説明

キトサン含有組成物

【課題】キトサンの不快味、不快臭及び/又は沈殿の問題を改善した、新たなキトサン配合組成物の提供。
【解決手段】キトサンに対して、(1)トレハロース、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット及びキシリトールから選択される1以上及び/又は(2)グリシン、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、アデニル酸、リボヌクレオチドカルシウム及びリボヌクレオチドナトリウムから選択される1以上、並びに(3)キサンタンガム、ジェランガム、カラヤガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、ペクチン、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ファーセレラン、タマリンド種子多糖類及び寒天から選択される1以上を含有する、キトサン含有組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、キトサンを含有する組成物に関する。キトサンは、ある種の栄養素の過剰摂取に起因する病気や状態の予防又は治療に有効であるといわれており、本発明の組成物は、そのような病気又は状態の予防又は治療のための食品(特に飲料)の形態とすることができる。
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
【0002】
キトサンは、食物繊維の一種であり、摂取されると種々の優れた効果があるといわれている。例えば、特許第2667351号においては、キトサンとアスコルビン酸ないしその塩類との混合物を有効成分として配合する剤が、食餌中に含まれる脂質の消化吸収を阻害する効果のあるものとして提案されている。また、キトサンの血清コレステロール濃度上昇抑制効果についても検討されている(前崎:キトサンの生理機能と食品への応用、FOOD Style 21,67−71(1998)等)。更に最近では、キトサンの血清尿酸値上昇抑制効果又は血清尿酸値改善効果についても研究が進められている(特願平11-344708)。キトサンはこのように多くの優れた作用を有するので、キトサンを食品に配合することが試みられてきた。
【0003】
一方、キトサンは、特有の臭い(生臭さ、等)、テクスチャー(ざらつき感、等)を有し、また、溶解すると不快な味(苦味、渋味(収斂味ということもある)、えぐ味、等)を呈する。そのため、種々の食しやすくする工夫が検討されてきた。例えば、特開平5-236888は、無機酸のカルシウム塩及び/又は硫酸塩を添加することによりキトサン由来の収斂味、苦味の発現を抑えた果肉様ゼリーを開示する。また、特開平8-208709は易溶性のキトサンに、柿の葉の粉末、あるいは柿の葉の抽出エキスを添加することを特徴とするキトサンのえぐ味の除去方法を開示する。しかしながらこれらの方法によっても未だキトサンの味、臭い、テクスチャーの充分な改善には至っておらず、そのため、実用化されていなかったり、また食品中のキトサンの配合比を低くせざるを得なかった。そしてこれらの方法が応用できる食品は限られているため、より手軽に食することができる他の形態のキトサン配合食品の開発が望まれていた。
【0004】
更に、キトサンは通常は酸性溶液には溶解するが、中性〜アルカリ性の溶液ではほとんど溶解せず、キトサンを中性付近か又はそれ以上のpHの飲料に配合した場合、沈殿したり、飲用する際にキトサン自身のざらつきが特に気になるという問題があった。これもキトサンの飲料への配合比を高めることができない一因となっていた。また、沈殿してしまうために配合されたキトサンを残らず摂取することが困難となっていた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、キトサンに対し一定量のトレハロース、グリシン、グルコン酸ナトリウムを配合することにより、キトサン
特有の苦味、渋味、臭い、後味がほとんど気にならなくなることを見出した。また、キトサンに対して、一定量のキサンタンガム又はペクチンを配合することにより、キトサン特有の苦味、渋味、臭い、後味が抑えられ、かつ飲料中でもキトサンが沈殿しにくくなることを見出し、本発明を成すに至った。
【0006】
即ち、本発明は、キトサン1重量部に対して、(1)トレハロース、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット及びキシリトールから選択される1以上の糖アルコールの0.005〜50部(好ましくは0.05〜5部)及び/又は(2)グリシン、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、アデニル酸、リボヌクレオチドカルシウム及びリボヌクレオチドナトリウムから選択される1以上の呈味化合物の0.002〜20部(好ましくは0.02〜2部)を含有する、キトサン含有組成物を提供する。この組成物の好ましい態様は、(1)トレハロース並びに(2)グリシン及びグルコン酸ナトリウムから選択される1以上を、各々上記のキトサン1重量部に対する割合で含有するものである。トレハロース等の糖アルコールは、キトサンに対しては主として、苦味、渋味を遮蔽するマスキング効果と、そのような不快味を和らげる抑制効果とを発揮していると考えられる。また、グリシン等の呈味化合物は、キトサンに対しては主として、臭いのマスキング効果と、独特の後味のマスキング効果を発揮しているものと考えられる。
【0007】
