説明

キーボード装置及びこれを用いた電子機器

【課題】最上面に位置する入力操作面が平坦面とされたキーボード装置において、誤検知の虞を無くす。
【解決手段】キーボード操作部10が、下ケース1に対してフローティング機構14により三点以上でフローティング支持されることで、下ケース1に対して所定の自由度を以って、キーボード操作部10は下ケース1によって安定保持される。下ケース1に対するキーボード操作部10の変位が許容されていることで、キーボード操作部10に加わる荷重が、下ケース1に対するキーボード操作部10の変位と共に荷重センサ22へと伝えられ、キーボード操作部10に加わる荷重の把握が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボード装置及びこれを用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器とユーザーとの入力用インターフェイスとして、従来からキーボード装置が広く用いられている。このキーボード装置は、従来、複数のキースイッチを備えるものが一般的であったが、近年では、LCD(液晶表示装置)やCRT等の表示装置の画面上に配置され、その画面に表示される文字、数字及びその他の記号(図形、像等からなるアイコンと称される絵記号等を含む。複数の記号で1つの記号をなすものも含む。)を、その表面側から透かして見ながら所望の文字、数字及びその他の記号(記号と総称する。)の位置を指等でタッチし、その記号位置に応じた情報を生成して出力する装置も広く普及している(例えば、特許文献1参照)。一例として、銀行等の現金自動預け払い機やカーナビゲータ等においては、タッチパネル式ディスプレーとして以前から普及しており、又携帯情報端末、電子辞書等の小型電子機器でも盛んに使われるようになっている。
【0003】
一方、マルチ表示装置としての機能を必要としない場合には、LCDやCRT等の表示装置を特に併設する必要はなく、タッチパネル式ディスプレーではオーバースペックとなり、簡易な入力装置としてはコスト高となる。そこで、本出願人らにより、マルチ表示装置としての機能が要求されないキーボード装置であって、かつ、タッチパネル式ディスプレーと同様に、最上面に位置する入力操作面が平坦面とされたキーボード装置が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−317041号公報
【特許文献2】特願2009−253938号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、特許文献2記載のキーボード装置は、最上面に位置する入力操作面が平坦面とされたことから、清掃がし易くなって汚れが固着し難くなり、見栄えが向上する上に、清潔な状態を保つことができ、機能性と美観とを高度に兼ね備えたものである。そして、平坦な入力操作面を実現するにあたり、静電容量方式のタッチパネルが採用されていることで、高感度の入力検知が可能となっている。
ところが、その感度の高さが、従来の複数のキースイッチを備える形式のキーボード装置には無い、特有の課題を抱える一因となっている。例えば、キーボード装置による操作を行なう場合、人間工学的には指をキーボード上に軽く触れた状態がデフォルト状態となるが、静電容量方式タッチパネルの座標検知信号によると、かかるデフォルト状態も検出してしまうことから、ユーザーが意図的に入力を行なう場合との区別を適切に把握することが困難な場合がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、最上面に位置する入力操作面が平坦面とされたキーボード装置において、機能性と美観とを高度に兼ね備えつつ、誤検知の虞を無くし、従来の複数のキースイッチを備えるキーボード装置と同等の確実な入力を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0008】
(1)最上面に位置する入力操作面が平坦面である、静電容量方式のタッチパネルを備えるキーボード操作部と、該キーボード操作部とは別体の下ケースと、前記キーボード操作部及び前記下ケースを、少なくとも三点で連結するフローティング機構と、前記キーボード操作部に加わる荷重を検知する荷重センサとを備えるキーボード装置(請求項1)。
