説明

クラッチ装置

【課題】モータ装置の回転軸に生じるラジアル荷重や曲げモーメントを低減することが可能なクラッチ装置を提供する。
【解決手段】クラッチ装置100は、モータユニット50により移動駆動されるテンション付与部60を介して前処理駆動ベルト73にテンションを付与することで、前処理駆動プーリ71及び前処理入力プーリ72の動力伝達を接続させる。このモータユニット50を支持するブラケット55に長穴部55bを貫通形成し、モータユニット50の回転軸50aに連結された回動アーム53と第1スプリングアーム65とを該長穴部55bを介して連結することで、回動アーム53をブラケット55のモータユニット50側に近接させて並設する。第1スプリングアーム65から力が加わっても回動アーム53がブラケット55に当接支持されるので、回転軸50aに生じるラジアル荷重や曲げモーメントが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば移動農機にあって作業系装置への動力供給を接・断し得るクラッチ装置に係り、詳しくは駆動プーリ及び従動プーリに巻回されたベルトにテンションを付与して両プーリとベルトとを係合させることで上記動力供給の接・断を行うクラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばコンバイン等の移動農機においては、エンジンの駆動力を走行装置だけに動力供給するだけでなく、各作業系装置、即ち刈取装置、搬送装置、脱穀装置等にも動力供給し得るように構成されていると共に、これら各作業系装置を駆動・非駆動に切換えるため、エンジンと各作業系装置との間にクラッチ装置が介在されている。
【0003】
一般に、このようなクラッチ装置としては、エンジン側の駆動プーリ及び作業系装置側の従動プーリに巻回されたベルトに、テンションを付与することで両プーリとベルトとを係合させ、両プーリ間(エンジンと作業系装置との間)の動力伝達を接続させるものが用いられている(特許文献1参照)。該クラッチ装置には、例えば運転操作に基づき駆動されるモータが備えられており、該モータが、ブラケットに位置決め支持されたセクタギヤ等を駆動することによりワイヤの引き込み/繰り出しが行われ、該ワイヤにより駆動されるテンションアームが上記ベルトのテンションを変更することで、クラッチのオン・オフがなされる。
【0004】
【特許文献1】特許第4047786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したモータにより駆動されるセクタギヤ等のギヤ機構は、特に各ギヤをブラケットに回転自在に支持させるボルトやベアリング等の多くの部品が必要となってコストダウンの妨げとなるだけでなく、そのギヤ機構の配設空間が省スペース化の妨げとなっていた。しかしながら、ギヤ機構を廃止して上記ワイヤ等のテンションアームを駆動する部材を直接モータの回転軸に取付けると、ベルトから加わる力がラジアル荷重ないし曲げモーメントとして直接モータの回転軸に伝わってしまい、モータの耐久性として好ましくないという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、テンション付与部から加わる力に起因する、モータ装置の回転軸に生じるラジアル荷重や曲げモーメントを低減し、もってモータの耐久性向上を図りつつ、モータ装置とテンション付与部との間にギヤ機構を設けることも不要とし、コストダウン、省スペース化を可能にするクラッチ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図5参照)、駆動プーリ(71)及び従動プーリ(72)に巻回されたベルト(73)に、モータ装置(50)により移動駆動されるテンション付与部(60)を介してテンションを付与することで、前記駆動プーリ(71)と前記従動プーリ(72)との間の動力伝達を接続させるクラッチ装置(100)において、
固定部材(91,92,93,94)に固定されると共に前記モータ装置(50)を支持する支持部材(55)と、
前記モータ装置(50)の回転軸(50a)と前記テンション付与部(60)とを駆動連結する回動アーム(53)と、を備え、
前記支持部材(55)は、前記モータ装置(50)の回転軸(50a)の回転方向(ω1−ω2)に沿って貫通形成された長穴部(55b)を有し、
前記回動アーム(53)と前記テンション付与部(60)とを前記支持部材(55)の長穴部(55b)を介して連結すると共に、該回動アーム(53)を前記支持部材(55)の前記モータ装置(50)側の側面に近接させて並設した、
ことを特徴とするクラッチ装置(100)にある。
【0008】
請求項2に係る本発明は(例えば図4参照)、前記回動アーム(53)は、前記モータ装置(50)の回転軸(50a)の外周側に回転不能に被嵌し、かつ前記支持部材(55)に形成された穴部(55a)に回転自在に嵌合するボス部(53a)を有してなり、
