説明

ガラス管ヒータと冷蔵庫

【課題】二重管構造を採用することにより表面温度の上昇を抑制するように構成したものにおいて、除霜効率を更に向上させることができるように工夫したガラス管ヒータとそれを使用した冷蔵庫を提供すること。
【解決手段】ガラス管と、該ガラス管内に収容・配置された抵抗線と、を具備してなり、上記ガラス管が外側ガラス管と内側ガラス管とからなる二重管構造であるガラス管ヒータにおいて、上記内側ガラス管には、ガラス管の構成材料よりも遠赤外線に対する放射率が高い塗膜が形成されているガラス管ヒータ。上記外側ガラス管と内側ガラス管の両端が熱溶着封止されることにより上記外側ガラス管と内側ガラス管との間の環状空間が閉空間とされており、上記内側ガラス管の外周または内周に上記塗膜が形成されているガラス管ヒータ。除霜手段が上記ガラス管ヒータである冷蔵庫。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、冷蔵庫において除霜手段として使用されるガラス管ヒータと該ガラス管ヒータを使用した冷蔵庫に係り、特に、二重管構造を採用することにより表面温度の上昇を抑制するように構成したものにおいて、除霜効率を更に向上させることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫や冷凍庫においては冷媒として特定フロン(CFC5種)が使用されていたが、その種の特定フロン(CFC5種)が大気中に放出された場合にはオゾン層が破壊されることがわかり、特定フロン(CFC5種)に代わるものとして炭化水素(R600a)、即ち、イソブタンと称される冷媒が使用されている。ところで、冷蔵庫においては冷凍サイクルを構成する蒸発器の除霜を行う除霜手段としてガラス管ヒータが使用されている。このようなガラス管ヒータを使用した場合には、ガラス管ヒータの表面温度がある程度の高温になってしまう。一方、既に説明したイソブタンは可燃性ガスであり、よって、ヒータの表面温度が高くなることは好ましいことではなかった。
【0003】
そこで、ガラス管ヒータの表面温度の上昇を防止するための各種の提案がなされている。例えば、特許文献1〜8には、ガラス管ヒータを構成するガラス管を二重管構造として、それによって、ガラス管ヒータの表面温度の上昇を防止することが提案されている。また、本願発明に関連する技術として、例えば、特許文献9〜12が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−257831号公報:東芝
【特許文献2】特開2002−195735号公報:松下冷機
【特許文献3】特開2003−4362号公報:松下冷機
【特許文献4】特開2003−4363号公報:松下冷機
【特許文献5】特開2003−7436号公報:松下冷機
【特許文献6】特開2003−90672号公報:松下冷機
【特許文献7】特開2003−332031号公報:クラベ
【特許文献8】特開2005−133993号公報:クラベ
【特許文献9】特開2005−83600号公報:大昭産業
【特許文献10】特開2005−300042号公報:大昭産業
【特許文献11】特開2006−17399号公報:大昭産業
【特許文献12】実公平8−9589号公報:松下冷機
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1〜8のような二重管構造を採用すれば、確かにガラス管表面の温度は低下するものの、同時に放射する絶対的な熱量が低下してしまい、除霜効率が低下するという新たな問題が生じていた。
【0006】
本発明は、このような従来技術の欠点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、二重管構造を採用することにより表面温度の上昇を抑制するように構成したものにおいて、除霜効率を更に向上させることができるように工夫したガラス管ヒータとそれを使用した冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、本発明の請求項1によるガラス管ヒータは、ガラス管と、該ガラス管内に収容・配置された抵抗線と、を具備してなり、上記ガラス管が外側ガラス管と内側ガラス管とからなる二重管構造であるガラス管ヒータにおいて、上記内側ガラス管には、ガラス管の構成材料よりも遠赤外線に対する放射率が高い塗膜が形成されていることを特徴とするガラス管ヒータ。
又、請求項2記載のガラス管ヒータは、上記内側ガラス管の外周に上記塗膜が形成されているとともに、上記外側ガラス管と内側ガラス管との間の環状空間が閉空間とされていることを特徴とするものである。
