説明

ガラス組成物

ガラス組成物、ガラス繊維組成物、ガラス繊維電池隔離板、ガラス繊維フィルター媒体、開示ガラス組成物で形成された電池添加剤および活物質、ガラス繊維放射線遮蔽体、およびガラス繊維紙組成物を開示する。ある態様は、成分の中でも酸化ビスマスを含む。ある態様は、組成物の約0.5〜30重量%の酸化ビスマスおよび組成物の約54〜70重量%のケイ素酸化物を含む。態様は、他の成分も含んでよい。例えば酸化亜鉛は組成物の約0.01〜3重量%を占めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
ビスマス含有ガラス組成物、このガラス組成物から形成されたガラス繊維、およびその用途を開示する。
【0002】
関連出願の相互参照
2003年7月29日に出願された米国特許出願第10/630,546号、および2003年7月29日に出願された国際公開公報第PCT/US2003/023695号の一部継続出願である、2004年7月21日に出願された米国特許出願第10/896,432号の優先権を請求し、ならびに同じく2002年7月29日に出願された米国特許仮出願第60/399,583号の恩典を主張するものであり、これらは全て本明細書に参照として組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
背景
ガラスは、連続繊維、半連続繊維または吹込繊維などの繊維に製造することができる。紡織繊維(textile fiber)は、例えばダイレクトメルト法またはマーブルメルト法により製造されてもよい。溶融されたガラスは、典型的にはプラチナ-ロジウム合金で構成された専用ブッシングへ供給することができる。溶融ガラス流れは、オリフィスを通過し、冷却され、連続繊維を形成する。そのような繊維の製造法は、ASM InternationalのEngineered Materials Handbook、第4巻、Ceramics and Glasses(1991)(非特許文献1)に認めることができ、これは本明細書に参照として組み入れられる。
【0004】
別の種類のガラス繊維は、一般にガラスウールまたはマイクロガラス繊維と称される。マイクロガラス繊維は、例えばロータリー法およびフレーム吹込み法として公知の、周知の製造法により製造することができる。別の周知の広範に使用される方法は、CAT法であり、これはロータリー法の改変である。これらの方法によるガラス製造は、ガラス組成物の、それらの融点を通り、作業温度範囲までの加熱を必要とする。ガラス繊維製造に使用される典型的ガラス組成物は、融点約1260〜1500℃、および作業温度(ガラス粘度が100〜10000ポアズの範囲である温度範囲)約920〜1500℃を有する。現存する組成物は、比較的狭い作業範囲を有し、このことは、ガラス組成物をこの作業可能な範囲に維持することは困難であるので、所望の直径および長さのガラス繊維を形成することを困難にしている。加えて比較的高い融点は、組成物を溶融するために、多量のエネルギーを必要とし、このことは非常に経費がかかる。
【0005】
加えてガラス繊維の製造に使用される典型的ガラス組成物は、液相線温度800〜1000℃を有する。ガラス繊維製造に使用される典型的組成物の液相線温度は、その装置が操作されなければならない高温のために、繊維化装置の耐用年数を制限する。このことは特に、スピナーディスクが繊維化装置において使用される場合にあてはまる。比較的低い液相線温度を有するガラス組成物は、繊維化プロセス時に、ガラスの結晶化を減少もしくは防止するためにも有用である。
【0006】
ガラス繊維は、様々な用途で使用される。このような用途に関して、ガラス繊維は、マット構造に形成することができる。ガラス繊維マットは、機械的、化学的、熱的または溶媒の手段により、互いに結合または絡み合うガラス繊維で作製された不織布、織布、紙、または編織物である。ガラス繊維マットは、ガラス繊維のみを含むか、または適用仕様に合致するのに適した他の材料を含む。
【0007】
例えば、ガラス繊維は、電池のいくつかの様式で使用される。ガラス繊維は典型的には、電池の負極プレートおよび正極プレートの間に挿入されることが好ましい隔離板として使用される。加えてガラス繊維は、電池の負極プレートまたは正極プレートに使用される活物質ペーストのための材料のひとつとして使用される。化学的反応性物質(または活物質ペースト)は、充電および放電反応を行うために負極または正極に配置される。さらにガラス繊維は、製造時に鉛ダストの遊離を減少するため、および/またはプレートを硬化プロセス時に互いに粘着することから守るために、これらのプレートの表面に塗布されるペースト紙(pasting paper)として使用することができる。
【0008】
ガラス繊維は、湿潤環境において脆弱になり、好ましい成分および好ましくない成分を浸出し、ならびに酸性および/またはアルカリ性環境において不安定である傾向がある。ある種のガラス繊維のこれらの特徴は、電池隔離板またはフィルターのような用途におけるそれらの有用性を制限し得る。例えばイオン浸出は、ガラス組成を基にしたガラス繊維の表面現象である。ガラス繊維から喪失されたイオンの量は、露出した表面積およびガラス組成に比例する。表面積の検討材料は、典型的には直径約5〜7μm未満を有するガラス繊維について最大である。一部のガラス繊維においては、ある種の金属酸化物の不純物(例えば、酸化白金、酸化鉄)が、繊維から浸出し、および電池の寿命に有害な作用を有する。
【0009】
【非特許文献1】Engineered Materials Handbook, Vol. 4, Ceramics and Glasses, ASM International (1991)
【発明の開示】
【0010】
概要
ガラス組成物、あるガラス組成物で形成されたガラス繊維、ならびにあるガラス繊維および/またはガラス組成物で形成されたガラス繊維製品を開示する。開示する組成物および繊維の特定の態様は、広範な作業温度範囲および比較的低い融点を有し、このことは繊維化装置の耐用年数を延長し、ガラス繊維製造に関連した経費を削減することができる。さらに、開示する組成物および繊維の特定の態様は、良好な耐酸性および/または耐アルカリ性を有し、ならびに有益なイオンを含み、その結果浸出が生じた場合に、浸出したイオンは、電池隔離板内のような、その繊維が使用される特定の適用において有利な作用を有する。加えてガラス組成物および/またはガラス繊維のある態様は、様々な波長のエネルギー、例えばX線の吸収および/または遮蔽に関して有益な物理特性がある。
【0011】
ガラス組成物のある態様は、特に成分の中でも、酸化ビスマスを含有する。ガラス組成物のある態様は、組成物の約0.5〜30重量%の酸化ビスマス、および組成物の約54〜70重量%のケイ素酸化物を含有する。ガラス組成物の態様は、他の成分も含むことができる。例えば酸化亜鉛は、その組成物の約0.01〜5重量%を占めることができる。
【0012】
詳細な説明
特に成分の中でも、ビスマスおよび/またはビスマス化合物を含有するガラス組成物を開示する。開示するガラス組成物は、溶融段階でのガラスの組成物であり、この組成物は、そのようなガラス組成物から形成された得られたガラス繊維のものと同じである。ある構成成分は一旦溶融されると形を変更し、ガラス組成物の一部となることがあるので、開示ガラス組成物は、そのようなガラス組成物を形成するための「構成成分リスト」の例とは異なりうる。ガラス組成物構成成分リストの例は、開示ガラス組成物の特定の態様を製造するための例証的方法の考察と共に、以下に示す。
【0013】
開示するガラス組成物の態様は、例えば表1に示した範囲内で、1つまたは複数の下記成分を含有してもよい。
【0014】
(表1)

【0015】
開示ガラス組成物のさらなる態様は、例えば表2に示した範囲内で、1つまたは複数の下記成分を含有してもよい。
【0016】
(表2)

【0017】
ガラス組成物の特定の態様は、例えば、表3に示した成分を含有してもよい。
【0018】
(表3)

重量%の分量は100%を上回る;BDLは検出下限を示す。
【0019】
開示ガラス組成物は、望ましい各成分に関して様々な供給源を用いて配合することができる。例えば、下記のガラス組成物成分は、表4に列記された給源から得ることができる。
【0020】
(表4)

【0021】
これを形成するための開示ガラス組成物および構成成分の特定の例証的態様が、表5に列記されている。ガラス組成物成分の様々な供給源、量、および組み合わせを使用し、当業者に公知であるように、本明細書に開示するガラス組成物を作製することができる。
【0022】
(表5)

