説明

ギ酸ギ酸塩を製造するための方法及び装置及びその使用

(a) ギ酸メチルエステルを水で部分的に加水分解し、
(b) 方法工程(a)で得られた反応混合物からギ酸メチルエステルとメタノールとを蒸留により分離して、ギ酸と水とを含有するフローを形成させ、
(c) 方法工程(b)からのこのギ酸と水とを含有するフローを、相応するギ酸塩と混合して、ギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物を形成させる、ギ酸ギ酸塩の製造方法、その製造のための装置及びその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギ酸メチルエステル、水及び塩基性化合物から出発して、ギ酸ギ酸塩を製造する方法及び装置に関する。
【0002】
更に、本発明は、植物性及び/又は動物性材料の保存及び/又は酸性化のための、バイオ廃棄物の処理のための並びに動物飼料中の添加物として及び/又は動物用の成長促進剤としてのギ酸ギ酸塩の使用に関する。
【0003】
ギ酸ギ酸塩は抗微生物性の作用を有し、例えば植物性及び/又は動物性の材料、例えば牧草、農業製品又は肉の保存並びに酸性化のため、バイオ廃棄物の処理のため、又は動物飼料の添加物として使用される。
【0004】
ギ酸ギ酸塩及びその製造方法は、以前から公知である。Gmelins Handbuch der anorganischen Chemie,第8版、第21番、第816〜819頁、Verlag Chemie GmbH, Berlin 1928並びに第22番、第919〜921頁、Verlag Chemie GmbH, Berlin 1937には、ギ酸ナトリウム並びにギ酸カリウムをギ酸中に溶かすことによる二ギ酸ナトリウム並びに二ギ酸カリウムの製造方法が記載されている。温度低下もしくは過剰のギ酸の蒸発により結晶化した二ギ酸塩が得られる。
【0005】
DE 424 017は、ギ酸ナトリウムを相応するモル比で水性ギ酸中に導入することにより多様な酸含有率を有するギ酸ギ酸ナトリウムを製造することを教示している。この溶液を冷却することにより相応する結晶を得ることができる。
【0006】
J. Kendall et al.著、Journal of the American Chemical Society, Vol. 43, 1921, p. 1470 - 1481によると、90%のギ酸中に炭酸カリウムを溶解することにより二酸化炭素の形成下にギ酸ギ酸カリウムが得られる。この相応する固体は結晶化により得ることができる。
【0007】
US 4,261,755は、過剰のギ酸と、相応するカチオンの水酸化物、炭酸塩又は炭酸水素塩との反応によるギ酸ギ酸塩の製造を記載している。
【0008】
WO 96/35657は、ギ酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸セシウム、ギ酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素セシウム又はアンモニアを、場合により水性のギ酸と一緒に混合し、引き続きこの反応混合物を冷却し、得られた懸濁液を濾過し、得られた濾過ケークを乾燥し並びに濾液を返送することによる、ギ酸の二塩を含む生成物の製造を教示している。
【0009】
前記の方法の欠点は、形成されるギ酸塩1Molあたり、塩基性化合物との反応によりそれぞれギ酸1Molが消費されることである。つまり、濃縮された、つまり十分に水不含のギ酸の製造は、装置的に費用がかかり、高コストでかつエネルギー消費の高いプロセスであることは公知である。従って、上記の方法は、全体の有用物質製造プロセスに関して、装置的に極めて費用がかかり、高コストでかつエネルギー消費が高い。
【0010】
ドイツ国特許出願第10210730.0号は、ギ酸メチルエステルと水及び塩基性化合物(この塩基性化合物は≧3の相応する解離度の共役酸のpK値を有する)との反応及び引き続く生成したメタノールの分離並びにギ酸の添加による所望の酸含有量の調節によるギ酸ギ酸塩の製造を教示している。
【0011】
ドイツ国特許出願第10154757.9号は、水及び触媒の存在での相応する金属水酸化物のカルボニル化により金属ギ酸塩を得て、水及び触媒の蒸留により分離し及び所望の金属ギ酸塩−ギ酸−混合物を得るためのギ酸を添加することによる金属ギ酸塩−ギ酸−混合物の製造を教示している。
【0012】
従って、本発明の課題は、上記の欠点をもはや有していない、工業的規模で、高い収率かつ高い空時収率で、同時に組成に関して柔軟性が高く、かつ容易に入手可能な原料を使用することができ、かつ低い投資コストでかつ低いエネルギー必要量の簡単な方法様式の、ギ酸ギ酸塩を製造することができる方法を提供することである。
【0013】
従って、
(a) ギ酸メチルエステルを水で部分的に加水分解し、
(b) 方法工程(a)で得られた反応混合物からギ酸メチルエステルとメタノールとを蒸留により分離して、ギ酸と水とを含有するフローを形成させ、
(c) 方法工程(b)からのこのギ酸と水とを含有するフローを、相応するギ酸塩と合流させて、ギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物を形成させる
ことを特徴とする、ギ酸ギ酸塩の製造方法が見出された。
【0014】
ギ酸ギ酸塩とは、ギ酸アニオン(HCOO)、カチオン(Mx+)及びギ酸(HCOOH)を含有する化合物及び混合物であると解釈される。これは、一緒に固体又は液体の形で存在することができ、かつ場合により付加的な成分、例えば塩、添加剤又は溶剤、例えば水を含有していてもよい。一般に、このギ酸ギ酸塩は次の式により表すことができる:
HCOOx+1/x ・ y HCOOH (I)
[式中、Mは1価又は多価の、無機又は有機カチオンを表し、xは正の整数であり、かつカチオンの電荷を示し、かつyはギ酸アニオンに対するギ酸のモル割合を表す]ギ酸アニオンに対するギ酸のモル割合yは、一般に0.01〜100、有利に0.05〜20、特に有利に0.5〜5、殊に0.9〜3.1である。
【0015】
無機又は有機のカチオンMx+の性質は、このカチオンがギ酸ギ酸塩を処理すべき条件下で安定である限り、原則として重大ではない。これは、例えば還元作用するギ酸アニオンに対して安定であると解釈することもできる。可能な無機カチオンとして、周期表の第1族〜第14族の金属の1価及び/又は多価の金属カチオン、例えばリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)、ストロンチウム(Sr2+)及びバリウム(Ba2+)、有利にナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)及びカルシウム(Ca2+)が挙げられる。可能な有機カチオンとして、非置換のアンモニウム(NH4+)及び1つ又は複数の炭素を含有する基(この基は場合により相互に結合していてもよい)により置換されたアンモニウム、例えばメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ピロリジニウム、N−メチルピロリジニウム、ピペリジニウム、N−メチルピペリジニウム又はピリジニウムが挙げられる。
