説明

ギプス用不織布

【課題】ギプスを着用した際に肌に硬くなく、ソフトで蒸れ感のないクッション材となるギプス用不織布を提供する。
【解決手段】熱可塑性短繊維と熱接着性複合短繊維との混繊比率が10/90〜40/60である疎水性短繊維層5aと、親水性短繊維と熱接着性複合短繊維及び熱可塑性短繊維よりなる疎水性短繊維との混繊比率が40/60〜90/10である親水性短繊維層5bとを30/70〜75/25の比率で積層し、目付質量が150〜350g/m2,厚さが2.0〜5.0mmで20%圧縮弾性率が5.0〜20.0KPa,1mm圧縮変形応力が1.0〜10.0N/cm2/mmの特性をもつ積層体不織布である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は捻挫,脱臼,骨折した患部を固定するギプスのクッション材に用いて好適な不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、捻挫,脱臼,骨折した患部を保護し、固定するためにギプスが用いられている。ギプスは主に石膏を含ませた包帯を患部に濡らしながら巻き付けて石膏を固定して成型している。しかし、石膏は比強度が低いため重い,水との接触を避ける,通気性がないために蒸れる等の欠点があったため、近時、石膏に代わり水硬化性樹脂の使用が試みられ、水硬化性樹脂を含浸した柔軟なシートの両面を両面立体編物で被覆したもの(例えば特許文献1参照)や患部に当接する当接剤の上に水硬化性樹脂を保持させた支持材を載せ、その上をカバー材で覆い、カバー材と当接材で支持材を包んで、支持材に水を噴霧して供給し、患部に沿うようにして水硬化性樹脂を硬化させるスプリント材(例えば特許文献2参照)などが提案されている。
【0003】
ところで、上記の如く水硬化性樹脂を使用したギプスとしては通常、図1に示すように水硬化性樹脂を含浸させた網目状の基材1の上面にポリエステル繊維不織布よりなる外被3を被着し、下面側にポリウレタンシート2、メルトブロー薄膜4を介してポリウレタン繊維不織布よりなるクッション材を配層した構成が一般的に用いられている。
【特許文献1】特開平6−133994号公報
【特許文献2】特開2003−190197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記水硬化性樹脂を使用したギプスはクッション材を形成する不織布がポリエステル繊維であり、疎水性であるために吸水性に乏しいと共にギプスを着用した際には肌触りが硬く、蒸れ感に難があった。そのため、患部に固定され、着用されると、肌触り,蒸れ感が問題となっていた。
【0005】
本発明は上述の如き実状に鑑み、これらの点に着目し、ギプスを着用した際に肌に硬くなく、しかも蒸れ感のないクッション材となる不織布を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、上記目的に適合する本発明は、疎水性短繊維層と親水性短繊維層が親水性短繊維とを積層してなる積層体不織布であって、疎水性短繊維層が熱可塑性短繊維と熱接着性複合短繊維の混繊からなり、親水性短繊維層が親水性短繊維と熱可塑性短繊維及び熱接着性複合短繊維の両者を含む疎水性短繊維の混繊からなると共に、疎水性短繊維層と、親水性短繊維層の積層比率が30/70〜75/25の範囲である構成よりなる。
【0007】
ここで特に疎水性短繊維層の熱可塑性短繊維と熱接着性複合短繊維の混繊比率は20/80〜90/10の範囲であり、親水性短繊維層の親水性短繊維と疎水性短繊維との混繊比率は40/60〜90/10の範囲で、かつ熱接着性複合短繊維の混繊比率が10/90〜40/60の範囲であることが好適である。
【0008】
そして、上記積層体不織布は目付質量が150g/m2〜350g/m2の範囲にあり、厚さが2.0mm〜5.0mmの範囲であることが好ましく、最終的に20%圧縮弾性率が5.0〜20.0kPa、1mm 圧縮変形応力が1.0〜10.0N/cm2/mmの特性を有することが効果的である。なお、疎水性短繊維は具体的にはポリエステル繊維であり、親水性短繊維としてはレーヨン繊維である。また熱接着性複合短繊維は融点の異なる成分による鞘芯構造であって、鞘部の接着部低融点成分の融点は100℃〜180℃の範囲である。また、繊維層を構成する繊維の繊度は2.0〜10デシテックス(dtex)が有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上のような特徴からなる不織布であり、ギプスのクッション材として疎水性短繊維層及び親水性短繊維層の積層比率ならびに夫々の短繊維層における熱可塑性短繊維と熱接着性複合短繊維の混繊比率を特定化することにより親水性短繊維層によって水分を適度に吸収し、従って肌側を親水性短繊維層とすることにより肌にある水分を親水性短繊維が速やかに取って、その水分を疎水性短繊維層から逃がし、蒸れ感をなくし、柔らかさが与えられる。