前記回動アーム(53)は、前記ボス部(53a)を介して前記モータ装置(50)の回転軸(50a)と前記支持部材(55)の穴部(55a)とに支持された、
ことを特徴とする請求項1記載のクラッチ装置(100)にある。
【0009】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によると、モータ装置の回転軸に連結された回動アームとテンション付与部とを支持部材の長穴部を介して駆動連結すると共に、該回動アームを支持部材のモータ装置側の側面に近接させて並設したので、ベルトからテンション付与部を介して回動アームに力が加わっても、回動アームを並設された支持部材に当接支持させることができ、テンション付与部から加わる力を支持部材に受圧させることができて、モータ装置の回転軸に生じるラジアル荷重や曲げモーメントを低減することができる。これにより、モータの耐久性向上を図りつつ、セクタギヤ等のギヤ機構を用いることも不要とすることができ、コストダウン、省スペース化を可能にすることができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、回動アームは、ボス部を介してモータ装置の回転軸と支持部材の穴部とに支持されているので、つまり回動アームを、モータ装置の回転軸と支持部材の穴部とに両持ち支持させることができる。これにより、例えば回動アームがモータ装置の回転軸に片持ち支持されている場合に比して、回動アームを強固に支持することができ、モータ装置の回転軸に生じるラジアル荷重や曲げモーメントを更に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態を図1乃至図5に沿って説明する。図1に示すように、コンバイン1は、クローラ走行装置3に支持された走行機体2を有しており、該走行機体2の前方にはデバイダ6及び穀稈を引起す複数の引起し装置7を備えた前処理部5が設けられている。該前処理部5は、上述した穀稈を分草するデバイダ6及び2つの引起し装置7と、デバイダ6の後方に配設された刈取り部(不図示)と、該刈取り部によって刈取られた穀稈を搬送する搬送部(不図示)とから構成されている。
【0013】
上記前処理部5によって刈取られた穀稈は、該搬送部により搬送され、その後方に配設された脱穀部9によって脱穀されると共に、走行機体2の最後部に配置された後処理部10によって排藁の処理が行われる。また、前処理部5の側方には運転操作部11及びエンジンカバー12aに収納されたエンジン12が配設されており、該運転操作部11の後方かつ脱穀部9の側方には、脱穀された穀粒を一時的に貯留するグレンタンク13が設けられている。該グレンタンク13に貯留された穀粒は、排出オーガ15によって機体外へと排出されるように構成されている。
【0014】
上記運転操作部11は、図2に示すように、エンジンカバー12aの上部によって左方側が仕切られた運転シート20を有しており、その前方側にはメインパネル26が配置され、その左方側にはサイドパネル29が配置されている。メインパネル26には、図示を省略した計器類が配置されていると共に、走行操作や前処理部5の移動操作を行うマルチステアリングレバー25が配置されている。また、メインパネル26の下方側には、ブレーキペダル24等のペダル類が配置されている。
【0015】
また、サイドパネル29には、図示を省略したHSTにより変速を行う主変速レバー21と、同じく図示を省略した副変速機により変速を行う副変速レバー22と、エンジン12の出力を変更するエンジンコントロールレバー23とが配置されており、これらレバーの後方側には、各種の自動作業をオン・オフする3つの自動スイッチ28a,28b,28c(以下、単に「スイッチ28」という)と、脱穀部9に対する動力伝達を接・断する脱穀クラッチレバー27とが配置されている。
【0016】
このサイドパネル29のさらに左方側には、図2及び図3に示すように、エンジン12の駆動力を各作業系装置(前処理部5、搬送部、脱穀部9、後処理部10等)に伝達する伝動装置を内包する伝動ケース30が配置されており、その前方かつ下方側には、前処理部5に対する伝動系路(伝動軸やギヤ)を内包する前処理入力ケース40が配置されている。
【0017】
また一方、上記サイドパネル29の下方側には、座金92を介して走行機体2本体に固定されたレバーフレーム93が配置されており、該レバーフレーム93の上方にあって、上記サイドパネル29の僅かに下方側には、該レバーフレーム93に固定支持されて、つまり走行機体2本体に固定された台座フレーム91が配置されている。そして、上記伝動ケース30及び前処理入力ケース40と、上記運転操作部11との間には、本発明の要部となるクラッチ装置100が上記台座フレーム91に固定支持される形で配置されている。また、該クラッチ装置100及び伝動ケース30の一部は、その上方側が、上記サイドパネル29の左方側に配置された図中二点鎖線で示すサイドカバー90によって覆われている。
