説明

キー装置

【課題】電池交換を容易に行うことが可能なキー装置を提供すること。
【解決手段】ケース60には、基板収容部62の一部を共有するように電池格納部90が形成されるとともに、その電池格納部90には、電池26が格納されている。電池格納部90は、スライダ70側が開口されている。即ち、電池格納部90には、開口部91が形成されるとともに、その開口部91は、四角板状の電池カバー92により閉塞されている。スライダ70が第1の位置に存在しているとき、電池格納部90は、スライダ70によって覆われて視認不能となっている。一方、スライダ70が第2の位置に存在しているとき、電池格納部90(特に電池カバー92)が出現するとともに、その電池カバー92を開けることで電池26の交換が可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キー本体にメカニカルキーが装着されるキー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対応する通信端末(電子キー)が利用されたときに作動制御装置により制御対象の作動を許可する電子キーシステムが提案されている。特許文献1には、対応する電子キー(携帯機)の所持者が車外の所定領域に進入してきた場合に、作動制御装置(車両側の送受信装置)により車載ドアのアンロックを自動的に許可する電子キーシステム(車両用遠隔操作装置)が開示されている。
【0003】
この種の電子キーシステムでは、対応する電子キーの所持者による車両に対する接近を監視するため、車載ドアがロックされている状態において、作動制御装置から車外の所定領域にリクエスト信号が送信される。そして、リクエスト信号が電子キーにより受信されたとき、電子キー毎に個別に設定されたIDコードを含む信号(IDコード信号)が電子キーから送信される。そして、IDコード信号が作動制御装置により受信されたとき、作動制御装置により、IDコード信号に含まれているIDコードと基準IDコードとが一致しているか否かが判断される。そして、両IDコードが一致したとき、作動制御装置により、対応する電子キーが利用された旨が認識されて車載ドアのアンロックが許可される。そして、このように車載ドアのアンロックが許可されている状態でドアアウトサイドハンドルに触れると車載ドアがアンロックされる。
【0004】
このような電子キーシステムに供される電子キーは、作動制御装置から送信されてくるリクエスト信号に応答してIDコード信号を送信するための電源として電池を備えている。このため、電子キーに電池切れが発生しているとき、そのような電子キーを所持して車両に近付いても車載ドアのアンロックが許可されない。
【0005】
そこで、この種の電子キーには、ドアシリンダに適合するメカニカルキーが併用されるとともに、上記のような電池切れ時には、メカニカルキーを利用することで車載ドアをアンロックすることができるようになっている。そして、一般的には、キー本体に電子キーとメカニカルキーとの両者が収容されてなる単一のキー装置がユーザにより携帯されており、このことから、この種のキー装置は携帯機と称されている。
【0006】
尚、キー本体の電池格納部に格納される電池は、電池格納部の開口部を閉塞する電池カバーにより覆われるとともに、その電池カバーを含む電池格納部の全体を覆うようにキー本体にはアウターカバーが取り付けられている。そして、これにより、電池格納部が直接的に外部に露出されることはなく、その結果、キー装置の意匠感が損なわれないように配慮されている。
【特許文献1】特開2002−029385号公報(段落番号0002〜0007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電池を交換する場合、キー本体からアウターカバーを取り外す必要がある。つまり、電池を交換する場合、キー本体からアウターカバーを分離する必要がある。そして、新しい電池に取り替えた後、アウターカバーをキー本体に取り付ける必要がある。このため、電池交換に伴う作業が煩雑なものとなっていた。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、電池交換を容易に行うことが可能なキー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、電池が格納される電池格納部を有するケースと、そのケースに対してスライド可能に支持されるとともに、メカニカルキーが収容されるスライダとにより形成されるキー本体にメカニカルキーが装着されるキー装置であって、スライダは、電池格納部を覆う第1の位置と、電池格納部を出現させる第2の位置とに亘ってスライド可能であることをその要旨としている。
【0010】
同構成によると、スライダが第1の位置から第2の位置までスライドされると、それまでスライダにより覆われていた電池格納部が出現するため、電池交換が可能となる。つまり、ケースからスライダを分離することなく電池交換を行うことが可能である。尚、電池交換に際して、メカニカルキーを収容できる程度の大きさを有するスライダを操作するのであるから、操作がし易い。従って、電池交換を容易に行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキー装置において、スライダが第1の位置に存在しているとき、電池格納部は視認不能であることをその要旨としている。
同構成によると、スライダが第1の位置に存在しているとき、電池格納部は視認不能であるため、キー装置の意匠感が損なわれることがない。従って、見栄えを向上できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のキー装置において、電池格納部の開口部を閉塞する電池カバーを備え、スライダが第2の位置に存在しているとき、電池カバーが出現するとともに、その電池カバーを開けることで電池交換が可能であることをその要旨としている。
【0013】
同構成によると、スライダが第2の位置までスライドされたときに出現する電池カバーを開けることで電池交換が行われる。尚、電池交換が行われない状況下のように電池カバーにより電池格納部の開口部が閉塞されているとき、電池格納部に対する異物の侵入が阻止される。従って、外乱から電池を保護することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のキー装置において、スライダは、第1の位置に存在しているとき、電池を電池格納部内で保持するとともに、第1の位置に存在していないとき、電池格納部内での電池の保持を解除することをその要旨としている。
