説明

キャブ内部温度制御方法、キャブ内部温度制御装置および車両

【課題】開閉手段の開閉によるキャブ内部での温度変化を低減するキャブ内部温度制御方法、およびこの方法の実施に用いるキャブ内部温度制御装置を提供する。
【解決手段】キャブにキャブ内外気温をそれぞれ検知する温度センサ64を設ける。キャブの各開口部に、開閉手段の開閉状態を検知する開閉センサ65、各開口部での風の流れ状況を検知する流れ状況検知手段をそれぞれ設ける。各センサ、検知手段の検知結果から、制御部63が、開閉手段の開閉後のキャブ内部での温度変化を、実際に温度変化する前に予想し、キャブ内部に設けた自動制御可能なエアコンディショナ37の設定温度と前記予想温度とを比較して、温度差をなくすようにエアコンディショナ37の設定条件を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブ内部温度制御方法、この方法の実施に用いるキャブ内部温度制御装置およびこのキャブ内部温度制御装置を具備した車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの車両のキャブには、前窓、ドア、天窓、ドア窓の開閉手段が設けられており、キャブの内部には、オペレータが座るシート、モニタ、操作スイッチ、エアコンディショナなどが設けられている。
【0003】
キャブ内部の温度管理をするためのエアコンディショナは、シートの後方に設けられ、また、自動制御運転可能である。自動制御運転の際は、エアコンディショナが風量や風温を選択し、キャブ内部が設定温度に保たれ、快適な作業空間を保持できる。
【0004】
しかし、油圧ショベルなどでは、作業上、機体への乗り降りなどで開閉手段を開閉することが多く、特に開閉手段を開けた場合は、キャブ内気温度がキャブ外気温度に影響されて急激に変化する。この温度変化に対し、温度変化が起こった後にエアコンディショナのセンサが温度変化を検知し、エアコンディショナの風量や風温を調節して急速に設定温度に戻そうとするが、エアコンディショナの設定温度にはなかなか戻らず、不快な作業空間が直ぐには解消されないと共に、エアコンディショナに多大な負荷をかけることになる。
【0005】
これに対して、キャブの開閉手段に開閉状態を検知するセンサを設け、閉じた状態の時は同様に自動制御運転で温度管理をしているが、開閉手段のいずれかが開くと、センサが検知し、エアコンディショナが固定運転に切り替わり、メモリに記録されたテーブルのデータに従ってエアコンディショナの風量や風温を制限するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3127204号公報(第2頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような、キャブ内部温度制御装置では、開閉手段の開閉状態に応じて予め定めた条件でエアコンディショナのファンやモータを制御することはできるが、開閉手段の開閉による温度変化などのキャブ環境の変化には対応できず、キャブ内部で生じた温度変化に迅速に対応できない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、開閉手段の開閉によるキャブ本体内部での温度変化を予想して変化を低減させるように制御し、快適な作業空間を保持することができるキャブ内部温度制御方法、キャブ内部温度制御装置およびこのキャブ内部温度制御装置を具備した車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、キャブ内部の内気温度およびキャブ外部の外気温度と、キャブに設けられた開口部を開閉する開閉手段の開閉による開口部での風の流れ状況の変化とを検知して、開閉手段の開閉によるキャブ内気温度の温度変化を予想し、エアコンディショナの温度設定値と開閉手段の開閉後の予想温度とを比較して、温度差をなくすようにエアコンディショナの設定条件を制御するキャブ内部温度制御方法である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のキャブ内部温度制御方法において、風の流れ状況は、開口部における開口部温度および風速によって決定するものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、キャブに設けられた開口部を開閉する開閉手段の開閉状態を検知する開閉センサと、キャブ内部の内気温度およびキャブ外気温度をそれぞれ検知する温度センサと、前記開閉手段の開閉による開口部での風の流れ状況の変化を検知する風の流れ状況検知手段と、キャブ内に供給される風の少なくとも風量および風温を自動制御可能なエアコンディショナと、開閉センサ、温度センサおよび流れ状況検知手段からの検知結果により開閉手段の開閉後のキャブ内部の温度変化を予想し、エアコンディショナの温度設定値と予想した温度変化後の温度とを比較して、温度差をなくすようにエアコンディショナの設定条件を制御する制御部とを具備したキャブ内部温度制御装置である。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項3記載のキャブ内部温度制御装置において、流れ状況検知手段は、複数方向に開口された複数の開口部の開閉手段にそれぞれ設けられ、各開口部を通過する風の少なくとも開口部温度および風速、風向を検知する開口部温度センサおよび風速風向センサを備えたもので、制御部は、開閉センサ、温度センサ、開口部温度センサおよび風速風向センサからの検知結果により開閉手段の開閉後のキャブ内部の温度変化を予想し、エアコンディショナの設定温度と予想した温度変化後の温度とを比較して、温度差をなくすようにエアコンディショナの設定条件を制御するものである。
