説明

ガラス用合紙

【課題】高度な表面性が必要とされるガラスの間に挿入され使用される合紙に関して、合紙が挿入された状態での搬送時において、ガラスと合紙との境界に存在する異物等によるガラス表面の傷入りを防止でき、かつ高品質なパルプ原料として多様な用途への再利用ができるガラス用合紙とする。
【解決手段】JIS P 8220に準拠して離解したガラス用合紙の離解パルプの重量平均繊維長が1.0mm以上1.6mm未満で、両面のマイクロトポグラフが23kgf/cm2の加圧条件下において7.0μm以下で、JIS P 4501に準拠した水解性(ほぐれやすさ)が180秒以下のガラス用合紙とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度な表面性が必要とされるガラスの間に挿入され使用される合紙、その中でも好ましくは液晶テレビやプラズマテレビなどのフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板の間に挿入され使用される合紙に関するものであり、合紙が挿入された状態での搬送時において、ガラス(基板)と合紙との境界に存在する異物等によるガラス表面の傷入りを防止でき、かつ高品質なパルプ原料として多様な用途への再利用ができるガラス用合紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスの間に挿入され使用されるガラス用合紙としては、ガラスどうしの擦れによる傷入り防止を主な目的として、両面更紙等が使用されていた。また、近年、ガラスの多様化により、ガラス用合紙に対する品質要求がきびしくなっている。例えば、液晶テレビやプラズマテレビ等のフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板は、ガラス表面に電子部材等が皮膜処理されるため、ガラス表面に要求される清浄度や表面平坦性が高く、そのためガラス用合紙に対する品質要求も厳しくなってきている。さらに、ガラス基板の大型化・量産化に伴い、搬送効率を高めるため、ガラス基板を極力重ねて搬送するようになり、ガラス基板が横ズレした際の、ガラス基板と合紙との境界に存在するガラス粉等の異物による傷入りの発生が問題化している。
【0003】
フラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板等に使用される合紙としては、これまでガラス表面への汚染と傷入りの防止を目的として、内添薬品とパルプ原料をコントロールし、紙中の樹脂分を極力低減するとともに密度を下げる提案が開示されている(特許文献1)。しかしながら、ガラス基板の搬送時に起きる横ズレに対しては、対応が難しく、ガラス基板との密着性がよく、かつクッション性のあるガラス用合紙が望まれていた。
【0004】
一方、ガラス基板の量産化、大型化によりガラス用合紙の使用量が増大しているため、使用済みガラス用合紙の保管場所や処理方法にも問題が生じている。しかしながら、ガラス合紙は、より樹脂分の低いパルプ原料で構成されており、純度の高いバージンパルプ原料として幅広い用途への再利用が可能である。そこで、リサイクル性に優れている点に着目し、使用済みガラス用合紙が発生したのち、離解してパルプ化する、すなわち減容化し、原料パルプとして用いることで上記問題が解決できるため、使用時の品質要求だけでなく、使用後の離解性にも優れたガラス用合紙も要望されている。
【特許文献1】特開2006‐44674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする主たる課題は、高度な表面性が必要とされるガラスの間に挿入され使用される合紙、その中でも好ましくは液晶テレビやプラズマテレビなどのフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板の間に挿入され使用される合紙に関して、合紙が挿入された状態での搬送時において、ガラス(基板)と合紙との境界に存在する異物等によるガラス表面の傷入りを防止でき、かつ高品質なパルプ原料として多様な用途への再利用ができるガラス用合紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
パルプ原料を主成分とするガラス用合紙であって、
JIS P 8220に準拠して離解した前記ガラス用合紙の離解パルプの重量平均繊維長が1.0mm以上1.6mm未満で、片面又は両面のマイクロトポグラフが23kgf/cm2の加圧条件下において7.0μm以下で、JIS P 4501に準拠した水解性(ほぐれやすさ)が180秒以下である、
