説明

キナゾリノン化合物

本発明は、キナゾリノン化合物、それらの調製のための方法、およびパーキンソン病(PD)治療のための薬学的剤としてのそれらの使用に関する。キナゾリノン化合物は一般式(I)の化合物である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、キナゾリノン化合物、それらの調製のための方法、およびパーキンソン病(PD)治療のための薬学的剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
PDは、動きの遅さ(運動緩徐)、硬直および/または振戦ならびに姿勢不安定によって症状が特徴づけられる進行性の病気である。PDの患者は、脳の黒質の慢性かつ進行性の変性による、神経伝達物質ドーパミンの欠乏を有する。
【0003】
PDの原因は不明であるが、ドーパミンの欠乏はこの疾患の対症療法としてのドーパミン置換剤の広範な使用を引き起こしている。この治療のために最も一般的に処方される薬物は、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-ドーパ)およびドーパミンアゴニストである。
【0004】
これらの対症療法は、PDを患っている患者の生活の質を高める上で成功している。しかし、そのようなドーパミン置換療法は、特に長期治療において著しい制限がある。これらの制限には、「オン-オフ」現象につながる治療の有効性の変動および異常な不随意運動として現れる副作用の発現が含まれる。
【0005】
L-ドーパの他に、これらの運動症状を緩和するための最も一般的な医薬は、ロチゴチン、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ロピニロール、カベルゴリン、ペルゴリド、アポモルフィンおよびリスリドなどのドーパミンアゴニスト、抗コリン作用剤、N-メチルd-アスパラギン酸(NMDA)拮抗薬、β遮断薬ならびにモノアミンオキシダーゼB(MAO-B)阻害剤のセレゲリン(selegeline)およびカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤エンタカポンである。
【0006】
これらの医薬の大半は、ドーパミン作動性および/またはコリン作動性シグナルカスケードに介入し、運動障害に症候的に影響を与える。
【0007】
上記の対症療法はPDの患者の生活を向上させることができ、多くの場合、ある期間ほぼ正常にまで機能を回復する一方、それぞれが副作用を有し、疾患の治癒を提供する治療はない。時間が経ち、病気が進行すると共に、薬物の投与は、患者の症状に基づいたニーズを最も良く満たすよう調節しなければならない。
【発明の概要】
【0008】
概要
本発明は、神経学的に活性であり、かつPDの治療に使用できる、キナゾリン化合物を提供する。
【0009】
特許公報番号 WO2005/095360は、1位および3位に窒素原子、4位にカルボキシ基ならびに8位にヒドロキシ基を有し、両方の環が芳香族である、2つの縮合6員環を有する複素環式化合物を記載している。これらの化合物は、特に神経学的状態、より具体的にはアルツハイマー病(AD)などの神経変性状態の治療のための薬学的剤として有用である。
【0010】
本発明者らは、1位および3位に窒素原子、4位にカルボキシ基、8位にヒドロキシ基ならびに2位および3位に置換基を有する、2つの縮合6員環を有する複素環式化合物を開発した。
【0011】
これらの化合物は、特許公報番号2005/095360の一般的な範囲内に入るが、その中で具体的には開示されていない。
【0012】
いかなる理論にも縛られたくはないが、2位および3位の置換基の性質は、PDの治療においてそれらの化合物が有用となるのに重要であると考えられる。特に、これらの位置の置換基は生物学的に利用可能なイオン鉄(Fe)の優れた管理を提供するために確立され、イオン鉄は(PD)に関連するヒト脳の領域-黒質(SN)内において高濃度で確認された。PDにおける未確認の誘引に応答して、SNのニューロンにおけるFeレベルが大幅に上昇する。Feのこの上昇は、有害な活性酸素種(ROS)の発生に関連していると考えられ、PDの主要な神経病理学的特徴である、SNのドーパミン産生細胞の損失に寄与する因子である可能性がある。本発明者らは、本発明の化合物は特に、主にFeと結合し、神経細胞によるその過剰な取り込みを防ぐよう作用し、その細胞内濃度を下げることが可能であると確認した。
【0013】
本発明の化合物の作用は、ADなどの他の神経疾患の治療とは異なる。ADに用いる化合物は、イオン金属である銅(Cu)および亜鉛(Zn)と主に結合するよう設計されている。これらの特定の金属は、ADの病理の特徴であるタンパク質βアミロイド(Aβ)の斑沈着内に密接に結合していることが明らかにされている。CuおよびZnの捕捉および除去により、それらがAβと相互作用する可能性が減り、タンパク質の毒性および斑を形成する傾向が阻害されると考えられる。ADの治療のための化合物は、Cuおよび/またはZnを神経細胞へ輸送する機能を示すことがさらに明らかにされている。ADでは、そのような輸送された金属は、アルツハイマー斑で見られるような、切断されてAβを生成する親分子APPの処理に影響し(低下させ)、Aβを分解する酵素の発現を促進することが明らかにされている。本発明の化合物は代わりに、優先的に細胞の金属取り込みを促進しないように選択されている。
【0014】
一つの局面において、下記一般式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩が提供される。

式中、
R1およびR2の少なくとも1つはH以外であるという条件で、R1およびR2は、H、置換されていてもよいC1-6アルキル、置換されていてもよいC3-6シクロアルキル、および置換されていてもよいC2-6アルキニルより独立して選択されるか;または
R1およびR2は、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロシクリルを形成し、該5員もしくは6員のヘテロシクリルは、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよく;かつ
R3は、置換されていてもよいC1-6アルキルおよび置換されていてもよいC3-6シクロアルキルより選択され;
但し、
(a)R1およびR2がメチルである場合、R3がCH2CH(CH3)2ではなく;かつ
(b)R1がHであり、かつR2がメチルである場合、R3がメチル、プロピルおよびシクロプロピルではない。
【0015】
本発明は、以下の段階を含む、上記で定義した式Iの化合物の調製のための方法も提供する:
(a)脱離基の供給源の存在下で下記式IIIの化合物を環化して下記式IVの化合物を調製する段階であって、

式中、
R3は上記で定義した通りであり;かつ
R8はHまたは保護基であり;

式中、
R3およびR8は上記で定義した通りであり;かつ
LGは脱離基である、段階;ならびに
(b)該式IVの化合物をNR1R2の供給源でアミノ化し、かつR8が保護基である場合には該式IVの化合物を脱保護する段階。
【0016】
または、本発明は、以下の段階を含む、上記で定義した式Iの化合物の調製のための方法も提供する:
(i)NR3の供給源の存在下で下記式Vの化合物を環化して下記式VIの化合物を調製する段階であって、

式中、
R3は上記で定義した通りであり;かつ
LGは脱離基であり;

式中、
R3およびLGは上記で定義した通りである、段階;ならびに
(ii)該式VIの化合物を、R1およびR2が上記で定義した通りであるNR1R2の供給源でアミノ化する段階。
【0017】
本発明は、上記で定義した式Iの化合物の薬学的剤、好ましくは神経治療剤または神経保護剤、より好ましくはパーキンソン病の治療のための剤としての使用をさらに提供する。
【0018】
式Iの化合物は、薬学的に許容される担体と一緒に薬学的組成物の形で都合よく投与される。
【0019】
第二の局面において、上記で定義した式Iの化合物および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物が提供される。
【0020】
第三の局面において、下記一般式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与する段階を含む、パーキンソン病の治療のための方法が提供される。

式中、
R1およびR2の少なくとも1つはH以外であるという条件で、R1およびR2は、H、置換されていてもよいC1-6アルキル、および置換されていてもよいC2-6アルキニルより独立して選択されか;または
R1およびR2は、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロシクリルを形成し、該5員もしくは6員のヘテロシクリルは、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよく;かつ
R3は、置換されていてもよいC1-6アルキルおよび置換されていてもよいC3-6シクロアルキルより選択される。
【0021】
上記で定義した式IIの化合物のパーキンソン病の治療のための使用も提供される。
【0022】
上記で定義した式IIの化合物のパーキンソン病の治療のための医薬の製造における使用もさらに提供される。
【0023】
パーキンソン病の治療において用いるための上記で定義した式IIの化合物もさらに提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
本発明は、パーキンソン病の治療のために有用な神経学的に活性な化合物に関する。
【0025】
本発明は、下記一般式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。

式中、
R1およびR2の少なくとも1つはH以外であるという条件で、R1およびR2は、H、置換されていてもよいC1-6アルキル、置換されていてもよいC3-6シクロアルキル、および置換されていてもよいC2-6アルキニルより独立して選択されるか;または
R1およびR2は、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロシクリルを形成し、該5員もしくは6員のヘテロシクリルは、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよく;かつ
R3は、置換されていてもよいC1-6アルキルおよび置換されていてもよいC3-6シクロアルキルより選択され;
但し、
(a)R1およびR2がメチルである場合、R3がCH2CH(CH3)2ではなく;かつ
(b)R1がHであり、かつR2がメチルである場合、R3が、メチル、プロピルおよびシクロプロピルではない。
【0026】
一つの態様において、上記で定義した式Iの化合物が提供され、さらに
(c)R1およびR2がメチルであり、かつR3がメチル、エチルまたはメチレンシクロプロピルである場合、式Iの薬学的に許容される塩は除外される
ことを条件とする。
【0027】
一つの態様において、上記で定義した式Iの化合物が提供され、さらに
(c)R1およびR2がメチルである場合、R3が、メチル、エチルおよびメチレンシクロプロピルではない
ことを条件とする。
【0028】
別の態様において、上記で定義した式Iの化合物が提供され、但し、
(d)R1がHであり、かつR2がエチルである場合、R3がエチルではなく;かつ
(e)R1がHであり、かつR2がエチルである場合、R3がC1-2アルキルではない。
【0029】
任意の置換基は好ましくは、C1-4アルキル、置換されていてもよいアリール、ハロ、置換されていてもよいC3-6シクロアルキル、ならびにNおよびOより選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換されていてもよい5員または6員のヘテロシクリルより選択される。
【0030】
好ましくは、R3は、C3-6シクロアルキルで置換されているメチル、またはNおよびOより選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換されていてもよい5員または6員のヘテロシクリルで置換されているメチル;置換C2-6アルキル、および置換されていてもよいC3-6シクロアルキルより選択される。
【0031】
好ましくは、R1はHであり、かつR2は、C3-6アルキル、置換C1-6アルキル、置換されていてもよいC1-6アルキル、および置換されていてもよいC2-6アルキニルより選択される。
【0032】
好ましくは、R1はC1-6アルキルであり、かつR2は、C2-6アルキル、C1-6置換アルキル、およびC2-6アルキニルより選択される。
【0033】
好ましくは、R1およびR2は、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい5員または6員のヘテロシクリルを形成し、該5員または6員のヘテロシクリルは、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0034】
一つの態様において、式Iの化合物は、下記式Iaまたはその薬学的に許容される塩を有する。

式中、
R1aはHおよびC1-4アルキルより選択され;
R2aは、C1-4アルキル、C2-6アルキニル、および置換されていてもよいアリールで置換されているC1-4アルキルより選択されるか;または
R1aおよびR2aは、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロシクリルを形成し、該5員もしくは6員のヘテロシクリルは、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよく;かつ
R3aはC1-4アルキルであり、
但し、R1aおよびR2aがメチルである場合、R3aがCH2CH(CH3)2ではない。
【0035】
別の態様において、式Iの化合物は上記で定義した式Iaを有し、但し、R1aがHであり、かつR2aがエチルである場合、R3aがC1-2アルキルではないことを条件とする。
【0036】
好ましくは、R2aは、C3-4アルキル、C2-6アルキニル、および置換されていてもよいアリールで置換されているC1-4アルキルより選択される。
【0037】
好ましくは、R1aおよびR2aは、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい飽和した5員または6員のヘテロシクリルを形成し、該5員または6員のヘテロシクリルは、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0038】
式Iaの化合物の代表的な例は、以下の通りであるか、またはその薬学的に許容される塩である。