本発明は更に、キトサン1重量部に対して、キサンタンガム、ジェランガム、カラヤガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、ペクチン、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ファーセレラン、タマリンド種子多糖類及び寒天から選択される1以上の増粘多糖類等の0.003〜30部(好ましくは0.03〜3部、より好ましくは0.1〜3部、更に好ましくは0.2〜2部、最も好ましくは0.22〜2部)を含有する、キトサン含有組成物を提供する。この組成物の好ましい態様は、キサンタンガム及びペクチンから選択される1以上を、上記のキトサン1重量部に対する割合で含有するものである。増粘多糖類等は、主としてキトサン粒子表面に皮膜を形成することによって、キトサンの苦味、渋味、臭い、後味を抑えていると考えられ、更に、分散媒に比重と粘度とを与えて、キトサンの分散安定性に寄与すると考えられる。増粘多糖類等を多く配合すると、組成物が飲料の形態である場合、及び組成物が飲料を得るための顆粒の形態であって、この顆粒を液体に溶解又は分散して飲料を得た場合、粘度が高くなってキトサンの分散安定性には好ましいが、反面、増粘多糖類等による粉っぽさが強くなり、味や舌触りの点では劣ることがある。従って、増粘多糖類等の配合比の上限はこのような観点から設計されうる。
【0008】
本発明のように、これらのキトサンに対する重量比を厳密に特定することによって、食品として好ましくないキトサンの苦味、渋味、生臭さ、後味、分散安定性を、総合的に、顕著に改善することができる。なお、本発明には、食品として用いることのできる従来のトレハロース等の糖アルコール、グリシン等の呈味化合物及びキサンタンガム等の増粘多糖類等を使用することができる。
【0009】
糖アルコール及び/又は呈味化合物と、増粘多糖類等とは、組み合わせて用いることができ、キトサンの苦味、渋味、臭い、後味及び分散安定性を総合的に改善するために好ましい。従って、本発明はまた、キトサン1重量部に対して、(1)1以上の糖アルコール及び/又は(2)1以上の呈味化合物、更に(3)1以上の増粘多糖類を、各々上述のキトサン1重量部に対する割合で含有するキトサン含有組成物をも提供する。この組成物の好ましい態様は、トレハロース、グリシン及びグルコン酸ナトリウムから選択される1以上、並びにキサンタンガム及びペクチンから選択される1以上を、各々上述のキトサン1重量部に対する割合で含有するものである。
【0010】
本発明のキトサン含有組成物は、他に、崩壊剤又は崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤又は溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤等の種々の賦形剤を含んでもよい。また、本発明の組成物は、通常の手段を用いて、固形剤(例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等)、液体の剤(例えば、液剤、シロップ剤)、食品又は飲料の形態とすることができる。特に好ましい形態は、顆粒(特に、液体に溶解又は分散して飲料を得るための顆粒)及び飲料である。なお、本明細書で飲料というときは、茶、紅茶、ココア、コーヒー、清涼飲料、健康飲料、スポーツドリンク及びニアウォータを含み、更に液状の食品、例えばみそ汁、スープ、シチュー、カレー、ソース及びしょうゆを含む。
【0011】
飲料を得るための顆粒とする際は、目的の飲料に応じて、更に種々の食品抽出物(例えば、茶エキス、チキンエキス)、乾燥食品粉末(例えば、コーンパウダー、パセリパウダー)、ビタミン類、鉄、カルシウム、及び無機塩類等を配合することができる。
【0012】
キトサンは、一般的には、カニ、エビ、オキアミ等の甲殻類の甲皮、カブトムシ、バッタ等の昆虫類の甲皮、イカの骨等を脱カルシウム処理し、除タンパク質処理し、そして得られたキチンを脱アセチル化処理して得ることができる。また、キノコ類、微生物からも得ることができる。本発明には、ヒトに対する安全性が確保されている限り、いずれの原料から得られたキトサンをも用いることができるが、食品として摂取した場合の安全性が明らかであり、経済的にも優れていると考えられる点で、カニ、エビ等の甲殻類の甲皮を原料としたキトサンが好ましい。このようなキトサンは水産物特有の生臭さを無視することができない場合があるが、本発明の食品においては、そのような臭いが改善されるため、好適なキトサンの一つとして用いることができる。更に、本発明に使用されるキトサンは、ヒトが経口摂取した場合の安全性が明らかにされており、食品添加物等として実績があるものが好ましく、連続的に摂取した場合の安全性が明らかであるものがより好ましい。
【0013】
本発明に用いることのできるキトサンは、ヒトの血清尿酸値改善作用を有するものであることが好ましい。高尿酸血症は、食習慣がその発症・進行に関与する生活習慣病とされており、高尿酸血症の状態が続くと、痛風を発症するリスクが高くなる。痛風は体液中で飽和した尿酸塩を原因として発症する急性関節炎を主徴とする疾患である。痛風は、尿路結石、腎障害、高血圧、脂質・糖質代謝異常、虚血性心疾患等を併発しやすい。高尿酸血症は、多くの場合、しばらくは無症状であるため、高尿酸血症からの痛風の予防のための対策が必要な者の多くが無自覚のまま、又は高尿酸血症を自覚していても実際は無処置のまま生活していると考えられる。このような者は、本発明の血清尿酸値改善作用を有するキトサン配合組成物を、例えば飲料の形態として適宜摂取することにより、無理なく血清尿酸レベルの改善を図ることができる。従って、血清尿酸値改善作用のあるキトサンを配合した食品は、本発明の特に好ましい実施態様である。
【0014】
キトサンに関し、ラットを用いたコレステロール上昇抑制試験で、平均分子量7000にまで食品用中性プロテアーゼ酵素分解し、水溶性にした低分子キトサンにはコレステロール上昇抑制効果は認められなかったとの報告、及び脱アセチル化度の低いキトサンではコレステロール低減作用が弱まるとの報告(前崎:キトサンの生理機能と食品への応用、FOOD