BDL-検出限界未満
【0023】
開示するガラス組成物の態様は、先に列記された開示成分の様々な組み合わせを含むことができる。しかし開示ガラス組成物の各々は、ある量のビスマスを含み、典型的には酸化物の形で、約0.5重量%〜約30重量%の量のBi2O3が存在する。良好な結果は、組成物中に存在するビスマス成分約1重量%〜約15重量%のBi2O3、約0.5〜約7重量%のBi2O3で得られる。電池などの様々な用途に関して、ガラス組成物の態様は、約0.5〜約15重量%のBi2O3、0.5〜約2重量%のBi2O3、1〜約2重量%のBi2O3、4〜約9重量%のBi2O3、9〜約15重量%のBi2O3、または他の範囲および量で組成物中に存在するビスマス成分を有する。無視できる量のBi2O3の金属型への還元が存在することは可能である。しかし、どの形のビスマスがガラス組成物に使用されるかにかかわらず、組成物の溶融時に原料のビスマスは酸化ビスマスへ転換する可能性がある。
【0024】
単独のBi2O3はガラスを形成しないであろう。酸化ビスマスは、二成分(binary)ガラス組成物の一部として使用することができる。例えば酸化ビスマスは、濃度最大約50mol%で、SiO2へ添加することができる。Bi2O3は、さらにK2Oなどのいくつかの他の酸化物と共にガラスを形成する。Bi2O3は、ガラス組成物中で、B2O3またはPbOに類似した様式で作用し、すなわちこれは典型的には、組成物のガラス融点およびガラス粘度を低下し、ならびにより低い温度でのガラス繊維化を可能にする。酸化ビスマスの構成元素は、ガラスマトリックスに混入され、および得られるガラス構造、例えばガラス繊維を強化するように作用する。
【0025】
加えてある程度の酸化ビスマスは、ガラス軟化点および融点を低下するように作用する(以下で考察しおよび表7に示している)。繊維化温度、すなわち、ガラス組成物粘度が約1000ポアズである温度も、ガラス組成物のある態様において低下する。特定のガラス組成物の態様は、約1093℃とほぼ等しいまたはそれよりも低い繊維化温度を示し、およびある態様は、約1038℃〜約1120℃とほぼ等しいまたはそれよりも低い繊維化温度を示し、これについては例えば表14を参照されたい。約2〜約10重量%のBi2O3を有するガラス組成物の態様は、そのガラス組成物の繊維化温度を約10℃〜約38℃だけ低下する。
【0026】
示されたレベルのBi2O3を含有するガラス組成物も、ハンドシート(hand sheet)に形成されたガラス繊維の性能を改善する。そのようなハンドシートの試験は、開示ガラス繊維のある態様が、優れた電池隔離板またはフィルター媒体を作製するであろうということを示している。すなわち、開示するガラス繊維のそのような用途は、比較的容易に製造することができ、ならびに例えば表6および7に記されたM-ガラス(Evanite Fiber Companyから入手可能)または表6に示されたJM 253ガラス(Johns Manville Corporationから入手可能)などの市販の繊維により現在入手可能なものに類似したもしくはより優れた引張り、伸長、基本重量、水毛管現象の特徴、および他の基本的特徴を有する。従って開示ガラス組成物のある態様は、形成されたガラス繊維に必要な主要な媒体の物理特性を損なわないが、代わりに追加して、特定の増強されたまたは新規のガラス特性に起因した増強された性能、例えば電池用途においてガス発生を低下させるBiイオン浸出を提供する。
【0027】
さらに、開示するビスマス含有ガラス組成物の特定の態様は、増加した失透抵抗性を有し、そのためこれらは、繊維化プロセス時に結晶とならない。開示する範囲でBi2O3を有するガラス組成物は、失透に対するより高い抵抗性を示した(表7参照)。改質された硼珪酸ガラス、すなわち表7においてM-ガラスと表示されるものは、本明細書に参照として組み入れられるNomenclature Committee of TIMA Inc. 91, 93に公開されたように、人工のガラス質繊維である。このガラス組成物は、Bi2O3およびZnOのガラス組成物への添加の作用を決定するための参照として使用された。M-ガラスバッチ(全ての原料の混合物)を形成し、その後3部分に分割した。表7に示したように「Mガラス」と表示した第一のガラス組成物を形成した。第二のガラス組成物は、約2重量%ZnOおよび約2重量%Bi2O3を含むさらなる成分の添加により形成し、ならびに第三のガラス組成物は、約10重量%のBi2O3の添加により形成し、これにより開示ガラス組成物の2種の特定の態様を形成する。
【0028】
約1〜約4重量%ZnOに加え、示されるようなBi2O3の添加も、フロートデューティ(float duty)下でVRLA電池の水素ガス発生を最小化する。フロートデューティは、当業者に公知であるように、待機適用において電池を完全に充電した状態で維持するために使用される低速充電である。ガラス組成物中のZnOおよびそれから形成された得られるガラス繊維は、電池およびフィルター使用などの様々なガラス繊維用途において重要である、ガラス繊維の耐水性および耐酸性を著しく改善する。ガラス組成物の他の態様は、ガラス組成物の望ましい最終使用に応じ、約0.01〜約3重量%のZnO、約0.01〜約2重量%のZnO、または他の量および範囲を含む。
【0029】
開示するガラス組成物から形成されたガラス繊維中のビスマスイオンは、電池性能を改善しおよび電池寿命を延長する(以下に論ずる)ようにも作用するであろう。ガラス組成物中の望ましいビスマス量は、浸出が、得られるガラス繊維の構造的完全性を経時的に損なわないように計算される。特定の用途において、溶液へ浸出するある程度のビスマスイオン(または考察したような他のイオン)を有することが望ましいが、この浸出は、例えば電池操作時の完全な繊維溶解に繋がってはならない。望ましい浸出の量は、電池に必要なデューティサイクルによって左右されることがあり、およびこのような量は、当業者には公知である。約0.5〜約30%の酸化ビスマスを有するガラス組成物から形成されたガラス繊維は、得られるガラス繊維の構造的完全性が浸出によって経時的に損なわれることはないが、電池中の水素ガス発生を制限または防止するのに十分なイオンが浸出するような、十分なビスマスイオン浸出を提供する。
【0030】
約1〜約15%の酸化ビスマスを含有するガラス組成物の代替の態様から形成されたガラス繊維も、得られるガラス繊維の構造的完全性が浸出によって経時的に損なわれることはないが、水素ガス発生を制限または防止するのに十分なイオンが浸出するような、十分なビスマスイオン浸出を提供する。これは特に、バルブ調節した(密封した)鉛酸電池において当てはまる。水素ガス発生は、水の喪失を引き起こし、これは電池寿命を短くし、性能を低下する。
【0031】
前記ガラス組成物およびガラス繊維の一部の態様は、NiOまたは他の適当なNiイオン供給源を含んでもよい。電池用途に関して、Niイオンは、鉛酸電池の負極プレートの電荷受入れを増大する。他方でNiは、ガス発生を増加することがある。この負の作用は、Bi、ZnおよびAgイオンのガラス組成物への添加により、抑制することができる。
【0032】
典型的にはシリカが、主要なガラス成分である。シリカは、安定した、耐久性のあるガラス格子を形成し、およびガラス組成物に特定の構造特性を提供する。開示するガラス組成物の特定の態様において、SiO2は、約50重量%〜約75重量%、または約54重量%〜約70重量%で存在する。開示するガラス組成物の別の態様において、SiO2は、約56重量%〜約69重量%で存在し、さらに別の開示ガラス組成物の態様において、SiO2は、約62重量%〜約70重量%で存在する。ガラス組成物の望ましい最終使用に応じ、SiO2のその他の量および範囲が存在しても良い。他の材料は、除外されたSiO2の平衡をもたらすことができる。当業者に公知であるように、例えばSiO2は、酸化アルミナ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、それらの混合物などの化合物、および他の適当な化合物と混合することができる。従って特定の態様において、ガラス組成物は、約50重量%未満のSiO2量を含む。
【0033】
他のガラス形成体(former)(P2O5、B2O3)は、十分な耐久性のある(および安価な)ガラスを提供することができない。すなわち、理論的にこれらの酸化物は、シリカを代用することができるが、これらは高価であり、かつそれらから形成されたガラス組成物は、より耐久性が低い可能性が高く−多湿および酸性の環境に十分に耐えない。
【0034】
前記ガラス組成物中のアルミナは、ガラスの耐水性および耐酸性に影響を及ぼす。従ってアルミナは、例えばフィルター用途において使用される場合に、開示ガラス繊維の多湿大気中での性能の態様を改善することができる。他方で、比較的高いアルミナ含量は、ガラス繊維のKdis(生物学的解離係数)を著しく低下させることができ;このことは、ガラスを、より生分解されにくくする。アルミナ濃度約2%〜約4%が有用であることがわかっている。
【0035】
酸化カルシウム(CaO)および酸化マグネシウム(MgO)は、ガラスネットワークをさらに安定化し、およびガラスに特定の有利な構造特性を提供するために、特定のガラス組成物の態様において存在することができる。CaOは、ガラス組成物の粘度を低下するように作用し、およびMgOはさらに、結晶化速度をさらに遅延するように作用する。CaOおよびMgOは、ガラス繊維の生物学的溶解度を増大する。開示ガラス組成物の特定の態様は、これらの酸化物をCaO対MgOの有利な比約3:2(すなわちモル比約1:1)で含有する。他の特定の態様は、以下の量で酸化物を含有する:CaO約3重量%〜約6重量%およびMgO約2重量%〜約4重量%。
【0036】
前記ガラス組成物のある態様は、酸化ナトリウム(Na2O)および/または酸化カリウム(K2O)を含有する。これらの特定の酸化物は、各々、ガラス融点、ガラス粘度を低下することを補助するために存在し、低温でのガラスの繊維化を可能にすることができる。Na2OおよびK2Oのある程度の添加は、ガラスの耐酸性の増強を補助することができる。他方で、両酸化物は、ガラスの水溶解度および生物学的溶解度を増大するように作用することができる。両酸化物を含有するガラス組成物の態様はさらに、ポリアルカリ作用(相乗作用)に起因した利点を提供することができる。K2Oの添加は、ガラス組成物の結晶化の性向の低下を補助することもできる。
【0037】
前記ガラス組成物のある態様は、ガラス融点の低下を補助し、ガラス粘度の低下を補助し、および得られるガラス繊維の弾性を増強するために、酸化ホウ素(B2O3)を含有する。加えて酸化ホウ素は、水中および酸中でのガラス耐久性の劣化を伴うことなく、ガラス繊維の生体溶解度を著しく向上させるために、ガラス組成物中に含有することができる。ガラス組成物の特定の態様は、約4重量%〜約7重量%の酸化ホウ素または約O〜約1重量%の酸化ホウ素を含有する。
【0038】
前記ガラス組成物のある態様は、得られるガラス繊維の防湿性を補助するために、酸化バリウム(BaO)を含有し、および得られるガラス繊維の生物学的分解性に対し正の作用を有することがある。
【0039】
前記ガラス組成物のある態様は、ガラス融点の低下を補助し、溶融清澄(melt fining)を改善し、およびガラス粘度の低下を補助するために、フッ素(F2)および酸化リチウム(Li2O)を比較的少量(例えば約1重量%未満)含有する。ガラス組成物のある態様は、微量の酸化鉄を含有し、その理由はこれはSiO2、Al2O3、CaOおよび/またはMgOバッチ材料中の不純物として導入されるからである。ガラス組成物中の鉄の典型的含量は、約0.05重量%〜約0.1重量%である。他の典型的不純物は、SrO、および/またはMnOを含む。ガラス組成物の態様は、そのような酸化物を約0.1重量%未満の量で含有することができる。開示するガラス組成物は、一般に約0.05重量%未満のTiO2または約0.1重量%未満のTiO2(ガラス総量で)および0.01重量%未満または約0.1重量%未満のCoOを含有する。CoOおよびTiO2の両方は、電池操作に対し負の影響を有し得る。開示ガラス組成物は、一般に約0〜約3重量%のZrO2または約0.1〜約3重量%のZrO2を含有することができる。ガラス繊維の改善された生体溶解度のために、ZrO2は部分的にAl2O3分量に取って代わることができる。同じくZrO2は、ガラス繊維のアルカリ抵抗を増大する。濃度約O〜約3重量%のZrO2は、特に有用であることが認められるが、全ての用途に必要ではない。
【0040】
1つまたは複数の前述のガラス組成物構成成分は、当業者に公知のように適宜置き換えることができる。代替の化合物および酸化物は、例えばK2Oの代替として酸化ルビジウムを含んでもよい。別の例は、CaOのSrOによる部分的置き換え、またはAl2O3のLa2O3による部分的置き換えであってよい。
【0041】
本明細書に開示するガラス組成物は、当業者に公知の方法により作製することができる。例えば本明細書に開示のガラス組成物の態様は、表1〜4に列記したもののような、化学試薬等級の材料を使用し、調製することができる。望ましいガラス組成物を形成するための構成成分は、例えばクレーるつぼ(clay crucible)へ添加され、形成される正確なガラス組成物に応じて、約1350℃またはそれ以下で、最高温度では滞留時間約1時間で、溶融することができる。溶融されたガラス組成物は次に、ディスクの形状の鋼金型に注入される。次にガラスディスクは、約600℃でアニールされ、その後室温に冷却される。
【0042】
前述のように、開示ガラス組成物の態様は、驚くほど相対的に低い軟化点を有する。ガラス組成物の特定の態様は、軟化点約666℃〜約686℃を有し、例えば電池用途において使用するための他のガラス組成物は、約703℃未満の軟化点を有する。軟化点は、ガラス組成物の粘度が10を底とする対数7.6ポアズ(η=log7.6)である温度である。ガラス組成物の特定の態様は、表7および9Aに示されたガラス軟化点を有する。開示ガラス組成物の軟化点は、表7に例示されたように、市販のガラス組成物よりも低く、ここで「M-ガラス」および「JM 253」と表示された現存するガラス組成物は、典型的な従来のガラス組成物の軟化点を有し、M-ガラスは軟化点約704℃を有し、およびJM 253は約668℃を有する。
【0043】
本開示のガラス組成物の特定の態様はより低い軟化点を有するので、本開示のガラス組成物は、より早く溶融し、溶融および繊維化するためにより少ないエネルギーを必要とする。より低い融点および繊維化温度は、溶融したガラスと接触する部品のより少ない摩耗およびより少ないエネルギー経費のために、装置の節減を約束する。ガラス軟化点は、リトルトン(Littleton)法(ASTM C-388に準ずる、これは本明細書に参照として組み入れられる)により測定された。
【0044】
ある一定の開示ガラス組成物(C-6およびC-7)は、様々な溶液中の化学耐久性について試験され、そのような試験は粉末法を使用する。約297〜約590μmの範囲の粒子サイズ(すなわち、メッシュスクリーン30および50間の粒子画分)を有するガラス粉末を利用し、ある種のガラス組成物の特性を試験した。ガラスマイクロ繊維の製造および試験プロセスは、時間がかかりかつ高価であるので、この方法は少なくとも一部を行った。従ってスクリーニングのために、この粉末技術を用いた。少量の(例えば約1ポンド)の特定のガラス組成物を溶融し、次に冷却し、ガラス表面積が十分に増加するように粉末に粉砕した。試験は、予め定められた範囲の粒子サイズを有するガラス組成物粉末を含んだ。この方法は、時間のかかる高価な実験的ガラス繊維化プロセスを排除し、様々な環境および溶液内、すなわち酸性水、中性水、塩基性液および模擬肺液などの中の、繊維耐久性の予測を可能にする。
【0045】
ガラスの耐水性試験に関して、メッシュスクリーン30〜50の間の粒子画分約5gを、DI水100mlと共に250mlの平底三角フラスコに入れた。この混合物を、還流冷却器を用い、約7時間煮沸した。得られた溶液の試料に、誘導結合プラズマ原子発光分光分析(ICP)(発光分光光度計-モデルPerkin Elmer Optima 4300 DV)を施し、浸出液中に存在する各元素の量を決定した。
【0046】
ガラスの耐酸性試験に関して、メッシュスクリーン30〜50の間の粒子画分約5gを、比重1.260の硫酸100mlと共に250mlの平底三角フラスコに入れた。この混合物を、還流冷却器を用い、約3時間煮沸した。ガラスの耐アルカリ性試験に関して、メッシュスクリーン50〜80(177〜297μm)の間の粒子画分約5gを、0.5N NaOH溶液および0.25N Na2CO3溶液100mlと共に250mlの平底三角フラスコに入れた。この混合物を、還流冷却器を用い、約3時間煮沸した(ガラス耐アルカリ度試験DIN 12122)。得られた溶液の試料に、誘導結合プラズマ原子発光分光分析(ICP)(発光分光光度計-モデルPerkin Elmer Optima 4300 DV)を施し、浸出液中に存在する各元素の量を決定した(EFC Instruction QMSI-8.2. TM.165)。
【0047】
これらの試験結果は、表9Aに列記した。最初の試験は、開示ガラス組成物(C-6およびC-7)がガラス繊維用途に適性があることを証明した。
【0048】
(表6)様々な溶液中での直径1.4μmガラス繊維の減量(%)