【0039】
式Iaの化合物の好ましい例には、F4495、F4486およびF4496、より好ましくはF4496が含まれる。
【0040】
別の態様において、式Iの化合物は、下記式Ibまたはその薬学的に許容される塩を有する。

式中、
R1およびR2は上記で定義した通りであり;かつ
R3bは、置換されていてもよいC3-6シクロアルキルである。
【0041】
好ましくは、R1およびR2はC1-4アルキルより独立して選択される。
【0042】
さらなる態様において、式Iの化合物は、下記式Icまたはその薬学的に許容される塩を有する。

式中、
R1cはHおよびC1-4アルキルより選択され;
R2cは、C1-4アルキル、C3-6シクロアルキル、置換されていてもよいアリールで置換されているメチル、およびC2-4アルキニルより選択されるか;または
R1cおよびR2cは、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロシクリルを形成し、該5員もしくは6員のヘテロシクリルは、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよく;かつ
R3cは、置換されていてもよいC3-6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、ならびにNおよびOより選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換されていてもよい5員または6員のヘテロシクリルより選択される。
【0043】
好ましくは、R2cおよびR3cにおけるアリールはハロで置換されていてもよい。
【0044】
好ましくは、R1cはHであり、かつR2cはC3-4アルキルである。
【0045】
好ましくは、R1cはC1-6アルキルであり、かつR2cはC1-6アルキルおよびC2-6アルキニルより選択される。
【0046】
式Icの化合物の代表的な例は、以下の通りであるか、またはその薬学的に許容される塩である。


【0047】
本発明は、下記一般式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与する段階を含む、パーキンソン病の治療のための方法も提供する。

式中、
R1およびR2の少なくとも1つはH以外であるという条件で、R1およびR2は、H、置換されていてもよいC1-6アルキル、および置換されていてもよいC2-6アルキニルより独立して選択されるか;または
R1およびR2は、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロシクリルを形成し、該5員もしくは6員のヘテロシクリルは、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよく;かつ
R3は、置換されていてもよいC1-6アルキルおよび置換されていてもよいC3-6シクロアルキルより選択される。
【0048】
上記の式IaおよびIcの化合物の例に加えて、式IIの化合物の代表的な例には、下記、またはその薬学的に許容される塩が含まれる。