Style,67−71(1998))がある。同様にキトサンの分子量及び/又はアセチル化度が血清尿酸値に影響を与えるとすると、本発明に用いられるキトサンは、ある程度の高分子であり、一定以上の脱アセチル化度を有することが望ましい。具体的には、本発明に用いられるキトサンの平均分子量は、10万以上が好ましく、50万以上がより好ましく、100万以上が更に好ましいと考えられる。脱アセチル化度は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましいと考えられる。なお、本明細書で、キトサンの分子量というときは、特別の場合を除き、キトサンの平均分子量をいい、水系GPCカラムを
用いたGPC法にて測定した値に基づく。検量線の作成にはプルラン等の適当な分子量標準を用いる。また、本明細書で脱アセチル化度というときは、特に示さない限り、ポリビニル硫酸カリウム溶液によるコロイド滴定法により得られた値に基づく。
【0015】
本発明のキトサン配合組成物においては、キトサンの配合量は特に制限されるものではない。飲料若しくは液状の食品、又は液体に溶解又は分散して飲料等を作るための顆粒の形態とする際は、一般的には、飲料又は食品100g当たりでは、約0.01〜約50gのキトサンが、好ましくは約0.1〜約25gのキトサンが、より好ましくは約1〜約10gのキトサンが配合されるようにする。キトサンの配合量は、食品等の摂取される目的に応じて設計することもできる。例えば、血清尿酸値改善のための食品等とする場合は、1日当たり約0.1〜約100g、好ましくは約0.25〜約10g、更に好ましくは約1g〜約5gで摂取することができるように配合する。
【0016】
本発明はまた、キトサンの苦味、渋味、臭い、後味が改善されたキトサン含有組成物の製造方法を提供する。即ち、本発明は、キトサン粒子表面が、キサンタンガム、ジェランガム、カラヤガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、ペクチン、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ファーセレラン、タマリンド種子多糖類及び寒天から選択される1以上を含むための工程を含む、キトサン含有組成物の製造方法を提供する。
【0017】
本発明の方法においては、キトサンと増粘多糖類等とは、単に粉末状態のまま混合され、組成物とされるのではなく、キトサン粒子表面の全部又は一部が、増粘多糖類等で被覆されるように造粒される。例えば、キトサン粉末を気体で流動化させながら、増粘多糖類等を含む被覆剤の溶液を噴霧し、乾燥することによっても、キトサン粒子表面の全部又は一部が増粘多糖類等で被覆された造粒物を得ることができる。あるいは、キトサン粉末と増粘多糖類等とを気体で流動化させながら水を噴霧することにより、増粘多糖類等の一部又は全部が水に溶解し、増粘多糖類等でキトサン粒子表面の全部又は一部が被覆された造粒物を得ることができる。また、キトサンと増粘多糖類等とを水分の含有する状態、つまり、スラリー状、ペースト状、ゲル状、ケーク状で混合した後、造粒・乾燥することもできる。この方法でも、キトサン粒子表面に増粘多糖類等の一部が担持された造粒物が形成されうる。
【0018】
前記の製造方法において、被覆されるための工程が、キトサン1重量部、及びキサンタンガム、ジェランガム、カラヤガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、ペクチン、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ファーセレラン、タマリンド種子多糖類及び寒天から選択される1以上の0.003〜30部(好ましくは0.03〜3部)を水分の存在する状態で混合すること、そして混合物を乾燥することを含む工程を含む、請求項15記載のキトサン含有組成物の製造方法は、本発明の方法の好ましい一態様である。
【0019】
系に含有させる水分量は、適宜選択されるが、流動層造粒法においては一般的には、キトサンを含む混合物の総重量の約5〜50重量%であることが好ましく、約10〜25重量%がより好ましい。噴霧乾燥造粒法においては一般的には、キトサンを含む混合物の総重量の約30重量%以上であることが好ましく、約50重量%以上がより好ましい。
【0020】
混合、造粒又は乾燥のためには、従来技術を使用することができる。例えば流動層造粒法においては、混合、造粒及び乾燥の操作が同時に行える従来の流動層造粒機を用いることができる。また、原材料をスラリー状に混合する場合は、造粒・乾燥は、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、アルコール沈澱法等によることができる。また、他の場合には、棚段式乾燥法、ベルト乾燥法、流動床乾燥法、凍結乾燥法、マイクロウエーブ乾燥法等によること
ができる。
【0021】
得られたキトサン含有造粒物は、必要に応じ、ふるい分け、粉砕等を行い、好ましい大きさの粒子とすることができる。
【0022】
本発明を以下の実施例により更に詳しく説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。本発明の方法を種々変更、修飾して使用することが当業者には可能であり、これらも本発明の範囲に含まれる。
【0023】
[実施例]
実施例においては、キトサンは、次のものを使用した;粉末キトサン「キトサミン」、日本化薬フードテクノ株式会社製。分子量約100万以上、回転粘度約273mPa・s(300mlビーカーに乾燥キトサンパウダーを0.6gを正確に採取し、溶解液(ジメチルアセトアミド:塩化リチウムの100:8溶液)300gを加えて充分撹拌溶解し、得られた溶液を、30℃±0.5℃にてB型粘度計を用いて30回転で測定)、脱アセチル化度約89%。又は油脂コーティングキトサン(キトサンの油脂コーティング品、上記のキトサンを70%含む)。また、トレハロース、グリシン、グルコン酸ナトリウム、ペクチン及びキサンタンガムは、何れも食品添加用として市販されているものを使用した。
【0024】
実施例1
下表の配合でキトサン含有顆粒を製造した。
【0025】
【表1】

