ギヤ
【課題】コールドスラグによる歯の強度の低下を確実に防止できるギヤを提供する。
【解決手段】本ギヤ27は、環状の芯金28と、射出成形により上記芯金28をモールドした樹脂部材29と、を有している。樹脂部材29は、外周42に歯46を有している。芯金28には、射出成形プロセスの結果としてのコールドスラグ38を含む樹脂部材29の一部291が充填されたゲート対向用の凹部としての環状溝37が設けられている。環状溝37の少なくとも一端371の全体に、樹脂部材29の一部291が充填されている。
【解決手段】本ギヤ27は、環状の芯金28と、射出成形により上記芯金28をモールドした樹脂部材29と、を有している。樹脂部材29は、外周42に歯46を有している。芯金28には、射出成形プロセスの結果としてのコールドスラグ38を含む樹脂部材29の一部291が充填されたゲート対向用の凹部としての環状溝37が設けられている。環状溝37の少なくとも一端371の全体に、樹脂部材29の一部291が充填されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の電動パワーステアリング装置の減速機に使用されるギヤとしてのウォームホイールが、騒音を低減するために、環状の芯金と、芯金の外周を取り囲み外周に歯が形成される環状の合成樹脂部材とを有する場合がある。この場合に、合成樹脂部材を射出成形する際に、ギヤの芯金に設けられた凹部と、この凹部内に挿入された金型との間に、コールドスラグを捕獲するための溶融樹脂の流路を区画することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−305779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、凹部内において、射出成形時の溶融樹脂の流路が、芯金と金型という2つの部品により区画されるので、これら両部品の組み合わせ精度の影響で、流路の大きさのばらつきが大きくなる。その結果、流路がコールドスラグよりも過大になり、コールドスラグを捕獲できない場合がある。この場合、コールドスラグが金型内の歯成形部に到達し、ひいては、成形後の歯の強度が低下することが懸念される。また、成形後のギヤにおいて、芯金の凹部の一部に、合成樹脂部材が充填されている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、コールドスラグによる歯の強度の低下を確実に防止できるギヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、環状の芯金(28;28A;28B)と、外周(42)に歯(46)を有し、射出成形により上記芯金をモールドした樹脂部材(29)と、を備え、上記芯金には、射出成形プロセスの結果としてのコールドスラグ(38)を含む上記樹脂部材の一部(291)が充填されたゲート対向用の凹部(37;67;37B)が設けられており、上記凹部の少なくとも一端(371;671)の全体に、上記樹脂部材の上記一部が充填されていることを特徴とするギヤ(27;27A;27B;27C)である。
【0007】
本発明によれば、射出成形時には、例えば、ホットランナのピンゲートから押し出されたコールドスラグが金型内に流入し、ゲートと対向して配置された上記凹部に入り捕獲される。コールドスラグに続いて溶融樹脂が金型内に流入し、金型内に充填される。成形後のギヤにおいては、芯金の凹部の少なくとも一端の全体に、コールドスラグを含む樹脂部材が充填されている。
【0008】
また、芯金のみで、すなわち、単一の部品によりコールドスラグ捕獲用の凹部の少なくとも一端が区画されるので、個体毎で凹部の少なくとも一端の大きさのばらつきが小さくなる。その結果、凹部の一端においてコールドスラグの捕獲性能を左右する部分の寸法がコールドスラグよりも小さくなったり、逆に過大になったりすることが防止される。従って、各個体において、コールドスラグを凹部に確実に捕獲することができる。その結果、コールドスラグが金型内の例えば、歯形成用部成形用キャビティに到達することが防止される。ひいては、成形後の歯の強度が低下することが防止される。
【0009】
また、本発明において、上記凹部は、上記芯金(28;28B)の中心(281)を中心とした環状溝(37;37B)である場合がある(請求項2)。この場合、射出成形に際して、芯金の周方向に凹部をゲートに対して位置合わせせずに済み、製造が容易になる。
また、本発明において、上記凹部は、上記芯金(28A)を貫通する貫通孔(67)であり、上記貫通孔である上記凹部の他端(672)の周囲の上記芯金が露出している場合がある(請求項3)。この場合、射出成形時に、貫通孔の他端を金型により塞ぐことができるので、コールドスラグを貫通孔内に確実に捕獲しておくことができる。また、成形時に貫通孔の他端が金型により塞がれた結果として、成形後のギヤにおいては、貫通孔の他端の周囲の上記芯金が露出することになる。また、貫通孔であれば、深さ方向に凹部を深くできるので、成形時にコールドスラグを凹部内の奥深くに確実に捕獲できる。
【0010】
また、本発明において、上記凹部(37B)の奥部(372,373)が、上記凹部(37B)の入口(371)よりも広くされている場合がある(請求項4)。この場合、成形時に、凹部に捕獲されたスラグが凹部から流出することを確実に防止できる。
なお、上記括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を示すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態のギヤが適用された電動パワーステアリング装置の概略構成の模式図である。
【図2】図1のギヤの断面図である。
【図3】図2のギヤの側面図である。
【図4】図2のギヤの樹脂部材の製造用中間体を射出成形するときの芯金、金型等の断面図である。
【図5】図4の拡大図である。
【図6】本発明の第2の実施形態のギヤの断面図である。
【図7】図6のギヤの側面図である。
【図8】図6のギヤの樹脂部材の製造用中間体を射出成形するときの芯金、金型等の断面図である。
【図9】図8の拡大図である。
【図10】本発明の第3の実施形態のギヤの要部の断面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態のギヤの要部の断面図である。
【図12】図11のギヤの樹脂部材の製造用中間体を射出成形するときの芯金、金型等の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、ギヤが、自動車の電動パワーステアリング装置に適用された場合に則して説明する。なお、本実施形態のギヤが、電動パワーステアリング装置以外の装置に適用されてもよい。
図1は、本発明の第1の実施形態のギヤが適用された電動パワーステアリング装置の概略構成の模式図である。図1を参照し、電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering System)1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に第1の自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に第2の自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ピニオン軸7の端部近傍に設けられたピニオン8に噛み合うラック9を有して自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸10とを有している。
【0013】
ピニオン軸7およびラック軸10により、ラックアンドピニオン機構からなる転舵機構11が構成されている。ラック軸10は、車体(図示せず)に固定されるラックハウジング13内に図示しない複数の軸受を介して直線往復可能に支持されている。ラック軸10には、一対のタイロッド14が結合されている。各タイロッド14は対応するナックルアームを介して対応する転舵輪16に連結されている。
【0014】
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン8およびラック9によって、自動車の左右方向に関するラック軸10の直線運動に変換される。これにより、転舵輪16の転舵が達成される。
ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連なる入力軸17と、ピニオン軸7に連なる出力軸18とに分割されている。これら入力軸17および出力軸18はトーションバー19を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸17に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー19が弾性ねじり変形し、これにより、入力軸17および出力軸18が相対回転するようになっている。
【0015】
トーションバー19を介する入力軸17および出力軸18の間の相対回転変位量により操舵トルクを検出するトルクセンサ20が設けられている。また、車速を検出するための車速センサ21が設けられている。また、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)22が設けられている。また、操舵力(本実施形態では操舵補助力)を発生するためのアクチュエータとしての電動モータ23と、この電動モータ23の出力回転を減速する減速機24とが設けられている。
【0016】
トルクセンサ20および車速センサ21からの検出信号が、ECU22に入力されるようになっている。ECU22は、トルク検出結果や車速検出結果等に基づいて、操舵補助用の電動モータ23を制御する。電動モータ23の出力回転が減速機24を介して減速されてピニオン軸7に伝達され、ラック軸10の直線運動に変換されて、操舵が補助されるようになっている。
