ガラス物品の加熱方法及び誘導炉
【課題】 炉内の構造の複雑化を招くことなく、カーボン製サセプタの外周囲及び内周囲のそれぞれを、不活性ガスによる良好なパージ状態に維持して、ガラス物品を加熱することができるガラス物品の加熱方法を得る。
【解決手段】 炉内にカーボン製サセプタ14を配置すると共に該炉内のサセプタ14の外周囲を不活性ガスでパージした状況下で、サセプタ14内のガラス物品を加熱するガラス物品の加熱方法において、サセプタ14には、このサセプタ14を発熱させる誘導コイル15に対向した領域27の両側に近接する位置で、サセプタ14の周方向に略等間隔に、サセプタ14の内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴29を設けて、炉内パージ用の不活性ガスを貫通穴29よりサセプタ14内を通して炉外に流す。
【解決手段】 炉内にカーボン製サセプタ14を配置すると共に該炉内のサセプタ14の外周囲を不活性ガスでパージした状況下で、サセプタ14内のガラス物品を加熱するガラス物品の加熱方法において、サセプタ14には、このサセプタ14を発熱させる誘導コイル15に対向した領域27の両側に近接する位置で、サセプタ14の周方向に略等間隔に、サセプタ14の内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴29を設けて、炉内パージ用の不活性ガスを貫通穴29よりサセプタ14内を通して炉外に流す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品の加熱方法、及びその加熱方法を利用した誘導炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス物品の加熱処理の一例として、石英ガラス管に石英ガラスロッドを挿入した状態で加熱して、両者が溶着一体化した光ファイバ用石英ガラス母材を得るガラス母材の製造方法が知られている。
このようなガラス母材の製造方法では、加熱手段として、例えば誘導炉を利用したものが知られている。
この場合の誘導炉は、炉内に誘導加熱で発熱するカーボン製サセプタを配置して、サセプタ内に挿入されたガラス物品に所定の加熱を行う。
【0003】
このような誘導炉では、サセプタの高温による酸化を防止するために、サセプタの外周囲及び内周囲を、不活性ガス雰囲気に維持する必要がある。
【0004】
そこで、図3に示すように、ガラス物品1が挿入されるカーボン製サセプタ3は、両端の開口部に不活性ガス4の噴射口5を配置して、該噴射口5から噴射する不活性ガス4により外気を遮断するエアカーテンを形成する一方、サセプタ3の発熱手段(電磁誘導コイル)6に対向した領域の両側に近接する位置に、炉内に配管された不活性ガス供給管7を接続し、不活性ガス供給管7からサセプタ3内に供給される不活性ガス4aにより、サセプタ3の内奥の残存ガスを開口端に排出するようにした加熱方法が提案された(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−238183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、サセプタ3内に不活性ガス4aを供給する不活性ガス供給管7は、サセプタ3の周方向に等間隔に少なくとも3個以上設けないと、サセプタ3内における不活性ガス4aの流れを周方向に均等化することができず、部分的に残留酸素が排出できない部分が発生してしまう。
その一方、不活性ガス供給管7の接続箇所を周方向に3箇所以上に設定すると、炉内が不活性ガス供給管7の配管により構造が複雑になり、メンテナンスが困難になったり、加熱装置の構造の複雑化による炉製造のコストアップという問題が生じた。
【0007】
本発明の目的は上記課題を解消することに係り、炉内の構造の複雑化を招くことなく、カーボン製サセプタの外周囲及び内周囲のそれぞれを、不活性ガスによる良好なパージ状態に維持して、サセプタの酸化を招くことなく、ガラス物品を加熱することができるガラス物品の加熱方法及び誘導炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記した課題を解決するために、本発明によるガラス物品の加熱方法は、炉内に誘導コイル及び円筒状のカーボン製サセプタを同軸上に配置すると共に該炉内の前記サセプタ外周囲を不活性ガスでパージした状況下で、前記サセプタ内のガラス物品を加熱するガラス物品の加熱方法であって、