【0015】
同構成によると、スライダが第1の位置に存在しているとき、電池は電池格納部内で保持されるが、スライダが第1の位置に存在していないとき、電池格納部内での電池の保持が解除される。ここで、例えば、キー本体に適合する正規のメカニカルキーが装着されていることを条件としてスライダが第2の位置から第1の位置までスライド可能となる構成を採用すれば、正規のメカニカルキーが装着されていないとき、スライダは第1の位置までスライドされず、よって、このとき、電池格納部内での電池の保持が解除される。このため、第三者のように正規のメカニカルキーを持たない者がキー装置(この場合、正規のメカニカルキーは未装着)を利用しようとも、電池が脱落するのではキー装置としての機能が損なわれることから、ユーザ本人にとって都合がよい。従って、セキュリティレベルを向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
本発明によれば、電池交換を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を自動車の利用に供されるキー装置に具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態の自動車には、電子キーシステム1が適用されている。電子キーシステム1は、自動車の所有者によって所持される携帯機2と、自動車側に設けられるセキュリティ装置3とを備えるとともに、携帯機2とセキュリティ装置3との間での双方向通信が可能である。
【0018】
携帯機2は、無線通信による受信機能及び無線通信による送信機能を有するとともに、受信アンテナ21、受信回路22、マイコン23、送信回路24、送信アンテナ25、電池26を備えている。受信アンテナ21は、セキュリティ装置3から送信されてくるリクエスト信号を受信するための媒体である。受信回路22は、受信アンテナ21により受信されたリクエスト信号を復調して受信信号を生成するとともに、受信信号をマイコン23に出力する。
【0019】
マイコン23は、不揮発性のメモリ23aを備えている。メモリ23aには、携帯機2毎に個別に設定されたIDコード(携帯機2のIDコード)が記憶されている。マイコン23は、受信回路22から受信信号が入力されたとき、リクエスト信号に応答するために、携帯機2のIDコードを含む信号(IDコード信号)を生成するとともに、IDコード信号を送信回路24に出力する。送信回路24は、マイコン23から入力されたIDコード信号を所定周波数(本実施形態では300MHz)の電波に変調する。送信アンテナ25は、送信回路24により変調されたIDコード信号を送信するための媒体である。
【0020】
電池26は、リクエスト信号に応答してIDコード信号を送信するための電源として機能するボタン型電池(一次電池)により構成されている。
セキュリティ装置3は、無線通信による送信機能及び無線通信による受信機能を有するとともに、送信回路31、送信アンテナ32、受信アンテナ33、受信回路34、照合制御装置35を備えている。送信回路31は、照合制御装置35から入力されるリクエスト信号を所定周波数(本実施形態では134KHz)の電波に変調する。送信アンテナ32は、送信回路31により変調されたリクエスト信号を送信するための媒体である。
【0021】
ここで、図2に2点鎖線で示すように、リクエスト信号は、車外においてドアアウトサイドハンドルから約1m離れた地点まで達する領域(車外の所定領域A32)の範囲内に送信される。その結果、車外の所定領域A32の範囲内において、携帯機2とセキュリティ装置3との間での双方向通信が可能となる。つまり、リクエスト信号は、携帯機2とセキュリティ装置3との間での双方向通信を確立するためのトリガ信号である。これにより、車外の所定領域A32の範囲内にリクエスト信号が送信されている状態で、その範囲内に携帯機2が持ち込まれたとき、携帯機2によりリクエスト信号が受信されて同携帯機2からIDコード信号が送信されることになる。
【0022】
受信アンテナ33は、リクエスト信号に応答して携帯機2から送信されてくるIDコード信号を受信するための媒体である。受信回路34は、受信アンテナ33により受信されたIDコード信号を復調して受信信号を生成するとともに、受信信号を照合制御装置35に出力する。
【0023】
照合制御装置35は、不揮発性のメモリ35aを備えている。メモリ35aには、対応する携帯機2のIDコードと同一のIDコード(基準IDコード)が記憶されている。照合制御装置35は、対応する携帯機2の所持者による自動車に対する接近(車外の所定領域A32に対する進入)を監視するため、車載ドアがロックされている状態において、送信回路31にリクエスト信号を出力する。つまり、この場合、照合制御装置35は、車外通信制御を実行する。その結果、送信アンテナ32からリクエスト信号が送信される。
【0024】
照合制御装置35は、車外通信制御に基づいて、受信回路34から受信信号が入力されたとき、受信信号に含まれているIDコードと基準IDコードとが一致しているか否かを判断する。つまり、この場合、照合制御装置35は、IDコード照合を実行する。そして、照合制御装置35は、IDコード照合により両IDコードが一致したとき、対応する携帯機2が利用された旨を認識するとともに、この場合、ドア制御装置41にドアアンロック許可信号を出力する。その結果、このように車載ドアのアンロックが許可されている状態でドアアウトサイドハンドルに触れると、ドア制御装置41により車載ドアがアンロックされる。
【0025】
このように電子キーシステム1が適用されている自動車を利用する場合、携帯機2を電子キーとして利用することで乗車時における操作が簡略化されるが、携帯機2に内蔵されている電池26が消耗している場合、携帯機2を電子キーとして利用することができない。そこで、このような電池切れ時においても自動車を利用できるようにするために、携帯機2には、メカニカルキーが設けられている。
【0026】
以下、メカニカルキーに関連する本実施形態の特徴点について説明する。