ことを特徴とするガラス用合紙。
【0007】
〔請求項2記載の発明〕
前記パルプ原料はNBKP及びLBKPが主成分で、JIS P 8220に準拠して離解した前記ガラス用合紙の配合質量比率(NBKP/LBKP)が15/85〜50/50で、
かつ、坪量が30〜60g/m2である、
請求項1記載のガラス用合紙。
【0008】
〔請求項3記載の発明〕
少なくとも片面が艶面のクラフト紙で、
JIS P 8220に準拠して離解した前記ガラス用合紙の離解パルプの平均ルンケル比が0.9以下である、
請求項1又は請求項2記載のガラス用合紙。
【0009】
〔請求項4記載の発明〕
前記パルプ原料に濡れ向上剤が含有されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス用合紙。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、高度な表面性が必要とされるガラスの間に挿入され使用される合紙、その中でも好ましくは液晶テレビやプラズマテレビなどのフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板の間に挿入され使用される合紙であって、合紙が挿入された状態での搬送時において、ガラス(基板)と合紙との境界に存在する異物等によるガラス表面の傷入りを防止でき、かつ高品質なパルプ原料として多様な用途への再利用ができるガラス用合紙となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本形態のガラス用合紙は、パルプ原料を主成分とする。当該パルプ原料の種類は特に限定されないが、高清浄度が要求されるガラスに対しては、漂白処理を施し樹脂分を低くコントロールさせた晒クラフトパルプ(NBKP、LBKP)が好適である。パルプ原料としては、古紙からなる古紙再生パルプ(一般にDIPと呼ぶ)の使用も考えられるが、紙中に含まれる樹脂分が多いとガラス表面のシラノール基に極性有機物が水素結合により強く付着し、その上にファンデルワールス力により炭化水素系の有機物層が形成されるためガラス表面を汚染する場合があり、ISO624−1974のパルプ中に存在する樹脂量を測定する方法に準じて測定した紙中に含まれる樹脂分が0.2%を超えるとガラス表面を汚染させる可能性が大ききため、0.2%以下に抑えなくてはならない、との報告がされている(例えば、特開2006−44674号公報の段落0028参照。)。そのため、DIPを使用する際には、古紙に含まれている不純物を取り除き、さらに離解した後、アルカリ等薬品を用いて、パルプ繊維から無機物や樹脂分等からなるインキ膜を取り除き、界面活性剤等に捕集させ繊維から分離除去して得られたDIPを使用することが好ましい。
【0012】
また、ガラスに密着した際のガラス表面の傷入り防止機能、搬送適性、耐汚染性を考慮すると、JIS P 8220に準拠して離解した前記ガラス用合紙の離解パルプの重量平均繊維長が1.0mm以上1.6mm未満となるように、好ましくは重量平均繊維長が1.30mm以上1.50mm未満となるように、叩解や分級手段を用いて処理したパルプ原料を配合する。
【0013】
本発明で云う重量平均繊維長は、JIS P 8220に準拠して離解した後の離解パルプについて、カヤニ繊維長測定機(FS−100)を用いて測定した重量平均繊維長であり、単位はmmである。
【0014】
このように繊維長を調節するにあたっては、パルプ原料の主成分をNBKP及びLBKPとし、これらの配合割合(NBKP/LBKP)を、JISP8220に準拠して離解し、JIS P 8120に準拠した繊維組成試験方法(C染色液による呈色)により、15/85〜50/50質量%、好ましくは20/80〜40/60質量%とする。離解パルプの重量平均繊維長が1.0mm未満であると、緊度が上がるため、十分なクッション性が得られず、圧縮された際に異物の吸収ができず、ガラス表面の傷入りが発生しやすくなる。他方、重量平均繊維長が1.6mm以上であると、長繊維であるがゆえに、パルプ繊維同士の絡み合いが多くなり地合ムラが発生し、表面平坦性が低下するため、ガラス基板に対するガラス用合紙の密着性が低下して、搬送時において横ズレによる傷入りが発生しやすくなる。
【0015】
