説明

キーボード

【課題】キートップの模様を把握したり、コストの削減や構成の簡素化を図ることができ、しかも、キートップの照光性の低下を招くことの少ないキーボードを提供する。
【解決手段】形態保護プレート1に内蔵される押圧感知層2と、押圧感知層2上に配列されるラバー単キー10と、ラバー単キー10に支持される押圧操作用のキートップ20と、ラバー単キー10を露出させるフレーム30と、フレーム30に配設されてキートップ20を昇降可能に支持する案内機構40とを備える。押圧感知層2とフレーム30の間に、複数のLED51からの光線を導光してキートップ20方向に照射する光透過性のライトガイド層50を介在し、キートップ20に光透過性の模様を形成し、複数のLED51をライトガイド層50の周面に対向させる。キートップ20の数に応じてLED51を用意する必要がないので、ランニングコストの削減や構成の簡素化を図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理機器、医療機器、測定機器等の入力装置として使用されるキーボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のキーボードは、図示しないが、接点機能を有する接点層と、この接点層上に配列される複数のラバー単キーと、各ラバー単キーに支持される押圧操作用のキートップと、これら複数のラバー単キーやキートップを露出させるフレームとを備え、このフレームに、各キートップを昇降可能に支持する複数の案内機構が配設されており、情報処理機器、医療機器、測定機器の入力装置として使用される。
【0003】
ところで、従来のキーボードは、明るい環境下では円滑に使用することができるものの、暗い環境下ではキートップを識別して使用することができず、入力作業に支障を来たすという問題がある。この問題を解消すべく、従来においては、(1)複数のキートップの周囲をLEDにより照光する方法、(2)各キートップに光透過性を付与してその内部や下方にLEDを配置し、各キートップをLEDにより照光する方法が提案されている(特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007‐280810号公報
【特許文献2】特開2008‐277277号公報
【特許文献3】特開2008‐235065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、(1)の方法の場合には、キートップの輪郭を把握することができるものの、キートップの表面に印刷された文字や記号を把握することが難しいので、キートップを正確に打鍵することができない。また、(2)の方法の場合には、各キートップの内部や下方にLEDを配置するので、キートップの数に応じてLEDが増加(一般的には、100個以上)し、ランニングコストの削減や構成の簡素化を図ることができないおそれがある。さらに、接点層の大部分に光透過性を付与し、この接点層の下方に、各キートップを照光するLEDを配列する場合には、接点層の導電パターンが光線の障害物となり、キートップの照光性の低下を招くこととなる。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、キートップの模様を把握したり、コストの削減や構成の簡素化を図ることができ、しかも、キートップの照光性の低下を招くことの少ないキーボードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、キートップを押圧操作して押圧感知層の接点部に接点機能を発揮させるものであって、
キートップを支持する弾性の押圧支持体と、押圧感知層に積層され、光源からの光線を導光してキートップ方向に照射する光透過性のライトガイド層とを含み、キートップに光透過性の模様を形成し、押圧支持体を押圧感知層とライトガイド層のいずれかに支持させ、光源をライトガイド層の周面に対向させるようにしたことを特徴としている。
【0008】
なお、ライトガイド層に積層されて押圧支持体を露出させる表面保護層と、この表面保護層に取り付けられてキートップを昇降可能に支持する案内機構とを含むことができる。
また、ライトガイド層に、押圧支持体が嵌合する嵌合孔を穿孔し、この嵌合孔に嵌合した押圧支持体を押圧感知層に支持させることができる。
【0009】
また、押圧支持体に光透過性あるいは光反射性を付与することができる。
また、表面保護層と案内機構の少なくともいずれかに光透過性を付与することも可能である。
さらに、押圧感知層とライトガイド層との間に、光線を反射する反射層を介在することも可能である。
【0010】
