説明

キャブマウントを用いる機械、及びスナッビング高さを維持し、且つマウント診断を提供するためのキャブマウントの制御方法

制御自在マウント(106)を用いる機械(100)、及び理想スナッビング高さ(144)を維持し、マウント診断を提供するためのかかるマウント(106)の制御方法が開示される。制御自在マウント(106)は、ハウジング(108)と、ピン(120)と、ハウジング(108)内のレオロジー流体(116)と、レオロジー流体(116)に近接して提供されたコイル(131)とを含み得る。ピン(120)は、エラストマー部材(124)により遊びの程度を制限されてハウジング(108)内に保持され、これによりピン(120)が理想スナッビング高さ(144)に保持され得る。時間が経つと、エラストマー部材(124)は分解し、弛み始め得る。ハウジングと連係するセンサ(160、170、214、222、226、230)がこの弛みを監視し、必要であればハウジング(108)内におけるレオロジー流体(116)にわたるフィールド又は加圧ガスを加え、それによりピン(120)の位置を調整して理想スナッビング高さ(144)に戻す。センサ(160、170、214、222、226、230)により収集されたデータはまた格納され、制御自在マウント(106)の残存使用可能寿命の判断及びそれを交換すべき時期の診断のために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してキャブマウントに関し、より詳細には、キャブマウントを用いる機械及びキャブマウントの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの異なる重機機械において、オペレータキャブは、キャブマウントを有する機械のフレームによって支持されている。キャブマウントは、多くの異なる形態及び構成で利用可能であり、概して、機械が移動したり、又は作業を行ったりするときに操作者が被る振動衝撃を抑えるため、機械の下部構造体からキャブを隔離しようとするものである。例えば、岩地を走行しているローダでは、ローダの車台、下部構造体、及び車輪/履帯が大きく方々に突き上げられたり、跳ね返ったりし得るが、キャブはフレームに固定的に取り付けられていないため、キャブマウントによって提供される遊びにより、操作者に対するこの動きの影響は小さくなる。
【0003】
かかるマウントは、一定レベルの振動減衰を提供する機械ばね又はエラストマー製ショックアブソーバのように単純なものであり得る。他のタイプのマウントは、流体又は電気化学的な性質のものである。磁気レオロジー(MR)及び電気レオロジー(ER)マウントが、かかるマウントの二つの例である。例としてMRマウントを考えると、概してこれは、MR流体を収容するハウジングと、MR流体中を通じて動く構造と、MR流体にわたり磁界を提供するためのコイルとを含む。コイルに電流を流すことにより、MR流体を通じて磁界が発生するのみならず、さらにはMR流体の見掛け粘度も増加する。構造がMR流体中を通じて動くとき、MR流体の見掛け粘度が増加することによってマウントの剛性が高くなる。
【0004】
MRマウントの一例が、(特許文献1)に開示される。(特許文献1)は、分離体サブアセンブリと、MR流体で充填された本体と、圧送チャンバと、ダイヤフラムチャンバとを含む流体圧式マウントを開示する。本体は、可撓性の成形エラストマーから形成されてもよく、従ってエンジンからの振動入力により圧送チャンバが弾性的に変形し、デカップラサブアセンブリを通じて圧送チャンバとダイヤフラムチャンバとの間で流体移動が生じて粘性減衰する。いくらか効果的であるものの、かかるマウントはフィードバックを提供しない。
【0005】
MRマウントの別の例が、ケネス・アラン・サンクレア(Kenneth Alan St.Clair)らに対する2007年11月8日に公開された(特許文献2)に開示される。(特許文献2)は、磁気レオロジー流体で充填された管状ハウジングと、管状ハウジング内でその長手方向長さに沿って移動可能なピストンヘッドとを含む磁気レオロジー流体ダンパを備えたストラットを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,063,191号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0257408号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本開示の一態様に従えば、フレームと、フレームにより支持されたオペレータキャブと、オペレータキャブをフレームに動作可能に連結する制御自在マウントであって、ハウジングと、ハウジング内に取り付けられたピンと、ピンをハウジングに連結するエラストマー部材と、ハウジング内の流体と、ハウジングと動作可能に連係され、且つオペレータキャブとフレームとの間の相対変位を示す信号を生成するセンサと、センサと動作可能に連係され、且つ流体によりピンをハウジングとの係合から離すように付勢させる電子制御ユニットとを含む制御自在マウントとを含む機械が開示される。
【0008】
本開示の別の態様に従えば、キャブマウントの制御方法が開示され、この方法は、キャブマウントを使用してキャブを機械のフレームに連結するステップであって、キャブマウントが、ハウジングと、ハウジングに対して移動可能であり、且つエラストマー部材によってハウジングに連結されるピンとを有するステップと、キャブとフレームとの間の相対変位を示すパラメータを検知するステップと、検知される相対変位が所望の相対変位に等しくなるまでハウジング内のレオロジー流体にわたるフィールドを調整するステップとを含む。
【0009】
本開示のさらに別の態様に従えば、オペレータキャブを機械フレームに動作可能に連結するマウントを制御するための制御システムが開示され、ここで制御システムは、マウントに動作可能に連結されるプロセッサを含み、マウントは、ハウジングと、ハウジング内で移動可能なピンと、キャブのハウジングに対する相対変位を示す信号を生成するように構成されたセンサと、履歴変位データを格納するように構成されたメモリと、メモリに格納されたアルゴリズムであって、プロセッサにより実行されることで履歴変位データを検知された変位データと比較し、且つ実際の変位を補正して所望の変位と等しくするアルゴリズムとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の教示に従い構成された機械の斜視図である。