本項に記載のキーボード装置は、キーボード操作部が、下ケースに対してフローティング機構により三点以上でフローティング支持されることで、下ケースに対して所定の自由度を以って(すなわち変位が許容された状態で)、キーボード操作部は下ケースによって安定保持される。そして、下ケースに対するキーボード操作部の変位が許容されていることで、キーボード操作部に加わる荷重が、下ケースに対するキーボード操作部の変位と共に荷重センサへと伝えられ、キーボード操作部に加わる荷重の把握が可能となる。なお、下ケースに対するキーボード操作部の姿勢を安定保持する上で、フローティング機構により、少なくとも三点で両者を連結する必要があるが、連結点数については、キーボード装置の大きさ等を考慮して、適宜選択されるものである。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記キーボード操作部に加わる荷重を少なくとも三点で検知する、荷重センサを備えるキーボード装置(請求項2)。
本項に記載のキーボード装置は、荷重センサにより検知される少なくとも三点の加重の、大小の比較から、キーボード操作部に加わる荷重が、キーボードのどの部分に付与されたものであるかを、少なくとも入力操作面の概略的なエリア毎に、把握することができる。なお、キーボード操作部のどのエリアに荷重が加わったかを把握する上で、荷重センサにより、少なくとも三点で荷重を把握する必要があるが、測定点数については、キーボード装置の大きさ等を考慮して、適宜選択されるものである。
【0010】
(3)上記(1)、(2)項において、前記荷重センサから得られる荷重情報に基づき、キーボード操作部に加わる荷重エリアを特定し、前記タッチパネルから得られる座標情報と共に前記荷重エリアを考慮して入力操作を認識する制御手段を備えるキーボード装置(請求項3)。
本項に記載のキーボード装置は、制御手段によって、荷重センサから得られる荷重情報(検出される荷重値)に基づき、キーボード操作部に加わる荷重エリアを特定し、タッチパネルから得られる座標情報と共に該荷重エリアを考慮して入力操作を認識することで、ユーザーが指をキーボード上に軽く触れたデフォルト状態と、ユーザーが意図的に入力を行なうキー操作状態との区別を行うものである。
【0011】
(4)上記(1)〜(3)項において、前記フローティング機構は、前記キーボード操作部と前記下ケースとに上下方向の間隙を確保した状態で両者を連結する板ばね部材を備えるキーボード装置。
本項に記載のキーボード装置は、板バネ部材によってキーボード操作部と下ケースとを連結することで、キーボード操作部は下ケースに対しフローティング支持される。
(5)上記(4)項において、前記荷重センサを構成するための、前記板ばね部材に固定されるストレインゲージを含むキーボード装置(請求項4)。
本項に記載のキーボード装置は、板バネ部材に固定されるストレインゲージを含む荷重センサによって、下ケースに対しフローティング支持されるキーボード操作部に加わる荷重を、板バネ部材の変形から把握するものである。なお、板ばね部材は、ストレインゲージが固定可能であって、かつ、その変形をストレインゲージに伝えることが可能な部材であれば、他の弾性部材であっても良い。
【0012】
(6)なお、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のキーボード装置を用い、パーソナルコンピュータ用キーボード装置、電子機器コントローラ、電子卓上計算機を提供することが可能である(請求項5〜7)。
【発明の効果】
【0013】
本発明はこのように構成したので、最上面に位置する入力操作面が平坦面とされたキーボード装置において、機能性と美観とを高度に兼ね備えつつ、誤検知の虞を無くし、従来の複数のキースイッチを備えるキーボード装置と同等の確実な入力が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るキーボード装置を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図2】図1に示されたキーボード装置の、キーボード操作部の分解斜視図である。
【図3】図1に示されたキーボード装置の構成要素を模式的に示した分解図である。
【図4】図1に示されたキーボード装置の、フローティング機構を模式的に示した斜視図である。
【図5】図1に示されたキーボード装置の、キーボード操作部と下ケースとに確保された、上下方向の間隙を示す部分断面図である。
