説明

キッチンペーパー

【課題】吸油性に優れるキッチンペーパーを提供する。
【解決手段】エンボス加工を施したシートを表裏面に配し、その表裏面のシートの少なくとも一方のシートが導通孔を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンペーパーに関し、特に、油分の吸収性に優れるキッチンペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
台所、調理場等においては、紙や不織布等からなる、いわゆるキッチンペーパーが広く使用されている。キッチンペーパーの用途は、食品の包装、煮物の落とし蓋、鮮魚等のドリップ吸収材、水きり、油漉し、揚げ物の過剰油分の吸収用途、台所周りの拭き掃除など多岐に渡るが、液吸収性は求められる重要な機能であり、従って、キッチンペーパーは、一般的に、エンボス加工を施したクレープ紙や不織布等のシートを適宜枚数積層して形成され、シート繊維間の空隙による毛管現象を主たる吸液機構として各シートのエンボス間の空隙に水分、油分等を取り込み保持するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−146665
【特許文献2】特開2005−132710
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来製品は粘度の低い水の吸収速度については十分な場合が多いが、水と比較して粘度が高い油の吸収速度については、十分ではない場合が少なくない。例えば、揚げ物を行う際に、余分な油を吸収すべく、揚げ物の取り上げるバット等にキッチンペーパーを敷くことがあるが、そのさい吸油速度が足らず、揚げ物からの油がシート上に溜まることが多々見られる。
そこで、本発明の主たる課題は、シート面での油の拡散性に優れ、シートの広範囲で油分を保持でき、もって油吸収量が多く、しかも、油がシート間の空隙に迅速に移動される、キッチンペーパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明及び作用効果は次記のとおりである。
表面及び裏面を構成するシートのそれぞれがエンボス加工により天部及び底部が形成されており、
各シートの前記エンボスの天部同士が対面して位置され、かつ、それら対面する天部同士の全部又は一部が接着剤で接着されており、
前記一方のシートの前記エンボスの底部のみに、このエンボス底部と対面するシートとの間に形成される空隙に連通する導通孔が前記底部の中央部のみに形成されている、
ことを特徴とするキッチンペーパー。
【0006】
本発明によれば、エンボスの底部に空隙に連通する導通孔を設けたので、油など比較的粘度の高い液体でも当該導通孔を介してシート間の空隙に迅速に移動させることできるようになる。
さらに、導通孔の形成によってシート表面積が拡大されるので、液体吸収が広範かつ迅速になされるようにもなる。
【0007】
一方面のみにしか導通孔が形成されていないので、当導通孔形成面から空隙内に移動された液体が、少なくとも導通孔を介して反対面に漏れ出るということがなく、もって空隙内での液保持性に優れるものとなる。
なお、表裏面を構成する各シートのエンボスの天部同士が対面するようにして積層する、いわゆる「Tip to Tip」の形態とすると、表裏面シート間の空隙が大きくなり、嵩高となるとともに液保持量が高まる。
【0008】
また、表面を構成するシートに、炭素数6〜12かつ飽和のトリグリセリドが塗布又は含浸されていると、より吸油性の向上効果が得られる。
さらに、表面を構成するシートと裏面を構成するシートとが、接着面積率3〜20%で接着されていると、シート同士の確実な接着を確保できる。また、接着部分による油吸収性の阻害の影響も小さい。
【0009】
また、導通孔が、シート外面側から空隙側に向かって狭窄しているものとすると、広い範囲で液体を受けいれやすく、一旦、空隙内に移動された液体が逆戻りし難くなり、空隙内への迅速な液体移動と液保持性に優れるようになる。また、毛細管現象によるシート表面から空隙内への液体移動の補助効果も得られる。
さらに、前記導通孔の空隙側周縁が、空隙内に突出しているものとすると、空隙内に移動された油分が逆流しにくく空隙内での液保持性が高まる。
【発明の効果】
【0010】
以上から明らかなとおり本発明によれば、シート面での油の拡散性に優れ、シートの広範囲で油分を保持でき、もって油吸収量が多く、しかも、油がシート間の空隙に迅速に移動される、キッチンペーパーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のキッチンペーパーの断面拡大図である。
【図2】導通孔の他の形状例を示す断面図である。
【図3】導通孔の別の形状例を示す断面図である。