【0017】
減速機24は、電動モータ23により回転駆動される駆動ギヤとしてのウォーム軸26と、このウォーム軸26に噛み合う従動ギヤとしてのウォームホイール27とを有している。ウォームホイール27は、ステアリングシャフト3の出力軸18に同伴回転可能に連結されている。
本実施形態のギヤは、ウォームホイール27に適用されている。本実施形態では、電動パワーステアリング装置1の減速機24のギヤの騒音を低減するために、ウォームホイール27の歯部が合成樹脂により形成されている。なお、以下では、ウォームホイール27をギヤ27ともいう。
【0018】
図2は、図1のギヤ27の断面図である。図3は、図2のギヤ27の側面図である。図2と図3を参照して、ギヤ27は、環状の芯金28と、射出成形により芯金28の少なくとも一部をモールドした樹脂部材29とを有している。本実施形態では、樹脂部材29は、環状をなしており、芯金28を取り囲んでおり、芯金28の一部を覆っている。芯金28と樹脂部材29とは、互いに同心に配置されており、芯金28の軸方向に同伴移動可能に且つ同伴回転可能に互いに連結されている。
【0019】
芯金28は、金属部材により形成されている。また、芯金28は、外周32と、中央貫通孔を形成する内周33と、当該芯金28の軸方向に相対向する一対の側面34,35とを有している。各側面34,35は、樹脂部材29により覆われた第1の部分341,351と、露出した第2の部分342,352とを有している。第2の部分342,352は、対応する側面34,35において、対応する第1の部分341,351に対して、芯金28の径方向に関する内方寄りに配置されている。
【0020】
芯金28には、ゲート対向用の凹部としての環状溝37が設けられている。環状溝37は、芯金28の側面34の第1の部分341に形成されている。環状溝37は、芯金28の軸方向に見たときに環状をなし、芯金28の中心軸線281を中心としている。環状溝37は、芯金28の周方向に無端状に全周にわたって延びている。環状溝37の深さ方向は、芯金28の中心軸線281と平行な方向である。
【0021】
環状溝37は、当該環状溝37の深さ方向に関して、ゲート対向用の入口としての一端371と、有底の奥部としての他端372と、一端371および他端372の間にある奥部としての中間部373とを有している。
環状溝37には、射出成形プロセスの結果としてのコールドスラグ38を含む樹脂部材29の一部291が充填されている。コールドスラグ38は、ピンゲート方式のホットランナを用いた射出成形プロセスの結果として形成されてなる。環状溝37の全体、すなわち、一端371の全体、他端372の全体、および中間部373の全体に、樹脂部材29の一部291が充填されている。
【0022】
樹脂部材29は、外周42と、内周43と、芯金28の軸方向に相対向する一対の側面44,45とを有している。樹脂部材29の内周43が芯金28の外周32と連結されている。樹脂部材29の外周42は、複数の歯46を有している。
本実施形態の樹脂部材29は、製造用中間体(図示せず)に歯46を切削加工により形成されてなる。なお、この場合に則して以下説明するが、後述するように製造用中間体を用いずに、樹脂部材29の射出成形時に、ギヤ27の樹脂部材29の歯46も射出成形によって同時に形成するようにしてもよい。
【0023】
樹脂部材29の製造用中間体は、歯46を有していない点で、樹脂部材29と異なり、この点を除いて、樹脂部材29と、この樹脂部材29の製造用中間体とは互いに同じに構成されている。
図4は、図2のギヤ27の樹脂部材29の製造用中間体を射出成形するときの芯金28、金型52等の断面図である。図2と図4を参照して、ギヤ27の樹脂部材29の製造用中間体は、芯金28をインサート成形されてなる。インサート成形では、成形型としての以下の金型52を用いる。金型52は、樹脂部材29の製造用中間体の外形に対応した環状のキャビティ53と、このキャビティ53内に芯金28を保持する保持部54とを有している。また、金型52は、キャビティ53の一部分として、歯46を形成するための部分(具体的には製造用中間体の外周が相当する。)を成形する歯形成用部成形用キャビティ55を有している。また、金型52には、複数のホットランナ56が配置されている。なお、ホットランナ56は少なくとも一つが配置される。
【0024】
保持部54は、円柱形状をなし、キャビティ53の中心軸線531(金型52の中心軸線に相当する。)と同心に配置されており、芯金28の内周33と嵌合している。保持部54に保持された芯金28と、キャビティ53とは、互いに同心に配置されている。
ホットランナ56は、筒状に形成されている。ホットランナ56は、溶融した樹脂材料をゲート59に流す流路57と、この流路57内の樹脂材料を加熱するための加熱装置としての加熱配管58とを有している。ホットランナ56の流路57の端部は、開口されており、ゲート59を形成している。
【0025】
図3と図4を参照して、ゲート59は、複数カ所、例えば、4箇所に配置されている。これら複数のゲート59は、金型52のキャビティ53の中心軸線531を中心とした環状に配置されており、キャビティ53の周方向に均等に配置されている。なお、図3には、ギヤ27が金型52内にあるときのゲート59の位置を一点鎖線で図示した。
複数のゲート59が環状に配置されるその円と、保持部54に保持された芯金28の環状溝37とは、互いに同心に配置されている。また、各ゲート59の中心は、キャビティ53の中心軸線531を中心とした円上に配置されている。この円の直径は、芯金28の環状溝37の直径と等しくされている。環状溝37の直径は、環状溝37の幅方向に関する中心位置が描く円の直径である。但し、各ゲート59の全体が、環状溝37の一部に対向していれば、複数のゲート59が配置された円であってキャビティ53の中心軸線531を中心とする円の直径と、芯金28の環状溝37の直径とが、互いに等しくなくてもよい。
【0026】
図2と図4を参照して、各ゲート59からの樹脂の射出方向D1は、キャビティ53の中心軸線531と平行な方向に設定されている。各ゲート59は、保持部54に保持された芯金28の側面34の環状溝37と、当該ゲート59の射出方向D1に対向している。ゲート59の射出方向D1に見たときに、当該ゲート59の全体と環状溝37の一部とが、互いに重なり合うように配置されている。各ゲート59は、金型52の歯形成用部成形用キャビティ55を避けて配置され、例えば、歯形成用部成形用キャビティ55から径方向内方に離隔した位置に配置されている。
【0027】
加熱配管58により加熱されることにより、流路57内には、溶融状態の樹脂材料が溜まっている。一方で、流路57の端部は加熱配管58により十分に加熱されないので、通例、流路57の端部には、コールドスラグ38が形成される。
各ホットランナ56には、溶融した合成樹脂材料が射出成形機(図示せず)により供給されるようになっている。溶融した合成樹脂材料が各ホットランナ56のゲート59を通じてキャビティ53に注入される。このとき、溶融した合成樹脂材料に先立って、コールドスラグ38がキャビティ53内に押し出される。
【0028】
金型52は、具体的には、可動型60と固定型61とを有している。可動型60は、固定型61と合わせた際にキャビティ53の一部を区画する環状凹部62を有している。環状凹部62の内周面は、上述の歯形成用部成形用キャビティ55として機能する。環状凹部62の中央には、突起状の保持部54が形成されている。
固定型61は、可動型60と対向する対向面63を有している。可動型60と固定型61とを合わせた状態で、対向面63の一部が、キャビティ53の一部を区画している。すなわち、固定型61の対向面63と、可動型60に保持された芯金28の側面34の第1の部分341との間には、所定間隔の隙間が開けられている。この隙間は、芯金28の周方向の全周に形成されている。この隙間は、溶融した樹脂材料が流れる流路として機能する。各ホットランナ56のゲート59は、ピンゲートを構成しており、固定型61の対向面63において上述の隙間に臨んで配置されている。
【0029】
芯金28は、樹脂部材29の製造用中間体の樹脂成形時にギヤ成形用の金型52内にインサートされる。芯金28は、樹脂部材29の製造用中間体を成形するときに、成形型の一部として機能する。金型インサートとしての芯金28をギヤ成形用の金型52内に挿入した状態で、溶融状態の樹脂材料を射出成形(インサート成形)することにより、樹脂材料を金型内に充填する。金型内の樹脂材料が固化することにより、成形品としての樹脂部材29の製造用中間体が得られる。得られた製造用中間体が、芯金28を覆っている。これとともに、製造用中間体が成形されることにより、芯金28と製造用中間体とが同行回転可能に結合される。その後、樹脂部材29の製造用中間体の外周に歯46を切削加工により形成する。これにより、ギヤ27が得られる。
【0030】
本実施形態によれば、上述した射出成形時には、例えば、ホットランナ56のピンゲート59から押し出されたコールドスラグ38が金型52内に流入し、ゲート59と対向して配置された凹部としての環状溝37に入り捕獲される。コールドスラグ38に続いて溶融樹脂が金型52内に流入し、環状溝37内にコールドスラグ38を止めつつ、金型52内に充填される。成形後のギヤ27においては、芯金28の環状溝37の全体に、コールドスラグ38を含む樹脂部材29が充填されている。
【0031】