【0049】
「C1-6アルキル」なる用語は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。例には、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチルおよびヘキシルが含まれる。
【0050】
「C1-6アルキレン」なる用語は、上記で定義した「C1-6アルキル」の二価の等価物を意味する。
【0051】
「C2-6アルキニル」なる用語は、少なくとも1つの三重結合および2〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。例には、エチニル、1-または2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニルまたは3-ブチニル、およびメチル-2-プロピニルが含まれる。
【0052】
「C3-6シクロアルキル」なる用語は、3から6個の炭素原子を有する非芳香族環状炭化水素基を意味する。例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれる。
【0053】
「アリール」なる用語は、芳香族炭化水素の単一残基、多核残基、共役残基または縮合残基を意味する。例には、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル、ジヒドロアントラセニル、ベンズアントラセニル、ジベンズアントラセニルおよびフェナントレニルが含まれる。フェニルなどの6員アリールが好ましい。
【0054】
「5員または6員のヘテロシクリル」なる用語は、NおよびOからなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、飽和したまたは不飽和の単環式炭化水素基を意味する。
【0055】
適したヘテロシクリルには、1〜4個の窒素原子を含む不飽和の5員または6員のヘテロ単環式基、例えば、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリルまたはテトラゾリル;
ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニルまたはピペラジニルなどの、1〜3個の窒素原子を含む飽和した5員または6員のヘテロ単環式基;
ピラニルまたはフリルなどの、酸素原子を含む5員または6員のヘテロ単環式基;
オキサゾリル、イソキサゾリルまたはオキサジアゾリルなどの、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む不飽和の5員または6員のヘテロ単環式基;および
モルホリニルなどの、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む飽和した5員または6員のヘテロ単環式基などのN含有複素環が含まれる。
【0056】
好ましいヘテロシクリルには、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ピリジニル、ピラゾリル、イミダゾリルおよびテトラゾリルが含まれる。
【0057】
「ハロ]なる用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素、好ましくはフッ素を意味する。
【0058】
「置換されていてもよい」なる用語は、C1-6アルキル、Si(C1-6アルキル)3、C3-6シクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、ハロ、ハロC1-6アルキル、ハロC3-6シクロアルキル、ハロC2-6アルケニル、ハロC2-6アルキニル、ハロアリール、ハロヘテロシクリル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C2-6アルケニルオキシ、C2-6アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、カルボキシ、ハロC1-6アルコキシ、ハロC2-6アルケニルオキシ、ハロC2-6アルキニルオキシ、ハロアリールオキシ、ニトロ、ニトロC1-6,アルキル、ニトロC2-6アルケニル、ニトロアリール、ニトロヘテロシクリル、アジド、アミノ、C1-6アルキルアミノ、C2-6アルケニルアミノ、C2-6アルキニルアミノ、アリールアミノ、ヘテロシクラミノアシル(heterocyclamino acyl)、C1-6アルキルアシル、C2-6アルケニルアシル、C2-6アルキニルアシル、アリールアシル、ヘテロシシリルアシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アルデヒド、C1-6アルキルスルホニル、アリールスルホニル、C1-6アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、C1-6アルキルスルホニルオキシ、アリールスルホニルオキシ、C1-6アルキルスルフェニル、C2-6アルキルスルフェニル、アリールスルフェニル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、メルカプト、C1-6アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、シアノ、リン含有基などより選択される1つまたは複数の基でさらに置換されていても、置換されていなくてもよい基を意味する。好ましい任意の置換基はC1-4アルキル、置換されていてもよいアリール、ハロ、置換されていてもよいC3-6シクロアルキルならびにNおよびOより選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換されていてもよい5員または6員のヘテロシクリルより選択される。
【0059】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩として調製してもよいが、これらは薬学的に許容される塩の調製における中間体として有用であるため、薬学的に許容されない塩も本発明の範囲内に入ることが理解されるであろう。薬学的に許容される塩の例には、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムなどの薬学的に許容されるカチオンの塩;塩酸、オルトリン酸、硫酸、リン酸、硝酸、カルボン酸、ホウ酸、スルファミン酸および臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の酸付加塩; または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トリハロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリル酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、吉草酸およびオロト酸などの薬学的に許容される有機酸の塩が含まれる。アミン基の塩は、アミノ窒素原子がアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアラルキル部分などの適した有機基を有する四級アンモニウム塩も含みうる。好ましい塩は塩酸または臭化水素酸付加塩などの薬学的に許容される無機酸の酸付加塩である。
【0060】
塩は、塩が不溶な溶媒もしくは媒質、または減圧もしくは凍結乾燥で除去される水などの溶媒中で、化合物の遊離塩基型を1当量またはそれ以上の当量の適切な酸と反応させること、あるいは適したイオン交換樹脂において既存の塩のアニオンを別のアニオンと交換することなどによる、通常の手段で形成してもよい。
【0061】
薬学的に許容される塩への言及は、その溶媒付加型または結晶型、特に溶媒和物または多形を含むことが理解されるべきである。溶媒和物は化学量論量または非化学量論量のいずれかの溶媒を含み、水、メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールなどのアルコ−ル、DMSO、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)などの薬学的に許容される溶媒による結晶化の過程で形成されてもよく、溶媒和物は非共有結合により、または結晶格子中の孔を占有することにより、結晶格子の一部を形成する。溶媒が水である場合、水和物が形成されるか、または溶媒がアルコールである場合、アルコラートが形成される。本発明の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載の方法において都合よく調製または形成することができる。加えて、本発明の化合物は非溶媒和型ならびに溶媒和型で存在することができる。一般に、本明細書において提供する化合物および方法のためには、溶媒和型は非溶媒和型と等価であると考えられる。
【0062】
加えて、本発明の化合物は非溶媒和型ならびに水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒による溶媒和型で存在することもできる。本発明の化合物の溶媒和型も本明細書に開示されると考えられる。
【0063】
化合物がキラル中心を有する場合、化合物は、純粋な鏡像異性体もしくはジアステレオマー、または任意の比の立体異性体の混合物として用いることができる。しかしながら、混合物は、少なくとも70%、80%、90%、95%、97.5%または99%の好ましい異性体を含む。
【0064】
本発明は式Iの化合物のプロドラッグも含む。
【0065】
「プロドラッグ」なる用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられ、インビボで式Iの化合物に変換される化合物を含む。プロドラッグ戦略の使用は薬物のその作用部位、例えば、脳への送達を最適化する。一つの態様において、遊離アミノ、アミド、ヒドロキシまたはカルボン酸基を有する式Iの化合物は、プロドラッグに変換することができる。プロドラッグには、カルボニル炭素プロドラッグ側鎖を通じて本発明の化合物の上記の置換基に共有結合している炭酸エステル、カルバメート、アミドおよびアルキルエステルである化合物が含まれる。プロドラッグには、リン-酸素結合を通じて式Iの化合物の遊離ヒドロキシルに連結している化合物のリン酸誘導体(酸、酸の塩またはエステルなど)も含まれる。プロドラッグには、式Iにおける適切な窒素原子のN-オキシド、およびS-オキシドも含まれうる。
【0066】
別の態様において、プロドラッグには、BBBの内部表面上のエステラーゼがエステルを加水分解するよう作用し、式Iの化合物のC8ヒドロキシルを遊離する、BBBをプロドラッグが通過するまで加水分解に抵抗するよう設計されたC1-6アルキルまたはアリールエステルの存在が含まれる。
【0067】
化合物の作製方法
一般式Iの化合物は一般に、式IIIの化合物を環化することにより調製する。環化は、任意の適した公知の技術、例えば、塩化クロロアセチルを含む脱水環化を用いて実施してもよい。
【0068】
いずれの反応段階から生成した生成物も、当業者には公知の技術を用いてさらに誘導体化してもよい。または、モノハロ中間体の誘導体化を、第二のハロ置換基の反応前に行ってもよい。当業者であれば、上記の合成について記載した反応の順は特定の状況において変更してもよく、上記の反応が妥当な収率および効率で進行するためには、特定の場合に特定の官能基は誘導体化し(つまり、保護され)なければならないこともあることを理解するであろう。保護官能基の型は当業者には周知で、例えば、Greene (Greene, T., Wuts, P. (1999) Protective Groups in Organic Synthesis. Wiley-Interscience; 3rd edition.)に記載されている。
【0069】
ヒドロキシ基を保護するために用いうる保護基の例には、シリル基(例えば、トリメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル)、ベンジル基(例えば、ベンジル、メトキシベンジル、ニトロベンジル、臭化ベンジルまたは塩化ベンジルなどのハロゲン化ベンジル)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-およびi-プロピル、ならびにn-、sec-およびt-ブチル)およびアシル基(例えば、塩化アセチルまたは無水酢酸などのアセチルおよびベンゾイル)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0070】
脱離基は、参照により本明細書に組み入れられる、J. March, “ Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure” 4th Edition, pp 352-357, John Wiley & Sons, New York, 1992に開示されているものなどの、任意の適した公知の型であってもよい。好ましくは、脱離基はハロゲン、より好ましくは塩素である。
【0071】
薬学的組成物
本発明は、少なくとも1つの式Iの化合物および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。担体は「薬学的に許容され」なくてはならず、組成物の他の成分と適合し、対象に対して有害でないことを意味する。本発明の組成物は、以下に示す他の治療剤を含んでいてもよく、薬学的製剤の分野で周知のものなどの技術に従い、例えば、通常の固体または液体のビヒクルまたは希釈剤、ならびに所望の投与様式に適した型の薬学的添加物(例えば、賦形剤、結合剤、保存剤、安定剤、香料など)を用いて製剤してもよい(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., 2005, Lippincott Williams & Wilkins参照)。
【0072】
本発明の化合物は、任意の適した手段、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤もしくは散剤の形などの経口;舌下;口腔内;皮下、静脈内、筋肉内、皮内(経皮)、もしくは大槽内注射もしくは注入技術(例えば、無菌で注射用の水性液剤または非水性液剤または懸濁剤として)などの非経口;吸入スプレーもしくは通気などによる経鼻;クリーム剤もしくは軟膏の形などで局所 液剤もしくは懸濁剤の形で眼内;ペッサリー、タンポンもしくはクリーム剤の形で膣内;または坐剤の形で直腸内;非毒性の薬学的に許容されるビヒクルもしくは希釈剤を含む用量単位製剤で投与してもよい。化合物は、例えば、即時放出または遅延放出に適した形で投与してもよい。即時放出または遅延放出は、本発明の化合物を含む適した薬学的組成物の使用により、または、特に遅延放出の場合、皮下埋込物または浸透圧ポンプなどの器具の使用により達成してもよい。
【0073】
本発明の化合物の投与のための薬学的組成物は、用量単位剤形で都合よく提示されてもよく、薬学の分野で周知の任意の方法で調製してもよい。これらの方法は、一般に、式Iの化合物を1つまたは複数の補助成分を構成する担体と混合する段階を含む。一般に、薬学的組成物は、式Iの化合物を液体担体もしくは細かく分割した固体担体または両方と、均質かつ密接に混合し、次いで、必要な場合には、生成物を所望の製剤に成型することにより調製する。薬学的組成物において、目的の活性化合物は、疾患の経過または状態に対して所望の効果を生じるのに十分な量で含まれる。本明細書において用いられる「組成物」なる用語は、規定の量の規定の成分を含む生成物、ならびに規定の量の規定の成分の組み合わせにより、直接的または間接的に生じる任意の生成物を含むことが意図される。
【0074】
式Iの化合物を含む薬学的組成物は、経口使用に適した形、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁剤、分散性散剤もしくは顆粒剤、乳剤、硬もしくは軟カプセル剤、またはシロップ剤もしくはエリキシル剤であってもよい。経口使用が意図される組成物は、薬学的組成物の製造のための当技術分野において公知の任意の方法により調製してもよく、そのような組成物は、例えば、薬学的に安定かつ味の良い製剤を提供するために、甘味料、着香剤、着色剤および保存剤などの1つまたは複数の剤を含んでいてもよい。錠剤は、式Iの化合物を錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物で含む。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤または崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチンまたはアカシア、および滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであってもよい。錠剤は、コーティングしていなくてもよく、または公知の技術によりコーティングして、消化管における崩壊および吸収を遅延させ、それにより長時間にわたる持続性作用を提供してもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を使用してもよい。それらはコーティングして、制御放出のための浸透圧治療錠剤を形成してもよい。
【0075】
経口使用のための製剤は、式Iの化合物が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合されているゼラチン硬カプセル、または式Iの化合物が水もしくは油性媒質、例えば、落花生油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油と混合されているゼラチン軟カプセルとして提示してもよい。
【0076】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤との混合物で活性材料を含む。そのような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムであり;分散または湿潤剤は、天然ホスファチド、例えば、レシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合産物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、またはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなどのエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合産物、またはエチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合産物、例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであってもよい。水性懸濁剤は、1つまたは複数の保存剤、例えば、安息香酸エチル、またはn-プロピル、p-ヒドロキシ、1つまたは複数の着色剤、1つまたは複数の着香剤、およびショ糖またはサッカリンなどの1つまたは複数の甘味料を含んでいてもよい。
【0077】
油性懸濁剤は、植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはヤシ油、または流動パラフィンなどの鉱油中に式Iの化合物を懸濁させることにより製剤してもよい。油性懸濁剤は増粘剤、例えば、みつろう、硬パラフィンまたはセチルアルコールを含んでいてもよい。上記のものなどの甘味料および着香剤を、味の良い経口製剤を提供するために添加してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加により保存してもよい。
【0078】
水の添加により水性懸濁剤を調製するのに適した分散性散剤および顆粒剤は、式Iの化合物を分散剤もしくは湿潤剤、懸濁化剤および1つまたは複数の保存剤との混合物で提供する。適した分散剤もしくは湿潤剤および懸濁化剤は、すでに上記で記載されたものによって例示される。さらなる賦形剤、例えば、甘味料、着香剤および着色剤が存在してもよい。
【0079】
本発明の薬学的組成物は、水中油乳剤の形であってもよい。油相は植物油、例えば、オリーブ油もしくは落花生油、または鉱油、例えば、流動パラフィン、あるいはこれらの混合物であってもよい。適した乳化剤は、天然ゴム、例えば、アラビアゴムもしくはトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えば、ダイズ、レシチンや、脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導されるエステルもしくは部分エステル、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、ならびに前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合産物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであってもよい。乳剤は、甘味料および着香剤を含んでいてもよい。
【0080】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味料、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはショ糖と共に製剤してもよい。そのような製剤は、粘滑薬、保存剤ならびに着香剤および着色剤を含んでいてもよい。
【0081】
薬学的組成物は、無菌の注射用水性または油性懸濁剤の形であってもよい。この懸濁剤は、上記で記載された適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、公知の技術により製剤してもよい。無菌の注射用製剤は、非毒性の非経口で許容される希釈剤または溶媒中、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液としての、無菌で注射用の液剤または懸濁剤であってもよい。使用しうる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌の、固定油が、溶媒または懸濁媒として通常使用される。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を用いてもよい。加えて、オレイン酸などの脂肪酸は、注射用製剤の調製において使用される。
【0082】
鼻腔内投与を含む気道への投与のために、活性化合物を、気道への投与の技術分野で使用されている任意の方法および製剤により投与してもよい。
【0083】
したがって、一般に、活性化合物は、液剤もしくは懸濁剤の形で、または乾燥散剤として投与してもよい。
【0084】
液剤および懸濁剤は、一般に水性であり、例えば、水のみ(例えば、滅菌水または発熱物質を含まない水)または水および生理的に許容される共溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコールまたはPEG400などのポリエチレングリコール)から調製されることになる。
【0085】
そのような液剤または懸濁剤は、さらに他の賦形剤、例えば、保存剤(塩化ベンザルコニウムなど)、ポリソルベートなどの可溶化剤/界面活性剤(例えば、トゥイーン80、スパン80、塩化ベンザルコニウム)、緩衝化剤、等張性調節剤(例えば、塩化ナトリウム)、吸収増強剤および増粘剤を含んでいてもよい。懸濁剤は、さらに、懸濁化剤(例えば、微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム)を含んでいてもよい。
【0086】
液剤または懸濁剤は、通常の手段、例えば、滴びん、ピペットまたはスプレーにより、鼻腔に直接適用する。製剤は、単一または多用量剤形で提供してもよい。後者の場合、用量測定の手段が望ましくは提供される。滴びんまたはピペットの場合、これは、適切な、予め決められた体積の液剤または懸濁剤を投与する対象により達成されてもよい。スプレーの場合、これは、例えば、計量霧吹きスプレーポンプにより達成されてもよい。
【0087】
気道への投与は、エアロゾル製剤により達成されてもよく、ここで化合物は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンもしくはジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適したガスなどに、適した噴射剤を用いた加圧パックで提供される。エアロゾルは、レシチンなどの界面活性剤を都合よく含んでいてもよい。活性化合物の用量は、計量弁の提供により制御してもよい。
【0088】
または、活性化合物は、乾燥散剤の形、例えば、ラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのデンプン誘導体およびポリビニルピロリドン(PVP)などの適した粉末基剤中の化合物の粉末混合物の形で提供してもよい。都合よくは、粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、単位用量剤形、例えば、ゼラチンのカプセルもしくはカートリッジ、または散剤を吸入器により投与しうるブリスターパックで提供してもよい。
【0089】
鼻腔内製剤を含む気道への投与が意図される製剤において、活性化合物は一般に粒径が小さく、例えば、5μmまたはそれ未満の桁のサイズである。そのような粒径は、当技術分野において公知の手段により、例えば微粉化により得てもよい。
【0090】
望まれる場合、活性化合物が徐放されるように適応させた製剤を使用してもよい。
【0091】
活性化合物は、「ディスクへラー」(Glaxo Group Ltdの商標)または計量エアロゾル吸入器を通して、流動性の粉末として経口吸入により投与してもよい。
【0092】
本発明の化合物は、薬物の直腸投与のための坐剤の形で投与してもよい。これらの組成物は、常温で固体であるが直腸の温度で液体になり、したがって、直腸で融解して薬物を放出する、適した非刺激性の賦形剤と薬物を混合することにより調製することができる。そのような材料は、カカオ脂およびポリエチレングルコールである。
【0093】
膣投与に適した組成物は、活性成分に加えて、当技術分野において適当であることが公知の担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト、フォームまたはスプレーとして提示してもよい。
【0094】
局所使用のために、本発明の化合物を含むクリーム剤、軟膏、ゼリー、液剤または懸濁剤などを使用する。(この適用の目的のために、局所適用は、洗口剤および含そう薬を含む。)
【0095】
目への適用のために、活性化合物は、適した無菌の水性または非水性ビヒクル中の液剤または懸濁剤の形であってもよい。添加物、例えば、緩衝剤、酢酸もしくは硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウム、またはクロルヘキシジンなどの殺菌剤および殺真菌剤を含む保存剤およびヒプロメロースなどの増粘剤が含まれていてもよい。
【0096】
本発明の化合物は、リポソームの形で投与することもできる。当技術分野において公知の通り、リポソームは、一般に、リン脂質または他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水性媒質中に分散した単層または多層の水和液晶により形成される。リポソームを形成することができる任意の非毒性の、生理的に許容され、代謝可能な脂質を用いることができる。リポソームの形の本発明の組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、保存剤、賦形剤などを含むことができる。好ましい脂質は、天然および合成両方のリン脂質およびホスファチジルコリンである。リポソームを形成する方法は当技術分野において公知である。
【0097】
このクラスの化合物の有効性は、薬物溶出ステントに適用可能である。これらの化合物を用いた薬物溶出ステントの可能な適用には、肺動脈狭窄、肺静脈狭窄、ならびに冠状動脈狭窄が含まれる。薬物溶出ステントは、伏在静脈移植もしくは動脈移植または導管において用いてもよい。このクラスの化合物を放出する薬物溶出ステントは、腸骨動脈、大腿動脈または膝窩動脈などの大動脈または末梢動脈の狭窄を治療するために適用可能でありうる。化合物は、当技術分野において公知の任意の様々な方法により、薬物溶出ステントに結合させてもよい。そのような方法の例には、ポリマー、ホスホリルコリン、およびセラミックが含まれる。化合物は、生体吸収性ステントに含浸させてもよい。
【0098】
活性化合物は、獣医学用組成物の形で使用するために提示してもよく、例えば、当技術分野において通常の方法により調製してもよい。そのような獣医学用組成物の例には下記に対して適合させたものが含まれる:
(a)経口投与、外用、例えば、水薬(例えば、水性または非水性の液剤または懸濁剤);錠剤またはボーラス;飼料と混合するための粉末、顆粒またはペレット;舌に適用するためのペースト;
(b)例えば、無菌の液剤もしくは懸濁剤としての、例えば、皮下注射、筋肉内注射もしくは静脈内注射による、または(適切な場合)懸濁剤もしくは液剤を乳首から乳房に導入する乳房内注射による、非経口投与;
(c)例えば、皮膚に適用するクリーム剤、軟膏またはスプレーとして、局所適用;あるいは
(d)例えば、ペッサリー、クリーム剤またはフォームとして、直腸内または膣内。
【0099】
本発明の薬学的組成物および方法は、神経学的状態の治療において通常使用される、本明細書において記載する他の治療上活性な化合物をさらに含んでいてもよい。併用療法において使用するための適切な剤の選択は、当業者であれば通常の薬学的原理に従って行いうる。治療剤の組み合わせは、上記の様々な疾患の治療または予防を行うために相乗的に作用しうる。このアプローチを用いて、それぞれの剤のより低い用量で治療効果を得ることができ、したがって有害副作用の可能性を低下させる。
【0100】
他の治療剤の例には、ロチゴチン、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ロピニロール、カベルゴリン、ペルゴリド、アポモルフィンおよびリスリドなどのドーパミン置換薬およびドーパミンアゴニスト、抗コリン作用剤、NMDA拮抗薬、β遮断薬ならびにMAO-B阻害剤のセレゲリンおよびCOMT阻害剤エンタカポンが含まれる。
【0101】
本発明の化合物と組み合わせて他の治療剤が使用される場合、それらは、例えば、医師の卓上参考書(PDR)に記載の量、または当業者により決定された量で用いてもよい。
【0102】
治療方法
式Iの化合物をパーキンソン病の治療において用いてもよい。
【0103】
一般に、「治療」なる用語は、対象、組織または細胞に影響を与えて、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味し、(a)疾患に罹患する可能性があるが、まだ疾患を有するとは診断されていない対象において疾患が発生するのを予防すること;(b)疾患を阻害すること、すなわちその発生を停止すること;または(c)疾患の影響を軽減もしくは改善すること、すなわち疾患の影響の緩解を生じさせることを含む。
【0104】
「対象」なる用語は、式Iの化合物による治療が必要な疾患を有する任意の動物を意味する。
【0105】
ヒトなどの霊長類に加え、様々な他の哺乳類を、本発明の化合物、組成物および方法を用いて治療することができる。例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラットまたは他のウシ種、ヒツジ種、ウマ種、イヌ種、ネコ種、げっ歯類もしくはマウス種を含むが、それらに限定されるわけではない、哺乳類を治療することができる。しかしながら、本発明は、鳥類の種(例えばニワトリ)などの他の種において実施することもできる。
【0106】
「投与する」なる用語は、本発明の化合物を、治療を必要としている対象に与えることを意味すると理解されるべきである。
【0107】
用量
「治療上有効な量」なる用語は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医により求められている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的反応を誘発する、式Iの化合物の量を意味する。
【0108】
キナーゼ阻害を必要とする状態の治療または予防において、適切な用量レベルは、一般に、1日に患者の体重1kgあたり約0.01〜500mgであり、単一または複数用量で投与することができる。好ましくは、用量レベルは、1日に約0.1〜約250mg/kg;より好ましくは、1日に約0.5〜約100mg/kgである。適切な用量レベルは、1日に約0.01〜250mg/kg、1日に約0.05〜100mg/kg、または1日に約0.1〜50mg/kgでありうる。この範囲内において、用量は1日に0.05〜0.5mg/kg、0.5〜5mg/kgまたは5〜50mg/kgでありうる。経口投与のために、組成物は、好ましくは、1.0〜1000mgの活性成分、特に、1.0mg、5.0mg、10.0mg、15.0mg、20.0mg、25.0mg、50.0mg、75.0mg、100.0mg、150.0mg、200.0mg、250.0mg、300.0mg、400.0mg、500.0mg、600.0mg、750.0mg、800.0mg、900.0mg、および1000.0mgの活性成分を含む錠剤の形で提供される。用量は、治療される患者に対する治療効果および/または症状による用量の調節のために、例えば、これらの任意の範囲内の任意の用量に選択してもよい。化合物は、好ましくは、1日に1〜4回、好ましくは1日に1回または2回投与することになる。
【0109】
任意の特定の患者に対する具体的な用量レベルおよび投与頻度は変動してもよく、使用する具体的な化合物の活性、その化合物の代謝的安定性および作用の長さ、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与様式および時間、排出速度、薬物の併用、特定の状態の重症度、ならびに治療を受ける宿主を含む様々な因子に依存することが理解されるであろう。
【実施例】
【0110】
本発明を以下の非限定例のみに関して詳細に記載する。
【0111】
明確にするために、本発明の化合物を番号、例えば1-4および2-3で呼ぶ。そのように呼ぶ化合物例の構造を表1-7に示す。
【0112】
実施例1から7において、以下の参考文献を引用する:
White et al., J Neuroscience, (1998) 18, 6207-6217。
【0113】
実施例1
スキーム1
一連の2,3-二置換8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン4-9を、スキーム1に示す合成経路により調製することができる。市販の2,4-ジクロロ安息香酸1-1をニトロ化して2,4-ジクロロ-5-ニトロ安息香酸1-2を得る。ニトロ化合物1-2を塩化スズ(II)で還元してアニリン1-3を得、これを次いでアセトアミド1-4に変換する。第二のニトロ化により中間体1-5を得、続いて塩基加水分解によりフェノール1-6とする。アミド2-10をアミンおよび活性化剤EDCの存在下で生成する。この反応は、フェノールが保護を必要としないことから注目に値する。アミド2-10を氷酢酸中、Fe粉と反応させてアミン2-11を得る。塩化クロロアセチルとの反応と、続くPCl3による縮合反応により、クロロメチル化合物4-15を得る。最後に、二級アミンによるアミノ化およびHCl生成により所望の標的化合物4-9を得る。

