説明

キャップ付チューブ容器及びその製造方法

【課題】チューブノズル部の側面から侵入する湿気によって吐出口近傍及び径小吐出通路近傍において発生する湿気硬化型組成物の硬化を極力回避することができるようにしたキャップ付チューブ容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】チューブ胴部とチューブノズル部とからなるチューブ容器及びキャップを含むキャップ付チューブ容器であって、前記チューブノズル部が、内部に該チューブ胴部と連通する径大吐出通路を形成した径大接合部と、該径大接合部に連設されかつ内部に該径大吐出通路と連通する径中吐出通路を形成した径中接合部と、該径中接合部に連設されかつ内部に該径中吐出通路と連通する径小吐出通路を形成しその先端を吐出口としたノズル本体とからなり、前記キャップが、キャップ本体と、該キャップ本体の上壁内面に垂設されかつ該径大吐出通路に達する長さを有するヒートンとを具備するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型組成物、例えば、湿気硬化型接着剤、湿気硬化型シーリング材等をチューブに収納するにあたり好適に用いられるキャップ付チューブ容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湿気硬化型組成物は、湿気、例えば、空気中の水分によって硬化するタイプの組成物、例えば、変性シリコーン系、シリコーン系、ウレタン系湿気硬化型組成物などが知られており、接着剤やシーリング材として広く使用されている。この湿気硬化型組成物を充填するためのチューブ容器としては金属製チューブ容器とラミネート製チューブ容器とが知られている。金属製チューブ容器の場合は外部から湿気が侵入することはできないので外部からの湿気によって湿気硬化型組成物が硬化してしまうという事故は発生しない。しかし、ラミネート製チューブ容器の場合にはチューブ頭部がプラスチック製であるため湿気の侵入を防ぐことが不可能であり、このような意図しない湿気の侵入による湿気硬化型組成物が硬化してしまうという事故が大きな問題となっている。
【0003】
湿気硬化型接着剤等の湿気硬化型組成物Bを充填するための湿気不透可層(アルミ箔等)を含むラミネートフィルムを用いたラミネートチューブ(以下単にチューブと称する場合がある)及びキャップ、つまりキャップ付チューブ容器の構造としては、図8(特許文献1の図6に相当)に示したものが用いられている。同図において、チューブ72は、内部に湿気硬化型接着剤等の湿気硬化型組成物Bを充填する筒状体からなるチューブ胴部74と該チューブ胴部74の先端部に設けられたチューブノズル部(チューブ頭部)76を有している。
【0004】
該チューブノズル部(チューブ頭部)76の外周面の下部には雄螺子部78が形成されその上部は平滑円周部79となっている。該チューブノズル部(チューブ頭部)76の内部には吐出通路80が形成され、その先端は吐出口82となっている。
【0005】
キャップ84は、下方に開口する円筒状側壁86と該側壁86の上端部に設けられた上壁87とを有するキャップ本体88と、該キャップ本体88の下部内周面に形成されかつ上記チューブノズル部(チューブ頭部)76の雄螺子部78に螺合される雌螺子部90とを有している。92はヒートンで、該キャップ本体88の内上面94の中央部に垂設されかつ該吐出通路80に挿入可能とされている。
【0006】
該チューブ72内に充填された湿気硬化型接着剤等の湿気硬化型組成物Bを使用するには、キャップ84を該チューブノズル部(チューブ頭部)76から取り外し、該チューブ胴部74を指で押圧すれば、湿気硬化型組成物Bが該吐出口82から押し出されて使用される。
【0007】
使用しない時には、該キャップ84の内部空間85をチューブ72のチューブノズル部(チューブ頭部)76に一致させかつ該ヒートン92の先端を該吐出口82に一致させ、該雄螺子部78に雌螺子部90を螺着させることによって、該チューブ72の吐出口82をヒートン92及び内上面94によって閉鎖する。
【0008】
該チューブ72においては、該チューブノズル部(チューブ頭部)76の上部に平滑円周部79が形成されているため、湿気硬化型組成物が該チューブノズル部(チューブ頭部)76に付着している場合に、そのふき取りを容易に行うことができる。また、該チューブノズル部(チューブ頭部)76に湿気硬化型組成物が存在した状態でキャップ84を閉めた状態でも、該平滑円周部79が存在するため、キャップ84を該チューブノズル部(チューブ頭部)76から簡単に取り外すことができるという便利さがある。
【0009】
キャップ84を閉めた場合には、ヒートン92が該吐出通路80に挿入されているので、該吐出通路80とヒートン92とによって形成される狭い間隙に湿気硬化型組成物Bが存在し、この間隙を介して空気中の湿気が浸入することとなる。したがって、外界からチューブ72の内部への湿気の浸入は極めてゆっくりとしており、充填された湿気硬化型組成物Bは、チューブノズル部(チューブ頭部)76近傍での硬化はある程度進行するにしてもチューブ72の内部の湿気硬化型組成物Bまで硬化することはあまりない。
【0010】
しかしながら、湿気の浸入により、吐出通路80とヒートン92とによって形成される間隙に存在する湿気硬化型組成物Bが硬化してしまうとヒートン92が存在していてもキャップ84の開閉操作に支障があることに変わりはない。また、上記間隙部分の湿気硬化型組成物Bが全て硬化してしまうと次にはチューブ胴部74に充填されている湿気硬化型組成物Bが直接硬化を始め、最終的には吐出通路80が閉鎖されてしまうという不都合があった。