図3〜図5に示すように、キー本体50は、合成樹脂よりなるケース60と、そのケース60に対してスライド可能に支持されるスライダ70とにより四角筒状に形成されている。ケース60においてスライダ70に対向する側面には、半球状の嵌合突起61が設けられるとともに、スライダ70においてケース60に対向する側面には、嵌合突起61が嵌合される嵌合凹部71が設けられている。そして、スライダ70は、図3に示すように、嵌合突起61が嵌合凹部71に嵌合されている第1の位置と、図4や図5に示すように、嵌合突起61が嵌合凹部71に嵌合されていない第2の位置との間に亘ってスライド可能となっている。
【0027】
ケース60の内部には、基板収容部62が形成されるとともに、その基板収容部62には、図3〜図5では割愛されているが、受信アンテナ21、受信回路22、マイコン23、送信回路24、送信アンテナ25、電池26が実装されたプリント基板(図示略)が収容されている。つまり、基板収容部62には、携帯機2を電子キーとして利用するために必要な各種電装品が収容されている。また、ケース60には、複数(本実施形態では3つ)のピンタンブラ63〜65と、それらピンタンブラ63〜65をスライダ70側に向かって付勢する3つのスプリング66〜68とが設けられている。
【0028】
スライダ70の内部には、キー収容部72が形成されるとともに、そのキー収容部72には、メカニカルキー80のキープレート81が収容されている。また、スライダ70には、ケース60に設けられるピンタンブラ63〜65と同じ数(この場合、3つ)のピンタンブラ73〜75が設けられている。尚、キープレート81には、ピンタンブラ73〜75の先端部が係合される係合穴83〜85が設けられている。
【0029】
そして、図3に示すように、ピンタンブラ73〜75は、スライダ70が第1の位置に存在しているとき、先端部がキープレート81の係合穴83〜85に係合されるとともに、基端面がケース60の側面に当接されている。尚、このとき、ピンタンブラ63〜65は、スプリング66〜68の付勢力により、その先端面がスライダ70の側面に弾性的に当接されている。また、このとき、スライダ70のキー受部76の端面76aは、ケース60の一端面60aに対して面一となっている。言い換えると、スライダ70が第1の位置に存在しているとき、キー本体50は、メカニカルキー80のキー把持部82と協働して概ね直方体の外形形状をなしている。
【0030】
一方、図4に示すように、ピンタンブラ73〜75は、スライダ70が第2の位置に存在するとともに、キー収容部72にキープレート81が収容されているとき、先端部が係合穴83〜85に係合されるとともに、これにより、基端面がスプリング66〜68の付勢力に抗する態様でピンタンブラ63〜65の先端面に当接されている。尚、このとき、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面は、ケース60とスライダ70との境界面と一致しており、これにより、ケース60に対するスライダ70のスライドが許容されている。
【0031】
他方、図5に示すように、ピンタンブラ73〜75は、スライダ70が第2の位置に存在するとともに、キー収容部72にキープレート81が収容されていないとき、基端面がスプリング66〜68の付勢力によりピンタンブラ63〜65の先端面にて押圧されるとともに、これにより、先端部がキー収容部72に臨む位置まで進出されている。尚、このとき、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面は、ケース60とスライダ70との境界面と一致しておらず、これにより、ケース60に対するスライダ70のスライドが阻止されている。また、このとき、キー受部76の端面76aは、ケース60の一端面60aに対して面一となっていない。言い換えると、スライダ70が第2の位置に存在しているとき、キー本体50は、直方体ではなく、キー受部76の半分以上がケース60の一端面60aから突出された外形形状をなしている。
【0032】
図6及び図7に示すように、ケース60には、前記基板収容部62の一部を共有するように電池格納部90が形成されるとともに、その電池格納部90には、前記電池26が格納されている。電池格納部90は、スライダ70側が開口されている。即ち、電池格納部90には、開口部91が形成されるとともに、その開口部91は、四角板状の電池カバー92により閉塞されている。
【0033】
尚、基板収容部62に収容される前記プリント基板には、電池26からマイコン23等の電装品に対する給電を許容するべく、弾性を有する給電ターミナル(図示略)が設けられている。そして、電池格納部90に電池26が格納された後、電池カバー92によって開口部91が閉塞され、さらに、スライダ70が図6に示すように第1の位置までスライドされているとき、電池26は、電池カバー92によって開口部91側から給電ターミナルに対して押し付けられている。従って、このとき、電池26と給電ターミナルとが電気的に接続されるのであるが、それに際して電池26の電極と給電ターミナルとが弾性的に接触されるようになっている。
【0034】
そして、図6に示すように、スライダ70が第1の位置に存在しているとき、電池格納部90は、スライダ70によって覆われて視認不能となっている。そして、このとき、上記したように電池26は、電池カバー92を介して間接的にスライダ70によって電池格納部90内で保持されている。
【0035】
一方、図7に示すように、スライダ70が第2の位置に存在しているとき、電池格納部90(特に電池カバー92)が出現するとともに、電池格納部90内での電池26の保持が解除されている。そして、このとき、電池カバー92を開けることで電池26の交換が可能となっている。
【0036】
次に、本実施形態の作用について説明する。
さて、メカニカルキー80がキー本体50から取り外されている状態では、図5に示すように、スライダ70が第2の位置に存在している。そして、このとき、スプリング66〜68の付勢力によりピンタンブラ73〜75の先端部がキー収容部72に臨む位置まで進出されている。そして、図5に示す状態からメカニカルキー80をキー本体50に装着する場合、キープレート81をキー収容部72に挿入する。
【0037】
