クラッチ操作装置
【課題】 直線的な往復方向での操作で入り切り操作されるクラッチを操作するためのクラッチ操作装置の耐久性を、簡単な構造の付加によって向上させる。
【解決手段】 クラッチ操作体51に対するシフト操作部材52の接当面部分54fを、クラッチ操作体51とシフト操作部材52との移動方向のずれに基づく接触位置の変化に伴って回転するベアリング54で構成した。
【解決手段】 クラッチ操作体51に対するシフト操作部材52の接当面部分54fを、クラッチ操作体51とシフト操作部材52との移動方向のずれに基づく接触位置の変化に伴って回転するベアリング54で構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の走行クラッチ等を操作するために用いられるクラッチ操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例である乗用型田植機では、一直線に沿う往復方向での操作で入り切り操作されるクラッチを備えたものにおいて、そのクラッチを次のようにして操作していた。つまり、クラッチを操作するための筒軸状のクラッチ操作体を備え、このクラッチ操作体を偏芯カムを利用したシフト操作部材の操作で押し操作してクラッチを切り作動し、シフト操作部材による押圧作用を解除することによって復帰バネの作用による弾性復元力でクラッチ板の圧接状態を解除しクラッチ入り状態とするように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−204210号公報(段落〔0039〕、図8,図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように構成されたクラッチ操作装置では、クラッチ板の僅かな動きを偏芯カム機構を用いて精度良く入り切り操作できて有用なものである。しかしながら、直線的に作動するクラッチ操作体を操作するシフト操作部材の押圧作用部分が円弧運動をしているため、筒軸状のクラッチ操作体端部の被接当面に対してシフト操作部材の押圧作用部分が摺接移動することになる。このため、長期の使用のうちには、その摺接部分に摩耗が生じて、入り切り操作の精度が低減する可能性がある。
【0005】
本発明は、直線的な往復方向での操作で入り切り操作されるクラッチを操作するためのクラッチ操作装置の耐久性を、簡単な構造の付加によって向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
本発明は請求項1の記載のように、クラッチ操作体を一直線に沿う往復方向での操作で入り切り操作するように構成したクラッチ操作装置において、
前記クラッチ操作体に接当してクラッチ操作体を入り切り方向へ操作するシフト操作部材を備え、
このシフト操作部材を、前記クラッチ操作体の押し引き移動方向への移動成分を有した、前記クラッチ操作体の移動方向とは異なる方向の運動でクラッチ操作体を操作するように構成するとともに、
このシフト操作部材の前記クラッチ操作体に対する接当面部分を、前記クラッチ操作体と前記シフト操作部材との移動方向のずれに基づく接触位置の変化に伴って回転するベアリングで構成してあることを特徴とする。
【0007】
〔作用及び効果〕
上記構成によれば、直線的に作動するクラッチ操作体の被接当面に接触するシフト操作部材の接当面部分をベアリングによって構成している。
したがって、前記クラッチ操作体の移動方向とは異なる方向に運動するシフト操作部材の移動方向のずれによって、クラッチ操作体の被接当面に接当するシフト操作部材の接当面部分の位置が変化しても、その変化分が接当面部分を構成するベアリングの回転を伴って接当することになる。その結果、被接当面と接当面部分とが摺接して相対移動することを避けて、その摺接移動による摩耗を回避することができる利点がある。
【0008】
〔解決手段2〕
請求項2の記載のように、クラッチ操作体が筒軸状に形成され、その筒軸状部分の一端側にシフト操作部材の接当面部分が押し当てられる被接当面を備えているとともに、
そのクラッチ操作体の筒軸状部分の軸心を含む仮想平面に、もしくはその近くに、前記シフト操作部材の操作領域内で前記被接当面に接触する接当面部分を構成するベアリングの回動中心が位置するように、
前記クラッチ操作体の筒軸状部分の軸心位置と、シフト操作部材の回動中心位置と、シフト操作部材の操作領域との相対位置を定めて構成するとよい。
【0009】
〔作用及び効果〕
上記構成によれば、クラッチ操作体の筒軸状部分の軸心を含む仮想平面、もしくはその近くで、シフト部材の接当面部分がクラッチ操作体の被接当面に接当するように、シフト操作部材の操作領域が、前記クラッチ操作体の筒軸状部分の軸心位置とシフト操作部材の回動中心位置との関係で定められている。
したがって、筒軸状のクラッチ操作体を、その筒軸状部分の軸心を含む仮想平面、もしくはその近くでシフト操作部材の接当面部分が押圧するように作用し、クラッチ操作体に移動方向に沿った方向の操作力を正確に与えやすくなり、移動方向とは異なる方向の無用な外力が付加されることを避けられる利点がある。
【0010】
〔解決手段3〕
請求項3の記載のように、シフト操作部材を、ベアリングが装着される公転支持軸部分と、その公転支持軸部分を、公転支持軸部分の軸心とは異なる軸芯周りで回動可能に支持する自転支持軸部分とを備えた偏芯カム軸によって構成すると良い。
【0011】
〔作用及び効果〕
上記構成によれば、偏芯カム軸の公転支持軸部分にベアリングが装着されるので、自転する一本の軸体の一部に偏芯軸部分を形成して、その偏芯軸部分を接当面部分とする場合に比べて、接当面部分を径の大きな接触面に形成することができる。
したがって、クラッチ操作体の被接当面に対して、面接触に近い状態で径の大きな接当面部分による比較的面圧を低くした接触状態とすることができ、また、その接当面部分の径を大きくするために自転支持軸部分の径までも大きくする必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔乗用型水田作業機の構造〕