又、請求項3記載のガラス管ヒータは、上記外側ガラス管と内側ガラス管の両端が熱溶着封止されることにより上記外側ガラス管と内側ガラス管との間の環状空間が閉空間とされているとともに、上記内側ガラス管の内周に上記塗膜が形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項4記載のガラス管ヒータは、上記塗膜が、黒色であることを特徴とするものである。
又、請求項5記載の冷蔵庫は、冷蔵庫本体と、該冷蔵庫本体内に設けられた冷凍サイクルと、上記冷蔵庫本体内に設けられた除霜手段と、を具備してなる冷蔵庫において、上記除霜手段が上記のガラス管ヒータであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、霜や氷の融解に有用とされる領域の赤外線の放射が増加し、除霜効率を向上させることができる。また、赤外線の放射が増加するのは内側ガラス管のみであり、その外周には外側ガラス管が存在しているため、ガラス管表面の温度が上昇してしまうこともない。更には、塗膜が外側に露出しない構造であることから、霜や霜が融解した水、或いは、冷蔵庫内で発生する腐食性ガスの影響を塗膜が受けないため、塗膜の劣化や剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態を示す図で、ガラス管ヒータの構成を一部切り欠いて示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す図で、ガラス管ヒータの構成を一部切り欠いて示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す図で、ガラス管ヒータを冷蔵庫に組み込んだ構成を模式的に示す図である。
【図4】分光放射測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1〜図3を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本実施の形態によるガラス管ヒータの全体の構成をその一部を切り欠いて示す正面図であり、まず、二重構造をなすガラス管構造部1がある。このガラス管構造部1は、外側ガラス管3と、この外側ガラス管3の内周側に間隔を存した状態で配置された内側ガラス管5とから構成されている。上記外側ガラス管3と内側ガラス管5は同心状に配置されていて、その両端部は熱溶着封止されている。図中熱溶着封止部を符合7、9でそれぞれ示す。
【0011】
上記外側ガラス管3と内側ガラス管5に関して詳しく説明すると、この実施の形態の場合には、外側ガラス管3はその内径が17mm、外径が19.5〜20.5mm、厚さが1.25〜1.75mmである。又、内側ガラス管5はその内径が8.5mm、外径が10.5mm、厚さが1.0mmである。又、外側ガラス管3と内側ガラス管5との間隔は3.25mm程度である。又、外側ガラス管3と内側ガラス管5は共に石英ガラス製であり、長さは357mmとなっている。
【0012】
上記ガラス管構造部1に減圧穴を設け、この減圧穴を介してガラス管構造部1内の環状空間13内を減圧し、その後、この減圧穴を熱溶着封止することも考えられる。尚、減圧穴の位置や減圧の程度は任意である。又、減圧する場合には図示しない真空ポンプや注射器をチューブ・配管類を介して減圧穴に接続して吸引することにより行えばよい。
【0013】
上記ガラス管構造部1の内部空間16内には抵抗線17が収容・配置されている。この抵抗線17によって発熱するものである。上記抵抗線17は、この実施の形態の場合には、線径が0.26〜0.45mm、巻きピッチが0.39〜3mm、外径が7.5mmである。又、その材質は、例えば、ニッケル・クロム合金製或いは鉄・クロム・アルミ合金製とすることが考えられる。又、ヒータ容量 について、この実施の形態の場合には100V−150Wであるが、冷蔵庫の容量等により適宜設計すれば良い。
【0014】
上記抵抗線17の一端側をみてみると、ステンレス製の接続端子19を介してリード線21の導体に接続されている。又、ガラス管構造部1の一端側にはシリコーンゴム製のキャップ23が被冠・固定されている。又、上記リード線21としては、例えば、シリコーンゴム被覆電線或いは架橋ポリエチレン被覆電線等が考えられる。尚、抵抗線17の他端側も同様の構成になっている。すなわち、抵抗線17の他端は図示しないステンレス製の接続端子を介してリード線25の導体に接続されており、又、ガラス管構造部1の他端にはキャップ27が被冠・固定されている。
【0015】