前記サセプタには、前記サセプタを発熱させる前記誘導コイルに対向した領域の両側に近接する位置で、且つ該サセプタの周方向に略等間隔に、該サセプタの内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴を設け、炉内パージ用に供給される前記不活性ガスを前記貫通穴より前記サセプタ内を通して炉外に流して、サセプタ内のガラス物品を加熱することを特徴とする。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のガラス物品の加熱方法は、前記サセプタの両端の開口部には、該開口部にシール用のエアカーテンを形成する不活性ガスを流すことを特徴としても良い。
【0010】
(3)上記した課題を解決するために、本発明による誘導炉は、炉内に誘導コイル及び円筒状のカーボン製サセプタを同軸上に配置すると共に、炉内を不活性ガスでパージした状況下で前記サセプタ内のガラス物品を加熱する誘導炉であって、
前記サセプタには、前記サセプタを発熱させる誘導コイルに対向した領域の両側に近接する位置で、且つ該サセプタの周方向に略等間隔に、該サセプタの内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴を設けて、炉内パージ用に供給される前記不活性ガスを前記貫通穴より前記サセプタ内を通して炉外に流して、サセプタ内のガラス物品を加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるガラス物品の加熱方法では、炉内に配置されるカーボン製サセプタの外周囲は、炉内に供給される不活性ガスでパージされて、酸素との接触による酸化を防止することができる。
また、カーボン製サセプタの内周囲は、両端が不活性ガスによるエアカーテンにより外気と遮断されると同時に、貫通穴によりサセプタ内に供給される不活性ガスがサセプタ内を通って炉外に排出されるため、サセプタの内奥に残存する酸素も効率良く外部に排出できる。また、サセプタ両端のエアカーテン用の不活性ガスをサセプタ内に向けなくても良いため、サセプタ両端開口部での外気の巻き込みも生じない。
【0012】
そして、サセプタ内への不活性ガスの供給は、サセプタの内外を連通させる貫通穴により、炉内のパージ用の不活性ガスを直接サセプタ内に導入するため、炉内に専用の不活性ガス供給管を配管する必要がなく、不活性ガス供給管の配管による炉内構造の繁雑化や部品増加を防止できる。更に、専用の不活性ガス供給管を必要としていないため、サセプタ内における不活性ガスの流れを均等化するために、周方向に並ぶ貫通穴の数量を増やすことも容易にできる。
なお、サセプタ内における不活性ガスの流れを均等化するために、サセプタの周方向に略等間隔に少なくとも3個以上の不活性ガス導入用となる貫通穴を設ける必要がある。また、サセプタの発熱領域の両側に貫通穴を設けることにより、炉本体の開口部両端に対し、均等な不活性ガスの流れを作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るガラス物品の加熱方法及び誘導炉の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るガラス物品の加熱方法を適用する誘導炉の一実施の形態の概略構成図である。
【0014】
図1に示した誘導炉11は、炉本体12と、該炉本体12の出入り口12a,12b間を連絡するように該炉本体12内に配置された円筒状のカーボン製サセプタ14と、該カーボン製サセプタ14と同軸上に配置されてサセプタ14をその外周面側より誘導加熱する誘導コイル15と、サセプタ14と誘導コイル15との間に介在してサセプタ14からの放熱を抑止する断熱材17と、炉本体12の出入り口を開閉可能に覆うシャッター19と、サセプタ14の両端の開口部に不活性ガス20によるエアカーテンを形成するエアカーテン用不活性ガス供給手段21と、炉内に不活性ガス22を導入してサセプタ14の外周囲を不活性ガス22でパージした状態にするために炉本体12に開口させたガス供給穴23と、炉本体12を冷却する水冷コイル25とを具備していて、サセプタ14の外周囲を不活性ガス22でパージした状況下でサセプタ14内のガラス物品(不図示)を加熱する。
【0015】
エアカーテン用不活性ガス供給手段21は、サセプタ14の両端開口部の周囲に等間隔で少なくとも3箇所以上に、径方向の内側に向かって不活性ガスを噴射する噴射口を装備したもので、サセプタ14の両端開口部を外気から遮断するエアカーテンを形成する。
【0016】
本実施の形態の場合、サセプタ14には、サセプタ14を発熱させる誘導コイル15に対向した領域(誘導コイル15による誘導加熱で発熱する領域)27の両側に近接する位置で、且つ該サセプタ14の周方向に略等間隔に、サセプタ14の内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴29(図2参照)を設けて、炉内パージ用にサセプタ14の外周囲に供給される不活性ガス22を貫通穴29よりサセプタ14内を通して、サセプタ14の両端開口部より炉外に流す。