【0018】
なお、上記前処理部5は、走行機体2に対して左右方向に移動可能に構成されており、つまり刈取位置の左右方向に対する微調整が可能となっている。上記前処理入力ケース40の内部を通過する前処理部5の伝動経路には、不図示のユニバーサルジョイント等が介在されており、該前処理部5の移動位置に拘らず動力伝達は確保される。
【0019】
ついで、本発明の要部となるクラッチ装置100の構成について主に図4を用いて説明する。図4に示すように、本発明に係るクラッチ装置100は、いわゆるベルトテンションクラッチからなり、大まかに、モータユニット(モータ装置)50と、回動アーム53と、ブラケット(支持部材)55と、テンション付与部60と、ベルトクラッチ部(以下、単に「クラッチ部」という)70とを備えて構成されている。
【0020】
上記モータユニット50は、モータ(モータ本体)51と、該モータ51に取付けられたギヤ機構52とを有しており、モータ51の駆動回転は例えばウォームギヤ等からなるギヤ機構52を介してモータユニット50としての出力軸である回転軸50aから出力される。該回転軸50aは、外周形状が四角柱状となるように四面取りされており、後述の回動アーム53のボス部53aに相対回転不能に嵌合し得るように構成されている。
【0021】
上記ブラケット55は、全体視平板形状に形成されており、ボルトB1,B2,B3により、貫通形成された3箇所の貫通孔55cを介して上述の台座フレーム91に固着されている3本の取付レバー94(図3参照)に締結されて固定され、つまり走行機体2に対して、取付レバー94、台座フレーム91、レバーフレーム93、座金92(固定部材)を介して固定されている。また、ブラケット55には、貫通形成された3箇所の貫通孔55dを有しており、それら貫通孔55dを介してボルトb1,b2,b3により、上記モータユニット50が取付けられて固定される。
【0022】
また、ブラケット55は、上記モータユニット50の回転軸50aと同心となるように貫通形成された穴部55aが形成されており、該穴部55aには後述の回動アーム53のボス部53aが嵌合される。そして、該穴部55aを中心とした周方向、即ちモータユニット50の回転軸50aの回転方向に沿った方向である矢印ω1−ω2方向に沿って長穴部55bが貫通形成されている。なお、該長穴部55bの下方側には、後述する第2スプリングアーム67の端部を張着するためのフック55fが形成されている。
【0023】
上記回動アーム53は、全体視略矩形板状のレバー形状からなり、その一端側には中空形状に形成されたボス部53aを有しており、平板状部分には、凸状に形成されると共にその中心が貫通形成された連結部53bと、貫通形成された貫通孔53cとを有している。該ボス部53aは、上記モータユニット50の回転軸50aの外周側に被嵌して相対回転不能に取付けられると共に、上記ブラケット55の穴部55aに回転自在に嵌合するように構成されており、つまり回動アーム53は、モータユニット50の回転軸50aとブラケット55の穴部55aとにより両持ち支持されている。また、該連結部53bは、凸状に形成された突出部分が上記ブラケット55の長穴部55bに入り込むように形成されており、回動アーム53は全体として、ブラケット55のモータユニット側の側面に近接して並設されるように構成されている。
【0024】
なお、上記ブラケット55及び回動アーム53には、該回動アーム53が矢印ω1側に回動された状態で互いに貫通方向が一致する貫通孔55e,53cがそれぞれ形成されており、これら貫通孔55e,53cに不図示の固定ピン等を挿入することで、回動アーム53を矢印ω1側の位置に固定し得るように構成されている。
【0025】
一方、上記クラッチ部70は、上記伝動ケース30(図2及び図3参照)から延設された伝動軸(不図示)上に設けられた前処理駆動プーリ(駆動プーリ)71と、上記前処理入力ケース40(図2及び図3参照)に収納された伝動軸72A上に設けられた前処理入力プーリ(従動プーリ)72と、これら両プーリ71,72に巻回された前処理駆動ベルト(以下、単に「ベルト」という)73とを備えて構成されている。即ち、前処理駆動プーリ71は、上記伝動ケース30内に収納された伝動装置を介してエンジン12に接続されており、一方の前処理入力プーリ72は、上記前処理入力ケース40内に収納された伝動装置を介して前処理部5の各装置(図示を省略した、こぎ深さ搬送装置、株元搬送装置、掻き込み搬送装置、刈刃、引起し装置等)に接続されている。
【0026】