本実施の形態によるガラス管ヒータは、例えば、図3に示すように、冷蔵庫の除霜手段として使用される。即ち、冷蔵庫の冷蔵庫本体31内には冷凍サイクル33が内装されている。この冷凍サイクル33は、圧縮機35と、凝縮器37と、減圧機構39と、蒸発器41と、ファン43等から構成されている。そして、上記蒸発器41における除霜を行うために、既に説明したガラス管ヒータを使用される。
【0016】
ここで、ガラス管ヒータの組立手順について説明する。まず、外側ガラス管3と内側ガラス管5を二重に重ねた状態とし、その状態で両端を熱溶着封止する。次に、必要に応じて環状空間13の減圧をし、ガラス管構造部1の内部空間16内に抵抗線17を挿入する。次に、抵抗線17の両端に接続端子を介してリード線21、25を接続する。そして、キャップ23、27を被冠・固定する。それによって、図1に示すようなガラス管ヒータを得ることができる。尚、二重管構造のガラス管構造部1を得る方法として、上記のように両端を熱溶着封止する他、例えば、キャップに同心の環状溝を形成するなどしてガラス管保持部を形成し、内側ガラス管と外側ガラス管をそれぞれキャップのガラス管保持部に嵌入する、といった方法なども考えられ、特に限定はされない。
【0017】
内側ガラス管5への塗膜の形成について、予め塗膜の形成をしておき、その後外側ガラス管3と二重に重ねても良いし、内側ガラス管3と外側ガラス管5を二重に重ねた後に塗膜の形成をしても良い。但し、内側ガラス管の外周に塗膜を形成する場合は、予め塗膜を形成しておくことが好ましい。塗膜としては、ガラス管の構成材料よりも遠赤外線に関する放射率が高いものが用いられ、特に黒色のものが好ましい。具体的には、例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、シリカ、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、ゼオライトなどの粉体を含有する塗料を塗布し、乾燥又は焼結して形成することが考えられる。本実施の形態においては、予め内側ガラス管5の外周にカーボンブラックを含有する塗料を塗布した後に乾燥させて塗膜を形成しておき、これを外側ガラス管3と二重に重ねた状態とし、その状態で両端を熱溶着封止する。
【0018】
以上、本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。まず、塗膜の形成により、霜や氷の融解に有用とされる領域の赤外線の放射が増加し、除霜効率を向上させることができる。また、赤外線の放射(即ち吸収)が増加するのは内側ガラス管のみであり、その外周には外側ガラス管が存在しているため、ガラス管表面の温度が上昇してしまうこともない。また、塗膜が外側に露出しない構造であることから、霜や霜が融解した水、或いは、冷蔵庫内で発生する腐食性ガスの影響を塗膜が受けないため、塗膜の劣化や剥離を防止することができる。また、ガラス管構造部1の環状空間13内が閉空間として構成されていれば、外部から環状空間13内に水が浸入することはなく、よって、水の浸入によって外側ガラス管3や内側ガラス管5が破損してしまうようなことを防止することができ、塗膜の劣化や剥離を完全に防止することができる。また、ガラス管構造部1の環状空間13内は閉空間として構成され、且つ、減圧されていれば、熱膨張による圧力の上昇に起因してガラス管構造部1、即ち、外側ガラス管3や内側ガラス管5が破損してしまうようなことを防止することができる。又、ガラス管構造部1の両端部が熱溶着封止されていれば、ガラス管構造部1は二重管構造にはなっているが、取扱上は一本のガラス管と同じである。よって、組込作業も簡単であって、外側ガラス管と内側ガラス管がそれぞれ別個に独立している場合のように組立作業に困難を要することはない。
【0019】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。まず、二重管構造にする場合において、外側ガラス管や内側ガラス管の厚み、環状空間13の大きさ、減圧の程度等については任意に設定すればよい。又、ガラス管構造部1の表面、すなわち、外側ガラス管3の表面に脱臭触媒を塗布することが考えられる。又、冷蔵庫の蒸発器の除霜を例に挙げて説明したがその他の用途も考えられる。その他、図示した構成はあくまで一例であって様々な変形が想定される。
【実施例】
【0020】