【0012】
請求項5に記載された発明は、走行機能を備えた機体と、この機体上に設けられたキャブと、このキャブに設けられた請求項3または4記載のキャブ内部温度制御装置とを具備した車両である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、キャブ内部の内気温度およびキャブ外部の外気温度と、キャブの開口部を開閉する開閉手段の開閉による開口部での風の流れ状況の変化とから、内気温度が実際に変化する前に、開閉手段の開閉後のキャブ内部での温度変化を予想し、エアコンディショナの設定温度と予想温度とを比較して、温度差をなくすようにエアコンディショナの設定条件を制御することで、キャブ環境の変化に対するエアコンディショナの速応性能を高めて、開閉手段の開閉後のキャブ内部での温度変化を低減できる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、開閉手段の開閉による開口部での開口部温度および風速を検知することで、開閉手段の開閉による開口部での風の流れ状況の変化を正確に検知でき、内気温度および外気温度とこの風の流れ状況の変化とから、開閉手段の開閉によるキャブ内部での温度変化が正確に予想できる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、キャブ内部温度制御装置は、開閉手段の開閉状態を検知する開閉センサと、キャブの内気温度およびキャブの外気温度をそれぞれ検知する温度センサと、開閉手段の開閉による開口部での風の流れ状況の変化を検知する風の流れ状況検知手段とを具備することで、キャブ内気温度、キャブ外気温度、開閉手段の開閉状態、開口部での風の流れ状況を検知できる。そして、制御部によって、前記各センサおよび流れ状況検知手段からの検知結果から、内気温度が実際に変化する前に、開閉手段の開閉後のキャブ内部での温度変化を予想し、キャブ内部に設けられた少なくとも温度および風量を自動制御可能なエアコンディショナの設定温度と予想したキャブ内部の温度変化後の温度とを比較して、温度差をなくすようにこのエアコンディショナの設定条件を制御することで、キャブ環境の変化に対するエアコンディショナの速応性を高めて、キャブに設けられた開閉手段の開閉によるキャブ内部での温度変化を低減できる。
【0016】
請求項4に記載された発明によれば、流れ状況検知手段は、キャブの複数方向に開口された複数の開口部の開閉手段にそれぞれ設けられ、各開口部を通過する風の少なくとも開口部温度および風速、風向を検知する開口部温度センサおよび風速風向センサを備えることで、各開口部での開口部温度、風速、風向を検知することができる。
【0017】
そして、制御部が、キャブ内気温度、キャブ外気温度および各開口部での開口部温度、風速、風向などから、風がキャブ内気温度に及ぼす影響を予想することで、開閉手段の開閉によるキャブ内部での温度変化を正確に予想し、エアコンディショナの設定温度と予想したキャブ内部の温度変化後の温度とを比較して、温度差をなくすようにエアコンディショナの設定条件を正確に制御することができる。
【0018】
請求項5に記載された発明によれば、走行機能を備えた機体上にキャブが設けられ、このキャブが上記キャブ内部温度制御装置を具備することで、走行中など機体に対する風の影響が大きい場合でも、キャブの開閉手段を開閉した際に起こるキャブ内部での温度変化が予想でき、この温度変化に対応するようにエアコンディショナを制御することで、キャブの開閉手段の開閉によるキャブ内部の温度変化を低減でき、キャブ内部を快適な状態に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図1乃至図5に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図5は作業機械としての油圧ショベル11を示し、この油圧ショベル11は、下部走行体12と、この下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とにより構成された機体14と、上部旋回体13上に設けられたキャブ15と、このキャブ15に設けられたキャブ内部温度制御装置16とを具備した車両17を備えている。上部旋回体13上には作動流体圧としての作動油圧により作動する作業装置18が設置されている。
【0021】