【0049】
本明細書に開示するガラス組成物のある態様は、より低い繊維化温度を提供する。開示するガラス組成物の繊維化温度は、一般に約982℃〜約1120℃であるか、または市販のガラス組成物よりも約38℃低い。他の特定のガラス組成物のガラス繊維化温度および従来のガラス組成物との比較は、表14に列記している。
【0050】
本明細書に開示するガラス組成物のある態様は、相対的に非常に低い結晶化速度を提供し、これはガラス繊維化の重要な技術特性である。結晶化速度は、特定の温度または温度範囲でのガラス失透の速度である。開示するガラス組成物の特定の態様の結晶化速度は、以下の温度(℃)の炉内に、約2時間の滞留時間、ガラス粉末を保持することにより評価した:1000、950、900、875、850、825、800および700。結果は、表7および9Aに示した。
【0051】
開示するガラス組成物のある態様は、特定の従来のガラス組成物と比べて、著しく低い粘度を有する。当業者に公知であるように、ガラス組成物の粘度曲線は、ガラス加工に重要である。図1は、特定の従来のガラス組成物(すなわち、M-ガラス、475およびJM 253)およびBi2O3を含有する開示ガラス組成物のひとつの態様(表3のC-2)の粘度を図示している。Bi2O3を含有する開示ガラス組成物のひとつの態様(C-2)は、試験した他の全てのガラス組成物よりも優れた性能を示した。具体的には図1に関して、M-ガラスは、電池用途のために形成されたガラス組成物(Evanite Fiber Corporation, コルバリス, ORから入手可能)であり、EF低ホウ素(F)ガラスおよびB-ガラス(Evanite Fiber Corporation, コルバリス, ORから入手可能)は、フィルター形成に使用される。特定の低ホウ素ガラス組成物は、例えば米国特許第6,358,871号に開示されており、これは本明細書に参照として組み入れられる。
【0052】
超高性能空気(HEPA)濾過媒体および超低浸透媒体において使用されるガラス繊維は、典型的には有意な量のホウ素、例えば約8〜11重量%のホウ素を含有する。ホウ素は、フィルター使用時にガスが発生する。ガス発生後のホウ素は、ホウ酸形成を生じ、これはフィルターがチップ製造の換気システムにおいて使用される場合に、プリント回路/チップの製造品質に悪影響を有する。完全に除去されたホウ素または有意に低い量のホウ素を有するガラス組成物は、増大した粘度および液相線温度を欠点とし、このことは、通常の方法によるガラス組成物の細直径繊維への加工処理を加工困難とする。ガラス組成物において、ホウ素の低い存在または非存在(望ましい低ホウ素ガラス繊維フィルターを形成する)を補償するためのバリウムの存在は、このようなガラス繊維が電池用途において使用される場合には、有害作用を有する。本明細書に開示するあるガラス繊維組成物は、バリウムを使用することなく、ホウ素特徴の代替としてビスマスを使用し、低ホウ素HEPAおよびULPA用途において使用することができると同時に、電池用途における使用にも許容できるガラス繊維組成物を製造する。表6Aは、低ホウ素/低バリウム、ビスマス含有ガラス組成物の一例の組成物を示す。
【0053】
(表6A)

【0054】
開示するガラス組成物のさらなる態様は、例えば表6Bに示された範囲内で、1つまたは複数の成分を含有することができる。
【0055】
(表6B)