【0016】
炭素を含有する有機基とは、1〜30個の炭素原子を有する、非置換の又は置換された、脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族基であると解釈される。この基は、1つ又は複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄又はリン、例えば−O−、−S−、−NR−、−CO−、−N=、−PR−及び/又は−PRを有していてもよく、かつ/又は例えば酸素、窒素、硫黄及び/又はハロゲンを有する1つ又は複数の基、例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード及び/又はシアノ基(その際、基Rは同様に炭素原子を有する有機基である)により置換されていてもよい。炭素を有する有機基は、1価又は多価の、例えば2価又は3価の基であることができる。
【0017】
次に、個々の方法工程を詳説する:
方法工程(a)
方法工程(a)において、ギ酸メチルエステルを水で部分的に加水分解して、ギ酸及びメタノールにする。部分的にとは、供給されたギ酸メチルエステルの一部だけが加水分解されると解釈される。
【0018】
本発明による方法の場合に、方法工程(a)において、ギ酸メチルエステルの加水分解のための自体公知の方法を使用することができる。加水分解のための公知の及び工業的に重要な方法の一般的な概要は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 6th edition, 2000 electronic release, Chapter“FORMIC ACID, Production”に記載されている。他の適当な加水分解法は、例えばEP-A 0 005 998及びEP-A 0 017 866に記載されている。
【0019】
この加水分解は、一般に80〜150℃の温度でかつ0.5〜2.0MPa absの圧力で実施される。反応装置として、原則として、液相中での反応に適している全ての反応装置を使用することができる。例として、撹拌槽及びジェットループ型反応器が挙げられる。カスケード式反応器の使用も有利である。
【0020】
一般に、酸性触媒の存在で加水分解を実施するのが有利である、それというのもこの触媒は加水分解速度を著しく高めるためである。酸性触媒として、生成されたギ酸又は付加的な触媒を使用することができる。付加的な触媒は均一性又は不均一性の性質を有することができる。不均一系触媒の例として、酸性のイオン交換体、例えばポリスルホン酸又はポリ(ペルフルオロアルキレン)スルホン酸(例えばDu Pont社のNafion(R))が挙げられ、均一系触媒の例として、無機又は有機の強酸、例えば硫酸、塩化水素酸又はアルキルスルホン酸及びトリルスルホン酸が挙げられる。均一系触媒を使用する場合には、一般に次の工程で分離しなければならない。製造すべきギ酸ギ酸塩の所望の純度に応じて、場合により均一系触媒を系中に放置することも可能である。この場合、酸性触媒は通常ではその塩の形でギ酸ギ酸塩中に見られる。酸性触媒としてギ酸の存在で部分的な加水分解を実施するのが特に有利であり、それにより、付加的触媒の添加及び引き続く分離もしくは場合によるギ酸ギ酸塩の汚染は行われない。一般に、このため、反応の入口で、存在する液状の、水及びギ酸メチルエステルを含有する混合物に対して約0.1〜2質量%のギ酸濃度が、ギ酸もしくはギ酸含有フローの適切な添加により調節される。
【0021】
本発明による方法の場合に、加水分解の際に使用されるべきギ酸メチルエステル対水のモル比は、一般に0.1〜10である。これは平衡反応であるために、例えば、EP-A 0 017 866の教示からも明らかなように、有利に過剰量の水が使用される。方法工程(a)においてギ酸メチルエステル及び水を0.1〜1のモル比で、特に有利に0.15〜0.3のモル比で供給するのが有利である。
【0022】
部分的な加水分解により得られたこの反応混合物は、従って未反応のギ酸メチルエステル、ギ酸、メタノール並びに、水過剰量の有利な使用に基づき水を含有する。有利にこの水性反応混合物はギ酸5〜15Mol%、特に有利に8〜12Mol%、ギ酸メチルエステル3〜30Mol%、特に有利に6〜12Mol%及びメタノール6〜15Mol%、特に有利に8〜12Mol%を含有する。
【0023】
方法工程(b)
反応工程(b)において、方法工程(a)中で得られた反応混合物から、ギ酸メチルエステル及びメタノールを蒸留により分離し、ギ酸と水とを含有するフローを形成させる。ギ酸メチルエステル及びメタノールは、この場合原則として一つのフローの形で一緒に分離されるか又はギ酸メチルエステルを含有するフローの形とメタノールを含有するフローの形とに別個に分離されることができる。一般に、ギ酸メチルエステルとメタノールとは、塔の上方部分で別個に又は一緒に取り出される。このギ酸と水とを含有するフローは一般に塔底から取り出される。方法工程(b)では、ギ酸メチルエステルとメタノールとを含有するフローを一緒に分離するのが有利である。
【0024】
蒸留塔の設計及び運転は、まず最初に、供給されるフローの組成並びに2つの生成物フローの所望の純度に依存し、かつこれは当業者に公知の方法で決定することができる。
【0025】
方法工程(b)中で分離されたギ酸メチルエステルは、有利に方法工程(a)に返送される。方法工程(b)において、有利なように、ギ酸メチルエステル及びメタノールを一緒に一つの共通のフローの形で分離する場合に、このギ酸メチルエステルはその返送の前に蒸留によりメタノールを十分に除去するのが有利である。これは、一般に方法工程(b)の塔の後方に設置された塔中で行われる。ギ酸メチルエステルの製造は一般にメタノールのカルボニル化により行われるため、残留するメタノールを含有するフローを、ギ酸メチルエステル製造のための使用物質として返送するのが特に有利であり、その際に、この返送すべきメタノールは、この実施態様の場合には十分に残留量のギ酸メチルエステルを含有することができる。従って、全体のバランスは、少量のメタノール損失を新しいメタノールにより置き換えることが必要なだけである。
【0026】
方法工程(c)