【0017】
以上の誘導炉11では、次のようなガラス物品の加熱方法を実現する。
即ち、炉内にカーボン製サセプタ14を配置すると共に該炉内のサセプタ14の外周囲を不活性ガス22でパージした状況下で、サセプタ14内のガラス物品を加熱する方法において、サセプタ14の両端の開口部には、エアカーテン用不活性ガス供給手段21の噴射する不活性ガス20により、シール用のエアカーテンを形成しておく。
更に、サセプタ14には、発熱手段としての誘導コイル15に対向した領域27の両側に近接する位置で、且つ該サセプタ14の周方向に略等間隔に、該サセプタ14の内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴29を設け、炉内パージ用にサセプタ14の外周囲に供給される不活性ガス22を貫通穴29よりサセプタ14内に通して、サセプタ14の両端の開口部から炉外に流した状況下で、サセプタ14内のガラス物品を加熱する。
【0018】
以上に説明した誘導炉11におけるガラス物品の加熱方法では、炉内に配置されるカーボン製サセプタ14の外周囲は、炉内に供給される不活性ガス22でパージされて、酸素との接触による酸化を防止することができる。
また、カーボン製サセプタ14の内周囲は、両端が不活性ガスによるエアカーテンにより外気と遮断されると同時に、貫通穴29によりサセプタ14内に供給される不活性ガス22がサセプタ14内を通って炉外に排出されるため、サセプタ14の内奥部に残存する酸素も効率良く外部に排出できる。また、サセプタ14の両端のエアカーテン用の不活性ガス20をサセプタ14内に向けなくても良いため、サセプタ14の両端開口部での外気の巻き込みも生じない。従って、サセプタ14の内周囲も、不活性ガスによって良好なパージ状態に維持して、酸素との接触による酸化を防止することができる。
【0019】
そして、サセプタ14内への不活性ガス22の供給は、サセプタ14の内外を連通させる貫通穴29により、炉内のパージ用の不活性ガス22を直接サセプタ14内に導入するため、炉内に専用の不活性ガス供給管を配管する必要がなく、不活性ガス供給管の配管による炉内構造の繁雑化や部品増加を防止できる。更に、専用の不活性ガス供給管を必要としていないため、サセプタ14内における不活性ガスの流れを均等化する目的で、周方向に並ぶ貫通穴29の数量を増やすことも容易にできる。
従って、炉内の構造の複雑化を招くことなく、カーボン製サセプタ14の外周囲及び内周囲のそれぞれを、不活性ガスによる良好なパージ状態に維持して、サセプタ14の酸化を招くことなく、ガラス物品を加熱することが可能になる。
【0020】
また、本実施の形態の誘導炉11としては、サセプタ14内に不活性ガスを流すための専用の不活性ガス供給管を炉内に配管する必要がないため、炉内の構造を簡略化して、装置製造コストの低減や、メンテナンス性の向上を図ることができる。
また、カーボン製サセプタ14の酸化を防止して、サセプタ14の寿命を延ばすことができるため、維持コストを低減することもできる。
【0021】
なお、サセプタ14の酸化を防止するためには、サセプタ14の内部の酸素濃度が例えば25〜30PPM程度となるように、貫通穴29からサセプタ14内に流入する不活性ガス22の流量を調整すると良い。
【実施例1】
【0022】
図2は、上記のサセプタ14の内部の酸素濃度を25〜30PPM程度に維持するために、サセプタ14における貫通穴29の装備形態や炉体内のバージ流量を調整した実施例の説明図である。
図2に示したサセプタ14は、内径Dが200mm程度、全長Lが600mm程度の円管状で、中央の長さC=300mm程度の領域が、誘導コイル15に対向した領域27となっている。
貫通穴29の装備位置としては、両端から100mm程度、内奥部側に移動した位置(即ち、誘導コイル15に対向する領域27の両側に、約50mm程度の離間距離で近接する位置)に装備されている。
貫通穴29の穴径は、5〜15mm程度(更に好ましくは、10mm程度)に設定する。また、貫通穴29の装備数は、領域27の両側にそれぞれ8個ずつで、いずれも、サセプタ14の周方向に等間隔で設ける。
【0023】
以上の装置形態において、不活性ガス20,22としては、窒素ガスを用いた。そして、サセプタ14の外周囲のパージのために炉本体12に開口させたガス供給穴23から流入させる不活性ガス22の流量を毎分150リットル、サセプタ14の両端開口部におけるエアカーテン用不活性ガス供給手段21による不活性ガス20の流量を毎分10リットルに設定すると、サセプタ14の内部の酸素濃度は25〜30PPMに維持でき、サセプタ14に酸化の発生しない良好なパージ状態を保つことができた。
【0024】