すると、その挿入に伴ってキープレート81がピンタンブラ73〜75の先端部に干渉することになるが、キープレート81を挿入するときの力がスプリング66〜68の付勢力に勝って、これにより、スプリング66〜68の付勢力に抗してピンタンブラ73〜75がキープレート81の表面形状に応じて退避させられる。尚、キープレート81の挿入に伴ってスライダ70がケース60に対してスライドされようとするが、ピンタンブラ63〜65がケース60の壁部に干渉することでそれが阻止される。
【0038】
そして、キープレート81の挿入が進んで、やがてキープレート81の先端部がキー収容部72の最奥部に達するようになったとき、図4に示すように、係合穴83〜85にピンタンブラ73〜75の先端部が係合されるようになる。そして、このとき、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致させられて、これにより、ケース60に対するスライダ70のスライドが許容される。従って、このようになって以後、キープレート81の挿入と同じ方向にメカニカルキー80を押し込むことで、メカニカルキー80とスライダ70とが一体的にケース60に対してスライドされることになる。
【0039】
ここで、ピンタンブラ63〜65,73〜75と係合穴83〜85との両者は、メカニカルキー毎に個別に設定されたパターンで設けられている。本実施形態では、係合穴83〜85の深さのパターンがメカニカルキー毎に個別に設定されるとともに、係合穴83〜85の深さに応じてピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面の位置が決定されるようになっている。そして、キー本体50に適合する正規のメカニカルキー80が装着される場合に限り、上記のようにピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致するようになっている。要するに、正規のメカニカルキー80が装着されるとき、その装着が許容されるとともに、別のメカニカルキーが装着されるとき、その装着が阻止されるようになっている。
【0040】
尚、図4に示すように、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致しているとき、ピンタンブラ63〜65,73〜75は、キー本体50に対するメカニカルキー80の装着を許容する装着許容位置に存在していると言える。一方、図5に示すように、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致していないとき、ピンタンブラ63〜65,73〜75は、キー本体50に対するメカニカルキーの装着を阻止する装着阻止位置に存在していると言える。つまり、本実施形態においてピンタンブラ63〜65,73〜75は、装着許容位置と装着阻止位置とに亘って変位可能な係合部材に相当する。
【0041】
また、本実施形態において係合穴83〜85は、ピンタンブラ73〜75が係合されることでピンタンブラ63〜65,73〜75を装着阻止位置から装着許容位置まで変位させる被係合部に相当する。そして、本実施形態では、ピンタンブラ63〜65,73〜75と係合穴83〜85とにより、キー本体50に装着されるメカニカルキーがキー本体50に適合するものであるか否かを特定するための指標となる指標手段が構成されている。別の言い方をすると、ピンタンブラ63〜65,73〜75と係合穴83〜85とにより、キー本体50に対するメカニカルキーの照合を機械的に行うための照合機構が構成されている。
【0042】
ここで、話を戻すと、上記のようにしてメカニカルキー80を押し込んでゆくと、やがてスライダ70の先端面が嵌合突起61に干渉することになるが、メカニカルキー80をさらに押し込むと、このような押し込み力により嵌合突起61の周辺部分やスライダ70の先端部分が撓むことでメカニカルキー80の押し込みが許容される。そして、メカニカルキー80をさらに押し込むと、図3に示すように、スライダ70が第1の位置に存在するようになり、このとき、嵌合凹部71に嵌合突起61が嵌合されるとともに、それに伴ってケース60やスライダ70の撓みが解除される。
【0043】
その結果、このようにしてキー本体50に対するメカニカルキー80の装着が完了するのであるが、ここに装着途中においてケース60やスライダ70が撓んでいるときとそうでないときとでは、ケース60とスライダ70との間に生じる摺動抵抗が異なる。従って、このような摺動抵抗の違いが操作者が受ける感触として現れ、結果として、メカニカルキー80の装着が完了されたときには操作者に節度感が付与されることになる。
【0044】
尚、図4にはスライダ70が第2の位置に存在している様子が示されているが、この第2の位置は、スライダ70にあってケース60に対するスライドが開始されてキー本体50に対するメカニカルキーの装着が開始されるスライド開始位置に他ならない。一方、図3にはスライダ70が第1の位置に存在している様子が示されているが、この第1の位置は、スライダ70にあってケース60に対するスライドが終了されてキー本体50に対するメカニカルキーの装着が完了されるスライド終了位置に他ならない。つまり、スライダ70は、図4に示すスライド開始位置(第2の位置)と図3に示すスライド終了位置(第1の位置)とに亘ってスライド可能である。
【0045】
そして、本実施形態では、嵌合突起61と嵌合凹部71とにより、スライダ70がスライド開始位置からスライド終了位置までスライドされたときに節度感を付与する節度付与手段が構成されている。また、図3に示すように、嵌合突起61が嵌合凹部71に嵌合されている状態からスライダ70を装着方向とは反対の方向にスライドさせようとするとき、当然のこととして、それらの嵌合状態の解除に値する操作力が必要である。つまり、このような操作力が付与されない限り、スライダ70が勝手に反対方向にスライドされることはない。言い換えると、本実施形態では、嵌合突起61と嵌合凹部71とにより、スライド終了位置に存在するスライダ70をスライド終了位置で保持する保持手段が構成されていると言える。
【0046】
