説明

キーボタン及びそれを備える携帯電子機器並びに携帯電子機器の密封性の検査方法

【課題】簡易な構造のキーボタンを有する携帯電子機器の密封性の検査において、キーボタンが有するゴム部の穴を発見することができない。
【解決手段】 キーボタンは、スリットを備える押し子を有するトップ部と、押し子の下面の全面とスリットの少なくとも一部とを覆い、押し子を保持するゴム部と、を有し、スリットの少なくとも一部はゴム部から露出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキーボタン及びそれを備える携帯電子機器並びに携帯電子機器の密封性の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器が備えるキーボタンの構成の一例として、押下するための押し子を供えるトップ部と、ゴム部とが組み立てられたものがある。図9に、押し子301を備えるトップ部300の例を示す。このようなキーボタンにおいては、ゴム部は押し子301の下面の全面を覆う。そのため、ユーザがキーボタンのトップ部300に加えた力が、効率良くゴム部に伝えられる。
【0003】
このキーボタンを備えた携帯電子機器の製造工程においては、携帯電子機器の密封性の検査が行われる。例えば、エアリーク試験と呼ばれる試験を実施して、機器の内部へ空気を送り込むことができるか否かを検査する。
【0004】
しかしながら、エアリーク試験は機器の内部へ空気を送り込むことができるか否かを検査するものであり、個々の部品の状態について調べる検査ではない。そのため、個々の部品に破損等があったとしても、機器全体としての密封性が保たれていれば、その携帯電子機器はエアリーク試験をパスしてしまう。例えば、押し子とゴム部とが密着する構成であれば、キーボタンのゴム部に穴が開いていたとしても機器全体としての密封性を保つことができるため、その携帯電子機器はエアリーク試験をパスする。しかしながら、このような携帯電子機器は、ユーザがキーボタンを繰り返し使用することにより、または、ゴム部の劣化が起こることにより、ゴム部の穴が拡大し、密封性が損なわれる恐れがある。そして、密封性が損なわれた場合、携帯電子機器の防水性が低くなる。そのため、ゴム部に穴が開いている携帯電子機器がエアリーク試験をパスしてしまうのは望ましくない。
【0005】
特許文献1には、配管における流体の漏れ検査をおこなう場合に、エアー抜き作業を容易に行える流体漏れ検査プラグが開示されている。この検査プラグ460を図10に示す。
【0006】
検査プラグ460は、配管469端末に装着可能なプラグ本体465と、プラグ本体465の中心軸と同軸に位置決めされプラグ本体465に対して軸方向に移動可能なプッシュピン461であってプラグ本体465に内接しながら軸方向に移動可能でかつエアー抜き通路466が設けられているプッシュピン押部463をその後端部に有するプッシュピン461と、プッシュピン461の先端部外周に装着されていてプラグ本体465内面との間で液密に接触可能で配管469側からの流体の漏れを防止するパッキン462と、プラグ本体465内に収納されていてプッシュピン461を配管469の開口側に付勢しているバネ状体472とを有する。
【0007】
水が入った配管469の端末にこの検査プラグ460を装着し、プッシュピン押部463を押すと、それまで、バネ状体472によりプラグ本体465内面に対して液密に押し付けられていたパッキン462がプラグ本体465内面から離れ、配管469の内部と外気との間に空気や水が流れる通路又は隙間(案内孔471)が形成される(図11)。配管469内の空気や水は、この通路又は隙間をとおり、かつプッシュピン押部463に設けられたエアー抜き通路466をとおって検査プラグ460の外部へ漏れ出る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−163278号公報(段落「0026」〜「0028」、段落「0033」〜「0035」、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、携帯電子機器の密封性の検査でゴム部の穴を発見するために、特許文献1に開示された技術をキーボタンの構成に適用することについて検討する。検査プラグとキーボタンとは、外部からの力が加えられるプッシュピンを検査プラグが備え、外部からの力により押下される押し子をキーボタンが備えるため、外部からの力が加えられるプッシュピン又は押し子を備えるという点で共通している。しかしながら、検査プラグは、押し子の下面の全面を覆うゴム部に相当する部品を備えていない。さらに、検査プラグが、配管における流体の漏れ検査をおこなう前に配管から空気や水を抜くためのものであるのに対し、キーボタンが電子機器へ入力を行うためのインタフェースであるという点で、これらの用途は全く異なる。以上のことから、単純に、特許文献1に開示された技術を携帯電子機器のキーボタンの構成に適用することはできない。