【図6】図1に示されたキーボード装置の、フローティング機構周辺部の構造の具体例を示す図であり、(a)は板ばね部材及びストレインゲージの平面図、(b)はその組み込み状態を示す側面図である。
【図7】図1に示されたキーボード装置の、タッチパネルの静電遮断手段を示す平面図である。
【図8】図1に示されたキーボード装置の、タッチパネルから得られる座標情報と共に該荷重エリアを考慮して入力操作を認識する制御手段の構成を示すブロック図である。
【図9】図1に示されたキーボード装置の、タッチパネルから得られる座標情報と共に該荷重エリアを考慮して入力操作を認識する制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。又、本説明中「上下方向」とは、本発明の一実施形態に係るキーボード装置を平置きして、入力操作面が水平に位置する状態での、上下方向を意味する。
【0016】
本発明の一実施形態に係るキーボード装置は、図1〜図3に示されるように、パーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」ともいう。)用キーボード装置である。
図1に示すように、このパソコン用キーボード装置は、平面視が横長の長方形で縦断面がほぼ逆台形の浅い角皿状の下ケース1を備える。下ケース1は、合成樹脂成型、例えばABS樹脂成型によって作製され、底面に脚部1aを備える。この下ケース1内には、後述するタッチによって情報、具体的には記号の入力操作を行なうキーボード装置の主要部が収納されている。具体的には、このキーボード装置は、図2から図4に示すように、下ケース1とキーボード操作部10とが別体に形成され、かつ、両者がフローティング機構14によって連結されることで、図1に示される外観を呈するものである。
キーボード操作部10は、透光性のタッチパネル2と、任意の記号3a(図1参照)が印刷された記号印刷フィルム3と、この記号印刷フィルム3を照明する面発光層であるバックライトデバイス4との積層体5が収納されている。この場合、タッチパネル2は記号印刷フィルム3の上面側、図示例では上面に配置され、バックライトデバイス4は記号印刷フィルム3の下面側、図示例では下面に配置されている。又、本実施形態に係るキーボード装置においては、装置最上面に位置する入力操作面6は凹凸のない平坦面とされている。
【0017】
基本的な構成は以上に述べた通りであるが、本実施形態においては、更に以下のように構成されている。
すなわち、上記タッチパネル2の上面側、本実施形態ではタッチパネル2上面には、透光性を有するカバーパネル7が積層配置されている。
このカバーパネル7は、トレー16と共にキーボード操作部10の外殻を形成するものであり、完成状態で装置最上部に位置する。つまり、カバーパネル7の上面は入力操作面6をなすもので、凹凸のない平坦面とされている。なお、トレー16は、下ケース1同様に、合成樹脂成型、例えばABS樹脂成型によって作製され、後述するキーボード操作部10内部の積層構造物を収容可能な深さで、かつ、下ケース1と重なることで、図1に示されるようなパソコン用キーボード装置の形態を奏するものであれば良い。又、カバーパネル7とトレー16とは、接着、嵌合等、適切な方法によって固定される。
【0018】
上記カバーパネル7は、ハーフミラー若しくはスモークパネル、又は透光性のプレートやシート等(透光性パネルと総称する。)とハーフミラーとを積層してなる。本実施形態では、図3に示されるように、透光性パネル8とハーフミラー9とを積層してなり、ハーフミラー9を上記タッチパネル2側に向けて配置した。
本実施形態において、上記透光性パネル8は透明アクリル板又は透明ポリカーボネート板からなる。又ハーフミラー9は、例えば膜状やフィルム状のハーフミラーからなり、透光性パネル8に被着してカバーパネル7を構成する。
【0019】
ハーフミラー9をタッチパネル2側に向けて配置、つまり透光性パネル8を装置上面側に向けて配置するのは次の理由による。
すなわち、透光性パネル8を装置上面側に向けて配置した場合、装置最上面、つまり入力操作面6は透光性パネル8の上面となる。そして、透光性パネル8を形成するアクリル板やポリカーボネート板は、いずれも耐久性、耐衝撃性、絶縁性等に優れ、その下面側に配置されたキーボード装置構成部材、つまりハーフミラー9、タッチパネル2、記号印刷フィルム3及びバックライトデバイス4等を、特に入力操作面6近くに位置するハーフミラー9及びタッチパネル2を機械的、電気的に保護できるからである。
