説明

キラルアムロジピンゲンチサートの製造方法

【課題】 商業的な大量生産が可能な方法によって、(R,S)−アムロジピンから光学的に純粋な(R)−または(S)−アムロジピンゲンチサートを製造する方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、光学的に純粋なアムロジピンゲンチサートの製造方法に関し、さらに詳しくは、イソプロパノールを含む溶媒中で(R,S)−アムロジピンと光学的に純粋なO,O’−ジベンゾイル酒石酸を反応させて(R)−または(S)−型のアムロジピンジベンゾイルタートレートジアステレオマーまたはその溶媒化物を製造した後、製造されたアムロジピンジアステレオマー塩またはその溶媒化物を塩基で遊離させた後、ゲンチジン酸(gentistic acid)を添加する連続的な工程を経て光学的に純粋なアムロジピンゲンチサートを高い収率及び高い光学純度で製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的に純粋なアムロジピンゲンチサートの製造方法に関し、さらに詳しくは、イソプロパノールを含む溶媒中でラセミ(R,S)−アムロジピンと光学的に純粋なO,O’−ジベンゾイル酒石酸を反応させて(R)−または(S)−型のアムロジピンジベンゾイルタートレートジアステレオマーまたはその溶媒化物を製造した後、製造されたアムロジピンジアステレオマー塩またはその溶媒化物を塩基で遊離させた後、ゲンチジン酸(gentistic acid)を添加する連続的な工程を経て光学的に純粋なアムロジピンゲンチサートを高い収率及び高い光学純度で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アムロジピン(Amlodipine)は、下記一般式(1)で表わされる化合物の一般名であって、3−エチル−5−メチル−2−(2−アミノエトキシメチル)−4−(2−クロロフェニル)−6−メチル−1,4−ジヒドロ−3,5−ピリジンジカルボキシレートの化学名を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
アムロジピン(Amlodipine)は、カルシウムチャンネルブロッカー(calcium-channel blocker)の一つであり、虚血性心疾患と高血圧の治療に用いられており、長期間にわたって活性を示す有用で効率的な物質として知られている。
【0005】
前記一般式(1)から分かるように、アムロジピンは不斉炭素(chiral center)を有するキラル化合物である。一般的に、キラル化合物に対する薬物としての治療効果は、ラセミ(racemic)混合物よりは純粋な立体異性体がより優れており、さらに、異性体化合物の立体配置状態に応じて、または、その塩の形態に応じて、互いに異なる薬物学的特性を有する。アムロジピンの場合、(S)−(−)−異性体は、強力なカルシウムチャンネルブロッカーとしての活性を示し、(R)−(+)−異性体は、アテローム性動脈硬化症の治療または予防に活性を示すと知られている。したがって、アムロジピンのようなキラル化合物を光学的に純粋な異性体に分離する技術の開発が望まれている。
【0006】
アムロジピン(Amlodipine)は、ヨーロッパ特許公開第89,167号において、新規の1,4−ジヒドロピリジンの一つとして初めて報告された。前記のヨーロッパ特許公開第89,167号では、1,4−ジヒドロピリジンの薬剤学的に許容可能な塩として酸付加塩が例示されている。薬剤学的に許容可能な酸付加塩は、薬剤学的に許容可能なアニオンを含む非毒性酸付加塩を形成する酸から形成されたものであって、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩及びグルコン酸塩が記述されており、これらのうち、リンゴ酸塩が最も好ましいと記載されている。
【0007】
薬剤学的観点から、アムロジピンは遊離塩基の形態(free base form)であることが有用であるが、安定性に劣るという短所があるため、薬剤学的に許容可能な酸との酸付加塩の形態で投与されている。
【0008】
