説明

ガラス面貼付用感圧性接着シート類およびガラス製光学部材

【課題】 ガラス面に対して直接に貼付しても変色や変質が生じず、リワーク時にガラス面から容易に剥離でき、光学特性に優れたガラス面貼付用感圧性接着シート類を得る。
【解決手段】 粘着剤層が、下記の(a)成分を80〜97.8重量%、下記の(b)成分を2〜19.8重量%、下記の(c)成分を0.2〜5重量%を含み、共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物により形成される。 (a)成分:下記式(1)で表されるアクリル系単量体 CH2=C(R1)COOR2 (1)(R1は水素原子又はメチル基を示し、R2はアルキル基を示す。) (b)成分:下記式(2)で表されるマレイミド系化合物


(R3は水素原子又は1価の有機基を示す。) (c)成分:カルボキシル基を含有しておらず、且つ(a)成分および(b)成分と共重合が可能な他の単量体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス面貼付用感圧性接着シート類およびガラス製光学部材に関し、より詳細には、ガラス面に対して直接に貼付しても、経時で変色や変質が生じず、また、貼付不良等によるリワーク時にガラス面から容易に剥離させることができ、且つ光学特性に優れているガラス面貼付用感圧性接着シート類、および該ガラス面貼付用感圧性接着シート類が用いられたガラス製光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ディスプレイ等の光学機器の普及が著しく、その構成中には感圧性接着シート類を用いた部分が多く使用されるようになってきている。例えば、プラズマディスプレイなどでは、前面板にガラスを含む光学フィルターが装着されており、この際、ガラスに感圧性接着シート(粘着シート)が直接貼付されている(特許文献1参照)。また、最近では、プラズマディスプレイパネルに光学フィルターを直接貼り合わせた構成のものも上市されるようになってきている。
【特許文献1】特開2003−268325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、光学フィルターやプラズマディスプレイパネルは高価であるケースが多く、感圧性接着シート類を貼付した際に異物や気泡などのかみこみによる貼り合わせ不良(貼付不良)や、パネルモジュールの点灯試験での不具合が発生した場合、感圧性接着シート類をガラス面から剥離し、再度、貼付し直すリワーク作業やリペア作業を行う場合がある。しかし、感圧性接着シート類とガラス面との間の接着性が極端に強すぎると、剥離作業時にガラス面を破損したり、ガラス面に感圧性接着剤が残存してしまったりするなど、リワーク作業を行うことができなくなってしまい、大きな損失となってしまう。
【0004】
従って、本発明の目的は、ガラス面に対して直接に貼付しても、経時で変色や変質が生じず、また、リワーク時にガラス面から容易に剥離させることができ、且つ光学特性に優れているガラス面貼付用感圧性接着シート類、および該ガラス面貼付用感圧性接着シート類が用いられたガラス製光学部材を提供することにある。
本発明の他の目的は、さらに、加熱及び加湿の条件下でも、透明性が良好なガラス面貼付用感圧性接着シート類、および該ガラス面貼付用感圧性接着シート類が用いられたガラス製光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、感圧性接着シート類を構成する粘着剤層を、特定のアクリル系単量体、特定構造のマレイミド系化合物、および特定の共重合性単量体を、それぞれ、特定の割合で含む単量体混合物の共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物で形成すると、経時で、ガラス面に変色や変質などを生じさせず、また、貼付不良等によるリワーク時やリペア時には、ガラス面から容易に剥離させることができ、しかも、高湿熱下でも光学特性が良好であることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、ガラス面に直接貼付するための感圧性接着シート類であって、該感圧性接着シート類を構成する粘着剤層が、下記の(a)成分を、単量体成分全量に対して80〜97.8重量%の割合で含み、下記の(b)成分を、単量体成分全量に対して2〜19.8重量%の割合で含み、下記の(c)成分を、単量体成分全量に対して0.2〜5重量%の割合で含んでいるとともに、カルボキシル基含有共重合性単量体を実質的に含まない単量体混合物による共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物により形成されており、前記粘着剤層の接着強度が、1〜7(N/20mm)(対ガラス板、温度:23℃、湿度:50%RH、剥離角度:90°、引張速度:300mm/分;厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わされた感圧性接着シート類を、厚さ1.3mmのガラス板に貼着させた後、ガラス板より剥離する)であることを特徴とするガラス面貼付用感圧性接着シート類を提供する。
(a)成分:下記式(1)で表されるアクリル系単量体
CH2=C(R1)COOR2 (1)
(式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数が2〜14のアルキル基を示す。)
(b)成分:下記式(2)で表されるマレイミド系化合物
【化1】

(式(2)において、R3は水素原子又は1価の有機基を示す。)
(c)成分:カルボキシル基を含有しておらず、且つ(a)成分および(b)成分と共重合が可能な他の単量体
【0007】
前記粘着剤層は、60℃且つ95%RHで500時間の加熱および加湿処理の後、全光線透過率が85%以上であり、また、前記加熱および加湿処理の後、ヘイズが10%以下であり、さらに、前記加熱および加湿処理の前後における色差(ΔE*ab)が0.5以下であることが好ましい。
【0008】
さらに、本発明は、機能性フィルムがガラス面に貼付されている構造体であって、機能性フィルムが、前記ガラス面貼付用感圧性接着シート類を用いてガラス面に貼付されていることを特徴とする構造体を提供する。前記構造体としては、プラズマディスプレイパネル、液晶表示装置、有機EL表示装置の何れかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガラス面貼付用感圧性接着シート類によれば、ガラス面に対して直接に貼付しても、経時で変色や変質が生じず、また、リワーク時にガラス面から容易に剥離させることができ、且つ光学特性に優れている。さらに、加熱及び加湿の条件下でも、透明性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のガラス面貼付用感圧性接着シート類は、該感圧性接着シート類を構成する粘着剤層が、下記の(a)成分を、単量体成分全量に対して80〜97.8重量%の割合で含み、下記の(b)成分を、単量体成分全量に対して2〜19.8重量%の割合で含み、下記の(c)成分を、単量体成分全量に対して0.2〜5重量%の割合で含んでいるとともに、カルボキシル基含有共重合性単量体を実質的に含まない単量体混合物による共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物により形成されており、前記粘着剤層の接着強度が、1〜7(N/20mm)(対ガラス板、温度:23℃、湿度:50%RH、剥離角度:90°、引張速度:300mm/分;厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わされた感圧性接着シート類を、厚さ1.3mmのガラス板に貼着させた後、ガラス板より剥離する)であることを特徴としている。