【図2】本開示の教示に従い構成された制御自在マウントの断面図である。
【図3】制御自在マウントのエラストマー部材における初期使用の間、時間が経過したとき、及び補正されたときのクリープを表すチャートである。
【図4】本開示の教示に従い構成された制御システムの概略図である。
【図5】a〜dは、マウント変位を検知するための代替的実施形態の概略図である。
【図6】本開示の教示に従い構成された操作者インタフェースのブロック図である。
【図7】周波数対スペクトル密度をプロットし、制御自在マウントに関連する履歴データを表し、及びいつマウントが交換又は修理されるべきかを特定するグラフである。
【図8】周波数対振幅をプロットし、及び本開示の教示に従いそれを制御するスタック型アルゴリズム(stacked algorithms)を表すグラフである。
【図9】a〜eは、異なるマウント位置の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで図面を参照すると、具体的には図1を参照し、本開示の教示に従い構成された機械が、概して参照符号100により示される。機械100は、オペレータキャブ104を支持するフレーム102を含む。図示されるとおり、機械100は履帯式トラクタとして表されるが、本開示の教示は、フレームに取り付けられたキャブを含む他の重工業及び建設機械、例えば、限定はされないが、バックホウローダ、ホイールローダ、履帯式ローダ、連結式トラック、オフハイウェイトラック、掘削機、モータグレーダ、フォークリフト、スキッドステア、又は当該技術分野において公知の任意の他の機械で同等の効果をもって用いられ得ることが理解されるべきである。
【0012】
ここで図2を参照すると、本明細書に開示される機械100及び方法で使用される制御自在マウント106の一実施形態の例が、断面図により示される。図示されるとおり、制御自在マウント106は、取り付けフランジ110を介してフレーム102(図1を参照)に取り付けられ得るハウジング108を含み得る。ハウジング108は、第1のチャンバ112と第2のチャンバ114とを含み得る。本明細書においてさらに詳細に記載するとおり、第1のチャンバ112は、磁気レオロジー(MR)流体又は電気レオロジー(ER)流体などのレオロジー流体116で充填され得る。第2のチャンバ114は、圧縮空気を含む圧縮ガスなどの圧縮流体118で充填され得る。
【0013】
制御自在マウント106はまた、部分的にハウジング108と共に配置され、取り付け端部122でキャブ104に結合され得るピン120を含んでもよい。ピン120は、エラストマー部材124によってハウジング108に結合されてもよく、エラストマー部材124によりピン120を、軸126に沿った軸方向移動及び軸126と垂直な半径方向移動について制限することが可能となる。エラストマー部材124は、ピン120とハウジング108との間の軸方向並びに半径方向の動きを抑制し得る。
【0014】
図示されるとおり、減衰プレート128がピン120に結合され、第1のチャンバ112のレオロジー流体116の中に配置されてもよい。減衰プレート128は、減衰プレート128を通じたレオロジー流体116の通過を可能にする複数の開口130を含み得る。減衰プレート128がレオロジー流体116中を通じて動かされるとき、ハウジング108とピン120との間の相対運動が減衰される。減衰レベルは、レオロジー流体116に磁界又は電界を印加することにより調整され得る。さらに、磁界又は電界の強度を変化させることにより、レオロジー流体116の見掛け粘度が比例して変化し、従って制御自在マウント106により提供される減衰度を操作者の要求に合わせて調整することができる機構が提供される。
【0015】
磁界又は電界を発生させるため、コイル131がレオロジー流体116に近接して提供される。より具体的には、コイル131は、ハウジング108に対し、第1のチャンバ112に隣接して側方に取り付けられてもよい。コイル131から、制御可能な電源供給装置134に接続するためのリード132が延在し得る。それに代えて又は加えて、コイル131はピン120及び/又は減衰プレート128に取り付けられ得る。
【0016】
ピン120はまた、第1のチャンバ112を第2のチャンバ114と分離するプランジャ136も含み得る。プランジャ136は、ハウジング108のシャフト140に対して封止をなすシール138を含み得る。かかる構成では、プランジャ136及び第2のチャンバ114は、ピン120を理想スナッビング高さ(snubbing height)144に位置決めするためのガススプリング142として働き、その重要性については本明細書でさらに詳細に記載する。ガススプリング142内の圧縮流体118の圧力は、バルブ146によって調整され得る。圧縮流体118の圧力を調整することにより、プランジャ136に加えられるガススプリング142の付勢力もまた調整される。第1のホース又はチューブ148がバルブ146に連結され、第2のチャンバ114に加圧流体118を供給し得る。バルブ146はまた、第2のホース又はチューブ150も含み、第2のチャンバ114内の加圧流体118を貯蔵タンク152に戻すか、又は大気中に放出し得る。
【0017】
プランジャ136を理想スナッビング高さ144に向かって付勢するのを補助するため、機械ばね154もまた用いられ得る。ばね154は、ピン120のガイド延長部156の周囲に配置され、ガイド延長部156とハウジング108の基部158との間に延在し得る。ガイド延長部156は、ハウジング108に接触するように位置決めされ、制御自在マウント106についての第1のエンドストップとして働き得る。
【0018】
制御自在マウント106はまた、キャブ104とフレーム102との間の相対変位を示す信号を生成するためのセンサ160も含み得る。本実施形態では、ハウジング108とピン120との間の相対変位を決定することにより、これが行われる。センサ160は、エラストマー部材124に設けられるチャネル162に配置された歪みゲージ(図示せず)を含み得る。或いは、チャネル162は、伸長及び収縮に伴い変化する導電性及び電気抵抗を有する導電性エラストマー164で充填されてもよい。より具体的には、導電性エラストマー164にかかる歪みは、導電性エラストマー164が呈する抵抗と相関し得る。従って、抵抗を計測すると、ハウジング108とピン120との間の相対変位を計算することができる。リード166を使用して、センサ160からのデータが電子制御ユニット168に通信され得る(図4を参照)。
【0019】
