説明

ククルビットウリルの製造方法

本発明は、ククルビットウリルの製造方法に関する。この方法は、ククルビットウリルを形成するために酸の存在下において、グリコールウリル、グリコールウリル類縁体及び/又はグリコールウリルもしくはグリコールウリル類縁体のオリゴマーから選択される1つ以上の化合物と、2から11の結合されたグリコールウリル又はグリコールウリル類縁体からなるオリゴマーを反応させることを含む。該方法は、ククルビットウリルにおける特定の位置に特定の置換されたユニットを有する可変の置換ククルビットウリルを製造するために使用し得る。本発明はまた、本発明の方法により製造されるククルビットウリルを提供する。本発明はさらに、新規なククルビットウリルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ククルビット[4-12]ウリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ククルビットウリルは、グリコールウリル又はグリコールウリル類縁体のオリゴマーに基づく大環状化合物の1種である。
【0003】
「ククルビットウリル」は、メチレン架橋されて6つのグリコールウリル分子がつながって形成された環状オリゴマーに与えられた名前である。しかしながら、用語「ククルビットウリル」は1種の化合物を言及するためにも使われているし、本明細書において使用されている。混乱を避けるために、本明細書では、化合物ククルビットウリルを「無置換ククルビット[6]ウリル」と呼ぶ。
【0004】
無置換ククルビット[6]ウリルは、R.Behrend、E.MeyerおよびF.Ruscheの論文中で1905年に初めて文献で報告された(Leibigs.Ann.Chem.、339、1、1905)。無置換ククルビット[6]ウリルの大環状構造はW.A.Freemanらにより1981年に初めて記載された(「Cucurbituril」、J.Am.Chem.Soc.、103(1981)、7367-7368)。無置換ククルビット[6]ウリルはC36H36N24O12の化学式を持ち、中心空洞を持つ大環状化合物である。
【0005】
置換ククルビットウリルであるデカメチルククルビット[5]ウリルは、1992年にFlinnらにより初めて合成され特定された(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、1992、31、1475)。
【0006】
様々な無置換及び置換ククルビット[4-12]ウリルは、本出願人の国際特許出願番号PCT/AU00/00412(WO00/68232)に記載されているように(参照により本願明細書に組み込まれる)Dayらにより合成された。
【0007】
WO00/68232はグリコールウリル、置換されたグリコールウリル、あるいはグリコールウリル及び置換されたグリコールウリルの混合物からの様々なククルビット[4-12]ウリルの製造を開示している。WO00/68232はまた、グリコールウリルのジエーテル類縁体、あるいはグリコールウリルのジエーテル類縁体及びグリコールウリルの混合物からのククルビット[4-12]ウリルの製造を開示している(実施例2及び実施例122)。WO00/68232に開示されているククルビット[n]ウリルを製造する全ての方法はククルビットウリルを形成するためにグリコールウリル及び/又は1つ以上のグリコールウリル類縁体を反応させることを含む。
【0008】
ある種のククルビット[4-20]ウリル及びこれらのククルビット[4-20]ウリルの製造方法は、また米国特許番号6,365,734に開示されている。米国特許番号6,365,734号公報に開示されているククルビット[4-12]ウリルの全ての製造方法は、無置換ククルビット[4-20]ウリルを形成するためにグリコールウリルを反応させること、あるいは置換されたククルビット[4-20]ウリルを形成するために置換されたグリコールウリルを反応させることを含む。ここでククルビット[4-20]ウリルを形成するための下記に定義された化学式(B)の全てのユニットは同一である。
【0009】
先行文献で開示された多くのククルビットウリルは、無置換又は均一に置換されたククルビットウリルであり、すなわち、ククルビットウリルを形成するための下記に定義された化学式(B)の全てのユニットが同一なククルビットウリルである。WO00/68232で開示されたククルビットウリルの製造方法は、下記に定義された「可変の(variably)置換ククルビットウリル」を製造するために使用され得る。もしWO00/68232に開示されたククルビット[n]ウリルを製造するための方法が、下記に定義された「可変の(variably)置換ククルビットウリル」を製造するために使用されたなら、多数の異なった可変の(variably)置換ククルビットウリルが通常作られる。たとえば、WO00/68232の実施例122(2)において、s及びuが、1,4;2,3;3,2;4,1;1,5;2,4;3,3;4,2;5,1;1,6;2,5;3,4;4,3;5,2;6,1であるククルビット[s,u]ウリルが形成される。
【0010】
ククルビット[n]ウリルは、中心空洞への2つの入り口を持つ硬い中心空洞を含む。これらの入口は、極性基に囲まれて、空洞の内径より直径が狭い。
【0011】
ククルビット[4-12]ウリルは選択的に様々な分子を複合する。例えば、中心空洞は選択的に気体及び揮発性分子を封入する。ククルビット[4-12]ウリルはまた中心空洞の極性末端において、分子と一緒に複合体を選択的に形成しうる。ククルビット[4-12]ウリルは、気体、揮発性物質及び他の分子と複合体を形成し、その後(これらを)放出するために使用され得る。これらの特徴はククルビット[4-12]ウリルに多種様々な用途を与える。これらの用途は、例えば、
・ 汚染物質の取り込み及び除去
・ 香りをゆっくりと長時間にわたり放出するオドライザー(odourisers)としての用途
・ 不快なにおい又は毒性の蒸気を閉じ込める、及び
・ たとえばクロマトグラフィックカラムにおける、化学物質精製又は分離技術を含む。
【0012】
ククルビット[4-12]ウリルを製造する代わりの方法を提供することが有利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の要約
本願の発明者らは、ククルビット[4-12]ウリルの多くの用途にとって、「可変の(variably)置換ククルビットウリル」すなわち、ククルビットウリルを形成するための下記に定義された化学式(B)のユニットが同一でない、ククルビット[4-12]ウリルを用いることが望ましいことを見出した。
【0014】
該発明者らは、ククルビット[4-12]ウリルを形成するための化学式(B)のユニットにおけるR1、R2、R3及び/又はR5の基の数及び種類、ならびにククルビットウリルにおけるこれらの基の相対的な位置がククルビットウリルの溶解性を変化させることを見出した。たとえば、テトラメチルククルビット[2,4]ウリルは無置換ククルビット[6]ウリルよりも水により高い溶解性を有する。該発明者らは、ククルビット[4-12]ウリルを形成するための化学式(B)のユニットにおけるR1、R2、R3及び/又はR5の基の数及び種類が、ククルビットウリルが他の化合物と複合体を形成する度合いに影響を及ぼすこともまた見出した。例えば、該発明者らは、メタンのジメチルククルビット[1,4]ウリルとの結合定数は、デカメチルククルビット[5]ウリルとのそれに比べて3倍高く、また、無置換ククルビット[6]ウリル中のジオキサンの結合定数はテトラメチルククルビット[2,4]ウリル中のそれに比べて2倍高いことを見出した。所望の溶解性および、特別な応用のための所望の複合体形成能を持つククルビットウリルを製造するためには、ククルビットウリル中の特別な相対位置のR1、R2、R3及びR5に特別な基を持つククルビットウリルを製造する必要があるかもしれない。
【0015】
さらに、ある種の応用のためには、ククルビットウリルにおける1つだけ又はいくつかのR1またはR2基が水素以外である可変の(variably)置換されたククルビット[4-12]ウリルを使用することが望ましい。その結果、該ククルビットウリルは、同程度の重合度の無置換ククルビットウリルと類似する複合体形成能力を有するが、例えばククルビットウリルが固体担体と結合する、又はククルビットウリルがもう1つのククルビットウリルと結合するために、他の化合物と反応し得る置換基の特定の数と位置をもつ。
【0016】
WO00/68232に記述されたククルビット[4-12]ウリルの製造法は、ある種の可変の(variably)置換されたククルビット[4-12]ウリルの製造に利用できる。しかし、WO00/68232に記述された方法で可変の(variably)置換されたククルビット[4-12]ウリルが製造されるとき、多数の異なる置換ククルビットウリルが生じ、所望の可変の(variably)置換ククルビットウリルの収率が低くなるかもしれない。いくつかの応用のためには、所望の可変の(variably)置換ククルビットウリルは、その可変の(variably)置換ククルビットウリルを使用する前に、生じたククルビットウリル類の混合物から分離する必要があるかもしれない。
【0017】
発明者らは、したがって、ククルビットウリルにおけるR1、R2、R3及びR5の特定基の相対位置のより大きな制御を可能にするククルビット[4-12]ウリルの製造法を供することは、ククルビットウリル類を製造するための先行文献の方法と比べて有利であることを見出した。発明者らは、そのような方法を加えて見出した。
【0018】
1つの局面において、本発明はククルビット[n]ウリルの製造法を提供する。この方法は、
工程:(a)
(1)化学式(1)
【0019】
【化1】