また、クラフトパルプは繊維が剛直であり、従来のガラス合紙の様に、機械的処理を施さないまま紙にすると、繊維間結合少ないために得られる紙の構造は空隙が多く、強度は低く、表面平滑性も劣った紙にしかならないため、水分散性が良いように考えられがちながら、長繊維は、短繊維に比べ、繊維同士の絡み合いが多くなり(故に地合も悪くなる)、水による水分散性が低下し、使用済みの金属合紙を水分散する際に未分散が生じやすく、高品質なパルプ原料として多様な用途への再利用ができなくなる。また、NBKPの配合割合については、15質量%未満であると、ガラス用合紙に十分なクッション性を付与することができず、他方、50質量%を超えると、パルプ繊維の結束が発生し、ガラスとの密着が低下し、搬送時において横ズレによる傷入りが発生しやすくなる。
【0016】
ところで、ガラス間に圧縮された状態でのガラスと合紙との密着状態を知る指標として、加圧条件下での平滑性が測定できるマイクロトポグラフがある。ガラス用合紙では、クッション性などの観点からクレープ化処理により表面に凹凸構造を設け(特開2006‐44674号公報の請求項4参照)、あるいは、エンボス加工、クレープ処理、ピンホール加工等を施して凹凸を設け(特開2007‐131965号公報の段落0020参照)、あるいはベック平滑度を20秒以下とする(特開2005‐248409号公報の請求項5参照)と好ましいとされるが、これらの凹凸(構造)を設けず平滑性が高い方が、より好ましくは圧縮された状態での平滑性がより高いほうが、ガラスとの密着が高まるため、横ズレによるガラス表面の傷入りが発生しにくくなる。なお、本形態において合紙のクッション性は、坪量、離解パルプの重量平均繊維長や種類、後述する平均ルンケル比等を調節することによって補われる。
【0017】
ここで、合紙の片面、好ましくは両面のマイクロトポグラフは、搬送時の加圧力と想定される23kgf/cm2条件下で7.0μmを超えると、圧縮条件下でもガラスと合紙との境界で横ズレが生じ、ガラス表面に存在するガラス粉等突起状異物によるガラス傷入りが生じやすくなるので、7.0μm以下、好ましくは2.0〜7.0μmであるのが好適である。このマイクロトポグラフを調節する方法は、特に限定されないが、パルプ原料の種類、離解パルプの重量平均繊維長、叩解度、プレス方法、ルンケル比、湿紙の乾燥方法等を適宜調整する方法によることができる。
【0018】
一方、本形態のガラス用合紙は、JIS P 4501に準拠した水解性(ほぐれやすさ)が180秒以下、好ましくは120〜180秒であると好適である、水解性が180秒を超えると、パルパー設備での離解性が低下し減容効果が低くなるとともに、未離解(完全にパルプ繊維がほぐれない状態)が発生しやすくなることから、パルプ原料としての再利用性が低下する。この水解性を調節する方法は、JIS P 8220に準拠して離解した際に、所定の重量平均繊維長に成るように叩解や分級処理するとともに、パルプ原料の種類、内添薬品の種類・添加量、プレス方法、坪量等を適宜調整し、組み合わせる方法により成すことができる。
【0019】
本形態のガラス用合紙は、坪量30〜60g/m2の範囲で抄造されるのが好ましい。より好ましくは35〜50g/m2である。坪量30g/m2未満では十分なクッション性を得ることができない。他方、坪量60g/m2を超えると、表面平坦性が低下しガラスとの密着性が得られにくくなるだけでなく、離解性も低下する。
【0020】
もっとも、クッション性に寄与する要素としては、前述したように合紙自体の坪量、緊度のほかに、パルプ繊維自体の物理的構造がある。パルプ繊維にはルーメン(内腔)が存在し、それ自体が潰れることによって、紙全体としてのクッション機能に繋がるため、内腔と外環(細胞壁)の厚みとの比率がクッション性にとって重要となる。そこで、本形態においては、JIS P 8220に準拠して離解した前記ガラス用合紙の離解パルプの平均ルンケル比を調節して、クッション性を好適化する。ここで、ルンケル比Rとは、繊維の内腔の幅(径)Lと細胞壁の厚さtによって求められる値であり、R=2・t/Lによって表される。このルンケル比は、数値が低いほど同じ径に対して繊維壁の厚みが薄いことを意味し、繊維は柔軟性を持つ。平均ルンケル比が0.9以下であれば、圧縮条件下でガラスとの境界にあるガラス粉等の異物を紙中に吸収しやすくなり、ガラスへの傷入りが生じにくくなる。平均ルンケル比が0.9以下のパルプ繊維を得るには、パルプの原料となる木材として比較的若い段階で伐採した植林木や間伐材を用いるのが好ましい。また、クッション機能として重要となるパルプ繊維本来の形状を保つには、叩解をできるだけ抑え、JIS P 8220に準拠して離解した前記ガラス用合紙の離解パルプフリーネスを500cc以上、好ましくは580〜680ccとするのが望ましい。なお、好ましい平均ルンケル比は、0.60〜0.90である。