(a)成分:下記式(1)で表されるアクリル系単量体
CH2=C(R1)COOR2 (1)
(式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数が2〜14のアルキル基を示す。)
(b)成分:下記式(2)で表されるマレイミド系化合物
【化2】

(式(2)において、R3は水素原子又は1価の有機基を示す。)
(c)成分:カルボキシル基を含有しておらず、且つ(a)成分および(b)成分と共重合が可能な他の単量体
【0011】
このように、本発明のガラス面貼付用感圧性接着シート類は、粘着剤層を形成する粘着剤層のベースポリマーを構成する単量体成分中に、単量体主成分としての特定のアクリル系単量体[(a)成分]を含んでおり、また、前記アクリル系単量体に対する共重合性単量体成分として、特定構造のマレイミド系化合物[(b)成分]と、特定の共重合性単量体[(c)成分]とを含んでおり、しかも、カルボキシル基含有単量体(好ましくは、酸性基含有共重合性単量体)を実質的に含んでいないので、ガラス面に貼付した際には、ガラス面に対して変色や変質等を生じさせず、被着体の光学特性が損なわれない。また、ガラス面への貼付時に異物や気泡などのかみこみにより貼付不良が生じてリワーク作業を行う際や、パネルモジュールの点灯試験等の性能確認試験において不具合が生じてリペア作業を行う際には、ガラス面から、粘着成分の残存や、ガラス面へのダメージを生じさせることなく、容易に剥離させることができる。さらには、光学特性も良好とすることができ、特に、高湿熱下でも透明性を良好とすることができる。もちろん、粘着剤層を構成する粘着剤は、前記アクリル系単量体[(a)成分]、前記マレイミド系化合物[(b)成分]および前記共重合性単量体[(c)成分]に対応する構造単位を特定量有しているため、優れた粘着特性等を発揮することができる。
【0012】
なお、本発明では、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物に係るベースポリマーとしての共重合体における単量体混合物としては、カルボキシル基含有共重合性単量体(より好ましくは酸性基含有共重合性単量体)を実質的に含有していないことが重要である。カルボキシル基含有共重合性単量体がベースポリマーとしての共重合体(アクリル系共重合体)中に実質的に含まれていると、ガラス面に対する適度な接着性や、再剥離時の糊残り防止性が著しく低下してしまうという問題が生じ、ガラス面貼付用感圧性接着シート類の再剥離性が低下する。カルボキシル基含有共重合性単量体を実質的に含有していないとは、ガラス面貼付用感圧性接着シート類が優れた再剥離性を保持することができる範囲であれば、カルボキシル基含有共重合性単量体を含有していてもよいことを意味している。具体的には、ベースポリマーしての共重合体における単量体混合物において、カルボキシル基含有共重合性単量体の含有量としては、例えば、単量体成分全量に対して2重量%以下(0〜2重量%)であってもよく、好ましくは1重量%以下(特に0.5重量%以下)である。このように、カルボキシル基含有共重合性単量体の割合が、単量体成分全量に対して2重量%以下であると、ガラス面貼付用感圧性接着シート類の再剥離性が優れており、ガラス面に粘着成分を残存させずに、また、ガラス面に損傷を与えずに、ガラス面貼付用感圧性接着シート類をガラス面から容易に剥離させることができる。
【0013】
前記カルボキシル基含有共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。また、カルボキシル基含有共重合性単量体以外の酸性基含有共重合性単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イコタン酸などのカルボキシル基含有共重合性単量体の無水物;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有共重合性単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有共重合性単量体などが挙げられる。
【0014】
[(a)成分]
(a)成分は、前記式(1)で表されるアクリル系単量体(「アクリル系単量体(a)」と称する場合がある)である。前記式(1)において、R2に係る炭素数が2〜14のアルキル基としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基などが挙げられる。R2の炭素数が2未満であると、得られる共重合体のガラス転移温度(Tg)が高くなり、それにより、粘着剤(感圧性接着剤)としての濡れ性が低下し、初期接着性(タック性)が悪くなる。また、R2の炭素数が14を超えると、粘着剤の粘着力が劣り好ましくない。
【0015】
具体的には、アクリル系単量体(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシルなどが挙げられる。
【0016】
アクリル系単量体(a)としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシルを好適に用いることができる。
【0017】
なお、アクリル系単量体(a)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
アクリル系単量体(a)は、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物のベースポリマーとしての共重合体における単量体成分全量に対して80〜97.8重量%(好ましくは82〜96.7重量%、さらに好ましくは84〜94.6重量%)の割合で用いられている。アクリル系単量体(a)の割合が、単量体成分全量に対して80重量%未満であると、得られる共重合体のガラス転移温度(Tg)が高くなり、感圧性接着剤としての性能が低下する。一方、アクリル系単量体(a)の割合が、単量体成分全量に対して97.8重量%を超えると、(b)成分の割合(絶対量)が低下することにより、形成される粘着剤層の接着性能が低下する。
【0019】
[(b)成分]
(b)成分は、前記式(2)で表されるマレイミド系化合物(「マレイミド系化合物(b)」と称する場合がある)である。前記式(2)において、R3に係る1価の有機基としては、重合性や粘着特性等を損なわないものであれば特に限定されず、例えば、置換基を有していてもよい炭化水素基などが挙げられる。炭化水素基には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基等のアルキル基(例えば、炭素数が1〜14のアルキル基等);シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基(例えば3〜12員環のシクロアルキル基等);フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基などが含まれる。前記置換基としては、例えば、メチル基等のアルキル基(例えば、炭素数が1〜4のアルキル基等)、メトキシ基等のアルコキシ基(例えば、炭素数が1〜4のアルコキシ基等)、塩素原子等のハロゲン原子、ニトロ基などが挙げられる。置換基を有する炭化水素基の代表的な例として、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基などが挙げられる。