【0010】
しかも5.0〜20.0KPaの20%圧縮弾性率と1.0〜10.0N/cm2/mmの1mm圧縮変形応力により肌が不織布に触れたときの触感ならびにギプスの固定材を肌が受ける固さを良好にし、肌と固定材とのクッション性を保持する効果が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、更に本発明ギプス用不織布の具体的な形態を添付図面にもとづいて詳述する。
【0012】
図2は本発明に係る前記ギプスのクッション材用不織布の断面概要図であり、図において5aは疎水性短繊維層,5bは親水性短繊維層で、本発明不織布はこれら両短繊維層5a,5bを積層することによって構成されている。
【0013】
上記疎水性短繊維層5aを構成する繊維は熱可塑性短繊維と熱接着性複合繊維からなり、その混繊比率は20/80〜90/10の範囲がよい。即ち、熱接着性複合繊維が10〜80質量%を離れ5質量%未満では繊維間の接着点が少なくなり、表面の接着点も少なくなるので好ましくない。80質量%を超えると繊維間の接着点は充分あるが、厚さの調整が難しく、繊維間の交点が多いため硬い物となるので好ましくない。従って上記10〜80質量%が好適である。
【0014】
一方、前記親水性短繊維の構成については、親水性短繊維と熱可塑性短繊維と熱接着性複合短繊維の混繊であって、親水性短繊維層の親水性短繊維と疎水性短繊維(熱可塑性短繊維と熱接着性複合短繊維)との混繊比率が40/60〜90/10の範囲がよい。即ち、親水性短繊維が40〜90質量%の範囲を外れ、40質量%未満では水分の吸水能が低いため蒸れ感を感じるようになり、逆に90質量%を超えると繊維間の接着点が充分でなくなるので好ましくない。
【0015】
また、熱接着性複合繊維の混繊比率は親水性短繊維層全体に対して10/90、好ましくは5/95〜40/60の範囲がよく、5質量%未満では繊維間の接着点が少なくなるので好ましくなく、40質量%をこえることは特に問題はないが、吸水能から親水性短繊維の量により制限される。そして、疎水性短繊維層と親水性短繊維層の積層にあたっては、疎水性短繊維層と親水性短繊維層とを積層してなる積層体の積層比率が30/70〜75/25の範囲がよく、即ち、疎水性短繊維層が30質量%〜75質量%の範囲であって、疎水性短繊維層が30質量%未満であると親水性短繊維層からの水分の放水が低下するのでじとじと感となり好ましくない。75質量%を超えると放水は充分にあるが、構成する親水性短繊維層が少なくなり蒸れ感が生じ易くなり好ましくない。なお、疎水性短繊維や親水性短繊維の各繊維は特に限定されないが汎用性や安価な点で疎水性短繊維はポリエステル繊維、親水性短繊維はレーヨン繊維がそれぞれ推奨され実用的である。
【0016】
一方、熱接着性複合短繊維は融点を異にする成分により鞘部が低融点成分、芯部が高融点成分である鞘芯構造がよく、サイドバイサイドあるいは接着性樹脂が100%であることは好ましくない。また、鞘部の接着部の融点は100℃〜180℃の範囲が好ましく、接着部融点が100℃未満で温度が低いと接着に問題となるので好ましくない。また、接着部融点が180℃を超えると接着処理の温度を高くする必要があり繊維の嵩高性や接着接着性の調整が難しくなるので好ましくない。
【0017】
本発明は更に上記の如き疎水性短繊維層と、親水性短繊維層からなる積層体不織布を基材としてこれに特にギプス用クッション材として好適な特性を付与せしめている。
【0018】