大韓民国特許登録第90,479号には、薬剤学的に許容可能な塩の製造においては、(1)優れた溶解度;(2)優れた安定性;(3)非吸湿性;(4)錠剤剤形への加工性のような四つの物理化学的基準を満たさなければならないと記述されている。薬剤学的に許容可能な酸付加塩として前記四つの条件をすべて満たすことは非常に難しく、実際、最も好ましい薬剤学的形態として提示されているリンゴ酸塩さえ溶液中で数週間以内に分解する傾向があるので安定性に問題があることが明らかにされた。
【0009】
大韓民国特許登録第91,020号には、優れた安定性を有する酸付加塩としてベンゼンスルホネート塩(以下、「ベシレート塩(besylate)」と略称する。)が提示されている。アムロジピンベシレート塩は、公知のアムロジピンの塩に比べて多くの長所を有しており、 アムロジピンの薬剤学的剤形の製造に適した剤形の特性を有することが明らかにされた。しかし、前記アムロジピンベジレート塩は、ラセミックアムロジピン塩基と塩を形成するにおいては、既述のように、優れた物理化学的性質を示すものの、アムロジピンの単一異性体として塩を形成するときには、良好な物理化学的性質を示さないことが本発明者らの長年の研究結果から明らかにされた。
【0010】
そこで、本発明者らは、アムロジピンの単一異性体の薬剤学的許容可能な塩として理想的な酸付加塩であるゲンチサートを発見し、さらに、(R)−アムロジピンゲンチサート、あるいは(S)−アムロジピンゲンチサートを製造する経済的で効率的な製法を研究した。
【0011】
アムロジピンの異性体を分離するための商業的な方法として最近発表された技術のほとんどは、大部分D−またはL−酒石酸を用いてアムロジピンのジアステレオマー塩(diastereomeric salt)を形成した後、適切な溶媒を用いて分離する技術を利用している。アムロジピンのジアステレオマー塩を用いることは、物理的方法で分離が可能であり、塩基処理によって塩を容易に中和することができるため、必要な異性体を得る効果的な分離方法となり得る。
【0012】
その例として、米国特許第6,046,338号には、ジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下で酒石酸による塩形成を経てアムロジピンの光学異性体を分離する方法が公開されており、米国特許第6,646,131号には、デューテリウムで置換されたジメチルスルホキシド(DMSO−d6)を用いて酒石酸塩を分離する方法が公開されており、米国特許公開第0130321号には、ジメチルアセトアミドの存在下で酒石酸による塩形成を経てアムロジピンの光学異性体を分離する方法が公開されている。
【0013】
このように、上記の分離方法は、比較的高い光学純度を有するアムロジピンの異性体を分離する方法を提示しているが、ジメチルスルホキシド、デューテリウムで置換されたジメチルスルホキシドまたはジメチルアセトアミドのような、高価で回収が難しく、高い沸点によって残留可能性が多い溶媒を用いているので、処理過程及び経済性の観点から限界がある。
【0014】
一方、本発明者らは、アムロジピンゲンチサートが低い毒性と十分な安定性、そして改善された薬効を有し、投与後に長期間有効血中濃度を維持し、高血圧を含む心血管系疾患の治療剤として有効であることを確認し、アムロジピンゲンチサートとその製造方法に対して特許出願した[大韓民国特許出願第2004−100613号]。前記大韓民国特許出願第2004−100613号は、(R)−または(S)−アムロジピン異性体またはこれらのラセミ混合物をゲンチジン酸(gentisic acid)と反応させて異性体またはラセミ混合物としてアムロジピンゲンチサートを製造する方法を特徴としている。
【0015】
本発明は、光学的に純粋な(R)−または(S)−アムロジピンゲンチサートの商業規模の生産を可能にする方法を得ようとするものである。
【0016】
本発明者らは、遊離塩基形態(free base form)の(R,S)−アムロジピンから光学的に純粋な(R)−または(S)−アムロジピンゲンチサートを直接製造する方法を開発しようと鋭意研究した。
【0017】
