説明

キャブサイドカバー構造

【課題】キャブオーバ型トラックのキャブサイドカバー構造で、キャブサイドカバーに弾性パッキンを取付ける際の作業性を向上させると共に、コスト削減を達成する。
【解決手段】タイヤハウス104とエンジンルーム107とを仕切る区域に設けられ、キャブ100の下面から垂下されシャシサイドカバー106と対面して配置されると共に前輪タイヤ105の動きを許容するように湾曲形状に形成されたキャブサイドカバー10と、キャブサイドカバーの下部にシャシサイドカバーとの隙間を塞ぐように取り付けられた弾性パッキン12とからなり、キャブサイドカバーの弾性パッキン取付面側に長手方向に複数の爪部14を間隔を置いて突出させ、隣り合う爪部の先端部14aを互いに反対方向へ延設させ、弾性パッキンの長手方向に爪部と対応した間隔で挿入孔16を穿設し、挿入孔に爪部を挿入して、キャブサイドカバーに弾性パッキンを装着するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブオーバ型トラックのタイヤハウスとエンジンルームとを仕切る区域に設けられ、キャブの下面から垂下されるキャブサイドカバーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャブオーバ型トラックには、キャブの下方にタイヤハウスとエンジンルームとを仕切るための、キャブサイドカバーとシャシサイドカバーとからなる遮蔽構造が設けられている。この遮蔽構造によって、タイヤの回転で生じる水はね、泥はねがエンジンにかかるのを防止すると共に、エンジンの熱を外部に放散させないようにしている。
特許文献1(特開2004−9773号公報)に、この遮蔽構造の一例が開示されている。以下、特許文献1に開示された遮蔽構造を図5〜図8に基づいて説明する。
【0003】
図5及び図6において、キャブ100の鉛直方向下面には、略車両前後方向へ延びてキャブ100の鉛直方向下面から垂下するキャブサイドカバー102が取り付けられている。タイヤハウス104内に前輪タイヤ105が配置され、タイヤハウスインナを構成するシャシサイドカバー106がシャシフレーム108から上方へ延び、そのシャシサイドカバー106の上端縁とキャブサイドカバー102の下端縁とが近接配置され、タイヤハウス104とその内側のエンジンルーム107とを仕切っている。
【0004】
なお、図6に示すように、キャブサイドカバー102及びシャシサイドカバー106は、前輪105の操舵による動きを許容するために、長手方向に水平面内で湾曲形成されている。
【0005】
図7に示すように、キャブサイドカバー102とシャシサイドカバー106の間に生じる隙間を塞ぐゴム製パッキン110が錨状の形状をなす樹脂クリップ112によりキャブサイドカバー102に取り付けられている。これによって、エンジンルーム107を遮蔽し、前輪タイヤ105の回転で生じる水はね、泥はねがエンジンにかかるのを防止すると共に、エンジンの熱を外部に放散させないようにしている。
【0006】
図8に示すように、キャブサイドカバー102及びゴム製パッキン110には、樹脂クリップ112によって一体となるように、樹脂クリップ112を挿入するための多数の小孔114及び116が穿設されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−9773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
樹脂クリップ112の小孔114及び116への挿入は、作業員が手で行なっているが、樹脂クリップ112自体は比較的硬く、かつ樹脂クリップ112が錨形状を有するため、大きな押圧力を必要とする。小孔114及び116は多数存在するために、作業員の手の指にかなりの負荷がかかる。
【0009】
また、キャブサイドカバー102は湾曲形状を有しているため、キャブサイドカバー102の湾曲部の内側にゴム製パッキン110を取り付ける場合には、樹脂クリップ112の間隔を狭くしないと、キャブサイドカバー102とゴム製パッキン110との間に隙間が生じてしまう。このため、樹脂クリップ112の数をさらに多くして、樹脂クリップ間の間隔を狭くする必要が生じる。そのため、多数の樹脂クリップを必要とし、高コストとなる。
【0010】
