説明

ガードレール

【課題】車両等が衝突した際の衝撃力を緩和吸収し、車両等へのダメージを抑えかつ乗員の安全性を向上させる。
【解決手段】道路上に立設される支柱2に、ゴム弾性材からなりかつ道路巾方向の厚さTが100mm以上のゴム本体部3を有するゴム緩衝体4を介して車両逸脱防止用のビーム5を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時の衝撃吸収性に優れたガードレールに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、道路の路側や中央分離帯にはガードレールが設置され、車両が路側を越えて道路外に逸脱したり、中央分離帯を越えて対向車線に突入することを防止している。そしてこのようなガードレールでは、衝突した車両をしっかりと受け止めガードレールを突破させないこと、及び衝突時の衝撃力を緩和吸収することが、事故を最小限に抑えて乗員の安全性を高める上で重要となる。
【0003】
そこで下記の特許文献1には、衝撃力の緩和吸収効果を高めたガードレールが提案されている。この提案のガードレールは、図7(A)、(B)に示すように、支柱aに対して、溝型鋼からなる一対のブラケットbを、前記溝型鋼のウエブb1外面によって前記支柱aを狭持するように張り出して取り付け、両ブラケットb、bの張出し端部beに波板状のビームcを取り付けている。又前記ブラケットbには、そのフランジb2の前端部分に、ビーム取付け用の平板dが取り付くとともに、前記ウエブb1の前端部分には、切込部fが形成されている。
【0004】
このガードレールでは、衝突時、前記ビーム取付け用の平板dおよび張出し部分のフランジb2が、前記切込部f内にのめり込むように変形しうるため、切込部fを設けないガードレールに比して衝撃力の緩和吸収効果を高めることができる。しかしながら衝撃力の緩和吸収効果は、充分とは言い難く、さらなる向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平05−2654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、支柱とビームとの間に、所定ゴム厚さのゴム緩衝体を介在することを基本として、衝撃力の緩和吸収性能を高め事故を最小限に抑えて乗員の安全性を向上しうるガードレールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、道路上に立設される支柱に、ゴム弾性材からなりかつ道路巾方向の厚さTが100mm以上のゴム本体部を有するゴム緩衝体を介して車両逸脱防止用のビームを取り付けたことを特徴としている。
【0008】
又請求項2の発明では、前記ゴム緩衝体は、ブロック状をなすゴム本体部と、このゴム本体部の道路巾方向の前後面に一体に接着されかつボルト取り付け用のネジ孔を有する前後の取付板とを具えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は叙上の如く、支柱とビームとの間に、所定ゴム厚さのゴム緩衝体を介在している。そのため、車両等が衝突した際、このゴム緩衝体が大きく変形して衝撃力を緩和吸収することができ、車両等へのダメージを抑えかつ乗員の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のガードレールの一実施例を示す道路巾方向の側面図である。
【図2】その分解斜視図である。
【図3】ガードレールの主要部を拡大して示す道路巾方向の拡大断面図である。
【図4】ガードレールの主要部を拡大して示す水平方向の拡大断面図である。
【図5】ネジ孔を説明する断面図である。
【図6】本発明のガードレールの作用効果を示す荷重−変位量のグラフである。
【図7】(A)、(B)は、従来技術を示す道路巾方向の側面図、およびその主要部の部分斜視図である。
【図8】実施例における衝撃吸収性のテストを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1、2に示すように、本実施形態のガードレール1は、道路上に立設される支柱2に、ゴム弾性材からなるゴム本体部3を有するゴム緩衝体4を介して車両逸脱防止用のビーム5を取り付けている。
【0012】
前記支柱2は、本例では、例えばアンカボルト等を用いて路面上に固定される底板部2Aと、この底板部2Aから立ち上がる例えば円筒状の支柱本体2Bとを一体に具えた周知構造の鋼製の柱であって、前記支柱本体2Bの上端には保護用のキャップ体6が装着される。又前記支柱本体2Bには、ビーム取付け金具7が固定される。このビーム取付け金具7は、前記支柱本体2Bの外周面に沿って湾曲しかつ該支柱本体2Bにボルト止めされる中央固定部7aの両側に、前方に向かって折れ曲がる折れ曲がリ部を介して両外側に張り出す翼状の取付け片部7bを一体に設けた折れ曲がり板から形成される。なお取付け片部7bには、ボルト挿通孔8が穿設される。
【0013】
次に、前記ゴム緩衝体4は、道路巾方向の厚さTを***mm以上とした本例では矩形ブロック状のゴム本体部3と、このゴム本体部3の道路巾方向の前後面に一体に接着されかつボルト取り付け用のネジ孔10が形成される前後の取付板9F、9Rとを具える。なお、前後の取付板9F、9Rを総称するとき、取付板9と呼ぶ場合がある。