【0020】
なお、R3の1価の有機基としては、カルボキシル基(特に、酸性基)を含有していないことが好適である。カルボキシル基以外の酸性基としては、例えば、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。
【0021】
具体的には、マレイミド系化合物(b)としては、例えば、マレイミド;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−ペンチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ヘプチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−(2−エチルヘキシル)マレイミド、N−ノニルマレイミド、N−デシルマレイミド、N−ウンデシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−トリデシルマレイミド、N−テトラデシルマレイミド等のN−アルキルマレイミド;N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキルマレイミド;N−フェニルマレイミド等のN−アリールマレイミドや、これらのマレイミド系化合物における炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基やアリール基など)に各種置換基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基など)が置換している形態のマレイミド系化合物などが挙げられる。
【0022】
なお、マレイミド系化合物(b)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
マレイミド系化合物(b)は、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物のベースポリマーとしての共重合体における単量体成分全量に対して2〜19.8重量%(好ましくは3〜17.7重量%、さらに好ましくは5〜15.6重量%)の割合で用いられている。マレイミド系化合物(b)の割合が、単量体成分全量に対して2重量%未満であると、形成される粘着剤層の接着性能が低下し、一方、19.8重量%を超えると、リワーク時の剥離性に問題が生じる。
【0024】
[(c)成分]
(c)成分は、カルボキシル基を含有しておらず、且つ(a)成分および(b)成分と共重合が可能な他の単量体(「共重合性単量体(c)」と称する場合がある)である。共重合性単量体(c)を用いることにより、粘着剤の各種特性や共重合体の構造などをコントロールすることができる。例えば、共重合性単量体(c)として、カルボキシル基(特に、酸性基)以外の官能基(ヒドロキシル基等の極性基)を有する共重合性単量体を用いると、共重合体(アクリル系ポリマー)に架橋結合を生じさせることができる。なお、共重合性単量体(c)は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
共重合性単量体(c)としては、カルボキシル基を含有しておらず(より好ましくは酸性基を含有しておらず)、アクリル系単量体(a)およびマレイミド系化合物(b)と共重合可能な単量体であれば特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、グリセリンジメタクリレート、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等のヒドロキシル基含有共重合性単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有共重合性単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のアルコキシ基含有共重合性単量体;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド(例えば、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(t−ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミドなど)、N−ビニルカルボン酸アミド類等のアミド基含有共重合性単量体;N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等のN−ビニル窒素含有複素環化合物;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド等のイタコンイミド系単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等のアミノ基含有共重合性単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有共重合性単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系共重合性単量体;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのα−オレフィン系共重合性単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有共重合性単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系共重合性単量体;ビニルエーテルなどのビニルエーテル系共重合性単量体;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリル酸エステル;フッ素(メタ)アクリレート等のハロゲン原子含有共重合性単量体;シリコーン(メタ)アクリレート等のケイ素原子含有共重合性単量体;(メタ)アクリル酸メチルや、アルキル基部位の炭素数が15以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーなどが挙げられる。
【0026】
共重合性単量体(c)としては、ヒドロキシル基含有共重合性単量体、エポキシ基含有共重合性単量体、ビニルエステル系共重合性単量体を好適に用いることができ、特に、ヒドロキシル基含有共重合性単量体[なかでも、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル]が好適である。共重合性単量体(c)として、ヒドロキシル基含有共重合性単量体[特に、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル]を用いることにより、ガラス面貼付用感圧性接着シート類は、ガラス面に対する適度な接着性を、より効果的に発揮させることができる。
【0027】
共重合性単量体(c)は、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物のベースポリマーとしての共重合体における単量体成分全量に対して0.2〜5重量%(好ましくは0.3〜3重量%、さらに好ましくは0.4〜2.5重量%)の割合で用いられている。共重合性単量体(c)の割合が、単量体成分全量に対して0.2重量%未満であると、粘着剤層の形状保持を目的とした適度な架橋構造を形成しにくくなる。一方、共重合性単量体(c)の割合が、単量体成分全量に対して5重量%を超えると、得られる共重合体がアクリル系ポリマーとしての性能を有効に発現させることが困難になり、また、感圧性接着剤としての特性のバランスをとりにくくなる。