【0114】
2,4-ジクロロ-5-ニトロ安息香酸(1-2)
2,4-ジクロロ安息香酸1-1(1.0g、5.34mmol)を濃硫酸(7mL)中の濃硝酸(0.26mL、5.75mmol)の撹拌溶液に一度に加えた。室温で3時間後、溶液を氷上に注いだ。得られた白色固体をろ過により単離し、H2O(×3)で洗浄した。次いで、白色固体を1%Na2CO3(水溶液)(20mL)とともに室温で1時間撹拌した。残っている不溶性材料をろ去し、得られた澄明ろ液を濃縮して淡黄色固体とした。H2Oから再結晶して、ナトリウム塩を淡黄色結晶で得た。(注記:他の少量生成物、2,4-ジクロロ-3-ニトロ安息香酸ナトリウムが溶液中に残った)。2,4-ジクロロ-5-ニトロ安息香酸ナトリウムの黄色結晶を最少量のH2Oに溶解し、濃HClを白色沈澱が生じるまでゆっくり加えて酸性化した。ろ過し、H2Oで洗浄して単離した後、2,4-ジクロロ-5-ニトロ安息香酸1-2を白色固体で得た(0.91g、72%)。

【0115】
2,4-ジクロロ-5-アミノ安息香酸(1-3)
塩化スズ(II)水和物(50g、0.29mol)をEtOH(200mL)中の2,4-ジクロロ-5-ニトロ安息香酸1-2(10.0g、0.045mol)の溶液に加えた。混合物を70℃で30分間撹拌し、冷却し、氷上に注いだ。混合物のpHを飽和NaHCO3水溶液を用いて8に調整した。懸濁液を室温で5時間撹拌し、氷AcOHでpH5に再度酸性化した。得られた白色懸濁液をEtOAcで連続して洗浄し、抽出物を合わせ、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮して、所望のアミン1-3をオフホワイトの固体で得た(8.8g、96%)。

【0116】
5-アセトアミド-2,4-ジクロロ安息香酸(1-4)
無水酢酸(27mL)を氷AcOH(150mL)中の2,4-ジクロロ-5-アミノ安息香酸1-3(8.0g、0.041mol)に加えた。溶液を室温で30分間撹拌し、濃縮して、所望のアセトアミド1-4を白色固体で得た(9.6g、96%)。

【0117】
3-アセトアミド-4,6-ジクロロ-2-ニトロ安息香酸(1-5)
5-アセトアミド-2,4-ジクロロ安息香酸1-4(40.0g、0.161mol)を濃H2SO4(400mL)および濃硝酸(400mL)の冷却混合物に5℃で分割して加えた。2時間撹拌した後、濃H2SO4(100mL)/濃硝酸(100mL)を加えた。さらに90分後、濃H2SO4(400mL)/濃硝酸(200mL)を加え、撹拌をさらに2時間続けた。反応混合物を氷上に注意深く注ぎ、黄色沈澱を生じた。生成物をろ取し、次いでEtOAcで抽出した。合わせた有機層をH2O、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮して、ニトロ化合物1-5を黄/橙色固体で得た(38.1g、収率81%)。

【0118】
4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-2-ニトロ安息香酸(1-6)
H2O(330mL)中のKOH(73.4g)の溶液を3-アセトアミド-4,6-ジクロロ-2-ニトロ安息香酸1-5(38.1g、0.130mol)に加えた。得られた褐色溶液を18時間加熱還流した(浴温130℃)。反応混合物を冷却し、エーテルで抽出した。次いで、水層を濃HClでpH2まで酸性化し、EtOAc(×4)で抽出した。合わせた有機層を食塩水(×3)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮して、4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-2-ニトロ安息香酸1-6を褐色固体で得た(31.0g、95%)。

【0119】
4,6-ジクロロ-N-シクロプロピルメチル-3-ヒドロキシ-2-ニトロベンズアミド(2-10、R=シクロプロピルメチル))
4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-2-ニトロ安息香酸1-6(5.03g、19.9mmol)を無水CH2Cl2(60mL)および無水THF(30mL)に溶解し、次いでEDC(4.61g、24.0mmol)、(アミノメチル)シクロプロパン(2.35mL、27.1mmol)およびDIEA(4.18mL、24.0mmol)で処理した。反応混合物を室温で終夜撹拌し、次いでCH2Cl2および0.5M HCl(水溶液)で希釈した。生成物をCH2Cl2(×4)で抽出した。有機層を飽和NaHCO3水溶液、食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮して、アミド2-10を褐色泡状物で得た(3.40g、粗収率56%)。

【0120】
2-アミノ-4,6-ジクロロ-N-シクロプロピルメチル-3-ヒドロキシ-ベンズアミド(2-11、R=シクロプロピルメチル)
アミド2-10(10.1g、33.1mmol)を氷AcOH(180mL)に溶解し、次いでFe粉(11.2g、0.2mol)で処理し、窒素雰囲気下80℃で1.5時間加熱した。ベージュ色の懸濁液を飽和NaHCO3水溶液で澄明になるまで処理し、次いでセライトを通してろ過し、EtOHで洗浄した。ろ液を濃縮し、次いでEtOAc(×4)で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮し、エーテル/ガソリン(1:10)で粉砕した。アミン2-11をろ取して、暗褐色固体を得た(6.8g、75%)。

【0121】
5,7-ジクロロ-2-クロロメチル-3-シクロプロピルメチル-8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン(4-15、R=シクロプロピルメチル)
無水CH2Cl2(85mL)中のアミン2-11(6.8g、24.7mmol)を塩化クロロアセチル(4.5mL、56.5mmol)によりN2雰囲気下0℃で処理した。反応混合物を30分間で室温まで加温し、次いでエーテル(30mL)/ガソリン(100mL)で希釈した。得られた褐色沈澱をろ取し、ガソリンで洗浄し、乾燥して、クロロメチルアセトアミド中間体を褐色粉末で得た(6.4g、74%)。

トルエン(73mL)中のクロロメチルアセトアミド(2.59g、7.37mmol)の懸濁液にPCl3(1.93mL、22.1mmol)を加えた。反応混合物をAr雰囲気下で2.5時間、激しく還流するまで加熱した。冷却し、減圧下で濃縮した。H2O(10mL)と、次いで飽和NaHCO3水溶液(2mL)をpH5〜6まで加えた。EtOAcを加え、十分に音波処理し、混合物を分液漏斗に移した。EtOAc(×4)で抽出し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮し、FCにより20%EtOAc/ガソリンで溶出して精製し、所望のクロロメチル化合物4-15を淡橙色固体で得た(771mg、31%)。