ちなみに、図3に示すように、スライダ70がスライド終了位置に存在しているとき、ピンタンブラ63〜65は、その先端面がスプリング66〜68の付勢力によりスライダ70の側面に弾性的に当接されている。このため、このような状態からスライダ70を装着方向とは反対の方向にスライドさせようとするとき、かかる当接力に応じた摺動抵抗が発生する。従って、このことによっても、スライダ70が勝手に反対方向にスライドされることが回避される。つまり、本実施形態では、ピンタンブラ63〜65とスプリング66〜68とによっても保持手段が構成されていると言える。
【0047】
また、図3に示すように、キー本体50に対するメカニカルキー80の装着が完了されている状態にあってピンタンブラ73〜75は、その先端部が係合穴83〜85に係合されるとともに、その基端面がケース60の側面に当接されている。従って、これにより、メカニカルキー80がスライダ70から脱落しないようになっている。つまり、本実施形態においてピンタンブラ73〜75は、キー本体50に対する装着が完了されたメカニカルキー80がスライダ70から脱落するのを防ぐ脱落防止手段に相当する。
【0048】
そして、このようにしてメカニカルキー80の装着が完了したとき、図6に示すように、電池格納部90がスライダ70によって覆われて視認不能となる。そして、このとき、電池カバー92によって電池26が電池格納部90内で保持される。つまり、この場合、電池26からマイコン23等の電装品に対する給電が許容されることとなる。そして、これにより、携帯機2は、セキュリティ装置3から送信されてくるリクエスト信号を受信可能とするための準備が調えられる。つまり、携帯機2は、電子キーとしての機能を有効にするための準備が調えられる。
【0049】
そして、車外の所定領域A32にリクエスト信号が送信されている状態で、正規のメカニカルキー80が装着されている携帯機2の所持者が自動車に近付いてきて車外の所定領域A32に進入すると、携帯機2によりリクエスト信号が受信される。すると、リクエスト信号に応答して携帯機2からIDコード信号が送信される。
【0050】
そして、このIDコード信号がセキュリティ装置3により受信されたとき、照合制御装置35は、IDコード照合を実行する。そして、照合制御装置35は、受信回路34から入力される受信信号に基準IDコードと一致するIDコードが含まれているとき、対応する携帯機2が利用された旨を認識する。従って、この場合、車載ドアのアンロックが許可されるとともに、ドアアウトサイドハンドルを操作して車載ドアを開閉することで乗車が可能となる。
【0051】
ところで、電池切れに伴って電池26を交換する場合、スライダ70が図6に示す第1の位置から図7に示す第2の位置までスライドされる。すると、それまでスライダ70によって覆われていた電池格納部90(特に電池カバー92)が出現するとともに、電池格納部90内での電池26の保持が解除される。そして、電池カバー92を開けて電池格納部90内から古い電池26が取り出されるとともに、それに替えて新しい電池26が電池格納部90に格納される。そして、電池カバー92によって開口部91を閉塞するとともに、上記の要領でスライダ70が図7に示す第2の位置から図6に示す第1の位置までスライドされることでもって電池交換が完了する。
【0052】
次いで、正規のメカニカルキー80とは異なる別のメカニカルキー(キー本体50に適合しないメカニカルキー)がキー本体50に装着される場合の動作について説明する。
この場合、キープレートがキー収容部72に挿入されて、その先端部がキー収容部72の最奥部に達する段階までは、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着される場合と同様に推移する。しかし、この場合、キープレートに係合穴83〜85と同様の係合穴が設けられるにしろ、その係合穴の深さのパターンは正規のメカニカルキー80のそれとは異なるものである。従って、この場合、係合穴にピンタンブラ73〜75の先端部が係合されるにしろ、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致することはない。要するに、この場合、メカニカルキーの装着が阻止されることになる。
【0053】
そうすると、スライダ70が図6に示す第1の位置までスライドされないため、電池格納部90が露出したままになるとともに、スライダ70による電池格納部90内での電池26の保持も当然行われない。つまり、この場合、開口部91が下を向くように携帯機2が配置されたとき、電池カバー92とともに電池26がケース60から脱落する。要するに、この場合、電池26からマイコン23等の電装品に対する給電が不安定になることに起因して、携帯機2によってリクエスト信号を受信できなかったり、或いは携帯機2からIDコード信号を送信できなくなったりし、よって、携帯機2にあって電子キーとしての機能が損なわれる。
【0054】
従って、車外の所定領域A32にリクエスト信号が送信されている状態で、正規のメカニカルキー80が装着されていない携帯機2の所持者が自動車に近付いてきて車外の所定領域A32に進入しても、携帯機2によりリクエスト信号が受信されなかったり、或いは携帯機2からIDコード信号が送信されなかったりする。その結果、車載ドアのアンロックが許可されることはない。
【0055】
以上、詳述したように本実施形態によれば、次のような作用、効果を得ることができる。
(1)スライダ70が図6に示す第1の位置から図7に示す第2の位置までスライドされると、それまでスライダ70により覆われていた電池格納部90が出現するため、電池交換が可能となる。つまり、ケース60からスライダ70を分離することなく電池交換を行うことが可能である。尚、電池交換に際して、メカニカルキー80を収容できる程度の大きさを有するスライダ70を操作するのであるから、操作がし易い。従って、電池交換を容易に行うことができる。
【0056】
(2)スライダ70が図6に示す第1の位置に存在しているとき、電池格納部90は視認不能であるため、携帯機2の意匠感が損なわれることがない。従って、見栄えを向上できる。
【0057】
(3)スライダ70が図7に示す第2の位置までスライドされたときに出現する電池カバー92を開けることで電池交換が行われる。尚、電池交換が行われない状況下のように電池カバー92により電池格納部90の開口部91が閉塞されているとき、電池格納部90に対する異物の侵入が阻止される。従って、外乱から電池26を保護することができる。
【0058】