【0021】
一方、JIS P 8220に準拠して離解した前記ガラス用合紙の離解パルプの平均ルンケル比を0.9以下とする場合においては、抄紙方式として、円網又は長網により脱水し、ヤンキー乾燥機により片面、好ましくは両面に艶面を形成するクラフト紙を採用すると好適である。クラフト紙をヤンキー抄紙機を用いて製造することにより、JIS P 8220に準拠して離解した前記ガラス用合紙の離解パルプの重量平均繊維長が1.0mm以上1.6mm未満となるように、NBKP及びLBKPを15/85〜50/50の質量割合(比率)で配合しても、片面、好ましくは両面のマイクロトポグラフが23kgf/cm2条件下で7.0μm以下となる表面平坦性が得られ、圧縮条件下においてガラスとの密着性とクッション性との両方を兼ね備えた性能を持ち、搬送時等において、ガラスと合紙とが横ズレせず、さらにはガラス表面に存在するガラス粉等の異物を合紙中に吸収し、ガラス表面の傷入りを防止することができる。
【0022】
さらに、本形態においては、パルプ原料に濡れ向上剤(界面活性剤)を含有することにより、ガラス表面に紙中物質が付着しても、付着物自体に濡れ向上剤を含むため、ガラス表面の濡れ性を低下することなく、洗浄液によるガラスの洗浄性を向上させる。濡れ向上剤の種類は特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のものが挙げられる。その中でも特に、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルは、ガラス用合紙からガラス表面に転移する付着物成分として最も多い油脂に対して表面もしくは内部に存在することで、付着物自体が優れた濡れ特性および乳化機能を持つようになるため、ガラス用合紙とガラスとが接触した際に、ガラスガラスの耐汚染性の低下とガラス洗浄性の向上に有効である。また、パルプ繊維への定着が良好であるため、パルプ繊維の離解性向上にも大きく寄与して好適である。パルプ原料への濡れ向上剤(界面活性剤)を含有させる方策には、フィルムトランスファーやスプレー等の外添手段を好適に用いることができる。
【0023】
濡れ向上剤の金属合紙への含有量としては、0.01〜0.5質量%が好ましく、0.10〜0.30質量%がより好ましい。含有量が0.5質量%を超えると、吸湿性が大きくなり折れシワが発生しやすくなるためガラス表面を傷つけてしまう可能性が高まる。他方、0.01質量%未満では、ガラス表面に対し、その特性効果が発現されない。また、濡れ向上剤を含有させる方策は、合紙自体の吸水性を高める効果があるため、離解性の向上にも寄与し、特に米坪が高い場合(好ましくは50〜60g/m2)ほど有効である。
【0024】
本発明に基づく金属合紙に含有させる薬品としては、濡れ向上剤のほか、サイズ剤、ドライヤー剥離剤、硫酸バンド等が使用できるが、ガラスへの樹脂分等紙中物質の転移を少なくするために、ドライヤー剥離に影響が出ない範囲で、極力少ないほうが好ましい。
【実施例】
【0025】
次に本発明に係る実施例を示す。
表1に示す離解パルプの構成、抄紙形式、物性の試験片を得、各試験片について、ガラスとの密着性、ガラスへの傷入り性、及び、ガラスへの汚染性を評価し、同様に表1に示した。
【0026】
【表1】

【0027】
表1においては、市販されている金属合紙(市販A)、金属合紙(市販B)、及び、本発明と同様にヤンキードライヤーにて乾燥処理が施され、包装用紙(手提げ袋)に供される片艶クラフト紙(市販C)を例にとり、本発明に近似の従来品として比較した。市販Cは、ガラスへの汚染対策が考慮されていないため、紙中の樹脂成分が多く、ガラス汚れが顕著であり、ガラス合紙への転用は出来ない品質であった。
【0028】
〔坪量〕
JIS P 8124に準じて測定した値である。
【0029】
〔緊度〕
JIS P 8118に準じて測定した値である。
【0030】
〔マイクロトポグラフ〕
マイクロトポグラフ試験機を使用し、23kgf/cm2の加圧条件下での試験片の両面を測定し、低い側の値を示した。
【0031】
〔水解性(ほぐれやすさ)〕
JIS P 4501に準じて測定した値である。詳細には、500ccビーカーに、水300cc(水温20±5℃)と直径35mm厚さ12mmの円盤状マグネット回転子とを入れる。これをマグネットスターラーに載せ、マグネット回転子の回転数を600±10回転/分になるように調整する。そのビーカー内に114mm角の試験片を投入し、試験片の離解が完全に行なわれた後、ビーカー内の回転子の回転数が540回転まで回復するまでの時間(秒)を計測した。