【0010】
また、上述した特許文献1に記載された検査プラグには、検査プラグを構成する部品の数が非常に多いという問題がある。上述したとおり、検査プラグは、プラグ本体、プッシュピン、パッキン、エアー抜き通路やバネ状体など、その機能を発揮するために多くの部品を備えている。そのため、装置の複雑化を招き、結果、装置自体のサイズが大きくなるという問題がある。携帯電子機器において、装置自体のサイズが大きくなることは望ましくないため、簡易な構造が望まれる。
【0011】
本発明の目的は、上述した課題である、簡易な構造のキーボタンを有する携帯電子機器の密封性の検査において、キーボタンが有するゴム部の穴を発見することができない、という課題を解決するキーボタン及びそれを備える携帯電子機器、並びに、それらの製造方法、並びに、携帯電子機器の密封性の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のキーボタンは、スリットを備える押し子を有するトップ部と、押し子の下面の全面とスリットの少なくとも一部とを覆い、押し子を保持するゴム部と、を有し、スリットの少なくとも一部はゴム部から露出する。
【0013】
本発明の携帯電子機器は、スリットを備える押し子を有するトップ部と、押し子の下面の全面とスリットの少なくとも一部とを覆い、押し子を保持するゴム部と、を有し、スリットの少なくとも一部はゴム部から露出するキーボタンと、キーボタンが配置された筐体とを有する。
【0014】
本発明の携帯電子機器の密封性の検査方法は、スリットを備える押し子を有するトップ部と、押し子の下面の全面とスリットの少なくとも一部とを覆い、押し子を保持するゴム部と、を有し、スリットの少なくとも一部はゴム部から露出するキーボタンと、キーボタンが配置された筐体とを有する携帯電子機器に、スリットから空気を挿入して、筐体内部に空気が入り込むか否かを調べる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のキーボタンによれば、簡易な構造のキーボタンを有する携帯電子機器の密封性の検査において、キーボタンが有するゴム部の穴を発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るキーボタンが有するトップ部の(a)斜視図と(b)底面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るキーボタンが有するゴム部の(a)平面図、(b)正面図、(c)背面図、(d)左側面図、(e)右側面図、と(f)底面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るキーボタンの断面構造を模式的に示した図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るキーボタンの断面構造を模式的に示した図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るキーボタンの製造方法を模式的に示した図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る携帯電子機器の斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る携帯電子機器が備えるキーボタンの分解斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る携帯電子機器が備えるキーボタンとその周辺部の断面図である。
【図9】本発明に関連するトップ部の(a)斜視図、(b)底面図である。
【図10】特許文献1に記載された検査プラグの断面図である。
【図11】特許文献1に記載された検査プラグであって、エアー抜きをしている状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るキーボタン120について、図1から図4を用いて説明する。キーボタン120は、トップ部100とゴム部110とを有する。図1(a)は、キーボタン120が有するトップ部100の斜視図、図1(b)はトップ部100の底面図である。トップ部100は、押し子101を有する。押し子101には、スリット102が配置される。スリット102は、キーボタン120が押されて押し子101が動く方向に長いスリットである。
【0019】
図2は、ゴム部110の六面図であり、具体的には、図2(a)が平面図、図2(b)が正面図、図2(c)が背面図、図2(d)が左側面図、図2(e)が右側面図、図2(f)が底面図である。
【0020】
ゴム部110は、図3に示すように、トップ部100の押し子101の先端部170の下面150の全面を覆い、押し子101を保持する。このとき、スリット102の少なくとも一部はゴム部100に覆われ、スリット102の少なくとも一部はゴム部110から露出する。
【0021】