また、芯金28のみで、すなわち、単一の部品によりコールドスラグ捕獲用の凹部としての環状溝37が区画されるので、芯金28の個体毎で環状溝37の大きさのばらつきが小さくなる。その結果、環状溝37の一端371においてコールドスラグ38の捕獲性能を左右する部分の寸法(本実施形態では、環状溝37の一端371の幅L1が相当する。)がコールドスラグ38よりも小さくなったり、逆に過大になったりすることが防止される。従って、各個体において、コールドスラグ38を環状溝37に確実に捕獲することができる。その結果、コールドスラグ38が金型52内において、成形後のギヤにおいて強度を要する部分を成形するためのキャビティ、例えば、歯形成用部成形用キャビティ55に到達することが防止される。ひいては、成形後の歯46の強度が低下することが防止される。
【0032】
例えば、コールドスラグ38の混入によるギヤ27の極端な強度低下や、耐久性の低下(早期破損)を防止できる。また、ギヤ27の大量生産時に、上述のようなコールドスラグ38による不良品の発生率を小さくできる。
また、コールドスラグ捕獲用の凹部は、芯金28の中心281を中心とした環状溝37である。これにより、射出成形に際して、芯金28の周方向に、凹部としての環状溝37をゲート59に対して位置合わせせずに済み、製造が容易になる。例えば、環状溝37は、多点ゲートの場合に好適である。
【0033】
また、ピンゲート方式のホットランナ56を用いているので、使用樹脂量を少なくでき、これとともに、金型52からの成形品の取り出し時に、樹脂部材29の製造用中間体をゲート59で自動切断することができる。従って、製造コストを安価にできる。
また、凹部としての環状溝37内に金型52の一部を配置せずに済むので、金型52を簡素化でき、また、金型52の傷みを抑制できる。
【0034】
図5は、図4の拡大図である。図5を参照して、環状溝37の一端371は、凹部においてコールドスラグ38の捕獲性能を左右する部分として機能する。この部分の寸法は、本実施形態では、環状溝37の一端371の幅L1(環状溝37の周方向および深さ方向の双方に直交する方向の寸法)として与えられる。この幅L1は、ゲート59の大きさ、例えば、ゲート59の直径L2よりも大きくされ(L1>L2)、且つ過大でない大きさ(捕獲に適した大きさ)に設定されている。これにより、コールドスラグ38が環状溝37に入り易く且つ環状溝37から離脱し難くされている。
【0035】
また、環状溝37の深さL3は、ホットランナ56の端部における非加熱領域の長さL4と等しいか、この長さL4よりも大きくするのが(L3≧L4)、コールドスラグ38の離脱を防止するのに好ましい。ここで、上述の非加熱領域の長さL4は、ホットランナ56の流路57に沿って測ったときのゲート59から、当該ゲート59寄りの加熱配管58の端部までの距離である。
【0036】
凹部としての環状溝37は、塑性加工としての鍛造により形成されるのが好ましい。この場合、加工コストを安価にできる。また、凹部としての環状溝37を含む芯金28の全体が、塑性加工としての鍛造により形成されるのが、より好ましい。この場合には、芯金28の形成の際に、環状溝37も一括して形成することができるので、製造コストをより一層安価にできる。
【0037】
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明する。他の構成については、上述の実施形態と同様であるので、同一符号を付して、その説明を省略する。
例えば、図6は、本発明の第2の実施形態のギヤ27Aの断面図である。図7は、図6のギヤ27Aの側面図である。図8は、図6のギヤ27Aの樹脂部材29の製造用中間体を射出成形するときの芯金28A、金型52等の断面図である。図6のギヤ27Aは、図2のギヤ27に代えて用いられる。また、図6のギヤ27Aでは、図2の芯金28Aおよび環状溝37に代えて、図6の芯金28Aおよび貫通孔67が用いられている。芯金28Aは、下記の点で図2の芯金28と相違し、他の構成については同じであり、芯金28の対応する構成と同じ符合を付して説明を省略する。
【0038】
図6と図7を参照して、ギヤ27Aは、環状の芯金28Aと、射出成形により芯金28Aの少なくとも一部(本実施形態では一部)をモールドした樹脂部材29とを有している。
芯金28Aは、外周32と、内周33と、当該芯金28Aの軸方向に相対向する一対の側面34,35とを有している。各側面34,35は、樹脂部材29により覆われた第1の部分341,351と、露出した第2の部分342,352とを有している。
【0039】
芯金28Aには、ゲート対向用の凹部としての複数の貫通孔67が設けられている。各貫通孔67は、芯金28Aを当該芯金28Aの軸方向に貫通しており、例えば、円柱形状をなしている。各貫通孔67の深さ方向は、芯金28Aの中心軸線281と平行な方向である。各貫通孔67の中心は、芯金28Aの中心軸線281から離隔して、芯金28Aの中心軸線281を中心とした円上に配置されている。この円上にある複数の貫通孔67の中心は、芯金28Aの周方向に均等に離隔して配置されており、芯金28Aの径方向に関して互いに等しい位置に配置されている。
【0040】
各貫通孔67は、当該貫通孔67の深さ方向に関して、ゲート対向用の入口としての一端671と、奥部としての他端672と、一端671および他端672の間にある奥部としての中間部673とを有している。
各貫通孔67には、射出成形プロセスの結果としてのコールドスラグ38を含む樹脂部材29の一部291が充填されている。このコールドスラグ38は、ピンゲート方式のホットランナを用いた射出成形プロセスの結果として形成されてなる。各貫通孔67におけるその全体、すなわち、一端671の全体、他端672の全体、および中間部673の全体に、樹脂部材29の一部291が充填されている。
【0041】
各貫通孔67の一端671は、芯金28Aの側面34の第1の部分341に形成されており、樹脂部材29により覆われている。他端672は、芯金28Aの側面35の第2の部分352に配置されている。側面35における貫通孔67の他端672の周囲にある部分353は、露出されている。
樹脂部材29は、外周42と、内周43と、芯金28Aの軸方向に相対向する一対の側面44,45とを有している。外周42は、複数の歯46を有している。
【0042】
図6と図8を参照して、金型52は、貫通孔67の他端672を塞ぐ閉塞部69を有している。この閉塞部69が、保持部54に保持された芯金28Aの側面35の上述の部分353に当接する。樹脂成形時に、貫通孔67の他端672から、貫通孔67内の溶融樹脂やコールドスラグ38が流出することを防止する。
各ゲート59は、保持部54に保持された芯金28の側面34の対応する貫通孔67と、当該ゲート59の射出方向D1に対向している。すなわち、貫通孔67と、ゲート59とは、互いに等しい数とされている。複数のゲート59の中心が配置される円と、保持部54に保持された芯金28Aの複数の貫通孔67の中心が配置される円とは、互いに同心に配置され、且つ互いに等しい直径とされている。複数のゲート59の中心と、保持部54に保持された芯金28Aの複数の貫通孔67の中心とは、芯金28Aの周方向に関する互いに等しい位置に配置されている。
【0043】
但し、各ゲート59の全体が、対応する貫通孔67の一部に対向していれば、複数のゲート59が配置された円であってキャビティ53の中心軸線531を中心とする円の直径と、芯金28Aの複数の貫通孔67の中心が配置される円の直径とが、互いに等しくなくてもよい。
図7と図8を参照して、ゲート59の射出方向D1に見たときに、当該ゲート59の全体と、対応する貫通孔67の一部とが、互いに重なり合うように配置されている。例えば、芯金28Aが金型52の保持部54に保持された状態で、複数の貫通孔67は、キャビティ53の中心軸線531を中心として環状に配置されるとともに、対応するゲート59と対向するように、このゲート59に対してキャビティ53の周方向に位置決めされる。なお、図7に、ギヤ27Aが金型52内にあるときのゲート59の位置を一点鎖線で図示した。
【0044】
図6と図8を参照して、射出成形時には、例えば、ホットランナ56のピンゲート59から押し出されたコールドスラグ38が金型52内に流入し、ゲート59と対向して配置された凹部としての貫通孔67に入り捕獲される。このとき、貫通孔67の他端672は、金型52の閉塞部69により塞がれており、コールドスラグ38は貫通孔67から離脱しない。コールドスラグ38に続いて溶融樹脂が金型52内に流入し、凹部としての貫通孔67内にコールドスラグ38を押し止めつつ、金型52内に充填される。成形後のギヤ27Aにおいては、芯金28Aの凹部としての貫通孔67の全体に、コールドスラグ38を含む樹脂部材29が充填されている。
【0045】
また、芯金28Aのみで、すなわち、単一の部品によりコールドスラグ捕獲用の凹部としての貫通孔67が区画されるので、個体毎で凹部としての貫通孔67の大きさのばらつきが小さくなる。その結果、凹部としての貫通孔67の一端671においてコールドスラグ38の捕獲性能を左右する部分の寸法(本実施形態では、貫通孔67の一端671の直径L5が相当する。)がコールドスラグ38よりも小さくなったり、逆に過大になったりすることが防止される。従って、各個体において、コールドスラグ38を凹部としての貫通孔67に確実に捕獲することができる。その結果、コールドスラグ38が金型52内の例えば、歯形成用部成形用キャビティ55に到達することが防止される。ひいては、成形後の歯46の強度が低下することが防止される。
【0046】
また、凹部は、芯金28Aを貫通する貫通孔67であり、この貫通孔67の他端672の周囲にある芯金28Aの側面35の上述の部分353が露出している。この場合、射出成形時に、貫通孔67の他端672を金型52の閉塞部69により塞ぐことができるので、コールドスラグ38が貫通孔67の他端672から離脱することを防止でき、その結果、コールドスラグ38を貫通孔67内に確実に捕獲しておくことができる。また、成形時に貫通孔67の他端672が金型52の閉塞部69により塞がれた結果として、成形後のギヤ27Aにおいては、貫通孔67の他端672の周囲にある芯金28Aの部分353が露出することになる。また、貫通孔67であれば、有底の孔と比較して、深さ方向に凹部を深くできるので、樹脂成形時にコールドスラグ38を凹部内の奥深くに確実に捕獲できる。