【0011】
このような不都合を避けるためにヒートン92を長くしてキャップ84を閉めた場合にヒートン92の先端がチューブ胴部74の内部に達するように構成することも知られている。このように長大なヒートンを用いるとヒートンの抜き差し作業に支障が生ずることはなくなるが、キャップを外した時にヒートンに付着した湿気硬化型組成物によって汚れが発生してしまうという不都合が新たに発生してしまう。
【0012】
そして、この従来型のチューブとキャップの組み合わせにおいては、チューブノズル部(チューブ頭部)とキャップ内周面の間にはわずかな間隙があるのみでほとんど余裕がないため吐出口からの液ダレが多少でもあると、液ダレ分が該吐出口の外面とキャップの内周面との間隙において硬化してしまい、チューブ頭部の吐出口部分とキャップが接着してしまうため、キャップの螺開が極めて困難となるという不都合があった。
【0013】
本願出願人は、上記した従来技術の事情に鑑み、ノズル(吐出口)の開口部から湿気硬化型組成物の液ダレが生じてノズル外周面とキャップ内周面の間に位置したとしてもキャップの開閉に支障がなく、かつ空気中の湿気に起因する硬化反応の進行によるキャップの開閉への影響を極力抑えることができるようにすることを目的として、図9に示したように、(a)湿気硬化型組成物Bを内部に充填するチューブ胴部(充填部)14と、該チューブ胴部(充填部)14の上端部にキャップ22のほぼ肉厚分だけ内方に変位して連設され外周側面に雄螺子部24を設け上部に取付段部26をかつ内部に該チューブ胴部(充填部)14と連通する径大吐出通路28を形成した径大接合部18と、該取付段部26を介して該径大接合部18に連設されかつ内部に該径大吐出通路28と連通する径小吐出通路30を形成しその先端を吐出口32としたノズル本体20とからなり、該径大接合部18と該ノズル本体20とによってチューブノズル部(チューブ頭部)16を構成すると共に柔軟性のある金属材料又は湿気不透過層を含むラミネートフィルムによって形成されたチューブ(チューブ容器本体)12と、(b)下方に開口する円周状側壁34と該円周状側壁34の上端に設けられた上壁36とを有するキャップ本体38と、該径大接合部18の雄螺子部24に対応して該キャップ本体38内に形成された雌螺子部39と、該キャップ本体38の上壁36内面に垂設されかつ該ノズル本体20の吐出口32及び径小吐出通路30を介して該径大接合部18の径大吐出通路28に達する長さを有するヒートン40とからなるキャップ22とを具備し、該キャップ本体38の円周状側壁34を直立又は上部をやや内方に傾斜せしめて形成し、該ヒートン40と該円周状側壁34によって形成されるキャップ空間42を大とし、該キャップ22をチューブノズル部(チューブ頭部)16に接合した際該取付段部26の上方に該ノズル本体20の外周面と該円周状側壁34の内周面によって形成される環状空間44を大としたことを特徴とするチューブノズル部(チューブ頭部)とキャップの接合構造についての提案を既に行った(特許文献1)。このチューブノズル部(チューブ頭部)とキャップの接合構造は液ダレによるキャップの開閉の支障は解消しかつ湿気に起因する硬化反応の進行によるキャップの開閉への影響をかなり抑えることができて市場では高評価を受けている。しかし、ノズル部がプラスチックで形成されるラミネートチューブではこのチューブノズル部(チューブ頭部)とキャップの接合構造においては、チューブノズル部(チューブ頭部)の吐出口に連設する径小吐出通路が比較的長尺に形成されるためにチューブノズル部(チューブ頭部)の側面から侵入する湿気によって吐出口近傍及び径小吐出通路近傍において内容物である湿気硬化型組成物が短時間に硬化され易いという問題が生じていた。なお、上記した特許文献1のチューブノズル部は本発明におけるチューブ頭部に対応するものである。
【0014】
また、チューブ容器の一般的な製造方法については特許文献2に次のように記載されている。チューブ容器は、チューブ胴部成型用の積層シートによる筒状体からなるチューブ胴部と、該チューブ胴部の一方の端部に対して圧縮または射出成型されている熱可塑性合成樹脂性のチューブ頭部、すなわち、口頸部と該口頸部に連なる肩部とからなるチューブ頭部とによって形成されている。このチューブ容器の従来からの製造方法として、例えば、金属箔の表裏両面に合成樹脂層が積層されている積層シートからなる胴部形成用素材を利用し、内周面層がポリエチレンやポリプロピレンによるオレフィン系樹脂層で形成されている筒状体の胴部と、金属箔の表裏両面にポリオレフィン系樹脂が積層されている積層シートを圧空成型またはプレス成型等の冷間成型に付し、さらにこれを打ち抜くことによって得られる截頭円錐状の成型体からなるロンデルとを、所定の圧縮成型または射出成型用の金型内にインサートした状態で、口頸部と該口頸部に連なる截頭円錐状の肩部とからなるチューブ頭部を合成樹脂の圧縮成型または射出成型によって成型することからなる。なお、截頭円錐状の成型体からなるロンデルは、筒状体に対して射出成型されている合成樹脂製の肩部におけるガスバリアー性を改良するものであり、例えば、Al箔の表裏両面にポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂層が積層されている積層シートを圧縮成型または射出成型によって成型される合成樹脂製の肩部の内周面に添う外郭形状の成型体に成型することによって得られるものである。しかし、ロンデルは肩部のバリアー性を向上することができるが細いノズル部までに延長を適用するとフイルムの延展性の限界により不完全な形しか取れない(特許文献3)、又この種のチューブ容器の成型の際にキャップにヒートンが形成されている形状の場合にはキャップのヒートンとチューブ頭部(チューブノズル部)の吐出口部分の内壁部分との形状をぴったりと嵌合させるように成型時に工夫することは従来から課題の一つとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3998299号公報
