説明

キャリアテープ用紙およびキャリアテープ

【課題】リール巻き付け時あるいは巻き付け状態において、折れの発生が防止されたキャリアテープ用紙およびキャリアテープの提供。
【解決手段】紙厚が700〜1200μmであり、裏面側から表面側へ向かって荷重を掛けたときのJIS−P8125に規定される用紙縦方向のこわさに対する、表面側から裏面側へ向かって荷重を掛けたときのJIS−P8125に規定される用紙縦方向のこわさの比率が80〜90%であるキャリアテープ用紙およびその用紙を用いたキャリアテープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路を製造する際に使用する、チップ状の表面実装電子部品を収納し、表面実装機(マウンター)に搬送するためのキャリアテープおよびこれに用いるキャリアテープ用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の自動生産を行うにあたっては、表面実装タイプの電子部品を表面実装機により基板に自動装着する技術が用いられる。表面実装機に対して電子部品を供給するためには、電子部品収納用のキャビティ部と表面実装機内への送り用のマージナル部とを備える幅6〜9mm、基紙厚0.4〜1.0mmのキャリアテープが用いられている。特に一般的には幅8mm、厚さが0.7〜1.0mmのものがよく用いられる。
このキャリアテープは、紙製およびプラスチック製のものがあるが、コスト安であり、軽量であり、廃棄容易であり、非帯電性であることから紙製とするのが望ましいとされている。
キャリアテープの具体的な形態としては、部品収納用のキャビティ部とキャリアテープ送り用のマージナル部とが貫通孔であり、表面実装部品を収納した状態で、表面がトップカバーテープでシールされ、下面がボトムテープによりシールされるパンチキャリアテープや、キャビティ部がエンボス加工により形成された凹部であり、表面のみがトップカバーテープでシールされるエンボスキャリアテープや、表面実装部品の挿入直前にこれらキャビティ部等を形成するアンパンチキャリアテープなどが知られる。
これらのキャリアテープはキャビティ部に電子部品が装填されトップカバーテープでシールされた状態で、直径5cm程度のカセットリールに捲きつられた状態(レコード巻方式)、あるいは直径20cm程度巾10cm程度の紙管にスパイラル状に捲きつられた状態(トラバース巻)で出荷され、最終ユーザーが表面実装機に装着して使用される。
近年では、レコード巻方式と比較して1巻当りの巻長さを長くすることができるために継ぎ手作業が軽減され、電子部品装填工程の高速化及び作業効率向上のメリットがあるトラバース巻方式が多用されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−179797号公報
【特許文献2】特開平3−249300号公報
【特許文献3】特開2004−67222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来キャリアテープは、カセットリール等に捲き付ける際に、リールあるいは管の外周面に沿って湾曲せずに折れてしまうことがあった。
折れの現象は一般的に用いられる紙厚が700μm以上のもので顕著となり、またカセットリール径が5〜6cmと小径の場合に顕著となる。そして、このように折れが生ずると、その折れ部分の表面に凸部が発現し、この凸部が次工程の表面実装機のガイド部分に引っ掛かって部品を表面実装機内に安定して装填することができない。また、表面実装機では、トップシールを一定張力で引張しつつキャリアテープから剥離してキャビティ内の電子部品を取り出すが、キャリアテープが折れるとその折れ部分でキャリアテープからトップカバーシールが剥離して浮いてしまう。そうすると、表面実装機がトップカバーシールを一定張力で引張することができず、表面実装機に引っ張られるキャリアテープがばたつきキャビティ内の電子部品の脱落や所望位置への装填ができなくなる。
そこで、本発明の解決課題は、厚さ700μm以上の多層抄き板紙を効率良く生産することができ、かつ、リール捲き付け時あるいは捲き付け状態において、折れの発生が防止されたキャリアテープおよびキャリアテープ用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
巻取りの外面となる表面層と、巻取りの内面となる裏面層と、それらの間の中間層を有する多層抄きのキャリアテープ用紙であって、
紙厚が700〜1200μmであり、