なお、前述した貫通穴29は、サセプタ14内の温度測定あるいはサセプタ内部のガラス物品の溶融状態確認窓を兼ねる構成としても良い。
【0025】
また、貫通穴29の形状は、丸穴に限らない。矩形、又は細長いスリット状にすることも可能である。
また、サセプタ14のサイズが、図2に示したサイズよりも大型化する場合には、貫通穴29の装備数を更に増やしたり、あるいは貫通穴29の穴径を大き目に形成したり、不活性ガス22の流量の増加を行うと良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るガラス物品の加熱方法を用いる誘導炉の一実施の形態の概略構成図である。
【図2】図1に示したカーボン製サセプタにおける貫通穴の装備形態や炉体内のバージ流量を調整した実施例の説明図である。
【図3】従来の加熱方法を用いた誘導炉の概略構成図である。
【符号の説明】
【0027】
11 誘導炉
12 炉本体
12a,12b 出入り口
14 カーボン製サセプタ
15 誘導コイル(発熱手段)
17 断熱材
19 シャッター
20 不活性ガス
21 エアカーテン用不活性ガス供給手段
22 不活性ガス
23 ガス供給穴
25 水冷コイル
27 誘導コイルによる誘導加熱で発熱する領域
29 貫通穴
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品の加熱方法、及びその加熱方法を利用した誘導炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス物品の加熱処理の一例として、石英ガラス管に石英ガラスロッドを挿入した状態で加熱して、両者が溶着一体化した光ファイバ用石英ガラス母材を得るガラス母材の製造方法が知られている。
このようなガラス母材の製造方法では、加熱手段として、例えば誘導炉を利用したものが知られている。
この場合の誘導炉は、炉内に誘導加熱で発熱するカーボン製サセプタを配置して、サセプタ内に挿入されたガラス物品に所定の加熱を行う。
【0003】
このような誘導炉では、サセプタの高温による酸化を防止するために、サセプタの外周囲及び内周囲を、不活性ガス雰囲気に維持する必要がある。
【0004】
そこで、図3に示すように、ガラス物品1が挿入されるカーボン製サセプタ3は、両端の開口部に不活性ガス4の噴射口5を配置して、該噴射口5から噴射する不活性ガス4により外気を遮断するエアカーテンを形成する一方、サセプタ3の発熱手段(電磁誘導コイル)6に対向した領域の両側に近接する位置に、炉内に配管された不活性ガス供給管7を接続し、不活性ガス供給管7からサセプタ3内に供給される不活性ガス4aにより、サセプタ3の内奥の残存ガスを開口端に排出するようにした加熱方法が提案された(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−238183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、サセプタ3内に不活性ガス4aを供給する不活性ガス供給管7は、サセプタ3の周方向に等間隔に少なくとも3個以上設けないと、サセプタ3内における不活性ガス4aの流れを周方向に均等化することができず、部分的に残留酸素が排出できない部分が発生してしまう。
その一方、不活性ガス供給管7の接続箇所を周方向に3箇所以上に設定すると、炉内が不活性ガス供給管7の配管により構造が複雑になり、メンテナンスが困難になったり、加熱装置の構造の複雑化による炉製造のコストアップという問題が生じた。
【0007】
本発明の目的は上記課題を解消することに係り、炉内の構造の複雑化を招くことなく、カーボン製サセプタの外周囲及び内周囲のそれぞれを、不活性ガスによる良好なパージ状態に維持して、サセプタの酸化を招くことなく、ガラス物品を加熱することができるガラス物品の加熱方法及び誘導炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記した課題を解決するために、本発明によるガラス物品の加熱方法は、炉内に誘導コイル及び円筒状のカーボン製サセプタを同軸上に配置すると共に該炉内の前記サセプタ外周囲を不活性ガスでパージした状況下で、前記サセプタ内のガラス物品を加熱するガラス物品の加熱方法であって、
前記サセプタには、前記サセプタを発熱させる前記誘導コイルに対向した領域の両側に近接する位置で、且つ該サセプタの周方向に略等間隔に、該サセプタの内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴を設け、炉内パージ用に供給される前記不活性ガスを前記貫通穴より前記サセプタ内を通して炉外に流して、サセプタ内のガラス物品を加熱することを特徴とする。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のガラス物品の加熱方法は、前記サセプタの両端の開口部には、該開口部にシール用のエアカーテンを形成する不活性ガスを流すことを特徴としても良い。