【特許文献2】特開平4−147837号公報
【特許文献3】特開2002−22507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みなされたもので、チューブ頭部(チューブノズル部)の側面から侵入する湿気によって吐出口近傍及び径小吐出通路近傍において発生する湿気硬化型組成物の硬化を極力回避することができるようにしたキャップ付チューブ容器及び特にキャップのヒートンとチューブ頭部(チューブノズル部)の吐出口部分の内壁部分との形状をぴったりと一致させることができるようにしたキャップ付チューブ容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のキャップ付チューブ容器は、湿気硬化型組成物を内部に充填しかつ湿気不透過層を含むラミネートフィルムによって形成された筒状体からなるチューブ胴部と該チューブ胴部の上端部に連設されたチューブ頭部とからなるチューブ容器本体及び該チューブ頭部に着脱自在に装着されるキャップを含むキャップ付チューブ容器であって、前記チューブ頭部が外周側面に雄螺子部を設け上部に第一取付段部を設けかつ内部に該チューブ胴部と連通する径大吐出通路を形成した径大接合部と、該第一取付段部を介して該径大接合部に連設され上部に第二取付段部を設けかつ内部に該径大吐出通路と連通する径中吐出通路を形成した径中接合部と、該第二取付段部を介して該径中接合部に連設されかつ内部に該径中吐出通路と連通する径小吐出通路を形成しその先端を吐出口としたノズル本体とからなり、前記キャップが、下方に開口する円周状側壁と該円周状側壁の上端に設けられた上壁とを有するキャップ本体と、該径大接合部の雄螺子部に対応して該キャップ本体内に形成された雌螺子部と、該キャップ本体の上壁内面に垂設されかつ該ノズル本体の吐出口及び径小吐出通路及び該径中接合部の径中吐出通路を介して該径大接合部の径大吐出通路に達する長さを有しかつ該吐出口及び径小吐出通路の内周面に当接する状態で挿入可能とされたヒートンとを具備することを特徴とする。
【0018】
本発明のキャップ付チューブ容器の製造方法は、本発明のキャップ付チューブ容器の製造方法であって、前記筒状体からなるチューブ胴部と該チューブ胴部の上端部に連設されかつ圧縮成型又は射出成型によって常法により成型されたチューブ頭部とからなるチューブ容器本体を作製する工程と、前記キャップを射出成型によって常法により成型し冷却固化するキャップの成型工程と、前記成型されたチューブ頭部が成型後の所定時間範囲内に前記冷却固化されたキャップのヒートンを該チューブ頭部の吐出口、該径小吐出通路及び該径中吐出通路を介して該径大吐出通路に達するように挿通するとともに該キャップ本体の雌螺子部を該チューブ頭部の雄螺子部に螺合させることによって該キャップを該チューブ頭部に装着するキャッピング工程と、該キャップを該チューブ頭部に装着させた状態で該チューブ容器を冷却固化する工程と、を含み、前記成型後の所定時間範囲内が5秒〜120分であるとともに前記ヒートンの直径が前記成型後の所定時間範囲内の状態である前記チューブ頭部の吐出口及び径小吐出通路の直径よりもやや大に形成され、前記チューブ頭部の材質がオレフィン樹脂であり、かつ該冷却固化後のチューブ容器本体における吐出口及び径小吐出通路が、前記ヒートンが該吐出口及び径小吐出通路の内周面に当接する状態で挿入可能とされる形状を有するようにしたことを特徴とする。上記オレフィン樹脂としてはポリプロピレン又は硬質ポリエチレンを挙げることができる。前記成型後の所定時間範囲内は5秒〜120分であるが、さらに好ましくは15秒〜30分であり、最も好ましくは30秒〜5分である。
【0019】
前記成型されたチューブ容器本体のチューブ頭部の吐出口及び径小吐出通路の内周面が成型後の時間範囲内に前記冷却固化されたキャップのヒートンを該吐出口、該径小吐出通路及び該径中吐出通路を介して該径大吐出通路に達するように挿通する際の前記ヒートンの直径としては、前記チューブ容器本体のチューブ頭部がその成型直後の形状追従性を維持している状態で、そのチューブ頭部の吐出口及び径小吐出通路の直径よりもやや大に形成するのが好適であり、例えば、6〜26%大であり、好ましくは9〜23%大、さらに好ましくは15〜18%大であるように設定するのが好適である。
【0020】
このように前記成型されたチューブ容器本体のチューブ頭部の吐出口及び径小吐出通路の内周面が成型後の所定時間範囲内、つまり形状追従性を維持している状態で挿通するヒートンの直径を前記チューブ頭部の吐出口及び径小吐出通路の直径よりもやや大に形成することによって、径大とした該ヒートンが径小とされた該チューブ頭部の吐出口及び径小吐出通路に挿通された状態(該チューブ頭部の吐出口及び径小吐出通路の内周面が成型直後の形状追従性を維持しているので径大なるヒートンを挿通することができる)で、つまり該ヒートンが該吐出口及び径小吐出通路の内周面に当接した状態で該チューブ頭部が冷却固化されるので、該ヒートンの直径サイズにぴったりと一致した状態の該吐出口及び径小吐出通路を有するチューブ頭部が成型されることとなる。