説明

クラッチ駆動機構の制御装置

【課題】検出角度範囲の大きな高価な角度センサを用いることなく、カム部材の回転を検出する角度範囲を広く且つ精度良く検出可能な制御装置を得る。
【解決手段】カム面と当接して往復直線移動を行う作動部材35によりクラッチを接離させるクラッチ駆動機構と、カム部材25の回転角度を検出する角度センサ21を有するクラッチ駆動機構の制御装置において、前記カム面は、カム部材25の一方向の回転により作動部材35の直線移動を介して前記クラッチを接続させる第1カム面25d,25aと、第1カム面25aに連続し作動部材35の直線移動を介して前記クラッチを離断させる第2カム面25b,25cを備え、角度センサ21は、前記第1カム面の角度範囲が検出可能な状態に設置された角度センサ21aと、前記第2カム面の角度範囲が検出可能な状態に設置された角度センサ21bとで構成され、各角度センサの不感帯Eが重合しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ駆動を行うカム機構の制御装置に関し、特に、カム機構のカム位置を角度センサで検出するに際して、簡単且つ安価な構成で精度良い検出を可能とするクラッチ駆動機構の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカム機構としては、例えば特許文献1に記載されるように、モータの回動がカムを介して制御軸の往復直線運動に変換され、制御軸の軸方向位置により吸気弁または排気弁のリフトを調整する機構が存在する。この機構は、角度センサからの検出範囲に合わせてカムを回転させる回転部材のギア比を調整することで、カムの作動領域が所定範囲(90度)に特定されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3962989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したカム機構は、燃焼室を開閉するバルブを駆動する構造であるため、カム部材は一方向にしか回転しないことが前提となる。
【0005】
一方、カム部材によりクラッチの接離を制御するような機構では、アクチュエータの回転を正逆転させることでクラッチの接離をすることが一般的であり、その場合にはカム部材の回転角度は小さい範囲で足りることになる。しかしながら、クラッチの接続と離脱においては、接続におけるショックを緩和したいという要望から、接続と離脱でカムのフェース形状を変化させたいという要望がある。
【0006】
特に、クラッチ接続におけるショックを緩和するようなフェース面(カム面)を形成し易くするためには、カム部材の回転は正逆回転(同じフェース面の正逆回転)ではなく一方向に回転させることが好ましい。その結果、カム部材の回転を検出する角度範囲が大きくなり、角度センサの不感帯の制限を受けることとなる。この現象を回避するには、検出角度範囲の大きな高価な角度センサを用いることが必要になる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて提案されたもので、コストの増加を招くような検出角度範囲の大きな高価な角度センサを用いることなく、簡単な構成でカム部材の回転を検出するとともに、角度範囲を広く且つ精度良く検出可能なクラッチ駆動機構の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1は、アクチュエータの回転に同期して回転するカム部材(25)と、該カム部材(25)の回転方向に形成されたカム面と、該カム面と当接して往復直線移動を行う作動部材(35)と、該作動部材(35)の往復直線移動によりクラッチを接離させるクラッチ駆動機構と、前記カム部材(25)の回転角度を検出するとともに検出可能な回転角度に対して不感帯を備える角度センサ(21)を具備するクラッチ駆動機構の制御装置において、次の構成を含むことを特徴としている。
【0009】
前記カム面は、前記カム部材(25)の一方向の回転により前記作動部材(35)の直線移動を介して前記クラッチを接続させる第1カム面(25d,25a)と、前記第1カム面(25a)に連続して形成され、前記カム部材(25)の回転により前記作動部材(35)の直線移動を介して前記クラッチを離断させる第2カム面(25b,25c)を備えている。