本実施形態のキーボタン120によれば、図3に示すように、押し子101に配置されたスリット102の少なくとも一部はゴム部110に覆われ、スリット102の少なくとも一部はゴム部110から露出する。そのため、このスリット102により、押し子101のゴム部110に覆われた部分とゴム部110との間に、空気が通る隙間103ができる。その結果、密封性の検査を行う際に、ゴム部110の穴の有無を調べることができる。
【0022】
例えば、図4(a)に示すようにゴム部110に穴が無い場合、隙間103に入った空気はゴム部110にぶつかり、図中の矢印に示すように押し戻される。一方、図4(b)に示すように、ゴム部110に穴112がある場合、隙間103に入った空気はゴム部110の穴112を通り抜ける。以上のことから、隙間103に入った空気の量の変化、又は、穴112を通り抜けた空気の量を調べることにより、ゴム部110の穴112の有無を調べることができる。
【0023】
本実施形態のキーボタン120は、トップ部100とゴム部110とからなり、簡易な構成となっている。そのため、これが実装される携帯電子機器のサイズが大きくなるのを防ぐことができる。
【0024】
また、ゴム部110は、押し子101の下面150の全面を覆っている。これにより、ユーザから加えられた押し子101を押下する力がゴム部110に効率良く伝わり、キーボタンの感度が高くなる。
【0025】
ゴム部110の中央には、図3に示すように、凹構造111を設けるのが望ましい。ゴム部110が押し子101の下面150を覆った状態では、凹構造111の内径は弾力性により広がって、押し子101の先端部170のスリットのない部分(図3中に破線で示す)の外径とほぼ同じとなる。このような凹構造111をゴム部110の中央に設けることにより、押し子101を凹構造111に圧入して、押し子101をゴム部110に保持させることができる。なお、ゴム部110が凹構造111を有する場合は、スリット102の少なくとも一部が凹構造111から露出していれば良い。
【0026】
なお、図3では先端部170のスリット102がある部分の断面を表しているため、凹構造111の内径が先端部170の外径より大きくなっているが、先端部170のスリット102がない部分(図3中に破線で示す)の断面においては、凹構造111の内径と先端部170の外径はほぼ同じとなる。
【0027】
押し子101の下面150には、凹凸又はスリットを設けるのが望ましい。これにより、下面150の全面とゴム部110とが密着した状態であっても、下面150とゴム部110との間に所定の隙間を設けることができる。そのため、密封性の検査の際に、ゴム部110の穴の有無を確実に調べることができる。
【0028】
また、押し子101の下面150に凹凸又はスリットを設けるのと同様の理由で、ゴム部110の、押し子101の下面150を覆う部分の内側の表面151には、凹凸又はスリットを設けるのが望ましい。これにより、下面150の全面とゴム部110とが密着した場合であっても、下面150とゴム部110との間に所定の隙間を設けることができる。
【0029】
なお、図1には4つのスリット102を有する押し子101を示したが、スリット102の数はこれに限定されるものでなく、少なくとも1つのスリット102を有していれば良い。ただし、より確実にゴム部110の穴112の有無を調べるために、押し子101は複数のスリット102を有するのが望ましい。
【0030】
ゴム部110はシリコンからなるものとすることができる。また、ゴム部110には、補強のための板金が含まれていても良い。
【0031】
次に、本実施形態に係るキーボタン120の製造方法について図5を用いて説明する。図5(a)に示すように、トップ部100に設けられた押し子101はスリット102を備える。押し子101の下面150をゴム部110の凹構造111の中に嵌め込む。このようにして、押し子101の下面150の全面とスリット102の少なくとも一部とを覆い、スリット102の少なくとも一部をゴム部110から露出させるように、押し子101をゴム部110に保持させる。これにより、図5(b)に示すよう、本実施形態に係るキーボタン120を製造することができる。
【0032】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る携帯電子機器240について、図6から図8を用いて説明する。
【0033】
図6には、本実施形態に係る携帯電子機器240の斜視図を示す。携帯電子機器240
は、折り畳み式の携帯通信端末であり、ボタン操作部241と表示部242とを有する。ボタン操作部241の側面には、第1の実施形態で説明したキーボタンと同じ構成のキーボタン220が配置される。
【0034】