【0020】
の化合物(式中、化合物における化学式(A)
【0021】
【化2】

【0022】
の各ユニットに関して、
【0023】
R1及びR2は、同じか又は異なってもよく、各々一価のラジカルであり、あるいは、R1、R2及びこれらが結合した炭素原子は、置換されてもよい環状基を一緒に形成し、あるいは、化学式(A)の1つのユニットのR1及び化学式(A)の隣接するユニットのR2は、結合又は二価のラジカルを一緒に形成し、各R3は、独立して=O、=S、=NR、=CXZ、=CRZ及び=CZ2からなる群から選択され(式中、Zは、-NO2、-CO2R、-COR-CN又は-CX3のような電子吸引性基であり、Xはハロであり、Rは、H、置換されてもよい直鎖、分岐鎖又は環状の、飽和又は不飽和の炭化水素ラジカルであり、あるいは置換されてもよい複素環式ラジカルである);
【0024】
各R5は、独立してH、アルキル及びアリールからなる群から選択され;
【0025】
R7及びR8は、同じか又は異なってもよく、独立してH及び-CHR5OR5からなる群から選択され、あるいはR7及びR8は、基-CHR5-O-CHR5-を一緒に形成し(各R5は、独立して選択され、かつ上記に定義の通りである)、
【0026】
R9及びR10は、同じか又は異なってもよく、独立してH及び-CHR5OR5からなる群から選択される、あるいはR9及びRl0は、基-CHR5-O-CHR5-を一緒に形成し(各R5は、独立して選択され、かつ上記に定義の通りである);かつxは1から10の整数である);
【0027】
(2)化学式(2)
【0028】
【化3】

【0029】
の1つ以上の化合物(式中、R1、R2、R3及びR5は、化学式(1)に対して上記に定義されたとおりであり、R11及びR12は、同じか又は異なってもよく、H及び-CHR5OR5からなる群から独立して選択され、あるいはR11及びR12は、基-CHR5-O-CHR5-を一緒に形成し(各R5は独立して選択され、かつ上記に定義されたとおりである);
【0030】
R13及びR14は、同じか又は異なってもよく、H及び-CHR5OR5からなる群から独立して選択され、あるいはR13及びR14は、基-CHR5-O-CHR5-を一緒に形成し(各R5は、独立して選択され、かつ上記に定義されたとおりである)、かつyは0又は1から9の整数であり、x+y=10以下);及び
【0031】
(3)酸を、混合物を形成するために混合する、及び
【0032】
(b)化学式(1)の化合物及び1つ以上の化学式(2)の化合物が、ククルビット[n]ウリルを形成するために十分な条件に、混合物をさらす;を含む。
【0033】
他の局面では、本発明は、本発明の方法により製造したククルビット[n]ウリルを提供する。
【0034】
当業者にとって明らかなように、R1及びR2は、とても広い範囲の置換基から選択されてもよい。本発明は、R1及びR2が特定の基である方法に限定されない。
【0035】
R1及びR2が、1価のラジカルである場合、R1及びR2は、通常独立して-R、-OR、-NR2(各Rは独立して選択される)、-NO2、-CN、-X、-COR、-COX、-COOR、
【0036】
【化4】

【0037】
(各Rは独立して選択される)、
【0038】
【化5】

【0039】
(各Rは独立して選択される)、-SeR、-SiR3(各Rは独立して選択される)、-SR、-SOR、
【0040】
【化6】

【0041】
-SO2R、-S-S-R、-BR2(各Rは独立して選択される)、-PR2(各Rは独立して選択される)、
【0042】
【化7】

【0043】
(各Rは独立して選択される)、
【0044】
【化8】

【0045】
(各Rは独立して選択される)、-P+R2(各Rは独立して選択される)及び金属又は金属錯体からなる群から選択される(式中、Rは、H、置換されてもよい直鎖、分岐鎖又は環状の、飽和又は不飽和の炭化水素ラジカル、あるいは置換されてもよい複素環式ラジカルであり、Xはハロである)。いくつかの態様において、RはH、置換されてもよいC1-10アルキル、置換されてもよいC2-10アルケニル、あるいは置換されてもよいC5-10アリールである。
【0046】
本発明の方法は、2つ以上の異なるククルビットウリルの混合物を作るかもしれない。本発明に従って、少なくとも1つのククルビットウリルは、化学式(1)の化合物の少なくとも1つ及び化学式(2)の各化合物の少なくとも1つから形成される。いくつかの態様において、本発明の方法により作られたククルビット[n]ウリルの少なくともいくつかは、化学式(1)の1つの化合物及び化学式(2)の各化合物の1つから形成される。いくつかの態様において、本発明の方法により作られたククルビット[n]ウリルの少なくともいくつかは、化学式(1)の化合物の2以上及び化学式(2)の各化合物の1つから、あるいは、化学式(1)の1つの化合物及び化学式(2)の各化合物の2つ以上から形成される。
【0047】
通常、化学式(2)の1つ以上の化合物の少なくとも1つは、化学式(1)の化合物と異なる。
通常、R7=R8、R9=R10、R1l=Rl2及びR13=R14
【0048】
通常、工程(a)は、化学式(1)の化合物を1つ以上の化学式(2)化合物に加え、混合し、それから該化合物を酸と混合することを含む。しかしながら、本発明のいくつかの態様において、化学式(1)の化合物は酸と混合され、得られた混合物が化学式(2)の1つ以上の化合物に加えられる。あるいは、本発明のいくつかの態様において、化学式(2)の1つ以上の化合物は酸と混合され、化学式(1)の化合物及び残っている化学式(2)の化合物があれば、その後加えられ混合される。
【0049】
通常工程(b)は、ククルビット[n]ウリルを形成するために、化学式(1)の化合物及び1つ以上の化学式(2)の化合物に十分な時間をかけて、20℃から120℃の温度に混合物を加熱することを含む。
【0050】
いくつかの態様において、工程(b)は、さらに該混合物に、化学式(1)及び(2)の化合物の間で化学式-CHR5-の架橋を形成し得る1つ以上の化合物を組み入れることを含む。当業者にとって明らかなように、化学式-CHR5-の架橋を形成し得る化合物は、R7からR14が結合した窒素原子に結合した化学式-CHR5-の架橋を形成するために、基R7〜R14と反応、あるいは置換することにより該架橋を形成する。そのような化合物は、混合物に該化合物を加えることにより混合物に組み入れ得る。あるいは、該化合物は、混合物を形成するために、これらの全ての成分が一緒に混合される前に、化学式(1)の化合物、1つ以上の化学式(2)の化合物及び/又は酸と一緒に混合し得る。
【0051】
当業者にとって明らかなように、本発明のいくつかの態様において、本発明の方法の工程(b)において、ククルビットウリルを形成するために、混合物において化学式(1)及び(2)の化合物の間で化学式-CHR5-の架橋を形成し得る化合物を含むことが必要なわけではない。例えば、混合物中、化学式(1)及び(2)の化合物における全ての基R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14が、H以外であるならば、その時は、化学式(1)及び(2)の化合物は、そのような化合物の存在なしで反応してククルビット[n]ウリルを形成し得る。
【0052】
しかしながら、全ての基R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14がHならば、その時は、化学式(1)及び(2)の化合物がククルビット[n]ウリルを形成するために、そのような化合物は、混合物中に含まれなければならない。
【0053】
通常、混合物中の化学式(1)及び(2)の化合物における基R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14がHでないものに対するHであるもののモル比が、1より大きい場合、その時は化学式(1)及び(2)の化合物の間で化学式-CHR5-の架橋を形成し得る化合物が混合物中に含まれる。
【0054】
他の局面では、本発明は、化学式:
【0055】
【化9】