方法工程(c)において、方法工程(b)からのギ酸と水とを含有するフローが、相応するギ酸塩と一緒に混合され、ギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物が形成される。
【0027】
一般に、この使用すべきギ酸塩は次の式(II)により表すことができる:
HCOOx+1/x (II)
[式中、M及びxは(I)に記載された意味を有する]。本発明による方法の場合に、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム及び/又はギ酸カルシウムを使用するのが有利であり、特にギ酸ナトリウム及び/又はギ酸カリウムを使用するのが有利である。
【0028】
使用すべきギ酸塩の添加の種類は、本発明による方法の場合に一般に重要ではない。このギ酸塩は、固体又は液体の形で、純物質として、物質混合物として又は溶液として添加することができる。例として、水溶液の形での添加(例えば、アルカリ金属ギ酸塩の水溶液)及び固体の化合物の形での添加(例えば、アルカリ金属ギ酸塩の粉末)が挙げられる。水溶液の形の添加が有利である。
【0029】
方法工程(b)からのギ酸と水とを含有するフローの添加と、相応するギ酸塩の添加との順序は、本発明による方法の場合に一般に重要ではない。特に、混合の前に、方法工程(b)からのギ酸と水とを含有するフローにギ酸の濃縮を行うことが可能であり、かつ場合により有利である。このために、蒸発により、有利に蒸留により、存在する水の一部を除去することが挙げられる。
【0030】
温度及び圧力は、方法工程(c)での混合のためには、一般に重要ではない。一般に、この混合は0〜150℃の温度で、かつ0.01〜0.3MPa absの圧力で行われる。
【0031】
装置として、原則として、液相中での反応のため、ならびに場合により揮発性成分を同時に分離しながらの液相中での反応のために適している全ての装置を使用することができる。例として、撹拌槽、ジェットループ型反応器及び塔が挙げられる。更に、例えば、両方のフローを一つの導管中で合流させることにより、有利に後続する混合区域を備えた導管中で合流させることにより統合することも可能である。更に、両方のフローを、固体のギ酸ギ酸塩の単離を行う装置中で合流させることも可能である。
【0032】
方法工程(b)からのギ酸と水とを含有するフローと、相応するギ酸塩とを混合することにより得られる混合物は、場合により既に沈殿したギ酸ギ酸塩を固体として有する水溶液の形のギ酸ギ酸塩を含有する。必要に応じて、この形で沈殿され、貯蔵され、輸送され及び/又は相応する調製又は適用のために使用することができる。更に、このギ酸ギ酸塩は後続する方法工程において、更に濃縮もしくは固体として単離することができる。
【0033】
方法工程(c)において、
(i) 方法工程(b)からのギ酸と水とを含有するフローを、工程(iv)から返送された母液と一緒に塔中で又は蒸発器中で蒸留により水を分離しながら濃縮し、
(ii) 工程(i)から濃縮により得られた、ギ酸、水及びギ酸塩を含有するフローを、相応するギ酸塩と混合して、ギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物を形成させ、
(iii) 工程(ii)から得られたギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物から結晶化により固体のギ酸ギ酸塩を析出させかつこれを単離し、かつ
(iv) 得られた母液を工程(i)に返送する、実施態様が有利である。
【0034】
工程(i)中の塔もしくは蒸発器は、一般に、供給された水の一部が例えば塔頂から留出できるように運転することができる。残留するギ酸、水及びギ酸塩を含有するフローは、一般に10〜40質量%の含水量を有し、かつ塔底生成物として取り出される。前記の運転方法は、ギ酸及びギ酸塩を含有するフローの所定の濃縮の利点を有する。塔又は蒸発器から取り出された水は、有利に方法工程(a)での加水分解工程に返送され、かつ過剰量はこの方法から取り出される。塔もしくは蒸発器の設計は、当業者に通常でかつ公知の方法により行われる。
【0035】
濃縮により得られた、ギ酸、水及びギ酸塩を含有するフローを、相応するギ酸塩と混合して、工程(ii)においてギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物を形成させることは、例えば塔と結晶化装置との間で、例えば2つの管の合流により、又は別個の混合装置中で、又は結晶化装置中自体で行うことができる。この相応するギ酸塩は、この場合有利に水溶液として使用される。
【0036】
結晶化の実施は当業者に一般に公知であり、この場合に正確な設計及び運転法は通常の方法で行うことができる。一般に、この結晶化は、−20℃〜+80℃、有利に0℃〜60℃の範囲内の温度で実施される。一般に、再結晶される生成物の量は温度低下と共に増加する。この結晶化は、このために原則として公知の全ての装置中で実施することができる。前記の実施態様は、特に有利に、所望の組成で再結晶可能なギ酸ギ酸塩の分離のために使用可能である。重要な例として、二ギ酸カリウム(HCOOK・HCOOH)、二ギ酸ナトリウム(HCOONa・HCOOH)、四ギ酸ナトリウム(HCOONa・3HCOOH)又はこれらの混合物が挙げられる。再結晶化されたギ酸塩又はギ酸ギ酸塩の分離は、一般に通常のかつ公知の方法、例えば濾過又は遠心分離により行われる。
【0037】
固体のギ酸ギ酸塩の結晶化の際に生じる母液は、工程(iv)で工程(i)に返送される。この母液はなお著量の有用生成物を含有するために、従ってその単離も保証される。また、母液中に存在する有用生成物を他の方法で、例えば溶液としての直接的な利用により利用することも可能である。
【0038】
同様に、方法工程(c)において、
(i) 方法工程(b)からのギ酸と水とを含有するフローを、相応するギ酸塩と、塔又は蒸発器中で、水を蒸留により分離しながら混合して、ギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物にし、
(ii) 工程(i)から得られたギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物から固体のギ酸ギ酸塩を噴霧造粒、噴霧乾燥又は溶融結晶化により析出させ、かつこれを単離する
実施態様も有利である。
【0039】
両方のフローを工程(i)中で混合することは、塔もしくは蒸発器の前で、例えば2つの導管を合流させることにより又は別個の混合装置中で、又は塔もしくは蒸発器中で、例えば2つの別個の供給により行うことができる。この相応するギ酸塩は、この場合有利に水溶液として使用される。