【0028】
[単量体混合物による共重合体]
粘着剤層を形成するための粘着剤組成物におけるベースポリマーとしての共重合体は、前記単量体成分[アクリル系単量体(a)、マレイミド系化合物(b)、共重合性単量体(c)]を所定の割合で含んでいる単量体混合物の重合(共重合)により得られるアクリル系共重合体である。ベースポリマーとしてのアクリル系共重合体は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
アクリル系共重合体を得るための重合方法としては、例えば、アゾ系化合物(アゾ系開始剤)や過酸化物(過酸化物系開始剤)などの重合開始剤を用いて行う重合方法(溶液重合方法、エマルジョン重合方法や塊状重合方法など)、光開始剤を用いて光や放射線を照射して行う重合方法などを採用することができ、アゾ系開始剤を用いて行う重合方法が好適である。なお、重合開始剤において、アゾ系開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなどが挙げられる。また、過酸化物系開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなどが挙げられる。さらにまた、光開始剤として、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α′−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル系開始剤;ベンジルジメチルケタール等のケタール系開始剤;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどが挙げられる。
【0030】
重合開始剤の使用量は、特に制限されず、例えば、単量体成分の総量100重量部に対して、0.01〜2重量部(好ましくは0.02〜1重量部)程度である。
【0031】
本発明では、前記単量体混合物を用いて重合させて得られたアクリル系共重合体はそのまま乾燥させて用いてもよく、また、アクリル系共重合体を架橋させることにより硬化させて用いてもよい。アクリル系共重合体を架橋させることにより、剥離ライナーの剥離性および粘着性に加えて、耐熱性等の耐久性にも好結果が得られる。アクリル系共重合体の架橋方法としては、特に制限されず、任意の架橋方法を利用することができるが、いわゆる架橋剤を用いる方法が望ましい。なお、アクリル系共重合体の架橋は、感圧性接着剤層の形成の際や、形成後に行うことができる。
【0032】
前記架橋剤としては、従来公知のものを用いることができるが、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート系化合物、メラミン系化合物が好ましく、特にイソシアネート系化合物が好適である。架橋剤は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。前記イソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの二重体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなどが挙げられる。なお、イソシアネート系化合物等の架橋剤の使用量は、例えば、アクリル系共重合体100重量部に対して0.01〜20重量部(好ましくは0.05〜15重量部)程度である。
【0033】
アクリル系共重合体の重量平均分子量は、特に制限されないが、20万〜200万が好適であり、なかでも50万〜200万(特に70万〜150万)が好ましい。なお、アクリル系共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ法(GPC法)の標準ポリスチレン換算によって、下記の測定条件で測定した値である。
GPC法の測定条件
・GPC測定装置:商品名「HLC−8120GPC」(東ソー株式会社製)
・カラム:商品名「TSKgelSuperHM−H/H4000/H3000/H2000」(東ソー株式会社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・サンプル濃度:0.2重量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:10μl
・流量(流速):0.6mL/min
・カラム温度(測定温度):40℃
・検出器:示差屈折計(RI)
【0034】
[粘着剤組成物]
粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、ベースポリマーとして、前記単量体成分[アクリル系単量体(a)、マレイミド系化合物(b)、共重合性単量体(c)]を所定の割合で含んでいる単量体混合物の重合(共重合)により得られるアクリル系共重合体を含有している。粘着剤組成物には、必要に応じて各種添加剤が添加されていてもよい。このような添加剤としては、例えば、公知乃至慣用の粘着付与樹脂(例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂など)、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などの公知の各種添加剤が挙げられる。これらの添加剤の使用量は、いずれも粘着剤に適用される通常の量でよい。
【0035】
粘着剤組成物としては、その調製過程でいかなる形態も取りうるが、取り扱い性の面で、溶剤系、エマルション系、ホットメルト系、光重合系などの形態で用いることが好ましい。粘着剤組成物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
[ガラス面貼付用感圧性接着シート類]
本発明のガラス面貼付用感圧性接着シート類は、前記粘着剤組成物により形成された粘着剤層(「ガラス面貼付用粘着剤層」と称する場合がある)を有している。ガラス面貼付用粘着剤層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。ガラス面貼付用粘着剤層の厚みとしては、特に制限されないが、5〜70μmが好ましく、特に10〜50μmが好適である。ガラス面貼付用粘着剤層の厚みが5μm未満であると、ガラス面に対する接着性が乏しくなり、また、70μmを超えると、ガラス面貼付用粘着剤層自身の厚みによる光の透過率ロスが大きくなるため、好ましくない。
【0037】
なお、ガラス面貼付用粘着剤層の形成方法は、特に制限されない。例えば、慣用の塗工機(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いて、粘着剤組成物を所定の面(例えば、剥離ライナーの剥離面や基材表面など)に塗布することにより、ガラス面貼付用粘着剤層を形成することができる。
【0038】
本発明では、ガラス面貼付用粘着剤層は、1〜7(N/20mm)(対ガラス板、温度:23℃、湿度:50%RH、剥離角度:90°、引張速度:300mm/分;厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わされた感圧性接着シート類を、厚さ1.3mmのガラス板に貼着させた後、ガラス板より剥離する)の接着強度を有していることが重要である。このように、本発明のガラス面貼付用感圧性接着シート類は、ガラス面貼付用粘着剤層の接着強度が前記範囲となっているので、リワーク時には、貼付しているガラス面から容易に剥離させることができる。従って、ガラス面貼付用感圧性接着シート類は、ガラス面貼付用再剥離型感圧性接着シート類として用いられる。
