説明

ガラス窓構造

【課題】 この発明は、鋼製サッシの割付と同様の外観を形成できると共に、所定の強度を有し且つ取付け作業の作業性を向上させることのできるガラス窓構造を提供する。
【解決手段】 この発明は、アルミ材からなる上下左右の枠からなる枠体と、該枠体に嵌め込まれる一枚のガラスと、両端が前記枠体の上下枠に支持される複数の縦桟及び両端が前記枠体の左右枠に支持される複数の横桟を所定の幅で交差させることによって形成され、前記ガラスを両面から挟持固定する一対の固定桟によって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼製サッシが使用されていた古い建築物の窓枠を改修時に、鋼製サッシに代えてアルミサッシを使用しても旧来の外観を維持することのできるガラス窓構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、上枠、左右の縦枠及び下枠から構成される屋外開口部サッシ枠であって、アルミ形材と樹脂形材から形成された複合サッシ枠構造を開示する。この複合サッシ枠構造は、室外部をアルミ形材で形成し、室内部を樹脂形材で形成し、それぞれ異なる色調で統一すると共に、室外部と室内部との間を低熱伝導性材で断熱したものである。
【0003】
特許文献2は、和室にあったデザインで、且つ印象的な窓を形成できる窓構造を開示する。この窓構造は、外壁に設けられた開口部に嵌め込まれた窓サッシと、上記開口部の窓サッシより屋内側に嵌め込まれた屋内側窓枠とを備え、前記屋内側窓枠の上下左右の枠部のうちの少なくとも一部の枠部に、上記開口部の周囲の壁内面に施された内装仕上げと同様の内装仕上げが施されるものである。これによって、屋内側から見た場合に、窓枠がないように見えるものである。
【特許文献1】特開2004−300810号公報
【特許文献2】特開平11−159249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献からわかるように、窓枠や桟等はアルミサッシで形成する方が加工がし易く、コストもかからない。
【0005】
しかしながら、アルミサッシが使用されていなかった時代、大きな建築物の窓には、そのほとんどに鋼製サッシが用いられており、さらに、ガラスのサイズが限定されていたこと及び鋼製サッシの加工性が良いことから、小割の桟を多用した意匠を凝らした窓が用いられていた。
【0006】
近年、上述したような大きな建築物は、その老朽化が問題となっており改修する必要性が生じていた。また、これらの建築物の多くは文化的価値が高く、旧来と同様の構造の窓枠と交換することが望まれるが、窓枠自体の製造にコストがかかり、さらにガラスのパテ止め等、技術的に廃れた点もあり、アルミサッシへ交換するケースが多くなってきている。
【0007】
しかしながら、アルミ材によって鋼製と同様の構造のサッシや桟を形成した場合、強度の点で問題が生じる。
【0008】
そこで、この発明は、鋼製サッシの割付と同様の外観を形成できると共に、所定の強度を有し且つ取付け作業の作業性を向上させることのできるガラス窓構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、この発明は、アルミ材からなる上下左右の枠からなる枠体と、該枠体に嵌め込まれる一枚のガラスと、両端が前記枠体の上下枠に支持される複数の縦桟及び両端が前記枠体の左右枠に支持される複数の横桟を所定の幅で交差させることによって形成され、前記ガラスを両面から挟持固定する一対の固定桟によって構成されることにある。尚、前記枠体及び固定枠は、鋼製サッシの外観、いわゆる色合い及び意匠を有することが望ましい。
【0010】
これによって、一つの窓枠に、一枚のガラスを装着し、複数の縦桟及び複数の横桟を交差させることによって形成された固定桟によって前記ガラスを挟持固定するようにしたことから、複数の窓枠に一枚一枚ガラスを装着する作業をすることなく一枚の大きいガラスを装着するだけでよく、また縦桟及び横桟によって形成された固定桟は、ガラスによってその強度が補強されるため、鋼製サッシと同様の意匠にすることができるものである。
【0011】
また、前記固定残と前記ガラスの間には、弾性部材が介在されることが望ましい。この弾性部材によってあたかもパテ止めされた外観を形成することができると共に、ガラスへの振動若しくはガラスの振動を吸収することができるものである。
【0012】
さらに、前記縦桟及び横桟は、内部が中空のガラス固定ブロックと、該固定ブロックに沿って立設するリッジとによって構成され、前記縦桟と前記横桟の交差部分では、前記縦桟及び前記横桟の一方のガラス固定ブロックには、他方のガラス固定ブロックに噛合する部分に、ガラス固定ブロックの幅に相当する長さでブロック側切欠部が形成され、且つ前記縦桟及び前記横桟の他方のリッジには、前記ブロック側切欠部上を橋架する前記縦桟及び前記横桟の一方のリッジが噛合するリッジ側切欠部が形成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、一枚のガラスを装着し、複数の縦桟及び複数の横桟を交差させることによって形成された固定桟によって前記ガラスを挟持固定するようにするので、低コストで老朽化した鋼製サッシと交換できると共に、その外観を損なうことがないという効果を奏する。また、一枚ガラスを装着し、それを固定桟によって挟持固定するため、取付け作業が容易であり、交換コストを低減することができるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施例について図面により説明する。
【実施例】
【0015】
古い文化財的な建築物のガラス窓構造1は、例えば図1に示すように、建築物の開口部2に嵌め込まれる枠体3と、この枠体3の両端が固定される複数の横桟4及び縦桟5からなる固定桟10と、これら横桟4及び縦桟5によって画成された複数の空間6を閉塞するガラス部7とによって構成されている。
【0016】
従来のガラス窓構造1では、前記枠体3及び複数の横桟4及び縦桟5からなる固定桟10は鋼によって形成され、それらによって画成される空間6を閉塞するそれぞれのガラス部7には、その開口面積に応じたガラスがパテ止めによって嵌め込まれていた。