【0040】
工程(i)中の塔もしくは蒸発器は、一般に、供給された水の一部が例えば塔頂から留出できるように運転することができる。残留するギ酸ギ酸塩を含有する混合物(これは一般に0.5〜30質量%の含水量を有する)は、塔底生成物として取り出される。特に、ギ酸ギ酸塩を溶融結晶化により単離する場合に、塔底生成物中に一般に≦1質量%のわずかな含水量が調節される。前記の運転方法は、ギ酸ギ酸塩を含有するフローの所定の濃縮の利点を有する。塔又は蒸発器から取り出された水は、有利に方法工程(a)での加水分解工程に返送され、かつ過剰量はこの方法から取り出される。塔もしくは蒸発器の設計は、当業者に通常でかつ公知の方法により行われる。
【0041】
噴霧造粒、噴霧乾燥及び溶融結晶化の実施は当業者に一般に公知であり、この場合に正確な設計及び運転法は通常の方法で行うことができる。上記の方法も、特に有利に、所望の組成で再結晶可能なギ酸ギ酸塩の分離のために使用可能である。重要な例として、二ギ酸カリウム(HCOOK・HCOOH)、二ギ酸ナトリウム(HCOONa・HCOOH)、四ギ酸ナトリウム(HCOONa・3HCOOH)又はこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
噴霧造粒、噴霧乾燥並びに溶融結晶化の際に、有利にわずかな含水量の水性のギ酸ギ酸塩を使用することができるため、一般に少量の凝縮物ならびに遊離ギ酸も含まれる。ギ酸ギ酸塩の生じる量及び存在する量に応じて、場合により有利にこのフローを返送させずに系から取り出すことも有利である。
【0043】
本発明による方法の場合に方法工程(c)に返送される相応するギ酸塩は、最も多様な方法で製造することができる。ギ酸塩の製造のための公知の及び工業的に重要な方法の一般的な概要は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 6th edition, 2000 electronic release, Chapter“FORMIC ACID, Derivatives, Salts”に記載されている。他の適当な製造方法は、例えばUS 3,262,973にも記載されている。
【0044】
この本発明による方法は、原則として不連続式、半連続式で、又は連続式で実施することができる。本発明による方法は連続式で実施するのが有利である。
【0045】
本発明による方法の場合に、ギ酸ギ酸塩として、ギ酸金属ギ酸塩、特に有利にギ酸ギ酸カリウム、ギ酸ギ酸ナトリウム、ギ酸ギ酸カルシウム又はこれらの混合物、特に有利に二ギ酸カリウム(HCOOK・HCOOH)、二ギ酸ナトリウム(HCOONa・HCOOH)、四ギ酸ナトリウム(HCOONa・3HCOOH)又はこれらの混合物を製造するのが有利である。
【0046】
このギ酸ギ酸塩は、一般に溶液の形で又は固体として結晶化して製造される。これは、場合により他の成分、例えば他のギ酸塩が添加されていてもよい。結晶化したギ酸ギ酸塩の場合には、原則として貯蔵、運搬及び使用のために、これを乾燥剤、例えばケイ酸塩又はデンプンと一緒に粒状の圧縮物又は多様な成形体、例えばタブレット又は球形に圧縮することが有利である。
【0047】
本発明の方法の場合にギ酸ギ酸塩としてギ酸金属ギ酸塩を製造するのが有利であり、かつ方法工程(c)で返送すべき金属ギ酸塩は相応する金属水酸化物のカルボニル化により得るのが有利である。
【0048】
このギ酸金属ギ酸塩は、この場合に、可能な無機カチオンとして一般に周期表の第1族〜第14族の金属の1価及び/又は多価の金属カチオン、例えばリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)、ストロンチウム(Sr2+)及びバリウム(Ba2+)、有利にナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)及びカルシウム(Ca2+)を含有する。
【0049】
記載されたカルボニル化は、良好に使用で、かつ簡単に入手可能な使用物質で可能であり、かつ工業的に簡単に実施できるために、殊に有利であることが判明した。例えば、A.F. Hollemann, N. Wiberg著, Lehrbuch der anorganischen Chemie, Walter de Gruyter Verlag Berlin New York, 1985, 第91〜100版、第722頁によると、ギ酸ナトリウムは150〜170℃でかつ3〜4barの圧力で苛性ソーダ中に一酸化炭素を導入することにより製造され、かつ同じ教書の第947頁によるとギ酸カリウムは硫酸カリウムと生石灰との水溶液に230℃でかつ30barで一酸化炭素を作用させることにより製造される。Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 6th edition, 2000 electronic release, Chapter“FORMIC ACID, Production, Other Processes”によると、ギ酸ナトリウムは、反応塔を使用して、例えば水性苛性ソーダに180℃で1.5〜1.8MPaで一酸化炭素を作用させることにより得ることができる。この場合に、この水性苛性ソーダ液を上から下へ流下させ、それに対して一酸化炭素を向流で下から上へと流す。
【0050】
一般に、相応する金属ギ酸塩への有利なカルボニル化は、本発明による方法の場合に触媒の存在で20〜250℃、有利に30〜160℃、特に有利に90〜120℃の温度で、並びに0.1〜12MPa abs、特に0.3〜6MPa absの圧力で行われる。
【0051】
触媒として、アルコール及びギ酸エステルのグループからの少なくとも1種の触媒が使用される。原則として、金属水酸化物を良好に溶解する全ての触媒が適している。適当な触媒は、例えば飽和の線状C〜C−アルカノール、不飽和の線状C〜C−アルカノール、飽和の分枝鎖C〜C−アルカノール及び不飽和の分枝鎖C−アルカノール、並びにこれらのギ酸エステルである。アルコールをギ酸エステルとの混合物の形で触媒として使用する場合には、たいていはこのアルコールのギ酸エステルを使用する。飽和の線状C〜C−アルカノール及び飽和の分枝鎖C〜C−アルカノールを使用するのが有利であり、特にメタノールを使用するのが有利である。この触媒は、一般に、全反応溶液に対して、1〜40質量%、有利に5〜25質量%、特に有利に10〜20質量%の濃度で使用される。
【0052】
ギ酸塩製造のための通常の方法と比較して、高濃度領域の金属水酸化物で及び傾向的に高圧でかつ低温で作業することができる。この反応は物質移動により限定されるため、良好な混合により、例えば混合ノズルの使用下で、高い空時収率が達成される。
【0053】
