説明

ガンマ線に安定である高圧活栓

【課題】高圧およびガンマ線に耐えるように構成配置された医療用活栓を提供する。
【解決手段】活栓(10)は、一般的にハウジング(12)および弁部材(14)からなる。弁部材(14)は、ハウジング(12)内に嵌め込まれるので、比較的高い圧力に曝されても、弁部材(14)がハウジング(12)から脱落しえない。ハンドル部材(16)が弁部材(14)に取り付けられ、弁部材(14)を開位置から閉位置に回転させうる。好適な一実施形態では、ハンドル部材(16)は、取り付けられたときに、弁部材(14)をハウジング(12)内に固定する。すべての構成部品がガンマ線に安定な材料からなるので、活栓(10)は、その包装内で、ガンマ線照射を使用して滅菌されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ線に耐えることができる活栓に関する。該活栓は高圧用途向けに構成配置される。
【背景技術】
【0002】
ガンマ線は、深い透過力を有するエネルギの一形態である。ガンマ線照射は、ガンマ線で医療装置を滅菌するために使用される。ガンマ放射線は、ほとんど加熱することなく、製品およびその包装の全体にわたって微生物を殺すことができる。滅菌剤として、ガンマ線は完璧であり、処理後に、製品、その構成部品、または包装のいずれにも不確実な無菌状態を残すことはない。さらに、ガンマ線照射による残留物はない。
【0003】
従来の滅菌技術として、エチレンオキシド(EtO)を使用するバッチ滅菌があげられる。EtOによる滅菌では残留物が残り、また出荷前にエアレーションの期間を設ける必要がある。使用前にEtOを完全に蒸散させるために、包装には、ガス透過性のものを用いなければならない。しかし、ガス透過性の包装を用いると、時間の経過と共に、汚染の可能性が高まる。したがって、滅菌された機器には、比較的早期の有効期限が設定される。これに対して、ガンマ線は、包装の中にも透過し、さらに、残留物も残すことはない。
【0004】
しかし、市販の活栓においては、ガンマ線に暴露されたとき、寸法に関して安定性のない材料が含まれている。ガンマ線に安定した材料は、市販の活栓の弁部材を形成するために使用される軟質材料より、高価であり固いものである。図1に、市販される標準的な活栓1の断面図を示す。活栓1は、ハウジング5に挿入された弁部材3を有する。弁部材3は、図示のように中空の構造でも、中空がない構造でもよいが、ハウジング5の通路9と一直線となるポート7を有する。
【0005】
二部品により構成される活栓1では、弁部材3とハウジング5との間の締まり嵌めが利用される。すなわち、弁部材3はハウジング5の内側よりわずかに大きくなっている。弁部材3がハウジング5に挿入されると、それは圧縮して、流体を密封しうる嵌合を形成する。そのため、弁部材3を、ハウジング5よりも軟質のプラスチックによって構成する必要がある。このような弁部材3を作製するために使用される標準的な材料として、アセタールおよびアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)があげられる。
【0006】
残念ながら、弁部材3の作製に使用されるこれらの軟質材料は、ガンマ線照射に耐えることができない。ガンマ線に暴露されると、弁部材3の寸法は変化してしまい、活栓を使用不能としてしまう。したがって、効果が劣るが、より高価である滅菌方法を用いなければならない。
【0007】
これらの活栓1のその他の不都合として、軟質の弁部材3とハウジング5との間にスナップ嵌めを設ける点があげられる。図1に示されるように、このスナップ嵌めは、弁部材13の下端に設けられた傾斜フランジ11と、これに対応させて、ハウジング5と一体に形成され、内方に突出したフランジ13とにより達成される。組立ておよび流体密封性の嵌合を可能とするためには、フランジ11および13を相対的に小さくして、組立てにおいて、他方のフランジ13を通過する際に、弁部材3のフランジ11を変形させ、かつ、もとの形に戻す必要がある。二つのフランジ11および13の間のこのような寸法関係は、こうした活栓が高圧用途向けに使用されることの制限となる。すなわち、高圧を受けたときに、弁部材3がハウジング5から押し出されやすくなる。