【0039】
ガラス面貼付用粘着剤層の接着強度(対ガラス板、温度:23℃、湿度:50%RH、剥離角度:90°、引張速度:300mm/分;厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わされた感圧性接着シート類を、厚さ1.3mmのガラス板に貼着させた後、ガラス板より剥離する)としては、1〜7(N/20mm)であれば特に制限されないが、好ましくは2〜6(N/20mm)である。ガラス面貼付用粘着剤層の接着強度が、1(N/20mm)未満であると、軽度な振動や衝撃により、不所望に剥離してしまう場合があり、良好な結果が得られ難くなる。一方、ガラス面貼付用粘着剤層の接着強度が、7(N/20mm)を超えると、リワーク時の剥離作業が困難となり、また、被着体の表面(被着面)であるガラス面を含む部材にダメージを与えたり、粘着剤がガラス面に残存してしまったりするなどの不具合を引き起こし易くなる。
【0040】
本発明では、ガラス面貼付用粘着剤層の接着強度は、被着体として厚さ1.3mmのガラス板(松浪硝子工業社製の「スライドガラス 白縁磨」;厚さ1.3mm)を用い、ガラス面貼付用感圧性接着シート類を厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、ガラス面貼付用粘着剤層に対して反対側の面がポリエチレンテレフタレートフィルムと接触する形態で貼り合わせて、ポリエチレンテレフタレートフィルムにガラス面貼付用感圧性接着シート類を固定させた後、ガラス面貼付用感圧性接着シート類を被着体としてのガラス板に、ガラス面貼付用粘着剤層がガラス板の表面に接触する形態で貼着させ、温度:23℃および湿度:50%RHの雰囲気下、48時間放置し、その後、温度:23℃および湿度:50%RHの雰囲気下、剥離角度:90°、引張速度:300mm/分の測定条件で、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わされたガラス面貼付用感圧性接着シート類をガラス板より剥離させ、この剥離の際の応力を測定して、応力の値を20mm間隔で4点読み取り、この4点の応力の平均値を算出し、該応力の平均値を剥離強度(N/20mm)とすることにより求められた値として定義される。
【0041】
ガラス面貼付用感圧性接着シート類としては、前記ガラス面貼付用粘着剤層を有していれば、その構成は特に制限されない。具体的には、ガラス面貼付用感圧性接着シート類としては、例えば、(1)ガラス面貼付用粘着剤層のみから形成された構成の基材レス両面感圧性接着シート類、(2)基材の少なくとも一方の面にガラス面貼付用粘着剤層が形成され且つ基材の両面側に粘着面が形成された構成の基材付き両面感圧性接着シート類、(3)基材の一方の面にガラス面貼付用粘着剤層が形成された構成の基材付き感圧性接着シート類などが挙げられる。
【0042】
なお、ガラス面貼付用感圧性接着シート類が基材付き両面粘着シート類である場合、基材の両面に形成された感圧性接着剤層(粘着剤層)がガラス面貼付用粘着剤層であってもよく、基材の一方の面に形成された感圧性接着剤層がガラス面貼付用粘着剤層であり且つ基材の他方の面に形成された感圧性接着剤層がガラス面貼付用粘着剤層以外の粘着剤層(「非ガラス面貼付用粘着剤層」と称する場合がある)であってもよい。ガラス面貼付用感圧性接着シート類が、非ガラス面貼付用粘着剤層を有している場合、該非ガラス面貼付用粘着剤層は、ガラス面に対して用いないことが重要である。
【0043】
また、ガラス面貼付用感圧性接着シート類は、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。すなわち、本発明のガラス面貼付用感圧性接着シート類は、シート状、テープ状などの形態を有することができる。従って、ガラス面貼付用感圧性接着シート類には、感圧性接着テープまたは感圧性接着シート(感圧性接着テープ又はシート)などが含まれる。なお、ガラス面貼付用感圧性接着シート類がロール状に巻回された形態を有している場合(感圧性接着テープである場合)、例えば、ガラス面貼付用粘着剤層などの感圧性接着剤層を、剥離ライナー(セパレータ)や基材の背面側に形成された剥離処理層により保護した状態でロール状に巻回することにより作製することができる。
【0044】
本発明のガラス面貼付用感圧性接着シート類は、前記構成(1)のガラス面貼付用感圧性接着シート類、すなわち、ガラス面貼付用粘着剤層のみから形成された構成の基材レス両面感圧性接着シート類が好適である。このような基材レス両面感圧性接着シート類は、剥離ライナー上にガラス面貼付用粘着剤層が形成された形態を有していることが好ましい。
【0045】
前記剥離ライナーとしては、粘着テープ又はシート用の剥離ライナーとして用いられているものであれば特に制限されず、公知の剥離ライナーを用いることができる。剥離ライナーとしては、両面が剥離面となっているものであってもよく、何れか一方の面のみが剥離面となっているものであってもよい。従って、ガラス面貼付用感圧性接着シート類は、ガラス面貼付用粘着剤層の一方の面に、両面が剥離面となっている剥離ライナーが積層され、且つロール状に巻回されたロール状の形態で形成されていてもよく、または、片面が剥離面となっている剥離ライナーを2つ用いることにより、ガラス面貼付用粘着剤層のそれぞれの面に各剥離ライナーが積層され、さらに必要に応じてロール状に巻回されたシート状又はロール状の形態で形成されていてもよい。
【0046】
なお、剥離ライナーの具体例としては、例えば、剥離処理剤からなる剥離処理剤層が剥離ライナー用の基材(例えば、和紙、洋紙、グラシン紙などの紙類;不織布、布などの繊維質材料による基材;線状低密度ポリエチレンフィルム、低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ−4−メチル−1−ペンテンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムなどのプラスチックフィルムや、金属蒸着プラスチックフィルムなど)の表面に形成された剥離ライナー、それ自体が剥離性の高いプラスチックフィルム[例えば、ポリエチレン(線状低密度ポリエチレン等)、ポロプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体(ブロック共重合体またはランダム共重合体)の他、これらの混合物からなるポリオレフィン系樹脂によるポリオレフィン系フィルム;テフロン(登録商標)製フィルムなど]による剥離ライナー、前記剥離性の高いプラスチックフィルムの素材(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂や、テフロンなど)を、各種基材(例えば、金属箔、プラスチックフィルム、紙類など)にラミネート又はコーティングして得られる剥離ライナーなどが挙げられる。
【0047】
前記剥離処理剤としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤などの公知の剥離処理剤が挙げられる。これらの剥離処理剤は単独で又は2種以上混合して使用することができる。なお、剥離ライナーの両面が剥離処理剤により形成されている場合、両剥離面を形成するための剥離処理剤は、同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0048】