【0010】
(3)上記した課題を解決するために、本発明による誘導炉は、炉内に誘導コイル及び円筒状のカーボン製サセプタを同軸上に配置すると共に、炉内を不活性ガスでパージした状況下で前記サセプタ内のガラス物品を加熱する誘導炉であって、
前記サセプタには、前記サセプタを発熱させる誘導コイルに対向した領域の両側に近接する位置で、且つ該サセプタの周方向に略等間隔に、該サセプタの内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴を設けて、炉内パージ用に供給される前記不活性ガスを前記貫通穴より前記サセプタ内を通して炉外に流して、サセプタ内のガラス物品を加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるガラス物品の加熱方法では、炉内に配置されるカーボン製サセプタの外周囲は、炉内に供給される不活性ガスでパージされて、酸素との接触による酸化を防止することができる。
また、カーボン製サセプタの内周囲は、両端が不活性ガスによるエアカーテンにより外気と遮断されると同時に、貫通穴によりサセプタ内に供給される不活性ガスがサセプタ内を通って炉外に排出されるため、サセプタの内奥に残存する酸素も効率良く外部に排出できる。また、サセプタ両端のエアカーテン用の不活性ガスをサセプタ内に向けなくても良いため、サセプタ両端開口部での外気の巻き込みも生じない。
【0012】
そして、サセプタ内への不活性ガスの供給は、サセプタの内外を連通させる貫通穴により、炉内のパージ用の不活性ガスを直接サセプタ内に導入するため、炉内に専用の不活性ガス供給管を配管する必要がなく、不活性ガス供給管の配管による炉内構造の繁雑化や部品増加を防止できる。更に、専用の不活性ガス供給管を必要としていないため、サセプタ内における不活性ガスの流れを均等化するために、周方向に並ぶ貫通穴の数量を増やすことも容易にできる。
なお、サセプタ内における不活性ガスの流れを均等化するために、サセプタの周方向に略等間隔に少なくとも3個以上の不活性ガス導入用となる貫通穴を設ける必要がある。また、サセプタの発熱領域の両側に貫通穴を設けることにより、炉本体の開口部両端に対し、均等な不活性ガスの流れを作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るガラス物品の加熱方法及び誘導炉の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るガラス物品の加熱方法を適用する誘導炉の一実施の形態の概略構成図である。
【0014】
図1に示した誘導炉11は、炉本体12と、該炉本体12の出入り口12a,12b間を連絡するように該炉本体12内に配置された円筒状のカーボン製サセプタ14と、該カーボン製サセプタ14と同軸上に配置されてサセプタ14をその外周面側より誘導加熱する誘導コイル15と、サセプタ14と誘導コイル15との間に介在してサセプタ14からの放熱を抑止する断熱材17と、炉本体12の出入り口を開閉可能に覆うシャッター19と、サセプタ14の両端の開口部に不活性ガス20によるエアカーテンを形成するエアカーテン用不活性ガス供給手段21と、炉内に不活性ガス22を導入してサセプタ14の外周囲を不活性ガス22でパージした状態にするために炉本体12に開口させたガス供給穴23と、炉本体12を冷却する水冷コイル25とを具備していて、サセプタ14の外周囲を不活性ガス22でパージした状況下でサセプタ14内のガラス物品(不図示)を加熱する。
【0015】
エアカーテン用不活性ガス供給手段21は、サセプタ14の両端開口部の周囲に等間隔で少なくとも3箇所以上に、径方向の内側に向かって不活性ガスを噴射する噴射口を装備したもので、サセプタ14の両端開口部を外気から遮断するエアカーテンを形成する。
【0016】
本実施の形態の場合、サセプタ14には、サセプタ14を発熱させる誘導コイル15に対向した領域(誘導コイル15による誘導加熱で発熱する領域)27の両側に近接する位置で、且つ該サセプタ14の周方向に略等間隔に、サセプタ14の内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴29(図2参照)を設けて、炉内パージ用にサセプタ14の外周囲に供給される不活性ガス22を貫通穴29よりサセプタ14内を通して、サセプタ14の両端開口部より炉外に流す。
【0017】
以上の誘導炉11では、次のようなガラス物品の加熱方法を実現する。