キーボタン220とその周辺の内部構造について詳細に説明する。図7に、キーボタン220の分解斜視図を示す。キーボタン220は、トップ部200とゴム部210とで構成される。図8にキーボタン220とその周辺部の断面図を示す。図8に示すように、キーボタン220は筐体243に保持される。また、押し子が備えるスリットにより、押し子のゴム部210に覆われた部分とゴム部210との間に隙間203ができる。また、ゴム部210を介して、センサ部245が押し子に対向して配置される。センサ部245はキーボタン220に加えられた力を感知するものであり、例えば、圧力センサからなるものとする。
【0035】
なお、ゴム部210は、筐体243が有する穴部244よりも大きいことが望ましい。これにより、ゴム部210を穴部244に挿入した際に筐体243を密閉することができるため、携帯電子機器240の防水性を高めることが可能となる。
【0036】
本実施形態に係る携帯電子機器240は、第1の実施形態で説明したキーボタンと同じ構成のキーボタン220を備える。そのため、携帯電子機器240の密封性の検査を行う際に、ゴム部210の穴の有無を調べることができる。ここでいう検査とは、例えば、エアリーク試験機などを用いて、所定の圧力状況下のもと、携帯電子機器240の内部に一定量以上の空気が入り込むか否かを検査することを言う。例えば、図4(a)に示すようにゴム部110に穴が無い場合、隙間103に入った空気はゴム部110にぶつかり、図中の矢印に示すように押し戻されるため、携帯電子機器240の内部に空気は入り込まない。一方、図4(b)に示すように、ゴム部110に穴112がある場合、隙間103に入った空気はゴム部110の穴112を通り抜けるため、携帯電子機器240の内部に空気が入る。以上のことから、携帯電子機器240の内部に空気が入り込むか否かを検査することができ、ゴム部210の穴の有無を調べることができる。
【0037】
本実施形態に係る携帯電子機器240は、キーボタン220を筐体243に配置させることにより製造することができる。
【0038】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0039】
100、200、300 トップ部
101、201、301 押し子
102 スリット
103、203 隙間
110、210 ゴム部
111 凹構造
112 穴
120、220 キーボタン
150 下面
151 ゴム部の、押し子の下面を覆う部分の内側の表面
170 先端部
240 携帯電子機器
241 ボタン操作部
242 表示部
243 筐体
244 穴部
245 センサ部
460 検査プラグ
461 プッシュピン
462 パッキン
463 プッシュピン押部
465 プラグ本体
466 エアー抜き通路
469 配管
471 案内孔
472 バネ状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットを備える押し子を有するトップ部と、
前記押し子の下面の全面と前記スリットの少なくとも一部とを覆い、前記押し子を保持するゴム部と、を有し、
前記スリットの少なくとも一部は前記ゴム部から露出するキーボタン。
【請求項2】
前記ゴム部は、凹構造を有し、
前記凹構造は、前記押し子の前記下面の全面と前記スリットの少なくとも一部とを覆う請求項1に記載のキーボタン。
【請求項3】
前記押し子の前記下面には、凹凸又はスリットが設けられている請求項1又は2に記載のキーボタン。
【請求項4】
前記ゴム部の、前記押し子の前記下面を覆う部分の内側の表面に凹凸又はスリットが設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載のキーボタン。
【請求項5】
前記押し子には、複数の前記スリットが配置される請求項1から4のいずれか一項に記載のキーボタン。
【請求項6】
スリットを備える押し子を有するトップ部と、前記押し子の下面の全面と前記スリットの少なくとも一部とを覆い、前記押し子を保持するゴム部と、を有し、前記スリットの少なくとも一部は前記ゴム部から露出するキーボタンと、
前記キーボタンが配置された筐体とを有する携帯電子機器。
【請求項7】
前記ゴム部を介して、前記キーボタンに加えられた力を感知するセンサ部が前記押し子に対向して配置される請求項6に記載の携帯電子機器。
【請求項8】
スリットを備える押し子を有するトップ部と、前記押し子の下面の全面と前記スリットの少なくとも一部とを覆い、前記押し子を保持するゴム部と、を有し、前記スリットの少なくとも一部は前記ゴム部から露出するキーボタンと、前記キーボタンが配置された筐体とを有する携帯電子機器に、前記スリットから空気を挿入して、筐体内部に空気が入り込むか否かを調べる携帯電子機器の密封性の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−9236(P2012−9236A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143282(P2010−143282)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】