【図4】本発明の他のキッチンペーパーの断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次いで、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に詳述する。
本形態のキッチンペーパーX1は、図1に示すとおり、本発明の特に好ましい形態として、表面を構成するシート1と裏面を構成するシート2の二層積層構造を採り、各シート1,2に形成されたエンボスe,e…の天部t,t…同士が対面して位置され、かつ、それら対面する天部同士t,t…のうちの全部又は一部が接着剤3で接着されている所謂「Tip to Tip」の形態を採る。また、表面を構成するシート1のエンボスの底部bのみに、このエンボス底部bと隣接する裏面シート2との間に形成される空隙Sに連通する導通孔10が形成されている。なお、本発明のキッチンペーパーは、この形態に限られないことはいうまでもない。
【0013】
本形態のキッチンペーパーX1は、揚げ物などの過剰油分の吸収、高温の油の油こし等への利用を考慮して、200℃程度の高温の油分と接触しても、溶融・変性・変質することのない素材を用いて構成される。
【0014】
前記表裏面を構成するシート1,2のシート地は、不織布シート、薄葉紙、クレープ紙等であり、従来、キッチンペーパーに用いられているシート地の中から選択される。シート地がこれらの積層シートであってもよい。なお、表裏面シート1,2のシート地は同種とする必要はなく、適宜、必要に応じて異なるシート地を組み合わせた構成も採り得る。
【0015】
キッチンペーパーX1全体としての坪量は、柔軟性及び強度の点から15g/m2以上160g/m2以下であることが好ましい。更に好ましくは20g/m2以上50g/m2以下である。坪量が小さすぎると、強度不足となるとともにエンボスの効果が発現し難く、液保持性が低下する。他方、坪量が大きすぎると柔軟性が低下するとともに、適宜の大きさに折り曲げたりする時に剛度が大きく取り扱いにくくなる。
【0016】
各シート1,2の坪量(目付け)は、柔軟性及び強度の点から5g/m2以上45g/m2以下であることが好ましい。更に好ましくは10g/m2以上40g/m2以下である。坪量が小さすぎると、シートに皺が入り易くなり、また、エンボスe,e…を鮮明・明瞭に付与したとしても崩れやすくなり、液保持性が低下する。他方、坪量が大きすぎると柔軟性が低下したり、折り曲げたりする時に剛度が大きく取り扱いにくい。
【0017】
シート地として、薄様紙、クレープ紙等の紙素材を用いるのであれば、その原料パルプは、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ、などから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチドケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0018】
これらの原料パルプを、例えば、公知の抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、クレープ加工パート、サイズプレス、カレンダパート等を経るなどして、エンボス付与前のシート地とする。
抄紙に際しては、例えば、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。
【0019】
一方、シート地として、不織布シートを用いるのであれば、その原料繊維は、例えば、パルプ、コットン、レーヨン等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンとαオレフィンとからなる結晶性プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル樹脂;フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂から構成される熱可塑性繊維、生分解性合成繊維などから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0020】
前記熱可塑性繊維は、単一成分の繊維でもよく、複数の樹脂を適宜組み合わせて構成される複合繊維、例えば並列型、鞘芯型、偏心鞘芯型、三層以上の多層型、中空並列型、中鞘芯型、異形鞘芯型、海島型等で且つ低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成した構造の複合繊維とすることもできる。
吸水性を良好とするにはパルプ繊維を、柔らかさを良好とするためには熱可塑性繊維を用いるのがよい。好適には、天然繊維(好ましくはパルプ繊維)と熱可塑性繊維とを、90:10〜50:50の割合で混合した繊維を用いる。
【0021】
原料繊維からの不織布の製法としては、エアスルー、ヒートロールによるサーマルボンド、ニードルパンチ、スパンボンド、スパンレース、エアレイド等の製法が採用できるが、特に、スパンボンド、エアレイド、スパンレースが適する。