【0056】
JM 475ガラス組成物は、フィルターガラス組成物であり、およびJM 253は、通常の電池ガラス組成物である(Johns Manville Company, デンバー, コロラドから入手)。図1に示されたように、開示ガラス組成物のC-2態様は、現在入手可能な電池ガラス組成物(例えば、M-ガラス)の粘度よりも著しく低いガラス粘度を有し、これはJM 253の粘度曲線に非常に近い。従って得られるガラス繊維の妥協のない品質を維持しつつ、できる限り低いガラス処理温度を有することが目標である場合、開示C-2ガラス組成物は、著しい利点を示す。ならびに以下に考察するように、開示ガラス組成物は、電池用途、放射線遮蔽用途および他の用途における使用に関して、現在入手可能な組成物と比べ、著しく優れた特徴を示す。
【0057】
表6に示されたように、開示ガラス組成物の特定の態様は、市販のガラス組成物と比べ、驚くほど優れた耐水性を有する。例えば表6を参照し、ここで代表的な市販されているガラス組成物「M-ガラス」および「JM 253」ガラスは、開示組成物(C2-C5)と比べ、はるかに低い耐水性を有する。加えて、開示のガラス組成物番号2は、ハンドシートに形成された場合に、それぞれ0.8μmおよび1.4μm繊維について、4.3および3.3ポンド/インチと、驚くほど優れた引張り強さを有する。
【0058】
開示ガラス組成物で形成されたガラス繊維も本明細書において開示する。開示ガラス組成物は、従来の方法および装置を使用し、例えばガラス繊維に形成することができる。例えばこのガラス組成物は、ロータリー法、CAT法、改変ロータリー法(例えば米国特許第5,076,826号に開示されたような)、フレーム吹込み法、およびチョプドストランドまたは連続フィラメントガラス繊維プロセスなどの様々な製造法により、繊維化することができる。本明細書に開示するようなガラス繊維は、開示ガラス組成物の任意の大きさの態様から形成することができる。
【0059】
開示するガラス繊維の態様は、多くの用途の可能性がある。これらは例えば、電池の様々な様式および配置で、空気および/または液体の濾過用にデザインされたフィルター、ならびにガラス布または生地に織るため、補強された複合材料、電池活物質の添加剤、またはプラスチックの補強材および/もしくは放射線吸収材として、ならびに絶縁材(例えば電気的および/または熱的絶縁材)を形成するために、使用することができる。添加剤は、開示ガラス組成物のある態様から形成されたガラス粒子から形成される。ガラス粒子は、電池の種類および特定の電池適用で使用される活物質の種類に応じて、平均粒子サイズが例えば約100μm未満または約50μm未満または約7μm未満などの、様々なサイズで形成することができる。そのような用途に適したガラス粒子サイズは、当業者に公知である。
【0060】
望ましいガラス繊維組成物およびサイズは、当業者に公知のような、ガラス繊維の意図された用途を基に決定される。例えば、フィルターおよび電池の両用途に有用なガラス繊維を得るために、開示ガラス組成物2(表3参照)を、約0.8μm〜1.4μmのガラス繊維に形成することができる。当業者に公知のように、平均ガラス繊維直径は、約0.6μm〜約8μmの範囲、またはそうでなければガラス繊維の意図された適用に応じたものであることができる。
【0061】
開示するガラス繊維の態様は、典型的には、様々な有利な特性を示す。そのような開示ガラス繊維は、表6に示されたような優れた耐水性および耐酸性、ならびに優れた引張り強さ(そのような繊維で形成されたハンドシートは、各々、引張り強さ約4.3および3.3ポンド/インチを示した)を有する。そのような特徴は、これらの開示ガラス繊維を、様々な製紙(ウェットレイド不織布)、ドライレイド不織布プロセス、または織布製造(woven manufacturing)プロセスおよび製品に適したものとする。これらの織布または不織布製品は、例えば、電池、フィルター、編織物、および特別な工業用最終市場用途に有用であろう。不織ガラス繊維マットは、力学的、熱的または化学的手段により繊維を結合または絡ませることにより製造した、方向のあるまたは無作為な方向の繊維の製造されたシート、ウェブまたはバット(bat)である。不織布は典型的には、湿式ミルによる、織り、編み、房かけまたはフェルト化される製品を除外する。紙製品は、ガラス繊維が少なくとも紙の材料の一部として使用される場合には、不織であると考えられる。本明細書に参照として組み入れられるAlbin Turbak, Nonwovens: Theory, Process, Performance, and Testing, TAPPI Press, Chapters 1 and 2 (1993)を参照のこと。
【0062】
ある態様は、比較的低い生体持続性(biopersistance)も有し、このことは吸入された繊維が肺内で溶解しおよびより迅速に除去されることを意味する。当業者に公知のように、生体持続因子は、模擬肺液中のガラス繊維のKdisにより測定される。比較的高いKdis値を有するガラス組成物またはガラス繊維組成物は、このガラス組成物またはガラス繊維組成物がより望ましい生体持続特性を有することを示している。このガラス繊維のある態様は、約150ng/cm2hと高いKdisを実現し、ならびに他の態様は、約30〜約150ng/cm2hの範囲のKdis値を、およびある態様では約50〜約150ng/cm2hの範囲さえ示すことができる。
【0063】
ガラスの生体溶解度は、表3において開示するガラス組成物の態様6および7から製造されたサイズ75〜106μmに粉砕されたガラス粒子について試験した。篩140を通過し、および篩200を通過しなかったこれらの粒子は、バイアル内に、模擬肺液(SLF)と共に、約37℃で振盪しながら約96時間貯蔵した。解離速度を、発光分光光度計により行った浸出液分析を基に再度決定した。浸出速度は、溶液中に浸出されたイオンのレベルを基に比較した。結果を表9Aに示す。10重量%のBi2O3を有するガラス組成物の態様は、模擬肺液中のガラスの生体解離速度の2倍であった。このことは、Bi2O3を有するガラス組成物は、ガラス組成物の他の望ましい特性を損なうことなく、生体溶解度の増加を提供することを示している。ガラスの生体溶解度は、(例えば)本明細書に参照として組み入れられる、Russell M. PotterおよびStephanie M. Mattsonの「Glass fiber dissolution in a physiological saline solution」、Glastech. Ber. 64 Nr. 1 pp.16-28 (1991)に示されたような、周知の方法に従い、あるガラス繊維組成物について試験した。開示ガラス繊維組成物のある態様の追加の試験は、そのような繊維は、従来のガラス繊維組成物(すなわち、本開示量のビスマスを含まないガラス繊維組成物)に比べ、有意に高いKdis値を有することを示した。表9Bに示されたように、ガラス組成物1〜5(組成物1〜5は先の表5に示したような組成物である)で形成されたガラス繊維は、SLFで試験して、「M-ガラス」(Evanite Fiber Corporation, コルバリス, オレゴンから入手可能)として公知の従来のガラス繊維の生体溶解度の、約2.2〜約2.6倍の生体溶解度値を生じた。同時に開示ガラス組成物の繊維解離値は、同様に、より低い量であった。開示ガラス組成物のKdis値の増加は有意であったが、達成値は、253ガラス(Johns Manville Company, デンバー, コロラドから入手可能)として公知の入手可能なガラス繊維のKdis値よりもわずかに低かった。ガラス組成物生体溶解度のさらなる改善は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物の添加により実現される。
【0064】
さらに指定されたレベルのBi2O3を含有する開示ガラス繊維のある態様は、より長い繊維を形成することができるので、それらから形成されたガラス繊維の性能も改善することができる。ガラス繊維のある態様は、現在入手可能な同等のガラス繊維と比べて、密度の著しい増加も示す。従って電池隔離板に使用されるガラス繊維のような、ある種のガラス繊維製品は、隔離板においてより高い多孔度を提供し、その理由は、同じ質量のガラス繊維を有する隔離板について、より少ないガラス繊維が必要とされるからである。同じことが、繊維の質量対必要な繊維の量が関係する濾過および絶縁用製品などの他のガラス繊維製品にも当てはまるであろう。例えば開示ガラス繊維のある態様は、表7に示されたように、密度値約2.5〜約2.8g/cm3を有する。
【0065】
(表7)

【0066】
ガラス繊維の酸化ビスマス濃度が約1〜約15重量%である場合に、本開示のガラス繊維のある態様において密度値約2.50〜約2.85が入手可能である。密度値は、Micromeriticsマニュアルに示された方法に従い、Micromeritics AccuPyc 1330比重瓶を使用し得られた。
【0067】
本明細書に開示するガラス繊維の態様は、比較的低い比表面積(SSA)を有する。あるガラス繊維態様の比較的低いSSAは、ガラス繊維の耐久性の考察に有用であり−より大きいSSA繊維の値は、より小さい繊維直径となる。様々な用途は、異なる直径および各々異なるSSA値のガラス繊維を必要としている。SSAおよび繊維直径値は、反比例する。より大きいSSAは、繊維直径をより小さくし、および周囲大気の攻撃(例えば湿度、酸)に曝された場合に繊維をより強力にする。大きい表面積は製品に有害な影響を及ぼすので、SSA値は、比較的大きい比表面積のガラス繊維を有するガラス繊維製品に特に重要である。例えばイオン浸出は、ガラス繊維表面の現象である。ガラス繊維から喪失されるイオンの量は、露出された表面積に比例する。表面積の考察は、典型的には直径約5〜7μm未満を有するガラス繊維について最大であるが、より大きいまたはより小さい直径のガラス繊維のSSA値も、重要である。開示するガラス繊維のある態様は、約1.4μmの直径の繊維に関して、SSA値約1.1〜約1.2g/m3を有し、約0.8μmの直径の繊維に関して約1.95〜約2.0g/m3を有し、約3m2/g未満、または約2m2/g未満である。
【0068】
本明細書に開示するガラス繊維のある態様のSSA値に言及する場合、数値表示は、本明細書に参照として組み入れられるEFCTM 157: Specific Surface Area Analysis using Nitrogenに示された試験ガイドラインによるガラス繊維の分析により行われた決定を基にしている。使用される機器は、Micromeritics 2375 BET SSA分析器である。
【0069】
前述のように、様々なガラス繊維製品中のガラス繊維からのイオンの浸出は、その製品にとって有益であることも有害であることもある。例えば、ガラス繊維フィルター製品については、浸出は、繊維の崩壊などの様々な理由で有害であろう。ガラス繊維の浸出は、繊維の耐久性に直接影響する。ガラス繊維の耐久性の必要要件に対する浸出の影響に加え、その他の検討材料は、ガラス繊維が使用される用途によって左右される。例えば電池隔離板に使用されるガラス繊維では、電池の寿命に有害な作用を有し得るある種の金属酸化物の不純物(例えば、酸化白金、酸化鉄)の浸出レベルは低いことが好ましい。他方で、ある種のイオン(例えば、Bi、Ag、Ni、Cd、Ge、Sn、Zn)は、電池性能に正の作用を有し(先に考察されたような)、そのためこれらのイオンの浸出は、有益である。考察されたようにこれらのイオンは、ガス発生、水分喪失を低下させ、かつ電池の負極プレートによる電荷受入れを改善する。
【0070】
ガラス繊維の耐久性は典型的には、酸性、中性およびアルカリ性条件でのガラス繊維の浸出速度により決定される。粉末形の開示ガラス組成物の特定の態様を、酸性環境における浸出速度について試験した。酸性での浸出速度は、ガラス繊維1gを比重1.26g/cm3を有するH2SO4 100ml中で3時間煮沸することにより得た浸出液を分析して、決定した。DI水(最大250ml)を、浸出液に添加した(本明細書に参照として組み入れられる8.2 ASTM 165を参照)。得られた溶液の試料を、発光分光分析(OES)モデルPerkin Elmer Optima 4300 DVに供し、浸出液中に存在する各元素の量を決定した。最終浸出速度の結果は、表6、8、10および18に示した。示す浸出速度は、試験した1組成物につき、3回の試料試験の平均である。表18は、Biイオン浸出定数を示している。浸出定数は、1cm2のガラス表面から溶液へ1時間で浸出したナノグラムでのイオン質量である。
【0071】
浸出定数は、以下のように決定することができる:
1)沸騰している1.26g/cc H2SO4中で3時間の直径0.8μmのガラス繊維のBi2O3浸出速度は、ガラス繊維1g当たり、1.8重量%Bi2O3を含有するガラス組成物について、約2000ppmまたは2×106ngであり、および14.9重量%Bi2O3を含有するガラス組成物について、約16000ppmまたは1.6×107ngである。
2)前述の条件でのBi2O3の浸出定数は、下記式に従い計算した:

式中、mは、溶液へ浸出したBiイオンの質量(ng)であり、
tは、時間での浸出時間であり、
Sは、cm2での繊維表面積である。
3)0.8μmのガラス繊維は、比表面積2m2/gまたは20000cm2/gを有することがわかった。
4)従って、ガラス繊維が平均直径0.8μmを有する、C-1ガラス組成物(表3)から形成されたガラス繊維について、浸出定数は下記である:

5)ガラス繊維は平均直径0.8μmを有する、C-5ガラス組成物(表3)から形成されたガラス繊維について、浸出定数は下記である:

6)1重量%のBi2O3を有するガラス繊維組成物に関して、浸出定数は、18.5ng/h×cm2と等しい。
【0072】
従って、本明細書に開示するガラス繊維組成物のある態様のガラス表面1cm2からの1時間当たりのビスマスイオン浸出速度は、約15〜約320ng/h×cm2または約10〜約250ng/h×cm2である。
【0073】
酸浸出試験は、試験したガラス組成物態様が、M-ガラス(Evanite Fiber Corporation, コルバリス, オレゴンから入手可能)から製造された現在市販されているガラス繊維「408」および「253」ガラス(Johns Manville Company, デンバー, コロラドから入手可能)から製造されたガラス繊維「206」の範囲内の浸出速度を有することを示した。試験された開示ガラス組成物の態様の浸出速度は、「253ガラス」から製造されたガラス繊維により近い。全ての試験されたガラス組成物態様は、組成物番号2、4、および5、−ZnOを伴うガラス組成物態様および最大Bi2O3濃度を伴うガラス組成物−に示されたわずかに高い値とほぼ同じ耐酸性を有する。
【0074】
(表8)