本発明は、このような技術的背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、キャブサイドカバーに弾性パッキンを取付ける際の作業性を向上させると共に、コスト削減を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の技術的課題を解決するため、本発明のキャブサイドカバー構造は、
キャブオーバ型トラックのタイヤハウスとエンジンルームとを仕切る区域に設けられ、キャブの下面から垂下されシャシフレームから上方へ延設されたシャシサイドカバーと対面して配置されると共に前輪タイヤの動きを許容するように湾曲形状に形成されたキャブサイドカバーと、該キャブサイドカバーの下部に該シャシサイドカバーとの隙間を塞ぐように取り付けられた弾性パッキンとからなるキャブサイドカバー構造において、
前記キャブサイドカバーの弾性パッキン取付面側に長手方向に複数の爪部を間隔を置いて突出させると共に、隣り合う該爪部の先端部を互いに反対方向へ延設させ、
前記弾性パッキンの長手方向に該爪部と対応した間隔で挿入孔を穿設し、該挿入孔を該爪部に嵌着させることにより、該キャブサイドカバーに該弾性パッキンを装着するように構成したものである。
【0012】
本発明では、キャブサイドカバーに前記構成を有する爪部を設け、弾性パッキンに穿設した前記挿入孔を該爪部に嵌着させるようにして、キャブサイドカバーに弾性パッキンを装着するものである。これによって、樹脂クリップを不要にできるので、低コストとなり、かつ弾性パッキンの取付けが容易になり、作業員の手の指にかかる負荷を低減できる。
【0013】
本発明において、弾性パッキンに穿設された挿入孔間の間隔を爪部間の間隔より狭くし、該弾性パッキンを伸長させながら先端部が互いに離れる方向へ延設された2個の爪部に同時に該挿入孔を嵌着させるようにするとよい。
これによって、挿入孔を2個の爪部へ同時に嵌着できるので、弾性パッキンの取付けがさらに容易になる。また、2個の爪部の間に湾曲部が存在しても、該湾曲部を挟んで、両手で弾性パッキンを伸長させながら挿入孔を爪部に嵌着できるので、作業効率が低下することはない。
【0014】
また、本発明において、爪部をキャブサイドカバーから切り起しにより形成するとよい。これによって、平板形状のキャブサイドカバーから爪部を容易に形成でき、かつ該キャブサイドカバー以外の部品を必要としないので、爪部を低コストで形成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のキャブサイドカバー構造によれば、キャブオーバ型トラックのタイヤハウスとエンジンルームとを仕切る区域に設けられ、キャブの下面から垂下されシャシフレームから上方へ延設されたシャシサイドカバーと対面して配置されると共に前輪タイヤの動きを許容するように湾曲形状に形成されたキャブサイドカバーと、該キャブサイドカバーの下部に該シャシサイドカバーとの隙間を塞ぐように取り付けられた弾性パッキンとからなるキャブサイドカバー構造において、
前記キャブサイドカバーの弾性パッキン取付面側に長手方向に複数の爪部を間隔を置いて突出させると共に、隣り合う該爪部の先端部を互いに反対方向へ延設させ、
前記弾性パッキンの長手方向に該爪部と対応した間隔で挿入孔を穿設し、該挿入孔を該爪部に嵌着させることにより、該キャブサイドカバーに該弾性パッキンを装着するように構成したことにより、弾性パッキンのキャブサイドカバーへの取付けが短時間で容易になると共に、樹脂クリップを使用しないので、低コストとなる。
【0016】
また、樹脂クリップが不要となるために、取り付け部材の軽量化を実現できると共に、樹脂クリップを挿入することによる湾曲部材とパッキンとの取り付け不良の発生を回避することができ、作業性が向上する。
また、弾性パッキンの固定状態を目視にて確認することが可能となるため、たとえキャブサイドカバーと弾性パッキンとの取り付け不良が生じたとしても、再度取り付け直すことは容易である。
【0017】
加えて、弾性パッキンをキャブサイドカバーに取り付ける際に、樹脂クリップが不要となるために、取り付け作業を行う現場等において樹脂クリップを置くための場所を確保する必要がなく、その結果、現場等における省スペース化につながり、取り付け作業自体に場所を確保することが可能となるため、作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、この発明に係る湾曲部材構造について図1〜図3を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の具体例を示すものに過ぎず、いうまでもなく、本発明の要旨は特許請求の範囲によってのみ規定されるものである。