【0056】
のククルビット[n]ウリルを提供する。
【0057】
(式中、ククルビット[n]ウリルにおける、化学式(B):
【0058】
【化10】

【0059】
の各ユニットに関して、R1及びR2は、同じか又は異なってもよく、各々一価のラジカルであり、あるいは、R1、R2及びこれらが結合した炭素原子は、置換されてもよい環状基を一緒に形成し、あるいは、化学式(B)の1つのユニットのR1及び化学式(B)の隣接するユニットのR2は、結合又は二価のラジカルを一緒に形成し、各R3は、独立して=O、=S、=NR、=CXZ、=CRZ及び=CZ2からなる群から選択され(式中、Zは電子吸引性基であり、Xはハロであり、Rは、H、置換されてもよい直鎖、分岐鎖又は環状の、飽和又は不飽和の炭化水素ラジカルであり、あるいは置換されてもよい複素環式ラジカルである)、各R5は、独立してH、アルキル及びアリールからなる群から選択され;nは4から12の整数であり、式中、ククルビット[n]ウリルにおいて少なくとも1つのR3は、=CXZ、=CRZ又は=CZ2である)のククルビット[n]ウリルを提供する。
【0060】
定義
WO00/68232及び米国特許番号6,365,734ならびに該発明者らのさらなる研究に開示されているククルビットウリルを考慮して、この種のククルビットウリルはWO00/68232又は米国特許番号6,365,734いずれにおいて記載されているよりも広い。
【0061】
本願の明細書において、用語「ククルビットウリル」は、化学式(C):
【0062】
【化11】

【0063】
(式中、化合物中の化学式(B):
【0064】
【化12】

【0065】
の各ユニットに関して、R1及びR2は、同じか又は異なってもよく、各々一価のラジカルであり、あるいは、Rl、R2及びこれらが結合した炭素原子は、置換されてもよい環状基を一緒に形成し、あるいは、化学式(B)の1つのユニットのR1及び化学式(B)の隣接するユニットのR2は、結合又は二価のラジカルを一緒に形成し、各R3は、独立して=O、=S、=NR、=CXZ、=CRZ及び=CZ2からなる群から選択され(式中、Zは、-NO2、-CO2R、-COR-、CN又は-CX3のような電子吸引性基であり、Xはハロであり、Rは、H、置換されてもよい直鎖、分岐鎖又は環状の、飽和又は不飽和の炭化水素ラジカルであり、あるいは置換されてもよい複素環式ラジカルである)、各R5は、独立してH、アルキル及びアリールからなる群から選択され;nは重合度であり、すなわち化合物における化学式(B)のユニットの数である)の化合物を意味する。
【0066】
R1及びR2が、1価のラジカルである場合、R1及びR2は、通常独立して-R、-OR、-NR2(各Rは独立して選択される)、-NO2、-CN、-X、-COR、-COX、-COOR、
【0067】
【化13】

【0068】
(各Rは独立して選択される)、
【0069】
【化14】

【0070】
(各Rは独立して選択される)、-SeR、-SiR3(各Rは独立して選択される)、-SR、-SOR、
【0071】
【化15】

【0072】
-SO2R、-S-S-R、-BR2(各Rは独立して選択される)、-PR2(各Rは独立して選択される)、
【0073】
【化16】

【0074】
(各Rは独立して選択される)、
【0075】
【化17】

【0076】
(各Rは独立して選択される)、-P+R2(各Rは独立して選択される)及び金属又は金属錯体からなる群から選択される(式中、Rは、H、置換されてもよい直鎖、分岐鎖又は環状の、飽和又は不飽和の炭化水素ラジカル、あるいは置換されてもよい複素環式ラジカルであり、Xはハロである)。
【0077】
様々なククルビットウリルを区別するために、発明者らは用語「ククルビット[n]ウリル」を適用した。nはククルビットウリルの重合度であり、すなわち、ククルビットウリルの大環状環における化学式(B)のユニットの数である。例えば、一緒に結合した化学式(B)の8つのユニットからなる環状オリゴマーは、ククルビット[8]ウリルとして示される。
【0078】
本発明は、nが4から12の整数であるククルビット[n]ウリルに関する。他に特に規定がなければ、ここで使用される用語「ククルビットウリル」及び「ククルビット[n]ウリル」は、本明細書中において、nが4から12の整数であるククルビット[n]ウリルを意味する。
【0079】
本願の明細書において、用語「無置換ククルビットウリル」及び「無置換ククルビット[n]ウリル」は、ククルビットウリル中の化学式(B)の全てのユニットにおいてR3が=O、R1、R2及びR5がHであるククルビットウリルを意味する
【0080】
本願の明細書において、用語「可変の(variably)置換ククルビットウリル」及び「可変の(variably)置換されたククルビット[n]ウリル」は、ククルビットウリルを形成する化学式(B)のユニットの全てが同一なわけではないククルビットウリルを意味する。
【0081】
可変の(variably)置換されたククルビット[n]ウリルは、化学式(B)のいくつかの無置換ユニット(R3は=Oであり、R1、R2及びR5はHである)、及び化学式(B)のいくつかの置換されたユニット(R3は=0以外であり、及び/又はR1、R2及びR5の1つ以上はH以外である)からなってもよい。そのような化合物を区別するために、用語「ククルビット[s,u]ウリル」が使用される。sは化学式(B)の置換されたユニットの数に相当し、uは化学式(B)の無置換ユニットの数に相当し、sプラスuはnに相当する。
【0082】
可変の(variably)置換されたククルビット[n]ウリルにおける、化学式(B)の置換されたユニットの相対的な位置を示すために、ギリシャ文字が使用され、αは、第1に優先される化学式(B)の置換されたユニットに割り当てられ、ククルビット[n]ウリルの大環状環における化学式(B)のその他の全てのユニットは、アルファベット順でギリシャ文字が割り当てられた。例えば、化学式(B)の置換されたユニットが、ククルビットウリルの反対側に位置する場合、X及びYによりそれぞれ置換された化学式(B)の2つのユニットを有するククルビット[6]ウリルは、αX,δY-ククルビット[2,4]ウリルの名前で特定される。次の描写は、ククルビットウリルの入り口の1つに向かってみた時のこのようなククルビット[6]ウリルを描いている。
【0083】
【化18】

【0084】
本願の明細書において、用語「グリコールウリル類縁体」は、化学式(5):
【0085】
【化19】

【0086】
(式中、R1及びR2は、同じか又は異なってもよく、各々一価のラジカルであり、あるいは、R1、R2及びこれらが結合した炭素原子は、置換されてもよい環状基を一緒に形成し、R3及びR11からR14は、化学式(2)のために上記に定義しているとおりである)の化合物を意味する。
【0087】
通常、R1及びR2が、1価のラジカルである場合、R1及びR2は、独立して-R、-OR、-SR、-NR2(各Rは独立して選択される)、-NO2、-CN、-X、-COR、-COX、-COOR、
【0088】
【化20】