図1及び図2に本発明のクラッチ操作装置を装備した作業車の一例である乗用型田植機が示されている。この乗用型田植機は、走行機体1の操縦部2にステアリングハンドル21と運転座席20とを備えるとともに、機体前部に搭載したエンジン30の動力を、静油圧式無段変速装置31とミッションケース32内に装備される副変速機構を介して左右一対の前輪11及び後輪12に伝達するように構成してある。
前記乗用型田植機では、走行機体1の後部に、リンク機構13及びリンク機構13を昇降駆動する油圧シリンダ14が備えられており、リンク機構13の後部に苗植付装置15(作業装置に相当)が支持され、走行機体1前部の左右には複数の受け板71を備えた予備苗のせ台70が配備されている。
【0013】
前記操縦部2でステアリングホイール21の前方箇所には、図9に示すような操縦部パネル22が設けられている。この操縦部パネル22の表示部では、左側部にエンジンの冷却水温度を指針で示す水温計23が配置され、最右側部に、燃料の残量を棒グラフ状に示す燃料計24が配置され、そのすぐ左側にエンジン回転速度を指針で示すエンジン回転計25が配置されている。
そして、前記水温計23とエンジン回転計25との間に相当する中央箇所の上部には、作業関連情報を表示する作業表示部26が設けられ、この作業表示部26では、苗残量が少なくなったことを示す苗切れランプ26aと、施肥装置の肥料残量が少なくなったことを表示する肥料切れランプ26bと、各条クラッチの切り状態を示す畦際ランプ26cと、植付クラッチの切り状態を示す植付ランプ26dとが配置されている。
【0014】
また、操縦部パネル22の下部側には、バッテリー充電量の低下を示す充電ランプ28aと、左右のブレーキペダルが連結されていないことを表示するブレーキペダルランプ28bと、旋回時に旋回内側のクラッチブレーキを自動制動操作する制御モードであることを示すADランプ28cと、左右のラインマーカ(図示せず)がともに格納状態であることを示すマーカランプ28dと、施肥装置の肥料詰まりを表示する詰まり表示ランプ28eとの夫々が横並び状態で配置され、さらにこれらの下部側ランプ群と前記上部側の作業表示部26との間に、アワーメータ27が配置されている。
前記エンジン冷却水の水温計23は、指針とは別に、水温が所定温度未満の適温であれば「青」のランプ23aで表示し、所定温度以上であれば、「黄」または「赤」のランプ23bで表示して、色で直感的に識別できるように構成されている。
【0015】
図1に示すように、施肥装置16では、肥料を貯留するホッパー16A及び繰り出し部16Bが運転座席20の後側に固定されており、運転座席20の下側にブロア16Cが備えられている。
【0016】
〔車輪支持構造〕
次に、左右の前輪11、左右の後輪12の支持構造について説明する。
図1,3に示すように、走行機体1の前部にミッションケース32が固定され、ミッションケース32の前部に連結された支持フレーム10Aに、エンジン30が支持されている。角パイプ状の右及び左の機体フレーム10が、ミッションケース32の後部に連結されて後方に延出されており、ミッションケース32の後部と右及び左の機体フレーム10とに亘って、側面視三角形状の補強部材33が連結されている。
【0017】
図1及び図4に示すように、ミッションケース32の右及び左の横側面から右及び左の前車軸ケース34が延出されて、右及び左の前車軸ケース34の端部に円筒状の支持部35が斜め前方下方に向いて備えられている。
左右の前輪11を支持する前輪支持部36が、右及び左の前車軸ケース34の支持部35に縦軸芯P1周りに回転自在、及び縦軸芯P1の方向にスライド自在に支持されている。
前記支持部35の下端側には、前輪支持部36の上端側の嵌合箇所にスクレーパ部35Aを設けてあり、前輪支持部36の外周部に付着した泥土等を掻き落とすように構成されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、ミッションケース32の下部にピットマンアーム37が縦軸芯P8周りに揺動自在に支持され後向きに延出されて、前輪支持部36とピットマンアーム37とに亘ってタイロッド38が接続されている。図1に示すように、ピットマンアーム37を揺動操作するステアリングホイール21が備えられており、ステアリングホイール21によりピットマンアーム37を揺動操作することによって、左右の前輪11を操向操作する。
【0019】
図1,3,5に示すように、後車軸ケース40が備えられて、後車軸ケース40に左右の後輪12が支持されている。後車軸ケース40は右及び左のサスペンションバネ41により上下動及びローリング自在に支持されている。
【0020】
図1,4に示すように、ミッションケース32の左の横側部に静油圧式無段変速装置31が連結されており、エンジン30の動力が静油圧式無段変速装置31に伝動ベルト39を介して伝達されている。
静油圧式無段変速装置31の動力が、ミッションケース32内のギヤ式の副変速装置(図示せず)及び前輪デフ機構(図示せず)を介して、図5に示すように、右及び左の前車軸ケース34の内部に配置された伝動軸34aに伝達される。伝動軸34aからベベルギヤを介して支持部35と前輪支持部36とに内装される伝動軸35aに動力が伝達され、その動力が下端側のベベルギヤを介して前車軸11aに伝達されるように構成されている。
【0021】
前輪支持部36は、右及び左の前車軸ケース34の支持部35に縦軸芯P1周りに回転自在及び縦軸芯P1の方向にスライド自在に支持され、前輪支持部36の縦軸芯P1の方向へのスライドに対して内側サスペンションバネ36aと外側サスペンションバネ36bが作用するように構成されている。図4は前記内側サスペンションバネ36aと外側サスペンションバネ36bが最も伸びた状態を示す。
【0022】
〔後輪伝動系〕
次に、後車軸ケース40の左右の後輪12への伝動構造について説明する。