又、アクリル板やポリカーボネート板は、上記の耐久性、耐衝撃性、絶縁性等の他、透光性にも優れ、その下面側のハーフミラー9及びタッチパネル2を通した、記号印刷フィルム3上の印刷記号3aの視認性に優れ、又凹凸のない平坦面が容易に得られる。更に、表面に付着した塵埃や人体油脂分等の汚れを容易に除去できる材質であって、キーボード装置最上面の入力操作面6を形成する透光性パネル8(カバーパネル7の上面形成部材)として最適となるからである。
【0020】
上記のようにカバーパネル7及びタッチパネル2は透光性を有するので、装置最上面(入力操作面6)においてタッチパネル2下面の記号印刷フィルム3に印刷された記号3aを透視可能である。カバーパネル7が透光性パネル8とハーフミラー9とで構成されている場合は、バックライトデバイス4の点灯時には記号印刷フィルム3に印刷された記号3aを、装置最上面をなす入力操作面6から明瞭に透視できる。なお、バックライトデバイス4の消灯時には入力操作面6をなす装置最上面は鏡面状態になり、鏡としての効果が発揮される。
【0021】
上記タッチパネル2は、記号印刷フィルム3に印刷された記号群11を、その表面側から透かして見ながら所望の記号3aの位置を指等でタッチし、その記号3aの位置に応じた情報(記号情報)を生成して出力するための装置である。このタッチパネル2は、後述するタッチパネル駆動回路と協働してキーボード装置としての機能(タッチにより指示された記号3aに応じた情報を出力する機能)を実現する。
このタッチパネル2は、本実施形態では静電容量方式のタッチパネルからなる。静電容量方式のタッチパネル2は、他の代表的な抵抗膜方式のタッチパネルに比べて、透光性に優れたタッチパネルを簡単に構成できるからである。
【0022】
更に本実施形態において、ハーフミラー9は誘電体多層膜によるハーフミラー(誘電体ハーフミラー)からなる。これは、静電容量方式のタッチパネル2において、膜状ハーフミラーの使用を可能にするためである。又、誘電体ハーフミラー9によれば、本実施形態に係るキーボード装置を記号入力装置として動作させず(タッチパネル2を非動作状態として)、バックライトデバイス4のみを動作状態とした場合に、入力操作面6をなす装置最上面にて誘電体多層膜の特性に応じて色づけされた鏡面が得られるからである。
【0023】
記号印刷フィルム3とは、透光性の基材フィルムの面に予め決められた多数の記号3a(記号群11)を予め決められた位置にポジ状態(陽画)又はネガ状態(陰画)にて印刷されたフィルム、つまりポジ記号印刷フィルム又はネガ記号印刷フィルムを指す。
本実施形態では、記号3a部分には光が透過して記号3aのみが高輝度で現われるパターンで印刷を行い、例えば記号3aの輪郭のみの印刷を行い、地(背景)の部分には黒色等の暗色にて一様な印刷を行なうネガ記号印刷フィルムを記号印刷フィルム3として用いている。これは、記号3a(記号群11)及び、ネガ記号印刷上、記号印刷フィルム面に表われる記号群11の印刷領域の外枠部分のみが浮かび上がり、視認性や見栄えがよくなることが主な理由である。
【0024】
記号3aの印刷方法としてはシルク印刷法が好適である。上記のようにタッチパネル2として静電容量方式のタッチパネルを用いた場合には、タッチパネル2の誤動作を防止するため、金属性物質が含まれていないインクを用いて記号3aの印刷を行なう。
記号印刷フィルム3への印刷は、基材フィルムの表面(タッチパネル2側)若しくは裏面(バックライトデバイス4側)、又は表,裏両面のいずれに行なってもよいが、表面に行なったほうが入力操作面6から文字が浮かび上がって見える効果をより高めることができる。又、表,裏いずれか一方の面に行なったほうが低コスト化が図れる。
なお記号とは、文字、数字及びその他の記号を指すことは既に述べたが、パソコン用キーボード装置においては、英数字、ファンクションキー記号、その他の特殊記号等、所定のキー配列に係る各種の記号を指す。この記号は、予め定められたキー配列に従って配列されている。
【0025】