【0010】
前記角度センサ(21)は、前記第1カム面(25d,25a)の角度範囲が検出可能な状態に設置された第1の角度センサ(21a)と、前記第2カム面(25b,25c)の角度範囲が検出可能な状態に設置された第2の角度センサ(21b)とで構成され、前記第1の角度センサ(21a)の不感帯と前記第2の角度センサ(21b)の不感帯とが重合しないように設置する。
【0011】
請求項2は、請求項1のクラッチ駆動機構の制御装置において、前記第2カム面(25b,25c)は、前記カム部材(25)の前記一方向の回転により前記作動部材(35)の直線移動を介して前記クラッチを離断させることを特徴としている。
【0012】
請求項3は、請求項1または請求項2のクラッチ駆動機構の制御装置において、カム部材(25)の現在位置から前記2つの角度センサの内のどちらを使用して角度検出を行うかを決定する判定手段(52)を備えて成ることを特徴としている。
【0013】
請求項4は、請求項1または請求項2のクラッチ駆動機構の制御装置において、前記第1カム面(25d,25a)と前記第2カム面(25b,25c)とは、異なる形状のフェース面であることを特徴としている。
【0014】
請求項5は、請求項1または請求項2のクラッチ駆動機構の制御装置において、前記第1の角度センサ(21a)は、第2カム面(25b,25c)側に不感帯を設け、前記第2の角度センサ(21b)は、第1カム面(25d,25a)側に不感帯を設けることを特徴としている。
【0015】
請求項6は、請求項1または請求項2のクラッチ駆動機構の制御装置において、前記判定手段(52)は、前記カム部材(25)のリフト状態が最頂点か最下点かにより第1の角度センサ(21a)と第2の角度センサ(21b)の選択を切り換えることを特徴としている。
【0016】
請求項7は、請求項1のクラッチ駆動機構の制御装置において、前記判定手段(52)は、前記カム部材(25)のリフト状態が最頂点と最下点において、カム部材(25)の回転方向により第1の角度センサ(21a)と第2の角度センサ(21b)の選択を切り換えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の構成によれば、第1の角度センサ(21a)の不感帯と第2の角度センサ(21b)の不感帯とが重合しないように設置することで、不感帯を有する2個の角度センサを使用しつつ、検出精度の向上及びコスト軽減を図る角度検出装置とすることができる。
【0018】
請求項2の構成によれば、カム部材(25)の一方向の回転により作動部材(35)の直線移動を介してクラッチの接続及び離断を行うことができる。
【0019】
請求項3の構成によれば、判定手段(52)により、カム部材(25)の現在位置から2つの角度センサの内のどちらを使用して角度検出を行うかを確実に決定することができる。
【0020】
請求項4の構成によれば、第1カム面(25d,25a)と第2カム面(25b,25c)とを異なる形状のフェース面とすることで、それぞれクラッチを接続または離断させるのに適した形状とすることができる。
【0021】
請求項5の構成によれば、第1の角度センサ(21a)の不感帯を第2カム面(25b,25c)側に設け、第2の角度センサ(21b)の不感帯を第1カム面(25d,25a)側に設けることで、両者の不感帯が確実に重合しないように設置することができる。
【0022】
請求項6の構成によれば、カム部材(25)のリフト状態が最頂点か最下点かにより第1の角度センサ(21a)と第2の角度センサ(21b)の選択を切り換えることで、最適位置での確実な切り換えを行うことが可能となる。
【0023】
請求項7の構成によれば、カム部材(25)のリフト状態が最頂点か最下点かにおいて、カム部材(25)の回転方向により第1の角度センサ(21a)と第2の角度センサ(21b)の選択を切り換えることで、カム部材(25)が正逆回転する場合に迅速な切り換えを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のクラッチ駆動機構の制御装置が適用された電動クラッチの構成を示す全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るクラッチ駆動機構の制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図3】クラッチ駆動機構におけるカム部材の拡大図である。