即ち、炉内にカーボン製サセプタ14を配置すると共に該炉内のサセプタ14の外周囲を不活性ガス22でパージした状況下で、サセプタ14内のガラス物品を加熱する方法において、サセプタ14の両端の開口部には、エアカーテン用不活性ガス供給手段21の噴射する不活性ガス20により、シール用のエアカーテンを形成しておく。
更に、サセプタ14には、発熱手段としての誘導コイル15に対向した領域27の両側に近接する位置で、且つ該サセプタ14の周方向に略等間隔に、該サセプタ14の内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴29を設け、炉内パージ用にサセプタ14の外周囲に供給される不活性ガス22を貫通穴29よりサセプタ14内に通して、サセプタ14の両端の開口部から炉外に流した状況下で、サセプタ14内のガラス物品を加熱する。
【0018】
以上に説明した誘導炉11におけるガラス物品の加熱方法では、炉内に配置されるカーボン製サセプタ14の外周囲は、炉内に供給される不活性ガス22でパージされて、酸素との接触による酸化を防止することができる。
また、カーボン製サセプタ14の内周囲は、両端が不活性ガスによるエアカーテンにより外気と遮断されると同時に、貫通穴29によりサセプタ14内に供給される不活性ガス22がサセプタ14内を通って炉外に排出されるため、サセプタ14の内奥部に残存する酸素も効率良く外部に排出できる。また、サセプタ14の両端のエアカーテン用の不活性ガス20をサセプタ14内に向けなくても良いため、サセプタ14の両端開口部での外気の巻き込みも生じない。従って、サセプタ14の内周囲も、不活性ガスによって良好なパージ状態に維持して、酸素との接触による酸化を防止することができる。
【0019】
そして、サセプタ14内への不活性ガス22の供給は、サセプタ14の内外を連通させる貫通穴29により、炉内のパージ用の不活性ガス22を直接サセプタ14内に導入するため、炉内に専用の不活性ガス供給管を配管する必要がなく、不活性ガス供給管の配管による炉内構造の繁雑化や部品増加を防止できる。更に、専用の不活性ガス供給管を必要としていないため、サセプタ14内における不活性ガスの流れを均等化する目的で、周方向に並ぶ貫通穴29の数量を増やすことも容易にできる。
従って、炉内の構造の複雑化を招くことなく、カーボン製サセプタ14の外周囲及び内周囲のそれぞれを、不活性ガスによる良好なパージ状態に維持して、サセプタ14の酸化を招くことなく、ガラス物品を加熱することが可能になる。
【0020】
また、本実施の形態の誘導炉11としては、サセプタ14内に不活性ガスを流すための専用の不活性ガス供給管を炉内に配管する必要がないため、炉内の構造を簡略化して、装置製造コストの低減や、メンテナンス性の向上を図ることができる。
また、カーボン製サセプタ14の酸化を防止して、サセプタ14の寿命を延ばすことができるため、維持コストを低減することもできる。
【0021】
なお、サセプタ14の酸化を防止するためには、サセプタ14の内部の酸素濃度が例えば25〜30PPM程度となるように、貫通穴29からサセプタ14内に流入する不活性ガス22の流量を調整すると良い。
【実施例1】
【0022】
図2は、上記のサセプタ14の内部の酸素濃度を25〜30PPM程度に維持するために、サセプタ14における貫通穴29の装備形態や炉体内のバージ流量を調整した実施例の説明図である。
図2に示したサセプタ14は、内径Dが200mm程度、全長Lが600mm程度の円管状で、中央の長さC=300mm程度の領域が、誘導コイル15に対向した領域27となっている。
貫通穴29の装備位置としては、両端から100mm程度、内奥部側に移動した位置(即ち、誘導コイル15に対向する領域27の両側に、約50mm程度の離間距離で近接する位置)に装備されている。
貫通穴29の穴径は、5〜15mm程度(更に好ましくは、10mm程度)に設定する。また、貫通穴29の装備数は、領域27の両側にそれぞれ8個ずつで、いずれも、サセプタ14の周方向に等間隔で設ける。
【0023】
以上の装置形態において、不活性ガス20,22としては、窒素ガスを用いた。そして、サセプタ14の外周囲のパージのために炉本体12に開口させたガス供給穴23から流入させる不活性ガス22の流量を毎分150リットル、サセプタ14の両端開口部におけるエアカーテン用不活性ガス供給手段21による不活性ガス20の流量を毎分10リットルに設定すると、サセプタ14の内部の酸素濃度は25〜30PPMに維持でき、サセプタ14に酸化の発生しない良好なパージ状態を保つことができた。
【0024】
なお、前述した貫通穴29は、サセプタ14内の温度測定あるいはサセプタ内部のガラス物品の溶融状態確認窓を兼ねる構成としても良い。
【0025】
また、貫通穴29の形状は、丸穴に限らない。矩形、又は細長いスリット状にすることも可能である。