制御自在マウント106はまた、第2のチャンバ114内の流体118の圧力を監視するセンサ170も含み得る。圧力センサ170もまた、リード172で電子制御ユニット168に連結され得る。一般に、圧力センサ170を使用して圧力スパイク、従ってエラストマー部材124の摩耗が計測され得る。これにより、制御自在マウント106の余寿命及び保守度(serviceability)を計算することができる。加えて、センサ160又は170のいずれかの不具合により、制御自在マウント106を交換又は修理する必要があることが示され得る。
【0020】
エラストマー部材124内のセンサ160に代えて又は加えて、圧力センサ170を使用して、ピン120のハウジング108に対する変位を決定してもまたよい。より具体的には、変位は以下の式を用いて決定され得る:
n=Pi*Vi/Pn
式中:
nは新しい体積であり;
iは初期圧力であり;
iは初期体積であり;及び
nは新しい圧力である。
【0021】
初期圧力及び初期体積は、ピン120の既知の位置から最初に較正されることができ、第2のチャンバ114の体積及び圧力に対応し得る。新しい圧力及び新しい体積は、初期位置からの変位に対応し得る。新しい位置は、以下の式を用いて新しい体積から決定され得る:
D=(Vn−Vi)/(π*R2
式中:
Dは変位の変化量であり;
Rはシャフト140の半径であり;
iはここでもまた初期体積であり;及び
nはここでもまた新しい体積である。
【0022】
温度補償もまた、変位計測の精度を高めるために用いられ得る。或いは、変位は、これらの計算が既に決定されている格納テーブルにより決定されてもよい。
【0023】
次にこの計算された変位を用いて、マウント106を制御する電子制御ユニット168により実行される制御アルゴリズムにおけるフィードバックが提供され得る。より具体的には、計算された変位データを用いて制御自在マウント106のコイル130に印加される電流が調整され、ひいては制御自在マウント106の見掛け粘度が調整されることで、パフォーマンスの向上が提供され得る。
【0024】
一実施形態において、レオロジー流体116の見掛け粘度は、マウント106の変位と直接的な関係で変化する。従って、ピン120が理想スナッビング高さ144から離れると、より多くの電流がコイルに印加され、レオロジー流体116の見掛け粘度が増加し、それによりピン120がハウジング108との係合から離れるように付勢される。これにより、ピン120及び減衰プレート128は移動に対してより大きい抵抗を受け、従ってこのフィードバック制御を用いると、下げ止まり(bottoming out)又は上げ止まり(topping out)としても知られる、ピン120がエンドストップに達することが、最小限にしか起こらないよう抑えられる。
【0025】
別の実施形態において、1つ又は複数のセンサ160、170からのデータの統計分析を使用して制御自在マウント106の時間に伴う変位が説明され、制御自在マウント106の制御が、キャブにおける重量、すなわち、種々の操作者の体重、その工具及び付属品などの変化に適合され得る。初期圧力及び初期体積は、工場において、及び機械の整備中に決定され、較正され得る。
【0026】
この変位データはまた、統計分析にかけられ、長期保管用に保存されてもよい。履歴データは、平均変位、周波数領域、及びパワースペクトル密度データを含み得る。履歴的な統計変位データを使用して、特定のマウントの交換時期が決定され得る。例えば、制御自在マウントがその履歴平均の範囲外で動作している場合、制御自在マウントは交換が必要であると見なされ得る。加えて、制御自在マウントの全寿命を通じて履歴をとり、長期履歴平均を得てもよい。長期履歴平均を中間的な期間の履歴及び短期履歴と比較して、パフォーマンスにおける問題を調べるための全体の誤差又は点ごとの誤差を提供してもよい。
【0027】
変位の履歴的な統計平均を追跡及び維持することにより、エラストマー部材124の永久歪み及びクリープもまた決定され得る。本明細書で使用されるとき、エラストマー部材124の「永久歪み」及び「クリープ」は、エラストマーの弾性の変化を指す。初めは、エラストマーは予測可能な形で変形し、同じ形状及び強度を回復する。しかしながら、時間が経過して動作が反復されると、エラストマーは分子レベルで変化し始め、従って同じ弾性を呈しないようになり得る。本願ではこれにより、時間が経つとエラストマー部材124が弛み始め得る。
【0028】
グラフ形式では、これは、エラストマー部材124が弛み、永久歪みを示し、及びクリープを起こし始めると、エラストマー部材124が、図3に示されるとおり非線形的に振る舞い始め得ることを意味する。図示されるとおり、エラストマー部材124は、エンドストップ176間の線174により示されるとおり、初めは概して線形的に振る舞い得る。しかしながら、時間が経過すると、エラストマー部材124は永久歪みを呈し、線178により示されるとおりクリープを起こし始める。
【0029】
電子制御ユニット168を使用してこの材料特性の変化を補償し、並びにクリープの影響を最小限に抑え得る。例えば、電子制御ユニット168を使用してコイル130に印加される電流を調整し、それによりエラストマー部材124の材料特性の変化を補正することができ、これを点線180として示す。このように、負の変位が決定されるときコイル130に加えられる電流は大きく、及び正の変位が決定されるとき小さくされ得る。ガススプリング142内のガス圧を増加させる空気圧式のシステムが利用可能な構成では、増加させたガス圧を使用してさらなる補償を行い、ピン120を理想スナッビング高さ144に向かって付勢し得る。
【0030】
ここで図4を参照すると、制御自在マウント106が使用されてもよい機械100についての制御システム182が、概略図により示される。図示されるとおり、システム182は、機械センサ186、操作者インタフェース188、及びパワー源190と電気的に連通する電子制御ユニット168を含む。電子制御ユニット168は、プロセッサ192と、命令を格納するコンピュータ可読媒体又はメモリ194とを含み得る。機械センサ186としては、加速度計、傾斜計、温度センサ、圧力トランスデューサ、及び機械100に使用される当該技術分野において公知の他のセンサを含めた、多種多様なセンサが含まれ得る。操作者インタフェース188としては、ジョイスティック、ペダル、スイッチ、ボタン、タッチスクリーン、キーパッド、及び操作者入力を受け取るための当該技術分野において公知の他のデバイスを挙げることができる。
【0031】