上記テンション付与部60は、大まかに、テンションアーム63と、第1スプリングアーム65、第2スプリングアーム67、テンションプーリ64を備えて構成されている。テンションアーム63は、上記前処理駆動プーリ71の伝動軸に回転自在に被嵌するリム部63Aと、該リム部63Aから一方側に延設された第1アーム63Bと、他方側に延設された第2アーム63Cとを有しており、全体視略くの字状に構成されている。該第1アーム63Bには、貫通孔63aが穿設されており、該貫通孔63aに第1スプリングアーム65の端部が張着されている。
【0027】
該第1スプリングアーム65は、コイルスプリング65aと継ぎ手65bとからなり、該継ぎ手65bの先端部分には、連結具66が固着されている。即ち、連結具66は、継ぎ手65bの先端部分にナットn1,n2によって位置調整可能に固定されるL字鋼68と、該L字鋼68に固着された連結ピン69とからなり、該連結ピン69は、上記回動アーム53の連結部53bに貫通されて、その反対側にてCリング54によってカシメられている。これにより、テンションアーム63の第1スプリングアーム65と回動アーム53とは、ブラケット55の長穴部55bを介して互いに駆動連結される。従って、回動レバー53の連結部53b付近と該L字鋼68とがブラケット55を両側面から挟むと共に、所定の隙間を存して対峙した構造となる。
【0028】
一方、テンションアーム63の第2アーム63Cには、2箇所の貫通孔63b,63cが穿設されており、該貫通孔63bには、それ自体がコイルスプリングからなる第2スプリングアーム67の端部が張着されている。なお、第2スプリングアーム67の他端は、上述したようにフック55fに張着されている。そして、一方の貫通孔63cには、支持軸64Aが嵌着されており、該支持軸64Aには、テンションプーリ64が回転自在に支持されている。
【0029】
以上のように構成されたクラッチ装置100は、不図示の制御部(マイコン)において該クラッチ装置100のオフが判断されると、図5(a)に示すように、例えばモータユニット50により回転軸50aが矢印ω2方向に回転駆動される。すると、回動アーム53を介して第1スプリングアーム65の連結具66側の端部が図中右下側に移動駆動され、第2スプリングアーム67の付勢力によって、テンションアーム63が矢印ω4方向に回動駆動され、テンションプーリ64がベルト73から離間する。それにより、ベルト73のテンションが緩み、ベルト73と前処理駆動プーリ71との間、ベルト73と前処理入力プーリ72との間が滑り、つまり前処理駆動プーリ71と前処理入力プーリ72との間の動力伝達が切断され、クラッチ装置100がオフ状態となる。
【0030】
また、例えば上記脱穀クラッチレバー27がオン位置に操作され、かつ上記主変速レバー21が前進位置に操作されると、つまり前進しながら脱穀部9が駆動されているので作業者の意図が刈取の実行であるとされる。そのため、不図示の制御部(マイコン)において、それら脱穀クラッチレバー27及び主変速レバー21の操作位置に基づき、該クラッチ装置100のオンが判断され、図5(b)に示すように、モータユニット50が駆動されて回転軸50aが矢印ω1方向に回転駆動される。すると、回動アーム53を介して第1スプリングアーム65の連結具66側の端部が図中左上側に移動駆動され、第2スプリングアーム67の付勢力に抗して、第1スプリングアーム65がテンションアーム63を矢印ω4方向に回動駆動し、テンションプーリ64がベルト73に押付けられる。それにより、ベルト73にテンションが付与され、ベルト73と前処理駆動プーリ71との間、ベルト73と前処理入力プーリ72との間がそのテンションに基づき係合され、つまり前処理駆動プーリ71と前処理入力プーリ72との間の動力伝達が接続され、クラッチ装置100がオン状態となる。
【0031】
ところで、上述のようにオン・オフされるクラッチ装置100にあっては、例えばエンジン12の駆動力の脈動等に起因して、ベルト73、テンションプーリ64、テンションアーム63を介して、第1スプリングアーム65の連結具66側の端部に、ブラケット55に接離する方向の力が伝達されることがある。
【0032】
しかしながら、本クラッチ装置100においては、モータユニット50の回転軸50aに連結された回動アーム53とテンション付与部60とをブラケット55の長穴部55bを介して駆動連結すると共に、該回動アーム53をブラケット55のモータユニット50側の側面に近接させて並設したので、ベルト73からテンション付与部60を介して回動アーム53に力が加わっても、回動アーム53を並設されたブラケット55に当接支持させることができ、テンション付与部60から加わる力をブラケット55に受圧させることができて、モータユニット50の回転軸50aに生じるラジアル荷重や曲げモーメントを低減することができる。これにより、モータ51の耐久性向上を図りつつ、セクタギヤ等のギヤ機構を用いることも不要とすることができ、コストダウン、省スペース化を可能にすることができる。