【図4】カム部材の構成説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るクラッチ駆動機構の制御装置におけるセンサ切換処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】角度センサの出力特性を示すグラフである。
【図7】カムが連続回転した場合の角度センサのセンサ出力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のクラッチ駆動機構の制御装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るクラッチ駆動機構の制御装置を含む電動クラッチ30の全体構成図である。
【0026】
電動クラッチ30は、例えば、自動二輪車等のエンジンと変速機の間に配設されて回転駆動力を断接制御する機構である。電動モータ(アクチュエータ)1で駆動されるノーマリオープン式である電動クラッチ30は、クラッチをオープン(切断)方向に付勢する付勢部材として、互いにバネレートの異なるプッシュスプリング39およびリターンスプリング(戻しスプリング)43を備えるダブルスプリング式とされる。
【0027】
電動クラッチ30は、電動モータ1の回転駆動力によってカム部材25が設けられたカムシャフト23を任意の角度に回転駆動させることで、カム部材25に当接するプッシュロッド(作動部材)35を往復運動させてクラッチを断接駆動するように構成されている。
【0028】
電動モータ1は、出力軸5と一体に形成されたロータ4と、モータハウジング2の内周に固定されたステータ3とを有する。出力軸5を軸支する軸受7は、モータハウジング2の開口を塞ぐベース部分6に挿嵌されている。
【0029】
出力軸5の端部に形成されたギヤ8には、軸受10,11に軸支されると共に2枚の歯車が一体に形成された第1中間ギヤ9が噛合している。第1中間ギヤ9に伝達された回転駆動力は、軸受13,14に軸支される第2中間ギヤ12、軸受17,18に軸支される第3中間ギヤ16を介して、カムシャフト23にスプライン嵌合される入力ギヤ20に伝達される。なお、第2中間ギヤ12には、手動で第2中間ギヤ12を回転させるエマージェンシ工具(不図示)を取り付けるための工具取付軸15が設けられている。
【0030】
カムシャフト23の図示上端側には、該カムシャフト23の回転角度を検知するポテンショメータからなる回転角度センサ(角度センサ)21a,21bがそれぞれ配設されている。カムシャフト23は、角度センサ21aを貫通する構造とすることにより、角度センサ21a,21bがそれぞれカムシャフト23の回転角度を検知可能に構成されている。
【0031】
カムシャフト23は、入力ギヤ20に近接配置される軸受19と、カム25の両側に配設される軸受24,26によって回転自在に軸支されている。本実施形態では、カムシャフト23の略中間部分にオイルシール22が配設されており、例えば、電動クラッチ30およびカム部材25までの機構をエンジンのクランクケースに収納し、一方、電動モータ1からカムシャフト23の中間部までの機構をクランクケースの外部に配設する等のレイアウトが可能である。
【0032】
電動クラッチ30は、変速機(不図示)の入力軸としてのメインシャフト48の一端部に取り付けられている。メインシャフト48に回転自在に軸支されると共に、クランクシャフト(不図示)から回転駆動力が伝達されるプライマリドリブンギヤ45は、複数の円環状のダンパ46を介して、クラッチアウタ41に結合されている。プライマリドリブンギヤ45の図示左方向には、メインシャフト48の軸受47が配設されている。そして、電動クラッチ30が接続状態になると、クラッチアウタ41の回転駆動力がクラッチインナ44を介してメインシャフト48に伝達される。
【0033】