【0047】
図9は、図8の拡大図である。図9を参照して、貫通孔67の一端671は、凹部においてコールドスラグ38の捕獲性能を左右する部分として機能する。この部分の寸法は、本実施形態では、上述の一端671の直径L5として与えられる。この直径L5は、ゲート59の大きさ、例えば、ゲート59の直径L2よりも大きく(L5>L2)され、且つ過大でない大きさ(捕獲に適した大きさ)に設定されている。これにより、コールドスラグ38が貫通孔67に入り易く且つ貫通孔67から離脱し難くされている。
【0048】
また、貫通孔67において樹脂部材29の一部291が充填された領域の深さL6(本実施形態では、この深さは、貫通孔67の全領域にわたる深さに相当する。)は、ホットランナ56の端部における上述の非加熱領域の長さL4と等しいか、この長さL4よりも大きくするのが(L6≧L4)、コールドスラグ38の離脱を防止するのに好ましい。
凹部としての貫通孔67は、塑性加工としての鍛造により形成されるのが好ましい。この場合、加工コストを安価にできる。また、凹部としての貫通孔67を含む芯金28Aの全体が、塑性加工としての鍛造により形成されるのが、より好ましい。この場合には、芯金28Aの形成の際に、貫通孔67も一括して形成することができるので、製造コストをより一層安価にできる。
【0049】
また、本実施形態において、成形後のギヤ27Aの芯金28Aの貫通孔67の他端672の内周が、露出するようにされていてもよい。この点については、後述する第4の実施形態で説明する。
図10は、本発明の第3の実施形態のギヤ27Bの要部の断面図である。本実施形態では、図2に示すギヤ27、芯金28および凹部としての環状溝37に代えて、図10に示すギヤ27B、芯金28Bおよび凹部としての環状溝37Bが用いられている。ギヤ27B、芯金28Bおよび環状溝37Bは、下記の点で図2の対応する構成としてのギヤ27、芯金28および環状溝37と相違し、他の構成については同じであり、図2の対応する構成と同じ符合を付して説明を省略する。
【0050】
図10を参照して、ギヤ27Bは、環状の芯金28Bと、射出成形により芯金28Bの少なくとも一部(本実施形態では一部)をモールドした樹脂部材29とを有している。芯金28Bの側面34に、ゲート対向用の凹部としての環状溝37Bが設けられている。
環状溝37Bには、射出成形プロセスの結果としてのコールドスラグ38を含む樹脂部材29の一部291が充填されている。このコールドスラグ38は、ピンゲート方式のホットランナを用いた射出成形プロセスの結果として形成されてなる。環状溝37Bの全体、すなわち、一端371の全体、他端372の全体、および中間部373の全体に、樹脂部材29の一部291が充填されている。
【0051】
環状溝37Bの奥部は、他端372および中間部373を有している。環状溝37Bの奥部が、当該環状溝37Bの入口としての一端371よりも広くされている。例えば、環状溝37Bの奥部としての中間部373の幅L7が、環状溝37Bの一端371の幅L1よりも広くされている(L7>L1)。これにより、成形時に、環状溝37Bに捕獲されたコールドスラグ38が環状溝37Bから流出することを確実に防止できる。
【0052】
ギヤ27Bは、凹部としての環状溝37Bを有するので、上述の実施形態と同様に、凹部による上述した効果、すなわち、凹部内にコールドスラグ38を捕獲する効果、および個体毎で凹部の一端の大きさのばらつきを小さくできる効果を得ることができる。
また、コールドスラグ捕獲用の凹部が芯金28Bの中心281を中心とした環状溝37Bであるので、射出成形に際して、芯金28Bの周方向に凹部としての環状溝37Bをゲート59に対して位置合わせせずに済む。
【0053】
環状溝37Bの深さ方向に関する環状溝37Bの奥部としての他端372および中間部373の長さL8は、上述した非加熱領域の長さL4(図5参照)と等しいか、この長さよりも長い(L8≧L4)のが、コールドスラグ38を確実に捕獲する点で好ましい。
図11は、本発明の第4の実施形態のギヤ27Cの要部の断面図である。図12は、図11のギヤ27Cの樹脂部材29の製造用中間体を射出成形するときの芯金28A、金型52等の要部の断面図である。本実施形態では、凹部として、図2に示すギヤ27に代えて、図11に示すギヤ27Cが用いられている。ギヤ27Cは、以下の点で図6のギヤ27Aと異なり、他の構成については同じである。
【0054】
本実施形態では、成形後のギヤ27Cの芯金28Aの貫通孔67の他端672の内周が、露出するようにされている。この場合、成形時に、芯金28Aを、金型52のキャビティ53の周方向に位置決めする位置決め部材としての位置決めピン70を、上述の貫通孔67の他端672に挿入することが可能になる。
位置決めピン70は、円柱形状をなし、金型52におけるキャビティ53の軸方向に貫通孔67に対して対向する位置に配置され、キャビティ53の周方向および径方向について、ゲート59に対して位置合わせされている。位置決めピン70は、貫通孔67の数と同数でもよいし、この数よりも少なくてもよく、少なくとも一つがあればよい。
【0055】
金型52に芯金28Aを保持した状態で、位置決めピン70を貫通孔67の他端672の内周に嵌合させたときに、各貫通孔67の一端671と、これに対応するゲート59とが、ゲートの射出方向D1に対向するようになっている。
貫通孔67の他端672に挿入される位置決めピン70を用いることにより、射出成形するに際して、キャビティ53の周方向について、貫通孔67とゲート59との位置合わせが容易に行える。
【0056】
また、位置決めピン70が、貫通孔67の他端672に嵌合した状態では、この他端672は塞がれる。その結果、上述したように、コールドスラグ38を貫通孔67に確実に捕獲しておくことができる。また、成形時に位置決めピン70が貫通孔67の他端672に嵌合した結果として、成形後のギヤ27Cにおいては、貫通孔67の他端672は露出することになる。これとともに、各貫通孔67の一端671の全体、および中間部673の全体に、コールドスラグ38を含む樹脂部材29の一部291が充填されている。
【0057】
このように、本実施形態は、貫通孔67の他端672が露出する点を除いて、第2の実施形態と同じに構成されているので、第2の実施形態で説明した効果を同様に得ることができる。
以上、各実施形態で説明したように、樹脂部材29の一部291により充填された凹部の部分は、凹部の少なくとも一端の全体であればよい。これにより、凹部内にコールドスラグ38を捕獲する効果、および個体毎で凹部の一端の大きさのばらつきを小さくできる効果を、得ることができる。また、これらの効果は、凹部についての以下の各変形例においても得ることができる。
【0058】
第2の実施形態において、貫通孔67の奥部の少なくとも一部が、貫通孔67の入口よりも広くされてもよい。この場合には、第3の実施形態と同様に、成形時に、凹部に捕獲されたコールドスラグ38が凹部から流出することを確実に防止できる。
また、第2の実施形態において、貫通孔67に代えて、所定深さで形成された有底の孔を用いることも考えられる。この有底の孔の奥部は、入口と同寸法であってもよいし、有底の孔の奥部の少なくとも一部が、第3の実施形態と同様に入口よりも広くされていてもよい。凹部の奥部が入口よりも広い場合には、成形時に、凹部に捕獲されたコールドスラグ38が凹部から流出することを確実に防止できる。また、これら第2の実施形態の変形例を、第4の実施形態に適用してもよい。
【0059】
また、上述の各実施形態およびその変形例で説明した各種の凹部のうちの少なくとも2種を併用することも考えられる。
また、上述の第1の実施形態では、ギヤ27の樹脂部材29の製造用中間体が、芯金28をインサート成形されてなる場合に則して説明したが、これには限定されない。例えば、第1の実施形態のギヤ27の樹脂部材29が、芯金28をインサート成形されてなり、歯46も射出成形により形成されてもよい。この場合にも、樹脂部材29の製造用中間体が芯金28をインサート成形されてなる場合と同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、第1の実施形態のギヤ27は、ウォームホイールに適用された場合に則して説明したが、ウォームホイール以外のギヤ、例えば、平歯車、斜歯歯車、山歯歯車、傘歯車、ハイポイドギヤ等に適用しても良い。また、ギヤ27を、電動パワーステアリング装置の減速機以外の装置に適用してもよい。これらの第1の実施形態に関する変形例を、他の実施形態に適用してもよい。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0061】