電子制御ユニット168はまた、キャブ104を機械フレーム102に取り付けるために使用される複数の制御自在マウント106と電気的に連通していてもよい。かかるマウント106は、右前方の制御自在マウント198と、右後方の制御自在マウント200と、左後方の制御自在マウント202と、左前方の制御自在マウント204とを含み得る。右前方の制御自在マウント198、右後方の制御自在マウント200、左後方の制御自在マウント202、及び左前方の制御自在マウント204は、各々が、上記に記載される制御自在マウント106の特徴、並びに当該技術分野において公知の制御自在マウントの他の特徴を含み得る。
【0032】
一実施形態において、制御自在マウント106は同じであってもよい。しかしながら、その機械フレーム102及びキャブ104に対する物理的な位置は異なってもよく、制御自在マウント106と電子制御ユニット168との間に提供されるワイヤハーネス206を介して知ることができる。例えば、一連のスイッチ208が、機械フレーム102に対する各制御自在マウント106の位置を示すように符号化されてもよい。例えば4つのマウント106が使用される場合、以下の表1のコードが使用されてもよい:
【0033】
【表1】

【0034】
ハーネスコードは、ワイヤハーネス206の一部として各マウント位置まで延在させた2本のワイヤ及び接地線(図示せず)を通じてスイッチ機能を提供し得る。次に上記の表のスイッチ208が、それぞれのワイヤを接地と接続して1を提供し、0については開けたままとすることにより、各コネクタに提供される。これは、コネクタを通じて制御自在マウント106に配線されてもよく、それにより制御自在マウント106は、機械フレーム102に対するその位置を同定することができる。この位置情報を使用することにより、機械フレーム102に対して制御自在マウント106が調整され、より正確に制御され得る。
【0035】
別の実施形態において、制御自在マウント106は別個のもので、ワイヤハーネス206からの特定のコネクタを受け入れるように構成されてもよい。或いは、汎用的なワイヤハーネス206が使用されてもよく、技術者により各制御自在マウント106にそのアドレスが与えられ、その位置が電子制御ユニット168に通信されてもよい。
【0036】
場合により、及び図示されるとおり、制御自在マウント106は、各々が、図2に関連して上記に考察されるとおりのガススプリング142を含み得る。各ガススプリング142は、ポンプ210などの加圧ガス源、及びタンク152などの低圧ガス源と空気圧により接続されていてもよい。図示される実施形態において、電子制御ユニット168はポンプ210と連通しているものとして示されるが、その制御が電気的なものである必要はない。例えば、機械的なバルブ装置を用いることができる。しかしながら、電子的な実施形態では、例えば、右前方の制御自在マウント198のガススプリング142内のガスの圧力が低過ぎると判断された場合、電子制御ユニット168はポンプ210に加圧ガスを提供するよう命令を送り、及び右前方の制御自在マウント198の空気圧バルブ(図示せず)に、開放して加圧ガスを受け入れ、ガススプリング142内のガス圧を増加させるように命令を送り得る。ガススプリング142の圧力が十分であるとき、電子制御ユニット168はバルブを閉じ、ポンプ210を停止させる。或いは、ガススプリング142の圧力が高過ぎる状況では、電子制御ユニット168はタンク152に対するバルブを開き、圧力が十分に低減されたとき、バルブを閉じてもよい。
【0037】
精密なマウント変位計測により、制御自在マウント106を、制御自在マウント106の最大効率に対する理想スナッビング高さ144又はその近傍に維持することが可能となる。各マウントを、その耐用寿命全体を通じてその理想スナッビング高さ144に維持することにより、機械動作中のマウント106の過剰な荷重及び下げ止まり/上げ止まりを最小限に抑え、又は防止し得る。結果的に、機械100の寿命に対して必要となるキャブ104及びマウント106の交換部品が少なくなり得る。本開示により、及びそれがキャブ104の種々の静荷重に対応することにより、種々のシステム及び選択肢を、マウント106を交換する必要なしに様々な時点で導入することが可能となり、従って高度なモジュール性が提供され、且つ機械100が、同じマウント一式を保持しながら、機械寿命全体にわたり特定の用途に合わせて調整され得る。
【0038】
ここで図5a〜図5dを参照すると、上記で考察される方法及びシステムに加え、制御自在マウントの変位計測を、ホール効果センサ214の使用によることを含め、他のセンサで実現することができる。例えば、図5aに示されるとおり、制御自在マウント106のハウジング108に永久磁石216が位置決めされてもよい。センサチップ218がキャブ104に連結され、磁石216の相対位置を検知するように位置決めされ得る。別の実施形態では(図5b)、拡張可能チャンバ220が一方の端部にレーザ222を内蔵し、他方の端部に受信器224を内蔵してもよい。各端部はキャブ104及び機械フレーム102の一方に結合され得る。キャブ104とフレーム102との相対移動に伴いチャンバ220が拡張及び収縮すると、精密なマウント変位計測が実現され得る。別の実施形態では、図5cに示されるとおり、バーコードリーダ226が、ステンレス鋼又は他の耐食性材料バーコード表示228を読み取るように位置決めされてもよい。表示228はフレーム102に結合され、及びバーコードリーダ226はキャブ104に結合されてもよい。さらに別の実施形態では、ラック234(図5dを参照)を上下に動くよう配置されたギヤ232を含むロータリセンサ230もまた、変位の決定に使用され得る。
【0039】
エラストマー部材124のクリープ又は永久歪みを診断及び補正することに加え、本開示の制御自在マウント106はまた、操作者に機械的フィードバックを提供し得る機構も提供する。例えば、制御自在マウント106を硬くし、それにより減衰性を選択的に低下させて、機械フレーム102からキャブ104により大きい振動及び衝撃荷重を送り込むことができる。上記に指摘されるとおり、制御自在マウント106の硬化は、コイル131に電流が提供され、レオロジー流体116の見掛け粘度が増加するときに起こる。逆に、機械的フィードバックが操作者の快適性に比してそれほど望ましくないとき、電流を取り除き、又は減らすことにより減衰性を低下させることで、制御自在マウント106を軟化させてもよい。減衰レベルは、操作者により手動で選択されても、機械動作の特定の期間に変化するようにプログラムされても、及び/又は以下にさらに詳細に記載されるとおりのセンサ入力に基づいてもよい。