ギプス用不織布に求められる特性として最も重要なことは、着用してソフトで蒸れ感のないことが挙げられる。このように着用して肌がソフトで蒸れ感を感じないためには疎水性短繊維層と親水性短繊維層とを積層してなる積層体不織布にあっては、水分を適度に吸収する親水性短繊維を通して疎水性短繊維層から水分を蒸発させること、及び肌に触れる部位が柔らかく適度な弾力を有することが良い。従って肌側を親水性短繊維とすることにより肌にある水分を親水性短繊維が速やかにとって、水分を疎水性短繊維層から逃がして蒸れ感をなくし、柔らかさは適度の圧縮特性によって与えるようにする。そこで、積層体の20%圧縮弾性率と1mm圧縮弾性率と1mm圧縮変形応力とが柔らかさに関係することを見出した。20%圧縮弾性率は肌が織布に触れたときの触感を示し、5.0KPa〜20.0KPaの範囲がよく、5.0KPa未満では柔らかすぎて好ましくなく、20.0KPaを越えると逆に硬く感じて好ましくない。また、1mm圧縮変形応力はギプスの固定材と肌が受ける硬さを示し、1.0〜10.0N/cm2/mmの範囲がよく、1.0N/cm2/mm未満では肌と固定材とのクッションがなくなり、ツッパリ感を感じるので好ましくなく、10.0N/cm2/mmを超えると逆に固定材と変わらない感じとなり好ましくない。
【0019】
更に、ソフトで蒸れ感がないことでその蒸れ感を生じる因子の一つとして通気度と放水性がある。肌から生じる水分を吸い取り、放水させることが蒸れ感をなくす一つであり、それを行うのが親水性短繊維層で水分を吸い取り、疎水性短繊維層で放水する役目をすると考えられる。通気度は80〜200cc/cm2/mmの範囲がよく、放水性は減水率が70%以上が良い。通気度が80cc/cm2/mm未満であると通気性が不足し、水分の抜けはよいが蒸れが生じるので好ましくない。また200cc/cm2/mmを超えると水分の抜けが不充分となり、じとじと感が生じるので好ましくない。放水性は減水率が70%以上がよく、減水率が少ないとじとじと感と蒸れ感がある。なお、繊維層を構成する繊維の使用繊度は2.0〜10デシテックスの範囲がよく、繊度が2.0デシテックス未満では細いため柔らかすぎるので好ましくない。また、繊度が10.0デシテックスを超えると硬くなり過ぎるので好ましくない。
【0020】
しかして、上記特性を発揮する不織布の構成としては、その構成目付質量は150g/m2〜350g/m2にの範囲であることが好適であり、目付質量が150g/m2未満では二層構造の各層の構成繊維量が少ないために圧縮特性や放水性等の特性を満足するものがえられないため、蒸れ感,ソフト感が劣るため好ましくない。
【0021】
一方、目付質量が350g/m2を超えると厚くなりすぎて蒸れ感を左右する因子の一つとしての通気性の低下になり、放水性が低下する。また、積層体不織布の厚さとしては2.0mm〜5.0mmの範囲がよく、厚さが2.0mm未満では薄いためにソフト感,放水性が劣るので好ましくなく、厚さが5.0mmを超えると厚いために保水する傾向があり、蒸れ感を感じるようになるので好ましくない。以下、更に本発明の具体的実施例を比較例と共に示す。
【実施例】
【0022】
実施例1
繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長54mmのポリエステ/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)70重量%とからなる目付質量135g/m2の疎水性層繊維ウエブと、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)10重量%と、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのレーヨン繊維60重量%からなる目付質量135g/m2の親水性層繊維ウエブとを積層した後、疎水性層側より、深さ13mm、打ち込み本数120本/cm3でニードルパンチ処理を施し、表面温度が70℃の熱ロールに接触させ、両面を処理した両側ロール間クリアランスは0.5mmにしてカレンダー処理し、冷却しギプス用不織布を得た。得られた不織布の実測目付質量は274.5g/m2であった。
【0023】
実施例2
繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長54mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)70重量%とからなる目付質量135g/m2の疎水性層繊維ウエブと、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%、繊度4.4デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)10重量%と、繊度5.6デシテックス、繊維長51mmのレーヨン繊維60重量%からなる目付質量135g/m2の親水性層繊維ウエブをそれぞれ別々に深さ13mm、打ち込み本数60本/cm2を1回ニードルパンチ処理を施し、親水性層と疎水性層を積層した後、疎水性層側より、深さ11mm、打ち込み本数60本/cm3でニードルパンチ処理を施し、ギプス用不織布を得た。不織布の実測目付質量は262.1g/m2であった。