該チューブ頭部の材質としては、該チューブ頭部がこのように所定時間の流動状態を維持することができるように作用する材質を採用することが必要であるが、オレフィン樹脂、例えばポリプロピレン又は硬質ポリエチレンを使用するのが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のキャップ付チューブ容器によれば、チューブ頭部の側面から侵入する湿気によって吐出口近傍及び径小吐出通路において発生する湿気硬化型組成物の硬化を極力回避することができ、かつ吐出通路を径大、径中、径小の3つに区分したので、チューブ頭部の吐出口の視認性が良好となり、塗布作業をする際に作業者が吐出口を確認しながら塗布でき、作業性が向上するという効果を奏する。また、本発明のキャップ付チューブ容器の製造方法は、ヒートンの直径サイズにぴったりと一致した状態の吐出口及び径小吐出通路を有するチューブ頭部を成型することができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のキャップ付チューブ容器の一つの実施の形態の断面説明図で、キャップをチューブ頭部に螺着した状態を示す。
【図2】図1のキャップ付チューブ容器においてキャップをチューブ頭部から外した状態を示す断面説明図である。
【図3】図1のキャップ付チューブ容器においてその要部を示す摘示部分断面説明図である。
【図4】本発明方法の工程順を示すフローチャートである。
【図5】本発明のキャップ付チューブ容器に湿気硬化型組成物を充填して所定の日数放置した場合における湿気硬化型組成物の硬化の程度についての実施例1の実験結果を示す図面である。
【図6】従来構造のキャップ付チューブ容器(ラミネートフイルム製)に湿気硬化型組成物を充填して所定の日数放置した場合における湿気硬化型組成物の硬化の程度についての比較例1の実験結果を示す図面である。
【図7】従来構造のキャップ付チューブ容器(金属製)に湿気硬化型組成物を充填して所定の日数放置した場合における湿気硬化型組成物の硬化の程度についての比較例2の実験結果を示す図面である。
【図8】従来のキャップ付チューブ容器の1例を示す断面説明図である。
【図9】従来のキャップ付チューブ容器の他の例を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の一つの実施の形態を添付図面中、図1〜図3に基づいて説明する。図1は本発明のキャップ付チューブ容器の一つの実施の形態の断面説明図で、キャップをチューブ頭部に螺着した状態を示す。図2は図1のキャップ付チューブ容器においてキャップをチューブ頭部から外した状態を示す断面説明図である。図3は図1のキャップ付チューブ容器においてその要部を示す摘示部分断面説明図である。なお、図1〜図3において、前記した図7における部材と同等又は対応する部材は同一の符号を使用する。
【0024】
図中、10は本発明のキャップ付チューブ容器で、湿気硬化型接着剤やシーリング材等の湿気硬化型組成物Bを内部に充填するチューブ容器本体12を有している。該チューブ容器本体12は湿気不透過層(アルミ箔等)を含むラミネートフィルムによって形成された筒状体からなるチューブ胴部14を有している。16はチューブ頭部で、該チューブ胴部14の上端部に連設されている。22はキャップで、該チューブ頭部16に着脱自在に螺合されている。
【0025】
前記チューブ頭部16は、径大接合部18、径中接合部100及びノズル本体20を含んでいる。該径大接合部18は該チューブ胴部14の上端部に後述するキャップ22のほぼ肉厚分だけ内方に変位して連設されている。該径大接合部18の外周側面には雄螺子部24が設けられている。また該径大接合部18の上部には第一取付段部27が設けられている。さらに該径大接合部18の内部には該チューブ胴部14と連通する径大吐出通路28が形成されている。
【0026】
前記径中接合部100は該第一取付段部27を介して該径大接合部18に連設されている。該径中接合部100の上部には第二取付段部102が設けられている。かつ該径中接合部100の内部には該径大吐出通路28と連通する径中吐出通路104が形成されている。
【0027】
前記ノズル本体20は該第二取付段部102を介して該径中接合部100に連設されている。該ノズル本体20の内部には該径中吐出通路104と連通する径小吐出通路30が形成されており、該径小吐出通路30の先端は吐出口32となっている。
【0028】
22はキャップで、下方に開口する円周状側壁34と該側壁34の上端に設けられた上壁36とを有するキャップ本体38と、該径大接合部18の雄螺子部24に対応して該キャップ本体38内に形成された雌螺子部39と、該キャップ本体38の上壁36の内面に垂設されかつ該ノズル本体20の吐出口32、径小吐出通路30及び径中吐出通路104を介して該径大接合部18の径大吐出通路28に達する長さを有するヒートン40とを有している。
【0029】
41は該キャップ本体38の上壁36の内面でかつ該ヒートン40を囲繞するように垂設された環状壁で、該環状壁41と該ヒートン40の基端部によって環状凹溝43が形成されている。該環状凹溝43にはノズル本体20の先端部が挿入又は嵌入着脱自在とされる。この環状凹溝43はノズルの閉塞性に優れ、ノズルの先端に付着した湿気硬化型組成物Bが周辺に広がったり、固化して傘状又はキノコ状の固形物を形成するようなこともなくなる。
【0030】
該キャップ本体38の円周状側壁34は直立又は上部をやや内方に傾斜せしめて形成されている。そのため、該ヒートン40と該円周状側壁34によって形成されるキャップ空間42を極めて大とすることができる。なお、キャップ22をチューブ頭部16に接合すると、第一取付段部27の上方で径中接合部100及びノズル本体20の外周面と該円周状側壁34の内周面によって環状空間44が形成される。