【0008】
これらの活栓1のさらなる不都合として、弁を開閉するために過度の回転力を必要とすることがあげられる。流体密封の完全性は、弁部材3とハウジング5との間の摩擦嵌めに実現されるため、弁部材3がハウジング5よりわずかに大きくなっていることから、ハウジング5内で弁部材3を回転することが困難である。使用者は、活栓に取り付けられたチューブをねじれさせたり、外してしまうことなく、活栓1を操作するためには両手が必要されることに不満がある。さらに、活栓1は比較的小さいサイズであるため、弁部材3を回転させる際に、指が弁部材3のハンドルの邪魔とならないように、ハウジング5を把持することが難しい。これは、濡れたゴム手袋を着用しながら高圧活栓の弁部材3を回転させるときに、特に問題となる。
【0009】
加えて、アセタールおよびABSのような材料は不透明であることも、不都合となる。血液および気泡を検出するためにも、全体的に透明な構成部品により構成された流体ネットワークを使用することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、ガンマ線照射に耐えることができる活栓が求められている。
【0011】
また、高圧に耐えるように構成配置された活栓が求められている。
【0012】
さらに、比較的容易に開閉することができる活栓が求められている。
【0013】
加えて、全体的に透明な材料から構成された活栓が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ガンマ線照射を使用した滅菌に耐えることができる材料により全体が作製された活栓に関する。また、活栓のハウジングを弁部材の外周に形成することにより、弁部材とハウジングとの間に改良された嵌合を達成しうる、活栓の製造方法を開示する。
【0015】
内側弁部材は、寸法を変化させることなくガンマ線に耐えることができる、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のような硬質材料により構成される。外側ハウジングもまたそのような材料、通常はポリカーボネートにより構成される。ハウジングは、弁部材の外径にほぼ等しい内径を有する円筒形の内部キャビティを有する。弁部材がハウジングを完全に突き抜けることを防止するために、弁部材は、その一端から半径方向に拡張した止め部、好ましくはフランジを有する。弁部材は、他端にハンドル部材を取り付けることによって固定される。取付けは、接着剤、スナップ嵌め、摩擦嵌め、溶接(例えば超音波)、ピン接続などにより行なわれる。
【0016】
PEEKは、本発明の活栓の製造に用いることができる多くの材料の一例にすぎない。他の材料例として、ポリエステル、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリカーボネート、ポリカーボネート合金、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルイミド、熱硬化性樹脂、ポリアミド、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ならびに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびフッ素化エチレンプロピレン(FEP)を除くフッ素樹脂があげられる。用いることができる熱硬化性樹脂としては、ポリイミド、ポリウレタン、およびポリエステルがあげられる。
【0017】
ハンドル部材、弁部材、およびハウジングはすべて同一材料から作製することができる。しかし、ハウジングおよび弁部材には、わずかに異なる融点を有する材料を使用すると、有利な製造上のオプションが得られる。ハウジングが弁部材よりもわずかに低い融点を有する材料から作製されると、ハウジングを弁部材にオーバモールドすることによって形成することができる。これにより、ハウジングの内部キャビティを弁部材のサイズにぴったり一致させることが確実にできる。溶融温度の相違により、ハウジング材料が弁部材と溶融することが防止される。
【0018】