【0024】
実施例3
繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長54mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)70重量%とからなる目付質量190g/m2の疎水性層繊維ウエブと、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点110℃、10重量%と、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのレーヨン繊維60重量%からなる目付質量80g/m2の親水性層繊維ウエブとを積層した後、疎水性層側より、深さ13mm、打ち込み本数120本/cm2でニードルパンチ処理を施し、ギプス用不織布を得た。得られた不織布の実測目付質量は255.8g/m2であった。
【0025】
実施例4
繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)90重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長54mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)10重量%とからなる目付質量135g/m2の疎水性層繊維ウエブと、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)10重量%と、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのレーヨン繊維60重量%からなる目付質量135g/m2の親水性層繊維ウエブとを積層した後、疎水性層側より、深さ13mm、打ち込み本数120本/cm2でニードルパンチ処理を施し、ギプス用不織布を得た。得られた不織布の実測目付質量は268.0g/m2であった。
【0026】
比較例1
繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長54mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)70重量%とからなる目付質量135g/m2の疎水性層繊維ウエブと、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点260℃)30重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)10重量%と、繊度5.6デシテックス、繊維長51mmのレーヨン繊維60重量%からなる目付質量135g/m2の親水性層繊維ウエブをそれぞれ別々に深さ11mm、打ち込み本数22本/cm2を二回ニードルパンチ処理を施し、親水性層と疎水性層を積層した後、疎水性層側より、深さ9mm、打ち込み本数55本/cm2、更に親水性層と疎水性層を積層した後、疎水性層側より、深さ9mm、打ち込み本数55本/cm2、更に親水性層側から深さ10mm、打ち込み本数90本/cm2でニードルパンチ処理を施し、ギプス用不織布を得た。不織布の実測目付質量は293.1g/m2であった。
【0027】
比較例2
繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長54mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)70重量%とからなる目付質量135g/m2の疎水性層繊維ウエブと、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)60重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)10重量%と、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのレーヨン繊維30重量%からなる目付質量135g/m2の親水性層繊維ウエブとを積層した後、疎水性層側より、深さ13mm、打ち込み本数120本/cm2でニードルパンチ処理を施し、ギプス用不織布を得た。得られた不織布の実側目付質量は267.6g/m2であった。