【0019】
本発明の一実施形態に係るキャブサイドカバーの構造を図1〜図3に基づいて説明する。図1及び図2は、長尺状のキャブサイドカバー10の下部にゴム製パッキン12が装着されている状態を示す。
図1及び図2において、キャブサイドカバー10は樹脂製であり、図示省略のキャブの下面に取り付けられている。図2に示すように、キャブサイドカバー10は、タイヤハウス内に設けられた前輪タイヤの操舵による動きを許容するように、長手方向に沿って大きく湾曲した形状に形成され、湾曲部18a及び18bを有している。
【0020】
キャブサイドカバー10の下辺に沿って二点鎖線で示す位置に、略帯状のゴム製パッキン12が装着される。キャブサイドカバー10には、ゴム製パッキン12が装着される側の面に適宜な間隔をもって複数の爪部14が突設される。爪部14は、キャブサイドカバー10の一部分から切り起しにより形成される。
【0021】
図3において、爪部14は、隣り合う爪部14の先端部14aが互いに反対方向に延設されている。一方、ゴム製パッキン12には、爪部14に対応する位置に挿入孔16が穿設されている。挿入孔16の間隔は、爪部14の間隔より若干狭く取られている。
【0022】
ゴム製パッキン12をキャブサイドカバー10に装着する方法は、先端部14aが互いに離れる方向に延設された2個の爪部14に同時にゴム製パッキン12の挿入孔16を嵌合させるようにして行なう。
即ち、作業員がゴム製パッキン12を両手で持ち、ゴム製パッキン12を両手で引っ張って伸ばしながら、先端部14aが互いに離れる方向に延設された2個の爪部14に同時に挿入孔16を嵌合させるようにする。
【0023】
これによって、2個の爪部14に同時にゴム製パッキン12を嵌着できる。しかも、2個の爪部14は、先端部14aが互いに離れる方向に穿設され、かつゴム製パッキン12は伸長された状態であるので、ゴム製パッキン12が嵌着された後、該爪部14からゴム製パッキン12が外れるおそれはない。
【0024】
図2に示すように、キャブサイドカバー10は大きな湾曲部18a及び18bを有するが、湾曲部18a及び18bの間に、隙間20が設けられている。そして、隙間20にゴム製パッキン12を通すことによって、ゴム製パッキン12を取り付けるキャブサイドカバー10の面を逆転させている。
これによって、ゴム製パッキン12を湾曲部18a及び18bの外側面に位置させることができる。そのため、ゴム製パッキン12をさらに伸長させる引張力が生じ、キャブサイドカバー10とゴム製パッキン12との当接面に隙間が生じるのを防止している。
【0025】
本実施形態によれば、ゴム製パッキン12に穿設した挿入孔16の間隔をキャブサイドカバー10に設けた爪部14間の間隔より若干狭くし、作業員が両手でゴム製パッキン12を伸ばしながら先端部14aが互いに離れる方向に延設された爪部14にゴム製パッキン12の挿入孔16を同時に嵌着するようにしているので、作業時間を短縮でき、ゴム製パッキン12の取付けが容易になる。また、樹脂クリップを使用しないので、その分低コストとなる。
【0026】
また、ゴム製パッキン12を同時に嵌着する2個の爪部14の先端部14aが互いに離れる方向に延設されているので、ゴム製パッキン12が外れる虞がなく、さらに、ゴム製パッキン12を引き伸ばしながら爪部14に嵌着するので、キャブサイドカバー10とゴム製パッキン12との当接面に隙間が生じることがない。
【0027】
また、樹脂クリップが不要となるために、取り付け部材の軽量化を実現できると共に、樹脂クリップを挿入することによるキャブサイドカバー10とゴム製パッキン12との取り付け不良の発生を回避することができ、作業性を向上できる。
また、ゴム製パッキン12の固定状態を目視にて確認することが可能となるため、たとえキャブサイドカバー10とゴム製パッキン12との取り付け不良が生じたとしても、再度取り付け直すことは容易である。
【0028】