【0023】
図2,7に示すように、後車軸ケース40に伝動軸42が備えられ、入力軸43に固定されたベベルギヤ43aが、伝動軸42に固定されたベベルギヤ42aに咬合している。伝動軸42の右及び左の端部に、摩擦多板式のサイドクラッチ50が備えられており、サイドクラッチ50と後輪12を支持する車軸45との間に、伝動軸44が備えられている。これにより、図3及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置31の動力が伝達される走行伝動軸46、入力軸43、伝動軸42、右及び左のサイドクラッチ50、伝動軸44、車軸45を介して左右の後輪12に伝達される。
【0024】
図3,5に示すように、後車軸ケース40は中央の後車軸ケース40aと左右の後車軸ケース40bとから構成されている。そして、中央の後車軸ケース40aの左右に両側には、前記ピットマンアーム37と連係ロッド47を介してステアリングホイール21の回転を伝える操作アーム48が取り付けられている。
この操作アーム48を左右の後車軸ケース40b側に配設せず、中央の後車軸ケース40a側に配設したのは、連係ロッド47の組立作業やメンテナンス作業において、操作アーム48周辺に作業スペースを確保し、作業性を向上させるためである。
【0025】
〔クラッチ操作装置〕
図5,6に示すように、後車軸ケース40に内装される右及び左のサイドクラッチ50は、横向きの伝動軸42に相対回転自在に外嵌されたクラッチケース50a、伝動軸42にスプライン構造により一体回転及びスライド自在に外嵌された筒軸部材50b、クラッチケース50aと筒軸部材50bとの間に配置された複数の摩擦板50c、摩擦板50cの押圧側(伝動状態側)に筒軸部材50bを付勢するバネ50d等を備えて構成されており、バネ50dにより右及び左のサイドクラッチ50が伝動状態に付勢されている。
【0026】
前記サイドクラッチ50を操作するためのクラッチ操作装置5は、前記筒軸部材50bによって構成されるクラッチ操作体51と、そのクラッチ操作体51をクラッチ入り側に付勢する前記バネ50dに抗して、前記クラッチ操作体51を切り側へ操作するためのシフト操作部材52とで構成されている。
前記シフト操作部材52は、伝動軸42の回転軸心と直交する方向の軸心P2周りで回動操作可能に構成された偏芯カム軸によって構成されており、ステアリングホイール21の所定角度以上の操向操作に連動して旋回内側の後輪12に対する伝動を断つように、前記クラッチ操作体51と連係させてある。
【0027】
すなわち、図6〜図8に示すように、クラッチ操作体51の筒軸部分(前記筒軸部材50b)の筒軸芯x1を含む平面に、前記筒軸芯x1と直交するシフト操作部材52の軸心P2を位置させてあり、このシフト操作部材52の軸心から外れた位置を軸心P3とする支軸53を設けてあり、この支軸53にベアリング54を外嵌させてシフト操作部材52を構成している。
したがって、支軸53の軸心P3がシフト操作部材52の軸心P2周りで公転し、シフト操作部材52は自身の軸心P2周りで自転することにより、支軸53に外嵌されたベアリング54の外周面がクラッチ操作体51の筒軸部材50bの端面に接当して、その筒軸部材50bをクラッチ切り側へ押圧するように構成されている。つまり、前記支軸53が公転支持軸部分であり、シフト操作部材52が自転支持軸部分であり、これらによって偏芯カム軸が構成されている。
【0028】
上記のように、クラッチ操作体51は伝動軸42に外嵌して、その伝動軸42の軸心と同軸芯である筒軸部材50bの軸心x1に沿って直線上を往復操作されるものであるのに対して、シフト操作部材52はその回転軸心P2周りで自転し、支軸53に装着されたベアリング54が前記シフト操作部材52の回転軸心P2周りで揺動することになる。したがって、筒軸部材50bの端面の被接当面50fと、ベアリング54の外周面である接当面部分54fとの間で移動方向の相違によるずれが生じることになるが、本発明では、そのずれに相当する量だけベアリング54が回転運動するので、前記被接当面50f部分と接当面部分54fとの間での摺動を回避することができる。
【0029】
〔その他〕
前記静油圧式無段変速装置31は、図9に示すように、変速操作レバー6の操作によって人為的に変速操作されるように構成されている。
すなわち、人為的に操作された変速操作レバー6の操作量をポテンショメータ60が検出すると、その検出信号が制御装置61に入力される。制御装置61からは、前記検出信号に基づいて出力される制御指令が電動モータ62に伝達され、電動モータ62がトラニオン軸31aを所定量作動させるように駆動される。
そして、その電動モータ62で駆動されたトラニオン軸31aの操作位置が、ベルクランクや連係ロッドからなる連係機構63を介して前記ポテンショメータ60で検出され、その検出信号が前記制御装置61にフィードバック信号として伝達される。
つまり、前記変速操作レバー6の操作はポテンショメータ60の操作軸部60aに伝達され、前記連係機構63のフィードバックの動作はポテンショメータ60のボディ部分60bに伝達されるようにして、単一のポテンショメータ60を、変速操作レバー6による人為操作量と電動モータ62の作動によるフィードバック量との双方を検出する手段として兼用している。
【0030】
乗用型田植機の搭乗部に配備される運転座席20は、図2及び図11に示されるように、運転座席20に座った姿勢のままで操作可能な操作ハンドル20aの操作にともなって、周知の昇降機構(図外)により昇降自在に構成されている。また、図2及び図11に示されるように、運転座席20の前方側下方の搭乗部ステップ18の横一側端近くの立ち上がり壁部分18Aには、その立ち上がり壁部分18Aの裏面側に近接して燃料タンク7の給油口7aが設けてあり、給油口7aを外部へ開放するための開閉蓋19が前記立ち上がり壁部分18Aに設けてある。したがって、搭乗部ステップ18上からの給油が可能である。
【0031】