【0031】
該ヒートン40の長さをその先端部が該キャップ本体38の下端面の凸部38aに達するように形成しておけば、ヒートン40に付着した湿気硬化型組成物Bにより周囲を汚すことなく、又ヒートン40を前記吐出口32に挿通する操作も容易であり、水分の浸入による接着剤の硬化に対する吐出路の確保もできる。
【0032】
上記の構成としたチューブ頭部16とキャップ22の接合構造においては、前記環状空間44を大きく形成することができるため、吐出口32から湿気硬化型組成物Bが液ダレしても該環状空間44内に相当量を収納することができる。そのため、従来のチューブ頭部とキャップの接合構造のように、両者の間に余裕がない場合には液ダレが多少でもあると、液ダレ分が該チューブ頭部の外面とキャップの内面との間隙において硬化して両者が接着してしまい、キャップの螺開が極めて困難となるというような不都合を回避することができる。
【0033】
また、該キャップ22を螺締した場合には、ヒートン40が該径小吐出通路30に挿入されているが、該径小吐出通路30とヒートン40とによって形成される狭い間隔に湿気硬化型組成物Bが存在し、この間隔を介して空気中の湿気が浸入することとなる。したがって、外界からチューブ容器本体12の内部への湿気の浸入は極めてゆっくりしており、充填された湿気硬化型組成物Bは、吐出口32近傍での硬化はある程度進行するにしてもチューブ容器本体12の内部の湿気硬化型組成物Bまで硬化することはあまりない。
【0034】
本発明の構成の場合には、さらに、該径小吐出通路30に連通して径中吐出通路104及び該径中吐出通路104に連通して径大吐出通路28が設けられているため、該径小吐出通路30部分の湿気硬化型組成物Bが硬化したとしても、次に位置する径中吐出通路104内に存在する湿気硬化型組成物Bの量は径小吐出通路30内に存在する湿気硬化型組成物Bの量に比べて大量であるので、該径中吐出通路104内に存在する湿気硬化型組成物Bの硬化にはさらに時間が必要となる。
【0035】
また、該径中吐出通路104のさらに次に位置する径大吐出通路28内に存在する湿気硬化型組成物Bの量は径小吐出通路30内に存在する湿気硬化型組成物Bの量に比べてはるかに大量であるので、該径大吐出通路28内に存在する湿気硬化型組成物Bの硬化にはさらに長大な時間が必要となる。したがって、径小吐出通路30、径中吐出通路104及び径大吐出通路28に存在する湿気硬化型組成物Bがいずれも硬化してしまい、ヒートン40の抜き差しが困難となるという不都合な事態はほとんど回避されることとなる。
【0036】
さらに、本発明のチューブ容器本体12のチューブ頭部16は、径大接合部18、径中接合部100及びノズル本体20を備えており、図1〜図3によく示されるように、その先端方向に向かって第一取付段部27及び第二取付段部102を介して径が2段階方式で徐々に小となっている。このような構成とすることによって、ノズル本体20の先端部の吐出口32が上方からでも見易く視認性が良好となっているため、上記した利点に加えて、本発明のチューブ容器本体12を用いて内容物である湿気硬化型組成物Bを塗布する作業を行う際には吐出口32を見ながら塗布できるために大変に塗布作業が容易になるという利点がある。
【0037】
次に、本発明のキャップ付チューブ容器の製造方法について、添付図面中、図4によって説明する。図4は本発明方法の工程順を示すフローチャートである。
【0038】
本発明のキャップ付チューブ容器の製造方法は、図1〜図3に示した本発明のキャップ付チューブ容器を製造する方法である。本発明方法においては、まずチューブ容器本体作製工程によってチューブ容器本体12を作製する。このチューブ容器本体作製工程は従来から種々の手法が知られているが、その一例を図4に示してある。
【0039】
図4の例では、チューブ容器本体作製工程は、チューブ胴部14を作製するためのラミネートチューブ用原反を準備する工程(図4のステップ200)からスタートする。この原反はチューブ巻き工程(図4のステップ202)において筒状に巻かれかつ必要な折りたたみ加工が加えられる。ついで、このチューブ巻き工程を経た筒状体は所定長さに切断されてチューブ胴部14が形成される(図4のステップ204)。次に前記チューブ胴部14と該チューブ胴部14の上端部に圧縮成型又は射出成型によって常法によりチューブ頭部16を成型しチューブ容器本体12とする工程(図4のステップ206)が行われる。
【0040】
このチューブ頭部16の成型方法は従来公知であり、前記した特許文献2又は3に記載されるように、例えば、金属箔の表裏両面に合成樹脂層が積層されている積層シートからなる胴部形成用素材を利用し、内周面層がポリエチレンやポリプロピレンによるオレフィン系樹脂層で形成されている筒状体の胴部を、所定の圧縮成型または射出成型用の金型内にインサートした状態で、口頸部と該口頸部に連なる截頭円錐状の肩部とからなるチューブ頭部を合成樹脂の圧縮成型または射出成型によって成型することができる。また、このチューブ容器本体作製工程とは別に、前記ヒートン付キャップ22を射出成型によって常法により成型する工程(図4のステップ300)が設けられている。このヒートン付キャップ22は成型後冷却固化される。
【0041】