(4)スライダ70が図6に示す第1の位置に存在しているとき、電池26は電池格納部90内で保持されるが、スライダ70が図6に示す第1の位置に存在していないとき、電池格納部90内での電池26の保持が解除される。
【0059】
ここで、正規のメカニカルキー80が装着されていることを条件としてスライダ70が図7に示す第2の位置から図6に示す第1の位置までスライド可能となる構成を採用している。これにより、正規のメカニカルキー80が装着されていないとき、スライダ70は図6に示す第1の位置までスライドされず、よって、このとき、電池格納部90内での電池26の保持が解除される。このため、第三者のように正規のメカニカルキー80を持たない者が携帯機2(この場合、正規のメカニカルキー80は未装着)を利用しようとも、電池26が脱落するのでは携帯機2にあって電子キーとしての機能が損なわれることから、ユーザ本人にとって都合がよい。従って、セキュリティレベルを向上できる。
【0060】
(5)使用頻度が低いとは言えども、電池切れ時にはメカニカルキー80が必要である。しかし、使用頻度が低いという理由でメカニカルキー80が取り外された携帯機2が所持される可能性がある。そうすると、電池切れ時のようないざというときにメカニカルキー80を利用できなくなってしまう。ここに、本実施形態では、メカニカルキー80が装着されていない携帯機2では、電池26が脱落して携帯機2が有効に機能しなくなるため、そのような事態にならないようにするべく、ユーザ本人に対してメカニカルキー80を装着する習慣を付けさせることができる。言い換えると、ユーザ本人に対してメカニカルキー80の重要性を再認識させることができる。
【0061】
(6)ピンタンブラ63〜65,73〜75及び係合穴83〜85を備えることで、正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着される場合と、別のメカニカルキーがキー本体50に装着される場合とを峻別することが可能となる。このため、携帯機2から正規のメカニカルキー80が取り外されて別のメカニカルキーが装着されるようなことが起こっても、そのことに直ちに気付くことができるようになる。従って、セキュリティレベルを向上することができる。
【0062】
(7)正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されるとき、その装着がピンタンブラ63〜65,73〜75及び係合穴83〜85により許容されるとともに、別のメカニカルキーがキー本体50に装着されるとき、その装着がピンタンブラ63〜65,73〜75及び係合穴83〜85により阻止される。つまり、正規のメカニカルキー80だけがキー本体50に装着できる唯一のキーである。従って、メカニカルキーがキー本体50に装着されているか否かを一瞥するだけで、キー本体50に装着されるメカニカルキーがキー本体50に適合するものであるか否かを容易に特定することができる。
【0063】
(8)正規のメカニカルキー80がキー本体50に装着されるとき、そのメカニカルキー80の係合穴83〜85にピンタンブラ73〜75が係合されることで全てのピンタンブラ63〜65,73〜75が装着阻止位置から装着許容位置まで変位される。そして、これにより、キー本体50に対するメカニカルキー(この場合、正規のメカニカルキー80)の装着が許容される。一方、別のメカニカルキーがキー本体50に装着されるとき、装着許容位置まで変位されないピンタンブラ(63〜65,73〜75のいずれか)が存在する。そして、これにより、キー本体50に対するメカニカルキー(この場合、別のメカニカルキー)の装着が阻止される。従って、メカニカルキーがキー本体50に装着されているか否かを一瞥するだけで、キー本体50に装着されるメカニカルキーがキー本体50に適合するものであるか否かを容易に特定することができる。
【0064】
(9)メカニカルキー80をスライダ70に収容するとともに、そのスライダ70をケース60に対してスライド開始位置からスライド終了位置までスライドさせることでキー本体50に対するメカニカルキー80の装着が完了する。ここに、このようにキー本体50にメカニカルキー80を装着する際において、メカニカルキー80を収容できる程度の大きさを有するスライダ70を操作するのであるから、操作がし易い。従って、キー本体50にメカニカルキー80を装着するときの操作性を向上することができる。
【0065】
(10)スライダ70がスライド開始位置からスライド終了位置までスライドされたとき、節度感が付与される。そして、これにより、キー本体50に対するメカニカルキー80の装着が完了された旨が報知される。従って、キー本体50にメカニカルキー80を確実に装着させることができる。
【0066】
(11)嵌合突起61が嵌合凹部71に嵌合されていること及びピンタンブラ63〜65の先端面がスライダ70の側面に弾性的に当接されていることにより、スライダ70はスライド終了位置で保持される。従って、キー本体50に対するメカニカルキー80の装着状態を好適に維持することができる。
【0067】
(12)メカニカルキー80の装着後においてメカニカルキー80の脱落が防止される。従って、キー本体50に対するメカニカルキー80の装着状態を好適に維持することができる。
【0068】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・電池カバー92をねじ等の固定手段によりケース60に固定する第1の構成を採用してもよい。このように構成すると、メカニカルキー80が装着されていない場合でも、電池26は、電池カバー92によって電池格納部90内で保持されるため脱落しない。そうすると、以下のような場合にメリットがある。即ち、他人に携帯機2を預けて駐車を依頼するような場合、その者にグローブボックスを開けられないようにするために、メカニカルキー80を取り外した携帯機2をその者に預けることがある。そして、その者が駐車を行う場合、車載ドアがアンロックされる必要があるが、この第1の構成であれば、メカニカルキー80が装着されていない場合でも、電池26が脱落しないので、携帯機2を電子キーとして有効に機能させることができる。
【0069】