27,27A,27B,27C…ギヤ、28,28A,28B…芯金、29…樹脂部材、37,37B…環状溝(凹部)、38…コールドスラグ、42…樹脂部材の外周、46…歯、56…ホットランナ、67…貫通孔(凹部)、281…中心軸線(芯金の中心)、291…(樹脂部材の)一部、371…一端(入口)、372…他端(奥部)、373…中間部(奥部)、671…一端、672…他端。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の電動パワーステアリング装置の減速機に使用されるギヤとしてのウォームホイールが、騒音を低減するために、環状の芯金と、芯金の外周を取り囲み外周に歯が形成される環状の合成樹脂部材とを有する場合がある。この場合に、合成樹脂部材を射出成形する際に、ギヤの芯金に設けられた凹部と、この凹部内に挿入された金型との間に、コールドスラグを捕獲するための溶融樹脂の流路を区画することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−305779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、凹部内において、射出成形時の溶融樹脂の流路が、芯金と金型という2つの部品により区画されるので、これら両部品の組み合わせ精度の影響で、流路の大きさのばらつきが大きくなる。その結果、流路がコールドスラグよりも過大になり、コールドスラグを捕獲できない場合がある。この場合、コールドスラグが金型内の歯成形部に到達し、ひいては、成形後の歯の強度が低下することが懸念される。また、成形後のギヤにおいて、芯金の凹部の一部に、合成樹脂部材が充填されている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、コールドスラグによる歯の強度の低下を確実に防止できるギヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、環状の芯金(28;28A;28B)と、外周(42)に歯(46)を有し、射出成形により上記芯金をモールドした樹脂部材(29)と、を備え、上記芯金には、射出成形プロセスの結果としてのコールドスラグ(38)を含む上記樹脂部材の一部(291)が充填されたゲート対向用の凹部(37;67;37B)が設けられており、上記凹部の少なくとも一端(371;671)の全体に、上記樹脂部材の上記一部が充填されていることを特徴とするギヤ(27;27A;27B;27C)である。
【0007】
本発明によれば、射出成形時には、例えば、ホットランナのピンゲートから押し出されたコールドスラグが金型内に流入し、ゲートと対向して配置された上記凹部に入り捕獲される。コールドスラグに続いて溶融樹脂が金型内に流入し、金型内に充填される。成形後のギヤにおいては、芯金の凹部の少なくとも一端の全体に、コールドスラグを含む樹脂部材が充填されている。
【0008】
また、芯金のみで、すなわち、単一の部品によりコールドスラグ捕獲用の凹部の少なくとも一端が区画されるので、個体毎で凹部の少なくとも一端の大きさのばらつきが小さくなる。その結果、凹部の一端においてコールドスラグの捕獲性能を左右する部分の寸法がコールドスラグよりも小さくなったり、逆に過大になったりすることが防止される。従って、各個体において、コールドスラグを凹部に確実に捕獲することができる。その結果、コールドスラグが金型内の例えば、歯形成用部成形用キャビティに到達することが防止される。ひいては、成形後の歯の強度が低下することが防止される。
【0009】
また、本発明において、上記凹部は、上記芯金(28;28B)の中心(281)を中心とした環状溝(37;37B)である場合がある(請求項2)。この場合、射出成形に際して、芯金の周方向に凹部をゲートに対して位置合わせせずに済み、製造が容易になる。
また、本発明において、上記凹部は、上記芯金(28A)を貫通する貫通孔(67)であり、上記貫通孔である上記凹部の他端(672)の周囲の上記芯金が露出している場合がある(請求項3)。この場合、射出成形時に、貫通孔の他端を金型により塞ぐことができるので、コールドスラグを貫通孔内に確実に捕獲しておくことができる。また、成形時に貫通孔の他端が金型により塞がれた結果として、成形後のギヤにおいては、貫通孔の他端の周囲の上記芯金が露出することになる。また、貫通孔であれば、深さ方向に凹部を深くできるので、成形時にコールドスラグを凹部内の奥深くに確実に捕獲できる。
【0010】
また、本発明において、上記凹部(37B)の奥部(372,373)が、上記凹部(37B)の入口(371)よりも広くされている場合がある(請求項4)。この場合、成形時に、凹部に捕獲されたスラグが凹部から流出することを確実に防止できる。
なお、上記括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を示すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態のギヤが適用された電動パワーステアリング装置の概略構成の模式図である。
【図2】図1のギヤの断面図である。
【図3】図2のギヤの側面図である。
【図4】図2のギヤの樹脂部材の製造用中間体を射出成形するときの芯金、金型等の断面図である。
【図5】図4の拡大図である。
【図6】本発明の第2の実施形態のギヤの断面図である。
【図7】図6のギヤの側面図である。
【図8】図6のギヤの樹脂部材の製造用中間体を射出成形するときの芯金、金型等の断面図である。
【図9】図8の拡大図である。
【図10】本発明の第3の実施形態のギヤの要部の断面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態のギヤの要部の断面図である。
【図12】図11のギヤの樹脂部材の製造用中間体を射出成形するときの芯金、金型等の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、ギヤが、自動車の電動パワーステアリング装置に適用された場合に則して説明する。なお、本実施形態のギヤが、電動パワーステアリング装置以外の装置に適用されてもよい。
図1は、本発明の第1の実施形態のギヤが適用された電動パワーステアリング装置の概略構成の模式図である。図1を参照し、電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering System)1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に第1の自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に第2の自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ピニオン軸7の端部近傍に設けられたピニオン8に噛み合うラック9を有して自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸10とを有している。
【0013】
ピニオン軸7およびラック軸10により、ラックアンドピニオン機構からなる転舵機構11が構成されている。ラック軸10は、車体(図示せず)に固定されるラックハウジング13内に図示しない複数の軸受を介して直線往復可能に支持されている。ラック軸10には、一対のタイロッド14が結合されている。各タイロッド14は対応するナックルアームを介して対応する転舵輪16に連結されている。
【0014】
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン8およびラック9によって、自動車の左右方向に関するラック軸10の直線運動に変換される。これにより、転舵輪16の転舵が達成される。
ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連なる入力軸17と、ピニオン軸7に連なる出力軸18とに分割されている。これら入力軸17および出力軸18はトーションバー19を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸17に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー19が弾性ねじり変形し、これにより、入力軸17および出力軸18が相対回転するようになっている。
【0015】
トーションバー19を介する入力軸17および出力軸18の間の相対回転変位量により操舵トルクを検出するトルクセンサ20が設けられている。また、車速を検出するための車速センサ21が設けられている。また、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)22が設けられている。また、操舵力(本実施形態では操舵補助力)を発生するためのアクチュエータとしての電動モータ23と、この電動モータ23の出力回転を減速する減速機24とが設けられている。
【0016】
トルクセンサ20および車速センサ21からの検出信号が、ECU22に入力されるようになっている。ECU22は、トルク検出結果や車速検出結果等に基づいて、操舵補助用の電動モータ23を制御する。電動モータ23の出力回転が減速機24を介して減速されてピニオン軸7に伝達され、ラック軸10の直線運動に変換されて、操舵が補助されるようになっている。
【0017】
減速機24は、電動モータ23により回転駆動される駆動ギヤとしてのウォーム軸26と、このウォーム軸26に噛み合う従動ギヤとしてのウォームホイール27とを有している。ウォームホイール27は、ステアリングシャフト3の出力軸18に同伴回転可能に連結されている。
本実施形態のギヤは、ウォームホイール27に適用されている。本実施形態では、電動パワーステアリング装置1の減速機24のギヤの騒音を低減するために、ウォームホイール27の歯部が合成樹脂により形成されている。なお、以下では、ウォームホイール27をギヤ27ともいう。
【0018】
図2は、図1のギヤ27の断面図である。図3は、図2のギヤ27の側面図である。図2と図3を参照して、ギヤ27は、環状の芯金28と、射出成形により芯金28の少なくとも一部をモールドした樹脂部材29とを有している。本実施形態では、樹脂部材29は、環状をなしており、芯金28を取り囲んでおり、芯金28の一部を覆っている。芯金28と樹脂部材29とは、互いに同心に配置されており、芯金28の軸方向に同伴移動可能に且つ同伴回転可能に互いに連結されている。
【0019】
芯金28は、金属部材により形成されている。また、芯金28は、外周32と、中央貫通孔を形成する内周33と、当該芯金28の軸方向に相対向する一対の側面34,35とを有している。各側面34,35は、樹脂部材29により覆われた第1の部分341,351と、露出した第2の部分342,352とを有している。第2の部分342,352は、対応する側面34,35において、対応する第1の部分341,351に対して、芯金28の径方向に関する内方寄りに配置されている。