裏面側から表面側へ向かって荷重を掛けたときのJIS−P8125に規定される用紙縦方向のこわさに対する、表面側から裏面側へ向かって荷重を掛けたときのJIS−P8125に規定される用紙縦方向のこわさの比率が、80〜90%である、ことを特徴とするキャリアテープ用紙。
【0005】
<請求項2記載の発明>
表面層および裏面層に水溶性高分子が塗工または含浸され、
裏層面に塗工または含浸された水溶性高分子量に対する、表面層に塗工または含浸された水溶性高分子量の質量比率が120〜250%である、請求項1に記載のキャリアテープ用紙。
【0006】
<請求項3記載の発明>
中間層に機械パルプが5〜30%含有されている、請求項1または請求項2に記載のキャリアテープ用紙。
【0007】
<請求項4記載の発明>
隣接する層間のJIS−P8121に基づくカナダ標準濾水度の差が50cc以下である請求項1〜3の何れか1項に記載のキャリアテープ用紙。
【0008】
<請求項5記載の発明>
請求項1〜4記載のキャリアテープ用紙に対し、搬送対象部品収納用のキャビティ部とテープ送り用のマージナル部を加工形成してなる、ことを特徴とするキャリアテープ。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るキャリアテープ用紙は、多層抄きで各層間にある程度の一体性があり、さらに表裏面層間におけるこわさに適当な差を設けたことにより、キャリアテープとしてリール等に捲き付け時に、リールあるいは管に捲き付ける時あるいは捲き付けた状態において、巻取り内面に向いた側の折れの発生が格段に防止される。
【0010】
そして、水溶性高分子の塗布、含浸により表裏面層間のこわさの差を好適に発生させることができる。
【0011】
また、中間層に機械パルプが5〜30%含有されていると地合が良好になり、地合ムラによる折れ起点の発生が防止される。さらに機械パルプは、中間層の柔軟性も向上され、表裏面層間のこわさの差による作用効果をいっそう発揮させやすくなる。
【0012】
さらに、隣接する各層のJIS−P8121に基づくカナダ標準濾水度(以下、単にフリーネスともいう)の差が50cc以下であると、隣接する各層間の繊維の絡み合いが良く、層間強度が高く、リール等に捲き付ける時あるいは捲き付けた状態における巻面に折れや各層間の分離の発生が防止される。
【0013】
以上の本発明のキャリアテープ用紙からなるキャリアテープは、折れが極めて発生しづらいなどの利点があり、トップテープを安定的に剥離することができ、電子部品取り出し時の安定生産に優れ生産効率の向上に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、具体例を示しながら以下に詳説する。
本発明のキャリアテープ用紙は、多層抄きで製造される表面層、中間層、裏面層を備える用紙であればよく、3層構造に限らず中間層を複数層有する4層あるいはそれ以上の多層構造であってもよい。ここで、多層抄きとするのは、各層間でパルプ繊維同士に適度な絡みあいが生ずるため各層の適度な一体性が得られるからである。また、多層抄きでは、各層の原料の構成を自由にでき、例えば、古紙パルプを中間層に配合しつつ表面層および裏面層にバージンパルプを使用することが容易で、リサイクルに貢献する古紙パルプを使用しつつ品質の確保を達成しやすいといった利点がある。
【0015】
ここで、本発明に係るキャリアテープ用紙の各層に用いる原料パルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、または離解・脱墨・漂白古紙パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを一種または数種を適宜選択して使用することができる。ただし、表面実装部品への影響を考慮し填料を減少させる必要がある場合は、ディインキングパルプ、ウエストパルプ等の古紙パルプよりもバージンパルプを使用することが好ましい。
【0016】
特にキャリアテープ用紙の表面層、裏面層においては、その役割、各種品質特性等をバランスよく、効率的に達成するために、LBKP、NBKPが適する。特に、LBKPを70〜95質量%含有することが好ましい。LBKPの含有量が70〜95質量%であると、キャリアテープ用紙として必要な表面強度や剛度を保ちながら、良好な地合いが得られるとともに、トップシールテープとの接着性がより良好となり、トップシールテープを剥離する際に安定したピールオフ強度がることができる。なお、表層の原料パルプのLBKPの含有量が70質量%未満であると、良好な地合いを得ることが難しくなり、トップシールテープとの接着性にバラツキが生じやすく、トップシールテープを剥離する際にキャリアテープの走行が安定しないことがあり、生産効率が低下するおそれもある。一方、LBKPの含有量が95質量%を超えると、表面強度や剛度が低下し、トップシールテープを剥離する際に毛羽立ちや紙粉が発生し、生産効率が低下する原因となる。