加えて、ゴム製パッキン12をキャブサイドカバー10に取り付ける際に樹脂クリップが不要となるために、取り付け作業を行う現場等において樹脂クリップを置くための場所を確保する必要がなく、その結果、現場等における省スペース化につながり、取り付け作業自体に場所を確保することが可能となるため、作業性を向上させることができる。
【0029】
また、キャブサイドカバー10の湾曲部18a及び18b間に隙間20を設け、隙間20にゴム製パッキン12を通すようにし、これによって、湾曲部18a及び18bにおいて常にゴム製パッキン12がキャブサイドカバー10の湾曲面の外側に位置するようにしたことにより、湾曲面でゴム製パッキン12の弛みが発生しない。
従って、キャブサイドカバー10とゴム製パッキン12との間に隙間が発生しないので、遮蔽効果を維持できる。
【0030】
さらに、爪部14を平板形状のキャブサイドカバー10から切り起しにより形成しているので、キャブサイドカバー10から爪部を容易に形成でき、かつキャブサイドカバー以外の部品を必要としないので、爪部14を低コストで形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、キャブオーバ型トラックのキャブサイドカバー構造において、キャブサイドカバーに弾性パッキンを容易に取り付ける際の作業性を向上できると共に、コスト節減を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャブサイドカバーの正面図である。
【図2】図1のキャブサイドカバーの底面図である。
【図3】図1中のA−A断面図である。
【図4】キャブオーバトラックの車体構造を説明するための概略側面図である。
【図5】図4中のB−B断面図である。
【図6】図4中のC−C断面図である。
【図7】図6中のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10、102 キャブサイドカバー
12、110 ゴム製パッキン
14 爪部
14a 爪部先端部
16 挿入孔
18a、18b 湾曲部
20 隙間
100 キャブ
104 タイヤハウス
105 前輪タイヤ
106 シャシサイドカバー
107 エンジンルーム
108 シャシフレーム
112 樹脂クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブオーバ型トラックのタイヤハウスとエンジンルームとを仕切る区域に設けられ、キャブの下面から垂下されシャシフレームから上方へ延設されたシャシサイドカバーと対面して配置されると共に前輪タイヤの動きを許容するように湾曲形状に形成されたキャブサイドカバーと、該キャブサイドカバーの下部に該シャシサイドカバーとの隙間を塞ぐように取り付けられた弾性パッキンとからなるキャブサイドカバー構造において、
前記キャブサイドカバーの弾性パッキン取付面側に長手方向に複数の爪部を間隔を置いて突出させると共に、隣り合う該爪部の先端部を互いに反対方向へ延設させ、
前記弾性パッキンの長手方向に該爪部と対応した間隔で挿入孔を穿設し、該挿入孔を該爪部に嵌着させることにより、該キャブサイドカバーに該弾性パッキンを装着するように構成したことを特徴とするキャブサイドカバー構造。
【請求項2】
前記弾性パッキンに穿設された挿入孔間の間隔を前記爪部間の間隔より狭くし、該弾性パッキンを伸長させながら先端部が互いに離れる方向へ延設された2個の爪部に同時に該挿入孔を嵌着させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のキャブサイドカバー構造。
【請求項3】
前記爪部をキャブサイドカバーから切り起しにより形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のキャブサイドカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−155524(P2010−155524A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334647(P2008−334647)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【出願人】(000241108)宝栄工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】