* この組成物番号は、先に表3に示したものに対応する。
** Kイオンは除外した。
【0075】
得られた溶液の試料は、誘導結合プラズマ原子発光(ICP)(発光分光光度計-モデルPerkin Elmer Optima 4300 DV)に供し、浸出液中に存在する各元素の量を決定した。表8および9Aに示した最終結果は、試験した1組成物につき3回の試料試験の平均である。具体的な態様に関する水中の異なる元素イオン浸出速度を、表10に示した。DI水中の浸出速度は、DI水250g中で2.5gのガラス繊維を3時間沸騰することにより得られる浸出液を分析することにより決定した。得られる溶液の試料を、発光分光光度計-モデルPerkin Elmer Optima 4300 DVを用いて分析し、浸出液中に存在する各元素の量を決定した。表10において、組成物1〜5を示している試料IDは、表3に示された組成物のものである。(試料IDの表示「08」は、ガラス繊維直径0.8μmを示す)。元素濃度はppmである。
【0076】
粉末形の開示ガラス組成物の特定の態様を、水中または中性環境中の浸出速度について試験し(前述の試験)、ガラス繊維の耐湿値および耐水値を決定した。DI水、酸およびアルカリ性溶液中の浸出液の総イオン濃度は、表8および9Aに示した。示すデータは、試験した1組成物についての3回の試料試験の平均である。試験したガラス組成物態様は、得られるガラス繊維が、市販の繊維(減量約5重量%未満)と同等である耐水性能値を有することを示している。耐水性性能は、より高いZnOおよびBi2O3含量を有するガラス組成物についてより良好である。
【0077】
粉末形の開示ガラス組成物の特定の態様を、アルカリ環境における浸出速度について試験した。塩基中の繊維の浸出速度は、ガラス繊維約2.5gを30%KOH 100ml中に52℃で3時間保持することにより得られた浸出液を分析することにより決定した。DI水(最大250ml)を浸出液に添加した。ガラス繊維の耐酸性および耐水性を、EFCTM 120:Extractable Metallic Impurities of Recombinant Battery Separator Mat(RBSM) and Glass Fibersに従い試験した。そのような条件は、電池環境内に約5年間存在するガラス繊維と同等である。アルカリ度を、本明細書に参照として組み入れられるEFCTM 119に従い試験した。浸出液を、先に説明したように、EFCTM 120に従い試験した。
【0078】
約10重量%Bi2O3を有するガラス組成物(組成物7, 表3および9A)は、酸(1.26g/cm3 H2SO4)中で低下したガラス化学耐久性(10〜20%)、水中で改善したガラス耐久性、および0.5N NaOH+0.5N Na2CO3水溶液中での著しく増大した耐アルカリ性を有する。驚くべきことに、0.5 NaOH+0.5 Na2CO3中での組成物7のガラス浸出速度は、1/3降下した(drop)(表9A参照)。しかし同じ現象は、組成物1〜5で作製されたガラス繊維について、濃KOH(30%)中では示されなかった。30%KOH溶液は、試験した全ての組成物について同等に破壊的であるように見える。2%Bi2O3および2%ZnOの添加(組成物6, 表3および9A)は、ガラス特性を有意に変更しなかった。しかしそのような組成物は、ひとつにはそのガラス組成物の態様は、ZnOおよびBi2O3の両方を含有するという事実のために、電池隔離板にとって非常に有効であろう。増加したガラス繊維の耐アルカリ性は、電池隔離板で使用されるガラス繊維にとって有益であり、その理由はそのプレートの最初のラッピング時に、鉛プレートはアルカリpH値約8〜約10を有するからである。加えて電池の形成前に、酸性電解質の密度または比重は、水の密度または比重に近づくことができ、プレートにアルカリ条件を生じる。
【0079】
(表9A)

コメント:3種全てについて、組成物は同じバッチから調製し、その後M-組成物に、2重量%ZnOおよび2重量%Bi2O3(最初のバッチ質量の%)を添加した。組成物7について、10重量%Bi2O3を添加した。ガラスは、最高温度1350℃で溶融し、滞留時間は最高温度で1時間であった。
* Naイオンは除外した。
【0080】
(表9B)

【0081】
(表9C)

注記:結果は、0.8ミクロンM-ガラス繊維から作製した参照媒体に対し標準化した。
【0082】
(表10)0.8μm繊維媒体の水浸出試験結果(ppm)

【0083】
ガラス繊維組成物が電池隔離板において使用される特定の場合において、これらを、鉛酸電池またはリチウム電池などの、様々な電池型で使用することができる。隔離板の一般的機能は、例えば「Handbook of Battery Materials」Jurgen O. Besenhard編集、Wiley-VCH, ISBN-3-527-29469-4, 第9章(1999)に認めることができ、これは本明細書に参照として組み入れられる。ガラス繊維は、概して、隔離板の総質量の約60〜約99重量%またはそれよりも多くで構成することができる。ある態様において、ガラス繊維は、ポリエステル、ポリオレフィン、木材パルプ、およびそれらの混合物などの、当業者に公知のその他の隔離板材料と混合されるかまたは組み合わせられる。
【0084】
鉛酸電池は、複数の電極プレートを備える。これらのプレートは、交互に正極および負極を確立するように配置されている。電池隔離板が、各電極対の間に配置されてもよい。隔離板は、絶縁材で形成することができ、および一部電極プレート間の短絡の形成からの電池内の金属沈着を防ぐように使用される。しかし、電流がひとつのプレートから別のものへと通過することができるように、隔離板は電池電解質に対し多孔質である。電池隔離板の具体例ならびにそれらの製造および使用の方法は、米国特許第5,180,647号;第5,091,275号;第4,237,083号;第4,113,927号;第3,989,579号;第3,845,737号;第5,182,179号;第4,648,177号;第4,606,982号;第4,081,899号;および、第3,450,571号に開示されており、これらは全て本明細書に参照として組み入れられる。
【0085】
電池隔離板の例において、開示ガラス組成物から作製されたガラス繊維を使用し、電池隔離板を形成する。これらのガラス繊維を使用し、典型的には変動する長さおよび直径のガラス繊維で構成されている、吸収性ガラスマット(AGMまたはRBSM)隔離板として一般に公知のものを形成することができる。別の場合には、電池隔離板は、米国特許第5,091,275号(以下'275号特許)において開示されたような、コロイド状シリカ粒子および硫酸塩の水性混合物である結合剤で含浸される開示ガラス繊維で形成されたマットを含む。'275号特許に説明されたように、この隔離板は、通常の抄紙機(フォードリニア機など)でガラスマットを形成し、その後マットを結合剤の水性混合物の含浸浴中の結合剤に曝し、引き続きマットを乾燥し、望ましい隔離板厚に圧縮することにより作製することができる。開示ガラス組成物から製造されたガラス繊維を含有する乾式体積繊維マットも、電池隔離板を形成するために使用することができる。開示ガラス繊維組成物で形成される乾式堆積マットは、例えば当該技術分野において公知の通常の方法により製造することができる。
【0086】
表3に示した開示ガラス組成物の特定の態様で構成された電池隔離板を製造し、性能について試験した。電池は、約100%の細かいガラス繊維を含む連続する隔離板を用いて試験し、これらの繊維は、約0.8μmの平均繊維直径を有し、および本明細書に開示するガラス組成物の確定された特定の態様で形成した。一連の被験電池を、フロート試験のために作製した。
【0087】
フロート試験の結果は、ガラスから浸出するビスマスが、電池内のプレート上に配置されることを示している。例えば本明細書に参照として組み入れられるCeylan H., Haigh N.P.、Manders J.E.およびLam Lan T、「Influence of bismuth on the charging ability of negative plates in lead-acid batteries」161 Journal of Power Sources, 107:2: 155-(2002)などの特定の刊行物において証明されたように、ビスマスを正極プレートおよび負極プレートに、ペースト活物質約0.01〜約0.06重量%のレベルで添加する場合、この電池は、深放電サイクリング(deep cycling)または高速部分充電サイクリング(high rate partial state-of-charge cycling)(HRPSOC)下でのサイクル寿命の著しい改善を示す。従って表11に列記した結果に示すように、本明細書に開示するガラス組成物で製造された繊維で形成された電池隔離板を使用する場合、ビスマスは、電池操作時に、隔離板から電池プレート上に浸出され、これは次に電池性能を向上する。
【0088】
同様に隔離板(開示ガラス組成物で製造されたガラス繊維で形成された)から浸出されたイオンは、電池のフローティングセル電位に影響を及ぼす。例えば、電池被験セルは、最大電流2.3Aで20時間で、定電圧2.45Vで完全に充電され、引き続き3回連続して3時間容量定量され、すなわちセルは4.6Aで電圧が1.7Vに達するまで放電された。再充電は、定電圧2.45Vで、最大電流2.3Aで、10%の過充電に到達するまで行った。容量試験後、セルを、定電圧2.27Vで充電した。各セルのフロート電流を、連続して2週間25、40および6O℃でモニタリングした。個々のセルのフロート電流性能を試験した。
【0089】
フロートサービス(例えば、電気通信、無停電電源(UPS)システムの用途)時に、鉛酸電池セルは、充電した状態で維持され、求めに応じて短期間に放電することが必要である。この条件において、充電電流(すなわちフロート電流)は、主に、フラデッド(flooded)電解質セルにおける、正極プレートにおける酸素発生およびグリッド腐蝕ならびに/または負極プレートにおける水素発生の組み合わせに起因する。VRLAの相手方において、充電電流(すなわちフロート電流)は主に、負極プレートにおける組み合わせられた水素および酸素再結合(recombination)に起因する。酸素および水素発生は、鉛酸電池の充電プロセスの副反応として生じ、水損失をもたらす。VRLA電池セルにおいて、正極プレートから発生した酸素は、隔離板の細孔または電池容器の上部空間のいずれかを通り、負極プレートへと拡散し、そこでは元の水へと還元される。従って水は保存される。酸素再結合反応は発熱反応であるので、過剰な酸素発生およびそれに続く再結合はVRLA電池セルの「熱散逸」を引き起こすことがあり、VRLA電池の故障モードであると考えられる。他方で、負極プレートから発生した水素は、正極プレートで、非常に遅い速度で酸化され、水へ戻るのみである。従ってあらゆる水素放出は、セルからの水の永久損失と解釈されるであろう。従って酸素および水素-両ガス発生速度の最小化は、VRLA電池において望ましい。
【0090】
所与のプレート寸法およびグリッド組成に関して、フロート電流の大きさ(amplitude)は、隔離板中の飽和レベルの酸、正極および負極プレート中の微量元素の濃度、ならびに電池温度により影響される。プレート中の微量元素は、出発の酸化鉛から、および/または電解質からの元素の沈積から、および/または隔離板より浸出した微量元素から生じる。様々な開示ガラス繊維組成物から形成された隔離板の、電池フロート電流に対する作用を決定するために、いくつかの開示ガラス組成物(4つのビスマス含有および1つの対照)を用い、ガラス繊維、次に電池隔離板を形成し、酸飽和レベルを維持しながら、同じ正極および負極プレートを使用し、電池を試験した。
【0091】
様々なVRLAセルのフロート電流における温度により得られた変化を、図4に示した。各セルに関して、フロート電流は、温度が約25℃から約40℃に上昇しても、事実上変化せずに維持される。フロート電流は、約40℃を上回る温度上昇により、増大する。フロート電流に対し、いくつかの開示ガラス繊維組成物で形成された隔離板を使用し、対照(408 MCC)、08-UAC(組成物1、表3)、08-UCC(組成物2、表3)、08UDC(組成物4、表3)、および08-UEC(組成物5、表3)は、温度約4O℃またはそれ以下で類似していることが示され、これはフロート電流が装置精度内(すなわち±3mA)であるからである。標準の充電/放電装置を組立て、実験室CSIRO Energy Technology laboratory(ビクトリア, オーストラリア)で使用した。表11は、フロート充電試験前後の、電解質およびプレート材料中の微量元素のレベルを図示している(すなわち、使用した隔離板から浸出したそれらの元素)。表11のデータに示したように、隔離板を形成するガラス繊維から浸出したビスマスは、電池プレート上に配置されるのに対し、亜鉛材料は配置されない。表11Aは、表11に列記したセルA〜Eにおいて試験した隔離板を形成するガラス繊維組成物のリストである。
【0092】
(表11)

