説明

キースイッチモジュール

【課題】 キースイッチの基本構成要素である固定接点電極や可動接点電極の一部、又は前記キースイッチが載置される基板の一部を吸音部材で形成することによって、クリック操作に伴う金属性の撓み音や可動接点電極と固定接点電極との接触音を低減させるとともに、全体の薄型化を図ることが可能なキースイッチモジュールを提供することである。
【解決手段】 基板12と、この基板12上に形成される固定接点14及びこの固定接点14を覆うドームバネ15からなるキースイッチとを備えたキースイッチモジュール11において、前記固定接点14上を覆うようにして異方性導電ゴムによる吸音部材17を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の小型の電子機器に搭載されるキースイッチモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の一般的なキースイッチモジュール1の断面構造の一部を示したものである。このキースイッチモジュール1は、基板2と、この基板2上に形成される電極パターン(回路電極3、固定接点電極4)と、固定接点電極4の上方に配置される可動接点電極5と、この可動接点電極5を被覆するシート材6とを備えて構成されている。前記可動接点電極5は、可撓性を有する薄い金属板でドーム状に形成され、頂上部を指などで押圧することによって、固定接点電極4との導通が図られる。
【0003】
前記可動接点電極5は、押圧を維持している間は固定接点電極4と導通し、押圧を解除することによって導通が遮断される。このような押圧操作によって、可動接点電極5と固定接点電極4との接触音や、押圧を解除する際に生じる可動接点電極5自体の跳ね返り音などが発生する。
【0004】
このような押圧操作時に発する音を低減させるために、固定接点電極4と可動接点電極5との間に緩衝部材を配置した構造のキースイッチモジュール(ドームスイッチ)が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−31113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示のドームスイッチは、ドーム状の可動接点電極を固定接点電極に接触させる際に凹ませたり、固定接点電極との接触を解除して元の状態に戻したりする際に発生する可動接点電極自体の撓み変形音を低減させることを主目的としている。これを実現するために、可動接点電極の外周部に吸振部材を配置している。
【0007】
前記吸振部材は、主に可動接点電極の撓み変形の基端部にあり、また、基板との支持部分である外周部近辺に限定して設けられているため、可動接点電極から発せられる金属性の撓み音を低減させる効果が十分得られない。また、上記構造では可動接点電極が固定接点電極に接触する際に生じる音に対しては効果がない。
【0008】
また、前記吸振部材がスイッチの基本構成要素である基板や固定接点電極及び可動接点電極とは別体で構成されているため、製造及び製品コストが高くなるといった問題があった。さらに、基板や可動接点電極の一部に重なるようにして前記吸振部材が配置されるため、キースイッチモジュール全体の厚みが増し、薄型化が制限されていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、キースイッチの基本構成要素である固定接点電極や可動接点電極の一部、又は前記キースイッチが載置される基板の一部を吸音部材で形成することによって、クリック操作に伴う金属性の撓み音や可動接点電極と固定接点電極との接触音を低減させるとともに、全体の薄型化を図ることが可能なキースイッチモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のキースイッチモジュールは、基板と、この基板上に形成される固定接点電極及びこの固定接点電極を覆うドーム状の可動接点電極からなるキースイッチとを備えたキースイッチモジュールにおいて、前記固定接点電極の少なくとも上面が導電性の吸音部材によって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のキースイッチモジュールによれば、ドーム状の可動接点電極と接触する固定接点電極の上面が導電性の吸音部材で構成されているため、押圧時における導通を確保しつつ、接触時における金属性の接触音や振動音を吸収することができる。これによって、静音性に優れたキースイッチモジュールを提供することが可能となった。
【0012】
また、前記吸音部材は、固定接点電極の一部として設けられ、あるいは、固定接点電極自体が吸音部材で構成することもできる。このため、キースイッチモジュール全体の厚みが増すことがないので、静音性を備えるとともに薄型化が同時に図られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る第1実施形態のキースイッチモジュールの部分断面図である。
【図2】同心円状の導電部を有した異方性導電ゴムを用いて構成されるキースイッチモジュールの分解斜視図である。
【図3】ドット状の導電部を有した異方性導電ゴムを用いて構成されるキースイッチモジュールの分解斜視図である。
【図4】固定接点と回路電極に分けて導電ゴムを配置したキースイッチモジュールの部分断面図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態のキースイッチモジュールの部分断面図である。
【図6】本発明に係る第3実施形態のキースイッチモジュールの部分断面図である。