その結果、(R,S)−アムロジピンと光学的に純粋なO,O’−ジベンゾイル酒石酸を反応させて製造されたアムロジピンジベンゾイルタートレートのジアステレオ異性体が、イソプロパノールを含有する溶媒中で大きい溶解度差を有するので、溶解度差を利用した分離方法によって効率的にそれぞれの異性体を分離することができることを確認し、また、このように光学分離された(R)−または(S)−アムロジピンジベンゾイルタートレートから一回の連続の工程で簡単に処理して(S)−または(R)−アムロジピンゲンチサートを製造する方法を開発することによって本発明を完成するに至った。
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開第89,167号
【特許文献2】大韓民国特許登録第90,479号
【特許文献3】大韓民国特許登録第91,020号
【特許文献4】米国特許第6,046,338号
【特許文献5】米国特許第6,646,131号
【特許文献6】米国特許公開第0130321号
【特許文献7】大韓民国特許出願第2004−100613号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明は、商業的な大量生産が可能な方法によって、ラセミ(R,S)−アムロジピンから光学的に純粋な(R)−または(S)−アムロジピンゲンチサートを製造する方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、以下の製造段階を含んでなる光学的に純粋な(R)−または(S)−アムロジピンゲンチサートの製造方法をその特徴とする:
a)イソプロパノール溶媒と光学的に純粋なO,O’−ジベンゾイル酒石酸を用いて、(R,S)−アムロジピンからアムロジピンジベンゾイルタートレートのジアステレオマー混合物を製造し、光学分離する段階、及び
b)前記分離したアムロジピンジベンゾイルタートレートのジアステレオマーを塩基で処理した後、その結果の遊離形態にゲンチジン酸を添加する連続の一回の工程を通じて光学的に純粋なアムロジピンゲンチサートを製造する段階。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、(R,S)−アムロジピンを光学分離するにおいて、反応溶媒として沸点が低いイソプロパノール溶媒と、光学分割剤として、ジベンゾイル−L−酒石酸またはジベンゾイル−D−酒石酸を用いることによって生成するジアステレオマーアムロジピン塩の溶解度差を利用して、それぞれの光学異性体を効率的に分離することができる。特に、反応中間体として生成するアムロジピンジベンゾイルタートレートのジアステレオマー塩を塩基で処理し、有機溶媒で抽出した後、別途の濃縮及び複雑な処理過程なしにゲンチジン酸を加えて直接光学的に純粋なアムロジピンゲンチサート塩を得る産業的に有用な製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明は、(R,S)−アムロジピンラセミ混合物から光学的に純粋な(R)−または(S)−アムロジピンゲンチサートを直接製造する方法に関するものである。
【0023】
すなわち、本発明は、(R,S)−アムロジピンラセミ混合物を出発物質として用い、この出発物質を光学的に純粋なO,O’−ジベンゾイル酒石酸と反応させて製造されるアムロジピンジベンゾイルタートレートのジアステレオマー混合物が、イソプロパノール溶媒中で異性体の溶解度差という物理的性質を利用して光学分離し、分離したキラル(Chiral)アムロジピンジベンゾイルタートレートを塩基で処理した後、ゲンチジン酸を添加して、目的の光学的に純粋な(R)−または(S)−アムロジピンゲンチサートを得る一連の製造方法に関するものである。
【0024】
本発明は、ラセミ(R,S)−アムロジピンの分離において、反応溶媒としてイソプロパノールを用いるとともに、分割剤として光学的に純粋なO,O’−ジベンゾイル酒石酸を選択使用することにその技術的特徴がある。本発明において溶媒として用いられるイソプロパノールは、アムロジピンの光学分離に通常用いられてきたジメチルスルホキシド、デューテリウムで置換されたジメチルスルホキシドまたはジメチルアセトアミドに比べて、比較的安価であるだけでなく、低い沸点のため、反応後に残留のおそれがなく、回収と精製が有利であるので、後処理工程を簡素化するという効果を得ることができる。また、本発明において、分割剤として選択使用される光学的に純粋なO,O’−ジベンゾイル酒石酸は、酒石酸に二つのベンゾイル基が置換された構造を有するキラル化合物であって、アムロジピンの光学分離に通常適用されてきた光学的に純粋な酒石酸と比較すると、O,O’−ジベンゾイル酒石酸のジアステレオマー塩のイソプロパノール溶媒に対する溶解度が遥かに増加するので、ジメチルスルホキシドのような高価の溶媒を用いることなく、二つのジアステレオマー塩の溶解度差を利用して容易に分離することができる。