【0026】
製造した顆粒は、お茶、スープ、みそ汁等の飲料用顆粒、カレーなどのレトルト食品等に配合することができる。
【0027】
実施例2(トレハロースを配合したキトサン含有組成物の製造)
下表の配合で飲料用顆粒を製造した。
【0028】
【表2】

【0029】
製造した顆粒から、キトサンの苦味、渋味が抑えられた飲用しやすいほうじ茶、緑茶及びスープを得ることができた。
【0030】
実施例3(トレハロース及びペクチンを配合したキトサン含有組成物の製造)
下表の配合で飲料用顆粒を製造した。
【0031】
【表3】

【0032】
製造した顆粒から、キトサンの苦味、渋味、ざらつきが抑えられ、かつ沈殿物の少ないほうじ茶及びコーンスープを得ることができた。
【0033】
実施例4(トレハロース、グリシン、グルコン酸ナトリウム及びペクチンを配合したキトサン含有組成物の製造)
下表の配合で飲料用顆粒を製造した。
【0034】
【表4】

【0035】
製造した顆粒から、キトサンの苦味、渋味、臭い、後味、ざらつきが抑えられ、かつ沈殿物の少ないほうじ茶及びコーンスープを得ることができた。
【0036】
実施例5(トレハロース、グリシン、グルコン酸ナトリウム及びキサンタンガムを配合したキトサン含有組成物の製造)
(1)下表の配合で飲料用顆粒を製造した。
【0037】
【表5】