なお、ガラス面貼付用感圧性接着シート類は、基材を有している場合[すなわち、前記構成(2)の基材付き両面感圧性接着シート類や、前記構成(3)の基材付き感圧性接着シート類である場合]、基材としては、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体(特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など)等の適宜な薄葉体を用いることができる。基材としては、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
なお、基材としては優れた透明性を有しているものを用いることが望ましい。
【0050】
基材の厚さは、例えば、1〜1000μm(好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm)程度であるが、これらに限定されない。なお、基材は単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0051】
基材の表面は、ガラス面貼付用粘着剤層等との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0052】
また、ガラス面貼付用感圧性接着シート類は、ガラス面貼付用粘着剤層以外の感圧性接着剤層を有している場合[すなわち、前記構成(2)の基材付き両面感圧性接着シート類において、非ガラス面貼付用粘着剤層が用いられている場合]、非ガラス面貼付用粘着剤層は、公知の感圧性接着剤(例えば、他のアクリル系感圧性接着剤、ゴム系感圧性接着剤、ビニルアルキルエーテル系感圧性接着剤、シリコーン系感圧性接着剤、ポリエステル系感圧性接着剤、ポリアミド系感圧性接着剤、ウレタン系感圧性接着剤、フッ素系感圧性接着剤、エポキシ系感圧性接着剤など)を用いて、公知の粘着剤層の形成方法を利用して形成することができる。また、非ガラス面貼付用粘着剤層の厚みは、特に制限されず、目的や使用方法などに応じて適宜選択することができる。
【0053】
なお、本発明のガラス面貼付用感圧性接着シート類は、前処理、各種製造プロセス段階、製品使用中などで高温下及び/又は高湿度下にさらされても、高透明性を維持することができる。具体的には、ガラス面貼付用感圧性接着シート類におけるガラス面貼付用粘着剤層としては、60℃且つ95%RHで500時間の加熱加湿処理の前後で、全光線透過率が、前記加熱加湿処理の前後ともに、85%以上であり、また、ヘイズが、前記加熱加湿処理の前後ともに、10%以下であり、さらに、前記加熱加湿処理の前後における色差(ΔE*ab)が0.5以下である特性を有することができる。ガラス面貼付用粘着剤層が、このような特性を有していると、高熱による熱履歴及び/又は高湿度による湿度履歴を受けても、優れた光学特性を効果的に保持することができる。具体的には、ガラス面貼付用粘着剤層は、高温下や高湿度下に晒されても、黄変がなく透明性が維持(保持)されており、また色相の変化が少ないという特性を発揮することができる。
【0054】
具体的には、ガラス面貼付用粘着剤層は、60℃且つ95%RHで500時間の加熱加湿処理の前、および前記加熱加湿処理の後の両方とも、全光線透過率が85%以上(好ましくは90%以上)の特性を有することができる。
【0055】
また、ガラス面貼付用粘着剤層は、60℃且つ95%RHで500時間の加熱加湿処理の前、および前記加熱加湿処理の後の両方とも、ヘイズが10%以下(好ましくは5%以下)の特性を有することができる。
【0056】
さらに、ガラス面貼付用粘着剤層は、60℃且つ95%RHで500時間の加熱加湿処理の前と、前記加熱加湿処理の後とにおける色差(ΔE*ab)が0.5以下(0〜0.5)[好ましくは0.3以下(0〜0.3)]の特性を有することができる。前記色差(ΔE*ab)が0.5以下であるということは、色の変化が極めて僅かに異なるレベルであることを意味している。
【0057】
なお、本発明において、ガラス面貼付用粘着剤層の全光線透過率、ヘイズ、色差(ΔE*ab)は、以下の測定方法により測定される値である。
(全光線透過率・ヘイズの測定方法)
厚さ25μmのガラス面貼付用粘着剤層(面積:40mm×40mm)を形成し、そのガラス面貼付用粘着剤層の片面に、スライドガラス(松浪硝子工業社製の「スライドガラス 白縁磨」;厚さ1.3mm)を貼り合わせたもの(すなわち、ガラス/ガラス面貼付用粘着剤層の層構成を有するもの)を評価用サンプルとする。濁度計(装置名「ヘーズメーターHM−150」村上色彩技術研究所製)を用い、JIS K7361、JIS K7136に準じて、評価用サンプルの全光線透過率(%)及びヘイズ(%)を測定する(加熱加湿処理前)。その後、評価用サンプルに、60℃且つ95%RHで500時間の加熱加湿処理を施した後、前記と同様にして、評価用サンプルの全光線透過率(%)及びヘイズ(%)を測定する。
【0058】
(色差(ΔE*ab)の測定方法)
前記全光線透過率・ヘイズの測定方法で作製した評価用サンプル(加熱処理前の評価用サンプル)と同様の評価用サンプルについて、積分球式分光透過率測定器(装置名「DOT−3C」村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS Z8701に規定されるXYZ表色系のX、Y、Zの値から、JIS Z8729に規定されるCIE L***表色系に換算して得られるL*、a*、b*を測定する(C光源、2°視野、波長:390nm〜730nm)(加熱加湿処理前)。その後、評価用サンプルに、60℃且つ95%RHで500時間の加熱加湿処理を施した後、前記と同様にして、60℃且つ95%RHで500時間の加熱加湿処理後の評価用サンプルのL*、a*、b*を測定する。
得られたL*、a*、b*の値から、加熱加湿処理の前後の色差(ΔE*ab)を、下記式を用いて計算する。
ΔE*ab=[(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2
(ここで、ΔL*は加熱加湿処理の前後のL*の値の差を意味している。Δa*は加熱加湿処理の前後のa*の値の差を意味している。Δb*は加熱加湿処理の前後のb*の値の差を意味している。)
【0059】
本発明のガラス面貼付用感圧性接着シート類は、前記構成を有しているので、ガラス面に対して直接に貼付しても、経時で変色や変質が生じず、また優れた粘着特性および光学特性でガラス面に貼付することができる。従って、ガラス面を有する被着体におけるガラス面に直接貼付するための感圧性接着シート類として好適に用いることができる。なお、ガラス面貼付用感圧性接着シート類をガラス面に貼り合わせる際には、ガラス面に、直接に、少なくとも部分的に(部分的に又は全面的に)貼り合わせればよい。
【0060】
ガラス面貼付用感圧性接着シート類が貼り合わせられる被着体(「ガラス面含有被着体」と称する場合がある)としては、少なくとも部分的にガラス面を有していれば特に制限されない。このようなガラス面含有被着体において、ガラス面が形成されている部位は、ガラス面貼付用感圧性接着シート類を直接貼付することが可能な部位であれば特に制限されず、外側の面であってもよく、また、内側の面などであってもよい。なお、1つのガラス面含有被着体にガラス面が複数形成されている場合、これらの複数のガラス面は同一のガラス材料により形成された面であってもよく、異なるガラス材料により形成された面であってもよい。
【0061】