・電池カバー92を開口部91に圧入する第2の構成を採用してもよい。この場合、電池カバー92の外形寸法を開口部91の寸法よりも若干大きくするとともに、ケース60や電池カバー92の弾性力に抗して電池カバー92を開口部91に圧入すればよい。このように構成すれば、上記した第1の構成を採用する場合と同様の作用、効果を得ることができる。
【0070】
・上記した第1の構成や第2の構成とは異なり、電池カバー92は、ケース60に対して必ずしも固定されていなくてもよく、開口部91を閉塞する目的で電池26とスライダ70との間に介在されていてもよい。この場合、電池カバー92の外形寸法を開口部91の寸法と同一又はそれよりも若干小さくすればよい。このように構成すれば、スライダ70を図6に示す第1の位置から図7に示す第2の位置までスライドさせた後、開口部91が下を向くように携帯機2を配置することで電池カバー92及び電池26が落下する。従って、電池カバー92を開けるための作業が簡単であり、よって電池交換を容易に行うことができる。
【0071】
・電池カバー92は必須ではなく割愛されてもよい。この場合、スライダ70が図6に示す第1の位置に存在しているとき、電池26が、直接的にスライダ70によって給電ターミナルに対して押し付けられて電池格納部90内で保持されるようにすることが好ましい。
【0072】
・係合穴83〜85の深さのパターンをメカニカルキー毎に個別に設定する構成に代えて又は加えて、係合穴83〜85の径の大きさのパターンをメカニカルキー毎に個別に設定する構成を採用してもよい。この場合、係合穴83〜85に係合されるピンタンブラ73〜75の径の大きさ(太さ)を係合穴83〜85の径の大きさと等しくなるように設定すればよい。
【0073】
そうすれば、正規のメカニカルキー80が装着されるとき、係合穴83〜85の径の大きさとピンタンブラ73〜75の径の大きさとが一致することで、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致して、その結果、キー本体50に対するそのメカニカルキー80の装着が許容される。一方、別のメカニカルキーが装着されるとき、係合穴の径の大きさとピンタンブラ73〜75の径の大きさとが一致しないので、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致せず、その結果、キー本体50に対するそのメカニカルキーの装着が阻止される。
【0074】
尚、係合穴83〜85の深さのパターンをメカニカルキー毎に個別に設定するとともに、係合穴83〜85の径の大きさのパターンをメカニカルキー毎に個別に設定する構成を採用してもよい。この場合、係合穴やピンタンブラの数が少なくても多くのパターンが生まれる。例えば、係合穴の径の大きさに一致する太さのピンタンブラであっても、それが係合穴に係合されたところで、ピンタンブラ63〜65とピンタンブラ73〜75との境界面が、ケース60とスライダ70との境界面と一致するとは限らない。つまり、これにより装着が阻止されるメカニカルキーは、正規のメカニカルキー80とは異なる別のメカニカルキーということになる。従って、セキュリティレベルを向上するにあたり、このような指標手段(照合機構)の部品点数を少なくしても足りるため、携帯機2の小型軽量化に貢献できる。
【0075】
・キープレート81に対する係合穴83〜85の形成態様は、メカニカルキー毎に個別に設定されるものであればどのようなものであってもよい。例えば、キープレート81に設けられる係合穴の数は、単数或いは複数のいずれであってもよい。
【0076】
そして、単一の係合穴を設けるのであれば、上記のように深さ及び径の大きさの少なくとも一方をメカニカルキー毎に個別に設定してもよいし、それに代えて又は加えて係合穴を設ける位置をメカニカルキー毎に個別に設定してもよい。
【0077】
また、複数の係合穴を設けるのであれば、その数をメカニカルキー毎に個別に設定してもよい。或いは、同じ数の係合穴を設けるのであれば、上記のように深さ及び径の大きさの少なくとも一方をメカニカルキー毎に個別に設定してもよいし、それに代えて又は加えて係合穴を設ける位置をメカニカルキー毎に個別に設定してもよい。
【0078】
要は、正規のメカニカルキー80が装着される場合、その装着が許容されるとともに、別のメカニカルキーが装着される場合、その装着が阻止されるように係合穴とピンタンブラとが協働している構成は全て本発明に含まれる。
【0079】
・ピンタンブラに代えて板タンブラやボールを係合部材として用いても差し支えない。勿論、ピンタンブラ、板タンブラ、ボール等の複数種の係合部材を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
・メカニカルキー80を縦置き状態でスライダ70に収容する構成、メカニカルキー80を横置き状態でスライダ70に収容する構成、メカニカルキー80を斜め置き状態でスライダ70に収容する構成、のいずれを採用してもよい。ただし、これらの置き方毎に係合穴83〜85の形成位置を異ならせることで、ピンタンブラ73〜75が係合穴83〜85に係合されるようにする必要があることは勿論である。
【0081】
・メカニカルキーには、ドア開閉用のドアシリンダ、エンジン始動用のキーシリンダ、グローブボックスのシリンダに適合するようにキー山が存在している。しかも、このキー山は、メカニカルキー毎に個別に設定されるものである。従って、このようなキー山間に存在する溝に対してピンタンブラ73〜75が係合される構成を採用してもよい。つまり、既存のキー山間の溝を被係合部として利用してもよい。そうすれば、既存のメカニカルキーに対して係合穴を設けなくても足りる。
【0082】
・前記実施形態では、ケース60に嵌合突起61を設けるとともに、スライダ70に嵌合凹部71を設けたが、スライダ70に嵌合突起を設けるとともに、ケース60に嵌合凹部を設けるようにしてもよい。
【0083】
或いは、複数の嵌合突起と複数の嵌合凹部とが設けられる構成であってもよい。この場合、全ての嵌合突起がケース60及びスライダ70の一方(例えばケース60)に設けられるとともに、全ての嵌合凹部がケース60及びスライダ70の他方(この場合、スライダ70)に設けられる構成に限定されない。例えば、2つの嵌合突起と2つの嵌合凹部が設けられる構成において、1つの嵌合突起がケース60に設けられるとともに、それが嵌合される嵌合凹部がスライダ70に設けられ、さらに、別の嵌合突起がスライダ70に設けられるとともに、それが嵌合される嵌合凹部が60に設けられる構成を採用してもよい。