【図7】従来のキースイッチモジュールの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて本発明に係るキースイッチモジュールの実施形態を詳細に説明する。図1乃至図3は、本発明の第1実施形態のキースイッチモジュール11を示したものである。このキースイッチモジュール11は、基板12と、この基板12上の所定位置に設けられる固定接点電極(固定接点)14及びこの固定接点14を覆う可動接点電極(ドームバネ)15からなるキースイッチ部とを基本構成要素としている。
【0015】
前記基板12は、薄く成形されたエポキシ樹脂板やフレキシブル(FPC)板が用いられ、表面に前記固定接点14と、この固定接点14の周囲にスイッチ回路となる回路電極13がパターン形成されている。
【0016】
本実施形態では、前記基板12の上面に平面形成されている固定接点14及び回路電極13上に導電性の吸音部材17を配置し、この吸音部材17を挟んでドームバネ15が配置される。また、前記ドームバネ15を固定するためのシート材16が該ドームバネ15に沿って被覆される。このシート材16は、裏面全体に透明な粘着剤を一様に塗布し、前記ドームバネ15を粘着保持させ、これを前記固定接点14が形成されている基板12の上面に位置合わせした後、密着させるようにして被覆する。なお、このシート材16は、裏面に直接可動接点14を粘着させ、これを加熱及び加圧等の手段によって、ドームバネ15の外形形状に沿って密着成形させることも可能である。
【0017】
前記吸音部材17には、異方性導電ゴムが用いられる。この異方性導電ゴムは、絶縁性のベース部18と、このベース部18に分布形成される導電部19とで構成されている。前記導電部19は、図2に示すように、固定接点14を中心とした同心円状のパターン、あるいは、図3に示すように、ドット状のパターンに形成される。このようなパターンによる導電部19は、ベース部18内の厚み方向に形成され、上面と下面に一端が電極として露出する。
【0018】
上記構造による吸音部材17は、厚み20〜100μm程度のシート状に成形され、裏面側に設けた粘着層によって、固定接点14及び回路電極13に密着される。なお、前記導電部19は、同心円やドットに限らず、破線やストライプなどのように連続性のないパターンであればよい。また、ベース部18は、ゴム材の他にクッション性を有するウレタン樹脂などを用いて形成することができる。
【0019】
ドームバネ15は、その中心が固定接点14と対向するように位置決めされ、回路電極13上に外周部を載置して固定される。このドームバネ15は、適度なクリック感を得るために薄い金属材によるドーム型に形成されている。また、照明用の光源を備えたキースイッチモジュールであれば、前記ドームバネ15の上面を鏡面加工することによって、光散乱作用による照明効率の向上効果を得ることができる。
【0020】
上記構造によるキースイッチモジュール11は、指などによってドームバネ15の頂上部Pを押圧することによって、下方に撓み変形し、吸音部材17の上面に接触する。この接触によって、ドームバネ15と固定接点14とが吸音部材17中の導電部19を介して導通が図られる。このように、吸音部材17がクッションとなって導通が図られるので、導通時における接触音を大幅に低減させることができるとともに、軽いタッチのクリック感が得られる。
【0021】
また、前記吸音部材17が厚みの均一な薄いシート状に形成され、固定接点14及び回路電極13が形成された基板12の上面にそのまま載置するだけであるので、製造が容易でキースイッチモジュール11全体の薄型化が制限されることもない。さらに、ドームバネ15のストローク幅も狭くなることがないので、クリック感を損なうことのない。
【0022】
上記実施形態では、吸音部材17として異方性導電ゴムを使用したが、全体が導電性を有する導電ゴムを用いることができる。このような導電ゴムを用いる場合は、固定接点14と回路電極13とが導通しないようにする必要がある。このため、図4に示すように、固定接点14の上面と、ドームバネ15の外周部が載置される回路電極13の上面とに分離して導電ゴム20a,20bを配置する。このように、固定接点14や回路電極13の一部に導電ゴム20a,20bを配置した場合であっても、導電ゴム20a,20bのクッション性によって、クリック時の操作音を低減させることができる。
【0023】
図5は、第2実施形態のキースイッチモジュール21の断面構造を示したものである。この実施形態のキースイッチモジュール21は、基板22の裏面側に吸音部材27を配設したものである。この吸音部材27は、シリコン、ウレタン、アクリル等の弾性を有した樹脂材、絶縁性の弾性ゴム、発泡材などが使用される。このような吸音部材27の表面に固定接点24及び回路電極23が形成されたFPC等の薄い基板22を載置し、固定接点24の上にドームバネ25が配置される。また、前記ドームバネ25は、シート材26によって基板22に固定される。
【0024】
上記構造によるキースイッチモジュール21は、指などによってドームバネ25の頂上部Pを押圧することによって、下方に撓み変形し、固定接点24に接触することで導通が図られる。このような接触時における押圧力が薄い基板22を介して吸音部材27に吸収されるため、クリック時における金属性の接触音を低減させることができる。本実施形態では、基板22に薄いFPCを使用しているため、吸音部材27を含むベース部全体の厚みを制限することができ、キースイッチモジュール21全体の厚みを一定範囲内に抑えることが可能である。
【0025】