本発明方法における最大の特徴は前記チューブ容器本体12のチューブ頭部16のノズル本体20の吐出口32及び径小吐出通路30の形状がキャップ22のヒートン40が挿通される際にぴったりと嵌合した状態のノズル本体20部分の形状を形成する点にある。このような本発明特有のチューブ頭部16のノズル本体20の形状は次のようにして形成される。前記チューブ容器本体作製工程で作製されたチューブ容器本体12はついでキャップ22をチューブ頭部16に螺着装着してキャッピングするキャッピング工程(図4のステップ208)に搬送される。この作製されたチューブ容器本体12がキャッピング工程に到達するまでの搬送時間は通常の工程ではほぼ2分程度である。このキャッピング工程に対しては、上記したキャップ成型工程(図4のステップ300)で成型されたキャップ22が供給される。
【0042】
キャッピング工程(図4のステップ208)に搬送されたチューブ容器本体12のチューブ頭部16に対しては、キャップ成型工程(図4のステップ300)から供給されるキャップ22が螺合装着される。このキャッピング工程におけるキャッピング作業はチューブ容器本体12のチューブ頭部16の吐出口32及び径小吐出通路30の内周面が成型後の所定時間範囲内で形状追従性を有している状態において、例えば、成型後5秒〜120分、さらに好ましくは15秒〜30分、最も好ましくは30秒〜5分の時間範囲内に前記冷却固化されたキャップ22のヒートン40を該吐出口32、該径小吐出通路30及び該径中吐出通路104を介して該径大吐出通路28に達するように挿通する(図4のステップ208)。なお、チューブ容器本体12のチューブ頭部16の成型後の所定時間範囲については上記したようにかなりの時間幅があるが、通常の製造工程におけるチューブ容器本体12のチューブ頭部16の成型後からのキャッピング工程までへの搬送時間は2分程度であるので、特別なタイミングを取る必要もなく、搬送されてきたチューブ容器本体12に対してキャッピング作業を行うことにより、本発明方法におけるチューブ容器本体12のチューブ頭部16の成型後の所定時間範囲に収めることが可能である。
【0043】
前記したキャッピング工程(図4のステップ208)において、前記成型されたチューブ容器本体12のチューブ頭部16の吐出口32及び径小吐出通路30の内周面が成型後の所定時間範囲内で形状追従性を有している状態において前記冷却固化されたキャップ22のヒートン40を吐出口32及び径小吐出通路30に挿通する際の前記ヒートンの直径としては、前記成型後の所定時間範囲内でのチューブ頭部16の吐出口32及び径小吐出通路30の直径よりもやや大に形成されており、例えば、6〜26%大であり、好ましくは9〜23%大、さらに好ましくは15〜18%大であるように設定される。
【0044】
このように前記成型されたチューブ容器本体12のチューブ頭部16の吐出口32及び径小吐出通路30の内周面が成型後の所定時間範囲内に挿通するヒートン40の直径を前記チューブ頭部16の吐出口32及び径小吐出通路30の直径よりもやや大に形成することによって、径大とした該ヒートン40が径小とされた該チューブ頭部16の吐出口32及び径小吐出通路30に挿通された状態で、つまり該ヒートン40が該吐出口32及び径小吐出通路30の内周面に当接した状態で該チューブ頭部が冷却固化されるので、該ヒートンの直径サイズにぴったりと一致した状態の該吐出口32及び径小吐出通路30を有するチューブ頭部16が形成されることとなる。該チューブ頭部16の材質としては、該チューブ頭部16がこのように所定時間の形状追従性を維持することができるように作用する材質を採用することが必要であるが、オレフィン樹脂、例えばポリプロピレン又は硬質ポリエチレンを使用するのが好適である。
【0045】
さらにいえば、結晶構造を部分的にもつポリプロピレン、硬質ポリエチレン等のオレフィン樹脂は、成型後に液体の溶融状態から固化し固体となるが、結晶化は高分子構造の制約により所定の時間を要する。この所定時間の間ではオレフィン樹脂は非晶構造が多く、ゴム状弾性体状態に似た状態であり、この間にチューブ頭部16にキャップ22をキャッピングすることにより1〜3日後の最終の結晶状態となったとき、密閉方向の残留ヒズミが残るためヒートン表面に対して良好な締付力を作用させることができる状態で冷却固化することができる。本発明方法においては、成型後の所定時間範囲内は、作業効率等を考慮して、5秒〜120分、さらに好ましくは15秒〜30分、最も好ましくは30秒〜5分と規定しているものである。
【0046】
最後に、該キャップ22の雌螺子部39を該チューブ頭部16の雄螺子部に螺合させた状態で該チューブ容器を冷却固化する工程(図4のステップ210)が行われて、本発明のキャップ付チューブ容器10が製造される。
【0047】
上述したように、本発明方法においては、チューブ頭部16が成型後の所定時間範囲内で形状追従性を維持している状態で前記ヒートン40を吐出口32及び径小吐出通路30に挿通し、その状態で冷却固化することによってヒートン40の直径サイズにぴったりと一致した状態の該吐出口32及び径小吐出通路30を有するチューブ頭部16を作製する点が大きな特徴であり、このような成型時の作用を行うチューブ頭部の合成樹脂材質としては、オレフィン樹脂、例えば、ポリプロピレン又は硬質ポリエチレンを適用するのが最適である。
【実施例】
【0048】
以下に本発明のキャップ付チューブ容器についての実施例によって説明するが、本発明がこの実施例に限定されないことはいうまでもない。
(実施例1)