上記バックライトデバイス4としては、本実施形態ではLEDと導光板からなるサイドライト方式のバックライトデバイスが用いられている。この場合、記号位置の明るさを確保し、かつLEDの数を減らせるように、実際に照明する記号3aに対応する位置のみで発光するように、バックライトデバイス4の導光板形状(パターン)が形成されている。 LEDと導光板からなるサイドライト方式のバックライトデバイスに代えて、無機EL発光素子からなるバックライトデバイスを使用してもよく、これによればキーボード装置をより薄型にすることができる。
【0026】
更に、本実施形態では、バックライトデバイス4の下面を覆うように、反射板18が設けられている。反射板18は、白色樹脂、銀メッキ版などの反射性材料からなり、バックライトデバイス4の下面から外部に放出する光を反射してバックライトデバイス4の内部に再入光させるものである。したがって、反射板18を独立して設けることなく、トレー16の底面に上記反射機能を持たせることとしても良い。
更に、トレー16の下面には、本キーボード装置を駆動する回路、すなわちタッチパネル駆動回路、バックライトデバイス点消灯回路(図示せず)を搭載した基板(回路基板)12が配置されている。トレー16に対する回路基板12の固定は、タッピンねじ等適切な固定手段を用いて行われる。
【0027】
フローティング機構14は、図4に示されるように、下ケース1とキーボード操作部10とを連結する板ばね部材20を備えている。図4の例では、板ばね部材20はその一端部を下ケース1に、他端部をキーボード操作部10に固定するようにして、各四点で連結されることで、キーボード操作部10は下ケース1によって安定保持される。そして、キーボード操作部10に荷重が加わると、板ばね部材20の撓みを誘発することとなる。板ばね部材20には、荷重センサを構成するためのストレインゲージ22が固定されており、板ばね部材20の撓みをこのストレインゲージ22で検出することで、各四点のフローティング機構14が受ける荷重を把握することができる。又、板ばね部材20の弾性によって、常時、図5に符号Yで示されるように、キーボード操作部10と下ケース1とに上下方向の間隙が確保される。なお、図5の例では、キーボード操作部10のトレー16には、下ケース1の周囲を囲むように縁壁が16aが形成されており、下ケース1に対するキーボード操作部10の上下方向の変位が円滑に行われるよう、縁壁16aと下ケース1の周端部との間に、適切なクリアランスXが与えられている。
【0028】
フローティング機構14周辺部の、より具体的な構造例としては、図6に示されるように、板ばね部材20はステンレス等の弾性変形可能な金属材料で構成され、その一端部及び他端部には、開口20が形成されている。そして、この開口20aにねじ24を挿通して、下ケース1及びキーボード操作部10のトレー16に形成された、ボス1b、16bに対しねじ止めされる。又、ストレインゲージ22は、図6に示されるように、板ばね部材20の一面に固定され、シリコンコーティング22aが施されている。
【0029】
又、タッチパネル2とハーフミラー9との間には、図7に示されるタッチパネルの静電遮断手段26が設けられている。この静電防止手段26は、例えば、キー配列領域26Aと、静電遮断領域26Bとに区分けした静電遮蔽シートをタッチパネル2の上面に配置したものである。そして、特に、ユーザーがパソコン用キーボード装置を操作する際に、手前側に位置する範囲の静電遮断領域26Bの幅が、広くなるように構成される。なお、静電遮断領域26Bは手前側に配置されることが必須であり、その他のエリアについては、適宜設けることとする。図1には、上記2つの領域の境界線26Cが点線で示されている。
又、静電防止手段26は、透明な樹脂シートに、静電遮断素材を塗布したものであっても良く、タッチパネル2又はハーフミラー9に静電遮蔽素材を直接塗布しても良い。
【0030】
さて、回路基板12上に構成されたタッチパネル駆動回路は、カバーパネル7上面の入力操作面6、換言すればタッチパネル2面のタッチ位置をタッチパネル2と協働してキーボード装置としての機能を実現する、つまりタッチにより指示された記号3aに応じた情報を出力するマイクロコンピュータを構成するものである。具体的には、タッチパネル2の位置検知機能により、操作者がタッチした(実際には入力操作面6を介してタッチした)タッチパネル2面上の位置の信号を受け、この位置信号と記号印刷フィルム3面上の記号3aとの予め定められた対応付けに基づく特定の信号を、タッチにより指示した記号3aとして生成し、出力する。
【0031】