【0014】
なお前記ネジ孔10は、本例では、図5に拡大して示すように、前記取付板9に穿設されボルト挿通孔10Aと、このボルト挿通孔10Aと同心にかつ前記取付板9の裏面に溶接されるナット金具10Bのネジ孔10B1とから形成される。又前記ゴム本体部3には、前記ネジ孔10の形成位置に、前記ナット金具10Bおよび、前記ネジ孔10に螺着されるボルト金具11の突出部分11aとの接触を避ける盲孔状の切欠き凹部12が設けられる。このように、本例のゴム緩衝体4は、前記後の取付板9Rのネジ孔10に、前記ビーム取付け金具7のボルト挿通孔8を通るボルト金具11が螺着することにより前記支柱2に固定される。
【0015】
なお前記ゴム本体部3に用いるゴム弾性材としては、特に規制されないが、例えばニトリルゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)等のジエン系ゴム、或いはブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の非ジエン系ゴムを単独で、或いは複数種を組み合わせて使用することができる。また要求するゴム物性をうるために、カーボンブラック、硫黄、加硫促進剤、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、軟化剤などの周知のゴム用添加剤を適宜配合することができる。なお前記ゴム本体部3は、衝撃緩和効果と強度との観点から、ゴム硬度が50〜90°のものが好適に採用しうる。このゴム硬度は、JIS−K6253に基づきデュロメータータイプAにより、23℃の環境下で測定したデュロメータA硬さである。
【0016】
次に、前記ビーム5としては、従来と同様の波板状のものが好適に採用しうる。本例では、図2に示すように、高さ方向の中央に設ける道路巾方向後方側の谷部5Aと、その上下に配される道路巾方向前方側の山部5Bとの間を傾斜部5Cで継いだ台形波状のものが使用される。なお上の山部5Bの上縁、及び下の山部5Bの下縁にも、後方側に向かって傾斜する傾斜部5Cが連設されている。このビーム5は、前記谷部5Aにボルト貫通孔13を具え、このボルト貫通孔13を通るボルト金具11が、前記ゴム緩衝体4の前の取付板9Fのネジ孔10に螺着することによって、ビーム5は、前記ゴム緩衝体4に固定される。
【0017】
このように本実施形態のガードレール1は、支柱2とビーム5との間に、ゴム緩衝体4を介在させているため、車両等が衝突した際、このゴム緩衝体4が大きく変形して衝撃力を緩和吸収することができる。そのため、車両等へのダメージを抑えるとともに乗員の安全性を高めることができる。なおゴム本体部3の前記厚さTが100mmを下回ると、衝撃力の緩和吸収効果が充分発揮されない、又前記厚さTの上限は、特に規制されないが、大きすぎると重量やコストの不必要な増加を招くため、1500mm以下とするのが好ましい。
【0018】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0019】
本発明の効果を確認するため、図1に示す構造のガードレール、図7に示す構造の比較例2のガードレール、および図7から切込部fを排除した構造の比較例1のガードレールをそれぞれ試作し、衝撃吸収性についてテストし互いに比較した。
【0020】
なおゴム本体部には、下記のゴム弾性材を使用している。
・ゴム成分 −−−NR60質量部+BR40質量部、
・ゴム硬度 −−−80°、
実施例1は、ゴム本体部の厚さTが300mm、実施例2はゴム本体部の厚さTが100mm、比較例3はゴム本体部の厚さTが50mmとし、支柱、ビームには同一のものを使用している。
【0021】
テストは、油圧プレスP(10ton)を用い、図8に示す向きにて、ガードレールに変位を与えた。変位量は、初期接触位置からの押し込み量を意味する。従って支柱2の撓みも変位に含まれる。その結果を図6に示す。
【0022】
テストの結果、実施例のガードレールは、衝撃力の緩和吸収効果に優れているのが確認できる。
【符号の説明】
【0023】
1 ガードレール
2 支柱
3 ゴム本体部
4 ゴム緩衝体
5 ビーム
9、9F、9R 取付板
10 ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上に立設される支柱に、ゴム弾性材からなりかつ道路巾方向の厚さTが100mm以上のゴム本体部を有するゴム緩衝体を介して車両逸脱防止用のビームを取り付けたことを特徴とするガードレール。
【請求項2】
前記ゴム緩衝体は、ブロック状をなすゴム本体部と、このゴム本体部の道路巾方向の前後面に一体に接着されかつボルト取り付け用のネジ孔を有する前後の取付板とを具えることを特徴とする請求項1記載のガードレール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−193582(P2012−193582A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59671(P2011−59671)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】