【0025】
以下、本発明による光学的に純粋なアムロジピンゲンチサートの製造方法について、光学分割剤の選択を中心にさらに具体的に説明する。
【0026】
下記反応式1は、分割剤としてO,O’−ジベンゾイル−L−酒石酸を選択使用して(R)−(+)−アムロジピンゲンチサート塩を製造する一連の過程を示す。
【0027】
反応式1
【化2】

【0028】
前記反応式1による製造方法によれば、
【0029】
a)イソプロパノールを含む溶媒中でラセミ(R,S)−アムロジピンをO,O’−ジベンゾイル−L−酒石酸と反応させて(R)−(+)−アムロジピン−ヘミ−ジベンゾイル−L−タートレートまたはその溶媒化物を製造し、光学分離する過程、及び
b)前記分離したキラルアムロジピンジベンゾイルタートレートまたはその溶媒化物を塩基で処理した後、ゲンチジン酸を添加する連続の一回の工程を通じて(R)−(+)−アムロジピンゲンチサートを製造する過程を含んでなる。
【0030】
下記反応式2は、分割剤としてO,O’−ジベンゾイル−D−酒石酸を選択使用して(S)−(−)−アムロジピンゲンチサートを製造する一連の過程を示す。
【0031】
反応式2
【化3】

【0032】
前記反応式2による製造方法は、
【0033】
a)イソプロパノール溶媒中でラセミ(R,S)−アムロジピンをO,O’−ジベンゾイル−D−酒石酸と反応させて(S)−(−)−アムロジピン−ヘミ−ジベンゾイル−D−タートレートまたはその溶媒化物を製造し、光学分離する過程、及び
b)前記分離したキラルアムロジピンジベンゾイルタートレートまたはその溶媒化物を塩基で処理した後、ゲンチジン酸を添加する連続の一回の工程を通じて(S)−(−)−アムロジピンゲンチサートを製造する過程を含んでなる。
【0034】
一方、前記反応式1または2による製造方法において、キラルアムロジピンジベンゾイルタートレートまたはその溶媒化物を分離回収して残ったろ液中には、 その異性体に該当するキラルアムロジピンが存在する。
【0035】
本発明による製造方法において、光学分割剤として選択使用するO,O’−ジベンゾイル−L−酒石酸またはO,O’−ジベンゾイル−D−酒石酸は、(R,S)−アムロジピン1モル当たり、0.2〜0.6の範囲のモル比で用いられるが、それぞれの光学活性剤の使用量が前記使用範囲を外れる場合、結果として得られたキラル塩の収率と光学純度を最大化することが難しい。
【0036】
本発明において、反応溶媒として選択使用されるイソプロパノール溶媒は、イソプロパノール単独溶媒として、または、イソプロパノールを主溶媒とし、これに適当な助溶媒を混合した混合溶媒として用いてもよい。イソプロパノールに混合使用される助溶媒としては、水、ケトン類、アルコール類、エーテル類、アミド類、エステル類、炭化水素類、クロロ炭化水素類及びニトリル類から選ばれる。好ましいケトン類としては、アセトン及びメチルエチルケトン(MEK)が含まれる。好ましいアルコール類としては、イソプロパノールのようなC1−C7飽和アルコールが含まれる。好ましいエーテル類としては、ジエチルエテル及びテトラヒドロフラン(THF)が含まれる。好ましいアミド類としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN,N’−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)が含まれる。好ましいエステル類としては、エチルアセテート(EtOAc)のようなアセテート類が含まれる。好ましい炭化水素類としては、トルエンのようなC5−C10炭化水素が含まれる。好ましいクロロ炭化水素類としては、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン及び1,1,1−トリクロロエタンが含まれる。好ましいニトリル類としては、アセトニトリルのようなC2−C7ニトリルが含まれる。