なお、このオーバモールドのプロセスは、ガンマ線に安定しないとされる材料においても、外側ハウジングと内側弁部材との間の密着した嵌合を確実に行う方法として、適用することができる。内側弁部材および外側ハウジングが、ガンマ線に暴露されたときに反応が異なる材料から作製すれば、ガンマ線照射中に、外側ハウジングを内側弁部材の周囲に圧縮させることにより作製できる。これにより、ハウジングと弁部材との間に流体を密封しうる嵌合を形成するだけでなく、より安価なガンマ線に安定しない材料の使用を可能とする。
【0019】
また、ガンマ線に安定な材料の高コストを考慮すると、ガンマ線に安定な弁部材に取付可能なガンマ線に安定しないハンドルを設けることも望まれる場合がある。これにより、特により大きい活栓の場合、コスト面で有利となるばかりでなく、設計上の柔軟性も得ることができる。例えば、異なる色を有する多種多様なハンドル部材を備えることが望まれる場合もある。これにより、活栓内を移動する流体の種類を識別するために、任意の色を選択することができる。また、弁部材は、ハンドルがない設計も可能であり、活栓も作動しうる構成配置がなされた自動装置に適用できる。
【0020】
さらに、弁部材を回転させる際に、ハウジングを保持するために使用できるグリップを活栓ハウジングに組み込むことで、回転を容易にできる。これにより、医師がより大きな力で回転させることが可能となる。グリップは、ハウジングを軸方向に伸長させるか、あるいは、ポートが邪魔とならない部分で半径方向に拡張させることにより形成する。
【0021】
本発明の一態様では、活栓のいずれかの側でハンドル部材に取付可能であるか、ハンドル部材と一体的に形成される弁部材を有する活栓を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来技術の活栓の断面図である。
【図2】本発明の活栓の好適な実施態様であり、ハンドル部材が弁部材から分離され、ハウジングを一部判断した状態を示す斜視図である。
【図2A】本発明の別の実施態様であり、ハンドル部材が弁部材から分離された状態を示す断面斜視図である。
【図3】本発明による活栓ハウジングを示す斜視図である。
【図4】本発明による弁部材を示す斜視図である。
【図5】本発明による活栓の別の好適な実施態様を示す正面断面図である。
【図6】本発明によるハウジングの第二端の実施態様を示す部分斜視図である。
【図7】本発明による活栓のさらに別の好適な実施態様を示す正面断面図である。
【図8】本発明による活栓の好適な実施態様を示す斜視図である。
【図9】本発明による活栓の別の好適な実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図2に、本発明による活栓10を示す。活栓10は、一般的に、ハウジング12、弁部材14、およびハンドル部材16からなる。ハウジング12、弁部材14、およびハンドル部材16のすべてを、ガンマ線に暴露されても寸法が安定して維持される材料から作製することが好ましい。
【0024】
ハウジング12は、図3に最もよく示されており、少なくとも一つの入口ポート18、および、少なくとも一つの出口ポート20を有する。両ポート18および20は、弁部材14を収容するサイズに形成された内部キャビティ22に通じる。ハウジング12は、第一端24および第二端26が開口していることにより、内部キャビティ22の範囲を画定していることは明らかである。これらの開口端24および26の重要性については後述する。
【0025】
図4は、弁部材14を示す。弁部材14は、一般的に、内部キャビティ22内に回転自在に収容されるサイズに形成された円筒体からなる。弁部材14は、組み立てられたときにハウジング12の第一端24および第二端26に対応する第一端28および第二端30を有する。弁部材14の第二端30は、好ましくはフランジ形状の止め部32を有する。止め部32は、ハウジング12の第二端26の開口と干渉するサイズに形成される。したがって、止め部32は、弁部材14がハウジング12の第一端24を通り抜けてハウジング12から外れてしまうことを防止する。さらに、弁部材14は、ポート18および20の間に流体連通を確立させる場合には、ハウジング12のポート18および20と一直線となる通路34を設ける。加えて、弁部材14の第一端28には、弁部材14をハンドル部材16に取り付けるために使用する取付部36を設ける。