前記ガラス面含有被着体におけるガラス面は、ガラス材料により形成されたガラス面含有被着体の表面であってもよく、また、各種材料により形成された基材(又は構造体)の表面に形成されたガラス層表面であってもよい。ガラス面は、いずれにせよ、ガラス材料による表面であればよい。前記ガラス層は、各種材料により構成された基材(又は構造体)の表面の所定の部位に形成することができる。なお、ガラス面は、全面が層状に一様に形成されていてもよく、部分的にエッチング、印刷などによるパターン状に形成されていてもよい。
【0062】
ガラス層の厚みとしては、特に制限されず、ガラス面含有被着体の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、0.2〜5mmの範囲から適宜選択することができる。
【0063】
ガラス面を形成するためのガラス材料としては、特に制限されず、公知のガラス材料の中から適宜選択することができる。ガラス材料は、通常、1種又は2種以上の無機酸化物を含んでいる。無機酸化物としては、金属元素や無機系非金属元素等の無機系元素を含んでいる酸化物であれば特に制限されず、例えば、SiO2、Al23、B23、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、TiO2、ZrO2、PbO、P25、Y23、Nb25、Ta25、ランタノイド系金属酸化物(La23、Gd23、CeO2など)、Sb23、As25、TeO2、Cu2O、Fe23、FeO、CoO、NiO、Cr23、SnO2、Bi23などが挙げられる。また、ガラス材料中には、必要に応じて、SO3やフッ素原子などが含まれていてもよい。
【0064】
なお、ガラス面貼付用感圧性接着シート類が直接貼付されるガラス面は、ガラス(表面処理が施されていないガラス)の表面であってもよく、各種表面処理が施されたガラスの表面(表面処理が施された表面)であってもよい。このようなガラスとしては、特に制限されず、例えば、フロート板ガラス、表面コート板ガラスなどが挙げられる。
【0065】
ガラス面含有被着体としては、例えば、ガラス層を有する光学的製品を構成するための各種部材などが挙げられる。前記光学的製品としては、例えば、プラズマディスプレイパネル、液晶表示装置、有機EL表示装置等の各種表示装置などの光学機器が挙げられる。また、部材としては、ガラス基板等が例示される。
【0066】
本発明のガラス面貼付用感圧性接着シート類は、例えば、反射防止フィルム、電磁波遮蔽シート等の各種機能性フィルムやシートを、ガラス基板等のガラス面を有する各種構造体に貼り合わせる場合などに好適に使用することができる。このような構造体としては、例えば、プラズマディスプレイパネル、液晶表示装置、有機EL表示装置等の各種表示装置が挙げられる。また、上記の観点から、ガラス面貼付用感圧性接着シート類として、両面が粘着面となっている両面感圧性接着シート類(特に、基材レス両面感圧性接着シート類)が用いられていることが好ましい。
【0067】
[構造体]
本発明の構造体は、機能性フィルムがガラス面に貼付されている構造体であって、機能性フィルムが、前記ガラス面貼付用感圧性接着シート類を用いてガラス面に貼付されていることを特徴としている。なお、機能性フィルムとしては、前述のように、反射防止フィルム、電磁波遮蔽フィルムなどが挙げられる。機能性フィルムは単独で用いられていてもよく、2種以上が組み合わせられて用いられていてもよい。また、該構造体において、ガラス面貼付用感圧性接着シート類は、単独で用いられていてもよく、2種以上が組み合わせられて用いられていてもよい。具体的には、このような構造体としては、前述のように、プラズマディスプレイパネル、液晶表示装置、有機EL表示装置等の各種表示装置が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下に、この発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロート、攪拌装置を備えた反応容器に、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル:0.2重量部、溶媒として酢酸エチル:150重量部、単量体成分としてアクリル酸n−ブチル:85重量部、N−シクロヘキシルマレイミド:15重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート:1重量部を入れ、窒素環流を室温にて1時間行った。その後、反応容器内の単量体成分を含むモノマー組成物溶液の温度を60℃に昇温し、窒素気流中で、5時間重合を行い、アクリル系共重合体の溶液を得た。このアクリル系共重合体の溶液に、アクリル系共重合体:100重量部に対して、架橋剤として、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネートアダクト体(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)を2重量部(固形分)添加して、粘着剤組成物(「粘着剤A」と称する場合がある)とした。
【0070】
さらに、前記粘着剤Aをアプリケーターを用いて、シリコーン系剥離剤による剥離処理が施されたポリエチレンテレフタレート製フィルム(剥離ライナー;厚さ50μm)の剥離面上に塗布し、130℃で3分間乾燥して、厚さが25μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層上に、シリコーン系剥離剤による剥離処理が施されたポリエチレンテレフタレート製フィルム(剥離ライナー;厚さ38μm)を貼り合わせて、粘着シートを得た。
【0071】
(実施例2)
表1に示されるように、単量体成分としてアクリル酸n−ブチル:90重量部、N−シクロヘキシルマレイミド:10重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート:1重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物(「粘着剤B」と称する場合がある)を調製した。この粘着剤Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0072】
(比較例1)
表1に示されるように、単量体成分としてアクリル酸n−ブチル:95重量部、アクリル酸:5重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物(「粘着剤C」と称する場合がある)を調製した。この粘着剤Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0073】
(比較例2)
表1に示されるように、単量体成分としてアクリル酸n−ブチル:80重量部、N−シクロヘキシルマレイミド:20重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート:1重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物(「粘着剤D」と称する場合がある)を調製した。この粘着剤Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを作製した。
【0074】
(評価)
実施例1〜2及び比較例1〜2で作製された粘着シートについて、下記の粘着力測定方法、全光線透過率及びヘイズの測定方法、色差の測定方法により、粘着力、糊残り防止性、透明性(全光線透過率、ヘイズ、色差)を評価した。評価結果は表1に示した。
【0075】
(粘着力測定方法)