BDL=検出限界未満
【0093】
(表11A)

【0094】
開示ガラス繊維組成物のある態様から製造された電池隔離板の性能は、電池の寿命の間、ガラス繊維組成物のある態様を、標準温熱酸浸漬手法および抽出手法に供することにより分析した。表面積1345cm2を有するガラス繊維マット形の中のあるガラス繊維組成物の試料を、約20時間、約21℃、40℃および60℃の変動する濃度の硫酸試料、すなわち約1.1、1.25、1.3、および1.35g/cm3と同等の比重を有する酸に浸漬した。平均直径約0.8μmを有する、通常のM-ガラスで形成されたガラス繊維で形成された電池隔離板媒体を、参照として使用した。隔離板含浸の前後の酸溶液の試料を、発光分光光度計モデルPerkin Elmer Optima 4300 DVで分析し、ガラス繊維試料からの元素の浸出の程度を決定した。
【0095】
図2A〜2Dは、酸の比重および温度の関数としての、特定の開示ガラス繊維組成物から浸出されたBiイオンの濃度の分析の結果を示す。ビスマスイオン濃度は、ガラス組成物溶液中の酸化ビスマス含量、温度に比例し、使用される酸の比重に反比例する。従ってガラス繊維組成物からの浸出により、電池電解質中の特に有利なビスマスイオン濃度は、ガラス繊維を形成するために使用されるガラス組成物中の酸化ビスマス含量の操作により、および電池操作温度の制御により、実現することができる。例えば、温度範囲約20〜約60℃に関して約0.05ng/cm2h〜約12.0ng/cm2hの望ましいBiイオン浸出定数を実現するために、約0.5重量%〜約15重量%の酸化ビスマスを有するガラス組成物で製造されたガラス繊維を使用することができる。
【0096】
試験は、08UACガラス繊維(組成物1、表3)で製造された電池隔離板の態様が驚くほど優れた性能を有することを示している。酸比重および温度の関数としてのガラス繊維組成物のこの態様に関するBiイオン浸出定数(ng/cm2h)を図8に示す。
【0097】
図2A〜2Dは、以下の比重の硫酸溶液中に20時間浸漬後の特定のガラス繊維組成物の浸出液中のBiイオン濃度を示している:(図2A)1.1g/cm3;(図2B)1.25g/cm3;(図2C)1.3g/cm3;および、(図2D)1.35g/cm3。ビスマスが正極および負極プレートに添加された場合に、浸出されたBiイオン濃度約0.01重量%〜約0.06重量%は、深放電サイクリングまたは高速部分充電サイクリング下でのサイクル寿命に著しい改善を示すが、速度は低い(電流<1C)。前記条件下での開示ガラス繊維組成物のある態様のBiイオンの浸出定数を表17に示す。
【0098】
一般に、電解質中の浸出されたイオン濃度は、温度に比例し、酸濃度に反比例する。様々な比重の硫酸溶液の温度に対しプロットされた典型的イオン濃度は、図3に示している。図3のグラフは、C-4(表3)ガラス組成物で形成されたガラス繊維で形成されたマット(UDC)に関して、比重1.1g/cm3、1.25g/cm3、1.3g/cm3、および1.35g/cm3を有する硫酸溶液中に20時間浸漬後に得られるCaイオン濃度を示している。
【0099】
電池隔離板の重要な物理特性は、媒体(すなわちガラス繊維マット)の圧縮回復である。全てのガラス繊維媒体は、圧縮からの湿潤および乾燥回復について試験した。図5および6に示したように、開示ガラス繊維組成物の態様から形成された1.4μm媒体について圧縮回復曲線を比較した場合、開示ガラス繊維組成物は、隔離板製造において使用するための現在入手可能な対照繊維(609 MAC)のものよりも、より良いまたは少なくとも同等の性能を有することが明らかにされた。驚くほど優れた結果が、湿潤および乾燥の両条件で、ガラス繊維組成物C-1(12-UAC)およびC-2(12-UCC)で作製された隔離板について得られた。図5に示したように、0.8μm繊維媒体を形成するための開示ガラス組成物の利点は、開示の1.4μm繊維媒体に関するものほどは明白でない。
【0100】
開示ガラス繊維組成物は、適当な製紙特性を有し、および紙(不織布)に変換することができる。一連のハンドシートを、開示ガラス繊維組成物の特定の態様を用いて作製し、および様々な等級の繊維を用い、実験的パイロット機器での紙試験を行った。製紙プロセス時に、ガラス繊維は、様々なパルパーおよびミキサーから応力および歪みを受ける。ガラス繊維が十分に耐久性でない場合、この繊維から製造された最終紙は、十分な強度または均質性を有さないであろう。
【0101】
ハンドシートは、2つの異なる配合時間および3つの異なる最終pH値で、12×12インチのハンドシート金型において製造した。一連の11個の個別のパイロット機器実験を行った。繊維直径0.8ミクロンを有することを目標としたガラス繊維の6回の試行を行った。工業用に販売されている対照の標準ガラス繊維で、408MCC(Fiber Manufacturing Corporationから入手可能)と識別されたものも試験した。目標繊維直径1.4ミクロンのガラス繊維を用いて5回の試行も行った。対照は、609MACと識別された工業用に利用可能な繊維であった。
【0102】
実験的パイロット機器は、フォーマー区画(former section)に29インチの製造幅を有する。これは、リールで良好な紙の24〜26インチの取幅(trim width)を可能にする。フォーマーは、改造された長網抄紙機であった。改造は、フォーミング区画にわずかな傾斜をつけた。紙は、直径36インチを有する、17本のスチームドライヤーカン上で乾燥し、その後リールスプロール上に巻き取った。各バッチが、ガラス繊維50ポンドバッグ2個を、硫酸を用い約2〜約3のpH範囲の酸性条件にpHを調節した清浄な濾過水を有するパルパーに添加することを含む、パルパーを用いてこれらのガラス繊維が調製された。各バッチは、ガラス繊維および水400ガロンの添加後、7分間混合し、その後パルプ化されたガラス繊維を、ホールディングタンクにポンプで移し、清潔な濾過水1200ガロンを添加した。その後繊維を、抄紙機にポンプで移し、さらに水で希釈した。希釈水は、ストックフロー容量の約2倍であった。各々について行った様々な小さい調節は、製紙業界の業者に公知のように最終製品の質量および厚さを調節するために行った。表12は、様々な試行および試験したガラス繊維組成物の態様を特定している。
【0103】
(表12)

【0104】
ハンドシートについて得られた試験特性値は、表15および16および図5〜7に示している。このデータは、開示ガラス繊維組成物で製造されおよび試験されたハンドシートが、参照対照よりも同等またはより良好な物理特性を有することを示している。
【0105】
前述のように、ガラス繊維組成物は、フィルター媒体(すなわち、開示のフィルター媒体)を形成するために有用でもある。ASHRAE、HEPAおよびULPA濾過媒体などの用途のための濾過媒体を形成するためのガラス組成物の適性を評価することにおいて、一連の濾過試験を行った。従来のガラス繊維で作製された媒体を、前述のパイロット機械上で形成した。開示するガラス組成物の態様から形成された0.8μm繊維を用い作製された媒体は、比較的高い空気抵抗(前面風速5.33cm/秒で143mmH2O)を有した。1.4μm繊維を用い作製された媒体は、中等度の40mmH2O台の空気抵抗値を有し、これはULPA媒体が持つ値と同等である。1.4μm繊維の試験は、冷DOPエアゾールを使用し、TSIのモデル8160 Certitestを用いて行い、フィルター媒体を試験し、結果を以下に示す。
【0106】
統計解析は、ある試料間のγ値の差異を示し(γは、-[log(浸透/100)/抵抗]*100として定義)(12UBCは、12UAC、12UCC、および609MACよりもより低いγを有する。)。媒体試料の空気抵抗とγの間には相関関係が存在し(より高い空気抵抗でより低いγ)、これは試験したフィルター媒体間の統計学的差異を説明することができる。U繊維化学は、Mガラス化学のものと同等の、空気濾過性能を生じた。表13のデータは、フィルター媒体を変更するために、冷DOPエアゾールを使用し、TSIのモデル8160 Certitestを用いて得た。表13に開示するガラスフィルター媒体組成物は、先に表12に示した組成物に対応している。
【0107】
(表13)

【0108】
ガラス繊維は、平均直径約1.4μmを有するよう、ガラス組成物C-1、C-2、C-3、C-4から形成し(表12および13に示した「12シリーズ」)、ならびに平均直径約0.8μmを有するよう、ガラス組成物C-1、C-2、C-3、C-4およびC-5(表3に示した組成物)から形成した(表12および13に示した「08シリーズ」)。繊維フィルター媒体は、これらのガラス繊維組成物から作製した。開示する繊維媒体の主な特性は、表15および16に示している。1.4μmフィルター媒体試験結果に関して、開示のガラス繊維組成物から形成された開示フィルター媒体を、対照と比較し、開示媒体は、より高い引張り強さおよびより優れた耐穿刺性(puncture endurance)を有した。同じ開示媒体の対照との比較では、同等の吸上特性、JIS吸収特性、およびフレージャー(Frazier)透過性を示した。媒体のある態様(ガラス組成物C-1、C-2、C-3で形成されたもの)は、湿潤および乾燥の両条件で、特に高い総引張りおよび坪量補償した穿刺試験値を有した。本明細書に記した標準の引張り強さ、穿刺試験、および他の試験法は、すなわち本明細書に参照として組み入れられるBattery Council InternationalのBCI Battery Technical Manual, BCIS-03B, Rev. APROl, pp. 3-92 (2002-04)により承認された方法に従った。
【0109】
0.8μmフィルター媒体試験結果に関して、開示ガラス繊維組成物で作製された開示フィルター媒体の408ガラス媒体対照との比較では、開示媒体は、わずかに優れた引張りおよび耐穿刺性を示した。この開示媒体は、改善された水および酸溶液の吸上げも有した。C-3ガラス組成物で作製されたフィルター媒体の態様は、驚くほど優れた特性を有する−全ての結果を表15および16に示す。
【0110】
(表14)