【0020】
芯金28には、ゲート対向用の凹部としての環状溝37が設けられている。環状溝37は、芯金28の側面34の第1の部分341に形成されている。環状溝37は、芯金28の軸方向に見たときに環状をなし、芯金28の中心軸線281を中心としている。環状溝37は、芯金28の周方向に無端状に全周にわたって延びている。環状溝37の深さ方向は、芯金28の中心軸線281と平行な方向である。
【0021】
環状溝37は、当該環状溝37の深さ方向に関して、ゲート対向用の入口としての一端371と、有底の奥部としての他端372と、一端371および他端372の間にある奥部としての中間部373とを有している。
環状溝37には、射出成形プロセスの結果としてのコールドスラグ38を含む樹脂部材29の一部291が充填されている。コールドスラグ38は、ピンゲート方式のホットランナを用いた射出成形プロセスの結果として形成されてなる。環状溝37の全体、すなわち、一端371の全体、他端372の全体、および中間部373の全体に、樹脂部材29の一部291が充填されている。
【0022】
樹脂部材29は、外周42と、内周43と、芯金28の軸方向に相対向する一対の側面44,45とを有している。樹脂部材29の内周43が芯金28の外周32と連結されている。樹脂部材29の外周42は、複数の歯46を有している。
本実施形態の樹脂部材29は、製造用中間体(図示せず)に歯46を切削加工により形成されてなる。なお、この場合に則して以下説明するが、後述するように製造用中間体を用いずに、樹脂部材29の射出成形時に、ギヤ27の樹脂部材29の歯46も射出成形によって同時に形成するようにしてもよい。
【0023】
樹脂部材29の製造用中間体は、歯46を有していない点で、樹脂部材29と異なり、この点を除いて、樹脂部材29と、この樹脂部材29の製造用中間体とは互いに同じに構成されている。
図4は、図2のギヤ27の樹脂部材29の製造用中間体を射出成形するときの芯金28、金型52等の断面図である。図2と図4を参照して、ギヤ27の樹脂部材29の製造用中間体は、芯金28をインサート成形されてなる。インサート成形では、成形型としての以下の金型52を用いる。金型52は、樹脂部材29の製造用中間体の外形に対応した環状のキャビティ53と、このキャビティ53内に芯金28を保持する保持部54とを有している。また、金型52は、キャビティ53の一部分として、歯46を形成するための部分(具体的には製造用中間体の外周が相当する。)を成形する歯形成用部成形用キャビティ55を有している。また、金型52には、複数のホットランナ56が配置されている。なお、ホットランナ56は少なくとも一つが配置される。
【0024】
保持部54は、円柱形状をなし、キャビティ53の中心軸線531(金型52の中心軸線に相当する。)と同心に配置されており、芯金28の内周33と嵌合している。保持部54に保持された芯金28と、キャビティ53とは、互いに同心に配置されている。
ホットランナ56は、筒状に形成されている。ホットランナ56は、溶融した樹脂材料をゲート59に流す流路57と、この流路57内の樹脂材料を加熱するための加熱装置としての加熱配管58とを有している。ホットランナ56の流路57の端部は、開口されており、ゲート59を形成している。
【0025】
図3と図4を参照して、ゲート59は、複数カ所、例えば、4箇所に配置されている。これら複数のゲート59は、金型52のキャビティ53の中心軸線531を中心とした環状に配置されており、キャビティ53の周方向に均等に配置されている。なお、図3には、ギヤ27が金型52内にあるときのゲート59の位置を一点鎖線で図示した。
複数のゲート59が環状に配置されるその円と、保持部54に保持された芯金28の環状溝37とは、互いに同心に配置されている。また、各ゲート59の中心は、キャビティ53の中心軸線531を中心とした円上に配置されている。この円の直径は、芯金28の環状溝37の直径と等しくされている。環状溝37の直径は、環状溝37の幅方向に関する中心位置が描く円の直径である。但し、各ゲート59の全体が、環状溝37の一部に対向していれば、複数のゲート59が配置された円であってキャビティ53の中心軸線531を中心とする円の直径と、芯金28の環状溝37の直径とが、互いに等しくなくてもよい。
【0026】
図2と図4を参照して、各ゲート59からの樹脂の射出方向D1は、キャビティ53の中心軸線531と平行な方向に設定されている。各ゲート59は、保持部54に保持された芯金28の側面34の環状溝37と、当該ゲート59の射出方向D1に対向している。ゲート59の射出方向D1に見たときに、当該ゲート59の全体と環状溝37の一部とが、互いに重なり合うように配置されている。各ゲート59は、金型52の歯形成用部成形用キャビティ55を避けて配置され、例えば、歯形成用部成形用キャビティ55から径方向内方に離隔した位置に配置されている。
【0027】
加熱配管58により加熱されることにより、流路57内には、溶融状態の樹脂材料が溜まっている。一方で、流路57の端部は加熱配管58により十分に加熱されないので、通例、流路57の端部には、コールドスラグ38が形成される。
各ホットランナ56には、溶融した合成樹脂材料が射出成形機(図示せず)により供給されるようになっている。溶融した合成樹脂材料が各ホットランナ56のゲート59を通じてキャビティ53に注入される。このとき、溶融した合成樹脂材料に先立って、コールドスラグ38がキャビティ53内に押し出される。
【0028】
金型52は、具体的には、可動型60と固定型61とを有している。可動型60は、固定型61と合わせた際にキャビティ53の一部を区画する環状凹部62を有している。環状凹部62の内周面は、上述の歯形成用部成形用キャビティ55として機能する。環状凹部62の中央には、突起状の保持部54が形成されている。
固定型61は、可動型60と対向する対向面63を有している。可動型60と固定型61とを合わせた状態で、対向面63の一部が、キャビティ53の一部を区画している。すなわち、固定型61の対向面63と、可動型60に保持された芯金28の側面34の第1の部分341との間には、所定間隔の隙間が開けられている。この隙間は、芯金28の周方向の全周に形成されている。この隙間は、溶融した樹脂材料が流れる流路として機能する。各ホットランナ56のゲート59は、ピンゲートを構成しており、固定型61の対向面63において上述の隙間に臨んで配置されている。
【0029】
芯金28は、樹脂部材29の製造用中間体の樹脂成形時にギヤ成形用の金型52内にインサートされる。芯金28は、樹脂部材29の製造用中間体を成形するときに、成形型の一部として機能する。金型インサートとしての芯金28をギヤ成形用の金型52内に挿入した状態で、溶融状態の樹脂材料を射出成形(インサート成形)することにより、樹脂材料を金型内に充填する。金型内の樹脂材料が固化することにより、成形品としての樹脂部材29の製造用中間体が得られる。得られた製造用中間体が、芯金28を覆っている。これとともに、製造用中間体が成形されることにより、芯金28と製造用中間体とが同行回転可能に結合される。その後、樹脂部材29の製造用中間体の外周に歯46を切削加工により形成する。これにより、ギヤ27が得られる。
【0030】
本実施形態によれば、上述した射出成形時には、例えば、ホットランナ56のピンゲート59から押し出されたコールドスラグ38が金型52内に流入し、ゲート59と対向して配置された凹部としての環状溝37に入り捕獲される。コールドスラグ38に続いて溶融樹脂が金型52内に流入し、環状溝37内にコールドスラグ38を止めつつ、金型52内に充填される。成形後のギヤ27においては、芯金28の環状溝37の全体に、コールドスラグ38を含む樹脂部材29が充填されている。
【0031】
また、芯金28のみで、すなわち、単一の部品によりコールドスラグ捕獲用の凹部としての環状溝37が区画されるので、芯金28の個体毎で環状溝37の大きさのばらつきが小さくなる。その結果、環状溝37の一端371においてコールドスラグ38の捕獲性能を左右する部分の寸法(本実施形態では、環状溝37の一端371の幅L1が相当する。)がコールドスラグ38よりも小さくなったり、逆に過大になったりすることが防止される。従って、各個体において、コールドスラグ38を環状溝37に確実に捕獲することができる。その結果、コールドスラグ38が金型52内において、成形後のギヤにおいて強度を要する部分を成形するためのキャビティ、例えば、歯形成用部成形用キャビティ55に到達することが防止される。ひいては、成形後の歯46の強度が低下することが防止される。
【0032】
例えば、コールドスラグ38の混入によるギヤ27の極端な強度低下や、耐久性の低下(早期破損)を防止できる。また、ギヤ27の大量生産時に、上述のようなコールドスラグ38による不良品の発生率を小さくできる。
また、コールドスラグ捕獲用の凹部は、芯金28の中心281を中心とした環状溝37である。これにより、射出成形に際して、芯金28の周方向に、凹部としての環状溝37をゲート59に対して位置合わせせずに済み、製造が容易になる。例えば、環状溝37は、多点ゲートの場合に好適である。
【0033】
また、ピンゲート方式のホットランナ56を用いているので、使用樹脂量を少なくでき、これとともに、金型52からの成形品の取り出し時に、樹脂部材29の製造用中間体をゲート59で自動切断することができる。従って、製造コストを安価にできる。
また、凹部としての環状溝37内に金型52の一部を配置せずに済むので、金型52を簡素化でき、また、金型52の傷みを抑制できる。
【0034】
