説明

キャブオーバ型車両の前部構造

【課題】 本発明は、トラック等のキャブオーバ型車両の前部構造に関し、車両の衝突時にキャブの下部にエンジンが衝突することを簡易に防止することを目的とする。
【解決手段】 フレームの前端に回動可能に支持されるチルト式のキャブを、トーションバーアームによりチルト方向に付勢するとともに、前記キャブの下方に前記フレームに支持されるエンジンを配置してなるキャブオーバ型車両の前部構造において、前記トーションバーアームの後部に、衝突時における前記エンジンの前方への移動を阻止する移動阻止部を形成してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等のキャブオーバ型車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブオーバ型のトラックは、乗用車やピックアップトラックのような衝突時のクラッシャブルゾーンを持たない。従って、スペースを広くとれ、また、取り回し性が良好であるという利点を有する。
【特許文献1】特開2004−161035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、キャブオーバ型のトラックでは、車両の衝突時にキャブの下部にエンジンが衝突し、キャブの下部が潰れるおそれがあるという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる従来の問題を解決するためになされたもので、車両の衝突時にキャブの下部にエンジンが衝突することを簡易に防止することができるキャブオーバ型車両の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1のキャブオーバ型車両の前部構造は、フレームの前端に回動可能に支持されるチルト式のキャブを、トーションバーアームによりチルト方向に付勢するとともに、前記キャブの下方に前記フレームに支持されるエンジンを配置してなるキャブオーバ型車両の前部構造において、前記トーションバーアームの後部に、衝突時における前記エンジンの前方への移動を阻止する移動阻止部を形成してなることを特徴とする。
【0006】
請求項2のキャブオーバ型車両の前部構造は、請求項1記載のキャブオーバ型車両の前部構造において、前記移動阻止部は、前記トーションバーアームの後部から内側方向に向けて突出形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3のキャブオーバ型車両の前部構造は、請求項2記載のキャブオーバ型車両の前部構造において、前記移動阻止部は、前記トーションバーアームの後部から内側下方向に向けて突出形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のキャブオーバ型車両の前部構造では、車両の衝突によりブラケットを介してフレームに支持されるエンジンが前方に移動すると、エンジンがトーションバーアームの後部に形成される移動阻止部に衝突し、エンジンの前方への移動が阻止される。従って、車両の衝突時にキャブの下部にエンジンが衝突することを簡易に防止することができる。
【0009】
請求項2のキャブオーバ型車両の前部構造では、移動阻止部が、トーションバーアームの後部から内側方向に向けて突出形成される。従って、所定間隔を置いて配置される一対のトーションバーアームの間隔が、エンジンの左右方向の幅より大きい場合にも、エンジンを移動阻止部に衝突させ、エンジンの前方への移動を阻止することができる。
【0010】
請求項3のキャブオーバ型車両の前部構造では、移動阻止部が、トーションバーアームの後部から内側下方向に向けて突出形成される。従って、トーションバーアームの後部の上端位置が、エンジンの上端位置より高い場合にも、エンジンを移動阻止部に衝突させ、エンジンの前方への移動を阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1および図2は、本発明のキャブオーバ型車両の前部構造の第1の実施形態を示している。この実施形態では、本発明がキャブオーバ型トラックに適用される。
【0012】
このキャブオーバ型トラックは、キャブ11、トーションバー装置13、フレーム15、エンジン17、ラジエータ19等を有している。
【0013】
キャブ11の前端は、チルトヒンジブラケット21を介してフレーム15の前端に回動可能に支持されている。フレーム15は、左右方向に所定間隔を置いて一対配置されている。
【0014】
トーションバー装置13は、トーションバー23、トーションバーアーム25を有している。トーションバー23は、前後方向に一対配置されている。トーションバー23はフレーム15に跨って配置されている。トーションバー23の両側は、チルトヒンジブラケット21に挿通されフレーム15に支持されている。トーションバー23のフレーム15の外側となる位置には、トーションバーアーム25の一端が嵌合されている。トーションバー23の他端はチルトヒンジブラケット21に固定されている。そして、キャブ11の下側がトーションバーアーム25によりチルト方向Aに付勢されている。
【0015】
エンジン17は、キャブ11の下方に配置されている。エンジン17は、図示しないブラケットを介してフレーム15に支持されている。エンジン17の上端17aは、トーションバーアーム25の後部の上端25aの位置より高い位置に位置している。エンジン17の前方には、ラジエータ19が配置されている。
【0016】