【0122】
F4267
クロロメチル誘導体4-15(917mg、2.75mmol)を無水CH2Cl2(25mL)に溶解し、0℃に冷却し、次いでジメチルアミン(7.5mL、15.0mmol、MeOH中の2.0M溶液)で処理した。反応混合物を室温まで加温して終夜置き、次いで濃縮し、CH2Cl2で抽出し、飽和NaHCO3水溶液で洗浄した。水層をCH2Cl2(×3)でさらに抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。得られた油状物をMeOH(50mL)に溶解し、濃HCl(1.5mL)で処理した。溶液を濃縮した後、得られた黄色固体をポンプ乾燥し、次いでMeOH(3mL)/エーテル(70mL)で粉砕して、F4267(820mg、79%)を淡黄色固体で沈澱させ、ろ取した(分析については表1参照)。
【0123】
(表1)実施例1(スキーム1)により調製した化合物



【0124】
実施例2
スキーム2
一連の新規2,3-二置換8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン4-9を、スキーム2に示す合成経路により調製することができる。実施例1に示すスキーム1に従って調製したニトロ酸1-6を、DMF中のヨードメタンを用いてカルボキシ基で選択的にメチル化し、メチルエステル1-7を得る。アセトンおよびヨードメタン中で1-7を加熱することにより、メチルエーテル2-2に変換する。2-2をNaOHおよびメタノール中で加熱することにより加水分解して、酸2-1を得る。酸塩化物を生成し、続いてアミンと反応させて、中間体4-5を良好から優秀な収率で得る。氷酢酸中Fe粉で還元して、アミン4-6を得、これを次いで還流中のAcOHおよび塩化クロロアセチル中で環化して4-7とする。4-7をアミノ化し、続いてCH2Cl2中のBBr3または還流HBrのいずれかで脱保護して、標的化合物4-9を得る。

【0125】
4,6-ジクロロ-3-メトキシ-2-ニトロ安息香酸(1-7)
DMF(8mL)中の酸1-6(0.88g、3.5mmol)の溶液に、K2CO3(1.44g、10mmol)と、続いてヨードメタン(0.43mL、6.95mmol)を加えた。反応混合物を60℃で17時間加熱し、次いでDMFを減圧下で除去して、橙色ゴム状物を得た。H2O(20mL)を加え、溶液を10%HCl溶液でpH1まで酸性化した。次いで、水溶液をEtOAc(30mL)で抽出し、H2Oおよび食塩水で洗浄した。Na2SO4で乾燥した後、反応混合物をろ過し、濃縮して、1-7を橙色ゴム状物で得た(0.82g、収率88%)。

【0126】
4,6-ジクロロ-3-メトキシ-2-ニトロ安息香酸メチル(2-2)
HPLC等級のアセトン(150mL)中のフェノール1-7(10.4g、39.1mmol)にK2CO3(15g、108.5mmol)およびヨードメタン(5mL、80.3mmol)を加えた。反応混合物を60℃で22時間加熱した。フラスコを冷却し、次いでH2O(40mL)を加え、混合物を30分間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、残渣をCH2Cl2およびH2Oに溶解した。CH2Cl2(×3)で抽出した後、合わせた有機層をH2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮して、メチルエステル2-2を橙色油状物で得た(9.92g、収率91%)。

【0127】
4,6-ジクロロ-3-メトキシ-2-ニトロ安息香酸(2-1)
MeOH(150mL)中のメチルエステル2-2(9.90g、35.3mmol)に2N NaOH(150mL)を加え、反応混合物を2.5時間加熱還流した。メタノールを減圧下で除去し、混合物をEtOAcで抽出した。水層を濃HCl溶液でpH2まで酸性化し、次いでEtOAc(×3)で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮して、酸2-1を橙色固体で得た(8.84g、収率94%)。

【0128】
F4095の調製
4,6-ジクロロ-3-メトキシ-N-プロピル-2-ニトロベンズアミド(4-5)
酸2-2(1.41g、5.3mmol)を塩化チオニル(20mL)中で2時間加熱還流した。冷却後、揮発性物質を減圧下で除去し、残渣をトルエンと共沸させた。得られた酸塩化物を高減圧下で乾燥し、次いで無水CH2Cl2(50mL)に溶解し、0℃に冷却し、次いでプロピルアミン(2.45mL、29.9mmol)で処理した。反応混合物を2時間で室温まで加温した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をEtOAcおよび食塩水に溶解した。水層をEtOAcで3回抽出し、合わせた有機層をH2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮して、Rがプロピルであるアミド4-5を淡橙色固体で得た。(1.5g、収率92%)。

【0129】
4,6-ジクロロ-3-メトキシ-N-プロピル-2-ニトロベンズアミド(4-6)
氷AcOH(50mL)中のRがプロピルであるニトロ化合物4-5(1.50g、4.88mmol)をFe粉(1.21g、21.7mmol)と共に80℃で1時間加熱した。反応混合物をセライトを通してろ過し、EtOAc(×3)で洗浄し、濃縮した。残渣をEtOAcおよび飽和NaHCO3水溶液で希釈し、水層をEtOAc(×3)で抽出した。合わせた有機層をH2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮して、アミン4-6を淡褐色油状物で得た(1.21g、収率89%)。

【0130】
5,7-ジクロロ-2-(クロロメチル)-8-メトキシ-3-プロピルキナゾリン-4(3H)-オン(4-7)
氷AcOH(40mL)中のRがプロピルであるアミン4-6(1.18g、4.26mmol)を塩化クロロアセチル(0.85mL、10.6mmol)で、濃硫酸(0.6当量)を加えて、または加えずに処理し、反応混合物をN2雰囲気下で4時間加熱還流した。さらに塩化クロロアセチル(0.85mL)を追加し、反応混合物をTLCで出発原料がもはや観察されなくなるまで加熱した。反応混合物を冷却し、次いで2N NaOHを用いてpHを5に調整した。反応混合物をCH2Cl2(×3)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィにより40°〜60℃で10%と次いで15%EtOAc/石油エーテルで溶出して精製し、Rがプロピルであるクロロメチル化合物4-7を油状物で得た(501mg、収率35%)。

【0131】
5,7-ジクロロ-2-((メチルアミノ)メチル)-8-メトキシ-3-プロピルキナゾリン-4(3H)-オン(4-8)
無水CH2Cl2(8mL)中のRがプロピルであるクロロメチル化合物4-7(280mg、0.834mmol)を0℃まで冷却し、エタノール中のメチルアミン溶液(2.0mL、33重量%)を溶液に滴加した。反応混合物を室温まで加温して終夜置き、次いで揮発性物質を減圧下で除去した。残渣をCH2Cl2および飽和NaHCO3水溶液に溶解し、次いでCH2Cl2(×2)で抽出した。合わせた有機層をH2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮して、Rがプロピルであり、R'およびR''が水素であるアミン4-8(220mg、収率80%)を油状物で得た。

【0132】
5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシ-2-((メチルアミノ)メチル)-3-プロピルキナゾリン-4(3H)-オン(F4095)
CH2Cl2(8mL)中のメチルエーテル4-8(220mg、0.67mmol)を0℃に冷却し、次いでBBr3(158μL、1.64mmol)を反応混合物に滴加した。室温まで加温して終夜置いた後、0℃でMeOHを注意深く加えて反応停止した。溶液を濃縮し、次いでメタノールを再度加えた。この手順を数回繰り返した。粗製材料のNMRにより所望の生成物とともに出発原料(約15%)が認められた。粗製材料を無水CH2Cl2(8mL)に再度溶解し、BBr3(200mL)を滴加して処理した。反応混合物を室温まで加温して終夜置き、次いで上記の後処理手順を用いて、粗生成物を得た。MeOH(1mL)/エーテル(20mL)で粉砕し、ろ過して、所望の標的化合物1095を得た(158mg、収率57%)。

【0133】
(表2)実施例2(スキーム2)により調製した化合物





*他の化合物と同じ方法。最終化合物を飽和NaHCO3水溶液で中和し、HCl塩に変換した。
【0134】
実施例3
スキーム3
2,3-二置換8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン4-9を、スキーム3に示す経路によっても合成することができる。したがって、メチルエステル2-2(実施例2に示すスキーム2に従って調製)を酢酸中、鉄粉で還元して、アニリン2-3を得る。加水分解して酸2-4とし、次いで酸塩化物によりアミドを生成して、4-6を得る。酢酸中の還流塩化クロロアセチルの作用により脱水環化を達成し、クロロメチル中間体4-7を得る。アミノ化し、続いてBBr3または沸騰臭化水素酸のいずれかにより脱保護して、所望の2,3-二置換キナゾリノン4-9を生成する。

【0135】
2-アミノ-4,6-ジクロロ-3-メトキシ安息香酸メチル(2-3)
鉄粉(18.2g、330mmol)を氷酢酸(120mL)中のメチルエステル2-2(13.3g、480mmol)の溶液に加えた。混合物を55℃で1.5時間撹拌し、次いでセライトを通して熱ろ過し、酢酸エチルで洗浄した。ろ液を濃縮し、次いで酢酸エチルおよび飽和NaCO3水溶液を加えた。有機層を単離し、H2Oで洗浄し、K2CO3で乾燥し、濃縮して、2-3をオフホワイトの固体で得た(11.6g、収率97%)。

【0136】
2-アミノ-4,6-ジクロロ-3-メトキシ安息香酸(2-4)
メタノール(250mL)およびH2O(70mL)中のアニリン2-3(11.5g、460mmol)の撹拌溶液に2N NaOH(25mL)を加えた。反応混合物を1時間加熱還流し、さらに2N NaOH(25mL)を加え、混合物をさらに1時間加熱還流した。溶液を冷却し、メタノールを減圧下で除去した。混合物をH2Oに溶解し、酢酸エチルで抽出した。水層を濃HClでpH2まで酸性化し、次いで酢酸エチル(×3)で抽出した。合わせた抽出物を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮して、酸2-4をベージュ色固体で得た(10.4g、収率95%)。

【0137】
F4269の調製
2-アミノ-4,6-ジクロロ-3-メトキシ-N-メチルベンズアミド
0℃に冷却したトルエン(22mL)中の酸(3.13g、13.3mmol)の混合物に塩化チオニル(3.9mL、53.0mmol)を加えた。混合物を2時間加熱還流し、得られた溶液を濃縮乾固した。酸塩化物を無水CH2Cl2(22mL)に溶解し、0℃に冷却した。メチルアミン(15mL、無水エタノール中8.0M、120mmol)を加え、反応混合物を室温まで加温して終夜置いた。混合物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィにより40〜60℃で30%〜60%酢酸エチル/石油エーテルで溶出して精製し、生成物を褐色油状物で得た(2.43g、収率74%)。

【0138】
5,7-ジクロロ-2-(クロロメチル)-8-メトキシ-3-メチルキナゾリン-4(3H)-オン
酢酸(39mL)中のアミド(2.43g、9.76mmol)の溶液に塩化クロロアセチル(4.86mL、61mmol)を加え、反応混合物を6時間加熱還流し、次いで室温まで冷却した。反応混合物を濃縮し、次いでフラッシュクロマトグラフィにより40〜60℃で15%〜40%酢酸エチル/石油エーテルで溶出して精製し、塩化物を固体で得た(878mg、収率57%)。

【0139】
5,7-ジクロロ-2-((ジメチルアミノ)メチル)-8-メトキシ-3メチルキナゾリン-4(3H)-オン
0℃のクロロメチル化合物(500mg、1.63mmol)の溶液にジメチルアミン(12mL、2.0M、24mmol)を加えた。反応混合物を室温まで加温し、3日間撹拌し、濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィにより40〜60℃で70%〜80%〜100%酢酸エチル/石油エーテルで溶出して精製し、アミンを黄色固体で得た(391mg、収率76%)。

【0140】
5,7-ジクロロ-2-(ジメチルアミノ)メチル-8-ヒドロキシ-3-メチルキナゾリン-4(3H)-オン(PB1269)
0℃の無水CH2Cl2(6mL)中のメトキシ誘導体(391mg、1.24mmol)の混合物にBBr3(234mL、2.48mmol)を加えた。混合物を室温で36時間撹拌し、その後0℃まで冷却し、メタノールで注意深く反応停止した。溶液を濃縮し、次いでメタノールを再度加えた。この手順を数回繰り返した。粗生成物にエーテルおよび数滴のメタノールを加えて、F4269をクリーム色固体で沈澱させ、これをろ取し、乾燥した(340mg、収率72%)。

