ガラス基板20を載置するトレイであって、該トレイの一端に光を発光する発光部21を設け対抗する一端に発光部に対する受光をする受光部22を設けたことを特徴とするガラス基板収納トレイであって、前記発光部が光ファイバー光源又は有機エレクトロルミネッセンス素子であり、受光部が光ファイバーセンサーであることを特徴とするガラス基板収納トレイである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板を収納して輸送もしくは搬送するためのトレイの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表示パネルは、通常、相互に対向して配置された一対のガラス基板の間に液晶を封入することにより製造されている。このような表示パネルを製造するために、ガラス基板が、表示パネルの製造工場に輸送される。ガラス基板を工場に輸送する場合には、通常、ガラス基板を収納するガラス基板用収納トレイ(以下、単にトレイと記す。)が使用される。ガラス基板に対し、表示パネル化するために種々の加工を加える際にも、コンベアーや搬送アームが使えない場合には、収納トレイに収容して移動させる。
【0003】
近時、ガラス基板は、厚みが0.7mm以下で一辺が2m以上の長方形状のガラス基板が使用されるようになっている。このような大型で薄いガラス基板を載置して輸送し搬送するために使用するトレイ構造の一例が、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
上記文献中のトレイ10の構造は、概ね図1及び図2に示すようなものであって、図1は上面視の図であり、図2は、図1の枠部12近傍における断面視の図である。トレイ10は発泡ポリエチレン樹脂等によって、薄い直方体状に一体的に形成されており、搬送するガラス基板20を水平状態で載置する長方形状の底面11と、底面11の全周にわたる側縁部に上方に突出するように設けられた枠部12を有している。
【0005】
底部11は、収容されるガラス基板20よりも一回り大きな長方形状であって、例えば、15mm程度の厚みを有しており、底部の上面にガラス基板20が載置されるものである。底部10の各コーナー部近傍には、正方形状の開口部11aがそれぞれ形成されるとともに、底部10の各側縁に沿った各コーナー部間のそれぞれの中間位置にも開口部11aがそれぞれ形成されており、さらには底部11の中央部にも開口部を設けている。したがって、底部には、9個の開口部11aが3行3列のマトリックス状に設けられている。これらの開口部は、底部10に載置されたガラス基板を、トレイから浮かせるためのピストンを挿入するために設けたものである。
【0006】
枠部12は、例えば、低部11の側縁部に30mm程度の幅寸法で全周にわたって、底部11の上面から5mm程度にわたって突出した状態で設けられており(底部が凹んだ状態)、底部11に載置されたガラス基板を適切な間隔を保った状態で、全周にわたって取り囲んでいる。
【0007】
枠部12の上部には、例えば30mm程度の幅寸法で外側に水平状態でフランジ状に突出する系合部13が、全周にわたって設けられている。系合部13は、トレイ10を所定位置に移動する際にチャッキング用の爪部が系合する部位となるものである。系合部13の上面は、枠部12の上面よりも外側上方で、水平となるように設けられており、したがって、系合部13の上面と、枠部12上面とは段差を形成しており、その段差が位置決め部14としての機能を有するものである。
【0008】
このような構造のトレイは、図3に示すように、複数を上下方向に積み重ねることが可能であり、このような積層状態で搬送するのが効率的で好ましい。上側に積み重ねられるトレイは、下側のトレイの系合部上面と枠部12上面との段差である位置決め部14に、底部下側突出部が系合した状態になり、上下に積層したトレイが水平方向に相互にずれることがなく、位置ずれのおそれがない。そこで、通常は60段程度に積層して搬送に供す
る。
【0009】
ところで、ガラス基板は撓みやすく、トレイに収納して輸送する際、あるいは工程間を搬送する等の移載時に、把持用冶具や周囲の物体に触れることでガラス基板の端部に割れや欠けが発生することがある。こうした割れ欠けが発生したかどうかについては、60段に多段積みされたトレイ集合体を、最上段から一段一段はずして目視でガラス基板を観察する必要がある。すなわち、検査を遂行するためには、所定のスペースと人手が必要であり、所与の位置で必要なときに検査をするのが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−59116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、ガラス基板収納用トレイに収容されているガラス基板に割れや欠けが存在するか否かを、目視以外の方法で検知することが可能なトレイを提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を達成するための請求項1に記載の発明は、凹部底面にガラス基板を載置する方式のガラス基板収納トレイであって、該トレイの凹部側壁の一方に光を発光する発光部を設け、対応する他方の凹部側壁に光を受光をする受光部を設けたことを特徴とするガラス基板収納トレイとしたものである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記発光部が光ファイバー光源、受光部が光ファイバーセンサーであることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板収納トレイとしたものである。