詳しくは、電動モータ1の回転駆動力によりプッシュロッド35が図示左方に押されると、軸受34を介して第1プッシュプレート36が押圧される。第1プッシュプレート36と第2プッシュプレート38との間には、複数のコイルバネばねからなるプッシュスプリング39が配設されており、第2プッシュプレート38とクラッチインナ44との間には、複数のコイルばねからなるリターンスプリング43が配設されている。この両スプリング39,43の付勢力に抗して第2プッシュプレート38が図示左方向に摺動することで、クラッチ接続動作が行われる。
【0034】
第2プッシュプレート38は、リターンスプリング43に所定のプリロードを与えるようにクラッチインナ44に係合されると共に、図示右方向への摺動範囲を規制するワッシャ32を介してナット33によってメインシャフト48に固定されている。また、第1プッシュプレート38は、サークリップ37によって図示右方向への摺動範囲が規制されている。第2プッシュプレート38が図示左方向に摺動すると、クラッチ板42は、第2プッシュプレート38に固定された円環状の押圧部材40によって図示左方向へ押圧され、これにより、電動クラッチ30が切断状態から接続状態に切り換わる。
【0035】
図2は、本発明の一実施形態に係るクラッチ駆動機構の制御装置の全体構成を示すブロック図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。
【0036】
制御部50は、角度センサ21a,21bからのセンサ出力を認識するセンサ出力認識部51と、2つの角度センサ21a,21bの内のどちらの角度センサを使用して角度検出を行うかを決定するセンサ出力判断部(判定手段)52と、選択された角度センサ21からのセンサ出力を出力するセンサ出力部53とを含む。
【0037】
センサ出力認識部51は、角度センサ21a,21bの各センサ出力をセンサ出力判断部52に入力する。センサ出力判断部(判定手段)52は、カムシャフト23に装着されたカム部材25のリフト状態(回転位置)により、2つの角度センサ21a,21bの内のどちらの角度センサを使用して角度検出を行うかを決定する。
【0038】
次に、カム部材25の詳細構造及びリフト状態(回転位置)について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0039】
図3は、カムシャフト23に装着されたカム部材25の拡大図である。また、図4は、カム部材25の構成説明図である。カム部材25は、電動モータ1で回転駆動されるカムシャフト23と一体に回転することで、往復動作可能に支持されたプッシュロッド(作動部材)35を図示上下方向に往復運動させる。図3は、カム部材25がプッシュロッド35を最大に押圧しているリフト状態(最頂点)を示している。
【0040】
カム部材25には、カム面25a〜25dからなる連続したフェース面が形成されている。本実施形態に係るカム部材25は、反時計回り方向にのみ回転するように電動モータ1で駆動される。これにより、プッシュロッド35に当接するカム面は、カム部材25の回転に伴って、カム面25d→25a→25b→25cの順に移行することとなる。
【0041】
また、本実施形態では、クラッチを接続方向に駆動するカム面25aを「接続領域A」、クラッチを切断方向に駆動するカム面25bを「切断領域B」、クラッチの切断状態を維持するカム面25cを「つなぎ領域C」、同様にクラッチの切断状態を維持するカム面25dを「待機領域D」と設定し、クラッチの「待機領域D」から「接続領域A」に至る第1カム面(25d,25a)と、「切断領域B」から「つなぎ領域C」に至る第2カム面(25b,25c)を形成している。
【0042】
切断領域Bは、カム面25bの盛り上がり(リフト量)が小さくなるように形成されており、カム面25aによってクラッチが接続されている状態から、わずかな角度だけ電動モータ1を駆動するのみで素早くクラッチを切断状態に切り替えることができるように構成されている。なお、カム面25c,25dは、単一の円弧で形成することができる。
【0043】
カムシャフト23に対して、第1の角度センサ21aは、カム部材25における第1カム面25d,25aの角度範囲が検出可能な状態に、第2の角度センサ21bは、カム部材25における第2カム面25b,25cの角度範囲が検出可能な状態にそれぞれ設置されている。各角度センサ21にはそれぞれ角度検出ができない不感帯E(図3)が設定されているが、第1の角度センサ21aについては、第2カム面25b,25c側に不感帯Eを設け、第2の角度センサ21bについては、第1カム面25d,25a側に不感帯Eを設けるように設置することで、第1の角度センサ21aの不感帯と第2の角度センサ21bの不感帯とが対角するように位置して重合しないように設定されている。