ここで、特許請求の範囲におけるキートップや光源は、単数複数の数を特に問うものではない。キートップの模様には、少なくとも文字、図形、記号、これらの組み合わせ等が含まれる。また、押圧支持体とライトガイド層とは、一体形成することができる。ライトガイド層は、エラストマー性を有することが好ましい。さらに、本発明に係るキーボードは、親指タイプ、米国配列タイプ、フルキーボードタイプ、テンキーレスキーボードタイプ、身体障害者用等を特に問うものではなく、少なくとも情報処理機器、医療機器、測定機器、ゲーム機器等の入力装置として使用することができる。
【0011】
本発明によれば、暗い環境下でキーボードのキートップを識別して入力したい場合には、光源を発光させれば良い。すると、光源の光線は、ライトガイド層の周面から内部に入射して導光・伝送され、キートップに照射されてその光透過性の模様を照光する。このキートップの模様の照光により、キートップの模様を識別することができ、キートップを適切に選択して押圧操作することができる。この際、光源の光量を調整すれば、キートップに照射される光線の明るさを変更することができるので、使用者は周囲の状況に対応した照明状態を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キートップの模様を把握したり、コストの削減や構成の簡素化を図ることができるという効果がある。また、キートップの照光性の低下を招くことが少ないという効果がある。
【0013】
また、ライトガイド層に積層されて押圧支持体を露出させる表面保護層を備えれば、塵埃の堆積等に伴うライトガイド層の汚染を防ぐことができる。また、表面保護層に、キートップを昇降可能に支持する案内機構を取り付ければ、キートップの姿勢を適切に維持しつつストロークを安定させることができる。
【0014】
また、ライトガイド層に、押圧支持体が嵌合する嵌合孔を穿孔し、この嵌合孔に嵌合した押圧支持体を押圧感知層に支持させれば、押圧支持体の位置ずれやガタツキ等を防ぐことができる。
また、押圧支持体に光透過性あるいは光反射性を付与すれば、キートップの模様に対する光線の照度等を向上させることが可能となる。
【0015】
また、表面保護層と案内機構の少なくともいずれかに光透過性を付与すれば、キートップの模様に対する光線のさらなる照度向上が期待できる。
さらに、押圧感知層とライトガイド層との間に、光線を反射する反射層を介在すれば、キートップの模様をより強く照光することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るキーボードの実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係るキーボードの実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図3】本発明に係るキーボードの第2の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図4】本発明に係るキーボードの第3の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるキーボードは、図1や図2に示すように、形態保護プレート1に積層される押圧感知層2と、この押圧感知層2に並べて配置される複数のラバー単キー10と、各ラバー単キー10に支持される押圧操作用のキートップ20と、これら複数のラバー単キー10やキートップ20を露出させるフレーム30と、このフレーム30に配設されて各キートップ20を昇降可能に支持する複数の案内機構40とを備え、押圧感知層2とフレーム30との間に、複数のLED51からの光線を導光してキートップ20を照光する光透過性のライトガイド層50を介在するようにしている。
【0018】
形態保護プレート1は、図1に示すように、所定の材料を使用して細長い平面矩形の板に形成され、表面に押圧感知層2が積層されており、裏面に図示しない複数の電子部品が実装される。このような形態保護プレート1は、筐体として変形し易い押圧感知層2の形状を保護し、電子部品の放熱機能を発揮する。
【0019】
押圧感知層2は、図1に示すように、僅かな隙間を介して相対向する一対のメンブレンフィルム3を備え、この一対のメンブレンフィルム3の対向面周縁部には、隙間を形成するスペーサ4が接着され、形態保護プレート1上に積層接着されており、キートップ20の押圧操作により変形して図示しない電子回路をON‐OFFするよう機能する。
【0020】
一対のメンブレンフィルム3の間には、図示しない電子部品に接続される導電ライン5が銀ペーストを用いるスクリーン印刷等によりパターン形成され、この導電ライン5がON‐OFFする接点部として機能する。各メンブレンフィルム3は、ポリエチレンテレフタレート等の所定の樹脂を含む成形材料を使用して屈曲可能な細長い平面矩形に成形される。