【0084】
・保持手段として機能する嵌合突起61及び嵌合凹部71は必ずしも必要ではなく、割愛することも可能である。この理由は、ピンタンブラ63〜65とスプリング66〜68とにより構成されている保持手段によってスライド終了位置に存在するスライダ70をスライド終了位置で保持することができるからである。ただし、前記実施形態のように2種類の保持手段が設けられる構成にあっては、キー本体50に対するメカニカルキー80の装着状態の維持が確実に行われて好適である。
【0085】
さらに、上記実施形態より把握される技術的思想について記載する。
〔1〕電池が格納される電池格納部を有するケースと、そのケースに対してスライド可能に支持されるとともに、メカニカルキーが収容されるスライダとにより形成されるキー本体にメカニカルキーが装着されるキー装置であって、スライダは、電池格納部を覆う隠蔽位置と、電池格納部を出現させる出現位置とに亘ってスライド可能であることを特徴とするキー装置。
【0086】
同構成によると、スライダが隠蔽位置から出現位置までスライドされると、それまでスライダにより覆われていた電池格納部が出現するため、電池交換が可能となる。つまり、ケースからスライダを分離することなく電池交換を行うことが可能である。尚、電池交換に際して、メカニカルキーを収容できる程度の大きさを有するスライダを操作するのであるから、操作がし易い。従って、電池交換を容易に行うことができる。
【0087】
〔2〕電池が格納される電池格納部を有するケースと、そのケースに対してスライド可能に支持されるとともに、メカニカルキーが収容されるスライダとにより形成されるキー本体にメカニカルキーが装着されるキー装置であって、スライダは、電池を電池格納部内で保持する電池保持位置と、電池格納部内での電池の保持を解除する電池保持解除位置とに亘ってスライド可能であることを特徴とするキー装置。
【0088】
同構成によると、スライダが電池保持位置から電池保持解除位置までスライドされると、それまでスライダにより電池格納部内で保持されていた電池の保持が解除されるため、電池交換が可能となる。つまり、ケースからスライダを分離することなく電池交換を行うことが可能である。尚、電池交換に際して、メカニカルキーを収容できる程度の大きさを有するスライダを操作するのであるから、操作がし易い。従って、電池交換を容易に行うことができる。
【0089】
〔3〕電池が格納される電池格納部を有するケースと、そのケースに対してスライド可能に支持されるとともに、メカニカルキーが収容されるスライダとにより形成されるキー本体にメカニカルキーが装着されるキー装置であって、スライダは、電池格納部内からの電池の脱落を阻止する電池脱落阻止位置と、電池格納部内からの電池の脱落を許容する電池脱落許容位置とに亘ってスライド可能であることを特徴とするキー装置。
【0090】
同構成によると、スライダが電池脱落阻止位置から電池脱落許容位置までスライドされると、それまでスライダにより電池格納部内からの脱落が阻止されていた電池の脱落が許容されるため、電池交換が可能となる。つまり、ケースからスライダを分離することなく電池交換を行うことが可能である。尚、電池交換に際して、メカニカルキーを収容できる程度の大きさを有するスライダを操作するのであるから、操作がし易い。従って、電池交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】電子キーシステムが適用されている本実施形態の自動車の構成を示すブロック図。
【図2】車外の所定領域を示す説明図。
【図3】キー本体に対するメカニカルキーの装着が完了されている状態を示す携帯機の断面図。
【図4】キー本体に対してメカニカルキーが装着される場合の途中の状態を示す携帯機の断面図。
【図5】キー本体からメカニカルキーが取り外されている状態を示す携帯機の断面図。
【図6】キー本体に対するメカニカルキーの装着が完了されている状態を示すとともに、電池格納部が視認不能であることを示す携帯機の斜視図。
【図7】キー本体からメカニカルキーが取り外されている状態を示すとともに、電池格納部が出現していることを示す携帯機の分解斜視図。
【符号の説明】
【0092】
2…携帯機(キー装置)、26…電池、50…キー本体、60…ケース、70…スライダ、80…メカニカルキー、90…電池格納部、91…開口部、92…電池カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池が格納される電池格納部を有するケースと、そのケースに対してスライド可能に支持されるとともに、メカニカルキーが収容されるスライダとにより形成されるキー本体にメカニカルキーが装着されるキー装置であって、
スライダは、電池格納部を覆う第1の位置と、電池格納部を出現させる第2の位置とに亘ってスライド可能であることを特徴とするキー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のキー装置において、
スライダが第1の位置に存在しているとき、電池格納部は視認不能であることを特徴とするキー装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のキー装置において、
電池格納部の開口部を閉塞する電池カバーを備え、
スライダが第2の位置に存在しているとき、電池カバーが出現するとともに、その電池カバーを開けることで電池交換が可能であることを特徴とするキー装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のキー装置において、
スライダは、第1の位置に存在しているとき、電池を電池格納部内で保持するとともに、第1の位置に存在していないとき、電池格納部内での電池の保持を解除することを特徴とするキー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−277928(P2007−277928A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105530(P2006−105530)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】