【0044】
そして、センサ出力判断部(判定手段)52は、カム部材25のリフト状態が最頂点(180度。図3に示すように、カム部材25がプッシュロッド35を最大に押圧している状態)か最下点(0度,360度)かにより第1の角度センサ21aと第2の角度センサ21bの選択を切り換える。
【0045】
続いて、センサ出力判断部(判定手段)52による第1の角度センサ21aと第2の角度センサ21bからのセンサ出力の選択切換について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
基準センサの選択処理を行うに際し、先ず現在のリフト状態を検出する(ステップ101)。リフト状態が最下点(0度)である場合、第1の角度センサ21aからセンサ出力を得るように切換を行う(ステップ102)。リフト状態が最下点(0度)以外である場合、現在のリフト状態の再度検出し(ステップ103)、リフト状態が最頂点(180度)である場合、第2の角度センサ21bからセンサ出力を得るように切換を行う(ステップ104)。現在のリフト状態の再度の検出が最頂点(180度)以外である場合は、センサ出力を切り換えることなく現状を保持する。以上の処理を繰り返して行うことで、第1の角度センサ21aと第2の角度センサ21bのセンサ出力の切り換えが行われる。
【0047】
すなわち、カム部材25の第1カム面25d,25aが作動部材35と当接する範囲においては、第1の角度センサ21aのセンサ出力により角度が検出可能に構成され、カム部材25の第2カム面25b,25cが作動部材35と当接する範囲においては、第2の角度センサ21bのセンサ出力により角度が検出可能に構成される。
【0048】
本実施形態では、接続領域Aおよび切断領域Bを併せて、これをクラッチの「作動面」と呼称する。また、つなぎ領域Cおよび待機領域Dを併せて、これをクラッチの「非作動面」と呼称する。
【0049】
また、カム部材25の回転角度が0度の位置から90度までの位置を待機領域Dとし、かつ90度〜180度の位置を接続領域Aとし、かつ180度〜270度までの位置を切断領域Bとし、さらに、270度から0度の位置をつなぎ領域Cとし、カム部材25の回転角度が90度の位置を挟んで±角度θの範囲が第2の角度センサ21bの不感帯Eとし、カム部材25の回転角度が270度の位置を挟んで±角度θの範囲が第1の角度センサ21aの不感帯Eとなっている。
【0050】
そして、本実施形態では、カム部材25が作動面から非作動面に移行する際に、非作動面の所定位置まで一定速度でカム部材25を回転駆動させて、次のクラッチ接続動作に備えるように設定されている。具体的には、カム部材25が作動面から非作動面に移行する際、すなわち、切断領域Bからつなぎ領域Cに移行する際に、カム部材25を一定速度で待機領域Eの所定位置まで回転駆動させるように構成されている。
【0051】
図6は、各角度センサ21a,21bの出力特性を示すグラフである。また、図7は、カム部材25が一方向に連続回転した場合の角度センサ21a,21bの切り換えにより得られるセンサ出力S1,S2を示すグラフである。
【0052】
各角度センサ21は、図6に示すように、360度の範囲内で回転角度に比例してセンサ出力(出力電圧)Sが増大するエンドレス回転式のポテンショメータである。具体的には、角度0度においてセンサ出力Sは0であり、回転角に比例して増大して、例えば角度360度で最大電圧の5Vが生じるように構成されている。そして、この角度センサ21は、0〜θ度、360度の手前のθ度において、回転角度を検出することができない不感帯E1,E2がそれぞれ設定され、実質的に検出可能なセンサ出力(センサ値使用範囲)はV1〜V2となっている。
【0053】