【0032】
〔ガラスとの密着性〕
表面に十字線を明記した縦500mm×横500mm×厚み0.7mmサイズのガラス及び試験片を用い、十字線が重なり合うようにガラス100枚と各ガラスの間に試験片を挿入して、ガラスセットを作成した。ガラスセットの全周囲には、外部からの塵等の混入を防ぐため透湿性のある包装材で覆った。トラックによるガラス輸送時の環境及び垂直方向の荷重、水平方向の振動を想定し、温度50℃湿度90%に保持した恒温高湿器内に設置した振動機の架台上に、ガラスセットを500mm×500mm面が当たるように載せ、さらにガラスセットの上面に23kgf/cm2の圧力となるように錘を載せ、この状態で15Hzの振動数で100時間横振動をさせた。振動テストをした後、ガラス中心点における試験片の横ズレ量を定規で測定し、試験片1枚あたりに数値化して、下記の基準で評価した。
5:ガラスと試験片との横ズレ量が1mm未満/枚
4:ガラスと試験片との横ズレ量が1mm以上2mm未満/枚
3:ガラスと試験片との横ズレ量が2mm以上3mm未満/枚
2:ガラスと試験片との横ズレ量が3mm以上4mm未満/枚
1:ガラスと試験片との横ズレ量が4mm以上/枚
評価3〜5であれば、ガラス用合紙として合格レベルである。
【0033】
〔ガラスへの傷入り性〕
前記ガラスとの密着性評価において、試験片を取り除いた後のガラスを、純水を用いて超音波洗浄機で洗浄し、拡大顕微鏡でガラス表面の状態を観察して、下記基準で評価した。
【0034】
5:ガラス表面の傷が0個/枚
4:ガラス表面の傷が1個/枚
3:ガラス表面の傷が2個/枚
2:ガラス表面の傷が3個以上5個未満/枚
1:ガラス表面の傷が5個以上/枚
評価3〜5であれば、ガラス用合紙として合格レベルである。
【0035】
〔ガラスへの汚染性〕
前記ガラスへの傷入り性評価において、超音波洗浄した後のガラス表面について、純水による接触角を接触角測定器で測定した。この測定値を試験片と接触する前のガラス表面の接触角と対比し、ガラス表面の接触角の変化率について、下記基準で評価した。
【0036】
5:接触角の変化率が10%未満/枚
4:接触角の変化率が10%以上20%未満/枚
3:接触角の変化率が20%以上30%未満/枚
2:接触角の変化率が30%以上50%未満/枚
1:接触角の変化率が50%以上/枚
評価3〜5であれば、ガラス用合紙として合格レベルである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、高度な表面性が必要とされるガラスの間に挿入され使用される合紙、その中でも好ましくは液晶テレビやプラズマテレビなどのフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板の間に挿入され使用されるガラス用合紙として適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ原料を主成分とするガラス用合紙であって、
JIS P 8220に準拠して離解した前記ガラス用合紙の離解パルプの重量平均繊維長が1.0mm以上1.6mm未満で、片面又は両面のマイクロトポグラフが23kgf/cm2の加圧条件下において7.0μm以下で、JIS P 4501に準拠した水解性(ほぐれやすさ)が180秒以下である、
ことを特徴とするガラス用合紙。
【請求項2】
前記パルプ原料はNBKP及びLBKPが主成分で、JIS P 8220に準拠して離解した前記ガラス用合紙の離解パルプの配合質量比率(NBKP/LBKP)が15/85〜50/50で、
かつ、坪量が30〜60g/m2である、
請求項1記載のガラス用合紙。
【請求項3】
少なくとも片面に艶面を有するクラフト紙で、
JIS P 8220に準拠して離解した前記ガラス用合紙の離解パルプの平均ルンケル比が0.9以下である、
請求項1又は請求項2記載のガラス用合紙。
【請求項4】
前記パルプ原料に濡れ向上剤が含有されている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス用合紙。

【公開番号】特開2009−179379(P2009−179379A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21803(P2008−21803)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】