【0038】
(2)製造工程
通常の流動層造粒の手順に従った。即ち、計量した原材料を20メッシュふるいにかけ、
流動層原料容器に入れ、温風送入により流動混合し、これに水を噴霧して造粒を行った。噴霧終了後、流動乾燥して造粒物を得た。これに香料、第三リン酸カルシウムを添加、混合した後、16メッシュふるいにかけ、所望の顆粒を得た。
【0039】
(3)結果
製造した顆粒の各々を水又は湯に投じたところ、顆粒は溶液中に均一に分散し、沈殿物のないほうじ茶、スープ及びコーンスープを得ることができた。
【0040】
実施例6(パネラーによる評価)
実施例5のキトサン配合スープ用顆粒を、成人の男性14名及び女性5からなるパネラーにより評価した。
【0041】
結果を下表及び図1に示す。
【0042】
【表6】

【0043】
本顆粒により得られたキトサン配合スープは、キトサン特有の苦味、渋味、後味とも改善されていた。特に、苦味がよく抑えられていた。大多数のパネラーが、飲みやすいと評価した。
【0044】
また、この評価において前記各項目の他に感想を求めたところ、おいしい、毎日飲めそう、日常の食事に取り入れやすそう、無理なく無駄なく飲めそう等の感想が得られた。また、我慢することなく飲めそう、健康に気を付けた食事ができそう等の意見が得られた。
【0045】
実施例7(製造方法の比較)
下表の配合で、スープ用キトサン含有顆粒を製造した。
【0046】
【表7】

【0047】
配合Aは、実施例5に記載したのと同様の工程で造粒した。配合Bは、キトサン以外の原料を造粒、乾燥した後、キトサンを加え、混合、整粒した。
【0048】
配合Aで得られた顆粒を用いたスープと、配合Bのものとを比較したところ、配合Bのものはキトサンの苦味、渋味、後味を配合Aより強く感じた。キトサンがキサンタンガムにより充分被覆されていないと考えられた。
【発明の効果】
【0049】
(1)本発明によれば、キトサン特有の不快味、臭い、後味の改善されたキトサン含有組成物が提供される。
【0050】
(2)特に、増粘多糖類等が配合された組成物は、キトサンの分散安定性を高め、沈殿を生じにくくする。
【0051】
(3)本発明の組成物によればキトサンが無理なく、無駄なく摂取できる。また、継続して摂取することができ、ある種の病気又は状態の予防又は治療にとって有用である。
【0052】
(4)特に、キトサンが血清尿酸値改善作用のあるものである本発明のキトサン含有組成物は、高尿酸血症からの痛風の予防のための対策が必要な者が適宜摂取することにより、無理なく血清尿酸レベルの改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】キトサン配合スープを、パネラーにより評価した結果を表す(実施例6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キトサン1重量部に対して、トレハロース、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット及びキシリトールから選択される1以上の0.005〜50部を含有する、キトサン含有組成物。
【請求項2】
キトサン1重量部に対して、トレハロース0.005〜50部を含有する、請求項1に記載のキトサン含有組成物。
【請求項3】
更に、キトサン1重量部に対して、グリシン、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、アデニル酸、リボヌクレオチドカルシウム及びリボヌクレオチドナトリウムから選択される1以上の0.002〜20部を含有する、請求項1又は2に記載のキトサン含有組成物。
【請求項4】
キトサン1重量部に対して、(1)トレハロース0.005〜50部及び(2)グリシン及びグルコン酸ナトリウムから選択される1以上の0.002〜20部を含有する、請求項3に記載のキトサン含有組成物。
【請求項5】
更に、キトサン1重量部に対して、キサンタンガム、ジェランガム、カラヤガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、ペクチン、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、シクロデキストリン、ファーセレラン、タマリンド種子多糖類及び寒天から選択される1以上の0.003〜30部を含有する、請求項1又は2に記載のキトサン含有組成物。
【請求項6】
キトサン1重量部に対して、キサンタンガム及びペクチンから選択される1以上の0.003〜30部を含有する、請求項5に記載のキトサン含有組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−182446(P2007−182446A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32136(P2007−32136)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【分割の表示】特願2000−132414(P2000−132414)の分割
【原出願日】平成12年5月1日(2000.5.1)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】