静電容量方式のタッチパネル2は、タッチしたタッチパネル2面上(入力操作面6上)の位置を、静電気によって発生した電気信号を検知して位置検知を行なうタッチパネルである。この静電容量方式のタッチパネル2及び上記タッチパネル駆動回路は共に周知の技術によるものである。すなわち、これら静電容量方式のタッチパネル2及びタッチパネル駆動回路(回路基板12)としては、静電気による電気信号を用いた位置検知方式であって、最終的にタッチパネル2面上のタッチ位置に対応付けられた記号3aに対応する特定の信号がタッチパネル駆動回路から出力されれば、如何なる構成のタッチパネル2及びタッチパネル駆動回路であってもよい。
【0032】
又、回路基板12上に構成されたタッチパネル駆動回路は、カバーパネル7上面の入力操作面6、換言すればタッチパネル2面のタッチ位置を、荷重センサを構成するストレインゲージ22とも協働してキーボード装置としての機能を実現する制御手段(マイクロコンピュータ)を構成している。具体的には、図8に示されるように、静電容量パネルである透光性のタッチパネル2から得られる座標情報を、前述のように、キーコード変換部12Aにおいてキーコードに変換する。
又、ストレインゲージ22から得られる荷重値を荷重応答監視部12Bで監視し、荷重エリアを特定する。荷重エリアの特定は、例えば、図4の例では、四つのストレインゲージ22A、22B、22C、22Dを中心としてタッチパネル2を四つのエリアに仮想的に区分けし、各ストレインゲージにより検出される荷重値の大小の比較から、いずれかのストレインゲージに最も近いエリアに荷重が付与されたと判断するものである。その結果、デフォルト状態ではなく、ユーザーが意図的に入力を行なう通常動作と把握される場合には、打鍵有効信号をキーコード変換部12Aに送る。そして、キーコードがパーソナルコンピュータ28へと出力される。
【0033】
このときの制御フローの具体例は、図9の通りである。
(S100):荷重センサ(ストレインゲージ22)から荷重エリアを特定する。
(S110):パネル座標情報からキーを特定する。
(S120):S110で特定されたキーがS100で得られた荷重エリア内のキーであるか否かを判断する。荷重エリア内のキーでない場合には、デフォルト状態と判断する。
(S130):S110で特定されたキーがS100で得られた荷重エリア内のキーである場合には、キーコードがパーソナルコンピュータ28へと出力される。
【0034】
なお、上記バックライトデバイス4の点消灯回路は図示省略されているが、ここではタッチパネル駆動回路(回路基板12)と同一基板上に配設されている。この場合、バックライトデバイス4の点消灯回路の配線等が静電容量方式のタッチパネル2の位置検知動作に影響を及ぼさないように構成されている。このことは、バックライトデバイス4の点消灯回路がタッチパネル駆動回路の回路基板12とは別個に配設されている場合も同様である。
更に、本実施形態においては、図示しないがタッチパネル2へのタッチの検知に連動して作動する振動モータ(Haptics)を備えている。必要以上に大きな音を周囲に放出することなく、入力操作面6にタッチされたことを操作者に報知するためである。
【0035】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。
まず、本発明の実施の形態によれば、キーボード操作部10が、下ケース1に対してフローティング機構14により三点以上でフローティング支持されることで、下ケース1に対して所定の自由度を以って(すなわち変位が許容された状態で)、キーボード操作部10は下ケース1によって安定保持される。そして、下ケース1に対するキーボード操作部10の変位が許容されていることで、キーボード操作部10に加わる荷重が、下ケース1に対するキーボード操作部10の変位と共に荷重センサ(ストレインゲージ22)へと伝えられ、キーボード操作部10に加わる荷重の把握が可能となる。なお、下ケース1に対するキーボード操作部10の姿勢を安定保持する上で、フローティング機構14により、少なくとも三点で両者を連結する必要があるが、連結点数については、キーボード装置の大きさ等を考慮して、適宜選択されるものである。
【0036】