【0089】
(各Rは独立して選択される)、
【0090】
【化21】

【0091】
(各Rは独立して選択される)、-SeR、-SiR3(各Rは独立して選択される)、-SR、-SOR、
【0092】
【化22】

【0093】
-SO2R、-S-S-R、-BR2(各Rは独立して選択される)、-PR2(各Rは独立して選択される)、
【0094】
【化23】

【0095】
(各Rは独立して選択される)、
【0096】
【化24】

【0097】
(各Rは独立して選択される)、-P+R2(各Rは独立して選択される)及び金属又は金属錯体からなる群から選択される(式中、Rは、H、置換されてもよい直鎖、分岐鎖又は環状の、飽和又は不飽和の炭化水素ラジカル、あるいは置換されてもよい複素環式ラジカルであり、Xはハロである)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0098】
好ましい態様の詳細な説明
【0099】
上記に定義された化学式(C)の様々なククルビット[4-12]ウリルは新規である。特に、化学式(C)のククルビット[4-12]ウリル:
1.ククルビットウリルにおける1つ以上のR3基は、=O、=S又は=NH以外;あるいは
2.ククルビットウリルにおける各R3基は、=O、=S又は=NHであり、少なくとも1つのR3基は、=S又は=NHであり、かつククルビットウリルにおける全てのR1、R2、R3又はR5基が同じではなく;あるいは
3.ククルビットウリルにおける各R3基は、=O、=S又は=NHであり、ククルビットウリルにおける1つ以上のR5基はH以外であり、かつククルビットウリルにおけるすべてのR1、R2、R3又はR5基が同じではない;は、先行文献に開示されていない。
【0100】
本発明の方法は、化学式-CHR5-の架橋により結合された化学式(A)の2つ以上のユニットを含む化合物(化学式(1)の化合物)の少なくとも1つを使用してククルビットウリルを製造することを含む。該化合物は、化学式(A)の2つ以上のユニットからなるので、該化合物における特定のR1、R2、R3及びR5基は、該化合物から製造されたククルビットウリルにおいて保持されている、互いに対して固定された位置を有する。このように、可変の(variably)置換ククルビットウリルを製造するために使用する場合、本発明の方法は、ククルビットウリルを形成するためのグリコールウリル類縁体の反応を含む先行技術の方法よりも、より多様性の少ない異なる可変の(variably)置換されたククルビット[n]ウリルを作り出す結果をもたらす。従って、本発明の方法は、ククルビットウリルの製造のための先行技術の方法よりも、作り出される置換ククルビットウリルのタイプ(について)のより大きな制御を可能にする。
【0101】
当業者にとって明らかなように、もし化学式(1)及び(2)の化合物において基R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14が、水素以外ならば、化学式(1)及び(2)の化合物は、該方法の工程(b)において、1つのククルビットウリルを形成するためにお互いに反応し得る。しかしながら、これらの基の全てがHである、もしくはククルビットウリルを形成することになる化学式(1)及び(2)の化合物において、Hである基の総数がHでない総数よりも多いなら、化学式(1)及び(2)の化合物の間で化学式-CHR5-の架橋を形成し得る化合物は、該方法の工程(b)において、化学式(1)の化合物及び1つ以上の化学式(2)の化合物がククルビットウリルを形成するために、該混合物中に含めなくてはならない。
【0102】
化学式(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)において、R1及びR2が、1価のラジカルである場合、R1及びR2は、例えば、H、置換されてもよいアルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチルなど)、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアルキニル、置換されてもよい複素環式、もしくは置換されてもよいアリール(例えばフェニル、ナフチル、ピリジル、フラニル又はチオフェニル)、-OR、-SRもしくはNR2から選択されてもよい。
【0103】
いくつかの態様において、R1及びR2が、1価のラジカルである場合、Rl及びR2は、30未満の炭素原子を含む。R1及びR2は、例えば、炭素原子1〜30のアルキル基、炭素原子1〜30のアルケニル基、炭素原子5〜30の環状炭化水素基、O、N又はSのような1つ以上のヘテロ原子を有する炭素原子4〜30の環状基、炭素原子6〜30のアリール基、及びO、N又はSのような1つ以上のヘテロ原子を有する炭素原子5〜30のアリール基からなる群から選択してもよい。
【0104】
R1及びR2は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシなどのアルコキシ基などであってもよい。R1及びR2はまた、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ又はアルキルチオラジカルであってもよい。
【0105】
R1、R2及びこれらが結合した炭素原子によって形成される置換されてもよい環状基の例は、置換されてもよい飽和又は不飽和の炭素原子5〜30の環状炭化水素基、ならびに置換されてもよい飽和又は不飽和の、炭素原子3〜30、通常4〜30の、O、N又はSのような1つ以上のヘテロ原子を有する環状基が挙げられる。
【0106】
化学式(1)又は化学式(2)の化合物における化学式(A)の隣接するユニット、あるいはククルビットウリルにおける化学式(B)の隣接するユニットのR1及びR2が、2価のラジカルを一緒に形成する場合、2価のラジカルは、例えば、2価の置換されてもよい直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和の、1つ以上の炭素原子を含む炭化水素ラジカルであってもよい。2価のラジカルは、1つ以上のO、N又はSのようなヘテロ原子からなる又は含んでもよい。
【0107】
Rが、置換されてもよい炭化水素ラジカル、又は置換されてもよい複素環式ラジカルである場合、炭化水素ラジカル又は複素環式ラジカルは、1つ以上の置換基で置換されてもよい。同様に、R1、R2及びこれらが結合した炭素原子が、置換されてもよい環状基を一緒に形成する場合は、該環状基は、1つ以上の置換基で置換されてもよい。任意の置換基は、いずれの基でもあり得、かつ、例えば、置換されてもよいアルキル、置換されてもよいアルケニル、置換されてもよいアルキニル、置換されてもよい複素環(ヘテロシクリル)、置換されてもよいアリール、ハロ(例えばF、Cl、Br又はI)、ヒドロキシル、アルコキシル、カルボニル、ハロゲン化アシル、ニトロ、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミノ、イミノ、シアノ、イソシアネート、チオール、チオール-エステル、チオ-アミド、チオ-ウレア、スルホン、スルファイド、スルホキシド又はスルホン酸基又は金属もしくは金属錯体であってもよい。任意の置換基は、ボラン、ホスフィン、アルキルホスフィン、ホスフェイト又はホスホルアミド(phosphoramide)のようなリン含有基、シリコン含有基、あるいはセレニウム含有基であってもよい。
【0108】
通常、Zは、-NO2、-CO2R、-COR、-CN及びCX3からなる群から選択され、ここでXはハロ(例えばF、Cl、Br又はI)、Rは、H、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、あるいは飽和又は不飽和ヘテロシクリルである。
【0109】
化学式(1)及び(2)の化合物の間で化学式-CHR5-の架橋を形成し得る化合物は、通常、化学式R5COR5の化合物又は化学式R5OC(R5)2OR5の化合物から選択され、式中、R5は上記に定義したとおりであり、各R5基は、独立して選択され、トリオキサン、置換されてもよい3,4-ジヒドロピラン、あるいは置換されてもよい2,3-ジヒドロフランである。置換されてもよい3,4-ジヒドロピラン又は置換されてもよい2,3-ジヒドロフランは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はハロのような基により置換されてもよい。化学式R5COR5の化合物は、例えばホルムアルデヒドでもよい。
【0110】
R5は、H、アルキルまたはアリールである。R5がアルキルの場合、R5は、通常、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどのC1-5アルキルである。R5がアリールの場合、R5は、例えばフェニルでもよい。
【0111】
今まで製造された大多数のククルビット[4-12]ウリルは、ククルビットウリルを形成する化学式(B)の全てのユニットにおいて、R3が=0かつR5がHである、ククルビット[4-12]ウリルである。
【0112】
1つの態様において、本発明は、
工程:(a)
【0113】
(1)化学式(3)
【0114】
【化25】

【0115】
の化合物(式中、化合物における化学式(D)
【0116】
【化26】

【0117】
の各ユニットに関して、R1及びR2は、同じか又は異なってもよく、各々一価のラジカルであり、あるいは、R1、R2及びこれらが結合した炭素原子は、置換されてもよい環状基を一緒に形成し、あるいは、化学式(D)の1つのユニットのR1及び化学式(D)の隣接するユニットのR2は、結合又は二価のラジカルを一緒に形成し;
【0118】
R7及びR8は、同じか又は異なってもよく、独立してH及び-CH2-OHからなる群から選択され、あるいはR7及びR8は、基-CH2-O-CH2-を一緒に形成し;
【0119】
R9及びR10は、同じか又は異なってもよく、独立してH及び-CH2-OHからなる群から選択され、あるいはR9及びRl0は、基-CH2-O-CH2-を一緒に形成し;かつxは1から10の整数である);
【0120】
(2)化学式(4)
【0121】
【化27】