【0017】
これに対して本願発明の実施例に係るガラス窓構造1は、図2に示すように、前記開口部2に嵌め込まれて固定される枠体3と、該枠体3に両端が固定される一対の固定桟10と、この一対の固定桟10によって挟持固定されるガラス8とによって構成される。
【0018】
前記枠体3は、図2及び図3に示すように、一対の横枠部3Aと一対の縦枠部3Bとによって構成され、それぞれの横枠部3A及び縦枠部3Bは、前記開口部2の周縁に固着される外側固定部34と、略コ字状に形成された内側固定部32と、前記固定桟10の下記するリッジ12A,12Bの端部が当接する周壁部31を具備する。また、前記内側固定部32は、前記ガラス8が弾性緩衝固定部材30を介して固定される内側溝部33を有し、また内側溝部33の両側部分には、前記固定桟10の端部が当接する。
【0019】
前記固定桟10は、図2乃至図4で示されるように、横桟4と縦桟5とを組み合わせ形成されるもので、それぞれの横桟4及び縦桟5は、内部中空の断面長方形の細長いガラス固定ブロック11A,11Bと、このガラス固定ブロック11A,11Bの長手方向に沿って略中央から立設するように一体に形成されたリッジ12A,12Bとによって構成される。そして、この実施例では、縦桟5を構成するガラス固定ブロック11Bに、前記横桟4を構成するガラス固定ブロック11Aが嵌り込むための切欠部13を形成すると共に、この切欠部13上のリッジ12Bを橋架部15として残すものである。これに対して、横桟4を構成するリッジ12Aには、前記縦桟5の橋架部15が噛合する切欠部14が形成されるので、前記横桟4に前記縦桟5を嵌め込むことができるものである。また、この実施例では、ガラス固定ブロック11Bに前記切欠部13を形成し、リッジ12Aに切欠部14を形成するようにしたが、逆の構成としても良いものである。
【0020】
また、前記固定桟10とガラス8との間には、前記ガラス8を効果的に固定保持するために弾性緩衝部材50が設けられる。この弾性緩衝部材50としては、合成樹脂、合成ゴム等の弾性部材があり、この場合、固定桟10の内側に貼り付けてガラス8を挟持固定する。弾性緩衝部材50としては、光硬化性樹脂や、溶剤硬化性樹脂などの液体状の樹脂を前記ガラス8と固定桟10との間に注入し、後に硬化させる方法もある。
【0021】
これによって、複数の横桟4と複数の縦桟5は、十文字に嵌め込まれて固定桟10が形成され、前記ガラス8を、前記弾性緩衝部材50を介して挟持固定するように前記枠体3に固定される。この結果、前記横桟4及び縦桟5のガラス固定ブロック11A,11Bが前記枠体3の内側固定部33の側面と面一となり、さらに前記リッジ12A,12Bが周壁部31と面一となるものである。
【0022】
さらに、前記弾性緩衝部材50によって、ガラス8自体の振動の抑制及び固定桟10からガラス8への振動の伝達の防止が行われると共に、従来のパテ止めと外観を類似させることができるため、一枚のガラス8であるにも関わらず、複数のガラスが桟に固定されるという従来の小割の窓の外観を維持できるものである。
【0023】
また、固定桟10をアルミによって形成することによって生じる固定桟10自体の強度の問題も、ガラス8によって補強できるため、アルミで形成することによって生じる不具合を解消できるものである。
【0024】
さらに、前記枠体3にガラス8を装着し、両側から固定桟10によって固定するだけであるため、新しいサッシへの交換作業を簡単に且つ効率よく行うことができると共に、交換コストを低減することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本願発明の実施例に係るガラス窓構造の一例を示した全体図である。
【図2】ガラス窓構造を示した一部切り取り拡大斜視図である。
【図3】ガラス窓構造の枠体及び固定桟の組立状態を示した説明図である。
【図4】固定桟の組立状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ガラス窓構造
2 開口部
3 枠体
3A 横枠部
3B 縦枠部
4 横桟
5 縦桟
6 空間
8 ガラス
10 固定桟
11A,11B ガラス固定ブロック
12A,12B リッジ
13 切欠部
14 切欠部
15 橋架部
30 弾性緩衝固定部材
50 弾性緩衝部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ材からなる上下左右の枠からなる枠体と、
該枠体に嵌め込まれる一枚のガラスと、
両端が前記枠体の上下枠に支持される複数の縦桟及び両端が前記枠体の左右枠に支持される複数の横桟を所定の幅で交差させることによって形成され、前記ガラスを両面から挟持固定する一対の固定桟によって構成されることを特徴とする窓ガラス構造。
【請求項2】
前記固定桟と前記ガラスの間には、弾性部材が介在されることを特徴とする請求項1記載の窓ガラス構造。
【請求項3】
前記縦桟及び横桟は、内部が中空のガラス固定ブロックと、該固定ブロックに沿って立設するリッジとによって構成され、
前記縦桟と前記横桟の交差部分では、前記縦桟及び前記横桟の一方のガラス固定ブロックには、他方のガラス固定ブロックに噛合する部分に、ガラス固定ブロックの幅に相当する長さでブロック側切欠部が形成され、且つ前記縦桟及び前記横桟の他方のリッジには、前記ブロック側切欠部上を橋架する前記縦桟及び前記横桟の一方のリッジが噛合するリッジ側切欠部が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の窓ガラス構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−241917(P2006−241917A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61846(P2005−61846)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(594001616)テクノ・ナミケン株式会社 (5)
【Fターム(参考)】