【0026】
図2に示すように、ハンドル部材16は、弁部材14の取付部36と嵌合するように構成された取付部38を有する。図2および図4には、取付部36および38は、それぞれ方形の雌雄継手として示されている。ハンドル部材16を弁部材14に取り付けることに関して、所望の機能に応じて、多くの構成が採りうることは、当業者には理解されることである。図に示す雌雄継手による構成を採れば、必要に応じて、接着剤を塗布するための適当な表面積を付与することができ、また、ハンドル部材16を使用して弁部材14をひねることを可能にするために、十分な構造的相互作用を弁部材14とハンドル部材16との間にもたらすことができる。さらに、ハンドル部材16は接触面40を有する。ハンドル部材16が弁部材14に取り付けられたときに、接触面40はハウジング12の第一端24に対して作用する。接触面40および止め部32は、ともに弁部材14がハウジング12に対して軸方向に動くのを防止する。このようにして、弁部材14はハウジング12内に軸方向には固定されるが、回転することは可能である。
【0027】
図2Aに、ハンドル部材16を弁部材14に取り付けるための別の好適な構成を示す。ハンドル部材16は、弁部材延長部19と嵌合するように構成されたスロット17を有する。弁部材延長部19は、スロット17とスナップロック嵌めを形成することが好ましい。ハンドル部材16が弁部材14にスナップ嵌めされると、ハンドル部材16の下面は接触面40を形成し、該接触面40はハウジング12の第一端24に対して作用して、弁部材14がハウジング12から外れてしまうことを防止する。
【0028】
ハウジング12、弁部材14、およびハンドル部材16を作製するために使用される材料は、透明かつガンマ線に安定であることが好ましく、これによりガンマ線照射を用いて滅菌する前に弁全体を組み立てて包装することが可能となる。後述する弁部材10を製造するために選択される製造方法によって、ハウジング12、弁部材14、およびハンドル部材16に使用する材料は、同一または異なるものとすることができる。例えば、コストを低減するために、ハンドル部材はより安価であるガンマ線に安定しない材料から作製することもできる。用いられる材料として、アセタールおよびABSの二例をあげることができる。
【0029】
本発明の弁10を作製に用いうるガンマ線に安定な材料としては、PEEK、ポリエステル、PETG、ポリカーボネート、ポリカーボネート合金、ポリスルホン、ポリウレタン、PEKK、ポリエーテルイミド、熱硬化性樹脂、ポリアミド、PAEK、ならびに、PTFEおよびFEPを除くフッ素樹脂があげられる。用いうる熱硬化性樹脂の例としては、ポリイミド、ポリウレタン、およびポリエステルがあげられる。これらの材料は、例示であって、用いうる材料のすべてを列挙するリストとして意図されたものではない。構造的に十分な品質を示すガンマ線に安定な材料のいずれをも、用いることができる。
【0030】
材料が選択され、該材料を使用してハウジング12、弁部材14、およびハンドル部材16が形成されると、弁部材14の第一端28をハウジング12の第二端26に導入することによって、弁10が組み立てられる。弁部材14は、止め部32がハウジング12の第二端26に当接するまで、ハウジング12の内部キャビティ22内を摺動する。次に、それぞれの取付部36および38を相互に位置合わせして接合し、ガンマ線に安定な接着剤、超音波溶接、機械的接続などにより固定する。
【0031】
本発明の様々な実施形態において、活弁10のハンドル部材16および弁部材14は一体に形成される。その一例を図5に示す。弁部材14には、その第二端30に孔42が設けられ、弁部材14がハウジング12に挿入された後で、該孔42にピン44が配置される。図2に示した止め部40と同様に、ハウジング12の第一端24に対して作用する止め部(図示せず)を設けてもよい。また、図5に示すように、弁部材14および内部キャビティ22をわずかに円錐状として、止め部40の必要性をなくすとともに、弁部材14とハウジング12との間のシールをより確実なものとできる。ピン44が所定位置に配置されたときに、弁部材14に対しわずかな下向きの力がかかるように、孔42が配置される。
【0032】