【0021】
各ラバー単キー10は、同図に示すように、所定の樹脂を含む成形材料を使用して光透過性を有する弾性の断面略凸字形に成形され、ライトガイド層50を貫通して押圧感知層2上に接着されており、押圧感知層2にキートップ20の押圧力を伝達するよう機能する。このラバー単キー10の成形材料としては、特に限定されるものではないが、例えば温度特性や耐久性に優れ、良好なクリック感を得られるシリコーンゴム等があげられる。
【0022】
各キートップ20は、図1や図2に示すように、所定の樹脂を含む成形材料を使用して中空の略角錐台形に成形され、表面に光透過性の模様21がインサート成形等で抜き形成されており、ラバー単キー10の細長い上端部に接着される。このキートップ20の成形材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール等があげられる。キートップ20の模様21は、文字、図形、記号、これらの組み合わせ、あるいはこれらと色彩との組み合わせにより形成される。
【0023】
フレーム30は、図1に示すように、所定の樹脂を含む成形材料を使用して細長い平面矩形の板に形成され、複数の貫通口31が配列して穿孔されるとともに、各貫通口31からラバー単キー10が露出しており、ライトガイド層50を被覆保護する。このフレーム30の成形材料は、特に限定されるものではないが、例えば光透過性のポリカーボネートやABS樹脂等が該当する。フレーム30の貫通口31周面には、光量を調整可能なLED51の光線を拡散させる拡散部32がエンボス加工等により選択的に形成される。
【0024】
各案内機構40は、同図に示すように、フレーム30の貫通口31の表面周縁部とキートップ20の裏面との間に配設され、昇降してキートップ20の上下方向のストロークを安定させる。この案内機構40の成形材料は、特に限定されるものではないが、例えば光透過性のポリカーボネートやABS樹脂等が該当する。案内機構40は、例えば貫通口31の表面周縁部とキートップ20の裏面との間に揺動可能に軸架される略V字形の一対のリンク機構、あるいは貫通口31の表面周縁部とキートップ20の裏面周縁部との間に昇降可能に軸架されるパンタグラフ機構等により構成される。
【0025】
ライトガイド層50は、図1に示すように、所定の樹脂を含む成形材料を使用して細長い平面矩形の板に成形され、XY方向に位置する複数のLED51からの光線を導光してキートップ20方向に照射する。このライトガイド層50の成形材料は、特に限定されるものではないが、例えば光透過性に優れる透明のシリコーンゴムやポリカーボネート等があげられる。
【0026】
ライトガイド層50には、複数のラバー単キー10の位置決め嵌合する嵌合孔52がそれぞれ穿孔され、各嵌合孔52に嵌合したラバー単キー10の裏面が押圧感知層2上に接着支持される。ライトガイド層50の表面には、光線を拡散させて面発光する光拡散透過模様53がドット状のパターン印刷等により選択的に形成される。また、複数(例えば、20個以下)のLED51は、スペース効率の観点からライトガイド層50の周面の一部、換言すれば、前後左右に隙間をおいて対向する。
【0027】
上記構成において、暗い環境下でキーボードのキートップ20を識別して入力したい場合には、入力作業の前に複数のLED51を発光させれば良い。すると、各LED51の光線(図1の矢印参照)は、ライトガイド層50の周面から内部に入射して導光・伝送され、嵌合孔52の周面や光拡散透過模様53から上方のラバー単キー10やキートップ20に照射され、キートップ20表面の模様21を照光する。このキートップ20の模様21の照光により、キートップ20の模様21を正確に把握することができ、キートップ20を正しく選択して打鍵することができる。
【0028】
なお、複数のLED51の光量を適宜調整すれば、キートップ20に照射される光線の明るさを容易に変更することができるので、使用者は周囲の状況に応じた照明環境を得ることができる。
【0029】
上記構成によれば、キートップ20表面の模様21を把握することができ、キートップ20を正確かつ容易に打鍵することができる。また、キートップ20の数に応じてLED51を用意する必要が全くないので、ランニングコストの大幅な削減や構成の著しい簡素化を図ることができる。また、押圧感知層2の下方ではなく、押圧感知層2上にライトガイド層50を積層するので、押圧感知層2の導電ライン5が光線の障害物となることがない。したがって、キートップ20の照光性が低下するのを有効に抑制防止することができる。
【0030】