図2または図3のいずれかに示すように、キャブ15は、キャブ本体19に、開口部としての昇降用開口部21、前面開口部22、天井面開口部23が設けられ、これらの各開口部21,22,23には、開閉手段としてのドア24、前窓25、天窓26が開閉自在に設けられ、さらにドア24には、開口部としてのドア窓開口部27が設けられ、このドア窓開口部27には開閉手段としての一対のドア窓28が開閉自在に設けられている。
【0022】
各開口部21,22,23,27には、センサ取付部31,32,33,34が設けられている。これらセンサ取付部31,32,33,34は一例であって図示された位置に限定されるものではない。また、ドア24および前窓25は全開もしくは全閉のみ可能であり、ドア窓28および天窓26は、開閉量が調整できる。
【0023】
キャブ15の内部には、中央にオペレータが座るシート35が設けられ、シート35の前方には温度情報などの油圧ショベル11の稼動情報を表示するモニタ36や、キャブ内気温度を管理する少なくとも風温および風量が自動制御可能なエアコンディショナ37のオペレータへのフェイス吹出し口38、前窓25のガラス曇り防止のための前窓用吹出し口39などが設けられている。
【0024】
また、シート35の両脇には、上部旋回体13や作業装置18などを操作する操作レバー41が設けられ、シート35の後方には、エアコンディショナ本体42が設けられ、このエアコンディショナ本体42の上方に、オペレータ側への上方吹出し口43および上方への吹出し口44などが設けられている。
【0025】
図1はキャブ内部温度制御装置16の概要を示し、キャブ15内部の内気温度を検知する内気温度センサ45は、エアコンディショナ37に設けられ、キャブ15外部の外気温度を検知する外気温度センサ46は、キャブ本体19の外部であって日光が直接当たらない場所に設けられている。
【0026】
また、センサ取付部31には、ドア24が設けられた昇降用開口部21における、ドア24の開閉状態を検知するドア開閉センサ47、昇降用開口部21の、開口部温度を検知するドア温度センサ48、風速を検知するドア風速センサ49、風向を検知するドア風向センサ50が設けられ、その他の開閉手段にも、前面開口部22に設けられたセンサ取付部32には、前窓開閉センサ51、前窓温度センサ52、前窓風速センサ53、前窓風向センサ54が設けられ、天井面開口部23に設けられたセンサ取付部33には、天窓開閉センサ55、天窓温度センサ56、天窓風速センサ57、天窓風向センサ58が設けられ、ドア窓開口部27に設けられたセンサ取付部34には、ドア窓開閉センサ59、ドア窓温度センサ60、ドア窓風速センサ61、ドア窓風向センサ62が設けられている。
【0027】
図1に示されるように、制御部63の入力部には、キャブ内気温度、キャブ外気温度をそれぞれ検知する内気温度センサ45、外気温度センサ46から構成される温度センサ64、および各開口部21,22,23,27における、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉状態を検知するドア開閉センサ47、前窓開閉センサ51、天窓開閉センサ55、ドア窓開閉センサ59から構成される開閉センサ65、開口部温度を検知するドア温度センサ48、前窓温度センサ52、天窓温度センサ56、ドア窓温度センサ60から構成される開口部温度センサ66、風速を検知するドア風速センサ49、前窓風速センサ53、天窓風速センサ57、ドア窓風速センサ61から構成される風速センサ67、風向を検知するドア風向センサ50、前窓風向センサ54、天窓風向センサ58、ドア窓風向センサ62から構成される風向センサ68が接続され、制御部63の出力部には、モニタ36と共に、エアコンディショナ37のエアミックスダンパ69、コンプレッサ70、およびファン71を駆動するモータなどのアクチュエータが接続されている。
【0028】
そして、制御部63は、温度センサ64、および各センサ取付部31,32,33,34にそれぞれ設けられた、開閉センサ65、開口部温度センサ66、風速センサ67、風向センサ68からの検知結果から、キャブ15内部の内気温度が実際に変化する前に、計算流体解析(以下、CFD流体解析という)により、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉後の温度変化を予想し、エアコンディショナ37の設定温度と予想した予想温度とを比較して、温度差をなくすようにエアコンディショナ37の設定条件を制御する。
【0029】
設定温度と予想温度との誤差をなくすように設定条件が制御部63によって制御されたエアコンディショナ37は、エアミックスダンパ69により、冷気と暖気の割合を調節することで温風吹出し温度を調整したり、コンプレッサ70に接続されたクラッチの断続時間によりコンプレッサ70の稼働時間を変化させることで冷風吹出し温度を調整し、ファン71の回転速度を調節することで吹出し風量を調整する。また、モニタ36には、キャブ内気温度やエアコンディショナ37の設定温度などが表示され、エアコンディショナ37の自動制御モードや固定制御モードを選択するなどの入力操作機能がある。