この反応は、連続式でも不連続式でも行うことができる。連続的な反応が有利である。一般に、この反応は、金属水酸化物をほとんど定量的に金属ギ酸塩に変換するように実施される。この反応は、有利に反応溶液中の金属水酸化物の割合が0.1質量%、有利に0.04質量%、特に有利に0.01質量%になるまで実施される。
【0054】
この反応は、原則として全ての種類の反応装置で実施することができる。有利に、この反応は通気装置を備えた撹拌槽、気泡塔又はループ型反応器中で実施される。特に有利に、この反応はループ型反応器又は気泡塔中で、更に特に有利にループ型反応器中で行われる、それというのもここでは金属水酸化物と、触媒を含有する含水溶液と、使用された一酸化炭素との間の大きな相界面に基づき、高い吸収速度、ひいては高い反応速度が生じるためである。気泡塔を使用する場合に、一酸化炭素は例えば上方領域(並流法)にも下方領域(向流法)にも供給することができる。
【0055】
この金属水酸化物は、原則として水溶液として使用される。この金属水酸化物溶液の濃度は、一般に25〜50質量%、有利に45〜50質量%、特に有利に48.5〜50質量%である。この水溶液は複数の金属水酸化物をも含有することができる。使用した金属水酸化物溶液の純度については、一般に特別な要求は課されない。一般に、従って工業的な金属水酸化物溶液を使用することができる。有利な本発明による方法は、純粋な金属水酸化物溶液を用いて実施することでもある。ナトリウム、カリウム及び/又はカルシウムの水酸化物が有利である。
【0056】
一酸化炭素は、単独成分としても、他のガス、例えば窒素又は希ガスとの混合物の形で使用することができる。一酸化炭素を他のガスとの混合物の形で使用する場合に、混合物中の一酸化炭素の割合は、少なくとも5体積%、有利に少なくとも10体積%、特に有利に少なくとも25体積%、更に特に有利に少なくとも50体積%であるのが好ましい。反応の際の一酸化炭素−分圧は、一般に0.1〜12MPa、有利に2〜6MPaであるのが好ましい。使用した一酸化炭素もしくは相応する一酸化炭素含有ガス混合物の純度に関しては、一般に特別な要求は課されない。この反応は、従って、純粋な一酸化炭素を用いても、工業的一酸化炭素を用いても、これらの一酸化炭素含有のガス混合物を用いても実施される。
【0057】
前記の反応実施により、金属ギ酸塩の結晶化又は析出が生じず、この反応混合物は反応の期間の間に溶液として存在し、かつ固体の析出並びに導管の栓塞は回避されることが保証される。
【0058】
記載されたカルボニル化により得られた金属ギ酸塩は、一般に10〜90質量%、有利に30〜80質量%、特に有利に40〜70質量%の濃度で反応溶液中に存在する。
【0059】
特に有利に(i)本発明による方法の場合に、カルボニル化は触媒としてメタノールの存在で実施し、(ii)得られた金属ギ酸塩、水及びメタノールを含有する反応混合物を、方法工程(b)からのメタノール及び場合によりギ酸メチルエステルを含有するフローと一緒にして、蒸留によりメタノールを含有するフローと、場合によりギ酸メチルエステルを含有するフロー及び金属ギ酸塩と水とを含有するフローとに分け、かつ(iii)得られた金属ギ酸塩と水とを含有するフローを方法工程(c)に供給する。
【0060】
有利に、工程(ii)は塔中で実施され、この塔中では方法工程(b)からのメタノール及び場合によりギ酸メチルエステルを含有するフローをフィードとして供給し、かつカルボニル化により得られた金属ギ酸塩、水及びメタノールを含有する反応混合物を前記のフィードの下方に供給する。低沸点成分のギ酸メチルエステルとメタノールとは、この場合に上方へ流れ、それに対して金属ギ酸塩と水とは下方へ流れ、かつ塔底生成物として取り出される。最も低い沸点の成分は、塔頂生成物として取り出される。方法工程(b)からメタノール並びにギ酸メチルエステルを含有するフローが供給される場合には、特に有利であるように、この塔の塔頂生成物としてギ酸メチルエステルを含有するフローが取り出される。これは、有利に加水分解のために方法工程(a)に返送される。メタノールを含有するフローは、この場合に塔の上方領域でサイドフローとして得られる。ギ酸メチルエステルの製造は一般にメタノールのカルボニル化により行われるため、メタノールを含有するフローを、ギ酸メチルエステル製造のための使用物質として返送するのが特に有利であり、その際に、この返送すべきメタノールは、この実施態様の場合には十分に残留量のギ酸メチルエステルを含有することができる。従って、全体のバランスは、少量のメタノール損失を新しいメタノールにより置き換えることが必要なだけである。
【0061】
前記のようにメタノールを含有するフローをギ酸メチルエステルの製造のために分離及び返送する場合にはなお付加的な工程を介在できることが強調される。場合により、工程(ii)においてなおギ酸メチルエステルを含有するメタノールフローが得られ、かつこれを後続する塔中で残留するギ酸メチルエステルを分離し、その際に、一般的に同様に加水分解のために方法工程(a)に返送されることが有利である。この後続する塔のメタノールを含有する塔底生成物は、次いで一般にギ酸メチルエステルの製造に供給され、その際に、カルボニル化の接触作用に必要な量のメタノールをカルボニル化反応器に供給することができる。
【0062】
特に有利な実施態様(この簡略化されたフローチャートが図1に示されている)の場合には、導管(1)を介してギ酸メチルエステル並びに方法から返送されたギ酸を含有する水を、カスケード式の加水分解反応器(A)に供給する。一般に、両方の出発材料は混合(フローチャートで示されたように)されるか又は別個に熱交換器中で所望の入口温度にもたらされる。加水分解工程(方法工程(a))からの反応混合物(これは未反応のギ酸メチルエステル、水、ギ酸及びメタノールを含有する)は、導管(2)を介して塔(B)に供給され、この塔中で反応混合物を蒸留によりギ酸メチルエステルとメタノールとを含有する塔頂フローと、水性のギ酸を含有する塔底フローとに分けられる(方法工程(b))。ギ酸メチルエステルとメタノールとを含有する塔頂フローは導管(3)を介して塔(C)に供給される。更に、この塔(C)には、ギ酸メチルエステルとメタノールとを含有するフローの供給箇所の下側で、導管(12)を介して金属ギ酸塩、水及びメタノールを含有する、カルボニル化からの反応混合物が供給される。塔(C)の塔頂から導管(4)を介してギ酸メチルエステルが得られ、これは加水分解のために方法工程(a)に返送される。この塔の上方領域の側流取り出し部を介して、ギ酸メチルエステルを含有するメタノールフローが得られ、これは導管(6)を介して塔(D)に供給される。