【0017】
特に中間層においては、その役割、リサイクルへの寄与、各種品質特性等をバランスよく、効率的に達成するために、機械パルプが適する。機械パルプとしては、グランドウッドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、プレッシャライズドグランドウッドパルプ(PGW)などを使用することができる。これら機械パルプの中でも結束繊維や紙粉の発生が少ないサーモメカニカルパルプ(TMP)、プレッシャライズドグランドウッドパルプ(PGW)が好ましい。
【0018】
また、機械パルプの含有量は5%以上が好ましく、更には10%以上とすることが中間層にクッション性を持たせ、表面の折れ、しわを防止する点でより好ましい。配合量が多いと、強度が低くなり、断面からの紙粉発生や中間層での層間剥離の懸念があるため、30%以下が好ましい。なお、抄紙後の中間層の機械パルプ量は、JIS−P8120に記載の「紙、板紙及びパルプ繊維組成試験方法」により特定できる。
【0019】
一方、中間層に機械パルプを含有するにあたり、中間層の原料として古紙パルプを使用することができる。古紙パルプとしては、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、または離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を使用することができる。これらの古紙パルプの中でも、特に中間層の原料としては、キャリアテープ用紙としての各種品質特性をバランスよく、効率的に得るために、表面強度や剛度、引張強度や層間強度などが高く、かつ機械パルプを含みクッション性に優れる、オフィス古紙、茶古紙、クラフト封筒古紙から製造される古紙パルプを用いることが好ましい。
【0020】
他方、本発明のキャリアテープ用紙は、隣接する各層間のフリーネスの差が50cc以下であるのが望ましい。差が50ccを超える場合は、隣接する層のパルプ繊維同士の絡み合いが弱くなり、直径約50mmのコアに捲き取られる際、あるいは捲き戻される際にかかる曲げやしごきの力によって、各層間で剥離が生じたてトップシールテープを剥離する際にキャリアテープの走行が安定しないことがある。
【0021】
なお、本発明にかかる各層のフリーネスは、キャリアテープ用紙を各層に分離し、その後にこれをJIS−P8220に基づいて離解処理して測定した値である。ただし、この値は、原料パルプスラリーのフリーネスとほとんど変わらない。ここで、各層の分離方法としては、キャリアテープ用紙を水に浸漬したのち、しごきの力を加えて層間剥離させればよい。その他の測定層以外の層を削りとるなどしてもよく、要は各層を他の層から分離できる方法であれば特に限定されない。
【0022】
さらに、各層に用いる原料パルプのフリーネスは300〜500ccとすることが好ましく、350〜450ccとすることがより好ましい。すなわち、フリーネスが300cc未満であると、繊維長が短くなるため、キャリアテープとしたときの折れのおそれが高くなり、フリーネスが500ccを超えると、用紙の表面強度や剛度が低下傾向となるため、紙粉が発生しやすくキャリアテープとして加工適性に劣るようになる。
【0023】
なお、本発明のおける原料パルプあるいはパルプスラリー中には、内添薬品を必要に応じて添加することができる。例えば、硫酸バンド等の薬品定着剤、ロジン等のサイズ剤、ポリアクリルアマイド、澱粉等の紙力増強剤、ポリアマイド等の濾水・歩留り向上剤、ポリアミド、ポリアミン、エピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、塩基性染料、酸性染料、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料等の染料等がある。
【0024】