【0030】
ドア24および前窓25は、全開もしくは全閉のみ可能なので、取付けられたドア開閉センサ47および前窓開閉センサ51は、開閉のみを検知するものであり、リミットスイッチを用いて物理的に開閉を検知するものや、近接スイッチを用いて非接触で開閉を検知するものなどが用いられる。
【0031】
天窓26およびドア窓28に設けられた天窓開閉センサ55およびドア窓開閉センサ59には、ドア開閉センサ47、前窓開閉センサ51のように開閉のみを検知するセンサを用いても良いが、天窓26およびドア窓28は開閉量を調節できるので、ポテンショメータのような開閉量を検知するセンサなどを用いると、天窓26およびドア窓28の開閉状態がより精度良く検知できる。
【0032】
開口部温度センサ66および風速センサ67は、例えば熱電対などを用いたセンサであり、これらのセンサによって各開口部21,22,23,27における、開口部温度および風速を正確に検知し、正確に風の流れ状況を検知できる。
【0033】
風向センサ68は、例えば複数の熱電対などの風速センサを複数方向に向け配列することで形成する。
【0034】
したがって、風速センサ67と風向センサ68は、一体的に形成することができるので、これを風速風向センサ72とする。この風速風向センサ72は、風速のみ検知する場合と、風向のみ検知する場合と、風速および風向を検知する場合とがある。
【0035】
また、各開口部21,22,23,27にそれぞれ風向センサ68が設けられることで、より正確に各開口部21,22,23,27での風向を検知できるが、各開口部21,22,23,27に風向センサ68を設けなくても、キャブ本体19の外部に風向センサを設けたり、各開口部21,22,23,27に設けられた風速センサ67の検知結果による各開口部間の風速の差異から風向を演算することにより、風向を検知するようにしてもよい。
【0036】
次に、実施の形態のキャブ内部温度制御方法の一制御例を、図4に示されたフローチャートを参照して説明する。
【0037】
(ステップS1)
制御部63は、エアコンディショナ37のオン、オフまたは、自動制御モード、固定制御モード、送風モードなどの作動状態を確認する。
【0038】
(ステップS2)
制御部63は、エアコンディショナ37の自動制御モードが作動しているか否かを判定し、自動制御モードが作動していない場合は、ステップS1に戻り、自動制御モードが作動している場合は、ステップS3に進む。
【0039】
(ステップS3)
制御部63は、エアコンディショナ37に設けられた内気温度センサ45およびキャブ本体19に設けられた外気温度センサ46により、キャブ内気温度およびキャブ外気温度を検知する。
【0040】
(ステップS4)
制御部63は、キャブ本体19に設けられた各開口部21,22,23,27の開閉手段であるドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28にそれぞれ設けられた開閉センサ65により、各開閉手段の開閉状態を検知する。
【0041】
(ステップS5)
制御部63は、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28のうちのいずれか一つ以上が開いているか否かを判定し、全て閉じている場合は、ステップS1に戻り、いずれか一つ以上が開いている場合は、ステップS6に進む。
【0042】
(ステップS6)
制御部63は、各センサ取付部に設けられた開口部温度センサ66、風速センサ67、風向センサ68により、各開口部21,22,23,27における開口部温度、風速、風向を計測し、各開口部21,22,23,27における風の流れ状況の変化を検知する。
【0043】
(ステップS7)
制御部63は、各開口部21,22,23,27の開口部温度データに加え、キャブ内気温度とキャブ外気温度との差を算出する。
【0044】
(ステップS8)
制御部63は、キャブ内気温度が実際に変化する前に、キャブ内気温度、キャブ外気温度、その温度差、各開口部21,22,23,27における、開口部温度、風速、風向を解析入力条件とし、温度予想関数を用いたCFD流体解析によって、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉後のキャブ15内部の温度変化を予想する。
【0045】
(ステップS9)
制御部63は、自動制御モードのエアコンディショナ37の温度設定値とCFD流体解析によるドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉後のキャブ15内部における予想温度とを比較し、設定温度と予想温度の誤差を算出する。
【0046】
(ステップS10)
制御部63は、ステップS9で算出した温度差をなくすように、自動制御モードのエアコンディショナ37のコンプレッサ用クラッチ断続時間、エアミックス比、ファン回転速度などの設定条件を制御することで、エアコンディショナ37の吹出し温度および風量を調整する。
【0047】