図1に示した構造と同様の構造でラミネートフィルム(材質:PE/PET/EMAA(エチレンーメタクリル酸共重合体)/Al/EMAA/共押出しシートの二軸延伸したもの(PE/Ny/EVOH(エチレンービニルアルコール共重合体)/Ny/PE/L−LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン))によって本発明のキャップ付チューブ容器(容量20ml)を作製し、またキャップ(材質:PP)を作製した。この本発明のチューブ容器に湿気硬化型組成物(セメダイン株式会社製接着剤「スーパーX」)を充填し吐出口をキャップで閉塞し、硬化促進保管条件(50℃、湿度85%)で、14日放置後、28日放置後、56日放置後におけるチューブ容器内の湿気硬化型組成物の硬化の程度についての実験を行い、その結果を図5に示した。図5(a1)〜(a4)は実施例1におけるチューブ容器の放置日数に対するチューブ容器内部の湿気硬化型組成物の硬化の程度を示す断面説明図で、(a1)は充填直後の状態(評価○)、(a2)は14日放置後(評価○)、(a3)は28日放置後(評価○)、(a4)は56日放置後(評価○)における硬化の程度を示す。
【0049】
(比較例1)
図9に示した従来構造(一つの取付段部を設けた構造)と同様の構造でラミネートフィルム(実施例1と同様の材質)によってチューブ容器(容量20ml)を作製し、またキャップ(実施例1と同様の材質)を作製した。この従来構造のラミネートチューブ容器におけるチューブ頭部及びチューブ胴部の肉厚は実施例1のチューブ容器の肉厚と同等とし、またキャップについても実施例1のキャップの肉厚と同等とした。この従来構造のラミネートチューブ容器に実施例1と同様の湿気硬化型組成物を充填し、かつ実施例1と同様の条件で同様の日数放置後におけるチューブ容器内の湿気硬化型組成物の硬化の程度についての実験を行い、その結果を図6に示した。図6(b1)〜(b4)は比較例1におけるチューブ容器の放置日数に対するチューブ容器内部の湿気硬化型組成物の硬化の程度を示す断面説明図で、(b1)は充填直後の状態(評価○)、(b2)は14日放置後(評価△)、(b3)は28日放置後(評価△)、(b4)は56日放置後(評価△)における硬化の程度を示す。
【0050】
(比較例2)
図9に示した従来構造(一つの取付段部を設けた構造)と同様の構造で金属材料(スズ)によって金属製チューブ容器(20ml)を作製し、またキャップ(実施例1と同様の材質)を作製した。この従来構造の金属製チューブ容器におけるチューブ頭部及びチューブ胴部の肉厚は実施例1のチューブ容器の肉厚と同等とし、またキャップについても実施例1のキャップの肉厚と同等とした。この従来構造の金属製チューブ容器に実施例1と同様の湿気硬化型組成物を充填し、かつ実施例1と同様の条件で同様の日数放置後におけるチューブ容器内の湿気硬化型組成物の硬化の程度についての実験を行い、その結果を図7に示した。図7(c1)〜(c4)は比較例2における金属製チューブ容器の放置日数に対する金属製チューブ容器内部の湿気硬化型組成物の硬化の程度を示す断面説明図で、(c1)は充填直後の状態(評価○)、(c2)は14日放置後(評価○)、(c3)は28日放置後(評価○)、(c4)は56日放置後(評価△)における硬化の程度を示す。なお、図5〜図7において、湿気硬化型組成物の硬化部分は黒色部分とし符号Kで示してある。評価○は内容物の吐出ができかつキャップの開閉操作を円滑に行える状態、評価△は内容物の吐出はできるがキャップの開閉操作時の抵抗感が大きい状態を示す。
【0051】
(実験結果の考察)
図5〜図7を参照して実験結果についての考察を記載する。実施例1では14日放置後(図5のa2)においてノズル部での硬化はなく、第1取付段部及び第2取付段部の内面側で多少の硬化がみられるが、内容物の吐出ができかつキャップの開閉操作を円滑に行える状態であった(評価○)。これに対して、比較例1では14日放置後(図6のb2)においてノズル部の内面とヒートンとの間に既に硬化部分Kが形成され、また取付段部の内面側でも硬化が始まっており、内容物の吐出ができるがキャップの開閉操作時の抵抗感が大きかった(評価△)。また、比較例2の金属製チューブ容器では14日放置後(図7のc2)においてノズル先端部よりの水分が多少浸入しており、その水分浸入部分がわずかに硬化しているが、内容物の吐出ができかつキャップの開閉操作を円滑に行える状態であった(評価○)。
【0052】
実施例1では28日放置後(図5のa3)においてノズル部での硬化はなく、第1取付段部及び第2取付段部の内面側で硬化部分Kが14日放置後(図5のa2)よりも増大した状態がみられるが、内容物の吐出ができかつキャップの開閉操作を円滑に行える状態であった(評価○)。これに対して、比較例1では28日放置後(図6のc3)においてノズル部の内面とヒートンとの間の硬化部分Kが形成されており、また取付段部の内面側の硬化は14日放置後(図6のb2)よりも更に増大しており、内容物の吐出ができるがキャップの開閉操作時の抵抗感がさらに大きかった(評価△)。また、比較例2の金属製チューブ容器では28日放置後(図7のc3)において取付段部の内面側の硬化部分Kは14日放置後(図7のc2)よりも増大した状態が見られるが、内容物の吐出ができかつキャップの開閉操作を円滑に行える状態であった(評価○)。
【0053】
実施例1では56日放置後(図5のa4)においてノズル部での硬化はなく、第1取付段部及び第2取付段部の内面側で硬化部分Kが28日放置後(図5のa3)よりもさらに増大した状態がみられるが、内容物の吐出ができかつキャップの開閉操作を円滑に行える状態であった(評価○)。これに対して、比較例1では56日放置後(図6のb4)においてノズル部の内面とヒートンとの間の硬化部分Kが形成されており、また取付段部の内面側の硬化は28日放置後(図6のb3)よりも更に一層増大しており、内容物の吐出ができるがキャップの開閉操作時の抵抗感が益々大きかった(評価△)。また、比較例2の金属製チューブ容器では28日放置後(図7のc4)において取付段部の内面側の硬化部分Kが14日放置後(図7のc3)よりも増大した状態が見られ、内容物の吐出ができるがキャップの開閉操作時の抵抗感が大きかった(評価△)。