【0111】
(表15)媒体特性(繊維平均直径0.8μm)

【0112】
(表16)媒体特性(繊維平均直径1.4μm)


【0113】
(表17)C-1、2、3、4、5ガラス繊維組成物のBiイオン浸出定数

【0114】
(表18)116℃の比重1.26 H2SO4中のC1〜5ガラス繊維組成物のBiイオン浸出定数

【0115】
開示するガラス組成物およびガラス繊維組成物は、放射線遮蔽および専用の濾過目的などの特定の絶縁用途にも適している。酸化ビスマスは、最も重い非放射性の酸化物である。重金属酸化物のガラスへの導入は、ガラス組成物のγ線およびX線の吸収能を著しく増大することができる。開示するガラス繊維組成物のある態様のためのX線減衰作用は、様々なガラス組成物のガラス繊維マットの1つまたは複数の層の導入により決定される。ガラス繊維媒体は、平均直径0.8ミクロンを有する繊維で作製される。試料媒体基本重量は約170g/m2である。ガラス繊維層は、X線源と撮影プレートの間に配置される。試料は、Microfocus Imaging Companyから入手可能なMicro 50を使用し、クローズドカメラ内でエネルギー22kVのX線に曝露される。X線源と試料の間の距離は約25cmであった。
【0116】
各ガラス繊維組成物の減衰作用は、X線像を透過した可視光の量を測定することにより決定し、表9Cに列記している。I0は、X線源と検出器の間に媒体を配置しない場合の、検出器上のX線エネルギー強度であり;Iは、X線源と検出器の間に媒体を配置した場合の、検出器上のX線エネルギー強度である。減衰係数は、周知の米国率標準技術研究所(NIST)試験法に従い算出し、これは例えば、ICRU(1984), Stopping Powers for Electrons and Positrons, Report 37 of the International Commission on Radiation Units and Measurements (ベセスタ, MD)、2) Seltzer, S.M. (1993), Calculation of Photon Mass Energy-Transfer and Mass Energy- Absorption Coefficients, Rad. Res. 136, 147-170に明らかにされており、これらは両方とも本明細書に参照として組入れられ、かつhttp://physics.nist.gov/PhysRefData/XrayMassCoefに、より詳細にはhttp://physics.nist.gov/PhysRefData/XrayMassCoef/chap2.htmlに公開されており、これらも本明細書に参照として組み入れられる。
【0117】
提供された実験および計算データは、各被験組成物の試料について、1層媒体試料および5層ガラス繊維媒体についてのものである。試験しかつ表9Cに列記した組成物は、表3および5に示した組成物に対応している。特定の開示ガラス組成物中の酸化ビスマスの存在は、ガラス繊維組成物のX線減衰能を増強する。X線減衰に使用される典型的ガラス繊維組成物は、多量の酸化鉛を含有する。鉛およびその化合物は毒性がありおよび環境に有害であるので、本開示ガラス繊維組成物中の鉛および鉛化合物の著しい量の非存在は、利用可能なX線遮蔽ガラス繊維材料と比べて、開示ガラス組成物を望ましい無毒で環境に優しいものとする。加えてビスマス原子は、鉛原子と比べ、X線およびγ線の増強された減衰能を有する。表9Cに示した結果に認められるように、開示するガラス組成物の減衰作用は、酸化ビスマス含量約9重量%またはそれ以上有するガラス繊維で増大させることができる。
【0118】
特に良好な結果が、ガラス組成物番号3および5において得られた(これらの組成物の成分濃度については先の表3および5を、減衰結果は表9Cを参照のこと)。これらの特定のガラス組成物で形成されたガラス繊維層は、従来のM-ガラスで形成されたガラス繊維層試料と比べ、X線減衰を3〜5倍増大した。ガラス組成物3および5で形成されたガラス繊維の3〜4層は、X線を完全に減衰した。
【0119】
本明細書に開示するガラス繊維組成物を含むX線遮蔽体に関して、多くの可能性のある用途が存在する。例えばエプロンのような衣服遮蔽体は、X線撮影時に患者を覆う。本明細書に開示するガラス繊維で作製されたX線遮蔽衣服は、現在のX線遮蔽衣服と比べ、大幅な軽量化を提供し、ならびにそのような衣服中において鉛を含有する必要性を低下させるかもしくはなくすであろう。従ってこのような衣服の使い捨てが、従来のX線遮蔽する衣服と比べより簡単かつ安価になる。別の本明細書に開示のガラス繊維組成物を使用するX線遮蔽体の例は、例えば歯科診療所において、X線への曝露を排除するための遮蔽された部屋を構築するために、ハードボードまたは他の基体に積層されるまたはそうでなければ取り付けられる被覆マットを含むことができる。さらなる使用例は、X線装置の、またはそのような工具または用具に近接するための、包装および/または絶縁材を含む。そのような材料は、例えば個人を有害なX線から遮蔽するための、皮膚または金属もしくはプラスチック中の補強繊維または軍服での使用のような、軍事用途のための、遮蔽技術を増強するために使用することができる。このような材料を使用し、例えば空港の保安スクリーニングシステムでの有害なX線作用からフィルムを保護するための、フィルム用保護カバーまたは容器を形成することができる。
【0120】
開示するガラス組成物、ガラス繊維、ガラス繊維電池隔離板、フィルター媒体、紙製品、および放射線遮蔽媒体、ならびにそれらの用途は、複数の態様および実施例を参照して説明しているが、本発明がこれらの態様および実施例に限定されないことは理解されるであろう。対照的に、本発明は、添付の「特許請求の範囲」により定義されかつ本明細書に開示する本発明の主旨および範囲に含まれるあらゆる修正、変更、および同等物を包含することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】様々なガラス組成物の粘度曲線を示すグラフである。
【図2】図2A〜2Dは、様々な濃度および特定の温度で硫酸浴に浸漬された特定のガラス繊維組成物の浸出液中のビスマスイオン濃度を図示するグラフである。
【図3】様々な濃度および特定の温度で硫酸浴に浸漬された特定のガラス繊維組成物の浸出液中の酸化カルシウムイオン濃度を図示するグラフである。
【図4】ガラス繊維隔離板の様々な態様を利用し集成されたセルにおける温度によるフロート電流の変化を図示している。
【図5】様々なガラス組成物で形成された様々なガラス繊維マットの圧縮曲線を示すグラフである。
【図6】様々なガラス組成物で形成された様々なガラス繊維マットの圧縮曲線を示す示すグラフである。
【図7】様々なガラス組成物で形成された様々なガラス繊維マットの圧縮曲線を示す示すグラフである。
【図8】ガラス繊維組成物のある態様で形成された、VRLA電池隔離板に関するBiイオン浸出を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.5〜約30重量%の酸化ビスマス、約54〜70重量%のシリカ、および約25重量%未満の酸化ナトリウムを含むガラス繊維のマットを含むガラス繊維マット。
【請求項2】
ガラス繊維が約0.5〜約30重量%の酸化ビスマス、約50〜約75重量%のシリカ、および約0.01〜5重量%の酸化亜鉛を含む、ガラス繊維のマットを含むガラス繊維マット。
【請求項3】
ガラス繊維が約0.01〜約5重量%の酸化亜鉛をさらに含む、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項4】
ガラス繊維が約0.5〜約15重量%の酸化ビスマスを含む、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項5】
ガラス繊維が約0.5〜約7重量%の酸化ビスマスを含む、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項6】
ガラス繊維が約3m2/g未満の平均表面積を有する、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項7】
ガラス繊維が約2m2/g未満の平均表面積を有する、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項8】
ガラス繊維が約3m2/g未満の平均表面積を有する、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項9】
ガラス繊維が約2m2/g未満の平均表面積を有する、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項10】
ガラス繊維が約0.6〜約8μmの平均直径を有する、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項11】
ガラス繊維が約0.6〜約8μmの平均直径を有する、請求項4記載のガラス繊維マット。
【請求項12】
ガラス繊維が約0.6〜約8μmの平均直径を有する、請求項5記載のガラス繊維マット。
【請求項13】
ガラス繊維が、約0.5〜約15重量%の酸化ビスマス、約54〜約70重量%のシリカ;
約25重量%未満の酸化ナトリウムを含み;かつ
ガラス繊維1gが比重1.26g/cm3を有するH2SO4 100ml中で3時間煮沸される場合に、ガラス繊維は約10ng/cm2h〜約250ng/cm2hのビスマスイオンを浸出する、
ガラス繊維のマットを含むガラス繊維マット。
【請求項14】
ガラス繊維1gが比重1.26g/cm3を有するH2SO4 100ml中で3時間煮沸される場合に、ガラス繊維は約130ng/cm2h〜約360ng/cm2hのビスマスイオンを浸出する、
約9〜約15重量%の酸化ビスマスを含むガラス繊維を含むガラス繊維マット。
【請求項15】
ガラス繊維が、約1〜約15重量%の酸化ビスマス、および約0.01〜5重量%の酸化亜鉛を含み;かつ
ガラス繊維1gが比重1.26g/cm3を有するH2SO4 100ml中で3時間煮沸される場合に、ガラス繊維は約15〜約320ng/cm2hのビスマスイオンを浸出する、
請求項2記載のガラス繊維マット。
【請求項16】
ガラス繊維が約0.1重量%未満のCoOまたはTiO2またはそれらの混合物をさらに含む、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項17】
ガラス繊維が約0.1〜約3重量%のZrO2をさらに含む、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項18】
酸化ビスマスおよび酸化亜鉛のシリカに対する重量%比が約0.059〜約0.29である、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項19】
ガラス繊維が約0.5〜約2重量%の酸化ビスマスを含む、請求項2記載のガラス繊維マット。
【請求項20】
約9〜約15重量%の酸化ビスマスおよび約0.01〜5重量%の酸化亜鉛を含むガラス繊維のマットを含むガラス繊維マット。
【請求項21】
約50〜約75重量%のシリカをさらに含む、請求項20記載のガラス繊維マット。
【請求項22】
ガラス繊維が以下をさらに含む、請求項1記載の電池用ガラス繊維マット。