【0141】
実施例4
スキーム4
2,3-二置換8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン4-9を、スキーム4に示す経路によっても合成することができる。ニトロ酸1-6(実施例1に示すスキーム1に従って調製)を鉄粉および酢酸で還元してアニリン1-8とする。1-8を塩化クロロアセチルでアシル化してアミド1-9を得る。ワンポットでアミドを生成し、続いて還流トルエン中のPCl3およびアミンの作用により、塩化物1-10への脱水環化を達成する。精製後、クロロメチル化合物1-10をアミノ化して、標的化合物F4271を得る。

【0142】
2-アミノ-4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ安息香酸(1-8)
4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-2-ニトロ安息香酸1-6(700mg、2.78mmol)、Fe粉(400mg、7.16mmol)および氷酢酸(13mL)の混合物を80℃で50分間加熱し、冷却し、固体をろ去した。ろ液を濃縮して褐色固体とした。フラッシュクロマトグラフィにより1%AcOH/EtOAcから3%AcOH/EtOAcで溶出して精製し、2-アミノ-4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ安息香酸(1-8)を淡褐色固体で得た(582mg、94%)。

【0143】
4,6-ジクロロ-2-(2-クロロアセトアミド)-3-ヒドロキシ安息香酸(1-9)
無水CH2Cl2(22mL)中の酸(1.0g、4.50mmol)の混合物に塩化クロロアセチル(1.4mL、18mmol)を0℃で加えた。反応混合物を1時間で室温まで加温し、次いで濃縮して、橙色油状物を得た。

【0144】
5,7-ジクロロ-2-(クロロメチル)-8-ヒドロキシ-3-イソブチルキナゾリン-4(3H)-オン
無水トルエン(8mL)中の酸(500mg、1.68mmol)の混合物にPCl3(293μL、3.36mmol)と、次いでイソブチルアミン(250μL、2.52mmol)を加えた。反応混合物を2.5時間加熱還流し、次いで室温まで冷却し、濃縮した。H2Oと、次いで飽和NaHCO3水溶液をpHが7になるまで加えた。混合物をEtOAc(×3)で抽出し、合わせた有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィにより40°から60℃で20%EtOAc/石油エーテルで溶出して精製し、クロロメチル誘導体(71mg、収率13%)を得た。

【0145】
5,7-ジクロロ-2-((ジメチルアミノ)メチル)-8-ヒドロキシ-3-イソブチルキナゾリン-4(3H)-オン(F4271)
0℃の無水CH2Cl2(2mL)中のクロロメチル化合物(50mg、0.149mmol)の溶液にジメチルアミン(3mL、MeOH中の2.0M溶液、6mmol)を加えた。反応混合物を室温まで加温して終夜置き、次いで濃縮乾固した。残渣をMeOH(2mL)および濃HCl(0.5mL)に溶解し、次いで揮発性物質を減圧下で除去した。MeOH(数滴)およびエーテル中で粉砕して、所望のアミン(PB1271)をオフホワイトの固体で得た(19mg、33%)。

【0146】
実施例5 - 式Iの化合物の評価
本発明の方法における使用の適合性について式Iの化合物を評価する上で、以下のアッセイ法を用いた。
【0147】
アッセイ法1 H2O2阻害アッセイ法
本蛍光アッセイ法は、アスコルビン酸などの還元基質の存在下、鉄による過酸化水素(H2O2)生成を阻害する、試験化合物の能力を評価する。アッセイ法において、FeCl3の形の鉄または銅をアスコルビン酸と、蛍光を発する化合物DCFおよびホースラディッシュペルオキシダーゼの存在下、37℃で1時間インキュベートすることにより反応させる。漸増濃度の試験化合物の存在下、系により生じたH2O2を、励起および発光波長それぞれ485および530nmの特定の蛍光特性を測定することにより評価する。試験化合物を、系により生じたH2O2を阻害する能力に従って順位付けし、値が低いほどH2O2産生を阻害する能力が高いことを示す。
【0148】
アッセイ法2(a) 一次神経細胞の神経毒性アッセイ法
皮質培養物を以前に記載された通りに調製した(White et al., 1998)。胎齢14日のBL6Jx129svマウスの皮質を摘出し、髄膜を含まないよう切開し、0.025%(重量/体積)トリプシン中で分離した。分離した細胞を48穴培養プレートに、25%(vol/vol)FCSおよび5%(vol/vol)HSを含むMEM中2×106細胞/mLの密度で播種し、37℃で2時間インキュベートした。次いで、培地をNeurobasal培地(Invitrogen Life Technologies)およびB27サプリメント(Invitrogen Life Technologies)で置き換えた。培養を5%CO2中37℃で維持した。実験前に、培地をNeurobasal培地およびB27マイナス抗酸化剤(Invitrogen Life Technologies)で置き換えた。
【0149】
神経皮質細胞をNB培地およびB27サプリメント中、アッセイ法2の通りに5日間培養した。
【0150】
第6日に、試験化合物をNB培地およびB27サプリメントマイナス抗酸化剤中の神経細胞培養物に加えた。
【0151】
試験化合物を、100%DMSO中、2.5mMの濃度に溶解した(1バイアルあたり過剰の化合物が秤量されれば10mMとし、次いで2.5mMに希釈)。2.5mM保存溶液を10分の1に連続希釈して、250uM、25uM、2.5uMの希釈標準溶液とした。試験化合物は細胞に直接加えず、代わりに以下で構成される48穴「薬物プレート」に加えた。
【0152】
「薬物プレート」の調製:
48穴プレートに下記を加えた。
ウェル1:576ul NB+B27(抗酸化剤なし)* + 24ul 2.5uM試験化合物
ウェル2:576ul NB+B27(抗酸化剤なし) + 24ul 25uM試験化合物
ウェル3:576ul NB+B27(抗酸化剤なし) + 24ul 250uM試験化合物
ウェル4:576ul NB+B27(抗酸化剤なし) + 24ul 2.5uM試験化合物
ウェル5:576ul NB+B27(抗酸化剤なし) + 24ul 25uM試験化合物
ウェル6:576ul NB+B27(抗酸化剤なし) + 24ul 250uM試験化合物
ウェル7:576ul NB+B27(抗酸化剤なし) + 24ul 試験化合物希釈剤**
ウェル8:600ul NB+B27(抗酸化剤なし)
【0153】
薬物プレートを37℃で15分間インキュベートした。各ウェル200ulを対応する細胞プレートに三通り加えた。細胞プレートを37℃で4日間インキュベートした(各細胞プレート上で2つの化合物を試験する)。
* NB培地およびB27(抗酸化剤なし)
** PBT希釈剤 NB+B27中10%DMSO(抗酸化剤なし)
【0154】
アッセイ法が完了すると、1/10量のMTSをプレートのウェルごとに加えた(すなわち、25ul/250ul)。プレートを37℃で2時間インキュベートし、次いで吸光度を560nmで読み取った。
【0155】
アッセイ法3 金属取り込みアッセイ法
M17ヒト神経芽腫細胞を6穴プレートに播種し、終夜放置する。実験の翌日に約70%コンフルエントとするために十分な細胞を加える。試験化合物を培地に加え、等モル量のCuCl2溶液と混合する。A=10μM Cu + 10μM MPAC;B=10μM Cu + 10μM MPAC。
【0156】
細胞を1mlの培地/MPAC/Cu混合物中、37℃で5時間インキュベートする。インキュベーション終了時に、培地を減圧アスピレーターにより除去し、1mlのPBSを加えて、細胞を取り出す。次いで、細胞をエッペンドルフチューブに加え、ペレット化する。PBSを除去し、残っている細胞ペレットを-20℃で凍結する。
【0157】
細胞ペレットを以下の通りに調製する。
【0158】
1.5ml微量遠沈管中、ほぼ同等のレベルの細胞ペレットを受け取った。濃硝酸(Aristar, BDH)50μlを各細胞ペレットに加え、終夜消化させた。試料を90℃で20分間加熱して、消化を完了させた。消化後、各試料の量は約45ulに減少した。各試料に1%硝酸希釈液1mlを加えた。(「調製溶液」試料と呼ぶ)。
【0159】
Varian UltraMass ICPMS装置を日常的な多要素分析に適した操作条件下で用いて、測定を行った。
【0160】
装置は1%硝酸中、ブランク、10、50および100ppbのFe、CuおよびZnの認証多要素ICPMS標準溶液(ICP-MS- CAI2-1、Accustandard)を用いて較正した。内部対照として100ppbのイットリウム(Y89)を含む認証標準溶液(ICP-MS- IS-MIX1-1、Accustandard)を用いた。
【0161】
アッセイ法4 生理化学的特性
極性表面積の計算(PSA)
極性表面積の値を、分子特性の計算用パッケージ「Molinspiration」から利用可能なウェブベースのプログラムを用いて計算した。
【0162】
比濁溶解度測定
溶解度推定値をpH2.0およびpH6.5の両方で測定した。これはヒトの近位消化管で予測しうるpH範囲内である。
【0163】
化合物を適切な濃度でDMSOに溶解し、次いで0.01M HCl(pH=約2.0)またはpH6.5の等張リン酸緩衝液のいずれかに加え、最終DMSO濃度を1%とする。次いで、試料を比濁分析により分析して、溶解度の範囲を求める[D. Bevan and R. S. Lloyd, Anal. Chem. 2000, 72, 1781-1787]。
【0164】
cLog P値
Log P理論値をACD Log Pソフトウェアを用いて求める。引用する値は未熟な(untrained)データベースから計算し、非イオン化種と呼ぶ。
【0165】
アッセイ法5 薬物動態学的特性
試験化合物の薬物動態学的特性を以下のアッセイ法により評価する。
・試験化合物の静脈内注入;適したビヒクル中の2mg/kgを2匹のラットに投与し、最大24時間まで動脈血を採取する。
・試験化合物の経口投与;適したビヒクル中の30mg/kgを2匹のラットに経口強制栄養により投与し、最大24時間まで動脈血を採取する。
・試験化合物の血漿濃度を適した分析方法により定量する。
【0166】
計算:

CL全血漿=IV投与後の全血漿クリアランス
V=IV投与後の消失相における分布の量
BA=経口バイオアベイラビリティ
AUCIV=IV投与後時間0から無限大までの、時間プロファイルに対する血漿濃度曲線下面積
AUC経口=経口投与後時間ゼロから無限大までの、時間プロファイルに対する血漿濃度曲線下面積
β=IV投与後の終末消失速度定数
【0167】
アッセイ法6 血液脳関門透過
試験した各化合物は健常BBBの透過性を示す。
【0168】
試験化合物それぞれのボーラス注射(40%プロピレングリコールおよび10%エタノールを含む3mg/mL水溶液50μL)を、雄Swiss Outbredマウス(5〜7週齢)に尾静脈注射により投与した。または、試験化合物を当業者には公知の標準的手順によりマウスに経口投与した。
【0169】
投与後5分および60分の時点で(各時点でマウスn=3匹)、心臓穿刺により採血し、頭骨後部を切開することにより全脳を摘出した。血液および脳回収の約3〜4分前に、ケタミンおよびキシラジン(それぞれ133mg/kgおよび10mg/kg)の腹腔内注射によりマウスを麻酔した。
【0170】
全脳をあらかじめ秤量したポリプロピレンバイアルに入れ、分析まで-20℃で保存した。分析当日、全脳を3倍量の水中でホモジナイズし(エクスビボでの脳の分解の可能性を低減するために氷上で)、脳ホモジネートおよび血漿の一定量を化合物濃度についてLCMSで分析した。
【0171】
ブランク脳ホモジネートをスパイクすることにより標準物質を調製し、試料および標準物質の両方を、組織ホモジネートにアセトニトリルを加え、遠心分離にかけ、上清の一定量をLCMSに注入して処理した。
【0172】
脳からの化合物の完全な回収を確実にするために、脳ホモジネートに化合物(50%アセトニトリル:50%水中)を公称濃度500ng/mLまで加えた。次いで、上清中の化合物の濃度をLCMSで定量し、アセトニトリルで沈澱させた後に化合物を加えた場合の上清濃度と比較した。
【0173】
計算
C=C脳ホモジネート−C脳血管系
C脳血管系=C血漿 *Vp