(ステップS11)
制御部63はエアコンディショナ37の作動状態、または、各開口部21,22,23,27におけるそれぞれの開閉手段の開閉状態に変化があるか否かを判定し、変化がない場合は、ステップS6に戻り、変化があった場合は、ステップS1に戻る。
【0048】
次に、実施の形態の効果を説明する。
【0049】
キャブ内気温度およびキャブ外気温度と、キャブ15の各開口部21,22,23,27を開閉するドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉による各開口部21,22,23,27での風の流れ状況の変化とから、キャブ内気温度が実際に変化する前に、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉後のキャブ15内部での温度変化を予想し、エアコンディショナ37の設定温度と予想温度とを比較して、温度差をなくすようにエアコンディショナ37の設定条件を制御することで、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉などによるキャブ環境の変化に対するエアコンディショナ37の速応性を高めて、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉後のキャブ15内部での温度変化を低減できる。
【0050】
ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉による各開口部21,22,23,27での開口部温度および風速、風向を検知することで、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉による各開口部21,22,23,27での風の流れ状況の変化を正確に検知でき、キャブ内気温度およびキャブ外気温度と各開口部21,22,23,27における風の流れ状況の変化とから、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉によるキャブ内気温度の温度変化が正確に予想できる。
【0051】
キャブ内部温度制御装置16は、キャブ本体19に設けられた各開口部21,22,23,27のドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉状態を検知する開閉センサ65と、キャブ内気温度およびキャブ外気温度をそれぞれ検知する温度センサ64と、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉による各開口部21,22,23,27での風の流れ状況の変化を検知する風の流れ状況検知手段とを具備することで、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉状態、キャブ内気温度、キャブ外気温度、各開口部21,22,23,27での風の流れ状況を検知できる。
【0052】
そして、制御部63は、各センサおよび流れ状況検知手段からの検知結果から、キャブ内気温度が実際に変化する前に、CFD流体解析により、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉後のキャブ内気温度の温度変化を予想し、キャブ15内部に設けられた少なくとも温度および風量を自動制御可能なエアコンディショナ37の設定温度と予想したキャブ15内部の温度変化後の予想温度とを比較することで、温度差をなくすようにエアコンディショナ37の設定条件を制御できる。
【0053】
流れ状況検知手段は、キャブ15の複数方向に開口された複数の開口部21,22,23,27のドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28のセンサ取付部31,32,33,34にそれぞれ設けられ、各開口部21,22,23,27を通過する風の少なくとも開口部温度および風速を検知する開口部温度センサ66および風速センサ67を備えることで、各開口部21,22,23,27での開口部温度、風速を検知することができる。また、各開口部21,22,23,27に風向センサ68を設けることで、正確に各開口部21,22,23,27での風向を検知でき、より精度良く各開口部21,22,23,27を通過する風の流れ状況を検知できる。なお、キャブ本体19の外部に風向センサを設けたり、各開口部間の風速の差異から風向を演算することにより、風向を検知してもよい。
【0054】
そして、制御部63が、各センサから、キャブ内気温度、キャブ外気温度、各開口部21,22,23,27での開口部温度、風速、風向を検知することで、キャブ内気温度が実際に変化する前に、CFD流体解析によって、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉によるキャブ15内部での温度変化を正確に予想し、エアコンディショナ37の設定温度と予想したキャブ15内部の温度変化後の温度とを比較して、温度差をなくすようにエアコンディショナ37の設定条件を正確に制御することができる。