図5は、図4の拡大図である。図5を参照して、環状溝37の一端371は、凹部においてコールドスラグ38の捕獲性能を左右する部分として機能する。この部分の寸法は、本実施形態では、環状溝37の一端371の幅L1(環状溝37の周方向および深さ方向の双方に直交する方向の寸法)として与えられる。この幅L1は、ゲート59の大きさ、例えば、ゲート59の直径L2よりも大きくされ(L1>L2)、且つ過大でない大きさ(捕獲に適した大きさ)に設定されている。これにより、コールドスラグ38が環状溝37に入り易く且つ環状溝37から離脱し難くされている。
【0035】
また、環状溝37の深さL3は、ホットランナ56の端部における非加熱領域の長さL4と等しいか、この長さL4よりも大きくするのが(L3≧L4)、コールドスラグ38の離脱を防止するのに好ましい。ここで、上述の非加熱領域の長さL4は、ホットランナ56の流路57に沿って測ったときのゲート59から、当該ゲート59寄りの加熱配管58の端部までの距離である。
【0036】
凹部としての環状溝37は、塑性加工としての鍛造により形成されるのが好ましい。この場合、加工コストを安価にできる。また、凹部としての環状溝37を含む芯金28の全体が、塑性加工としての鍛造により形成されるのが、より好ましい。この場合には、芯金28の形成の際に、環状溝37も一括して形成することができるので、製造コストをより一層安価にできる。
【0037】
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明する。他の構成については、上述の実施形態と同様であるので、同一符号を付して、その説明を省略する。
例えば、図6は、本発明の第2の実施形態のギヤ27Aの断面図である。図7は、図6のギヤ27Aの側面図である。図8は、図6のギヤ27Aの樹脂部材29の製造用中間体を射出成形するときの芯金28A、金型52等の断面図である。図6のギヤ27Aは、図2のギヤ27に代えて用いられる。また、図6のギヤ27Aでは、図2の芯金28Aおよび環状溝37に代えて、図6の芯金28Aおよび貫通孔67が用いられている。芯金28Aは、下記の点で図2の芯金28と相違し、他の構成については同じであり、芯金28の対応する構成と同じ符合を付して説明を省略する。
【0038】
図6と図7を参照して、ギヤ27Aは、環状の芯金28Aと、射出成形により芯金28Aの少なくとも一部(本実施形態では一部)をモールドした樹脂部材29とを有している。
芯金28Aは、外周32と、内周33と、当該芯金28Aの軸方向に相対向する一対の側面34,35とを有している。各側面34,35は、樹脂部材29により覆われた第1の部分341,351と、露出した第2の部分342,352とを有している。
【0039】
芯金28Aには、ゲート対向用の凹部としての複数の貫通孔67が設けられている。各貫通孔67は、芯金28Aを当該芯金28Aの軸方向に貫通しており、例えば、円柱形状をなしている。各貫通孔67の深さ方向は、芯金28Aの中心軸線281と平行な方向である。各貫通孔67の中心は、芯金28Aの中心軸線281から離隔して、芯金28Aの中心軸線281を中心とした円上に配置されている。この円上にある複数の貫通孔67の中心は、芯金28Aの周方向に均等に離隔して配置されており、芯金28Aの径方向に関して互いに等しい位置に配置されている。
【0040】
各貫通孔67は、当該貫通孔67の深さ方向に関して、ゲート対向用の入口としての一端671と、奥部としての他端672と、一端671および他端672の間にある奥部としての中間部673とを有している。
各貫通孔67には、射出成形プロセスの結果としてのコールドスラグ38を含む樹脂部材29の一部291が充填されている。このコールドスラグ38は、ピンゲート方式のホットランナを用いた射出成形プロセスの結果として形成されてなる。各貫通孔67におけるその全体、すなわち、一端671の全体、他端672の全体、および中間部673の全体に、樹脂部材29の一部291が充填されている。
【0041】
各貫通孔67の一端671は、芯金28Aの側面34の第1の部分341に形成されており、樹脂部材29により覆われている。他端672は、芯金28Aの側面35の第2の部分352に配置されている。側面35における貫通孔67の他端672の周囲にある部分353は、露出されている。
樹脂部材29は、外周42と、内周43と、芯金28Aの軸方向に相対向する一対の側面44,45とを有している。外周42は、複数の歯46を有している。
【0042】
図6と図8を参照して、金型52は、貫通孔67の他端672を塞ぐ閉塞部69を有している。この閉塞部69が、保持部54に保持された芯金28Aの側面35の上述の部分353に当接する。樹脂成形時に、貫通孔67の他端672から、貫通孔67内の溶融樹脂やコールドスラグ38が流出することを防止する。
各ゲート59は、保持部54に保持された芯金28の側面34の対応する貫通孔67と、当該ゲート59の射出方向D1に対向している。すなわち、貫通孔67と、ゲート59とは、互いに等しい数とされている。複数のゲート59の中心が配置される円と、保持部54に保持された芯金28Aの複数の貫通孔67の中心が配置される円とは、互いに同心に配置され、且つ互いに等しい直径とされている。複数のゲート59の中心と、保持部54に保持された芯金28Aの複数の貫通孔67の中心とは、芯金28Aの周方向に関する互いに等しい位置に配置されている。
【0043】
但し、各ゲート59の全体が、対応する貫通孔67の一部に対向していれば、複数のゲート59が配置された円であってキャビティ53の中心軸線531を中心とする円の直径と、芯金28Aの複数の貫通孔67の中心が配置される円の直径とが、互いに等しくなくてもよい。
図7と図8を参照して、ゲート59の射出方向D1に見たときに、当該ゲート59の全体と、対応する貫通孔67の一部とが、互いに重なり合うように配置されている。例えば、芯金28Aが金型52の保持部54に保持された状態で、複数の貫通孔67は、キャビティ53の中心軸線531を中心として環状に配置されるとともに、対応するゲート59と対向するように、このゲート59に対してキャビティ53の周方向に位置決めされる。なお、図7に、ギヤ27Aが金型52内にあるときのゲート59の位置を一点鎖線で図示した。
【0044】
図6と図8を参照して、射出成形時には、例えば、ホットランナ56のピンゲート59から押し出されたコールドスラグ38が金型52内に流入し、ゲート59と対向して配置された凹部としての貫通孔67に入り捕獲される。このとき、貫通孔67の他端672は、金型52の閉塞部69により塞がれており、コールドスラグ38は貫通孔67から離脱しない。コールドスラグ38に続いて溶融樹脂が金型52内に流入し、凹部としての貫通孔67内にコールドスラグ38を押し止めつつ、金型52内に充填される。成形後のギヤ27Aにおいては、芯金28Aの凹部としての貫通孔67の全体に、コールドスラグ38を含む樹脂部材29が充填されている。
【0045】
また、芯金28Aのみで、すなわち、単一の部品によりコールドスラグ捕獲用の凹部としての貫通孔67が区画されるので、個体毎で凹部としての貫通孔67の大きさのばらつきが小さくなる。その結果、凹部としての貫通孔67の一端671においてコールドスラグ38の捕獲性能を左右する部分の寸法(本実施形態では、貫通孔67の一端671の直径L5が相当する。)がコールドスラグ38よりも小さくなったり、逆に過大になったりすることが防止される。従って、各個体において、コールドスラグ38を凹部としての貫通孔67に確実に捕獲することができる。その結果、コールドスラグ38が金型52内の例えば、歯形成用部成形用キャビティ55に到達することが防止される。ひいては、成形後の歯46の強度が低下することが防止される。
【0046】
また、凹部は、芯金28Aを貫通する貫通孔67であり、この貫通孔67の他端672の周囲にある芯金28Aの側面35の上述の部分353が露出している。この場合、射出成形時に、貫通孔67の他端672を金型52の閉塞部69により塞ぐことができるので、コールドスラグ38が貫通孔67の他端672から離脱することを防止でき、その結果、コールドスラグ38を貫通孔67内に確実に捕獲しておくことができる。また、成形時に貫通孔67の他端672が金型52の閉塞部69により塞がれた結果として、成形後のギヤ27Aにおいては、貫通孔67の他端672の周囲にある芯金28Aの部分353が露出することになる。また、貫通孔67であれば、有底の孔と比較して、深さ方向に凹部を深くできるので、樹脂成形時にコールドスラグ38を凹部内の奥深くに確実に捕獲できる。
【0047】
図9は、図8の拡大図である。図9を参照して、貫通孔67の一端671は、凹部においてコールドスラグ38の捕獲性能を左右する部分として機能する。この部分の寸法は、本実施形態では、上述の一端671の直径L5として与えられる。この直径L5は、ゲート59の大きさ、例えば、ゲート59の直径L2よりも大きく(L5>L2)され、且つ過大でない大きさ(捕獲に適した大きさ)に設定されている。これにより、コールドスラグ38が貫通孔67に入り易く且つ貫通孔67から離脱し難くされている。
【0048】
また、貫通孔67において樹脂部材29の一部291が充填された領域の深さL6(本実施形態では、この深さは、貫通孔67の全領域にわたる深さに相当する。)は、ホットランナ56の端部における上述の非加熱領域の長さL4と等しいか、この長さL4よりも大きくするのが(L6≧L4)、コールドスラグ38の離脱を防止するのに好ましい。
凹部としての貫通孔67は、塑性加工としての鍛造により形成されるのが好ましい。この場合、加工コストを安価にできる。また、凹部としての貫通孔67を含む芯金28Aの全体が、塑性加工としての鍛造により形成されるのが、より好ましい。この場合には、芯金28Aの形成の際に、貫通孔67も一括して形成することができるので、製造コストをより一層安価にできる。
【0049】