この中で、ギ酸メチルエステル塔頂フローと、メタノール塔底フローとに分けられ、前記のギ酸メチルエステル塔頂フローは導管(7)を介して同様に加水分解のために方法工程(a)に返送され、かつ前記のメタノール塔底フローは導管(5)を介してギ酸メチルエステル製造のために返送され、この場合に、カルボニル化の接触作用のために必要な量のメタノールがカルボニル化反応器に供給される。相応するギ酸塩の製造のためのカルボニル化は反応器(H)中で行う。この反応器に、導管(8)を介して水性金属水酸化物、特に有利に水酸化カリウム溶液が供給され、かつ導管(9)を介して一酸化炭素が供給される。導管(10)は、第1に圧力保持のため及び場合によるパージフローの取り出しのために利用される。塔(C)の下端部では、水の一部が取り出され、導管11を介して加水分解工程に返送される。塔底生成物として金属ギ酸塩水溶液が得られる。方法工程(b)からの水性のギ酸を含有するフローは、導管(14)を介して塔(E)に供給される。場合により、導管(13)及び(13b)を介して、塔(C)からの水性金属ギ酸塩溶液の一部の供給が行われる。塔(E)は、有利に、塔底生成物として、一般に10〜40質量%の含水量の、ギ酸、金属ギ酸塩及び水を含有する濃縮された混合物が得られるように運転される。水の一部は塔(E)からギ酸を含有する水フローの形で塔頂生成物として取り出され、これは導管(19)を介して加水分解工程に返送される。少量のギ酸を含有する水フローの一部は、その際に場合により導管(18)を介して系から取り出すことができる。塔(E)の塔底生成物は、導管(15)を介して結晶化のために適した装置(G)、例えばいわゆる冷却ディスク型結晶化装置に供給される。導管(13a)を介して、金属ギ酸塩水溶液が塔(C)から供給される。この供給は、この場合に、例えば塔(E)の下方領域で、2つの導管(図1に示されたように)の合流により行われるか又は結晶化装置中で直接行われる。この結晶化は、第1に温度低下により行う。得られた結晶は上澄み溶液と一緒に、分離のために装置(F)に供給される。有利に、この分離は遠心分離により行う。分離された結晶は導管(16)を介して取り出され、例えば場合による次の工程で乾燥及び/又は調製することができる。得られた母液は導管(17)を介して塔(E)に返送される。
【0063】
他の、特に有利な実施態様(この簡略化されたフローチャートが図2に示されている)の場合には、方法工程(a)及び(b)並びに金属ギ酸塩、有利にギ酸カリウムの製造、及び塔(C)及び(D)の運転を、前記した特に有利な実施態様と同様に実施する。方法工程(b)からの水性のギ酸を含有するフローは導管(14)を介して、及び塔(C)からの金属ギ酸塩水溶液を含有するフローは導管(13)を介して、塔(E)に供給される。塔(E)は、有利に、塔底生成物として、一般に0.5〜30質量%の含水量の、ギ酸、金属ギ酸塩及び水を含有する濃縮された混合物が得られるように運転される。供給された水の一部は塔(E)からギ酸を含有する水フローの形で塔頂生成物として取り出され、これは導管(19)を介して加水分解工程に返送される。少量のギ酸を含有する水フローの一部は、その際に場合により導管(18)を介して系から取り出すことができる。塔(E)の塔底生成物は、導管(15)を介して噴霧造粒、噴霧乾燥又は溶融結晶化のために適した装置(G)に供給される。得られた固体のギ酸ギ酸塩は、導管(16)を介して取り出され、例えば場合による次の工程で更に乾燥及び/又は調製することができる。得られた凝縮物は、場合により導管(17)を介して塔(E)に返送されるか、又は系から取り出すことができる。
【0064】
本発明による方法は、工業的規模で、高い収率及び高い時空収率で、同時に組成に関して高い柔軟性で、かつ良好に入手可能な原料の使用下で簡単な方法様式でかつ低い投資コストでのギ酸ギ酸塩の製造を可能にする。この方法は、更に、濃縮されたギ酸を介した投資コストがかかりかつ装置的に煩雑な経路なしに、必要なギ酸をギ酸メチルエステルから直接得ることができ、それに対して必要なギ酸塩は例えば簡単な方法で良好でかつ簡単に入手可能な出発物質を使用してカルボニル化により得ることができるという重要な利点を有する。本発明による方法は、従って方法技術的に簡単に実施可能であり、かつ先行技術による濃縮されたギ酸を直接使用する方法と比べて、投資コストは明らかに低くかつエネルギー必要量も明らかに低い。更に、部分的に高合金鋼を使用しなくてもよく、それというのもギ酸ギ酸塩は、濃縮されたギ酸よりもはるかに腐食性が低いためである。
【0065】
更に、本発明の対象は、
(a) ギ酸メチルエステルの加水分解のために適した反応器(A)と、
(b) ギ酸メチルエステル、ギ酸、メタノール及び水を含有するフローを、ギ酸メチルエステル、メタノール及びギ酸及び水を含有するフローに蒸留により分離するために適した塔(B)(この塔は供給側で反応器(A)と接続している)と、
(c) ギ酸と水とを含有するフローから水を除去するのに適した塔(E)(この塔は供給側で塔(B)の塔底と接続している)とを有する、本発明による方法によりギ酸ギ酸塩を製造する装置である。
【0066】
適当な反応器(A)として、例えば撹拌槽又はジェットループ型反応器が挙げられる。カスケード式反応器が有利である。反応器(A)の設計は、当業者に通常でかつ公知の方法により行われる。
【0067】
塔(B)及び(E)の設計は、当業者に通常でかつ公知の方法により行われる。
【0068】
装置として、上記の特徴(a)〜(c)に加えて、
(d) ギ酸ギ酸塩の結晶化のために適した装置(G)(この装置は供給側で塔(E)の塔底及び水性ギ酸塩用の供給手段と接続している)と、
(f) ギ酸ギ酸塩の結晶を分離するために適した装置(F)(この装置は供給側で装置(G)と接続している)と、
(g) 母液を返送するために適した、装置(F)と塔(E)との間の接続導管(17)とを有する装置が有利である。
【0069】
装置(G)及び(F)の設計は、当業者に通常でかつ公知の方法により行われる。
【0070】
更に、装置として、上記の特徴(a)〜(c)に加えて、
(e) 水性ギ酸塩の供給のために適した、塔(E)での供給手段と、
(f) 噴霧造粒、噴霧乾燥又は溶融結晶化のために適した装置(G)(この装置は、供給側で塔(E)の塔底と接続している)とを有する装置が有利である。
【0071】
装置(G)の設計は、当業者に通常でかつ公知の方法により行われる。
【0072】
更に、本発明の対象は、植物性及び動物性の物質の保存及び/又は酸性化のための、本発明により製造されたギ酸ギ酸塩の使用である。例として、牧草、農作植物、魚並びに魚製品及び肉製品の保存及び酸性化のためのギ酸ギ酸塩の使用が挙げられ、これは例えばWO 97/05783、WO 99/12435、WO 00/08929及びWO 01/19207に記載されている。