粘着シートの一方の側の剥離ライナーを剥がして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:25μm)に貼り合わせ、幅20mm、長さ100mmに切断した後、他方の側の剥離ライナーを剥がして、厚さ1.3mmのガラス板(松浪硝子工業社製の「スライドガラス 白縁磨」;厚さ1.3mm)に貼り合わせた。ガラス板に貼付してから48時間後に90°ピール粘着力を測定した。なお、90°ピール粘着力の測定条件は、剥離角度:90°、引張速度:300mm/min、温度:23℃、湿度:50%RHであり、ガラス板より、ポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わせられた粘着シートを剥離することにより、90°ピール粘着力を測定した。
【0076】
また、剥離後のガラス面を目視で観察し、ガラス面への粘着成分の残存(糊残り)の有無を確認し、糊残り防止性を下記の評価基準により評価した。
糊残り防止性の評価基準
○:剥離後、ガラス面に粘着成分が残存していない(糊残りなし)
×:剥離後、ガラス面に粘着成分が残存している(糊残りあり)
【0077】
(全光線透過率及びヘイズの測定方法)
粘着シートを、40mm×40mmに切断し、一方の側の剥離ライナーを剥がして、スライドガラス(松浪硝子工業社製の「スライドガラス 白縁磨」;厚さ1.3mm)に貼り合わせて、加熱加湿処理を行わずに測定するための処理前用評価サンプルを作製した。その後、他方の側の剥離ライナーを取り除き、濁度計(装置名「ヘーズメーターHM−150」村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7361、JIS K7136に準じて、全光線透過率(%)及びヘイズ(%)を測定した。
【0078】
また、粘着シートを、40mm×40mmに切断し、一方の側の剥離ライナーを剥がして、スライドガラス(松浪硝子工業社製の「スライドガラス 白縁磨」;厚さ1.3mm)に貼り合わせて、加熱加湿処理を行ってから測定するための加熱加湿処理後用評価サンプルを作製した。加熱加湿処理後用評価サンプルを60℃×95%RHの雰囲気下で500時間保存した後、加熱加湿処理後用評価サンプルにおける他方の側の剥離ライナーを取り除き、濁度計(装置名「ヘーズメーターHM−150」村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K7361、JIS K7136に準じて、全光線透過率(%)及びヘイズ(%)を測定した。
【0079】
なお、処理前用評価サンプル、加熱加湿処理後用評価サンプルの各評価サンプルは、スライドガラス/粘着剤層の層構成を有しており、測定された全光線透過率(%)及びヘイズ(%)の数値には、スライドガラスの全光線透過率(%)やヘイズ(%)も含まれている。
【0080】
(色差の測定方法)
粘着シートを、前記全光線透過率及びヘイズの測定方法と同様にして、加熱加湿処理を行わずに測定するための処理前用評価サンプルを作製した。その後、他方の側の剥離ライナーを取り除き、積分球式分光透過率測定器(装置名「DOT−3C」村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS Z8701に規定されるXYZ表色系のX、Y、Zの値から、JIS Z8729に規定されるCIE L***表色系に換算して得られるL*、a*、b*を測定した(C光源、2°視野、波長:390nm〜730nm)。
【0081】
また、粘着シートを、前記全光線透過率及びヘイズの測定方法と同様にして、加熱加湿処理を行ってから測定するための加熱加湿処理後用評価サンプルを作製した。加熱加湿処理後用評価サンプルを60℃×95%RHの雰囲気下で500時間保存した後、加熱加湿処理後用評価サンプルにおける他方の側の剥離ライナーを取り除き、処理前用評価サンプルと同様にして、L*、a*、b*を測定した。
【0082】
得られたL*、a*、b*の値から、加熱加湿処理前後の色差(ΔE*ab)を、下記式を用いて計算した。
ΔE*ab=[(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2
(ここで、ΔL*は加熱加湿処理の前後のL*の値の差を意味している。Δa*は加熱加湿処理の前後のa*の値の差を意味している。Δb*は加熱加湿処理の前後のb*の値の差を意味している。)
【0083】
【表1】

【0084】
表1より明らかなように、実施例1〜2に係る粘着シートは、ガラス面に糊残りを生じさせることなく容易に剥離させることができ、且つ適度なリワーク性を発揮することができ、さらに光学特性が良好であることが確認された。これに対し、比較例1〜2に係る粘着シートは、ガラス面に糊残りが生じたり、接着強度が強く適度なリワーク性を有しておらず、満足する結果が得られていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス面に直接貼付するための感圧性接着シート類であって、該感圧性接着シート類を構成する粘着剤層が、下記の(a)成分を、単量体成分全量に対して80〜97.8重量%の割合で含み、下記の(b)成分を、単量体成分全量に対して2〜19.8重量%の割合で含み、下記の(c)成分を、単量体成分全量に対して0.2〜5重量%の割合で含んでいるとともに、カルボキシル基含有共重合性単量体を実質的に含まない単量体混合物による共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物により形成されており、前記粘着剤層の接着強度が、1〜7(N/20mm)(対ガラス板、温度:23℃、湿度:50%RH、剥離角度:90°、引張速度:300mm/分;厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わされた感圧性接着シート類を、厚さ1.3mmのガラス板に貼着させた後、ガラス板より剥離する)であることを特徴とするガラス面貼付用感圧性接着シート類。
(a)成分:下記式(1)で表されるアクリル系単量体
CH2=C(R1)COOR2 (1)
(式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数が2〜14のアルキル基を示す。)
(b)成分:下記式(2)で表されるマレイミド系化合物
【化1】

(式(2)において、R3は水素原子又は1価の有機基を示す。)
(c)成分:カルボキシル基を含有しておらず、且つ(a)成分および(b)成分と共重合が可能な他の単量体
【請求項2】
粘着剤層が、60℃且つ95%RHで500時間の加熱および加湿処理の後、全光線透過率が85%以上であり、また、前記加熱および加湿処理の後、ヘイズが10%以下であり、さらに、前記加熱および加湿処理の前後における色差(ΔE*ab)が0.5以下である請求項1記載のガラス面貼付用感圧性接着シート類。
【請求項3】
機能性フィルムがガラス面に貼付されている構造体であって、機能性フィルムが、請求項1又は2記載のガラス面貼付用感圧性接着シート類を用いてガラス面に貼付されていることを特徴とする構造体。
【請求項4】
構造体が、プラズマディスプレイパネル、液晶表示装置、有機EL表示装置の何れかである請求項3記載の構造体。

【公開番号】特開2007−77387(P2007−77387A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197641(P2006−197641)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】