【0122】
の1つ以上の化合物(式中、R1及びR2は、化学式(3)に対して上記に定義されたとおりであり;R11及びR12は、同じか又は異なってもよく、H及び-CH2OHからなる群から独立して選択され、あるいはR11及びR12は、基-CH2-O-CH2-を一緒に形成し;
【0123】
R13及びR14は、同じか又は異なってもよく、H及び-CH2OHからなる群から独立して選択され、あるいはR13及びR14は、基-CH2-O-CH2-を一緒に形成し;かつyは0又は1から9の整数であり、x+y=10以下);及び
【0124】
(3)酸;を混合物を形成するために混合する、及び
【0125】
(b)化学式(1)の化合物及び1つ以上の化学式(2)の化合物がククルビット[n]ウリルを形成するために、十分な条件に混合物をさらす;を含む、このようなククルビット[4-12]ウリルの製造法を提供する。
【0126】
そのような本発明の1態様において、もし化学式(4)及び(5)の化合物の間で化学式-CHR5-の架橋を形成し得る化合物を使用する場合、該化合物は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、2,3-ジヒドロピラン又は2,3-ジヒドロフランから選択される。
【0127】
通常、本発明の方法の工程(a)で形成される混合物は、さらに鋳型化合物を含む。本明細書中で使用する用語「鋳型化合物」は、本発明の方法により製造された異なる重合度のククルビット[n]ウリルの相対量に影響する化合物を意味する。例えば、鋳型化合物を含まない又は異なる鋳型化合物を含むが、そのほかの点では同一の条件下で反応させた混合物を用いて製造した、ククルビット[6]ウリルに対するククルビット[5]ウリルの比と比較した場合、混合物に加えられた場合鋳型化合物は、例えばククルビット[6]ウリルに対するククルビット[5]ウリルの比を変えうる。
【0128】
通常、鋳型化合物は塩である。しかしながら、多くのほかの化合物も鋳型化合物として作動しうることが見出されている。
【0129】
本発明の方法によって製造された異なる重合度のククルビットウリルの比を変え得るいずれの化合物も鋳型化合物として使用しうる。鋳型化合物は、有機化合物、有機化合物の塩又は無機化合物であってもよい。鋳型化合物として使用し得る適当な化合物には、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、臭化アンモニウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、o-カルボラン、チオアセトアミド、N-(1-ナフチル)エチレンジアミン、2,2'-ビキノリン、p-ブロモアナリン(p-bromoanaline)、タウリン、ブルーテトラゾリウム、2-アミノ-3-メチル安息香酸、インドール-3-アルデヒド、システイン、4-アセトアミドアニリン、p-アミノフェノール、アセトアミド、4-アミノアセトフェノン、4-ジメチルアミノベンズアルデヒド(bezaldehyde)、2-アミノベンズイミダゾール、bis-(4,4'-ビピリジル)-α,α'-キシレン、赤リン、及びp-トルエンスルホン酸リチウムが挙げられる。本発明者らは、多数の他の化合物は鋳型化合物として使用に適しうる、及びそれゆえ上記リストは網羅的であると見なすべきでないと信じる。酸の陰イオンは、鋳型化合物として見なされてもよい。
【0130】
鋳型化合物は、単独で反応混合物に加えられてよく、あるいは2つ以上の鋳型化合物が反応混合物に加えられてもよい。
【0131】
塩が鋳型化合物として使用される場合、塩は、金属ハライド、アンモニウムハライド、金属サルフェート又は金属トシレートが好ましい。該塩の陰イオンは、使用される酸の陰イオンに対応するのが好ましい。例えば、使用される酸が塩酸の場合、金属塩化物又は塩化アンモニウムが望ましい塩である。同様に、酸がヨウ化水素酸の場合は、ヨージドを含む塩が、望ましく使用され、酸が臭化水素酸の場合は、ブロミドを含む塩が望ましい。
【0132】
酸は、強鉱酸又は強有機酸が望ましい。おおむね、いずれの酸も使用し得る。酸は、起こっている反応を触媒するために働く。
【0133】
望ましい酸は、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、重水素で置換された硫酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸が挙げられる。当然のことながら、該リストは網羅的ではなく、反応を触媒し得るいずれの酸も本発明の方法において使用し得る。
【0134】
酸は少なくとも5Mの濃度を有することが望ましい。化学式(1)の化合物、1つ以上の化学式(2)の化合物及び酸を含む混合物における酸の濃度もまた、少なくとも5Mであることが望ましい。
【0135】
通常該混合物は、無水混合物でない。
【0136】
混合物は、溶媒をさらに含んでもよい。溶媒は、例えば、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、1,1,1-トリフルオロエタノール又はイオン性液体から選択されてもよい。
【0137】
本発明の方法の工程(b)は、通常、ククルビット[n]ウリルを形成するために、化学式(1)の化合物及び1つ以上の化学式(2)の化合物に十分な時間、20℃〜120℃の温度に混合物を加熱することを含む。通常、温度は60℃〜110℃であり、より望ましくは80℃〜110℃である。混合物の沸騰は避けるのが望ましい。還流下での加熱は要求されないが使用してもよい。混合物は、ククルビット[n]ウリルを製造するために、一般的に60℃以上の温度に加熱すべきであり、増加した収率が80℃〜100℃の範囲における温度で得られることを見出した。
【0138】
化学式(1)及び(2)の化合物の製造
(a)置換されたグリコールウリル及びグリコールウリル類縁体
化学式(2)は、上記に定義した化学式(5)のグリコールウリル類縁体を包含する。
化学式(5)は、化学式:
【0139】
【化28】



【0140】
のグリコールウリルを包含する。
化学式(5)はまた、化学式:
【0141】
【化29】



【0142】
の置換されたグリコールウリルを包含する。
【0143】
多数の置換されたグリコールウリルが文献において知られている。個々の参照が、ここに参照として組み込まれている、Harro PetersenによりSynthesis、1973、249-293においてレビュー記事に対してなされる。該レビュー記事は、約30の置換されたグリコールウリルのリストを含む。該記事以来の文献は、置換グリコールウリルの他のいくつかの例を開示し、基本的に、いずれかのα-又はβ-ジケトンが、置換又は無置換のグリコールウリルを作るために使用され得ると考えられている。
【0144】
さらなる置換グリコールウリルは、WO00/68232に開示されている。
【0145】
例えば、Harro PetersenによりSynthesis、1973、249-293においてレビュー記事に開示されているように、グリコールウリル類縁体は、先行技術において公知の方法により製造され得る。
【0146】
グリコールウリル類縁体は、例えば次の反応スキーム:
【0147】
【化30】

【0148】
において記載されているように製造し得る。
【0149】
式中、各R1、R2及びR3基は、独立して選択され、化学式(2)のために上記に定義したとおりであり、Xは、ハロ又はチオエーテルのような脱離基である。
【0150】
スキーム1の反応は次の条件下で実行してもよい。
a)数日間室温で水中での反応、
b)共溶媒を伴う又伴わない、酸性水中での反応、
c)反応水を共沸により除きながら、酸触媒の存在下における炭化水素溶媒中での反応、
d)反応中生成する水の除去をする又はしない、ルイス酸の存在下における炭化水素溶媒中での反応。
【0151】
スキーム1は、例えば、次の置換グリコールウリル(化合物1.2において、Xがハロ)を製造するために使用しうる。該化合物は、新しく、本発明の更なる局面を作る。
【0152】
【化31】

【0153】
スキーム2において、ジアミン中間体を形成する反応は、共溶媒を伴う又は伴わないで、酸性水中で行われる。グリコールウリル類縁体を形成するジアミン中間体の反応は、塩基性条件下で行われる。グリコールウリル類縁体(1つのR3基が=NHであり、その他のR3が=O)を形成するためのスキーム2の反応の例が、I.J.Dagley及びM.Kony、Heterocycles 1994、38、595に開示されている。
【0154】
スキーム2は、例えば、グリコールウリル類縁体1.11及び1.12を製造するために使用され得る。
【0155】
【化32】