また、前記吸音部材27を基板材として用い、この吸音部材27の上面に直接固定接点24及び回路電極23を形成することも可能である。このように、基板材全体が吸音部材27で構成されているため、ドームバネ25が固定接点24に接触したときに生ずる接触音が直接吸収されるため、図5に示した実施形態よりも接触音を低減化させることができる。また、吸音部材27が基板の一部を構成しているため、構成要素が少なくて済み、キースイッチモジュール全体の薄型化が図られる。
【0026】
図6は、第3実施形態のキースイッチモジュール31の断面構造を示したものである。この実施形態のキースイッチモジュール31は、ドームバネ35を基板32上に固定させるためのシート材を吸音部材37として形成している。この吸音部材37は、シリコン、ウレタン、アクリル等の弾性を有した樹脂材、絶縁性の弾性ゴム、発泡材などを薄くシート状に伸ばして成形したものが用いられる。このようにしてシート状に成形した吸音部材37の裏面に粘着層が設けられ、この粘着層をドームバネ35に沿うようにして被せることでドームバネ35の外周部を基板32上に形成されている回路電極33上に固定することができる。
【0027】
上記構造によるキースイッチモジュール31では、主にドームバネ35を押圧する際に生じる金属性の撓み変形音を吸収することができるとともに、押圧を解除してドームバネ35が元の形状に戻る際に生じる音も吸収させることができる。このため、クリック操作が頻繁に発生するような用途に適している。また、ドームバネ35と固定接点34との接触時に生じる音も低減させることが可能である。さらに、吸音部材37がドームバネ35を固定する固定シートの役割を有しているため、キースイッチモジュール31全体の厚みが増すこともなく、製造も容易である。
【0028】
上記第1乃至第3実施形態のキースイッチモジュール11,21,31は、それぞれクリック時に生じる操作音を低減させる効果があるが、それぞれの実施形態における吸音部材を2つ以上組み合わせることで、操作音をさらに低減させることが可能である。第1の組み合わせ例としては、固定接点とドームバネとの間に導電性の第1の吸音部材を配置し、ドームバネの上にシート状の第2の吸音部材を配置した構造のキースイッチモジュールがある。また、第2の組み合わせ例としては、基板の一部あるいは全部を第1の吸音部材で構成し、ドームバネの上にシート状の第2の吸音部材を配置した構造のキースイッチモジュールがある。
【0029】
このような吸音部材の組み合わせによって、固定接点と接触する際の接触音と、ドームバネの撓み変形音の両方を同時に低減させることができるので、さらなる静音性を備えたキースイッチモジュールを得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 キースイッチモジュール
2 基板
3 回路電極
4 固定接点電極
5 可動接点電極
6 シート材
11 キースイッチモジュール
12 基板
13 回路電極
14 固定接点(固定接点電極)
15 ドームバネ(可動接点電極)
16 シート材
17 吸音部材
18 ベース部
19 導電部
20a,20b 導電ゴム
21 キースイッチモジュール
22 基板
23 回路電極
24 固定接点(固定接点電極)
25 ドームバネ(可動接点電極)
26 シート材
27 吸音部材
31 キースイッチモジュール
32 基板
33 回路電極
34 固定接点(固定接点電極)
35 ドームバネ(可動接点電極)
37 吸音部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板上に形成される固定接点電極及びこの固定接点電極を覆うドーム状の可動接点電極からなるキースイッチとを備えたキースイッチモジュールにおいて、
前記固定接点電極の少なくとも上面が導電性の吸音部材によって形成されていることを特徴とするキースイッチモジュール。
【請求項2】
前記吸音部材は、固定接点電極上を覆うようにして配置される異方性導電ゴムによって形成される請求項1記載のキースイッチモジュール。
【請求項3】
前記異方性導電ゴムは、絶縁性の樹脂内に同心円状あるいはドット状の電極部が形成されている請求項2記載のキースイッチモジュール。
【請求項4】
前記基板上には、前記固定接点電極と、この固定接点電極の周囲にスイッチ回路電極が設けられ、前記固定接点電極及びスイッチ回路電極の上面が導電性の吸音部材によって形成されている請求項1記載のキースイッチモジュール。
【請求項5】
前記固定接点電極及びスイッチ回路電極が導電性の吸音部材によって形成されている請求項4記載のキースイッチモジュール。
【請求項6】
基板と、この基板上に形成される固定接点電極及びこの固定接点電極を覆うドーム状の可動接点電極からなるキースイッチとを備えたキースイッチモジュールにおいて、
前記基板の少なくとも一部が吸音部材によって形成されていることを特徴とするキースイッチモジュール。
【請求項7】
基板と、この基板上に形成される固定接点電極及びこの固定接点電極を覆うドーム状の可動接点電極からなるキースイッチとを備えたキースイッチモジュールにおいて、
前記可動接点電極が吸音部材で形成されたシート材によって被覆されていることを特徴とするキースイッチモジュール。
【請求項8】
前記吸音部材は、弾性ゴム部材又は発泡部材によって形成されている請求項6又は7記載のキースイッチモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−40320(P2011−40320A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188344(P2009−188344)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】