スパンレース法であれば、使用する繊維の繊維長は2〜100mm程とするのが好ましい。例えば、パルプ繊維の繊維長は、2mm以上10mm以下程度のものを使用することが好ましい。また、熱可塑性繊維の繊維長は20mm以上100mm以下であることが好ましい。更に好ましくは32mm以上70mm以下である。
用いる繊維の繊維太さは、1.0〜10.0dtex、好適には1.5〜7.5dtex、特に好適には2.0〜6.5dtexとする。繊維の太さが1.0dtex未満であると、乾燥時および湿潤時の引張強度が不足する。反対に10.0dtexを超えると剛性が高くなり、柔らかさに劣るようになる。
【0022】
他方、本形態のキッチンペーパーX1は、表面シートに炭素数6〜12かつ飽和のトリグリセリドを塗布又は含浸するのが望ましい。これにより表面シート1に一層の油の拡散性・吸収速度の向上効果が付与される。トリグリセリドの含有量としては、シート重量の1〜20重量%とするが好適である。1重量%未満では十分な効果が発現されないことがあり、20重量%を超えると親和性が良好となり、シート表面で油がとどまる一方で、シート間の空隙へ移動がかえって遅くなることがある。
トリグリセリドをシートに含有せしめる方法は、シート地に薬剤を内添、外添する既知の方法を用いることができる。例えば、内添するのであれば、原料パルプ、又は原料パルプスラリーに親油性油剤を添加したものを抄紙する方法を採ることができる。外添であれば、シート地の形成後に、親油性油剤を、散布、塗布、塗工する方法を採ることができる。
散布するのであれば、シートに対して薬剤を散布する既知のスプレー装置を用いることができ、塗工するのであれば、既知の塗工機又は印刷機を用いることができる。
【0023】
ここで、本形態においては、両シート1,2のエンボスの関係は、図及び先の説明から明らかなように、表裏面シート1,2のエンボスe,e…の天部t,t…同士が対面する所謂「Tip to Tip」の形態を採っており、接着剤3で対面する表裏面シート1,2のエンボス天部t,t同士を接着している。なお、天部tとは対面するシートからみて接近するように突出する凸部の頂面、底部とは対面するシートからみて離間するように凹む凹部の底面である。
シート又はシート地に対して行うエンボス加工は、例えば、一対のエンボスロール間に被エンボス加工シート(地)を通すことにより行うことができる。一対のエンボスロールは、両方とも金属ロールとすることもできるが、一方をゴムなどからなる弾性ロールとし、他方をエンボス付与凸部を有する金属ロールとするのが好ましい。弾性ロール及び金属ロールの組み合わせが好ましいのは、ロールのクリアランス調整の問題や、ロールに紙粉等が詰まるなどの不具合が生じないためである。
【0024】
一方、エンボス付与するにあたっては、一対のエンボスロールが両方又は一方のエンボスロールを加熱した状態で行うことができる。エンボスロールが加熱されていると、エンボスがより鮮明・明瞭に付与されるようになる。
加熱されているエンボスロールは、弾性ロールであってもよいが、金属ロールである方が、好ましい。これは、金属ロールの方が、熱伝導率がよく効果的に加熱による効果が発揮されるということのほか、金属ロールが加熱されていると、エンボスの形状に対応した形で、シート又はシート地に熱が与えられることになり、付与されるエンボスが、より鮮明・明瞭になるためである。
この場合、加熱ロールの表面温度は、一対のエンボスロールが、両方とも金属ロールであるか、弾性ロールと金属ロールとの組み合わせであるか、弾性ロール及び金属ロールのいずれが加熱されているか、などに関わらず、40〜140℃、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜100℃とされる。加熱温度が低すぎると、エンボスが鮮明になるとの効果が、十分に発揮されないおそれがある。他方、加熱温度が高すぎると、エネルギーロスとなるほか、シート又はシート地が焼き付くおそれや、製造されるシート又はシート地が固くなるおそれがある。
【0025】
エンボスの付与は、一対のエンボスロール間のエンボス圧が、5〜30kg/cm、好ましくは10〜25kg/cm、より好ましくは15〜20kg/cmとなるように行う。エンボス圧が低すぎると、エンボスが鮮明になるとの効果が、十分に発揮されないおそれがある。他方、エンボス圧が高すぎると、被加工原紙がちぎれてしまうおそれがある。
一対のエンボスロールを、弾性ロールと金属ロールとの組み合せとする場合、弾性ロールは、その表面のショア硬度(Shore hardness)が、40〜70であるのが好ましい。ショア硬度が低すぎると、つまり弾性ロール表面がやわらかすぎると、シート又はシート地が破断するおそれがある。他方、ショア硬度が高すぎると、つまり弾性ロール表面が硬すぎると、エンボスが入らなくなるおそれがある。