この実施形態では、トーションバーアーム25の後部に、衝突時におけるエンジン17の前方への移動を阻止する移動阻止部25bが一体形成されている。移動阻止部25bは、トーションバーアーム25の後部から内側方向に向けて、かつ、水平方向に突出形成されている。
【0017】
上述したキャブオーバ型車両の前部構造では、例えばキャブ11の前面に他の車両が正面衝突すると、衝撃によりエンジン17をフレーム15に固定する図示しないブラケットが破壊し、エンジン17が前方に移動する。そして、トーションバーアーム25の後部に形成される移動阻止部25bに衝突し、エンジン17の前方への移動が阻止される。
【0018】
上述したキャブオーバ型車両の前部構造では、トーションバーアーム25の後部に、衝突時におけるエンジン17の前方への移動を阻止する移動阻止部25bを形成したので、車両の衝突時にキャブ11の下部にエンジン17が衝突することを簡易に防止することができる。従って、キャブ11の下部がエンジン17により潰されることが少なくなり、乗員の安全をより確実に確保することができる。
【0019】
また、移動阻止部25bを、トーションバーアーム25の後部から内側方向に向けて突出形成したので、所定間隔を置いて配置される一対のトーションバーアーム25の間隔が、エンジン17の左右方向の幅より大きい場合にも、エンジン17を移動阻止部25bに衝突させ、エンジン17の前方への移動を阻止することができる。
(第2の実施形態)
図3および図4は、本発明のキャブオーバ型車両の前部構造の第2の実施形態を示している。なお、この実施形態において第1の実施形態と同一の要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0020】
この実施形態では、トーションバーアーム25の移動阻止部25cが、トーションバーアーム25の後部から内側下方向に向けて突出形成されている。また、エンジン17の上端17aの位置が、トーションバーアーム25の上端25aの位置よりも充分に低くされている。すなわち、エンジン17は、トーションバーアーム25に移動阻止部25cを形成しない場合には、前方への移動によりトーションバーアーム25の後部に衝突しないような位置に配置されている。
【0021】
この実施形態では、移動阻止部25cを、トーションバーアーム25の後部から内側下方向に向けて突出形成したので、トーションバーアーム25の後部の上端25aの位置が、エンジン17の上端17aの位置より高い場合にも、エンジン17を移動阻止部25cに衝突させ、エンジン17の前方への移動を阻止することができる。
(実施形態の補足事項)
以上、本発明を上述した実施形態によって説明してきたが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のような形態でも良い。
【0022】
(1)上述した実施形態では、キャブオーバ型トラックに本発明を適用した例について説明したが、キャブの下方にエンジンが配置されるキャブオーバ型の車両に広く適用することができる。
【0023】
(2)上述した実施形態では、一対のトーションバーアーム25の間隔がエンジン17の幅より広い例について説明したが、一対のトーションバーアーム25の間隔がエンジン17の幅より狭く、エンジンの位置がトーションバーアームの後部の位置より充分に低い場合にも適用することができる。そして、この場合には、トーションバーアームには、移動阻止部が下方向に向けて突出形成される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のキャブオーバ型車両の前部構造の第1の実施形態を示す側面図である。
【図2】図1のキャブを外した状態を示す上面図である。
【図3】本発明のキャブオーバ型車両の前部構造の第2の実施形態を示す側面図である。
【図4】図3のキャブを外した状態を示す上面図である。
【符号の説明】
【0025】
11 キャブ
13 トーションバー装置
15 フレーム
17 エンジン
23 トーションバー
25 トーションバーアーム
25b,25c 移動阻止部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの前端に回動可能に支持されるチルト式のキャブを、トーションバーアームによりチルト方向に付勢するとともに、前記キャブの下方に前記フレームに支持されるエンジンを配置してなるキャブオーバ型車両の前部構造において、
前記トーションバーアームの後部に、衝突時における前記エンジンの前方への移動を阻止する移動阻止部を形成してなることを特徴とするキャブオーバ型車両の前部構造。
【請求項2】
請求項1記載のキャブオーバ型車両の前部構造において、
前記移動阻止部は、前記トーションバーアームの後部から内側方向に向けて突出形成されていることを特徴とするキャブオーバ型車両の前部構造。
【請求項3】
請求項2記載のキャブオーバ型車両の前部構造において、
前記移動阻止部は、前記トーションバーアームの後部から内側下方向に向けて突出形成されていることを特徴とするキャブオーバ型車両の前部構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−125881(P2010−125881A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299525(P2008−299525)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】