【0037】
本発明で用いられる助溶媒をより具体的に例示すれば、水、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、トルエン、メタノール、エタノール、t−ブタノール及びN,N’−ジメチルプロピレンウレアから選ばれる。また、イソプロパノール主溶媒に混合使用される助溶媒の最大使用量は、用いられる特定の助溶媒によって異なり、当業者は各場合において沈殿物を得るための適切な量を容易に決定することができるが、好ましくは、助溶媒が100体積%のイソプロパノール主溶媒に対して50体積%未満の範囲内で混合使用する。助溶媒が100体積%のイソプロパノールに対して50体積%を超えて比較的過量用いられると、アムロジピン塩ジアステレオ異性体間の溶解度差が大きくないため、光学純度が著しく低下するという問題がある。
【0038】
本発明による製造過程において、アムロジピンジベンゾイルタートレートまたはその溶媒化物が沈殿物として生成する。
【0039】
反応溶液からキラルアムロジピン塩を分離して得る方法は、当業者によく知られた方法、例えば、濾過、遠心分離またはデカンテーションなどの方法を適用してもよい。これらのうち、濾過または遠心分離方法が好ましく、濾過がさらに好ましい。当業者によく知られているように、一つの光学異性体の分離に適用可能な分離方法はそれ以外の光学異性体の分離にも同様に適用してもよい。
【0040】
以上の方法で分離回収されたジアステレオマーアムロジピン塩またはその溶媒化物は塩基で処理した後、ゲンチジン酸を添加して所望のアムロジピン光学異性体のゲンチサート塩を製造する。
【0041】
塩基は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩及びアミドから選ばれ、好ましくは、アルカリ金属水酸化物または酸化物を用い、 特に好ましくは、水酸化ナトリウムを用いる。
【0042】
前記した塩基処理によってジアステレオマーアムロジピン塩は遊離塩基(free base)の形態に転換され、遊離塩基(free base)形態のアムロジピンが含まれた反応溶液は、有機溶媒を用いて抽出及び濃縮した後、ヘキサンなどを加えて結晶化した後、ゲンチジン酸を添加して、アムロジピン光学異性体のゲンチサート塩を製造することができる。
【0043】
また、本発明は、製法上のまた他の特徴として、アムロジピン異性体が含まれた反応溶液を有機溶媒で抽出した後、有機溶媒を濃縮せずにゲンチジン酸を加えて所望のアムロジピン異性体のゲンチサート塩を結晶化して得る方法を特徴とする。つまり有機溶媒中の(R)−または(S)−アムロジピンゲンチサート塩の有機溶媒への溶解度差を利用して塩を形成した後、結晶化して析出させるものであって、これによって、最終生成物の光学純度を増強させる。アムロジピン異性体塩基を得るために、途中で濃縮し、ヘキサンなどの溶媒で処理する過程を経ないので、商業的な大量生産に非常に有用である。アムロジピン異性体塩基を中間体として得た後、ゲンチジン酸と反応させるためには、抽出溶液を最大限濃縮し、ヘキサンを加えて結晶化させた後、加熱及び減圧乾燥しなければならず、このようにして得たアムロジピン異性体塩基をさらに溶媒に溶かし、ゲンチジン酸を加え、濾過する工程 を行わなければならない。このように二段階の工程を経る場合、製造工程に要する溶媒と時間、手間は増加するが、収率は減少する。商業的な大量工程のためには、本発明のように工程を簡素化して一段階の工程で行うことが好ましい。
【0044】
この際、抽出に用いられる有機溶媒としては、アムロジピンゲンチサートの溶解度が低いことが好ましい。種々の溶媒を用いることができるが、好ましくはジクロロメタンを用いる。
【0045】
また、ゲンチジン酸は固体状態で直接加えてもよく、溶媒に溶かして加えてもよい。ゲンチジン酸は、アムロジピンに対して0.1〜5.0当量用いることが経済性の観点から好ましい。
【0046】
以上で説明した本発明による光学分離方法によれば、98〜100%e.e.の高い光学純度を有する光学活性アムロジピン塩を効率的に得ることができる。