【0054】
上記した実施例1、比較例1及び比較例2の実験結果から次のことが明らかとなった。図9に示した従来構造(一つの取付段部を設けた構造)であると、ラミネートチューブ容器(比較例1)の場合では、湿気硬化型組成物を充填後14日放置後には早くもキャップの開閉操作時の抵抗感が大となるという不都合が生じ、その後の放置時間の経過とともにますます不都合は増大してしまい、また同様の従来構造の金属製チューブ容器(比較例2)の場合には、湿気の浸入はノズルの先端部のみからであるので、比較例1に比較して充填した湿気硬化型組成物の硬化は大幅に遅延するものの、湿気硬化型組成物の充填後56日放置後になるとそれでもキャップの開閉操作時の抵抗感が大となるという不都合が生じる。一方、本発明のラミネートチューブ容器(実施例1)の場合には、湿気硬化型組成物の充填後56日放置後であっても、第1取付段部及び第2取付段部の内面側で硬化部分が形成されるものの、ノズル部の硬化はなく、内容物の吐出ができかつキャップの開閉操作を円滑に行える状態であり、ラミネートチューブ容器において取付段部が一つの構造(比較例1)に比べて取付段部を二つとした構造(本発明構造)のチューブ容器は格段に優れた吐出性能を有することが判明した。
【符号の説明】
【0055】
10:キャップ付チューブ容器、12:チューブ容器本体、14、74:チューブ胴部、16、76:チューブ頭部、18:径大接合部、20:ノズル本体、22、84:キャップ、24、78:雄螺子部、27:第一取付段部、28:径大吐出通路、30:径小吐出通路、32、82:吐出口、34:円周状側壁、36、87:上壁、38、88:キャップ本体、38a:凸部、38b:凹部、39、90:雌螺子部、40、92:ヒートン、41:環状壁、42:キャップ空間、43:環状凹溝、44:環状空間、72:チューブ、79:平滑円周部、80:吐出通路、85:内部空間、86:円筒状側壁、94:内上面、100:径中接合部、102:第二取付段部、104:径中吐出通路、B:湿気硬化型組成物、K:硬化部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化型組成物を内部に充填しかつ湿気不透過層を含むラミネートフィルムによって形成された筒状体からなるチューブ胴部と該チューブ胴部の上端部に連設されたチューブ頭部とからなるチューブ容器本体及び該チューブ頭部に着脱自在に装着されるキャップを含むキャップ付チューブ容器であって、前記チューブ頭部が外周側面に雄螺子部を設け上部に第一取付段部を設けかつ内部に該チューブ胴部と連通する径大吐出通路を形成した径大接合部と、該第一取付段部を介して該径大接合部に連設され上部に第二取付段部を設けかつ内部に該径大吐出通路と連通する径中吐出通路を形成した径中接合部と、該第二取付段部を介して該径中接合部に連設されかつ内部に該径中吐出通路と連通する径小吐出通路を形成しその先端を吐出口としたノズル本体とからなり、前記キャップが、下方に開口する円周状側壁と該円周状側壁の上端に設けられた上壁とを有するキャップ本体と、該径大接合部の雄螺子部に対応して該キャップ本体内に形成された雌螺子部と、該キャップ本体の上壁内面に垂設されかつ該ノズル本体の吐出口及び径小吐出通路及び該径中接合部の径中吐出通路を介して該径大接合部の径大吐出通路に達する長さを有しかつ該吐出口及び径小吐出通路の内周面に当接する状態で挿入可能とされたヒートンとを具備することを特徴とするキャップ付チューブ容器。
【請求項2】
請求項1記載のキャップ付チューブ容器の製造方法であって、前記筒状体からなるチューブ胴部と該チューブ胴部の上端部に連設されかつ圧縮成型又は射出成型によって常法により成型されたチューブ頭部とからなるチューブ容器本体を作製する工程と、前記キャップを射出成型によって常法により成型し冷却固化するキャップの成型工程と、前記成型されたチューブ頭部が成型後の所定時間範囲内に前記冷却固化されたキャップのヒートンを該チューブ頭部の吐出口、該径小吐出通路及び該径中吐出通路を介して該径大吐出通路に達するように挿通するとともに該キャップ本体の雌螺子部を該チューブ頭部の雄螺子部に螺合させることによって該キャップを該チューブ頭部に装着するキャッピング工程と、該キャップを該チューブ頭部に装着させた状態で該チューブ容器を冷却固化する工程と、を含み、前記成型後の所定時間範囲内が5秒〜120分であるとともに前記ヒートンの直径が前記成型後の所定時間範囲内の状態である前記チューブ頭部の吐出口及び径小吐出通路の直径よりもやや大に形成され、前記チューブ頭部の材質がオレフィン樹脂であり、かつ該冷却固化後のチューブ容器本体における吐出口及び径小吐出通路が、前記ヒートンが該吐出口及び径小吐出通路の内周面に当接する状態で挿入可能とされる形状を有するようにしたことを特徴とするキャップ付チューブ容器の製造方法。
【請求項3】
前記キャッピング工程における前記ヒートンの直径が、前記成型後の所定時間範囲内の状態である前記チューブ頭部の吐出口及び径小吐出通路の直径よりも、6〜26%大であるように設定することを特徴とする請求項2記載のキャップ付チューブ容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−245997(P2012−245997A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118118(P2011−118118)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】