【0156】
(b)R7〜R10がHではない化学式(1)の化合物及びR11〜R14がHでない化学式(2)の化合物
化学式(2)の化合物(R11及びR12は、基-CHR5-O-CHR5-を一緒に形成し、R13及びR14は基-CHR5-O-CHR5-を一緒に形成する)は、化学式(2)の化合物(R11〜R14がHである)を、トリオキサン、化学式(R5)2COの化合物又は化学式R5OC(R5)2OR5の化合物(R5は、上記に定義したとおりであり、各R5は、独立して選択される)、及び酸と一緒に混合し、該混合物を約20℃〜60℃に加熱することによって製造し得る。通常、強鉱酸又は強有機酸を使用する場合、該混合物を20℃〜40℃に加熱する。しかしながら、トリフルオロ酢酸のようなより弱い酸を使用するなら、該混合物は約60℃に加熱し得る。
【0157】
いくつかの又は全てのR11〜R14がCHR5OR5である化学式(2)の化合物は、化学式(2)の化合物(R11〜R14がH)を、化学式XHR5COR5の化合物(Xはハロ、各R5は独立して選択されかつ上記に定義したとおりである)と、塩基性条件下において、反応することによって製造し得る。該反応は、通常室温において起こるが、該反応混合物は約40℃に加熱し得る。
【0158】
同じ方法は、化学式(1)の化合物(R7及びR8は、基-CHR5-O-CHR5-を一緒に形成し、かつR9及びR10は、基-CHR5-O-CHR5-を一緒に形成する)ならびに化学式(1)の化合物(いくつかの又は全てのR7〜R10が-CHR5OR5である)を製造するために使用し得る。
【実施例】
【0159】
実施例1
7M塩酸(1.27mL)に懸濁した3a-(4-(l-クロロブタン)-6a-メチルグリコールウリル(化合物1.7)(1g、4.2mmol)に40%ホルムアルデヒド(15mL)を加え、混合物を室温で18時間攪拌した。得られた沈殿ジエーテルを、ろ過により集め、水で洗い乾燥させた。
【0160】
実施例2
濃硫酸(7mL)に溶解した3a-(p-ヨードフェニル)-6a-メチルグリコールウリル(化合物1.2、X=I)(1g、1.8mmol)に、40%ホルムアルデヒド(1.7mL)を室温で加えた。20-30分後、混合物を、氷水にあけ、沈殿したジエーテルをろ過により集め、80℃で真空乾燥させた(収率80%)。
【0161】
実施例3
濃硫酸(7mL)に溶解した3a,6a-ジフェニルグリコールウリル(1g、1.8mmol)に、40%ホルムアルデヒド(0.7mL)を室温で加えた。20-30分後、混合物を、氷水にあけ、沈殿したジエーテルをろ過により集め、80℃で真空で乾燥させた(収率95%)。
【0162】
実施例4
濃硫酸(6mL)に溶解した3a,6a-ジ(p-ヨードフェニル)グリコールウリル(lg、1.8mmol)に、40%ホルムアルデヒド(0.54mL)を室温で加えた。20-30分後、混合物を氷水にあけ、沈殿したジエーテルをろ過により集め、80℃で真空で乾燥させた。
【0163】
実施例5
3a,6a-シクロペンタノグリコールウリル(1g、5.49mmol)を、ジメチルスルホキシド(1mL)、水(2mL)及び40%ホルムアルデヒド(1.6mL)の混合物に室温で加え、1M NaOHで混合物のpHを9に調整した。12時間後、混合物をメタノール(15mL)にあけ、沈殿したテトロール(化合物2.6)をろ過により集め、80℃で真空で乾燥させた(82%収率)。
【0164】
実施例6
トリフルオロ酢酸(2mL)に溶解させた3a-(4-ブト-2-エン)-6a-メチルグリコールウリル(化合物1.3)(1g、0.48mmol)に40%ホルムアルデヒド(1.46mL)を加え、混合物を12時間にわたり60℃に加熱した。溶媒を留去させジエーテルを得た(収率70%)。1時間未満の短い反応時間においては、アルコール及びエーテルの混合物が形成される。
【0165】
グリコールウリルのジエーテル類縁体も、ここに参照として組み込まれている、A.Wu、A.Chakraborty、D.Witt、J.Lagona、F.Damkai、M.A.Ofori、J.K.Chiles、J.C.Fettinger、及びL.Isaacs J.Org.Chem.2002、67、5817-5830の方法と同様に、無水条件下で製造し得る。
【0166】
(b)化学式(1)又は(2)のオリゴマー
グリコールウリル類縁体は、化学式-CHR5-の架橋により結合した化学式(A)の2〜11ユニットを含む化学式(1)及び(2)のオリゴマーを製造するために使用し得る。オリゴマーは、1つ以上のグリコールウリル類縁体を、酸及び必要に応じて、そのような化合物の間で化学式-CHR5-の架橋を形成し得る化合物と混合し、該混合物を加熱することにより製造し得る。化学式-CHR5-の架橋を形成し得る化合物は、トリオキサン、化学式R5COR5の化合物、又は化学式R5OC(R5)2OR5の化合物(R5は上記に定義した通りでありかつ各R5は独立して選択される)であってもよい。
【0167】
発明者らは、適当な反応温度と反応時間を用いて、化学式-CHR5-の架橋により結合した化学式(A)の2〜11ユニットを含むオリゴマーを、ククルビットウリルを形成するために反応しているオリゴマーなしで製造し得る。通常オリゴマーは、約20時間未満の時間にわたり50℃より低い温度に反応混合物を加熱することにより製造する。
【0168】
このプロセスは、通常、異なる数の化学式(A)のユニットを含有するオリゴマーの混合物の製造をもたらす。必要であれば、特定の長さを有するオリゴマーは、結晶化又はクロマトグラフィーにより、混合物中の他のオリゴマーから分離してもよい。しかしながら、多くの場合、1つの特定の長さのオリゴマーが主に形成され、そのようなケースでは、本発明の方法におけるオリゴマーを使用する前に、形成された他のオリゴマーから該オリゴマーを分離する必要が無いかもしれない。
【0169】
下記の実施例で言及したある化合物は、構造:
【0170】
【化33】