図12に示すように、右及び左の前車軸ケース34の端部に斜め前方下方に向けて備えられた円筒状の支持部35の上部には加速度センサ8が配備されている。この位置に加速度センサ8が配備されたことにより、作業走行にともなって前輪11が圃場の凸部に乗り上げたり、凹部に落ち込んだりしたことを比較的早期に検知することができる。
そして、本発明では、前輪11側での凹凸が検知されると、その時点から後輪12が前記凹凸箇所に達する時間を、変速操作レバー6の操作位置に基づく機体走行速度から予測して、後部の苗植付装置15の対地高さを一定に保つようにリンク機構13を昇降駆動する油圧シリンダ14の動作タイミングを設定している。
このとき本発明では、後輪11が前記凹凸箇所に達すると予測される時間よりも少し早めにリンク機構13の昇降動作を行わせるように油圧シリンダ14の昇降動作の開始タイミングを設定して、油圧シリンダ14の駆動速度を比較的緩速度で行えるようにしてある。
また、前記加速度センサ8の感度を手動操作で任意に設定する操作具(図示せず)や、圃場条件や車速に応じて前記苗植付装置15の昇降を行うリンク機構13の油圧シリンダ14の動作タイミングや駆動速度を調節する操作具(図示せず)を備えても良い。
【0032】
[発明の実施の第1別形態]
クラッチ操作体51とシフト操作部材52とを配設するにあたっては、発明の実施の形態で示したように、クラッチ操作体51の筒軸部分の筒軸芯x1を含む平面にシフト操作部材52の軸心P2を位置させる構造にかぎらず、図8に示すように構成した構造を採用してもよい。
すなわち、クラッチ操作体51の被接当面50fにシフト操作部材52の接当面部分54fが接触した状態では、その接触状態においてベアリング54の回動中心とクラッチ操作体51の筒軸部材50bの軸心が同一仮想平面に位置するように構成したものであり、このときシフト操作部材52の軸心P2は前記筒軸部材50bの軸心x1からは少し外れた箇所に位置している。
【0033】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]で示したシフト操作部材52の押圧位置は、押圧終了時点で筒軸部材50bの軸心x1と一致するものに限らず、開始時点でもよく、押圧領域のどの位置でもよい。また、多少押圧終了時点を過ぎた位置でもよい。要は筒軸部材50bの軸心x1からあまり離れない近くの位置であればよい。
【0034】
[発明の実施の第3別形態]
ベアリング54を用いて接当面部分54fを設ける箇所は、偏芯カム軸を利用した押圧構造で構成されるものに限らず、例えばメカ式のシフターと、相手ギヤに対して係脱される変速ギヤとの接当箇所のように、シフト操作部材52側の接当面部分54fとクラッチ操作体51側の被接当面50fとの相対移動方向が異なる箇所であればよい。
【0035】
[発明の実施の第4別形態]
本発明は、走行機体1の後部にロータリ耕耘装置(作業装置に相当)を昇降駆動自在に連結可能に構成された農用トラクタや、機体の前部に刈取部(作業装置に相当)を昇降駆動自在に支持したコンバイン等の作業車にも適用できる。
【0036】
[発明の実施の第5別形態]
前記支持部35の下端側で、前輪支持部36の上端側の嵌合箇所に設けるスクレーパ部35Aとしては、前述した図4に示すような構造に限らず、図13に示すように、支持部35の軸心に対して下端部の全体が斜めに交差する形状に構成されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体側面図
【図3】乗用型田植機の全体側面図の連係動作構造を示す平面図
【図4】前輪支持部付近の縦断正面図
【図5】後車軸ケースの内部構造を示す断面図
【図6】後車軸ケースの内の一部を示す拡大断面図
【図7】クラッチ操作装置を示し、(イ)は側面図、(ロ)は(イ)におけるa−a線矢視図
【図8】クラッチ操作装置を示し、(イ)は側面図、(ロ)は(イ)におけるa−a線矢視図
【図9】変速操作系を示す概略説明図
【図10】操縦バネル部分を示す平面図
【図11】操縦部の一部を示す概略説明図
【図12】乗用型田植機の苗植付装置の昇降制御に関する説明図
【図13】別実施形態の前輪支持部付近の縦断正面図
【符号の説明】
【0038】
5 クラッチ操作装置
40 後車軸ケース
50 サイドクラッチ
50a クラッチケース
50b 筒軸部材
50f 被接当面
51 クラッチ操作体
52 シフト操作部材
53 支軸
54 ベアリング
54f 接当面部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の走行クラッチ等を操作するために用いられるクラッチ操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例である乗用型田植機では、一直線に沿う往復方向での操作で入り切り操作されるクラッチを備えたものにおいて、そのクラッチを次のようにして操作していた。つまり、クラッチを操作するための筒軸状のクラッチ操作体を備え、このクラッチ操作体を偏芯カムを利用したシフト操作部材の操作で押し操作してクラッチを切り作動し、シフト操作部材による押圧作用を解除することによって復帰バネの作用による弾性復元力でクラッチ板の圧接状態を解除しクラッチ入り状態とするように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−204210号公報(段落〔0039〕、図8,図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように構成されたクラッチ操作装置では、クラッチ板の僅かな動きを偏芯カム機構を用いて精度良く入り切り操作できて有用なものである。しかしながら、直線的に作動するクラッチ操作体を操作するシフト操作部材の押圧作用部分が円弧運動をしているため、筒軸状のクラッチ操作体端部の被接当面に対してシフト操作部材の押圧作用部分が摺接移動することになる。このため、長期の使用のうちには、その摺接部分に摩耗が生じて、入り切り操作の精度が低減する可能性がある。