【0073】
更に、本発明の対象は、バイオ廃棄物の処理のための本発明により製造されたギ酸ギ酸塩の使用である。このバイオ廃棄物の処理のためのギ酸ギ酸塩の使用は、例えばWO 98/20911に記載されている。
【0074】
更に、本発明の対象は、動物飼料中の添加物として及び/又は動物用の、例えば育種用雌ブタ、肥育ブタ、家禽、子ウシ、雌ウシ及び魚用の成長促進剤としての、本発明により製造されたギ酸ギ酸塩の使用である。前記の使用は、例えばWO 96/35337に記載されている。本発明により製造されたギ酸ギ酸カリウム、特にギ酸カリウムの、動物飼料中の添加物として及び/又は動物、特に育種用雌ブタ及び肥育ブタ用の成長促進剤としての使用が特に有利である。
【0075】
動物飼料中の添加物として及び/又は動物用の成長促進剤としての本発明による方法により製造されたギ酸ギ酸カリウムの有利な使用のための、特に有利な混合物として、次の2つの組成が挙げられる:
【0076】
【表1】

【0077】
本発明により製造された二ギ酸カリウムの、動物飼料中の添加物として及び/又は動物用の成長促進剤としての、二ギ酸カリウム98±1質量%、ケイ酸塩1.5±1質量%及び水0.5±0.3質量%の組成の製品の形での使用が特に有利である。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) ギ酸メチルエステルを水で部分的に加水分解し、
(b) 方法工程(a)で得られた反応混合物からギ酸メチルエステルとメタノールとを蒸留により分離して、ギ酸と水とを含有するフローを形成させ、
(c) 方法工程(b)からのこのギ酸と水とを含有するフローを、相応するギ酸塩と混合して、ギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物を形成させる
ことを特徴とする、ギ酸ギ酸塩の製造方法。
【請求項2】
方法工程(a)において、ギ酸メチルエステルと水とを0.1〜1のモル比で供給することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
方法工程(b)において、分離されたギ酸メチルエステルを方法工程(a)に返送することを特徴とする、請求項1から2までのいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
方法工程(c)において、
(i) 方法工程(b)からのギ酸と水とを含有するフローを、工程(iv)から返送された母液と一緒に塔中で又は蒸発器中で蒸留により水を分離しながら濃縮し、
(ii) 工程(i)から濃縮により得られた、ギ酸、水及びギ酸塩を含有するフローを、相応するギ酸塩と混合して、ギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物を形成させ、
(iii) 工程(ii)から得られたギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物から結晶化により固体のギ酸ギ酸塩を析出させかつこれを単離し、かつ
(iv) 得られた母液を工程(i)に返送することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
方法工程(c)において、
(i) 方法工程(b)からのギ酸と水とを含有するフローを、相応するギ酸塩と、塔又は蒸発器中で、水を蒸留により分離しながら混合して、ギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物にし、
(ii) 工程(i)から得られたギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物から固体のギ酸ギ酸塩を噴霧造粒、噴霧乾燥又は溶融結晶化により析出させ、かつこれを単離することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ギ酸ギ酸塩としてギ酸金属ギ酸塩を製造し、方法工程(c)で供給すべき金属ギ酸塩を相応する金属水酸化物のカルボニル化により得ることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
(i)カルボニル化を触媒としてメタノールの存在で実施し、
(ii)得られた金属ギ酸塩、水及びメタノールを含有する反応混合物を、方法工程(b)からのメタノール及び場合によりギ酸メチルエステルを含有するフローと一緒にして、蒸留によりメタノールを含有するフロー、場合によりギ酸メチルエステルを含有するフロー及び金属ギ酸塩と水とを含有するフローに分け、かつ
(iii)得られた金属ギ酸塩と水とを含有するフローを方法工程(c)に供給することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ギ酸ギ酸塩として、ギ酸ギ酸カリウム、ギ酸ギ酸ナトリウム、ギ酸ギ酸カルシウム又はこれらの混合物を製造することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ギ酸ギ酸塩として、二ギ酸カリウム、二ギ酸ナトリウム、四ギ酸ナトリウム又はこれらの混合物を製造することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
(a) ギ酸メチルエステルの加水分解のために適した反応器(A)と、
(b) ギ酸メチルエステル、ギ酸、メタノール及び水を含有するフローを、ギ酸メチルエステル、メタノール及びギ酸及び水を含有するフローに蒸留により分離するために適した、供給側で反応器(A)と接続している塔(B)と、
(c) ギ酸と水とを含有するフローから水を除去するのに適した、供給側で塔(B)の塔底と接続している塔(E)とを有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のギ酸ギ酸塩を製造する装置。
【請求項11】
(d) ギ酸ギ酸塩の結晶化のために適した、供給側で塔(E)の塔底及び水性ギ酸塩用の供給手段と接続している装置(G)と、
(f) ギ酸ギ酸塩の結晶を分離するために適した、供給側で装置(G)と接続している装置(F)と、
(g) 母液を返送するために適した、装置(F)と塔(E)との間の接続導管(17)とを有する、請求項10記載の装置。
【請求項12】
(e) 水性ギ酸塩の供給のために適した、塔(E)での供給手段と、
(f) 噴霧造粒、噴霧乾燥又は溶融結晶化のために適した、供給側で塔(E)の塔底と接続している装置(G)とを有する、請求項10記載の装置。
【請求項13】
植物性及び/又は動物性の材料の保存及び/又は酸性化のための、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法により製造されたギ酸ギ酸塩の使用。