【0028】
比較例3
繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長54mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)70重量%とからなる目付質量200g/m2の疎水性層繊維ウエブと、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%と、繊度4.4デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)10重量%と、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのレーヨン繊維60重量%からなる目付質量200g/m2の親水性層繊維ウエブとを積層した後、疎水性層側より、深さ13mm、打ち込み本数120本/cm2の親水性層繊維ウエブとを積層した後、疎水性層側より、深さ13mm、打ち込み本数120本/cm2でニードルパンチ処理を施し、ギプス用不織布を得た。得られた不織布の実測目付質量は384g/m2であった。
【0029】
比較例4
繊度2.2デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)30重量%と、繊度16.7デシテックス、繊維長64mmのポリエステル繊維70重量%とからなる目付質量200g/m2の疎水性繊維ウエブを深さ12mm、打ち込み本数26本/cm2、更に深さ11mm、打ち込み本数58本/cm2でニードルパンチ処理を施し、ギプス用不織布を得た。得られた不織布の実側目付質量は198.7g/m2であった。
【0030】
以上の実施例1〜4、比較例1〜4で得られた各ギプス用不織布について夫々、その特性を評価した、結果を表1に示す。表中の目付量,厚さ,通気度,20%圧縮弾性率,1mm圧縮変形応力,減水率,接着率は夫々下記により求めた。
(イ)目付量:g/m2
50cm×50cmの大きさを切り出し、そのときの重さを測定し、1m2当たりの重量に換算する。
(ロ)厚さ:mm
15cm×15cmの大きさを切り出し初荷重0.05g/cm2をかけて、4隅の高さを測定し、その平均値で示す。
(ハ)通気度
JIS L1096−1999の827.1kA法により測定した。
(ニ)20%圧縮弾性率:N/cm2・100%
圧縮試験は東洋ボールドイン社製100Kgテンシロンを用い、圧縮面積100mmφで圧縮速度2mm/minで試料を圧縮し、初荷重0.1N/cm2として試料の変形率20%の距離(mm)を求め、その距離の勾配を読み取り、試料断面積で除して20%変形点での圧縮弾性率を算出する。測定はn=5とし、その平均値で示す。単位はKPaである。
(ホ)1mm圧縮変形応力:N/cm2/mm
圧縮試験は東洋ボールドイン社製100kgテンシロンを用い、圧縮面積100mmφで圧縮速度2mm/minで試料を圧縮し初荷重0.1N/cm2として1mm変形した応力である。単位は単位面積当たりの応力で、Nに換算して示す。測定はn=5とし、その平均値で示す。
(ヘ) 放水性:%
10cm×10cmの試料の親水層側に蒸留水を霧吹きで噴霧して試料がなじむように調整する(18℃で30分間放置)、試料重量の50%を付与するように調整する。この試料を36℃の室内に疎水層面を上に、親水層面を下にして(下面はポリエチレンフィルム)放置し、3時間後の水分の蒸発量を求め、減少率で減水率とする。
減水率=w/W×100(%)
w:水分蒸発量(g)
W:試料50%水分付与量(g)
(ト)接着能
繊度2.2デシテックス、繊維長51mmのポリエステル繊維(融点:260℃)を均一開繊して目付質量200g/m2のウエブを作成し、深さ13mm、打ち込み本数120本/cm2でニードルパンチ処理を施し、得られた不織布を用いて接着評価をした。得られた不織布を10cm×10cmの試料の両面に挟み接着能の評価をした
(a)処理条件
処理装置 熱風乾燥機
処理温度 熱接着性複合繊維の融点+20℃
処理時間 10分
(b)接着能評価
試料が得られた不織布に接着している。 ○
試料が得られた不織布に接着していない。 ×
(チ)パッチテスト
10cm×10cmの試料の親水層側に蒸留水を霧吹きで噴霧して試料がなじむように調整する(18℃で30分間放置)、試料重量の50%を付与するように調整する。この試料をパネラーの腕に親水層が肌側にくるようにして巻き付けてもらい、その着用感を評価してもらった。パネラーは5名で評価結果を平均値で示す。