【0005】
本発明は、直線的な往復方向での操作で入り切り操作されるクラッチを操作するためのクラッチ操作装置の耐久性を、簡単な構造の付加によって向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
本発明は請求項1の記載のように、クラッチ操作体を一直線に沿う往復方向での操作で入り切り操作するように構成したクラッチ操作装置において、
前記クラッチ操作体に接当してクラッチ操作体を入り切り方向へ操作するシフト操作部材を備え、
このシフト操作部材を、前記クラッチ操作体の押し引き移動方向への移動成分を有した、前記クラッチ操作体の移動方向とは異なる方向の運動でクラッチ操作体を操作するように構成するとともに、
このシフト操作部材の前記クラッチ操作体に対する接当面部分を、前記クラッチ操作体と前記シフト操作部材との移動方向のずれに基づく接触位置の変化に伴って回転するベアリングで構成してあることを特徴とする。
【0007】
〔作用及び効果〕
上記構成によれば、直線的に作動するクラッチ操作体の被接当面に接触するシフト操作部材の接当面部分をベアリングによって構成している。
したがって、前記クラッチ操作体の移動方向とは異なる方向に運動するシフト操作部材の移動方向のずれによって、クラッチ操作体の被接当面に接当するシフト操作部材の接当面部分の位置が変化しても、その変化分が接当面部分を構成するベアリングの回転を伴って接当することになる。その結果、被接当面と接当面部分とが摺接して相対移動することを避けて、その摺接移動による摩耗を回避することができる利点がある。
【0008】
〔解決手段2〕
請求項2の記載のように、クラッチ操作体が筒軸状に形成され、その筒軸状部分の一端側にシフト操作部材の接当面部分が押し当てられる被接当面を備えているとともに、
そのクラッチ操作体の筒軸状部分の軸心を含む仮想平面に、もしくはその近くに、前記シフト操作部材の操作領域内で前記被接当面に接触する接当面部分を構成するベアリングの回動中心が位置するように、
前記クラッチ操作体の筒軸状部分の軸心位置と、シフト操作部材の回動中心位置と、シフト操作部材の操作領域との相対位置を定めて構成するとよい。
【0009】
〔作用及び効果〕
上記構成によれば、クラッチ操作体の筒軸状部分の軸心を含む仮想平面、もしくはその近くで、シフト部材の接当面部分がクラッチ操作体の被接当面に接当するように、シフト操作部材の操作領域が、前記クラッチ操作体の筒軸状部分の軸心位置とシフト操作部材の回動中心位置との関係で定められている。
したがって、筒軸状のクラッチ操作体を、その筒軸状部分の軸心を含む仮想平面、もしくはその近くでシフト操作部材の接当面部分が押圧するように作用し、クラッチ操作体に移動方向に沿った方向の操作力を正確に与えやすくなり、移動方向とは異なる方向の無用な外力が付加されることを避けられる利点がある。
【0010】
〔解決手段3〕
請求項3の記載のように、シフト操作部材を、ベアリングが装着される公転支持軸部分と、その公転支持軸部分を、公転支持軸部分の軸心とは異なる軸芯周りで回動可能に支持する自転支持軸部分とを備えた偏芯カム軸によって構成すると良い。
【0011】
〔作用及び効果〕
上記構成によれば、偏芯カム軸の公転支持軸部分にベアリングが装着されるので、自転する一本の軸体の一部に偏芯軸部分を形成して、その偏芯軸部分を接当面部分とする場合に比べて、接当面部分を径の大きな接触面に形成することができる。
したがって、クラッチ操作体の被接当面に対して、面接触に近い状態で径の大きな接当面部分による比較的面圧を低くした接触状態とすることができ、また、その接当面部分の径を大きくするために自転支持軸部分の径までも大きくする必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔乗用型水田作業機の構造〕
図1及び図2に本発明のクラッチ操作装置を装備した作業車の一例である乗用型田植機が示されている。この乗用型田植機は、走行機体1の操縦部2にステアリングハンドル21と運転座席20とを備えるとともに、機体前部に搭載したエンジン30の動力を、静油圧式無段変速装置31とミッションケース32内に装備される副変速機構を介して左右一対の前輪11及び後輪12に伝達するように構成してある。
前記乗用型田植機では、走行機体1の後部に、リンク機構13及びリンク機構13を昇降駆動する油圧シリンダ14が備えられており、リンク機構13の後部に苗植付装置15(作業装置に相当)が支持され、走行機体1前部の左右には複数の受け板71を備えた予備苗のせ台70が配備されている。
【0013】
前記操縦部2でステアリングホイール21の前方箇所には、図9に示すような操縦部パネル22が設けられている。この操縦部パネル22の表示部では、左側部にエンジンの冷却水温度を指針で示す水温計23が配置され、最右側部に、燃料の残量を棒グラフ状に示す燃料計24が配置され、そのすぐ左側にエンジン回転速度を指針で示すエンジン回転計25が配置されている。
そして、前記水温計23とエンジン回転計25との間に相当する中央箇所の上部には、作業関連情報を表示する作業表示部26が設けられ、この作業表示部26では、苗残量が少なくなったことを示す苗切れランプ26aと、施肥装置の肥料残量が少なくなったことを表示する肥料切れランプ26bと、各条クラッチの切り状態を示す畦際ランプ26cと、植付クラッチの切り状態を示す植付ランプ26dとが配置されている。
【0014】
また、操縦部パネル22の下部側には、バッテリー充電量の低下を示す充電ランプ28aと、左右のブレーキペダルが連結されていないことを表示するブレーキペダルランプ28bと、旋回時に旋回内側のクラッチブレーキを自動制動操作する制御モードであることを示すADランプ28cと、左右のラインマーカ(図示せず)がともに格納状態であることを示すマーカランプ28dと、施肥装置の肥料詰まりを表示する詰まり表示ランプ28eとの夫々が横並び状態で配置され、さらにこれらの下部側ランプ群と前記上部側の作業表示部26との間に、アワーメータ27が配置されている。