【0026】
他方、エンボスeの具体的形状は、適宜の設計事項である。図示の本形態のエンボスは、天部tの形状を平面視において正方形とし、隣接する天部間の凹部の形状が台形型のエンボスとしている。天部tの形状は、正方形のほか、菱形、円形、楕円形、多角形などでもよい。
また、天部t及び底部bは、平坦とするのが好ましい。天部tが平坦であると各シートを接着剤3により接着するのに適し、底部bが平坦であると後述する導通孔10を形成しやすい。天部tの面積は、0.1〜40mm2、より好ましくは0.25〜4.0mm2、特に好ましくは0.5〜2.0mm2である。天部tの面積が狭すぎる、シート相互の十分な接着強度を得ることができなくなる。他方、天部tの面積が広すぎると、エンボスによる吸収空間Sの容積が小さくなるため、十分な吸収能力を得ることができなくなる。
【0027】
エンボスe,e…の深さDも適宜の設計事項であるが、概ね0.1mm以上、好適には0.5mm以上、さらに望ましくは1.3mm以上とするのがよい。0.1mm未満であると十分な空隙が形成できない場合がある。
多数のエンボスe,e…により形成されるエンボスパターンもまた適宜の設計事項であり、審美性、機能性を考慮して従来既知のエンボスパターンを適宜採用できる。
【0028】
ここで、本形態のキッチンペーパーX1においては、特徴的に表面シート1のエンボスの底部bに、このエンボス底部bと裏面シート2との間に形成される空隙Sに連通する導通孔10が形成されている。
導通孔10,10…の数は具体的に限定されるものではなく、エンボスパターン等により適宜変更することができるが、シート一方面において1〜10mm2あたり1つの導通孔10を形成するようにするのがよい。好適には5〜7mm2あたり11つの導通孔10を形成するのがよい。
【0029】
また、本形態では、表面シート1のエンボスe,e…の全ての底部b,b…、すなわち隣接するエンボス天部t、t間には全て導通孔10を形成するようにしているが、一部のエンボスの底部のみに形成してもよい。さらに、導通孔10,10…の平面的な配置形態は適宜の配置形態を採ることができ、ランダムに配置してもよいし、規則性をもって配置してもよい。
また、本形態X1では表面シート1のエンボス底部bのみに導通孔を設けているが、裏面シート2のエンボスの底部にも導通孔を設けてもよい。ただし、液体の拭き取り、揚げ物の過剰油分の吸収用途などでは、一方面から液体を吸収し他方面に流出しないのが望ましいのが通常であることから、本形態に例示されるように表面シート1のみ(又は裏面シートのみ)に導通孔を形成するのがよい。
ここで、導通孔10は、不織布・紙の構造上必然的に形成される繊維間空隙ではなく、意図的にシート1を貫通するように設けてなる孔であり、その直径は、概ね0.1〜1.0mmφである。
導通孔10の形状は、本形態X1では、好ましい形態として、シート外面側から空隙側に向かって周面の傾斜が徐々にきつくなるようにして狭窄し、さらにその空隙側周縁10Eが空隙S内に向かって突出する形状をなしている。この導通孔10では、シート外面側の直径と空隙側の直径の差(図中φ1−φ2)が0.1〜0.9mm程度とするのがよい。かかる形状であると、シート外面側が広口であることにより瞬時に液体は導通孔に導かれ、さらにシート地よる液体吸収作用と狭窄による効果的な毛細管現象とにより空隙内へ液体が導かれる。そして、一旦空隙に導かれた液体は、前記突出する空隙側周縁10Eが所謂かえしとなって作用し、逆流するおそれが格段に小さい。
もちろん導通孔10は、この形状に限定されず、例えば、図2に示すようにシート外面と空隙側が同径とする形状や、図3に示す、空隙S側に突出する周縁を有さない、単純な狭窄形状も採ることが可能である。
【0030】
導通孔10,10…の設け方については、例えば、エンボス加工を行う一対のエンボスロールに導通孔形成用の突起部を設けて、エンボス加工を行うと同時に導通孔を形成することができる。例えば、上述の弾性ロールと金属ロールとの組み合わせであれば、金属ロールに形成したエンボス付与凸部間の凹部に鋭利な突起部を配することで導通孔10,10…を形成することができる。
また、エンボス付与前のシート地又はエンボス付与後のシートに対して、ニードル、エア、ジェット水流などで適宜の位置を打ち抜くことにより形成することも可能である。ただし、シート地に孔を形成したのちにエンボス加工を行う手順では、エンボス付与時におけるシートの破れのおそれが高くなるので、かかる製造手順は好ましい形態ではない。特に乾式エンボス加工を行う場合には適さない。好適には、エンボス加工の直後に、ニードル、エア、ジェット水流などで適宜の位置を打ち抜いて導通孔を形成するのがよい。特に、エンボス加工を湿式としてその直後にニードル、エア、ジェット水流などで打ち抜いて形成するのがよい。
【0031】