【0033】
また、回動アーム53は、ボス部53aを介してモータユニット50の回転軸50aとブラケット55の穴部55aとに支持されているので、つまり回動アーム53を、モータユニット50の回転軸50aとブラケット55の穴部55aとに両持ち支持させることができる。これにより、例えば回動アーム53がモータユニット50の回転軸50aに片持ち支持されている場合に比して、回動アーム53を強固に支持することができ、モータユニット50の回転軸50aに生じるラジアル荷重や曲げモーメントを更に低減することができる。
【0034】
また、ブラケット55及び回動アーム53には、図4に示すように、回動アーム53が矢印ω1側に回動された、即ちクラッチ装置100のオン状態の位置(図5(b)参照)で、互いに貫通方向が一致する貫通孔55e,53cがそれぞれ形成されているので、これら貫通孔55e,53cに不図示の固定ピン等を挿入することで、回動アーム53を矢印ω1側の位置に固定することができ、つまりモータユニット50が故障したとしても、クラッチ装置100をオン状態に固定することができ、刈取作業の継続を保証することができる。
【0035】
また、従来のコンバインにあっては、クラッチ装置におけるモータ装置(本コンバイン1のモータユニット50に相当)がサイドパネル(本コンバイン1のサイドパネル29に相当)の下方に配置されていた(図2参照)。そのため、エンジンからの熱風による駆動不良が生じ易く、また、各種スイッチやレバー等が配置されたサイドパネルの取外しが容易ではないため、整備作業が複雑となり、さらに、テンション付与部との距離も長かったため、ワイヤ等を用いて接続する必要もあった(特許文献1参照)。
【0036】
本コンバイン1にあっては、モータユニット50をサイドパネル29よりも左方側に配置し、容易に取外し可能なサイドカバー90の下方側に配置したので、エンジン12の熱風の影響を少なくすることができ、かつ整備性も良好となった。さらに、テンション付与部60との距離も近いため、ワイヤ等を廃止して、直接的に第1スプリングアーム65を駆動することが可能となり、部品点数の削減や製造工程の簡易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を適用し得るコンバインを示す斜視図。
【図2】コンバインの運転席付近を示す上方視図。
【図3】前処理部の動力伝達部を示す斜視図。
【図4】本発明に係るクラッチ装置を示す分解斜視図
【図5】本クラッチ装置の作動状態を示す図で、(a)はクラッチのオフ状態を示す側面図、(b)はクラッチのオン状態を示す側面図。
【符号の説明】
【0038】
50 モータ装置(モータユニット)
50a 回転軸
53 回動アーム
53a ボス部
55 支持部材(ブラケット)
55a 穴部
55b 長穴部
60 テンション付与部
71 駆動プーリ(前処理駆動プーリ)
72 従動プーリ(前処理入力プーリ)
73 ベルト(前処理駆動ベルト)
91 固定部材(台座フレーム)
92 固定部材(座金)
93 固定部材(レバーフレーム)
94 固定部材(取付バー)
100 クラッチ装置
ω1−ω2 回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動プーリ及び従動プーリに巻回されたベルトに、モータ装置により移動駆動されるテンション付与部を介してテンションを付与することで、前記駆動プーリと前記従動プーリとの間の動力伝達を接続させるクラッチ装置において、
固定部材に固定されると共に前記モータ装置を支持する支持部材と、
前記モータ装置の回転軸と前記テンション付与部とを駆動連結する回動アームと、を備え、
前記支持部材は、前記モータ装置の回転軸の回転方向に沿って貫通形成された長穴部を有し、
前記回動アームと前記テンション付与部とを前記支持部材の長穴部を介して連結すると共に、該回動アームを前記支持部材の前記モータ装置側の側面に近接させて並設した、
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項2】
前記回動アームは、前記モータ装置の回転軸の外周側に回転不能に被嵌し、かつ前記支持部材に形成された穴部に回転自在に嵌合するボス部を有してなり、
前記回動アームは、前記ボス部を介して前記モータ装置の回転軸と前記支持部材の穴部とに支持された、
ことを特徴とする請求項1記載のクラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−127331(P2010−127331A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300549(P2008−300549)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】