また、本実施形態において、成形後のギヤ27Aの芯金28Aの貫通孔67の他端672の内周が、露出するようにされていてもよい。この点については、後述する第4の実施形態で説明する。
図10は、本発明の第3の実施形態のギヤ27Bの要部の断面図である。本実施形態では、図2に示すギヤ27、芯金28および凹部としての環状溝37に代えて、図10に示すギヤ27B、芯金28Bおよび凹部としての環状溝37Bが用いられている。ギヤ27B、芯金28Bおよび環状溝37Bは、下記の点で図2の対応する構成としてのギヤ27、芯金28および環状溝37と相違し、他の構成については同じであり、図2の対応する構成と同じ符合を付して説明を省略する。
【0050】
図10を参照して、ギヤ27Bは、環状の芯金28Bと、射出成形により芯金28Bの少なくとも一部(本実施形態では一部)をモールドした樹脂部材29とを有している。芯金28Bの側面34に、ゲート対向用の凹部としての環状溝37Bが設けられている。
環状溝37Bには、射出成形プロセスの結果としてのコールドスラグ38を含む樹脂部材29の一部291が充填されている。このコールドスラグ38は、ピンゲート方式のホットランナを用いた射出成形プロセスの結果として形成されてなる。環状溝37Bの全体、すなわち、一端371の全体、他端372の全体、および中間部373の全体に、樹脂部材29の一部291が充填されている。
【0051】
環状溝37Bの奥部は、他端372および中間部373を有している。環状溝37Bの奥部が、当該環状溝37Bの入口としての一端371よりも広くされている。例えば、環状溝37Bの奥部としての中間部373の幅L7が、環状溝37Bの一端371の幅L1よりも広くされている(L7>L1)。これにより、成形時に、環状溝37Bに捕獲されたコールドスラグ38が環状溝37Bから流出することを確実に防止できる。
【0052】
ギヤ27Bは、凹部としての環状溝37Bを有するので、上述の実施形態と同様に、凹部による上述した効果、すなわち、凹部内にコールドスラグ38を捕獲する効果、および個体毎で凹部の一端の大きさのばらつきを小さくできる効果を得ることができる。
また、コールドスラグ捕獲用の凹部が芯金28Bの中心281を中心とした環状溝37Bであるので、射出成形に際して、芯金28Bの周方向に凹部としての環状溝37Bをゲート59に対して位置合わせせずに済む。
【0053】
環状溝37Bの深さ方向に関する環状溝37Bの奥部としての他端372および中間部373の長さL8は、上述した非加熱領域の長さL4(図5参照)と等しいか、この長さよりも長い(L8≧L4)のが、コールドスラグ38を確実に捕獲する点で好ましい。
図11は、本発明の第4の実施形態のギヤ27Cの要部の断面図である。図12は、図11のギヤ27Cの樹脂部材29の製造用中間体を射出成形するときの芯金28A、金型52等の要部の断面図である。本実施形態では、凹部として、図2に示すギヤ27に代えて、図11に示すギヤ27Cが用いられている。ギヤ27Cは、以下の点で図6のギヤ27Aと異なり、他の構成については同じである。
【0054】
本実施形態では、成形後のギヤ27Cの芯金28Aの貫通孔67の他端672の内周が、露出するようにされている。この場合、成形時に、芯金28Aを、金型52のキャビティ53の周方向に位置決めする位置決め部材としての位置決めピン70を、上述の貫通孔67の他端672に挿入することが可能になる。
位置決めピン70は、円柱形状をなし、金型52におけるキャビティ53の軸方向に貫通孔67に対して対向する位置に配置され、キャビティ53の周方向および径方向について、ゲート59に対して位置合わせされている。位置決めピン70は、貫通孔67の数と同数でもよいし、この数よりも少なくてもよく、少なくとも一つがあればよい。
【0055】
金型52に芯金28Aを保持した状態で、位置決めピン70を貫通孔67の他端672の内周に嵌合させたときに、各貫通孔67の一端671と、これに対応するゲート59とが、ゲートの射出方向D1に対向するようになっている。
貫通孔67の他端672に挿入される位置決めピン70を用いることにより、射出成形するに際して、キャビティ53の周方向について、貫通孔67とゲート59との位置合わせが容易に行える。
【0056】
また、位置決めピン70が、貫通孔67の他端672に嵌合した状態では、この他端672は塞がれる。その結果、上述したように、コールドスラグ38を貫通孔67に確実に捕獲しておくことができる。また、成形時に位置決めピン70が貫通孔67の他端672に嵌合した結果として、成形後のギヤ27Cにおいては、貫通孔67の他端672は露出することになる。これとともに、各貫通孔67の一端671の全体、および中間部673の全体に、コールドスラグ38を含む樹脂部材29の一部291が充填されている。
【0057】
このように、本実施形態は、貫通孔67の他端672が露出する点を除いて、第2の実施形態と同じに構成されているので、第2の実施形態で説明した効果を同様に得ることができる。
以上、各実施形態で説明したように、樹脂部材29の一部291により充填された凹部の部分は、凹部の少なくとも一端の全体であればよい。これにより、凹部内にコールドスラグ38を捕獲する効果、および個体毎で凹部の一端の大きさのばらつきを小さくできる効果を、得ることができる。また、これらの効果は、凹部についての以下の各変形例においても得ることができる。
【0058】
第2の実施形態において、貫通孔67の奥部の少なくとも一部が、貫通孔67の入口よりも広くされてもよい。この場合には、第3の実施形態と同様に、成形時に、凹部に捕獲されたコールドスラグ38が凹部から流出することを確実に防止できる。
また、第2の実施形態において、貫通孔67に代えて、所定深さで形成された有底の孔を用いることも考えられる。この有底の孔の奥部は、入口と同寸法であってもよいし、有底の孔の奥部の少なくとも一部が、第3の実施形態と同様に入口よりも広くされていてもよい。凹部の奥部が入口よりも広い場合には、成形時に、凹部に捕獲されたコールドスラグ38が凹部から流出することを確実に防止できる。また、これら第2の実施形態の変形例を、第4の実施形態に適用してもよい。
【0059】
また、上述の各実施形態およびその変形例で説明した各種の凹部のうちの少なくとも2種を併用することも考えられる。
また、上述の第1の実施形態では、ギヤ27の樹脂部材29の製造用中間体が、芯金28をインサート成形されてなる場合に則して説明したが、これには限定されない。例えば、第1の実施形態のギヤ27の樹脂部材29が、芯金28をインサート成形されてなり、歯46も射出成形により形成されてもよい。この場合にも、樹脂部材29の製造用中間体が芯金28をインサート成形されてなる場合と同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、第1の実施形態のギヤ27は、ウォームホイールに適用された場合に則して説明したが、ウォームホイール以外のギヤ、例えば、平歯車、斜歯歯車、山歯歯車、傘歯車、ハイポイドギヤ等に適用しても良い。また、ギヤ27を、電動パワーステアリング装置の減速機以外の装置に適用してもよい。これらの第1の実施形態に関する変形例を、他の実施形態に適用してもよい。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0061】
27,27A,27B,27C…ギヤ、28,28A,28B…芯金、29…樹脂部材、37,37B…環状溝(凹部)、38…コールドスラグ、42…樹脂部材の外周、46…歯、56…ホットランナ、67…貫通孔(凹部)、281…中心軸線(芯金の中心)、291…(樹脂部材の)一部、371…一端(入口)、372…他端(奥部)、373…中間部(奥部)、671…一端、672…他端。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の芯金と、
外周に歯を有し、射出成形により上記芯金をモールドした樹脂部材と、を備え、
上記芯金には、射出成形プロセスの結果としてのコールドスラグを含む上記樹脂部材の一部が充填されたゲート対向用の凹部が設けられており、
上記凹部の少なくとも一端の全体に、上記樹脂部材の上記一部が充填されていることを特徴とするギヤ。
【請求項2】
請求項1において、上記凹部は、上記芯金の中心を中心とした環状溝であることを特徴とするギヤ。
【請求項3】
請求項1において、上記凹部は、上記芯金を貫通する貫通孔であり、上記貫通孔である上記凹部の他端の周囲の上記芯金が露出していることを特徴とするギヤ。
【請求項4】
請求項1において、上記凹部の奥部が、上記凹部の入口よりも広くされていることを特徴とするギヤ。
【請求項1】
環状の芯金と、
外周に歯を有し、射出成形により上記芯金をモールドした樹脂部材と、を備え、
上記芯金には、射出成形プロセスの結果としてのコールドスラグを含む上記樹脂部材の一部が充填されたゲート対向用の凹部が設けられており、
上記凹部の少なくとも一端の全体に、上記樹脂部材の上記一部が充填されていることを特徴とするギヤ。
【請求項2】
請求項1において、上記凹部は、上記芯金の中心を中心とした環状溝であることを特徴とするギヤ。
【請求項3】
請求項1において、上記凹部は、上記芯金を貫通する貫通孔であり、上記貫通孔である上記凹部の他端の周囲の上記芯金が露出していることを特徴とするギヤ。
【請求項4】
請求項1において、上記凹部の奥部が、上記凹部の入口よりも広くされていることを特徴とするギヤ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−202682(P2011−202682A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67978(P2010−67978)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]