図6に、弁部材14に対する下向きの力を高めるように形成されたハウジング12の実施形態を示す。ハウジング12の第二端26には、凹部46が形成され、孔42が凹部46と位置合わせされたときに、ピン44を弁部材14の孔42に通すことができるように適切な隙間が設けられる。
【0033】
凹部46に隣接して傾斜面48が形成される。ピン44が所定位置に配置された後、弁部材14を回転させることにより、弁部材14が内部キャビティ22内に深く引き込まれるにつれて、ピン44は傾斜面48によって、受ける抵抗が増大していく。弁部材14および内部キャビティ22が円錐状であれば、この傾斜面の効果により、弁部材14の側壁と内部キャビティ22を画定するハウジング12の内壁との間に、より大きなシールが形成される。図2に示したような止め部40と、円筒形の弁部材14および内部キャビティ22を使用した場合には、この斜面部の効果は、止め部40とハウジング12の第一端24との間により強いシールを形成する。
【0034】
傾斜面48の端部にはキャッチ50が設けられる。弁部材14が十分に回転すると、ピン44は、傾斜面48を乗り越えて、キャッチ50の後ろ側に嵌り込む。キャッチ50は、弁部材14が逆転するのを防止して、ピン44が再び凹部46に入ることにより、弁部材14が外れないようにしている。このように、キャッチ50は、弁部材14の回転を制限する。
【0035】
キャッチ50に隣接して動作面52が設けられる。この面52は、弁部材14の回転を規制するピン44ある面に比較的平行である。また、動作面52も水平部53および制限部55を有することが好ましい。水平部53は、ピン44に対して最小量の下向きの力を付与するように配置されるので、弁部材14を容易に回転することができる。制限部55は、弁部材通路34とハウジングポート18および20との間が一直線となる位置に対応するように配置される。したがって、弁部材14がハウジング12のポートと位置合わせされると、弁部材14はハウジング12の内壁と緊密に接合するように引っ張られ、これにより高圧を伴う操作においても流体に対する密封シールが形成される。ノッチ57を設けることにより、弁部材14がハウジングポート18および20と位置合わせされていることをオペレータに触感的にフィードバックさせるようにしてもよい。弁部材14の角度動作範囲は、上述のキャッチ50によって一方側の最大が画定され、回転止め部54によって反対側の最大が画定される。回転止め部54は、ピン44の他端を受け入れるように設計されたハウジング12の反対側の凹部46に入る位置まで、ピン44が回転することを防止する。
【0036】
本発明の製造方法の別の態様は、ハンドル部材12と一体的ではあるが、ピン44の使用を必要とせずに、弁部材14の使用を可能としている。図7に、弁部材14およびハウジング12の内部キャビティ22を湾曲させて、ハウジング12の第一端24および第二端26をハウジング12の他の部分より絞った、活栓10の実施形態を示す。これにより、弁部材14は、ハウジング12の内側に固定される。
【0037】
図7の活栓10を製造するためには、弁部材14が第一のガンマ線に安定な材料から成形される。次に、残りの製造工程において、通路34を開口状態に維持し、かつ、ハウジング12の入口ポート18および出口ポート20を形成するための、ロッド(図示せず)が通路34に配置される。さらに、第一のガンマ線に安定な材料よりも低い溶融温度を有する第二のガンマ線に安定な材料を使用した、ハウジング12が弁部材14およびロッドの周りに成形される。異なる融点および異なる成形温度を有する材料を使用することにより、弁部材14が溶融してハウジング12に接着しないようにしている。さらに、潤滑材のような軽量の媒介物を弁部材14に塗布して、ハウジング12が弁部材14に接着するのを防止することができる。例えば、PEEKは、弁部材14を作製するための第一の材料として使用することができる。一方、ハウジング12を成形するための第二の材料として、ポリカーボネートを使用することができる。ポリカーボネートは、約540〜575°F(282〜302℃)の溶融温度を有するが、約150〜220°F(65〜105℃)の比較的低い成形温度を有する。
【0038】