他方、各シート1,2の積層接着方法は、特に限定されず、既知の方法が用いられる。例えば、エンボス及び導通孔の付与後、又はエンボスe,e…及び導通孔10,10…を付与するとともに、シートに接着剤を散布、塗布又は塗工して貼り合せる方法を採ることができる。
接着剤は散布するのであれば、シートに対して液剤を散布する既知のスプレー装置を用いることができ、塗工するのであれば、既知の塗工機又は印刷機を用いることができる。
【0032】
シート間の接着の接着剤を用いるのであれば、その接着剤は、例えば、PVA(ポリビニールアルコール)、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、デンプン等が好適である。
なお、表面シートと裏面シートとの接着面積率、すなわちシート面積(片面)に対する接着部分の面積の割合は3〜20%の範囲とするのがよい。この範囲であれば、接着剤による硬質化の影響が小さくエンボス加工による柔らかさが十分に確保でき、また、接着部による油吸収性の阻害の影響も小さい。
【0033】
ここで、本形態のキッチンペーパーX1の強度については、横方向の湿潤引張強さを、縦方向(マシン方向)の湿潤引張強さ以下とし、かつその横方向の湿潤引張強さを120CN以上とするのが好ましく、150cN以上とするのがより好ましい。一般に、現在市販されている坪量10〜50g/m2のキッチンペーパーX1は、横方向の湿潤引張強さが、100cN程度であるものが多い。しかるに、本形態では、横方向の湿潤引張強さを高めることによって、天ぷらや揚げ物等に含まれる水分や油分を吸収した際においても、鮮明・明瞭に付与したエンボスが崩れことがなく、天ぷらや揚げ物等がべたついたり、貼り付いたりすることがなくなる。
キッチンペーパーX1の横方向の湿潤引張強さを高めるためには、例えば、原料パルプに界面活性剤等の湿潤紙力増強剤を添加することや、原料パルプの種類を選択し、あるいは原料パルプの叩解を調整するなどして、湿潤紙力増強剤の定着を高めること、などによることができる。ただし、過度に横方向の湿潤引張強さを高めると、シートの柔軟性などの阻害要因となるため、横方向の湿潤引張強さは、500cN以下とするのが好ましく、350cN以下とするのがより好ましい。一方、縦方向の湿潤引張強さは、適宜選定できるが、通常は横の湿潤引張強さの1倍以上である。なお、上述した湿潤強度は、実仕様形態で測定されるもので、例えば、2層構造の製品であれば、2層構造での湿潤強度を測定するものである。
【0034】
(その他の形態)
以上説明の形態X1では、表裏面シート1,2のみの二層構造であるが、本発明は、例えば、図4に示すように、三層以上の多層構造とすることができ、この場合、表裏面を構成するシート1,2間に中間層4としてパルプ層4を設けるのが好適である。なお、図示の形態では、表裏目シート1,2ともに導通孔10を設けている。その他の構成については、上形態X1と同様である。
パルプ層4は、パルプシートを表裏面シートの間に介在させることで形成できる。パルプ層4が設けられていると、液保持性が高まる。パルプ層4を設ける場合、それを構成するパルプは限定されないが、填料を含まない純パルプとするのが望ましく、特に、LBKPよりもNBKPを多く含むものを用いるのが望ましい。すなわち、NBKP:LBKPの割合を50:50〜100:0にする。好適には、70:30〜100:0とする。LBKPよりもNBKPのほうが、繊維太さが太い傾向にあるため、NBKPが多いほうが嵩高となる。そして、表裏面シートに付着した水分や油分の吸収速度が早くなるとともに、保持量も多くなる。特に、前記LBKPの繊維長を0.8〜1.8mm、繊維太さを1.0〜2.0dtexとし、かつ、前記NBKPの繊維長を2.5〜4.5mm、繊維太さを3.0〜4.0dtexとしたパルプを用いるのが好適である。NBKPの繊維長を2.5〜4.5mmとし、繊維太さを3.0〜4.0dtexとすると嵩高となるとともに吸水速度および吸油速度がより向上する。また、LBKPの繊維長を0.8〜1.8mm、繊維太さを1.0〜2.0dtexとすると、NBKP繊維と適度に交絡するとともにNBKP繊維の間隙を埋めるように配置され、柔らかさが良好なものとなるとともに水分、油分の保持力がより良好となる。
以上詳述の本発明のキッチンペーパーは、親油性油剤を含むシート面で油が十分にかつ迅速に拡散され、シート間の空隙に迅速に移動されて保持され、極めて油吸収性に優れる。
【実施例】
【0035】
本願発明の実施例、比較例、従来例(従来製品)について、油吸収量、吸油速度及び吸水量について試験した。