【0171】
により示される。
【0172】
実施例7
トリフルオロ酢酸(15mL)に溶解した3a-イソプロピルグリコールウリル(1g、5.4mmol)に、40%ホルムアルデヒド(1.62mL)を加え、混合物を50℃で加熱又は24時間還流した。溶媒を留去し、主にジエーテル2量体(化合物2.3)を得、これを精製または粗製のまま使用した。
【0173】
実施例8
トリフルオロ酢酸(15mL)に溶解したアルキルテザード(alkyltethered)ビスグリコールウリル(化合物1.9)(500g、1.9mmol)に、40%ホルムアルデヒド(0.855mL)を加え、混合物を50℃に加熱または24時間還流した。溶媒を留去し、主に2量体を得、これを精製または粗製のまま使用した。
【0174】
実施例9
トリフルオロ酢酸(15mL)に溶解した3a-(4-(l-クロロ-4-メチルブタン)グリコールウリル(化合物1.6)(1g、4.2mmol)に40%ホルムアルデヒド(1.26mL)を加え、混合物を、50℃で加熱又は24時間還流した。溶媒を留去させ、ジエーテルとして2量体誘導体を得た。
【0175】
実施例10
3a-(4-(l-クロロ-4-メチルブタン)グリコールウリルのホルムアルデヒドジエーテル誘導体(化合物1.6)(1g、2.9mmol)及び無置換グリコールウリル2量体(化合物2.2)(1.8g、5.8mmol)を、濃HCl(5mL)中で室温で一緒に混合した。30分後かつ1時間までに、均一な混合物を、MeOH(10mL)にあけ、沈殿を集め乾燥し、主に5量体を得た。
【0176】
実施例11
3a,6a-ジフェニルグリコールウリルのホルムアルデヒドジエーテル誘導体(2.9g、7.7mmol)、無置換グリコールウリル2量体(化合物2.2)(4.7g、15.4mmol)及びK2CO3(530mg)を、メタンスルホン酸(40mL)中で室温で20分、その次に50℃で10分、一緒に混合した。均一な混合物をMeOH(60mL)にあけ、沈殿を集めて乾燥させて、主に5量体を得た。
【0177】
実施例12
ジメチルグリコールウリルのホルムアルデヒドジエーテル誘導体(化合物2.5)(1g、5.9mmol)及び無置換グリコールウリル2量体(化合物2.2)(0.91g、2.95mmol)を濃HCl(2mL)中で、室温で30分から1時間、一緒に攪拌し、均一な混合物をMeOH(10mL)にあけ、沈殿を集めて乾燥させて、主にジエーテル4量体を得た。
【0178】
実施例13
3a,6a-シクロペンタノグリコールウリルのテトロール誘導体(化合物2.6)(1g、3.3mmol)を、濃HCl(2mL)中の無置換グリコールウリル(937mg、6.6mmol)溶液に加え、混合物を、室温で30分間攪拌した。均一な混合物をMeOH(10mL)にあけ、沈殿を集めて乾燥させて、主に3量体を得た。
【0179】
実施例14
ジメチルグリコールウリルのジエーテル(化合物2.5)(1g、3.9mmol)、グリコールウリル(1.1g、7.75mmol)及びLiCl(250mg)の混合物を、一緒に粉砕して微粉末を得た。この混合物に8M HCl(10mL)を加え、混合物を、常温で1時間攪拌し、全ての固形物が溶解した。このあと混合物を次に12〜24時間にわたり50℃で加熱した。冷却後溶媒を真空で排出した。メタノール及び希酸性溶液の組合せから再結晶化し、純粋な化合物として3量体(化合物2.4)1.2gを得た。
【0180】
ククルビット[4-12]ウリルの合成
実施例15
無置換グリコールウリル2量体(化合物2.2)(357mg、1.2mmol)及びジメチルグリコールウリルのジエーテル(化合物2.5)(148mg、0.58mmol)を、混合して一緒に粉砕して微粉末とし、濃塩酸(14mL)に加えた。混合物を、室温で1時間攪拌し、5量体を形成した。その次にパラホルムアルデヒド(35mg)を加え、該混合物を、2-3時間にわたり100℃に加熱した。真空で酸を留去し、主な生成物としてジメチルククルビット[1,4]ウリルを得た。
【0181】
実施例16
無置換のグリコールウリル2量体(化合物2.2)(2.36mg、7.7mmol)及びジメチルグリコールウリルのジエーテル(化合物2.5)(1.96mg、7.7mmol)及びLiClを、混合して一緒に粉砕して微粉末とし、濃塩酸(12mL)に加えた。混合物を、室温で30分間攪拌した。該混合物を、2-3時間100℃に加熱した。真空で酸を留去し、主な生成物として(>80%)、α,δ-テトラメチルククルビット[2,4]ウリルを得た。生成物をDowex陽イオン交換樹脂において、ギ酸及び1M HC1の混合物で溶出し精製した。
【0182】
実施例17
3a-イソプロピルグリコールウリル2量体ジエーテル(化合物2.3)(1g、2.5mmol)及び無置換グリコールウリル(720mg、5.0mmol)を、7M塩酸(12mL)中で混合した。混合物を、室温で1時間攪拌した。混合物を、2-3時間にわたり100℃に加熱した。真空で酸を留去し、主な生成物として、α,β,δ,ε-テトライソプロピルククルビット[4,2]ウリルを得た。
【0183】
実施例18
無置換グリコールウリル2量体(化合物2.2)(183mg、0.6mmol)、ブチルイミドグリコールウリルのジエーテル(210g、0.64mmol)及びp-トルエンスルホン酸(925g)を一緒に粉砕した。混合物を、2-3時間にわたり110℃に加熱した。メタノールを熱混合物に加え、冷却した。沈殿をろ過により集めた。クロマトグラフィーによる精製により、主な生成物としてα,δ-ジブチルイミドククルビット[2,4]ウリルを得た。
【0184】
実施例19
無置換グリコールウリル2量体(136mg、0.44mmol)、3a-(p-ヨードフェニル)-6a-メチルグリコールウリルのジエーテル(化合物1.2、X=I)(264mg、0.62mmol)及び濃塩酸(1mL)を一緒に粉砕した。混合物を、2-3時間にわたり110℃に加熱した。メタノールを熱混合物に加え、冷却した。沈殿をろ過により集めた。Sephadex SPにおける精製により、主な生成物として、α,δ-ジ(p-ヨードフェニル)ジメチルククルビット[2,4]ウリルを得た。
【0185】
実施例20
無置換グリコールウリル2量体(化合物2.2)(1g、3.3mmol)及び3a,6a-シクロペンタノグリコールウリルのテトロール(化合物2.6)(1g、3.3mmol)を、一緒に粉砕して微粉末とし、濃塩酸(12mL)に加えた。混合物を、室温で1時間攪拌した。混合物を、2-3時間にわたり100℃に加熱した。真空で酸を留去し、主な生成物として(80%)、α,δ-ジシクロペンタノククルビット[2,4]ウリルを得た。
【0186】
実施例21
無置換グリコールウリル2量体(化合物2.2)(135mg、0.44mmol及びLiCl(9mg)を、濃HCl(10mL)に加え、室温で20分間攪拌した。ジメチルグリコールウリルのジエーテル(化合物2.5)(55.9mg、0.22mmol)及び3a-フェニル-6a-メチルグリコールウリルのジエーテル(化合物1.2、X=H)(140mg、0.22mmol)の混合物を、一緒に粉砕して均一な固体とし、上記混合物に加えた。室温で、最初の20分間後、混合物を100℃で3時間にわたり加熱した。真空で酸を留去し、主な生成物としてα-フェニル-α-メチル-δ-ジメチルククルビット[2,4]ウリルを得た。
【0187】
実施例22
3a,6a-ジフェニルグリコールウリルのホルムアルデヒドジエーテル誘導体(2.9g、7.7mmol)、無置換グリコールウリル2量体(化合物2.2)(4.7g、15.4mmol)及びK2CO3(530mg)を、メタンスルホン酸(40mL)中で、室温で20分間、その次に50℃で10分間一緒に混合した。その次にパラホルムアルデヒド(460mg)を加え、混合物を2.5時間にわたり100℃に加熱した。冷却した均一な混合物を、MeOH(170mL)にあけ、ろ過により集められた生成物をMeOHで洗い、乾燥させ、主にジフェニルククルビット[1,4]ウリルである7.6gの生成混合物を得た。
【0188】
実施例23
化合物1.12(500mg、2.2mmol)及びパラホルムアルデヒド(295mg)の混合物を、トリフロオロ酢酸(10mL)中で還流下で数時間加熱した。溶媒の留去により得られた生成物を、精製しないで使用した。生成物をグリコールウリル2量体(化合物2.2)(670mg)と混合し、7M HC1(15mL)を常温で加えた。30分後、混合物を3時間にわたり90℃に加熱した。生成物を沈殿させるために、次に混合物を冷却し、メタノールを加えた。1H NMRは、4.1及び5.1ppmにおいて、ダブレットの基としてククルビットウリルに特徴的なプロトン共鳴を示し、さらにメチルプロトン共鳴は2.3ppmにおいて明白であった。ジオキサン結合は、ククルビット[6]ウリルが形成されていることを示した。ククルビット[6]ウリルは、化学式(B)(R3基のひとつが=C(COCH3)2である)のいくつかのユニットを含有した。
【0189】
実施例24
グリコールウリル2量体(化合物2.2)(1.2g、3.9mmol)、ジメチルグリコールウリルのジエーテル(化合物2.5)(1g、3.9mmol)及びLiCl(250mg)の混合物を、一緒に粉砕し微粉末を得た。この混合物に濃HC1(10ml)を加え、混合物を常温で1時間攪拌した。この混合物に3量体化合物2.4(1.95g、3.9mmol)を加え、さらに1時間にわたり攪拌を続けた。次に混合物を、3時間にわたり100℃に加熱した。溶媒を真空で留去し、固体の残渣を得、これをDowex陽イオン交換樹脂において精製した。α,γ,ζ-ヘキサメチルククルビット[3,4]ウリルが、結晶固体1.1gとして単離された。
【0190】
本発明は、ククルビットウリルを形成する化学式(B)のユニットにおいて特定の相対的位置に特定のR1、R2、R3及びR5基を有するククルビットウリルを製造するために使用され得る。このことは、ククルビットウリルの意図された使用のために、適当な溶解性及び複合する性質を有する、あるいは他の化合物との反応のための置換基の特定な数及び相対的な位置を有するククルビットウリルの製造を可能にする。
【0191】
上記の実施例から明らかなように、本発明の方法は、特定の可変の(variably)置換されたククルビットウリルを含む、特定のククルビットウリルのよい収率を生じ得る。先行文献の可変の(variably)置換されたククルビットウリルの製造方法は、通常、多数の異なったククルビットウリルを生成するため、通常は所望の可変の(variably)置換されたククルビットウリルの低い収率をもたらす。
【0192】
本発明のいくつかの態様において、本発明の方法は、異なるククルビットウリルの混合物を製造する。必要に応じて、本発明の方法により製造される個々のククルビット[4-12]ウリルは、WO00/68232に記載の分離方法により、該反応により製造されたほかのどのククルビット[4-12]ウリルからも分離しうる。
【0193】
本発明の方法により製造されたククルビット[n]ウリルのための可能な用途は、学術的、工業的、分析的及び製薬的応用を伴い多数である。1つの種として、両方の分子システムが、極性末端キャップを有する疎水性の空洞を有するから、ククルビット[n]ウリルは、シクロデキストリンと都合よく比較されうる。ククルビットウリルは、しかしながら、熱的にシクロデキストリンより強固であり、シクロデキストリンとは違って、強酸溶液中で安定である。シクロデキストリンは、除放剤、プラスティックフィルムにおける臭いの封入剤及び合成のためのエンジミミック(enzimimics)を含む広範な適用において使用されている。ククルビット[n]ウリルは、分子又は化合物をその中心空洞に取り込み、あるいは空洞の極性末端に分子を結合させるククルビット[n]ウリルの能力を取り込み得る恩恵と同様の領域において役に立つと考えられる。そのような用途には以下が含まれる:
【0194】
環境(水、土及び空気)
・汚染物質の結合及びその除去による改善。
・例えば、廃棄物を環境に放出する前の、潜在的な汚染物質の結合による予防。
・生体分解性ポリマーにおける使用。
【0195】
家庭内及び公共
・ゆっくりと長時間香りを放出するオドライサーとしてポリマーに取り込むこと。
・不快なにおい又は毒性の蒸気を閉じ込めるためにポリマーに取り込ませる。
・漂白及び白化剤のカプセル化。
【0196】
食物
・香料促進剤
・フレーバーオプティマイザー(不快なにおいを隠す)
・ジュースの変色の軽減のためのポリフェノール除去
【0197】
医薬
・副作用を抑え投与頻度を減少する除放剤
・体内の又は棚上の薬剤の安定性の増加
・例えば、胃痛の減少あるいはカプセル化による化学物質アレルギーの治療などの解毒
【0198】
農業/園芸
・除草剤及び殺虫剤の除放
・光や熱に対する農業化学物質の安定化
【0199】
工業
・酵素/触媒ミミック
・反応産物に対する位置選択的制御
・塗料及びポリマー産物の取り扱い
・化学物質精製のためのクロマトグラフィーカラム
・分析ツール及び装置
・印刷及び写真
【0200】
本明細書中に記載された発明は、特定に記載されたあるいは例示された以外の変形や修正に対して影響を受けるかも知れないことは当業者によって理解されるであろう。本発明が、本発明の精神及び範囲内にあるそのような全ての変形や修正を包含することは理解される。
【0201】
本発明の上記の請求の範囲及び上記明細書において、文脈が明示の用語又は必然の言外の意味を要求する場合を除いては、用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」等のバリエーションは、包括的な意味(すなわち、本発明の各種態様において、定まった特徴の存在を明確に述べるが、更なる特徴の存在または追加を妨げるものではない)で使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程:(a)
(1)化学式(1)
【化1】