前記エンジン冷却水の水温計23は、指針とは別に、水温が所定温度未満の適温であれば「青」のランプ23aで表示し、所定温度以上であれば、「黄」または「赤」のランプ23bで表示して、色で直感的に識別できるように構成されている。
【0015】
図1に示すように、施肥装置16では、肥料を貯留するホッパー16A及び繰り出し部16Bが運転座席20の後側に固定されており、運転座席20の下側にブロア16Cが備えられている。
【0016】
〔車輪支持構造〕
次に、左右の前輪11、左右の後輪12の支持構造について説明する。
図1,3に示すように、走行機体1の前部にミッションケース32が固定され、ミッションケース32の前部に連結された支持フレーム10Aに、エンジン30が支持されている。角パイプ状の右及び左の機体フレーム10が、ミッションケース32の後部に連結されて後方に延出されており、ミッションケース32の後部と右及び左の機体フレーム10とに亘って、側面視三角形状の補強部材33が連結されている。
【0017】
図1及び図4に示すように、ミッションケース32の右及び左の横側面から右及び左の前車軸ケース34が延出されて、右及び左の前車軸ケース34の端部に円筒状の支持部35が斜め前方下方に向いて備えられている。
左右の前輪11を支持する前輪支持部36が、右及び左の前車軸ケース34の支持部35に縦軸芯P1周りに回転自在、及び縦軸芯P1の方向にスライド自在に支持されている。
前記支持部35の下端側には、前輪支持部36の上端側の嵌合箇所にスクレーパ部35Aを設けてあり、前輪支持部36の外周部に付着した泥土等を掻き落とすように構成されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、ミッションケース32の下部にピットマンアーム37が縦軸芯P8周りに揺動自在に支持され後向きに延出されて、前輪支持部36とピットマンアーム37とに亘ってタイロッド38が接続されている。図1に示すように、ピットマンアーム37を揺動操作するステアリングホイール21が備えられており、ステアリングホイール21によりピットマンアーム37を揺動操作することによって、左右の前輪11を操向操作する。
【0019】
図1,3,5に示すように、後車軸ケース40が備えられて、後車軸ケース40に左右の後輪12が支持されている。後車軸ケース40は右及び左のサスペンションバネ41により上下動及びローリング自在に支持されている。
【0020】
図1,4に示すように、ミッションケース32の左の横側部に静油圧式無段変速装置31が連結されており、エンジン30の動力が静油圧式無段変速装置31に伝動ベルト39を介して伝達されている。
静油圧式無段変速装置31の動力が、ミッションケース32内のギヤ式の副変速装置(図示せず)及び前輪デフ機構(図示せず)を介して、図5に示すように、右及び左の前車軸ケース34の内部に配置された伝動軸34aに伝達される。伝動軸34aからベベルギヤを介して支持部35と前輪支持部36とに内装される伝動軸35aに動力が伝達され、その動力が下端側のベベルギヤを介して前車軸11aに伝達されるように構成されている。
【0021】
前輪支持部36は、右及び左の前車軸ケース34の支持部35に縦軸芯P1周りに回転自在及び縦軸芯P1の方向にスライド自在に支持され、前輪支持部36の縦軸芯P1の方向へのスライドに対して内側サスペンションバネ36aと外側サスペンションバネ36bが作用するように構成されている。図4は前記内側サスペンションバネ36aと外側サスペンションバネ36bが最も伸びた状態を示す。
【0022】
〔後輪伝動系〕
次に、後車軸ケース40の左右の後輪12への伝動構造について説明する。
【0023】
図2,7に示すように、後車軸ケース40に伝動軸42が備えられ、入力軸43に固定されたベベルギヤ43aが、伝動軸42に固定されたベベルギヤ42aに咬合している。伝動軸42の右及び左の端部に、摩擦多板式のサイドクラッチ50が備えられており、サイドクラッチ50と後輪12を支持する車軸45との間に、伝動軸44が備えられている。これにより、図3及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置31の動力が伝達される走行伝動軸46、入力軸43、伝動軸42、右及び左のサイドクラッチ50、伝動軸44、車軸45を介して左右の後輪12に伝達される。
【0024】
図3,5に示すように、後車軸ケース40は中央の後車軸ケース40aと左右の後車軸ケース40bとから構成されている。そして、中央の後車軸ケース40aの左右に両側には、前記ピットマンアーム37と連係ロッド47を介してステアリングホイール21の回転を伝える操作アーム48が取り付けられている。
この操作アーム48を左右の後車軸ケース40b側に配設せず、中央の後車軸ケース40a側に配設したのは、連係ロッド47の組立作業やメンテナンス作業において、操作アーム48周辺に作業スペースを確保し、作業性を向上させるためである。
【0025】
〔クラッチ操作装置〕
図5,6に示すように、後車軸ケース40に内装される右及び左のサイドクラッチ50は、横向きの伝動軸42に相対回転自在に外嵌されたクラッチケース50a、伝動軸42にスプライン構造により一体回転及びスライド自在に外嵌された筒軸部材50b、クラッチケース50aと筒軸部材50bとの間に配置された複数の摩擦板50c、摩擦板50cの押圧側(伝動状態側)に筒軸部材50bを付勢するバネ50d等を備えて構成されており、バネ50dにより右及び左のサイドクラッチ50が伝動状態に付勢されている。
【0026】
前記サイドクラッチ50を操作するためのクラッチ操作装置5は、前記筒軸部材50bによって構成されるクラッチ操作体51と、そのクラッチ操作体51をクラッチ入り側に付勢する前記バネ50dに抗して、前記クラッチ操作体51を切り側へ操作するためのシフト操作部材52とで構成されている。