油吸収量は、まず、未使用乾燥状態のキッチンペーパーの重量を測定したのち、そのキッチンペーパーをバット上に敷き、その敷いたキッチンペーパー上に170℃のサラダ油(日清オイリオグループ株式会社製)で5分間揚げた揚げ物(市販冷凍コロッケ;イオン株式会社販売「TOPVALU 男爵コロッケ」)を取り上げて1分間載置した。その後に揚げ物を取り除きキッチンペーパーの重量を測定し、この測定値から先の未使用乾燥状態の重量を引いた値を油吸収量とした。なお、実施例については、導通孔が形成されているシートが上側になるようにバット上に敷き、揚げ物は導通孔が形成されているシート上に取り上げた。
吸油速度は、キッチンペーパーの導通孔が形成されているシート側表面に、1ccのサラダ油(日清オイリオグループ株式会社製)を滴下し、そのときの目視観察に基づいて3段階で評価した。評価基準は、滴下した油による光沢感(てかり)がシート面から消失した視識できるまでの時間が、1分以上のものを1(悪い)、30秒〜1分のものを2(普通)、30秒未満のものを3(良い)と評価した。
吸水量は、100mm四方に裁断した乾燥状態の紙試料の重量を測定したのち紙試料を純水中に十分に浸漬させ、次いで、純水中から引き上げて3◇0秒後の重量を測定し、その測定値から乾燥状態時の重量を引いた値を吸水量とした。
【0036】
各例にかかるキッチンペーパーは比較例3を除き、すべて表裏シートを接着剤で貼り合わせた二層構造とし、導通孔の形成以外については表裏面シートの設計差はないようにした。実施例、従来例における接着剤はPVAである。また、シート地は比較例3を除き表裏ともに薄葉紙とし、エンボス形状はすべての例で方形とした。
親油性油剤は、炭素数8〜10のトリグリセリドで構成される中鎖脂肪酸を用いた。
米量はJIS P 8124に基づき、湿潤引張強さは、JIS P 8135に基づいて測定した。
その他、各例のキッチンペーパーの構成及び試験結果は表1に示すとおりである。
【0037】
【表1】

【0038】
表1の結果からも明らかであるように、本発明の実施例は、比較例、従来例と比較して、吸油量が多いことが認められる。
吸油速度についても、本発明の実施例は、比較例3を除く比較例、従来例よりも優れることが認められる。なお、比較例3については、吸油速度は早いものの、油が空隙内で保持されていないせいか表面のべたつき感が認められた。
他方、吸水量については、不織布のみからなる比較例3は別格として、比較例、従来例を比較して劣ることはなく、吸水性の低下も認められない。
してみると、本願発明の実施例については、吸水性について従来例と同等又は優れる性能を有し、吸油性能については各段に優れた性能であることが示されたといえる。
以上、詳述のとおり、本発明によれば、油吸収性に優れるキッチンペーパーが提供される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明はキッチンペーパーのほか、油分の拭き取りを目的とするシート状物に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…表面シート、2…裏面シート、3…接着剤、4…パルプ層(中間層)、S…空隙、e…エンボス、t…エンボスの天部、X1…キッチンペーパー、10…導通孔、10E…k延出縁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び裏面を構成するシートのそれぞれがエンボス加工により天部及び底部が形成されており、
各シートの前記エンボスの天部同士が対面して位置され、かつ、それら対面する天部同士の全部又は一部が接着剤で接着されており、
前記一方のシートの前記エンボスの底部のみに、このエンボス底部と対面するシートとの間に形成される空隙に連通する導通孔が前記底部の中央部のみに形成されている、
ことを特徴とするキッチンペーパー。
【請求項2】
表面を構成するシートと裏面を構成するシートとが、接着面積率3〜20%で接着されている、請求項1記載のキッチンペーパー。
【請求項3】
表面を構成するシートに、炭素数6〜12かつ飽和のトリグリセリドが塗布又は含浸されている、請求項1または2記載のキッチンペーパー。
【請求項4】
前記導通孔は、シート外面側から空隙側に向かって狭窄している、請求項1〜3の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【請求項5】
前記導通孔の空隙側周縁が、空隙内に突出している、請求項1〜4の何れか1項に記載のキッチンペーパー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−31451(P2010−31451A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253325(P2009−253325)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【分割の表示】特願2006−324892(P2006−324892)の分割
【原出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】