C=脳実質中の化合物の濃度(ng/g)
C脳ホモジネート=脳ホモジネート中の化合物の濃度(ng/g)
C脳血管系=脳血管系中の化合物の濃度(ng/g)
C血漿=血漿中の化合物の濃度(ng/g)
Vp=脳血漿量(雄Swiss Outbredマウスでは26μL/g)
B:P=脳対血漿比
P見かけ=血液脳関門を透過する化合物の見かけの透過係数

(投与後5分の血漿濃度と同等で、この時間内で脳から血漿への逆拡散はないと仮定)
A=血液脳関門を形成する毛細血管の表面積(マウスでは脳重量1gあたり240cm2
【0174】
アッセイ法7
ヒト肝ミクロソームにおけるインビトロ代謝
インキュベーション方法
試験化合物の溶解性およびインキュベーション媒質からのそれらの回収を、代謝アッセイ法前に確認した。代謝安定性を、試験化合物を個々に(1μM)37℃でヒト肝ミクロソームと共にインキュベートすることにより実施した。代謝反応を、NADPH再生系(すなわち、NADPHはCYP450仲介性の代謝に必要な補助因子である)の添加により開始し、インキュベーション時間の様々な時点でアセトニトリルの添加により反応停止した。グルクロン酸抱合の可能性の定性的評価のために、追加の試料を二重補助因子、すなわちNADPHおよびUDPGA(グルクロン酸抱合の補助因子)と共にインキュベーションに含めた。親化合物の相対的損失および代謝産物の生成を、Waters/Micromass LCT質量分析計を用いてLC/MSによりモニターした。
【0175】
計算
時間に対する試験化合物濃度のデータを、指数関数的減衰関数に当てはめ、基質減損の一次速度定数を求めた。一次速度論からの明白な偏位が見られる場合、グラフの最初の直線部分だけを用いて分解速度定数(k)を求めた。次いで、各基質減損の速度定数を用いて計算した:[1]分解半減期、[2]インビトロでの固有のクリアランス値(CL固有,インビトロ);[3]インビボでの固有のクリアランス予測値(CL固有);および[4]インビボでの肝抽出率の予測値(EH)。

*以下のスケール変換パラメーターを、代謝安定性パラメーターを推定するために仮定した。

【0176】
インビボ肝クリアランスおよび肝抽出率の予測値
インビトロでの試験化合物分解の相対速度に基づいて得たミクロソーム-肝抽出率予測値(EH)により、試験化合物は低(<0.3)、中(0.3〜0.7)、高(0.7〜0.95)または非常に高(>0.95)抽出化合物と分類される。この分類の元になる仮定を以下に記載する。
【0177】
注記:
インビボ肝クリアランスおよび抽出率の予測における肝ミクロソームの使用は、いくつかの仮定に基づいている(Obach, 1999; Drug Metab. Dispos. 27: 1350-1359)。
(1)肝(ミクロソーム)代謝クリアランスはインビボでの化合物の主なクリアランスのメカニズムであること;
(2)NADPH依存性の酸化的代謝は、他の代謝経路(すなわち、直接抱合代謝、還元、加水分解など)よりも優勢であること;および
(3)インビトロでの代謝速度および酵素活性は、インビボでのものを正確に反映していること。
【0178】
固有のクリアランスの計算は「インビトロT1/2法」(Obach, 1999)に基づき、これはさらに2つの実質的仮定を有する。
(1)用いる基質濃度は基質代謝回転の見かけのKMよりも十分に低いこと;および
(2)著しい生成物阻害も、いかなるメカニズムによる酵素不活化もないこと。
データはこれらの取り決め事項の範囲内で考慮されるべきである。
【0179】
CYP450イソ型阻害
蛍光に基づくアッセイ法
個々の組換えヒトCYP450酵素(Supersomes(商標))を含むミクロソームを、CYP450仲介性代謝後に蛍光代謝物を生成する固定濃度のプローブ基質の存在下でインキュベートした。様々な濃度の試験化合物(すなわち、潜在的阻害剤;40〜0.06μM)をこれらのインキュベーションに加え、各イソ型について所与の波長で全蛍光応答を分析することにより求めた、蛍光代謝物の生成率の低下パーセントによって試験化合物のIC50を評価した。
【0180】
アッセイ法が許容されるかを調べるため、各CYP450イソ型の公知の阻害剤を陽性対照として各アッセイ法に含め、そのIC50を文献値と比較した。
【0181】
蛍光光度アッセイ法の前後に、試験化合物の固有の蛍光を各イソ型について特定のアッセイ条件下で調べて、親化合物または代謝産物による任意の化合物特異的干渉を特定した。化合物特異的干渉によりこれらの試料のバックグラウンド蛍光が増大した場合、CYP450阻害試料をLC/MSアッセイ法を用いて定量した。陽性対照阻害剤を両方の方法(蛍光およびLC/MS検出)で分析して、定量方法がIC50値を変えないことを確認した。
【0182】
特異的基質アプローチを用いてのCYP450イソ型阻害
本試験は、ヒト肝ミクロソームにおける特異的基質アプローチを用いて、20μMの試験化合物濃度で潜在的酵素阻害を評価する、「Tier 2」スクリーンである。
【0183】
基質特異的酵素阻害試験は、ヒト肝ミクロソームを用い、特定のCYP450イソ型により仲介される代謝物の生成に頼っている。本試験において、以下の反応をモニターして、特定のCYP450イソ型との相互作用を評価した。各イソ型の公知の阻害剤を陽性対照として各アッセイ法に含めた。各CYP450イソ型について、同等のアッセイ条件を用いて以下のIC50値が文献で報告されている。

*CYP3A4に対して2つの構造的に無関係の基質を用いることが推奨される。Bjornsson et al. (2003) Drug. Metab. Dispos. 31: 815-832
aWalsky and Obach (2004) Drug. Metab. Dispos. 32: 647-660
bTurpeinen et al. (2004) Drug. Metab. Dispos. 32: 626-631
【0184】
タンパク質濃度0.4mg/mL(CYP1A2、CYP2C9、CYP2E1、CYP3A4およびCYP2D6)または1.0mg/mL(CYP2C19)のいずれかのヒト肝ミクロソーム中、単一濃度(20μM)の試験化合物を37℃で、≦Km(すなわち、フェナセチン50μM、ジクロフェナク6μM、(S)-メフェニトイン50μM、デキストロメトルファン3μM、クロルゾキサゾン20μM、ミダゾラム2.5μMおよびテストステロン50μM)の個々のCYPイソ型の特異的基質と同時にインキュベートした。反応をNADPH再生系の添加により開始し、アセトニトリルの添加により反応停止した後、LC/MSにより特定の代謝物の濃度(および見かけの生成速度)を求めた。
【0185】
濃度20μMの試験化合物のCYP450阻害効果(すなわち阻害%)を、最大の代謝物生成は阻害剤の非存在下で起こることに留意して、特定の代謝物の見かけの生成速度の低下パーセントにより評価した。各CYP450イソ型に対する陽性対照のIC50値は、予想されるIC50値をはさむ2つの濃度でのCYP450活性の阻害%に基づいて推定したことに留意されたい。
【0186】
IC50は、代謝物の最大生成に対し、生成量の50%低下が見られる濃度と考えられる。
【0187】
(表3)生物学的データ






a- Aβ H2O2産生の50%を阻害するために必要な試験化合物のμM濃度
b- Aβ毒性の阻害%(平均)
【0188】
(表4)生物学的データ



【0189】
実施例6 - パーキンソン病インビボ技術:6-OHDAモデル
毒素6-OHDA(1.65mg/mL、Sigma カタログ番号 H-4381)の調製
6-OHDA毒素をアスコルビン酸溶液(dH2O中0.2mg/mL)に溶解し、暗所、氷上で保存する。麻酔の速さを高め、マウスへのストレスを減らすため、アトロピン(0.5mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)を27ゲージ針で皮下注射して前投薬を行う。
【0190】
6-OHDAを注射するための損傷針の調製:
ハミルトンシリンジにおいて最大200mLまでPBSをラインに吸い上げる(確実に気泡が入らないようにする)。シリンジをKd Scientificシリンジポンプに設置し、固定する。ポンプのスイッチを入れ、シリンジをポンプに装填する。ポンプ容量を2mlに設定し、速度を0.5ml/分に設定する。損傷針のベベル(目)が正中線から45°の角度になるよう配置し、針を締めて固定する。ポンプを稼働し、液体が流れ出すのを確認する。
【0191】
麻酔
酸素を担体とする3〜4%イソフルランで麻酔を導入し、1〜2%で麻酔を維持する。動物を小さい導入箱に入れ、酸素中4%イソフルランを流速約1l/分で数分間適用する。次いで、マウスを定位固定枠に置く。麻酔チューブを導入箱からはずし、イソフルランを2%濃度に下げ、酸素の流速を約300〜400cm/分とする。チューブを定位固定枠に取り付けたノーズピースに接続して、麻酔ガスを手術中常に投与できるようにする。LHSイヤーバーを約3mmで締める。RHSイヤーバーを頭が横方向に動かなくなるまで(約5mm)締める。前切歯をマウスガードに置き、ノーズガードをのせる(0の下3mm)。マウスガードを所定の位置に締め、マウスの頭頂が確実に水平になるようにする(動物の頭骨を露出した時点で再確認する)。
【0192】
メス(サイズ4、ブレード22)を用い、マウス頭部の中心線で頭皮を切開して頭骨を露出する。典型的には10〜15mm。頭骨の表面を綿棒で乾燥する。ドリル孔を定規でブレグマから3mm後方、中心線から1〜1.5mm側方に測定する。頭骨をこの位置で脳の表面が露出するまで穿孔する。
【0193】
毒素ローディング
6-OHDAをラインの約15cmおよびシリンジを充填するために吸い上げる。液体が確実に針から出てくるようにする。Motik解剖顕微鏡で見て、針のベベルをブレグマが交差する中心線上に配置する。針を確実に、配置する前に頭骨の数mm上になるようにする。枠をブレグマの出発位置から後方に2.9mm、右側方(RHS注射のため)に1.1mm(小さい刻み目11)移動させる。針を先端が脳の表面にちょうど接触するまで下げる。
【0194】
針を必要な深度4.6mmまで下げ、脳を2分間安定させる。
【0195】
毒素2mLをRHS SNpc中に4分かけて注射する。2分間で毒素を確実に分散させる。針を引き抜き、消毒薬を創傷に適用し、縫合またはスーパーグルーで閉鎖する。
【0196】
マウスを薄紙で包み、50℃に加温した水ボトル(50mlチューブ)を入れた暖かい回復箱(加温パッド上)に入れる。Panadol(登録商標)シロップをマウスの水ボトルに加える。
【0197】
回転法
回転をコンピューターによるRotacount装置(Columbus Instruments, Columbus, OH, USA)により記録する。装置は、時計回りまたは反時計回りのいずれかの増分回転(90度および完全回転360度)を測定する、コンピューターに接続したセンサーを有する8つのボウルからなる。センサーを各ボウルの中心の約30cm上に配置する。センサーをボウルの底数cmまで延ばせるよう、チューブおよび細い空のプラスチックピペットを取り付ける。
【0198】
マウスを個別に8つのボウルに入れる。マウスをピペットにケーブルひもおよびテープで固定する。ケーブルひも(少なくとも15cmの長さ)をマウスの体の周りに巻き(上胸部、前肢の後ろ)、固定するが、きつすぎないように締め、端が上向きになるようにする。マウスを縛ると、マウスを2分間ボウルに戻す。マウスを固定した後、ケーブルひもの自由端をピペットの底部にテープで留めてもよい。これは、マウスのいかなる動きもセンサーに記録することを意味する。すべてのマウスを固定すれば、ソフトウェアを始動することができる。データを5分ごとに記録する。マウスを行動室にマウスだけで30分間放置し、周囲に馴化させる。これにより各マウスの基準線データも得る。
【0199】
アンフェタミンシリンジを設定するために、アンフェタミン(Sigma)をSOP G8を用いて秤量する。典型的に、1日に12〜15匹のマウスに対し食塩水4ml中5mgで十分である。アンフェタミンを5mg/kgの用量でip注射する。アンフェタミンの取り込みを助けるために、さらに300mlの食塩水を各シリンジに吸い上げる。
【0200】
30分経過した時点で、マウスに注射する。マウスにすべて注射した後、それらの動きをアンフェタミンが効果を示す2分間モニターする。コンピューターが回転を記録する間、マウスを60分間放置する。60分後のいつでも実験を止めることができる。回転をCW-時計回りまたはCCW-反時計回りと記録する。
【0201】
選択/除外基準(Inclusion/Exclusion criteria)第3日:
アンフェタミン投与後60分間の全回転が200回転よりも多く、450回転未満の場合、動物を選択する。
【0202】
60分間に200回転未満の回転が記録された場合、動物を除外し、それ以上試験に含めない。選択基準に達しなかった動物を淘汰する。
【0203】
(表5)6-OHDA損傷データ