ハウジング12が固化した後、ロッドを除去すれば、ハウジング12内で弁部材14を回転させることができる。弁部材14の周りにハウジング12を成形する別の方法として、弁部材14およびロッドを第二材料の液体体積内に繰返し浸漬してハウジング12を形成する浸漬被覆があげられる。
【0039】
図8は、本発明の活栓10の好適な実施形態を示す。この活栓10は、一つの入口ポート18および二つの出口ポート20を有する三方活栓である。フランジ60は、ポート18および20と一体的であり、これらから伸長する。フランジ60を、ハウジング12の残部とは異なる材料とすることもできるが、同一材料であることが好ましい。フランジ60は、ハウジング12に高圧操作のための剛性を付与し、かつ、ハンドル部材16を回転する際に、弁10を把持する部分62も備えている。フランジ60を把持することにより、回転力が増大し、また、指がハンドル部材16の動きの邪魔となることが防止される。
【0040】
図9は、本発明の活栓10の別の好適な実施形態を示す。この活栓10も、一つの入口ポート18および二つの出口ポート20を有する三方活栓である。ハウジング12から、作動位置を仮想線で示したハンドル部材16の動作範囲と抵触しない角度に、グリップ64が伸長している。図8に示したフランジ60と同様に、グリップ64を使用すると、回転力が増大し、指がハンドル部材16の動きを邪魔することが防止される。
【0041】
上記の説明は、本発明の概念に包含される実施形態を示したものである。実施形態は、様々な種類の構成を使用して、変更、改良および/または実施することができる。例えば、本発明の活栓は、ここでは医療分野に関連して説明した。しかし、本発明の教示する内容を、電子工学、微生物学、その他の無菌性を必要とする分野において適用しうることは想定されるが、このことは当業者に自明である。したがって、本明細書において図示し、説明した例示的な実施形態および適用例に厳密に従うことなく、かつ、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなく、本発明を実施することが可能な様々な改良および変更を当業者は容易に認識しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ハウジング内に弁部材を配置し、
前記弁部材にハンドルを接合することにより、前記弁部材を前記弁ハウジングの内側に固定する、
ことを含む活栓の製造方法。
【請求項2】
前記弁部材に前記ハンドルを接合するステップが、前記弁部材に前記ハンドルを超音波溶接することからなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記弁部材に前記ハンドルを接合するステップが、前記弁部材に前記ハンドルを接着することからなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ガンマ線に安定な材料から構成され、入口ポートと、少なくとも一つの出口ポートと、内径および両端に開口を有する内部キャビティとからなるハウジングと、
ガンマ線に安定な材料から構成され、前記ポートと位置合わせ可能な通路を有し、前記内部キャビティ内に回転自在に収容された弁部材と、
前記弁部材の一端に動作自在に取り付けられ、該弁部材が前記ハウジングの前記内部キャビティを貫通して脱落することを防止するように構成配置された機構と、
前記弁部材の他端に動作自在に取り付けられ、前記弁部材の回転を可能にし、かつ、該弁部材が前記ハウジングから分離することを防止するように構成配置されたハンドル部材と、
からなる活栓。
【請求項5】
前記少なくとも一つの出口ポートが一つの出口ポートからなる請求項4に記載の活栓。
【請求項6】
前記少なくとも一つの出口ポートが二つの出口ポートからなる請求項4に記載の活栓。
【請求項7】
前記機構が、前記内部キャビティを画定する前記ハウジングの円錐台形状の内側壁と、前記ハウジング内側壁と嵌合するように傾斜した前記弁部材の円錐台形状の部分とからなる請求項4に記載の活栓。
【請求項8】
前記機構が前記弁部材の一端でそこから半径方向に拡張する止め部からなる請求項4に記載の活栓。
【請求項9】