【0040】
本開示の別の特徴は、操作者インタフェース188により、操作者による制御自在マウント106の大幅な制御が可能となり得ることである。例えば、図6に概略的に示されるとおり、操作者インタフェース188は、操作者が制御自在マウント106をオフにすることにより常に最もソフトな乗り心地を提供することを可能にするオン/オフスイッチ236を含み得る。かかる状況では、制御自在マウント106は単に粘稠性のマウントとして機能し得る。或いは、操作者が、インクリメンタル型スイッチ(incremented switch)238、タッチスクリーン240、又はキーパッド242を介して制御アルゴリズムを調整し、制御自在マウント106を通じる制御アルゴリズムにより提供される電流フローをスケーリングしてもよい。例えば、操作者は、ソフトな乗り心地を達成するため制御アルゴリズムを50パーセント(又はその他)にスケーリングしてもよく、その結果、制御システム182の異なる動的レート及び減衰特性がもたらされ得る。
【0041】
別の実施形態において、操作者インタフェース188により、操作者は各制御自在マウント106に印加される電流に対する直接的な制御を有することが可能となり得る。例えば、4つのスライダバー244(又は別の数の制御自在マウントが使用される場合には、別の数)が、それぞれ、4つのそれぞれのマウント106を表し、操作者は、操作者インタフェース188上のスライダ244を動かして自分の個人的な好みに適合させることが可能となり得る。操作者インタフェース188は、直接的な制御を可能にするタッチスクリーン240であっても、又はマウス246若しくはジョイスティック248を使用して画面240上のカーソルを動かし、制御自在マウント設定に対する所望の変更を行ってもよい。
【0042】
さらに、制御自在マウント106の制御は、機械100のメニュー又はオペレーティングシステム250を介してアクセス可能であってもよい。いくつかの実施形態において、制御自在マウント106の制御は、パスワード保護により保守技術者のみがアクセス可能であってもよく、又は特定の操作者に対して設定を調整し得る操作者識別デバイス252の一部としてプログラムされてもよい。これは、RFID識別カード254、又は携帯電話256、フラッシュドライブ258、携帯情報端末260、又は他のコンピュータ可読媒体若しくはデバイスのような物品に格納された操作者情報の使用を介して実現され得る。
【0043】
操作者インタフェース188はまた、機械100の地理的位置並びに道路及び作業現場資材の状態の操作者による入力又は自動入力も可能にし得る。結果的に、電子制御ユニット168は、作業現場の個別の地形特性に対して最良の補償を行い、それにより最良の乗り心地を提供するように制御アルゴリズムを調整又は実行し得る。例えば、岩の多い作業現場を通過する場合、電子制御ユニット168は、各制御自在マウント106においてコイル131に対する電流フローをより高いレベルに増加させ、それによりキャブ104及び操作者に対してより高い減衰性を提供してもよい。一例において、機械100は、岩地を走行する間は最大電流の50パーセントで動作し、平坦な作業現場ではゼロパーセントで動作し得る。
【0044】
別の構成では、及び操作者はまた、行われる機械作業のタイプを特定してもよく、その場合、必要に応じて振動を最良に減衰し、また他にもフィードバックを可能にするようにプログラムされた種々の制御アルゴリズム262が優勢となり得る。例えば、選択された作業がトラックに一山の資材を積み込むことである場合、積み込みアルゴリズム264が選択され得る。積み込みアルゴリズム264は、トラックと積載山との間で動く間は制御自在マウント106に最大電流の50パーセント(又はその他)を提供し得るが、バケットに積み込む間及びバケットが所定の高さを上回って上昇するときは、電子制御ユニット168は電流フローを100パーセントまで増加させて機械的フィードバックを提供し、それによりさらに良好な操作者の制御を提供し得る。
【0045】
別の例において、操作者は、機械100がモータグレーダであり、行う作業が仕上げの地ならしであることを指示し得る。次に電子制御ユニット168は制御自在マウント106を、機械100のトランスミッションが前進ギヤにある間は硬くし、及び後進ギヤにある間は柔らかくし得る。仕上げの地ならしを行う間、操作者は、特定の許容範囲内で仕事をより速く完了するため、可能な限り大きいフィードバックを求める。それに加えて又は代えて、制御自在マウント106は、選択された動作設定についての操作者の要求に合わせて調整されてもよい。例えば、操作者は電子制御ユニット168に、仕上げの地ならしを行う間は100パーセント、道路整地を行う間は0パーセント、及び除雪中は50パーセントの電流を送るよう指示し得る。
【0046】
他の例では、ホイールローダは、道路整地中及び作業現場を動き回る間は制御自在マウント106を柔らかく保ち、しかしバケットを上昇させるときは、操作者が機械の動作をより感じ取ることができるように制御自在マウント106を硬くしてもよい。さらに別の例では、履帯式トラクタの制御自在マウントが、機械100がバケット及びリッパーの上昇を伴い動かされる間はコイル131を通過する電流をゼロとして可能な限り柔らかく保たれ得る。同じ機械100が、これらの器具のいずれかが作業を行っているときには最大電流を送るようにプログラムされ得る。
【0047】
同様に、機械100が掘削機である場合に、大きい荷重がかかるとき、操作者に有益なフィードバックを提供するよう制御自在マウント106は硬くされ得る。対照的に、掘削機が動かされるとき、制御自在マウント106を通過する電流をゼロとして、よりソフトでより快適性の高い乗り心地を操作者に提供することができる。一般に掘削機では、ダンピング、掘削又は他のイベントを行う間に過渡的な状態が生じるときを除き、制御自在マウント106は常に柔らかくてよい。
【0048】
本開示の教示はまた、履帯式トラクタにおいて履帯の滑りを検出するために用いることもできる。制御自在マウント106を高電流設定に設定することにより、より大きいフィードバックが操作者に提供される。このフィードバックが、操作者に履帯の滑りが起こっていることを知らせ得る。かかるイベントでは、操作者は動作の中止を選択してもよく、それにより整備を行うことができ、ひいては下部構造体の摩耗を最小限に抑えることができる。
【0049】