他方、本発明のキャリアテープ用紙は、裏面側から表面側へ向かって荷重を掛けたときのJIS−P8125に規定される用紙縦方向のこわさに対する、表面側から裏面側へ向かって荷重を掛けたときのJIS−P8125に規定される用紙縦方向のこわさの比率が、80〜90%である。好適には82〜88%である。比率が90%を超えると、キャリアテープとしたのち通常使用される直径5cm程度のカセットリールや管に捲き取る際や、捲き戻されて使用される際などに、キャリアテープの表面に折れやしわが生じるようになり、比率が80%未満であるとキャリアテープとしたときの剛性が不足し、曲げ、しごきの力に対して、キャリアテープ裏面に折れが発生して、その部分の表面に、折れやしわが発生するようになる。ここで、表面側から裏面側へ向かって荷重を掛けたときのJIS−P8125に規定される用紙縦方向のこわさは、78mN・m以上、好適には85mN・m以上、140mN・m未満とするのが望ましい。また、裏面側から表面側へ向かって荷重を掛けたときのJIS−P8125に規定される用紙縦方向のこわさは、87mN・m以上、好適には95mN・m以上、155mN・m未満とするのが望ましい。
【0025】
なお、試験片を8mm幅で測定する場合には、表面側から裏面側へ向かって荷重を掛けたときのJIS−P8125に規定される用紙縦方向のこわさは16mN・m以上、好適には17mN・m以上とするのが望ましく、裏面側から表面側へ向かって荷重を掛けたときのJIS−P8125に規定される用紙縦方向のこわさは18mN・m以上、好適には20mN・m以上とするのが望ましい。
【0026】
キャリアテープ用紙のこわさを本発明の範囲にするにあたっては、表面層、裏面層に水溶性高分子を塗工あるいは含浸させることにより達成するのが簡易で適する。そして、この場合表面層に塗工または含浸された水溶性高分子量に対する、裏層面に塗工または含浸された水溶性高分子量の質量比率が120〜250%とするのが望ましい。表面層、裏面層に塗工あるいは含浸させる水溶性高分子としては、澱粉、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)等から、1種又は2種以上の水溶性高分子を使用することができる。なかでも、表面強度やトップカバーテープとの接着性、耐熱性などの点からポリビニールアルコール(PVA)を使用するのが好ましい。
【0027】
表面層への塗工または含浸量は、固形分で1.5〜4.0g/m2塗工することが好ましい。より好ましくは1.5〜2.5g/m2である。水溶性高分子の塗工・含浸量が1.5g/m2未満であると、用紙の裏面層側から表面層側へ向かって荷重を掛けた時のこわさに対する、表面層側から裏面層側へ向かって荷重を掛けたときのこわさの比率を80〜90%とすることが難しくなる。また、4.0g/m2を超えると塗工、含浸後の乾燥性が悪化し、生産性が低下するとともに後の工程の汚れを生じる。表裏面各層に水溶性高分子を内添する方法もあるが、コスト面や操業性などから外添するのが好ましい。
【0028】
特に、裏面層に対する塗工・含浸量は、固形分で0.5〜2.0g/m2とするのが好ましい。より好ましくは0.5〜1.5g/m2である。裏面層への塗工・含浸量が0.5g/m2未満であると、キャリアテープとしたときの表面強度、層間強度が不足するおそれがある。2.0g/m2を超えると、こわさの比率を上記範囲(80〜90%)とすることが難しくなる。また、塗工・含浸後の乾燥性が悪化し、生産性が低下するとともに後の工程で汚れが生じることもある。
【0029】
水溶性高分子を表面層、裏面層へ塗工・含浸するために用いる塗工装置は特に限定されるものではなく、例えばエアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター及びゲートロールコーター、サイズプレス等のロールコーター、ベルバパコーター、カレンダー塗工等を適宜使用することができる。
【0030】
裏面層への塗工・含浸量を、表面層への塗工・含浸量よりも少なくするにあたっては、例えば、表裏層に塗工・含浸させる塗工液中の水溶性高分子濃度に変化をもたせたり、各層に対する塗工回数を異ならしめたりすればよい。例えば、カレンダー塗工機によって表面層に2回塗工し、裏面層に1回塗工するなどすればよい。
【0031】
水溶性高分子を塗工・含浸させた後には、カレンダー装置にて表裏面を平滑化処理することができる。表面平滑化処理するためのカレンダー装置としては特に限定されるものではなく、例えばマシンカレンダー、ソフトカレンダー、又はヤンキードライヤー等が適宜使用される。表面平滑化処理は、JIS P 8151 プリント・サーフ試験機法(面積式流量計形プリント・サーフ試験機)にて、ソフトバッキングを用いてクランプ装置のバッキングを1.0MPAとして測定したときの平滑度が5.0〜8.0μmとなるようにするのが望ましい。
【0032】