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記発光部が有機エレクトロルミネッセンス素子、受光部が光ファイバーセンサーであることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板収納トレイとしたものである。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、前記トレイの凹部側壁に溝部を設け、発光部と受光部とを脱着荷能としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガラス基板収納トレイとしたものである。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のトレイを多数積層したことを特徴とするガラス基板収納トレイ集合体としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トレイにガラス基板の一方の端部からガラス基板内部に光を入射して、対向する端部から出射してくる光を光センサーで検出する手段を備えたことにより、ガラス基板に割れ欠け等の欠陥の有無を電気的に検出することができる。
その結果、多段積みされたトレイ集合体を崩すことなくどのトレイのガラス基板に問題があるかを検知できる。
また、検査に要する人手、場所、時間を大幅に節約できるので、カラーフィルタ基板の製造に適用する場合には生産性を向上できる。
さらにまた、トレイを、発光部と受光部とを装着・取り外しができる構造とすることで、全てのトレイに発光部と受光部を設置する必要がなくなりその分の費用を節減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用されるディスプレイ用ガラス基板収納用トレイの上面視の図である。
【図2】図1のA−A線における断面視の図である。
【図3】トレイを上下方向に積み重ねた状態の要部の断面視図である。
【図4】本発明になる発光部と受光部を備えるトレイの断面視の図である。
【図5】ガラス基板内部を進行する光の様子を説明する図。(a)割れ欠けがない場合、(b)割れ欠けがある場合。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、図2で示すガラス基板収納用トレイ10の底部11に載置されるガラス基板20に対し、図4で示すように凹部の側壁15部分でガラス基板20端面に水平方向で一致する箇所に発光部21を側壁15に沿って設置し、対向する側壁15’部分に受光部22を設置するものである。
【0020】
発光部21と受光部22はトレイ10に固定しても構わないし、トレイの側壁近傍に直線状の受け口を形成しておいてカセット式の発光部等を脱着するタイプでも構わない。図では対向する1組の辺に発光部等を設置したが、ガラス基板を囲む外周側壁4辺の対向する発光部と受光部を設置することができる。
【0021】
直線状に並べた発光体あるいは発光部21から出射してガラス基板20の端部に入射した光はガラス基板内部を進んで反対側の端部から出射するが、その出射光を直線状に並べた受光センサーで受けて光の出射パターンを認識し、その光強度パターンからガラス基板の欠け割れの存在を検出するものである。割れ欠けがあると当該部位で光が散乱され受光センサーに到達する光量が変動し、光強度パターンも変化するからである。
【0022】
先ず、ガラス基板20が薄く、トレイ10も厚くて大きなのは不経済であるので、発光部21は小さいか薄い発光素子をアレイ状に並べた構成とするのが望ましい。点光源では発光ダイオード(LED)、直線状光源であれば有機EL素子が望ましい態様である。
【0023】
LEDは、一般に径が数mmの円筒状のケースに収容されているので、トレイの内側壁15にケースが収容できる開口を設けて、そこにLEDを挿入して固定するか、あるいは細い光ファイバの出射先端部を直線状に並べてトレイの側壁15に固定するかの、いずれかを採用できる。光ファイバーケーブルの入射側にはLEDを装着する。この態様であれば、ファイバーはLEDのケースより細くすることが可能なので多数のLEDを設置したことになるし、ガラス基板20端部との位置合わせ精度も向上する。より効率的にガラス基板内に光を導入できる。
【0024】