【0055】
走行機能を備えた機体14上にキャブ15が設けられた車両17において、このキャブ15がキャブ内部温度制御装置16を具備することで、走行中など機体14に対する風の流れ状況が変化しやすく、影響が大きい場合でも、キャブ15のドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉によるキャブ15内部での内気温度が実際に変化する前に、各センサからの検知結果によって、ドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉後のキャブ内気温度が予想できる。
【0056】
そして、エアコンディショナ37の設定温度と予想温度とを比較し、温度差をなくすようにエアコンディショナ37を制御することで、走行中におけるキャブ本体19に設けられたドア24、前窓25、天窓26、ドア窓28の開閉によるキャブ15内部の温度変化を低減でき、キャブ15内部を快適な状態に保つことができる。
【0057】
本発明は、温度管理をするエアコンディショナが搭載され、開閉手段が設けられたキャブを具備する車両に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係るキャブ内部温度制御装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】同上制御装置を備えたキャブの斜視図である。
【図3】同上キャブ内部の斜視図である。
【図4】本発明に係るキャブ内部温度制御方法の制御例を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る車両の一実施の形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0059】
14 機体
15 キャブ
16 キャブ内部温度制御装置
17 車両
21 開口部としての昇降用開口部
22 開口部としての前面開口部
23 開口部としての天井面開口部
24 開閉手段としてのドア
25 開閉手段としての前窓
26 開閉手段としての天窓
27 開口部としてのドア窓開口部
28 開閉手段としてのドア窓
37 エアコンディショナ
63 制御部
64 温度センサ
65 開閉センサ
66 開口部温度センサ
67 風速センサ
72 風速風向センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブ内部の内気温度およびキャブ外部の外気温度と、キャブに設けられた開口部を開閉する開閉手段の開閉による開口部での風の流れ状況の変化とを検知して、開閉手段の開閉によるキャブ内気温度の温度変化を予想し、
エアコンディショナの温度設定値と開閉手段の開閉後の予想温度とを比較して、
温度差をなくすようにエアコンディショナの設定条件を制御する
ことを特徴としたキャブ内部温度制御方法。
【請求項2】
風の流れ状況は、開口部における開口部温度および風速によって決定する
ことを特徴とした請求項1記載のキャブ内部温度制御方法。
【請求項3】
キャブに設けられた開口部を開閉する開閉手段の開閉状態を検知する開閉センサと、
キャブ内部の内気温度およびキャブ外部の外気温度をそれぞれ検知する温度センサと、
前記開閉手段の開閉による開口部での風の流れ状況の変化を検知する風の流れ状況検知手段と、
キャブ内に供給される風の少なくとも風量および風温を自動制御可能なエアコンディショナと、
開閉センサ、温度センサおよび流れ状況検知手段からの検知結果により開閉手段の開閉後のキャブ内部の温度変化を予想し、エアコンディショナの温度設定値と予想した温度変化後の温度とを比較して、温度差をなくすようにエアコンディショナの設定条件を制御する制御部と
を具備したことを特徴とするキャブ内部温度制御装置。
【請求項4】
流れ状況検知手段は、
複数方向に開口された複数の開口部の開閉手段にそれぞれ設けられ、各開口部を通過する風の少なくとも温度および風速、風向を検知する開口部温度センサおよび風速風向センサを備え、
制御部は、
開閉センサ、温度センサ、開口部温度センサおよび風速風向センサからの検知結果により開閉手段の開閉後のキャブ内部の温度変化を予想し、エアコンディショナの設定温度と予想した温度変化後の温度とを比較して、温度差をなくすようにエアコンディショナの設定条件を制御する
ことを特徴する請求項3記載のキャブ内部温度制御装置。
【請求項5】
走行機能を備えた機体と、
この機体上に設けられたキャブと、
このキャブに設けられた請求項3または4記載のキャブ内部温度制御装置と
を具備したことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−201224(P2008−201224A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38408(P2007−38408)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】