本開示の制御システム182はまた、最も効果的に、且つ迅速にフィードバックと快適性との均衡をとる制御アルゴリズム262のいずれかを用いてもよい。上述した積み込みアルゴリズム264に加え、制御自在マウント106を制御するため電子制御ユニット168により予測アルゴリズム266が使用されてもよい。制御自在マウント106は、ドージング、リッピング、地ならし、若しくは掘削などの特定の機械用途及び行われる作業に合わせて、又は乗り心地の改善、雑音の低減若しくは操作者の快適性などの所望の設定に合わせて調整されてもよい。特定の機械用途及び作業は、上記に指摘されるとおり操作者により入力されてもよく、又は器具位置センサ269により検知されるとおりのブレード、リッパー、バケット又は機械100の他の器具268の位置から決定されてもよい。或いは、それらは、操作者インタフェース188、油圧計270、作業現場マップ272、全地球測位システム情報274、レーザグレーディング入力276、地形図278、傾斜計280、所定のピッチ比282、ステアリング信号284、高度計285、連結ジョイント位置286、及び温度計287から推定されてもよい。例えば、積み込み区域にあるトラックの位置からは衝撃荷重が予想され得るため、それに従い積み込みからの衝撃を最大限に吸収するよう制御自在マウント106が調整され得る。
【0050】
或いは、ホイールローダ、履帯式ローダ、掘削機又はバケットを使用する他の機械のバケットが降下され、堆積山と係合するように位置決めされるとき、制御自在マウント106を初めに柔らかくし、次に油圧シリンダ圧力が所定の閾値を超えたときに硬くすることで、堆積山と係合するバケットの衝撃を最小限に抑える一方で、操作者にフィードバックを提供してもよい。加えて、機械100の速度を使用して、制御自在マウント106に対する所望の設定を予測することができる。例えば、速度計288により検知されるとき高い速度であると、制御自在マウント106は柔らかくされ、次に機械100が減速したときに硬くされてもよい。この硬化及び軟化はまた、機械(100)のトランスミッション289、特に機械100が動作しているギヤにも依存し得る。第1速ギヤでは50パーセント(又はその他)の電流をコイル131に通してもよく、第2速ギヤでは40パーセントを通してもよい。第3速ギヤでは25パーセントの電流を通してもよく、第4速ギヤでは0パーセントを通してもよい。低速ほどマウントを硬くすることで、操作者により良好なフィードバックが提供され得る一方、高速ではより高い快適性が提供され得る。
【0051】
予測アルゴリズム266はまた、器具の検知された速度を使用して制御自在マウント106を制御し得る。例えば、ブレードが降下されるとき、地面との最初の接触で操作者が揺さぶられ得る。従って、ブレードが下ろされるとき、制御自在マウント106は衝撃を予想して柔らかくされ、接触が起こった後、フィードバック及び制御を向上させるため硬くされ得る。概して、制御アルゴリズム262はまた、同様に振動、ヒーブ、ピッチ、ロール及びヨーモードを制御するようにも設定され得る。予測アルゴリズム266はまた、器具268が使用中でなく、比較的高い速度率で機械100が動いているときを予測するために使用されてもよく、これは、道路整地が行われていて、制御自在マウント106が最大限の快適性に調整されるべきであることを意味し得る。
【0052】
履歴アルゴリズム290もまた使用され得る。より具体的には、各制御自在マウント106と連係するセンサから各制御自在マウント106のパフォーマンスのヒストグラムが取得され得る。ヒストグラムは、各個別の制御自在マウント106を電流条件に合わせて継続的に調整するために使用され得る。換言すれば、電子制御ユニット168はセンサ履歴を使用して制御自在マウント106を電流パフォーマンスに適合させ、それにより時間の経過及び使用に伴うパフォーマンスの改良を提供し得る。例えば、ピーク圧力及び周波数が保存され、減衰率に伴いいつ硬く、及び柔らかくすべきかを特定するためのパフォーマンスの履歴が作成され得る。制御自在マウント106が過去の履歴上ほとんど動きを被っていない場合、不要な硬さ及びエネルギーの浪費を回避するためそれ自体を柔らかくし得る。より多くの動きが見られるとき、次に制御自在マウント106は減衰性を増加させ得る。例えば、機械が道路整地を行っている間、高頻度の小さい変位振動が検知される場合、制御自在マウント106は雑音を最小限に抑え、快適性を高め、及びエネルギーを節減するため軟化することができる。機械100が荒地に直面しているとき、電子制御ユニット168は電流を増加させて、より大きい低頻度の変位を補償するよう制御自在マウント106の減衰性を変化させ得る。
【0053】
連続的な使用を通じて、制御自在マウント106の1つの故障が他の制御自在マウント106及び/又は他の機械システムに破損を引き起こすことを防止するため、制御自在マウント106と連係するセンサからセンサデータが収集され、それを履歴アルゴリズム290が使用して動作の履歴を提供し、次にその履歴を使用して動作上の許容範囲が決定され得る。電流センサデータを使用して制御自在マウント106のパワースペクトル密度を提供し、制御自在マウント106が交換されるべきかどうかを判断してもよい。例えば、図7を参照して、点線292は、制御自在マウント106について許容される動作の許容範囲を表し得るとともに、実線294は、実際の動作パワースペクトル密度を表し得る。許容域298の外側にあるスパイク296又は許容域298を超える平均誤差は、制御自在マウント106が交換されるべきであることを示す。代替例では、キャブ104のマウント106に対する変位及び加速又はマウント構成要素の正確な変位を使用して、制御自在マウント106の寿命に従い、及び履歴アルゴリズム290を供給して制御自在マウント106の剛性を制御することができる。
【0054】
これらの制御アルゴリズム262及び本明細書で考察される他のものは、同様にスタック型アルゴリズム300として実行されてもよい。例えば、電子制御ユニット168は、デフォルトアルゴリズム302、エンドストップアルゴリズム304、及び共鳴制御アルゴリズム306を使用し得る。デフォルトアルゴリズム302は制御自在マウント履歴を使用してパフォーマンス要求に対する電流を調整し得る。これらのアルゴリズムは全て、同時に計算されてもよく、その時点の状況下で制御自在マウント106に対して最高の力制御を提供するアルゴリズムが優先されてもよい。例えば、図8を参照して、機械100は道路整地を行っていてもよく、その間、デフォルトアルゴリズム302を使用して制御自在マウント106が制御され得る。機械100がポットホール上を動く場合、それが制御システム182に衝撃をもたらし、これは、減衰されていない場合、線308によって表される。線310は、衝撃に応答してスタック型アルゴリズム300により生じる効果を表す。デフォルトアルゴリズム302は、エンドストップアルゴリズム304が次に優先されて制御自在マウント106を制御し得るまで制御を行い得る。エンドストップアルゴリズム304が働いた後、共鳴制御アルゴリズム306が優先され、ポットホールとの衝突により生じる共鳴を吸収して取り除き得る。共鳴が制御されると、デフォルトアルゴリズム302が制御自在マウント106の制御を再開し得る。