又、荷重センサにより検知される少なくとも三点の加重の、大小の比較から、キーボード操作部に加わる荷重が、キーボードのどの部分に付与されたものであるかを、少なくとも入力操作面の概略的なエリア毎に、把握することができる。なお、キーボード操作部10のどのエリアに荷重が加わったかを把握する上で、荷重センサにより、少なくとも三点で荷重を把握する必要があるが、測定点数については、キーボード装置の大きさ等を考慮して、適宜選択されるものである。
【0037】
又、本発明の実施の形態では、板バネ部材20によってキーボード部材10と下ケース1とを連結することで、キーボード部材10は下ケース1に対しフローティング支持される。しかも、板バネ部材20に固定されるストレインゲージ22を含む荷重センサによって、下ケース1に対しフローティング支持されるキーボード部材10に加わる荷重を、板バネ部材20の変形から把握するものである。
【0038】
そして、回路基板12上に構成された制御手段によって、荷重センサ(ストレインゲージ22)から得られる荷重情報に基づき、キーボード操作部10に加わる荷重エリアを特定し、タッチパネル2から得られる座標情報と共に、荷重エリアを考慮して入力操作を認識することで(図8、図9参照)、ユーザーが指をキーボード上に軽く触れたデフォルト状態と、ユーザーが意図的に入力を行なうキー操作状態との区別を、正確に行うことができる。
【0039】
なお、本発明の実施の形態では、パーソナルコンピュータ用キーボード装置への適用例を説明したが、本発明は、他の電子機器用のキーボード装置、例えば、AV機器用リモコン等の電子機器コントローラや、電子卓上計算機にも、同様に適用可能であることは、理解されるであろう。
【符号の説明】
【0040】
1:下ケース、2:透光性のタッチパネル、3:記号印刷フィルム、3a:記号、4:バックライトデバイス、5:積層体、6:入力操作面(装置最上面)、7:カバーパネル、8:透光性パネル、9:ハーフミラー、10:キーボード操作部、11:記号群、12:回路基板、14:フローティング機構、16:トレー、18:反射板、20:板ばね部材、22:ストレインゲージ、26:タッチパネルの静電遮断手段、28:パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最上面に位置する入力操作面が平坦面である、静電容量方式のタッチパネルを備えるキーボード操作部と、該キーボード操作部とは別体の下ケースと、前記キーボード操作部及び前記下ケースを、少なくとも三点で連結するフローティング機構と、前記キーボード操作部に加わる荷重を検知する荷重センサとを備えることを特徴とするキーボード装置。
【請求項2】
前記キーボード操作部に加わる荷重を少なくとも三点で検知する、荷重センサを備えることを特徴とする請求項1記載のキーボード装置。
【請求項3】
前記荷重センサから得られる荷重情報に基づき、キーボード操作部に加わる荷重エリアを特定し、前記タッチパネルから得られる座標情報と共に前記荷重エリアを考慮して入力操作を認識する制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のキーボード装置。
【請求項4】
前記フローティング機構は、前記キーボード操作部と前記下ケースとに上下方向の間隙を確保した状態で両者を連結する板ばね部材を備え、かつ、前記荷重センサを構成するための、前記板ばね部材に固定されるストレインゲージを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のキーボード装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のキーボード装置を用いたことを特徴とするパーソナルコンピュータ用キーボード装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のキーボード装置を用いたことを特徴とする電子機器コントローラ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のキーボード装置を用いたことを特徴とする電子卓上計算機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−154563(P2011−154563A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16023(P2010−16023)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】