前記シフト操作部材52は、伝動軸42の回転軸心と直交する方向の軸心P2周りで回動操作可能に構成された偏芯カム軸によって構成されており、ステアリングホイール21の所定角度以上の操向操作に連動して旋回内側の後輪12に対する伝動を断つように、前記クラッチ操作体51と連係させてある。
【0027】
すなわち、図6〜図8に示すように、クラッチ操作体51の筒軸部分(前記筒軸部材50b)の筒軸芯x1を含む平面に、前記筒軸芯x1と直交するシフト操作部材52の軸心P2を位置させてあり、このシフト操作部材52の軸心から外れた位置を軸心P3とする支軸53を設けてあり、この支軸53にベアリング54を外嵌させてシフト操作部材52を構成している。
したがって、支軸53の軸心P3がシフト操作部材52の軸心P2周りで公転し、シフト操作部材52は自身の軸心P2周りで自転することにより、支軸53に外嵌されたベアリング54の外周面がクラッチ操作体51の筒軸部材50bの端面に接当して、その筒軸部材50bをクラッチ切り側へ押圧するように構成されている。つまり、前記支軸53が公転支持軸部分であり、シフト操作部材52が自転支持軸部分であり、これらによって偏芯カム軸が構成されている。
【0028】
上記のように、クラッチ操作体51は伝動軸42に外嵌して、その伝動軸42の軸心と同軸芯である筒軸部材50bの軸心x1に沿って直線上を往復操作されるものであるのに対して、シフト操作部材52はその回転軸心P2周りで自転し、支軸53に装着されたベアリング54が前記シフト操作部材52の回転軸心P2周りで揺動することになる。したがって、筒軸部材50bの端面の被接当面50fと、ベアリング54の外周面である接当面部分54fとの間で移動方向の相違によるずれが生じることになるが、本発明では、そのずれに相当する量だけベアリング54が回転運動するので、前記被接当面50f部分と接当面部分54fとの間での摺動を回避することができる。
【0029】
〔その他〕
前記静油圧式無段変速装置31は、図9に示すように、変速操作レバー6の操作によって人為的に変速操作されるように構成されている。
すなわち、人為的に操作された変速操作レバー6の操作量をポテンショメータ60が検出すると、その検出信号が制御装置61に入力される。制御装置61からは、前記検出信号に基づいて出力される制御指令が電動モータ62に伝達され、電動モータ62がトラニオン軸31aを所定量作動させるように駆動される。
そして、その電動モータ62で駆動されたトラニオン軸31aの操作位置が、ベルクランクや連係ロッドからなる連係機構63を介して前記ポテンショメータ60で検出され、その検出信号が前記制御装置61にフィードバック信号として伝達される。
つまり、前記変速操作レバー6の操作はポテンショメータ60の操作軸部60aに伝達され、前記連係機構63のフィードバックの動作はポテンショメータ60のボディ部分60bに伝達されるようにして、単一のポテンショメータ60を、変速操作レバー6による人為操作量と電動モータ62の作動によるフィードバック量との双方を検出する手段として兼用している。
【0030】
乗用型田植機の搭乗部に配備される運転座席20は、図2及び図11に示されるように、運転座席20に座った姿勢のままで操作可能な操作ハンドル20aの操作にともなって、周知の昇降機構(図外)により昇降自在に構成されている。また、図2及び図11に示されるように、運転座席20の前方側下方の搭乗部ステップ18の横一側端近くの立ち上がり壁部分18Aには、その立ち上がり壁部分18Aの裏面側に近接して燃料タンク7の給油口7aが設けてあり、給油口7aを外部へ開放するための開閉蓋19が前記立ち上がり壁部分18Aに設けてある。したがって、搭乗部ステップ18上からの給油が可能である。
【0031】
図12に示すように、右及び左の前車軸ケース34の端部に斜め前方下方に向けて備えられた円筒状の支持部35の上部には加速度センサ8が配備されている。この位置に加速度センサ8が配備されたことにより、作業走行にともなって前輪11が圃場の凸部に乗り上げたり、凹部に落ち込んだりしたことを比較的早期に検知することができる。
そして、本発明では、前輪11側での凹凸が検知されると、その時点から後輪12が前記凹凸箇所に達する時間を、変速操作レバー6の操作位置に基づく機体走行速度から予測して、後部の苗植付装置15の対地高さを一定に保つようにリンク機構13を昇降駆動する油圧シリンダ14の動作タイミングを設定している。
このとき本発明では、後輪11が前記凹凸箇所に達すると予測される時間よりも少し早めにリンク機構13の昇降動作を行わせるように油圧シリンダ14の昇降動作の開始タイミングを設定して、油圧シリンダ14の駆動速度を比較的緩速度で行えるようにしてある。
また、前記加速度センサ8の感度を手動操作で任意に設定する操作具(図示せず)や、圃場条件や車速に応じて前記苗植付装置15の昇降を行うリンク機構13の油圧シリンダ14の動作タイミングや駆動速度を調節する操作具(図示せず)を備えても良い。
【0032】
[発明の実施の第1別形態]
クラッチ操作体51とシフト操作部材52とを配設するにあたっては、発明の実施の形態で示したように、クラッチ操作体51の筒軸部分の筒軸芯x1を含む平面にシフト操作部材52の軸心P2を位置させる構造にかぎらず、図8に示すように構成した構造を採用してもよい。
すなわち、クラッチ操作体51の被接当面50fにシフト操作部材52の接当面部分54fが接触した状態では、その接触状態においてベアリング54の回動中心とクラッチ操作体51の筒軸部材50bの軸心が同一仮想平面に位置するように構成したものであり、このときシフト操作部材52の軸心P2は前記筒軸部材50bの軸心x1からは少し外れた箇所に位置している。
【0033】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]で示したシフト操作部材52の押圧位置は、押圧終了時点で筒軸部材50bの軸心x1と一致するものに限らず、開始時点でもよく、押圧領域のどの位置でもよい。また、多少押圧終了時点を過ぎた位置でもよい。要は筒軸部材50bの軸心x1からあまり離れない近くの位置であればよい。