また、サセプタ14のサイズが、図2に示したサイズよりも大型化する場合には、貫通穴29の装備数を更に増やしたり、あるいは貫通穴29の穴径を大き目に形成したり、不活性ガス22の流量の増加を行うと良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るガラス物品の加熱方法を用いる誘導炉の一実施の形態の概略構成図である。
【図2】図1に示したカーボン製サセプタにおける貫通穴の装備形態や炉体内のバージ流量を調整した実施例の説明図である。
【図3】従来の加熱方法を用いた誘導炉の概略構成図である。
【符号の説明】
【0027】
11 誘導炉
12 炉本体
12a,12b 出入り口
14 カーボン製サセプタ
15 誘導コイル(発熱手段)
17 断熱材
19 シャッター
20 不活性ガス
21 エアカーテン用不活性ガス供給手段
22 不活性ガス
23 ガス供給穴
25 水冷コイル
27 誘導コイルによる誘導加熱で発熱する領域
29 貫通穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に誘導コイル及び円筒状のカーボン製サセプタを同軸上に配置すると共に該炉内を不活性ガスでパージした状況下で、前記サセプタ内のガラス物品を加熱するガラス物品の加熱方法であって、
前記サセプタには、前記サセプタを発熱させる前記誘導コイルに対向した領域の両側に近接する位置で、且つ該サセプタの周方向に略等間隔に、該サセプタの内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴を設け、炉内パージ用に供給される前記不活性ガスを前記貫通穴より前記サセプタ内を通して炉外に流して、サセプタ内のガラス物品を加熱することを特徴とするガラス物品の加熱方法。
【請求項2】
前記サセプタの両端の開口部には、該開口部にシール用のエアカーテンを形成する不活性ガスを流すことを特徴とする請求項1に記載のガラス物品の加熱方法。
【請求項3】
炉内に誘導コイル及び円筒状のカーボン製サセプタを同軸上に配置すると共に、炉内を不活性ガスでパージした状況下で前記サセプタ内のガラス物品を加熱する誘導炉であって、
前記サセプタには、前記サセプタを発熱させる前記誘導コイルに対向した領域の両側に近接する位置で、且つ該サセプタの周方向に略等間隔に、該サセプタの内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴を設けて、炉内パージ用に供給される前記不活性ガスを前記貫通穴より前記サセプタ内を通して炉外に流して、サセプタ内のガラス物品を加熱することを特徴とする誘導炉。
【請求項1】
炉内に誘導コイル及び円筒状のカーボン製サセプタを同軸上に配置すると共に該炉内を不活性ガスでパージした状況下で、前記サセプタ内のガラス物品を加熱するガラス物品の加熱方法であって、
前記サセプタには、前記サセプタを発熱させる前記誘導コイルに対向した領域の両側に近接する位置で、且つ該サセプタの周方向に略等間隔に、該サセプタの内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴を設け、炉内パージ用に供給される前記不活性ガスを前記貫通穴より前記サセプタ内を通して炉外に流して、サセプタ内のガラス物品を加熱することを特徴とするガラス物品の加熱方法。
【請求項2】
前記サセプタの両端の開口部には、該開口部にシール用のエアカーテンを形成する不活性ガスを流すことを特徴とする請求項1に記載のガラス物品の加熱方法。
【請求項3】
炉内に誘導コイル及び円筒状のカーボン製サセプタを同軸上に配置すると共に、炉内を不活性ガスでパージした状況下で前記サセプタ内のガラス物品を加熱する誘導炉であって、
前記サセプタには、前記サセプタを発熱させる前記誘導コイルに対向した領域の両側に近接する位置で、且つ該サセプタの周方向に略等間隔に、該サセプタの内外を連通させる少なくとも各々3個以上、合計6個以上の貫通穴を設けて、炉内パージ用に供給される前記不活性ガスを前記貫通穴より前記サセプタ内を通して炉外に流して、サセプタ内のガラス物品を加熱することを特徴とする誘導炉。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2009−96680(P2009−96680A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270878(P2007−270878)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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