の化合物(式中、化合物における化学式(A)
【化2】


の各ユニットに関して、R1及びR2は、同じか又は異なってもよく、各々一価のラジカルであり、あるいは、R1、R2及びこれらが結合した炭素原子は、置換されてもよい環状基を一緒に形成し、あるいは、化学式(A)の1つのユニットのR1及び化学式(A)の隣接するユニットのR2は、結合又は二価のラジカルを一緒に形成し、各R3は、独立して=O、=S、=NR、=CXZ、=CRZ及び=CZ2からなる群から選択され(Zは、電子吸引性基であり、Xはハロであり、Rは、H、置換されてもよい直鎖、分岐鎖又は環状の、飽和又は不飽和の炭化水素ラジカルであり、あるいは置換されてもよい複素環式ラジカルである);各R5は、独立してH、アルキル及びアリールからなる群から選択され;R7及びR8は、同じか又は異なってもよく、独立してH及び-CHR5OR5からなる群から選択され、あるいはR7及びR8は、基-CHR5-O-CHR5-を一緒に形成し(各R5は、独立してH、アルキル及びアリールからなる群から選択される);R9及びR10は、同じか又は異なってもよく、独立してH及び-CHR5OR5からなる群から選択され、あるいはR9及びR10は、基-CHR5-O-CHR5-を一緒に形成し(各R5は、独立してH、アルキル及びアリールからなる群から選択される);かつxは1から10の整数である);
(2)化学式(2)
【化3】


の1つ以上の化合物(式中、化合物における化学式(A)
【化4】


の各ユニットに関して、R1及びR2は、同じか又は異なってもよく、各々一価のラジカルであり、あるいは、R1、R2及びこれらが結合した炭素原子は、置換されてもよい環状基を一緒に形成し、あるいは、化学式(A)の1つのユニットのR1及び化学式(A)の隣接するユニットのR2は、結合又は二価のラジカルを一緒に形成し、各R3は、独立して=O、=S、=NR、=CXZ、=CRZ及び=CZ2からなる群から選択され(Zは、電子吸引性基であり、Xはハロであり、Rは、H、置換されてもよい直鎖、分岐鎖又は環状の、飽和又は不飽和の炭化水素ラジカルであり、あるいは置換されてもよい複素環式ラジカルである);各R5は、独立してH、アルキル及びアリールからなる群から選択され;あるいはR11及びR12は、同じか又は異なってもよく、H及び-CHR5OR5からなる群から独立して選択され、あるいはR11及びR12は、基-CHR5-O-CHR5-を一緒に形成し(各R5は、独立してH、アルキル及びアリールからなる群から選択される);R13及びR14は、同じか又は異なってもよく、H及び-CHR5OR5からなる群から独立して選択され、あるいはR13及びR14は、基-CHR5-O-CHR5-を一緒に形成し(各R5は、独立してH、アルキル及びアリールからなる群から選択される);かつyは0又は1から9の整数であり、x+y=10以下);及び
(3)酸を、混合物を形成するために混合する、及び
(b)ククルビット[n]ウリルを形成するために、化学式(1)の化合物及び1つ以上の化学式(2)の化合物に十分な条件に混合物をさらす、を含むククルビット[n]ウリルの製造法。
【請求項2】
R1及びR2が、独立して-R、-OR、-NR2(各Rは独立して選択される)、-NO2、-CN、-X、-COR、-COX、-COOR、
【化5】


(各Rは独立して選択される)、
【化6】


(各Rは独立して選択される)、-SeR、-SiR3(各Rは独立して選択される)、-SR、-SOR、
【化7】

-SO2R、-S-S-R、-BR2(各Rは独立して選択される)、-PR2(各Rは独立して選択される)、
【化8】


(各Rは独立して選択される)、
【化9】


(各Rは独立して選択される)、-P+R2(各Rは独立して選択される)及び金属又は金属錯体からなる群から選択される(式中、Rは、H、置換されてもよい直鎖、分岐鎖又は環状の、飽和又は不飽和の炭化水素ラジカル、あるいは置換されてもよい複素環式ラジカルであり、かつXはハロである)請求項1記載の方法。
【請求項3】
RがH、置換されてもよいC1-10アルキル、置換されてもよいC2-10アルケニル又は置換されてもよいC5-10アリールである請求項2記載の方法。
【請求項4】
混合物が、さらに化学式(1)及び(2)の化合物の間で化学式-CHR5-の架橋を形成し得る1つ以上の化合物を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
化学式(1)及び(2)の化合物の間で化学式-CHR5-の架橋を形成し得る化合物が、トリオキサン、置換されてもよい2,3-ジヒドロピラン、置換されてもよい2,3-ジヒドロフラン、化学式R5COR5の化合物及び化学式R5OC(R5)2OR5の化合物(各R5は、独立して選択されかつH、アルキル又はアリールである)からなる群から選択される請求項4記載の方法。
【請求項6】
化学式(1)及び(2)の化合物の間で化学式-CHR5-の架橋を形成し得る化合物が、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はトリオキサンである請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程(b)が、化学式(1)の化合物及び1つ以上の化学式(2)の化合物がククルビット[n]ウリルを形成するのに十分な時間にわたり20°C〜120°Cの温度に混合物を加熱することを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
R7=R8、R9=R10、R11=R12及びR13=R14である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
Zが、-NO2、-CO2R、-COR、-CN及びCX3(Xが、ハロであり、かつRが、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルである)からなる群から選択される請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
R3が=Oである請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
R5がHである請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
混合物がさらに鋳型化合物を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
鋳型化合物が塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
塩の陰イオンが、混合物中の酸の陰イオンに対応している請求項13に記載の方法。
【請求項15】
鋳型化合物が、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ルビジウム、塩化セシウム、臭化アンモニウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化セシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、o-カルボラン、チオアセトアミド、N-(1-ナフチル)エチレンジアミン、2,2'-ビキノリン、p-ブロモアナリン(p-bromoanaline)、タウリン、ブルーテトラゾリウム、2-アミノ-3-メチル安息香酸、インドール-3-アルデヒド、システイン、4-アセトアミドアニリン、p-アミノフェノール、アセトアミド、4-アミノアセトフェノン、4-ジメチルアミノベンズアルデヒド(bezaldehyde)、2-アミノベンズイミダゾール、bis-(4,4'-ビピリジル)-α,α'-キシレン、赤リン、及びp-トルエンスルホン酸リチウムから選択される請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項の方法により製造されたククルビット[n]ウリル。
【請求項17】
下記の化学式1.1〜1.10
【化10】



(式中、化学式1.2において、Xはハロである)のいずれかの化合物。
【請求項18】
化学式:
【化11】


(式中、ククルビット[n]ウリルにおける化学式(B):
【化12】


の各ユニットに関して、R1及びR2は、同じか又は異なってもよく、各々一価のラジカルであり、あるいは、R1、R2及びこれらが結合した炭素原子は、置換されてもよい環状基を一緒に形成し、あるいは、化学式(B)の1つのユニットのR1及び化学式(B)の隣接するユニットのR2は、一緒に結合又は二価のラジカルを形成し、各R3は、独立して=O、=S、=NR、=CXZ、=CRZ及び=CZ2からなる群から選択され(Zは電子吸引性基であり、Xはハロであり、Rは、H、置換されてもよい直鎖、分岐鎖又は環状の、飽和又は不飽和の炭化水素ラジカルであり、あるいは置換されてもよい複素環式ラジカルである)、各R5は、独立してH、アルキル及びアリールからなる群から選択され;nは4から12の整数であり、かつ式中、ククルビット[n]ウリルにおける少なくとも1つのR3は、=CXZ、=CRZ又は=CZ2である)のククルビット[n]ウリル。
【請求項19】
Zが-NO2、-CO2R、-COR、-CN及びCX3からなる群から選択され、かつXがハロである請求項17記載のククルビット[n]ウリル。
【請求項20】
ククルビット[n]ウリルにおける少なくとも1つのR3が、=C(CN)COCH3又は=C(COCH3)2である請求項17又は18記載のククルビット[n]ウリル。



【公表番号】特表2007−505046(P2007−505046A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525577(P2006−525577)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001232
【国際公開番号】WO2005/026168
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(501401308)ニューサウス イノヴェイションズ プロプライエタリィ リミティッド (3)
【Fターム(参考)】