【0204】
実施例7 - パーキンソン病インビボ技術:MPTP
MPTP(1-メチル4-フェニル1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)はオピオイド鎮痛薬に関連する化学物質である。MPTPはパーキンソン病の副作用を引き起こす。これはMPTPが、黒質と呼ばれる脳の一部でニューロンを死滅させるMPP+に代謝されると起こる。MPP+はミトコンドリア代謝を妨害し、これは細胞死につながり、細胞破壊にさらに貢献する毒性分子であるフリーラジカルの形成を引き起こす。MPTPはドーパミン作動性細胞において神経細胞死を起こす能力を有する。そのような作用は、複雑な動きの皮質性制御に重大な意味を有する、ドーパミン作動性ニューロンの著しい欠乏を引き起こす。
【0205】
一般実験デザイン:
実験1a - MPTPが持続的細胞死を引き起こすことを調べる
対照(非tg)およびトランスジェニックマウスに、無菌0.9%食塩水に溶解したMPTP-HClの腹腔内注射(23ゲージ針、遊離塩基20mg/kg;Sigma, St. Louis, MO, USA)を1日に2時間間隔で5回行う。対照マウスには0.9%食塩水の腹腔内注射を5回行う。これにより、SNの約60%の損傷を引き起こす。2週間の時点で、20匹のC57BL6、10匹の対照、および10匹のhA53T tgを用いて、毒素の正確な用量を確立する。動物を1週間、2週間、1ヶ月間、12ヶ月間および18ヶ月間回復させる。動物を屠殺し、組織学(立体解析学)および生化学的分析のために脳を摘出する。
【0206】
実験2 - 試験薬がMPTP誘導性細胞死を低減するかどうかを調べる
動物を上記の通りに処置する。動物をMPTP注射の2日後に試験薬で死亡するまで処置する。試験薬は経口強制栄養により30mg/kgの1日用量で与える。動物の屠殺時は実験1の分析に依存し、通常は1ヶ月またはそれ以内に行う。
【0207】
薬物投与
薬物を経口強制栄養により30mg/kgの1日用量で投与する。
【0208】
行動モニタリング:
マウスを屠殺前に組織学的分析により評価する。
【0209】
ロータロッド
運動協調性および強さをロータロッドを用いて評価する。ロータロッドは、複数のマウスの同時試験を可能にするため金属ディスクで5つの区画に仕切られた、軸直径3.6cmのプラスチック製回転円筒からなる。マウスを、回転速度を5分間で0〜30rpmに上げる2回のセッションと、回転が5分間一定の16rpmである1回の訓練セッションで訓練する。訓練の2日以内に、動物を16rpmで最大3分間回転するロータロッドで正式に評価し:この1回の試験にあたった時点が記録データの時点である。
【0210】
ポール試験
ポールは長さ700mm、直径5mmの木製の棒である。棒をその基部で支え、垂直に保つ。マウスの全歩行距離は550mmである。マウスがポールを降りるのにかかる時間を最大120秒まで計測する。マウスが落ちた場合、時間は120秒と記録する。
【0211】
(表6)MPTPデータ


【0212】
添付の特許請求の範囲および前記の本発明の説明において、明白な言葉または必要な掛かり合いにより、文脈からそうでないことが求められる場合を除き、「含む(comprise)」なる用語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は包括的な意味で用いられ、すなわち述べられた特徴の存在を明記するが、本発明の様々な態様におけるさらなる特徴の存在または追加を除外することはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩:

式中、
R1およびR2の少なくとも1つがH以外であるという条件で、R1およびR2は、H、置換されていてもよいC1-6アルキル、置換されていてもよいC3-6シクロアルキル、および置換されていてもよいC2-6アルキニルより独立して選択されるか;または
R1およびR2は、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロシクリルを形成し、該5員もしくは6員のヘテロシクリルは、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよく;かつ
R3は、置換されていてもよいC1-6アルキルおよび置換されていてもよいC3-6シクロアルキルより選択され、
但し、
(a)R1およびR2がメチルである場合、R3がCH2CH(CH3)2ではなく;かつ
(b)R1がHであり、かつR2がメチルである場合、R3が、メチル、プロピルおよびシクロプロピルではない。
【請求項2】
さらに
(c)R1およびR2がメチルであり、かつR3がメチル、エチルまたはメチレンシクロプロピルである場合、式Iの薬学的に許容される塩が除外される
ことを条件とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1およびR2がメチルであり、かつR3がメチルである場合、R3が、メチル、エチルおよびメチレンシクロプロピルではない、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
さらに
(c)R1がHであり、かつR2がメチルである場合、R3がエチルではなく;
(d)R1がHであり、かつR2がエチルである場合、R3がC1-2アルキルではない
ことを条件とする、請求項1、2または3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
任意の置換基が、C1-4アルキル、置換されていてもよいアリール、ハロ、置換されていてもよいC3-6シクロアルキル、ならびにNおよびOより選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換されていてもよい5員または6員のヘテロシクリルより選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
R3が、C3-6シクロアルキルで置換されているメチル、またはNおよびOより選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換されていてもよい5員または6員のヘテロシクリルで置換されているメチル;置換C2-6アルキル、および置換されていてもよいC3-6シクロアルキルより選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
R1がHであり、かつR2が、C3-6アルキル、置換C1-6アルキル、置換されていてもよいC1-6アルキル、および置換されていてもよいC2-6アルキニルより選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
R1がC1-6アルキルであり、かつR2が、C2-6アルキル、C1-6置換アルキルおよびC2-6アルキニルより選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
R1およびR2が、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい5員または6員のヘテロシクリルを形成し、該5員または6員のヘテロシクリルが、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよい、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
下記式Iaの化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物:

式中、
R1aはHおよびC1-4アルキルより選択され;
R2aは、C1-4アルキル、C1-6アルキニル、および置換されていてもよいアリールで置換されているC1-4アルキルより選択されるか;または
R1aおよびR2aは、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロシクリルを形成し、該5員もしくは6員のヘテロシクリルは、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよく;かつ
R3aはC1-4アルキルであり、
但し、R1aおよびR2aがメチルである場合、R3aがCH2CH(CH3)2ではない。
【請求項11】

またはその薬学的に許容される塩より選択される、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
R1aがHであり、かつR2aがエチルである場合、R3aがC1-2アルキルではないことを条件とする、請求項10記載の化合物。
【請求項13】
R2aが、C3-4アルキル、C2-6アルキニル、および置換されていてもよいアリールで置換されているC1-4アルキルより選択される、請求項9記載の化合物。
【請求項14】
下記より選択される、請求項10または12記載の化合物:






【請求項15】
下記式Ibの化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物:

式中、
R1およびR2は請求項1で定義した通りであり;かつ
R3bは置換されていてもよいC3-6シクロアルキルである。
【請求項16】
R1およびR2がC1-4アルキルより独立して選択される、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
下記式Icの化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物:

式中、
R1cはHおよびC1-4アルキルより選択され;
R2cは、C1-4アルキル、C2-6シクロアルキル、置換されていてもよいアリールで置換されているメチル、およびC2-4アルキニルより選択されるか;または
R1cおよびR2cは、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロシクリルを形成し、該5員もしくは6員のヘテロシクリルは、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよく;かつ
R3cは、置換されていてもよいC3-6シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、ならびにNおよびOより選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換されていてもよい5員または6員のヘテロシクリルより選択される。
【請求項18】
R2cおよびR3cにおけるアリールがハロで置換されていてもよい、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
R1cがHであり、かつR2cがC3-4アルキルである、請求項17記載の化合物。
【請求項20】
R1cがC1-6アルキルであり、かつR2cが、C1-6アルキルおよびC2-6アルキニルより選択される、請求項17記載の化合物。
【請求項21】
下記またはその薬学的に許容される塩より選択される、請求項17記載の化合物:



【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項23】
下記一般式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与する段階を含む、パーキンソン病の治療のための方法:

式中、
R1およびR2の少なくとも1つはH以外であるという条件で、R1およびR2は、H、置換されていてもよいC1-6アルキル、および置換されていてもよいC2-6アルキニルより独立して選択されるか;または
R1およびR2は、それらが結合しているN原子と一緒になって、置換されていてもよい5員もしくは6員のヘテロシクリルを形成し、該5員もしくは6員のヘテロシクリルは、NおよびOより選択される少なくとも1つのさらなるヘテロ原子を含んでいてもよく;かつ
R3は、置換されていてもよいC1-6アルキル、および置換されていてもよいC3-6シクロアルキルより選択される。
【請求項24】
前記一般式IIの化合物が、請求項1から19のいずれか一項記載の一般式Iの化合物、もしくは下記の化合物のいずれか1つ、またはその薬学的に許容される塩である、請求項23記載の方法:


【請求項25】
前記一般式Iの化合物が、

またはその薬学的に許容される塩より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記一般式Iの化合物が、

またはその薬学的に許容される塩である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
パーキンソン病の治療のための、請求項23から26のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項28】
パーキンソン病の治療のための医薬の製造における、請求項23から26のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項29】
以下の段階を含む、請求項1から21のいずれか一項記載の式Iの化合物の調製のための方法:
(c)脱離基の供給源の存在下で下記式IIIの化合物を環化して下記式IVの化合物を調製する段階であって、

式中、
R3は請求項1で定義した通りであり;かつ
R8はHまたは保護基であり、

式中、
R3およびR8は前記で定義した通りであり;かつ
LGは脱離基である、段階;ならびに
(d)該式IVの化合物を、R1およびR2が請求項1で定義した通りであるNR1R2の供給源でアミノ化し、かつR8が保護基である場合には該式IVの化合物を脱保護する段階。
【請求項30】
以下の段階を含む、前記で定義した式Iの化合物の調製のための方法:
(i)NR3の供給源の存在下で下記式Vの化合物を環化して下記式VIの化合物を調製する段階であって、

式中、
R3は請求項1で定義した通りであり;かつ
LGは脱離基であり、

式中、
R3およびLGは前記で定義した通りである、段階;ならびに
(ii)該式VIの化合物を、R1およびR2が請求項1で定義した通りであるNR1R2の供給源でアミノ化する段階。

【公表番号】特表2012−513416(P2012−513416A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542631(P2011−542631)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001701
【国際公開番号】WO2010/071944
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(503004149)プラナ バイオテクノロジー リミティッド (9)
【Fターム(参考)】