【請求項23】
約50〜約75重量%のシリカをさらに含む、請求項22記載のガラス繊維マット。
【請求項24】
ガラス繊維が約703℃未満の軟化点を有する、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項25】
ガラス繊維が約1〜約15重量%の酸化ビスマスを含む、請求項2記載のガラス繊維マット。
【請求項26】
ガラス繊維が約2.5〜約2.85の密度を有する、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項27】
ガラス繊維が約2.5〜約2.85の密度を有する、請求項3記載のガラス繊維マット。
【請求項28】
ガラス繊維マットが電池隔離板の少なくとも一部を形成する、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項29】
ガラス繊維マットがフィルターの少なくとも一部を形成する、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項30】
ガラス繊維マットがエアフィルターの少なくとも一部を形成する、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項31】
ガラス繊維マットが放射線遮蔽体の少なくとも一部を形成する、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項32】
ガラス繊維が織布である、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項33】
ガラス繊維が不織布である、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項34】
ガラス繊維が織布である、請求項2記載のガラス繊維マット。
【請求項35】
ガラス繊維が不織布である、請求項2記載のガラス繊維マット。
【請求項36】
ガラス繊維が不織布である、請求項13記載のガラス繊維マット。
【請求項37】
ガラス繊維が不織布である、請求項14記載のガラス繊維マット。
【請求項38】
ガラス繊維が、フィルターとしてのおよび電池隔離板のための両方の使用に適している、
約0.5〜約30重量%の酸化ビスマス、約56〜69重量%のシリカ、約0〜1重量%のホウ素酸化物(boric oxide)、約0〜約5重量%の酸化バリウムを含むガラス繊維を含むガラス繊維マット。
【請求項39】
ガラス繊維マットがフィルターの少なくとも一部を形成する、請求項38記載のガラス繊維マット。
【請求項40】
ガラス繊維が、フィルターとしてのおよび電池隔離板のための両方の使用に適している、
約0.5〜約30重量%の酸化ビスマス、約0〜1重量%のホウ素酸化物、約0〜約5重量%の酸化バリウム、および約25重量%未満の酸化ナトリウムを含むガラス繊維を含むガラス繊維マット。
【請求項41】
ガラス繊維が、約0.5〜約30重量%の酸化ビスマス、約56〜69重量%のシリカ、実質的には含まれないホウ素酸化物、約0〜約2重量%の酸化バリウム、約9〜約20重量%のR2O、ここでR2Oは酸化ナトリウムおよび酸化カリウムの混合物である、約1〜5重量%のアルミナ、約3〜約7重量%の酸化カルシウム、約1〜約5重量%の酸化マグネシウム、約0〜約5重量%の酸化亜鉛、および約0〜約1重量%のフッ素を含む、
ガラス繊維で形成された少なくとも1個のマットを含むガラス繊維マット。
【請求項42】
フィルターの少なくとも一部を形成する、請求項41記載のガラス繊維マット。
【請求項43】
ガラス繊維が、約0.5〜約30重量%の酸化ビスマス、実質的には含まれないホウ素酸化物、約0〜約2重量%の酸化バリウム、約9〜約20重量%のR2O、ここでR2Oは酸化ナトリウムおよび酸化カリウムの混合物である、約1〜5重量%のアルミナ、約3〜約7重量%の酸化カルシウム、約1〜約5重量%の酸化マグネシウム、約0〜約5重量%の酸化亜鉛、および約0〜約1重量%のフッ素を含む、
ガラス繊維で形成された少なくとも1個のマットを含むガラス繊維マット。
【請求項44】
ハウジング内に配置された電極プレートと、
約0.5〜約30重量%の酸化ビスマスおよび約54〜約70重量%のシリカを有するガラス繊維を含む電気化学デバイスの隔離板とを含み、
電気化学デバイスの隔離板は電極プレート間に配置されている、電気化学デバイス。
【請求項45】
鉛酸電池を含む、請求項44記載の電気化学デバイス。
【請求項46】
バルブ調節された再結合電池(recombinant battery)である、請求項45記載の電気化学デバイス。
【請求項47】
電池ハウジング内に配置された電極プレートと、
約0.5〜約30重量%の酸化ビスマスを有するガラス繊維を含む添加剤を含む活物質とを含み、
電池の操作時にガラス繊維は活物質上にビスマスを浸出する、電池。
【請求項48】
ガラス繊維が約50〜約75重量%シリカをさらに含む、請求項47記載の電池。
【請求項49】
添加剤がガラス繊維以外のガラス粒子を含む、請求項47記載の電池。
【請求項50】
平均粒子サイズが約100μm以下である、請求項49記載の電池。
【請求項51】
平均粒子サイズが約50μm以下である、請求項49記載の電池。
【請求項52】
平均粒子サイズが約7μm以下である、請求項49記載の電池。
【請求項53】
電池ハウジング内に配置された電極プレートと、
活物質と、
活物質上における、約0.5〜約30重量%の酸化ビスマスおよび約54〜約70重量%のシリカを有するガラス組成物を含むコーティングとを含み、
電池の操作時にコーティングは活物質上にビスマスを浸出する、電池。
【請求項54】
約0.5〜約30重量%の酸化ビスマスおよび約54〜約70重量%のシリカを含むガラス繊維で形成された電池隔離板を、電池の電極プレート間に挿入する工程を含む、鉛酸電池中の水素ガス発生を低下させる方法。
【請求項55】
ガラス繊維が、約0.5〜約30重量%の酸化ビスマス、約0.0001重量%未満の鉛を含み、
ガラス繊維マットは、ガラス繊維のマットが基本重量約170g/m2を有する場合に、エネルギーレベル約22kVを有しガラス繊維マットから約25cmの位置にあるX線源から放射されるX線の少なくとも約15%を吸収することが可能である、
ガラス繊維で形成された少なくとも1個のマットを含むガラス繊維マット。
【請求項56】
ガラス繊維が織布である、請求項55記載のガラス繊維マット。
【請求項57】
ガラス繊維が約9〜約15重量%の酸化ビスマスを含む、請求項55記載のガラス繊維マット。
【請求項58】
ガラス繊維が約0.01〜約5重量%の酸化亜鉛をさらに含む、請求項55記載のガラス繊維マット。
【請求項59】
ガラス繊維が、約9〜約15重量%の酸化ビスマス、約56〜69重量%のシリカ、約0.01〜約2重量%の酸化亜鉛、約2〜約4重量%のAl2O3、約0.0001重量%未満の鉛を含み、
ガラス繊維マットは、ガラス繊維のマットが基本重量約170g/m2を有する場合に、エネルギーレベル約22kVを有しガラス繊維マットから約25cmの位置にあるX線源から放射されるX線の少なくとも約90%を吸収することが可能である、
ガラス繊維で形成された少なくとも1個のマットを含むガラス繊維マット。
【請求項60】
ガラス繊維が織布である、請求項59記載のガラス繊維マット。
【請求項61】
エプロンまたはブランケットの形状に形成されたマットをさらに含み、X線曝露時に使用するためのX線遮蔽体としてヒトを覆うことが可能である、請求項59記載のガラス繊維マット。
【請求項62】
X線遮蔽された部屋を構築するために剛体基体に取り付けられた被覆マットをさらに含む、請求項59記載のガラス繊維マット。
【請求項63】
ハードボードに取り付けられた被覆マットをさらに含む、請求項59記載のガラス繊維マット。
【請求項64】
補強材に取り付けられたまたは補強材と混合されたマットをさらに含む、請求項59記載のガラス繊維マット。
【請求項65】
補強材が、金属、プラスチック、ゴム、セラミック、石膏、またはそれらの混合物である、請求項64記載のガラス繊維マット。
【請求項66】
衣服を形成するために、生地でカバーされているまたは生地に取り付けられている少なくとも1個のマットをさらに含む、請求項59記載のガラス繊維マット。
【請求項67】
X線機材中の絶縁材またはX線機材を包装するための包装材を含む、請求項59記載のガラス繊維マット。
【請求項68】
フィルムを保持し、かつ保安スクリーニングシステムにより放出されるX線からフィルムを保護することが可能である容器の少なくとも一部を含む、請求項59記載のガラス繊維マット。
【請求項69】
ガラス繊維が約50〜約150ng/cm2hのKdis値を有する、請求項1記載のガラス繊維マット。
【請求項70】
ガラス繊維が、約0.5〜約30重量%の酸化ビスマス、約0.01〜約2重量%の酸化亜鉛、約2〜約4重量%のAl2O3を含有し、かつ約0.8μmの平均直径を有し;
ガラス繊維1gが比重1.26g/cm3を有するH2SO4 100ml中で3時間煮沸される場合に、ガラス繊維はBi2O3に関する浸出定数約7ng/cm2h〜約650ng/cm2hを有し;かつ
ガラス繊維マットはフィルターの少なくとも一部を形成する、
ガラス繊維から形成された少なくとも1個のマットを含むガラス繊維マット。
【請求項71】
ガラス繊維が約56〜69重量%のシリカをさらに含む、請求項70記載のガラス繊維マット。
【請求項72】
ガラス繊維が約703℃未満の軟化点を有する、請求項71記載のガラス繊維マット。
【請求項73】
ガラス繊維が約1.4μmの平均直径、約203〜約236g/m2の基本重量を有し、かつ約0.016/gsmよりも大きい総引張り強さを有する、請求項71記載のガラス繊維マット。
【請求項74】
ガラス繊維が、約9〜約15重量%の酸化ビスマスをさらに含み、約1.4μmの平均直径、約125〜約145lbs/3000ft2の基本重量、および乾燥時は約0.4kgより大きく湿潤時は0.3kgより大きい耐穿刺性(puncture endurance)を有する、請求項71記載のガラス繊維マット。
【請求項75】
ガラス繊維が約0〜約1重量%のホウ素酸化物を含む、請求項70記載のガラス繊維マット。
【請求項76】
ガラス繊維が、約50〜約150ng/hcm2のKdis値を有するフィルターを形成する、請求項71記載のガラス繊維マット。
【請求項77】
ガラス繊維が、約2.5〜約2.85の密度を有するフィルターを形成する、請求項71記載のガラス繊維マット。
【請求項78】
電池隔離板の少なくとも約60〜約99重量%を形成する、請求項2記載のガラス繊維マット。
【請求項79】
電池隔離板の少なくとも約60〜約99重量%を形成する、請求項3記載のガラス繊維マット。
【請求項80】
電池隔離板の少なくとも約60〜約99重量%を形成する、請求項4記載のガラス繊維マット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−507634(P2008−507634A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522549(P2007−522549)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/024529
【国際公開番号】WO2006/019684
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(507021469)エバナイト ファイバー コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】