さらに、本発明のキャリアテープ用紙では、表面層の、TAPPI T459 om−83に準じて測定した表面強度が12A以上であるの好ましく、14Aであるのがより好ましい。表面強度を12A以上とするためには、原料配合率や原料パルプスラリーのスリーネス、水溶性高分子を塗工・含浸するなどの方法により達成することができる。トップカバーテープを接着する側の表面の表面強度が12A未満の場合には、トッパカバーテープを剥離する工程にて、キャリアテープ用紙表面のパルプ繊維がとられ、紙粉となって操業性を悪化させる原因となる。
【0033】
以上詳述のキャリアテープ用紙は、15〜20cm程度の幅の中原反に裁断したのちに、製品巾(例えば8mm巾)に裁断し、パンチ加工やエンボス加工等の適宜の加工をほどこして搬送対象部品収納用のキャビティ部やテープ送り用のマージナル部等を形成し、本発明のキャリアテープとする。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の実施例と比較例を説明することにより本発明の効果を明らかにする。なお、当然、本発明を以下の実施例のものに限定する趣旨ではない。また、以下の試験例においては、特に説明ない限り、「部」及び「%」とは、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味し、「kg/t」とは、パルプトンあたりの量(kg)を意味する。
【0035】
〔実施例1〕
表面層及び裏面層については、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)15%、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)85%からなるフリーネス420mlのパルプスラリーに、サイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)を固形分換算で0.25%、PAM(ハリマ化成株式会社製、ハーマイドB−15)を固形分換算で0.15%内添し、硫酸バンドを添加してPHを5に調整した原料を使用した。
一方、中間層(2〜4層)としては、NBKP50%、LBKP40%、サーモメカニカルパルプ(TMP)10%からなるフリーネス410mlのパルプスラリーに、サイズ剤(近代化学工業株式会社製R50)を固形分換算で0.30%、PAM(ハリマ化成株式会社製、ハーマイドB−15)を固形分換算で0.5%内添し、硫酸バンドを添加してPHを5に調整した原料を使用した。
これらを円網多層抄紙機にて、表層の付け量を60g/m2、中層(2〜4層)の付け量を460g/m2、裏層の付け量を60g/m2として、5層構造で抄き合わせ、PVA(日本合成化学株式会社製、ゴーセノールN300)をカレンダー塗工で表面に塗工量1.0g/m2、裏面に1.0g/m2塗工してキャリアテープ用紙を得た。
【0036】
〔実施例2〜5〕
表層表面に塗工するPVAの塗工量を表1に示す値に調整したことを除き、その他の点を実施例1と同様にしてキャリアテープ用紙を得た。
【0037】
〔実施例6〜12〕
中層に使用する原料パルプ配合率を表1に示す値に調整したことを除き、その他の点を実施例1と同様にしてキャリアテープ用紙を得た。
【0038】
〔実施例13〜18〕
表層、裏層、および中層に使用するパルプスラリーのフリーネスを表1に示した値としたことを除き、その他の点を実施例1と同様にしてキャリアテープ用紙を得た。
【0039】
〔実施例19〜23〕
表層、裏層に使用する原料パルプの配合率を表1に示す値に調整したことを除き、その他の点を実施例1と同様にしてキャリアテープ用紙を得た。
【0040】
〔比較例1〜2〕
表層表面に塗工するPVAの塗工量を表1に示す値に調整したことを除き、その他の点を実施例1と同様にしてキャリアテープ用紙を得た。
【0041】
以上の実施例および比較例について米坪、厚さ、こわさ、平滑度、表面強度、層間強度の物性測定と、折れについて評価試験を行った。結果は、表1中に示す。なお、物性測定およびこの評価試験は、JIS−P8111に準拠して温度23℃±1℃、湿度50±2%の環境条件で行った。
【0042】
各測定方法および試験方法についての詳細は以下のとおりである。
(厚さ)
JIS P 8118 紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法に準じて厚さを測定した。
【0043】
(こわさ)