前記ハンドル部材が、前記弁部材を貫通し、両端が前記ハウジングから半径方向に伸長する寸法に形成され、該弁部材を回転させる際にオペレータにより使用されるピンを含む請求項4に記載の活栓。
【請求項10】
前記ハウジングおよび前記弁部材のいずれもが、ポリエステル、PETG、ポリカーボネート、ポリカーボネート合金、ポリスルホン、ポリウレタン、PEKK、PEEK、PAEK、ポリエーテルイミド、熱硬化性樹脂、ポリアミド、ならびに、PTFEおよびFEPを除くフッ素樹脂からなる群より選択された材料から構成される請求項4に記載の活栓。
【請求項11】
ガンマ線に安定な材料からなる弁部材であって、貫通する通路を有する弁部材を用意し、
前記通路にピンを通し、
前記ピンを付けた前記弁部材の周りにガンマ線に安定な材料をオーバモールドして前記弁部材の周りにハウジングを形成し、
前記ハウジングが前記弁部材と融合することを防止し、
前記ハウジングが固化した後で前記ピンを除去する、ことからなる活栓の製造方法。
【請求項12】
前記ハウジングが前記弁部材と融合することを防止するステップが、前記弁部材をオーバモールドするステップに用いるガンマ線に安定な材料を、前記弁部材よりも低い溶融温度を有するガンマ線に安定な材料から選択することからなる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ハウジングが前記弁部材と融合することを防止するステップが、前記弁部材をオーバモールドするステップを実行する前に、前記弁部材に潤滑材を被覆することからなる請求項11に記載の方法。
【請求項14】
縦軸を有し、かつ、貫通する通路を有する、第一材料からなる弁部材と、
前記弁部材の周りに形成された第二材料からなるハウジングであって、少なくとも一つの開口端を有し、かつ、少なくとも一つの入口ポートおよび少なくとも一つの出口ポートを有し、前記ポートが前記通路と位置合わせ可能であるハウジングと、
からなる活栓において、
前記弁部材が前記縦軸に対して垂直な平面内で測定される変動円形断面積を有し、前記弁部材の中央部の前記断面積が前記弁部材の端部の前記断面積より大きく、かつ、前記ハウジングが前記弁部材を緊密に捕捉する大きさに作られた内部キャビティを有しており、
前記弁部材およびハウジングが、前記ハウジングに対し前記縦軸を中心とする前記弁部材の回転が可能となっており、かつ、前記ハウジングに対し前記縦軸に沿ったいずれの方向への移動も防止されるように形成されている、
活栓。
【請求項15】
前記第一材料がガンマ線に安定な材料からなる請求項14に記載の活栓。
【請求項16】
前記第二材料がガンマ線に安定な材料からなる請求項14に記載の活栓。
【請求項17】
前記第一および第二材料が異なる材料である請求項14に記載の活栓。
【請求項18】
前記ハウジングが開端および閉端を含み、前記開端が、前記弁部材の中央部の前記断面積より小さい断面積を有する開口を有する請求項14に記載の活栓。
【請求項19】
入口ポートと、少なくとも一つの出口ポートと、内部キャビティとを有するハウジングと、
前記ポートと位置合わせ可能な通路を有し、前記内部キャビティ内に回転自在に収容された弁部材と、
前記弁部材に取り付けられ、予め定められた動作範囲で前記弁部材を回転させるために使用可能なハンドル部材と、
グリップを把持する使用者の手が、前記予め定められた動作範囲における前記ハンドル部材の回転と干渉しないように選択された位置において、前記ハウジングから伸長するグリップと、
からなる活栓。
【請求項20】
前記グリップが前記ハウジングから伸長するフランジを含む請求項19に記載の活栓。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−257595(P2009−257595A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186051(P2009−186051)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【分割の表示】特願2004−501825(P2004−501825)の分割
【原出願日】平成15年5月2日(2003.5.2)
【出願人】(503433796)アシスト メディカル システムズ,インク. (2)
【Fターム(参考)】