光源として使用する有機EL素子は、薄く細くできるのでスペース的にLEDより有利である。有機EL素子は対向する電極間に有機系の正孔輸送層と蛍光体を積層して狭持した構造である。基板上に低分子有機材料を用いて真空製膜するか、高分子材料を溶媒に溶かして印刷するかのいずれかの方法で製造する。電極の幅と長さで発光領域を規制でき、基板の断裁位置で外形形状を決められるので、トレイ10内の設置位置に適う素子形状とすることができる。LEDアレイについてはこのような自由度がないが、発光寿命など長期使用に耐えるという利点がある。
【0025】
ガラス基板20の割れ欠け等の欠陥は、基板の周辺部に生じるので、発光部はトレイ底部11側壁のコーナー部分だけに設けることも可能で効率的である。対向する2辺だけだと、基板の辺中央部に割れ欠けがある場合、そこに発光部が設置されていないと、欠陥を
検知できないからである。
【0026】
LEDから放射された光を導波する光ファイバーには、プラスチックタイプとガラスタイプの2種類がある。前者は、コアが高屈折率のアクリル系の樹脂で形成され、その周囲を低屈折率のクラッド材であるポリエチレンで被覆したものである。後者は、ステンレスのチューブでコアのガラスファーバーを被覆したものである。コアに導入された光はクラッド部分で全反射しながらコア内部を伝播していく。発光体を底部に設置する場合には、光ファイバーの代わりに、通常の電線でよい。
【0027】
受光部22については、発光部側に相対するトレイ底部にフォトダイオード(PD)を直線状に並べておけばよい。この場合も、フォトダイオード自体を並べてもよいし、光ファイバーの先端に集光用微小レンズを装着したようなものを直線状に束ねて設置し、光ファイバーの他端をフォトダイオードにつなぐ方式でも構わない。
【0028】
トレイ底部にLEDやPDを複数並べるのはトレイの数に比例して電子部品が増えるので必ずしも好ましくはない。そこで、LEDを直線状に並べた脱着式カセット(構造の詳細は図示せず。)を作って、トレイ側にカセットを差し込む受け部を形成し、カセットを脱着荷能にすることもできる。受光部についても同様の構成にできる。光ファーバーや配線用電線はフレキシブルなので、そのような加工は、それほど難しいものではない。
【0029】
トレイ側のカセット受け部の構造の一例を図4に示した。トレイ側壁15にカセット26が収容可能な溝23を形成する。カセットからガラス基板が載置してある底部11に向けて光が進行するように、側壁15に溝23と底部をつなぐスリット24を設けたものである。PD側も同じようにする。カセット25はトレイ上面から装着してもよいし、ガイドのようなものを形成して、側面から差し込むような形式でも構わない。
【0030】
このようにして形成した横長の光源から出射した光が、ガラス基板内を進行する様子を模式的に示すのが図5(a),(b)である。(a)は欠けのない正常なガラス基板の場合で、(b)はコーナーに欠けがある場合である。(a)では、光源が周期的に並べたLEDであれば、受光側では配置に応じた光強度パターンが観察され、(b)の場合には欠け部分に原因する崩れた光強度パターンが観察される。
【符号の説明】
【0031】
10・・・ガラス基板収納トレイ
11・・・底部
11a・・開口部
12・・・枠部
13・・・係合部
14・・・位置決め部
15、15’・・・底部側壁
20・・・ガラス基板
21・・・発光体
22・・・受光体
23・・・(カセット収容)溝
24・・・スリット
25・・・カセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部底面にガラス基板を載置する方式のガラス基板収納トレイであって、該トレイの凹部側壁の一方に光を発光する発光部を設け、対応する他方の凹部側壁に光を受光をする受光部を設けたことを特徴とするガラス基板収納トレイ。
【請求項2】
前記発光部が光ファイバー光源、受光部が光ファイバーセンサーであることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板収納トレイ。
【請求項3】
前記発光部が有機エレクトロルミネッセンス素子、受光部が光ファイバーセンサーであることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板収納トレイ。
【請求項4】
前記トレイの凹部側壁に溝部を設け、発光部と受光部とを脱着荷能としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガラス基板収納トレイ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のトレイを多数積層したことを特徴とするガラス基板収納トレイ集合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−17110(P2012−17110A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153719(P2010−153719)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】