JIS P 8125 紙及び板紙−こわさ試験方法−テーバーこわさ試験機法に準じて縦方向のこわさを測定した。表中では、表面側から裏面側へ向かって荷重を掛けた時の縦方向のこわさを(X)とし、裏面側から表面側へ向かって荷重を掛けた時の縦方向のこわさを(Y)とした。
【0044】
(平滑度)
JIS P 8151 紙及び板紙−表面粗さ及び平滑度試験方法(エア・リーク法)−プリント・サーフ試験機法(面積式流量計形プリント・サーフ試験機)にて、ソフトバッキングを用い、クランプ装置のバッキングを1.0MPAとして表面、裏面それぞれの平滑度を測定した。
【0045】
(表面強度)
TAPPI T459 om−83に基づき、表面側、裏面側のそれぞれの表面強度を測定した。
【0046】
(層間強度)
TAPPI UM522に従い、Z軸方向の層間強度を測定した。
【0047】
(各層の分離方法)
抄紙後の用紙の各層の物性を測定すべく、抄紙後の用紙から次記の方法で各層に分離した。まず、試料を室温の水に約1時間浸漬したのち、試料の角を起点として10mmΦ程度の丸棒に捲き付け、その状態で丸棒を転がして試料をしごく。この操作を試料の四隅の全ての角を起点に繰り返し、各方向から試料にしごきの力を加える。これにより、試料の層間の一部が剥離してくるので、これを利用して、試料を表層、中層、及び裏層に分離する。
【0048】
(フリーネス)
分離された各層を裁断して約3cm2、約25gの試験片とし、この試験片を1リットルの水に24時間浸漬したのちにJIS−P8220に基づき標準離解機で15分間離解処理し、試験片が完全に離解していることを目視で確認した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した。
【0049】
(折れ)
折れの評価は、流れ方向30cm、幅8mmのサンプルを10本用意し、直径6cmの円柱に捲きつけ、折れの発生個数を目視判定し、1本のあたりの平均個数を次の基準で評価した。評価は、1個未満を◎、1個以上2個未満を○、2以上5個未満△、5個以上を×と評価した。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から、本発明のキャリアテープ用紙である実施例1〜23は品質評価に優れることが分かる。それに対して、比較例1〜2は、品質評価において実施例1〜23よりも劣る結果となっている。してみると、本発明のキャリアテープ用紙からは、カセットリールや管に捲き取るときや捲き取り後に、折れやしわの発生が防止されているといえる、これにより、トップテープを安定的に剥離することができ、電子部品取り出し時の安定生産に優れ、生産効率のよいキャリアテープを得ることができるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取りの外面となる表面層と、巻取りの内面となる裏面層と、それらの間の中間層を有する多層抄きのキャリアテープ用紙であって、
紙厚が700〜1200μmであり、
裏面側から表面側へ向かって荷重を掛けたときのJIS−P8125に規定される用紙縦方向のこわさに対する、表面側から裏面側へ向かって荷重を掛けたときのJIS−P8125に規定される用紙縦方向のこわさの比率が、80〜90%である、ことを特徴とするキャリアテープ用紙。
【請求項2】
表面層および裏面層に水溶性高分子が塗工または含浸され、
裏層面に塗工または含浸された水溶性高分子量に対する、表面層に塗工または含浸された水溶性高分子量の質量比率が120〜250%である、請求項1に記載のキャリアテープ用紙。
【請求項3】
中間層に機械パルプが5〜30%含有されている、請求項1または請求項2に記載のキャリアテープ用紙。
【請求項4】
隣接する層間のJIS−P8121に基づくカナダ標準濾水度の差が50cc以下である請求項1〜3の何れか1項に記載のキャリアテープ用紙。
【請求項5】
請求項1〜4記載のキャリアテープ用紙に対し、搬送対象部品収納用のキャビティ部とテープ送り用のマージナル部を加工形成してなる、ことを特徴とするキャリアテープ。

【公開番号】特開2007−262614(P2007−262614A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89488(P2006−89488)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【特許番号】特許第3902218号(P3902218)
【特許公報発行日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】