【請求項14】
バイオ廃棄物の処理のための、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法により製造されたギ酸ギ酸塩の使用。
【請求項15】
動物飼料中の添加物として及び/又は動物用の成長促進剤としての、請求項1から9までいずれか1項記載の方法により製造されたギ酸ギ酸塩の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) ギ酸メチルエステルを水で部分的に加水分解し、
(b) 方法工程(a)で得られた反応混合物からギ酸メチルエステルとメタノールとを蒸留により分離して、ギ酸と水とを含有するフローを形成させ、
(c) 方法工程(b)からのこのギ酸と水とを含有するフローを、相応するギ酸塩と混合して、ギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物を形成させる
ことを特徴とする、ギ酸ギ酸塩の製造方法。
【請求項2】
方法工程(a)において、ギ酸メチルエステルと水とを0.1〜1のモル比で供給することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
方法工程(b)において、分離されたギ酸メチルエステルを方法工程(a)に返送することを特徴とする、請求項1から2までのいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
方法工程(c)において、
(i) 方法工程(b)からのギ酸と水とを含有するフローを、工程(iv)から返送された母液と一緒に塔中で又は蒸発器中で蒸留により水を分離しながら濃縮し、
(ii) 工程(i)から濃縮により得られた、ギ酸、水及びギ酸塩を含有するフローを、相応するギ酸塩と混合して、ギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物を形成させ、
(iii) 工程(ii)から得られたギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物から結晶化により固体のギ酸ギ酸塩を析出させかつこれを単離し、かつ
(iv) 得られた母液を工程(i)に返送することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
方法工程(c)において、
(i) 方法工程(b)からのギ酸と水とを含有するフローを、相応するギ酸塩と、塔又は蒸発器中で、水を蒸留により分離しながら混合して、ギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物にし、
(ii) 工程(i)から得られたギ酸ギ酸塩と水とを含有する混合物から固体のギ酸ギ酸塩を噴霧造粒、噴霧乾燥又は溶融結晶化により析出させ、かつこれを単離することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ギ酸ギ酸塩としてギ酸金属ギ酸塩を製造し、方法工程(c)で供給すべき金属ギ酸塩を相応する金属水酸化物のカルボニル化により得ることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
(i)カルボニル化を触媒としてメタノールの存在で実施し、
(ii)得られた金属ギ酸塩、水及びメタノールを含有する反応混合物を、方法工程(b)からのメタノール及び場合によりギ酸メチルエステルを含有するフローと一緒にして、蒸留によりメタノールを含有するフロー、場合によりギ酸メチルエステルを含有するフロー及び金属ギ酸塩と水とを含有するフローに分け、かつ
(iii)得られた金属ギ酸塩と水とを含有するフローを方法工程(c)に供給することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ギ酸ギ酸塩として、ギ酸ギ酸カリウム、ギ酸ギ酸ナトリウム、ギ酸ギ酸カルシウム又はこれらの混合物を製造することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ギ酸ギ酸塩として、二ギ酸カリウム、二ギ酸ナトリウム、四ギ酸ナトリウム又はこれらの混合物を製造することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
(a) ギ酸メチルエステルの加水分解のために適した反応器(A)と、
(b) ギ酸メチルエステル、ギ酸、メタノール及び水を含有するフローを、ギ酸メチルエステル、メタノール及びギ酸及び水を含有するフローに蒸留により分離するために適した、供給側で反応器(A)と接続している塔(B)と、
(c) ギ酸と水とを含有するフローから水を除去するのに適した、供給側で塔(B)の塔底と接続している塔(E)と、
(d) ギ酸ギ酸塩の結晶化のために適した、供給側で塔(E)の塔底及び水性ギ酸塩用の供給手段と接続している装置(G)と、
(f) ギ酸ギ酸塩の結晶を分離するために適した、供給側で装置(G)と接続している装置(F)と、
(g) 母液を返送するために適した、装置(F)と塔(E)との間の接続導管(17)とを有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のギ酸ギ酸塩を製造する装置。
【請求項11】
(a) ギ酸メチルエステルの加水分解のために適した反応器(A)と、
(b) ギ酸メチルエステル、ギ酸、メタノール及び水を含有するフローを、ギ酸メチルエステル、メタノール及びギ酸及び水を含有するフローに蒸留により分離するために適した、供給側で反応器(A)と接続している塔(B)と、
(c) ギ酸と水とを含有するフローから水を除去するのに適した、供給側で塔(B)の塔底と接続している塔(E)と
(e) 水性ギ酸塩の供給のために適した、塔(E)での供給手段と、
(f) 噴霧造粒、噴霧乾燥又は溶融結晶化のために適した、供給側で塔(E)の塔底と接続している装置(G)とを有する、請求項1から9までのいずれか1項記載のギ酸ギ酸塩を製造する装置。

【公表番号】特表2006−503021(P2006−503021A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−533288(P2004−533288)
【出願日】平成15年7月30日(2003.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008400
【国際公開番号】WO2004/022517
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【Fターム(参考)】