【0047】
(実施例)
以下、本発明を下記実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、本発明の範囲内で、当業者が本発明を多様に変形及び改良させ得ると理解されなければならない。
【0048】
また、本発明による実施例で製造された化合物の光学純度は、キラルHPLCで測定し、分離に用いられるHPLC条件は以下の通りである:
−カラム:ウルトロン(Ultron)ES−OVM(Ovomucoid社製)、150mm×4.6I.D、5μm
−流速:1ml/分
−検出波長:237.4nm
−溶出剤:第二リン酸ナトリウム緩衝剤(20mM、pH7)/アセトニトリル(80/20、v/v)
−サンプル:アセトニトリルに0.1mg/mlで溶解、10ulまたは5ul投入
実施例1.(R,S)−アムロジピンから(S)−(−)−アムロジピンゲンチサートの製造
1)(S)−(−)−アムロジピン−ヘミ−ジベンゾイル−D−タートレートの製造
(R,S)−アムロジピン163.6gをアセトニトリル/イソプロパノール(1/9)の混合溶液3Lに溶かした後、55℃に加熱しながら攪拌した。アセトニトリル/イソプロパノール(1/9、v/v)の混合溶液1Lに溶かしたジベンゾイル−D−酒石酸35.8g(0.25モル当量)を加え、10分間さらに攪拌した。予め準備した(S)−(−)−アムロジピン−ヘミ−ジベンゾイル−D−タートレート(>99.5%d.e.)0.2gを加え、室温で3時間攪拌した。得られた固状物を濾過し、収集し、アセトニトリル/イソプロパノール(1/9、v/v)の混合溶液500mlで洗浄した後、50℃、真空中で一晩中乾燥して(S)−(−)−アムロジピン−ヘミ−ジベンゾイル−D−タートレート98.2g(理論的収率:83.5%)を得た。
【0049】
融点:116−118℃;C202525Cl・0.5[C18148]に対する元素分析の実測値:C59.10%、H5.51%、N4.63%;理論値:C59.23%、H5.49%、N4.76%;キラルHPLC:99.0%d.e.
2)(S)−(−)−アムロジピンゲンチサートの製造
前記実施例1の1)で得た(S)−(−)−アムロジピン−ヘミ−ジベンゾイル−D−タートレート5.88gをCH2Cl2 56ml及び2N NaOH(水溶液)56mlの混合溶液中で30分間攪拌した。次いで、有機溶液を分離し、水で1回洗浄した。有機層を濾紙に一回通した後、アセトン5mlに溶かしたゲンチジン酸1.54gを加え、室温で2時間攪拌した。得られた固状物を濾過し、収集し、50℃、真空中で一晩中乾燥して(S)−(−)−アムロジピンゲンチサート5.18g(92%)を得た。
【0050】
融点:162〜165℃;C63129Clに対する元素分析の実測値:C57.40%、H5.60%、N4.80%;理論値:C57.60%、H5.55%、N4.98%;キラルHPLC:99.5%e.e.
実施例2.(R,S)−アムロジピンから(R)−(+)−アムロジピンゲンチサートの製造
1)(R)−(+)−アムロジピン−ヘミ−ジベンゾイル−L−タートレートの製造
(R,S)−アムロジピン163.6gをアセトニトリル/イソプロパノール(1/9、v/v)の混合溶液3Lに溶かした後、55℃に加熱しながら攪拌した。アセトニトリル/イソプロパノール(1/9、v/v)の混合溶液1Lに溶かしたジベンゾイル−L−酒石酸35.8g(0.25モル当量)を加え、10分間さらに攪拌した。予め準備した(R)−(+)−アムロジピン−ヘミ−ジベンゾイル−L−タートレート(>99.5%d.e.)0.2gを加え、室温で3時間攪拌した。得られた固状物を濾過し、収集し、アセトニトリル/イソプロパノール(1/9、v/v)の混合溶液500mlで洗浄した後、50℃、真空中で一晩中乾燥して(R)−(+)−アムロジピン−ヘミ−ジベンゾイル−L−タートレート97.0g(理論的収率:82%)を得た。
【0051】
融点:115〜117℃;C202525Cl・0.5[C18148]に対する元素分析の実測値:C59.15%、H5.63%、N4.66%;理論値:C59.23%、H5.49%、N4.76%;キラルHPLC:98.4%d.e.