(a)ソフトさ
試料が柔らかく肌に感じる。 ○
試料がやや柔らかく肌に感じる。 △
試料が硬くごわごわして肌に感じる。 ×
(b) 蒸れ感,じとじと感
試料がさらさらして肌が乾いた感じ。 ○
試料がややさらさらして肌に感じる。 △
試料がじとじとして湿って肌に感じる。 ×
【0031】
【表1】

次に上記表に示された各特性に基づいて夫々の特性を評価すると、上記表に見られるように本発明に係る実施例1〜4は20%圧縮弾性率が11.1〜17.3の範囲にあり、また1mm圧縮変形応力も5.0〜8.8の範囲にあり、ソフト感がよいことが分かる。また、通気度は100〜135であり、放水性である減水率が73〜86とあり、接着能も有しており、着用試験のモニター結果も全体的にソフトさ,蒸れ感,じとじと感も良好な結果を得ている。
【0032】
一方、比較例1は20%圧縮弾性率が25.3と高く、また1mm圧縮変形応力が10.2であり、通気度は104であるが放水性の減水率が67と低く、接着能は有しているが、全体的にソフトさが悪く蒸れ感,じとじと感があり良くない。比較例2は20%圧縮弾性率が19.8とやや高く、また1mm圧縮変形応力が9.3であり、通気度は120であるが、放水性の減水率が62と低く、接着能は有しているが、結果的にはソフトさは良いが蒸れ感,じとじと感がありよくない。
【0033】
比較例3は20%圧縮弾性率が17.6とやや高く、また1mm圧縮変形応力が6.2であり、通気度は74と低く放水性の減水率が21と大きく低く、接着能は有しているが、結果はソフトさ及び蒸れ感が好ましくない。比較例4は20%圧縮弾性率が17.1と稍高く、また1mm圧縮応力が13.3であり、親水性短繊維層がなく通気度は188と高く、放水性の減水率が80と大きいが、接着能はなく、結果はソフトさ,蒸れ感が悪い結果となっているので好ましくない。
【0034】
以上のように、本発明に係る不織布は各特性において良好であり、ギプス用クッション材として好適であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ギプスの一般的構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係るクッション材不織布の構成を示す断面概要図である。
【符号の説明】
【0036】
5a:疎水性短繊維層
5b:親水性短繊維層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性短繊維層と親水性短繊維層とを積層してなる積層体不織布であって、疎水性繊維層が熱可塑性短繊維と熱接着性複合短繊維を20/80〜90/10の比率で混繊せしめた短繊維層よりなり、親水性短繊維層が親水性短繊維と、熱可塑性短繊維及び熱接着性複合短繊維の両者を含む疎水性短繊維とを混繊比率40/60〜90/10の範囲で、かつ熱接着性複合短繊維を10/90〜40/60の範囲で混繊せしめた短繊維層よりなり、上記疎水性短繊維層と親水性短繊維層は積層比率30/70〜75/25の範囲で積層されていると共に、積層体不織布の目付質量が150g/m2〜350g/m2、厚さが2.0mm〜5.0mmで、その20%圧縮弾性率が5.0〜20.0KPa、1mm圧縮変形応力が1.0〜10.0N/cm2/mmであることを特徴とするギプス用不織布。
【請求項2】
疎水性短繊維がポリエステル繊維であり、親水性短繊維がレーヨン繊維である請求項1記載のギプス不織布。
【請求項3】
熱接着性複合繊維が融点を異にする成分の鞘芯構造であって、鞘部の接着部低融点成分の融点が100℃〜180℃の範囲である請求項1または2記載のギプス用不織布。
【請求項4】
短繊維層を構成する繊維の繊度が2.0〜10デシテックスである請求項1,2または3記載のギプス用不織布。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−200342(P2008−200342A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41026(P2007−41026)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(391021570)呉羽テック株式会社 (57)
【Fターム(参考)】