【0055】
操作者が選択した制御及び操作者フィードバックを提供するための制御に加え、電子制御ユニット168は、キャブ104のレベリング及び調整を提供するために使用され得る。具体的には、ガススプリング142を調整して、各マウント106のピン120をハウジング108との係合から離れるように、その理想スナッビング高さ144に向かって付勢することにより、静荷重調整及び乗車高さ調整が達成され得る。従ってこれにより、「上げ止まり」又は「下げ止まり」の形でピン120をハウジング108に係合させてしまうことが回避される。電子制御ユニット168は相対変位を監視し、ガスを加えたり、又は放出したりすることによってガススプリング142を調整し得る。マウント106が理想スナッビング高さ144又はその近傍にあることをセンサ160、170が示す場合、電子制御ユニット168は、ガススプリング142内の圧力を調整する操作は行わない。
【0056】
制御自在マウント106のこの調整は、キャブ104内に工具、食品及び他の備品を持ち込んでいることも、又は持ち込んでいないこともある操作者の異なる寸法を補償するのに有益であり得る。異なる荷重により、制御自在マウント106は理想スナッビング高さ144から離れ得る。用途によっては、機械100は傾斜地で動作していることもあり、従って下側の制御自在マウントが荷重の大部分を支え得る。従って、下側の制御自在マウントは、その理想スナッビング高さ144に位置しないことがあり得る。従って各マウント106の空気圧チャンバ114が個別に調整され、各マウント106が理想スナッビング高さ144に戻され得る。
【0057】
高度及び周囲温度の変化によってもまた、制御自在マウント106はその理想スナッビング高さ144から動き得る。例えば、海面位において零度温度で動作している機械100であって、次に山地に持ち込まれ、海抜6千フィートにおいて50度の温度下で使用される機械100は、もはやその理想スナッビング高さ144に配置されないマウントを有し得る。従って本開示は、高度及び周囲温度のこの変化に対し、マウント106をその理想スナッビング高さ144に戻すように調整し得る。
【0058】
制御自在マウントに関連する利点の多くを提供しながらコスト及び複雑性を低減するため、混合マウント構成もまた使用され得る。例えば、図9a〜図9eに示されるとおり、ある位置に制御自在マウント106を使用してキャブ応答に制御性を提供する一方、他の位置には低コストのマウントを使用してキャブ104の支持/結合を補助してもよい。一実施形態において(図9aを参照)、キャブ104のピッチングの制御が求められる場合、2つの受動マウント312がキャブ104の前部314に位置決めされ得るとともに、2つの制御自在マウント106が後部位置316に位置決めされ得る。従って、制御自在マウント106を選択的に硬くすることにより、ピッチ及びロールの動きが制御され得る。この構成はまた、図9bにあるように逆にされ、2つの受動マウント312がキャブ104の後部316に位置決めされ、2つの制御自在マウント106がキャブ104の前部314に位置決めされてもよい。本明細書で使用されるとき、受動マウントは、動作中に変化することのできない減衰特性を有し、例えば、粘稠性及びゴム製のマウントを含む。
【0059】
或いは、三点システムもまた可能であり、図9cに示されるとおり、単一の受動マウント312が前部314にあり、2つの制御自在マウント106がキャブ104の後部316に位置決めされてもよく、従って構造はより安価となり、且つ面及び位置上の整列について製造がより容易である。さらに別の実施形態において(図9dを参照)、2つの受動マウント312が慣性ピッチ軸318の近傍に取り付けられ、第3の制御自在マウント106が軸318から離れて取り付けられてもよい。
【0060】
別のキャブ取り付け構成は、外部転倒時保護構造320を含む機械100と共に使用され得る。例えば、図9e)に示されるとおり、受動マウント312がキャブ104と機械100のフレーム102との間に取り付けられ得る。1つ又は複数の制御自在マウント106がキャブ104の上側に配置され、キャブ104と外部転倒時保護構造320との間に取り付けられ得る。この構成では、受動マウント312が雑音低減を提供し、頭上にある制御自在マウント106が乗り心地制御を提供し得る。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上から、様々な産業状況において、特にオペレータキャブが取り付けられる機械で、本開示の教示が利用可能性を有することが分かる。かかる機械としては、限定はされないが、履帯式トラクタ、ホイールローダ、履帯式ローダ、掘削機、モータグレーダ、連結式トラック、オフハイウェイトラック、スキッドステア、スキッダなどを挙げることができる。機械は制御自在マウントを用いることで、機械の下部構造体及びエンジンにより発生する振動をキャブから、従ってキャブ内の操作者から隔離し得る。
【0062】
加えて、本明細書に開示されるものなどのマウントを提供することにより、ハウジング内のピンの理想スナッビング高さを維持することができる。これにより、機械動作中のマウントの過剰な荷重及び下げ止まり又は上げ止まりを最小限に抑え、又は解消することができる。これはひいては、マウントの使用可能寿命を延ばすのに役立ち得る。さらに、ピンのハウジングに対する相対変位を監視することにより、マウントのエラストマー部材、又はマウントそれ自体をいつ交換するべきかを示す診断を作成することができる。
【0063】
また本開示の教示を使用して、より大きいフィードバックを操作者に提供する機械を建設し得る。マウントを硬くすることにより、操作者は振動をより正確に感じ取り、これは、仕上げの地ならし、耕起、若しくは掘削などの作業の実施、又は履帯の滑りなどの状況の検知に有益であることを証明し得る。逆に、道路整地の際にはマウントは弛緩され、それによりフィードバックを低下させ、従ってより良好な操作者の快適性を提供することができる。