2)(R)−(+)−アムロジピンゲンチサートの製造
前記実施例2の1)で得た(R)−(+)−アムロジピン−ヘミ−ジベンゾイル−L−タートレート5.88gをCH2Cl2 56ml及び2N NaOH(水溶液)56mlの混合溶液中で30分間攪拌した。次いで、有機溶液を分離し、水で1回洗浄した。有機層を濾紙に一回通した後、アセトン5mlに溶かしたゲンチジン酸1.54gを加え、室温で2時間攪拌した。得られた固状物を濾過し、収集し、50℃、真空中で一晩中乾燥して(R)−(+)−アムロジピンゲンチサート4.95g(88%)を得た。
【0052】
融点:p161〜164℃;C63129Clに対する元素分析の実測値:C57.44%、H5.62%、N4.83%;理論値:C57.60%、H5.55%、N4.98%;キラルHPLC:99.0%e.e.


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)イソプロパノール溶媒と光学的に純粋なO,O’−ジベンゾイル酒石酸を用いて、ラセミ(R,S)−アムロジピンからアムロジピンジベンゾイルタートレートのジアステレオマー混合物を製造し、光学分離する段階、及び
b)前記分離したアムロジピンジベンゾイルタートレートのジアステレオマーを塩基で処理した後、その結果の遊離形態にゲンチジン酸を添加する連続の一回の工程を通じて光学的に純粋なアムロジピンゲンチサートを製造する段階
を含んでなることを特徴とする、(R,S)−アムロジピンから光学的に純粋な(R)−または(S)−アムロジピンゲンチサートの製造方法。
【請求項2】
a)イソプロパノール溶媒とO,O’−ジベンゾイル−L−酒石酸を用いて、ラセミ(R,S)−アムロジピンから(R)−(+)−アムロジピン−ヘミ−ジベンゾイル−L−タートレートまたはその溶媒化物を製造し、
b)前記分離したアムロジピンジベンゾイルタートレートのジアステレオマーまたはその溶媒化物を塩基で処理した後、その結果の遊離形態にゲンチジン酸を添加する連続の一回の工程を通じて(R)−(+)−アムロジピンゲンチサートを製造する段階
を含んでなることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
a)イソプロパノール溶媒とO,O’−ジベンゾイル−D−酒石酸を用いて(R,S)−アムロジピンから(S)−(−)−アムロジピン−ヘミ−ジベンゾイル−D−タートレートまたはその溶媒化物を製造し、
b)前記分離したアムロジピンジベンゾイルタートレートのジアステレオマーまたはその溶媒化物を塩基で処理した後、その結果の遊離形態にゲンチジン酸を添加する連続の一回の工程を通じて(S)−(−)−アムロジピンゲンチサートを製造する段階
を含んでなることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
前記ラセミ(R,S)−アムロジピン1モル当たり、キラルO,O’−ジベンゾイル酒石酸が0.2〜0.6の範囲のモル比で用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記イソプロパノール溶媒が、イソプロパノール単独溶媒であるか、または、水、ケトン類、アルコール類、エーテル類、アミド類、エステル類、炭化水素類、クロロ炭化水素類及びニトリル類から選ばれた助溶媒とイソプロパノールとの混合溶媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記助溶媒が、水、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、トルエン、メタノール、エタノール、t−ブタノール及びN,N’−ジメチルプロピレンウレアから選ばれたものであることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記塩基が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩及びアミドから選ばれたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記塩基で処理してから有機溶媒で抽出した後、ゲンチジン酸を添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ゲンチジン酸が、有機溶媒で抽出して得られた抽出液に直接添加される、または抽出後に有機溶媒を濃縮させて得られた濃縮液に添加されることを特徴とする請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
前記抽出に用いられる有機溶媒がジクロロメタンであることを特徴とする請求項8記載の製造方法。


【公表番号】特表2009−511625(P2009−511625A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536486(P2008−536486)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004206
【国際公開番号】WO2007/046616
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(500116041)エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド (49)
【Fターム(参考)】