【0034】
[発明の実施の第3別形態]
ベアリング54を用いて接当面部分54fを設ける箇所は、偏芯カム軸を利用した押圧構造で構成されるものに限らず、例えばメカ式のシフターと、相手ギヤに対して係脱される変速ギヤとの接当箇所のように、シフト操作部材52側の接当面部分54fとクラッチ操作体51側の被接当面50fとの相対移動方向が異なる箇所であればよい。
【0035】
[発明の実施の第4別形態]
本発明は、走行機体1の後部にロータリ耕耘装置(作業装置に相当)を昇降駆動自在に連結可能に構成された農用トラクタや、機体の前部に刈取部(作業装置に相当)を昇降駆動自在に支持したコンバイン等の作業車にも適用できる。
【0036】
[発明の実施の第5別形態]
前記支持部35の下端側で、前輪支持部36の上端側の嵌合箇所に設けるスクレーパ部35Aとしては、前述した図4に示すような構造に限らず、図13に示すように、支持部35の軸心に対して下端部の全体が斜めに交差する形状に構成されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体側面図
【図3】乗用型田植機の全体側面図の連係動作構造を示す平面図
【図4】前輪支持部付近の縦断正面図
【図5】後車軸ケースの内部構造を示す断面図
【図6】後車軸ケースの内の一部を示す拡大断面図
【図7】クラッチ操作装置を示し、(イ)は側面図、(ロ)は(イ)におけるa−a線矢視図
【図8】クラッチ操作装置を示し、(イ)は側面図、(ロ)は(イ)におけるa−a線矢視図
【図9】変速操作系を示す概略説明図
【図10】操縦バネル部分を示す平面図
【図11】操縦部の一部を示す概略説明図
【図12】乗用型田植機の苗植付装置の昇降制御に関する説明図
【図13】別実施形態の前輪支持部付近の縦断正面図
【符号の説明】
【0038】
5 クラッチ操作装置
40 後車軸ケース
50 サイドクラッチ
50a クラッチケース
50b 筒軸部材
50f 被接当面
51 クラッチ操作体
52 シフト操作部材
53 支軸
54 ベアリング
54f 接当面部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチ操作体を一直線に沿う往復方向での操作で入り切り操作するように構成したクラッチ操作装置であって、
前記クラッチ操作体に接当してクラッチ操作体を入り切り方向へ操作するシフト操作部材を備え、
このシフト操作部材を、前記クラッチ操作体の押し引き移動方向への移動成分を有した、前記クラッチ操作体の移動方向とは異なる方向の運動でクラッチ操作体を操作するように構成するとともに、
このシフト操作部材の前記クラッチ操作体に対する接当面部分を、前記クラッチ操作体と前記シフト操作部材との移動方向のずれに基づく接触位置の変化に伴って回転するベアリングで構成してあることを特徴とするクラッチ操作装置。
【請求項2】
クラッチ操作体が筒軸状に形成され、その筒軸状部分の一端側にシフト操作部材の接当面部分が押し当てられる被接当面を備えているとともに、
そのクラッチ操作体の筒軸状部分の軸心を含む仮想平面に、もしくはその近くに、前記シフト操作部材の操作領域内で前記被接当面に接触する接当面部分を構成するベアリングの回動中心が位置するように、
前記クラッチ操作体の筒軸状部分の軸心位置と、シフト操作部材の回動中心位置と、シフト操作部材の操作領域との相対位置を定めて構成してある請求項1記載のクラッチ操作装置。
【請求項3】
シフト操作部材を、ベアリングが装着される公転支持軸部分と、その公転支持軸部分を、公転支持軸部分の軸心とは異なる軸芯周りで回動可能に支持する自転支持軸部分とを備えた偏芯カム軸によって構成した請求項1または2記載のクラッチ操作装置。
【請求項1】
クラッチ操作体を一直線に沿う往復方向での操作で入り切り操作するように構成したクラッチ操作装置であって、
前記クラッチ操作体に接当してクラッチ操作体を入り切り方向へ操作するシフト操作部材を備え、
このシフト操作部材を、前記クラッチ操作体の押し引き移動方向への移動成分を有した、前記クラッチ操作体の移動方向とは異なる方向の運動でクラッチ操作体を操作するように構成するとともに、
このシフト操作部材の前記クラッチ操作体に対する接当面部分を、前記クラッチ操作体と前記シフト操作部材との移動方向のずれに基づく接触位置の変化に伴って回転するベアリングで構成してあることを特徴とするクラッチ操作装置。
【請求項2】
クラッチ操作体が筒軸状に形成され、その筒軸状部分の一端側にシフト操作部材の接当面部分が押し当てられる被接当面を備えているとともに、
そのクラッチ操作体の筒軸状部分の軸心を含む仮想平面に、もしくはその近くに、前記シフト操作部材の操作領域内で前記被接当面に接触する接当面部分を構成するベアリングの回動中心が位置するように、
前記クラッチ操作体の筒軸状部分の軸心位置と、シフト操作部材の回動中心位置と、シフト操作部材の操作領域との相対位置を定めて構成してある請求項1記載のクラッチ操作装置。
【請求項3】
シフト操作部材を、ベアリングが装着される公転支持軸部分と、その公転支持軸部分を、公転支持軸部分の軸心とは異なる軸芯周りで回動可能に支持する自転支持軸部分とを備えた偏芯カム軸によって構成した請求項1または2記載のクラッチ操作装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−281033(P2008−281033A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123546(P2007−123546)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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