また、押圧感知層2やライトガイド層50をフレーム30により被覆保護するので、塵埃の堆積や液体の付着に伴う押圧感知層2やライトガイド層50の汚染を確実に防止することが可能になる。さらに、ライトガイド層50の嵌合孔52に嵌合したラバー単キー10が押圧感知層2上に直接支持されるので、ライトガイド層50が押圧感知層2とラバー単キー10との間に介在してキートップ20のクリック感に悪影響を及ぼすのを抑制することが可能になる。
【0031】
次に、図3は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、押圧感知層2とライトガイド層50との間に、複数のLED51の光線を反射する反射層60を介在して積層するようにしている。この反射層60は、押圧感知層2の表面又はライトガイド層50の裏面に、所定のインクがスクリーン印刷されたり、反射性のシートが貼着されることで形成される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0032】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、下方に照射されてきた光線を反射層60により反射して上方のラバー単キー10やキートップ20を照明するので、光線の利用効率を向上させ、キートップ20表面の模様21をより強く照光することができるのは明らかである。
【0033】
次に、図4は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、ライトガイド層50に嵌合孔52を穿孔することなく、ライトガイド層50の表面に複数のラバー単キー10をそれぞれ直接的に接着し、これらライトガイド層50の表面と各ラバー単キー10との対向面に、光線を拡散させる拡散部32を粗く形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0034】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、ライトガイド層50の嵌合孔52を省略するので、光線を連続して導光したり、ライトガイド層50の製造の容易化が大いに期待できるのは明らかである。
【0035】
なお、上記実施形態ではラバー単キー10に光透過性を付与したが、何らこれに限定されるものではなく、例えばラバー単キー10の表面を金型の転写により鏡面加工したり、蒸着等により光反射性を付与して光ムラを防止するようにしても良い。また、ラバー単キー10を弾性の断面略C字形等に形成しても良い。さらに、必要に応じ、フレーム30や案内機構40の一部に光透過性を付与しても良いし、フレーム30や案内機構40に光透過性を付与しなくても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 形態保護プレート
2 押圧感知層
3 メンブレンフィルム
5 導電ライン
10 ラバー単キー(押圧支持体)
20 キートップ
21 模様
30 フレーム(表面保護層)
31 貫通口
32 拡散部
40 案内機構
50 ライトガイド層
51 LED(光源)
52 嵌合孔
53 光拡散透過模様
60 反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップを押圧操作して押圧感知層の接点部に接点機能を発揮させるキーボードであって、
キートップを支持する弾性の押圧支持体と、押圧感知層に積層され、光源からの光線を導光してキートップ方向に照射する光透過性のライトガイド層とを含み、キートップに光透過性の模様を形成し、押圧支持体を押圧感知層とライトガイド層のいずれかに支持させ、光源をライトガイド層の周面に対向させるようにしたことを特徴とするキーボード。
【請求項2】
ライトガイド層に積層されて押圧支持体を露出させる表面保護層と、この表面保護層に取り付けられてキートップを昇降可能に支持する案内機構とを含んでなる請求項1記載のキーボード。
【請求項3】
ライトガイド層に、押圧支持体が嵌合する嵌合孔を穿孔し、この嵌合孔に嵌合した押圧支持体を押圧感知層に支持させた請求項1又は2記載のキーボード。
【請求項4】
押圧支持体に光透過性あるいは光反射性を付与した請求項1、2、又は3記載のキーボード。
【請求項5】
表面保護層と案内機構の少なくともいずれかに光透過性を付与した請求項2、3、又は4記載のキーボード。
【請求項6】
押圧感知層とライトガイド層との間に、光線を反射する反射層を介在した請求項1ないし5いずれかに記載のキーボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−170359(P2010−170359A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12558(P2009−12558)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】