上記実施の形態によって得られたガラス管ヒータを実施例として実際に使用し、温度測定及び除霜量測定を行った。温度測定は、次のようにして測定した。600×300×360mmのガラス水槽中の底から50mmのところに、長さ方向がガラス水槽の底と平行になるようにガラス管ヒータを配置する。その状態で100Vを10分間印加した後、ガラス管ヒータの長さ方向略中央部における、ガラス管ヒータの上側表面、ガラス管ヒータの下側表面、ガラス管ヒータの50mm上方、ガラス管ヒータの100mm上方について、熱電対にて温度を測定する。また、除霜量測定は、次のようにして測定した。上記温度測定と同様にガラス管ヒータを配置し、ガラス管ヒータの下方に位置するように、氷の入ったアルミニウム製トレーをガラス水槽の底に配置する。氷は、水道水を一般的な冷凍庫で凍らせて作成し、市販のかき氷機で削って、約200gに秤量したものを使用する。その状態で100Vを印加し、氷が完全に融解するまでの時間を測定する。その後、氷が融解してなる水の重量を測定し、氷が融解するまでの時間を水の重量で除し、氷1g当たりの融解時間を算出した。併せて、上記実施の形態において、塗料を塗布しなかったものを比較例1、外側ガラス管の内側に塗料を塗布したものを比較例2、外側ガラス管の外側に塗料を塗布したものを比較例3として、実施例同様に温度測定と除霜量測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1に示すとおり、本実施例によるガラス管ヒータは、比較例1のような従来のガラス管ヒータに比べて、表面温度を20〜30℃も抑制することができた。更に、本実施例では、比較例1のような従来のものと比べて、氷1g当たりの融解時間を14%減少することができており、表面温度が抑制されるのにもかかわらず、除霜効率を向上させることが確認できた。また、比較例2,3について着目すると、外側ガラス管に塗料を塗布したとしても、表面温度を抑制することはできず、また、除霜効率も本実施例ほど向上させられないことが確認できる。
【0023】
また、実施例及び比較例1によるガラス管ヒータについて、遠赤外線測定装置(CI社製SR−5000)により分光放射測定を行った。図4にその結果を示す。図4に示すとおり、実施例によるガラス管ヒータは、比較例1によるガラス管ヒータに比べ、霜や氷の融解に有用とされる領域の赤外線(波長2.5〜4μm)について、放射輝度が大きくなっており、これが除霜効率の向上に繋がったものと考察される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のガラス管ヒータによれば、二重管構造を採用することにより表面温度の上昇を抑制するように構成であり、除霜効率を更に向上させることができる。このようなガラス管ヒータは、例えば、冷蔵庫において除霜手段として使用される。また、冷蔵庫以外にも、例えば、各種の除霜用ヒータ、融雪用ヒータ、凍結防止用ヒータなどとして使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ガラス管構造部
3 外側ガラス管
5 内側ガラス管
7 熱溶着封止部
9 熱溶着封止部
13 環状空間
17 抵抗線
31 冷蔵庫本体
33 冷凍サイクル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス管と、該ガラス管内に収容・配置された抵抗線と、を具備してなり、上記ガラス管が外側ガラス管と内側ガラス管とからなる二重管構造であるガラス管ヒータにおいて、
上記内側ガラス管には、ガラス管の構成材料よりも遠赤外線に対する放射率が高い塗膜が形成されていることを特徴とするガラス管ヒータ。
【請求項2】
上記内側ガラス管の外周に上記塗膜が形成されているとともに、上記外側ガラス管と内側ガラス管との間の環状空間が閉空間とされていることを特徴とする請求項1記載のガラス管ヒータ。
【請求項3】
上記外側ガラス管と内側ガラス管の両端が熱溶着封止されることにより上記外側ガラス管と内側ガラス管との間の環状空間が閉空間とされているとともに、上記内側ガラス管の内周に上記塗膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載のガラス管ヒータ。
【請求項4】
上記塗膜が、黒色であることを特徴とする請求項1〜請求項3記載のガラス管ヒータ。
【請求項5】
冷蔵庫本体と、該冷蔵庫本体内に設けられた冷凍サイクルと、上記冷蔵庫本体内に設けられた除霜手段と、を具備してなる冷蔵庫において、
上記除霜手段が請求項1〜請求項4記載のガラス管ヒータであることを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−175955(P2011−175955A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159352(P2010−159352)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000129529)株式会社クラベ (125)
【Fターム(参考)】