【0064】
本開示はまた、操作者が適切な操作者インタフェースを介して所望の硬さ又はフィードバックレベルを選択することができる機械マウント制御システムの提供にも利用可能性を有する。かかる操作者インタフェースはまた、操作者が行われる作業のタイプを選択することも可能にし、次に制御システムが、それに従いマウントを設定し得る。
【0065】
センサはまた、機械又は器具の位置又は速度を監視して、次に行われる作業のタイプを予測することもできる。予測されると、適切なマウント設定が使用され得る。かかる予測アルゴリズム手法は、機械が検知するパラメータを使用するのみならず、全地球測位衛星及び他のマッピング技術も同様に利用して、作業及び所望のマウント設定を予測することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(102)と、
フレーム(102)により支持されたオペレータキャブ(104)と、
オペレータキャブ(104)をフレーム(102)に動作可能に連結する制御自在マウント(106)であって、
ハウジング(108)と、
ハウジング(108)内に取り付けられたピン(120)と、
ピン(120)をハウジング(108)に連結するエラストマー部材(124)と、
ハウジング(108)内の流体(116、118)と、
ハウジング(108)と動作可能に連係され、且つオペレータキャブ(104)とフレーム(102)との間の相対変位を示す信号を生成するセンサ(160、170、214、222、226、230)と、
センサ(160、170、214、222、226、230)と動作可能に連係され、且つ流体(116、118)によりピン(120)をハウジング(108)との係合から離すように付勢させる電子制御ユニット(168)と、
を含む、制御自在マウント(106)と、
を含む、機械(100)。
【請求項2】
流体(116、118)がレオロジー流体(116)であり、及びハウジング(108)と動作可能に連係され、且つレオロジー流体(116)にわたりフィールドを生じさせるように構成されるコイル(131)をさらに含み、電子制御ユニット(168)により生成される信号によりフィールドの強度、従ってレオロジー流体(116)の付勢力を変化させる、請求項1に記載の機械(100)。
【請求項3】
ハウジング(108)が第1のチャンバ(112)と第2のチャンバ(114)とを含み、第1のチャンバ(112)にレオロジー流体(116)を含み、及び第2のチャンバ(114)に圧縮流体(118)をさらに含み、電子制御ユニット(168)により生成される信号により第2のチャンバ(114)内の圧縮流体(118)の圧力、従って圧縮流体(118)の付勢力を変化させる、請求項2に記載の機械(100)。
【請求項4】
流体(116、118)が、エラストマー部材によるピン(120)の所望のスナッビング高さ(144)への維持を補助する、請求項1に記載の機械(100)。
【請求項5】
メモリ(194)であって、制御自在マウント(106)に関する履歴データを格納するメモリ(194)をさらに含み、電子制御ユニット(168)が、制御自在マウント(106)に関する実際の検知データを履歴データと比較し、比較に基づき、制御自在マウント(106)を交換すべきであることを示す信号を生成するように構成される、請求項1に記載の機械(100)。
【請求項6】
センサ(160、170、214、222、226、230)が、第2のチャンバ(114)と動作可能に連係され、且つ第2のチャンバ(114)内の圧縮流体(118)の圧力を示す信号を生成するように構成され、及び電子制御ユニット(168)がセンサ信号に基づき実際の変位を計算し、実際の変位を初期変位と比較し、及び電子制御ユニット(168)により生成された信号が、実際の変位が初期変位に等しくなるまで第2のチャンバ(114)内の圧力を変化させる、請求項3に記載の機械(100)。
【請求項7】
キャブマウント(106)を使用してキャブ(104)を機械(100)のフレーム(102)に連結するステップであって、キャブマウント(106)が、ハウジング(108)と、ハウジング(108)に対して移動可能であり、且つエラストマー部材(124)によってハウジング(108)に連結されるピン(120)とを有する、ステップと、
キャブ(104)とフレーム(102)との間の相対変位を示すパラメータを検知するステップと、
検知された相対変位が所望の相対変位に等しくなるまで、ハウジング(108)内のレオロジー流体(116)にわたるフィールドを調整するステップと、
を含む、キャブマウント(106)の制御方法。
【請求項8】
レオロジー流体(116)がハウジング(108)の第1のチャンバ(112)にあり、及び流体(116)を調整するステップが、レオロジー流体(116)の見掛け粘度を変化させるためレオロジー流体(116)に近接して位置決めされたコイル(131)により多くの、又はより少ない電流を送り込むことを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
検知するステップが電子制御ユニット(168)を使用して行われ、電子制御ユニット(168)が、エラストマー部材(124)がいつ永久歪みを起こし、許容レベルを超えてクリープが生じ始めたかを示す診断信号を生成するように構成された制御アルゴリズム(262)を実行する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ハウジング(108)の第2のチャンバ(114)内に加圧流体(118)をさらに含み、流体(118)を調整するステップが、ピン(120)を上昇又は降下させるため加圧流体(118)の圧力を増加又は減少させることを含む、請求項7に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2012−512341(P2012−512341A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540974(P2011−540974)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/068109
【国際公開番号】WO2010/071781
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】