そして、カムシャフト23に対して、0〜180度の回転位置を角度センサ21aによりセンサ出力V3(第1の所定電圧=V1より大きい値)〜V4(第2の所定電圧=V2より小さい値)で、180〜360度の回転位置を角度センサ21bによるセンサ出力V3〜V4でそれぞれ検出可能とし、且つ、各角度センサ21a,21bの不感帯が重合しないように設置することで、カム部材25が一方向(図3における反時計回り方向)に連続回転した場合に角度センサ21a,21bを切り換えることで、図7に示すような右上がり直線となる電圧波形が連続して出力されることとなる。図7中、A,B,C,Dは、図4の接続領域、切断領域、つなぎ領域、待機領域に該当し、Eはセンサ出力を検出していない側の各角度センサ21の不感帯域E1,E2を示している。
【0054】
本実施形態では、角度センサ21a,21bを切り換えることで、0V〜5Vのセンサ出力のうち、高い精度が期待できるV3〜V4の値のみを有効センサ値として使用することができる。具体的には、カム部材25のリフト状態が0度から180度までの範囲については、第1の角度センサ21aによりV3(第1の所定電圧)からV4(第2の所定電圧)までのセンサ出力S1が得られ、180度から360度までの範囲については、第2の角度センサ21bによりV3(第1の所定電圧)からV4(第2の所定電圧)までのセンサ出力S2が得られる。以降、カム部材25のリフト状態が360度から540度(0度から180度)までの範囲については、第1の角度センサ21aによりV3(第1の所定電圧)からV4(第2の所定電圧)までのセンサ出力S1が得られ、540度から720度(180度から360度)までの範囲については、第2の角度センサ21bによりV3(第1の所定電圧)からV4(第2の所定電圧)までのセンサ出力S2が得られる。
【0055】
本実施形態では、カム部材25が一方向に連続回転した場合に各角度センサ21の切り換えを行うようにしたが、カム部材25が正逆方向に回転することでクラッチのON・OFF制御を行う機構に適用してもよい。上述の実施形態では、カム部材25のリフト状態が最頂点(180度)か最下点(0度、360度)かにより第1の角度センサ21aと第2の角度センサ21bの選択を切り換えるようにしたが、カム部材25の正転・逆転でクラッチのON・OFF制御を行う場合は、回転方向(カム部材25の回転方向)と現在位置(最頂点または最下点)から2つの角度センサ21の内のどちらを使用して角度検出を行うかを決定する。
【0056】
カム部材25の回転方向を考慮した切り換えを行うことで、カム部材25が正逆回転する場合において、迅速かつ確実な切り換えを行うことが可能となる。
【0057】
上記したように、本発明に係るクラッチ駆動機構の制御装置によれば、カム部材25の角度検出に際して2個の角度センサ21を使用し、第1の角度センサ21aの不感帯を第2カム面25b,25c側に設け、第2の角度センサ21bの不感帯を第1カム面25d,25a側に設けることで、第1の角度センサ21aの不感帯と第2の角度センサ21bの不感帯とが重合しないように設置することができ、0度から360度の全ての範囲において、精度の高い角度検出を行うことが可能となる。
【0058】
したがって、角度センサの単体についての不感帯が大きいものであっても、不感帯が重ならないように2個の角度センサを設置することで、0度から360度の全範囲について高精度に検出することができる。その結果、不感帯が比較的に大きい安価な角度センサを使用して、0度から360度の全範囲について高精度に検出可能なクラッチ駆動機構の制御装置を安価に提供することができる。
【0059】
なお、電動モータ、カム、角度センサの形状や構造、角度センサにおける不感帯の広さ、切断領域、つなぎ領域、不感帯、待機領域、接続領域の広さや配置等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…電動モータ(アクチュエータ)、 21a,21b…角度センサ、 23…カムシャフト、 25…カム部材、 25a,25d…第1カム面、 25b,25c…第2カム面、 35…プッシュロッド(作動部材)、 50…制御部、 51…センサ出力認識部、 52…センサ出力判断部(判定手段)、 53…センサ出力部、 A…接続領域、 B…切断領域、 C…つなぎ領域、 D…待機領域、 E(E1,E2)…不感帯、 A,B…作動面、 C,D…非作動面、 S1,S2…センサ出力(出力電圧)、 V3…第1の所定電圧、 V4…第2の所定電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの回転に同期して回転するカム部材(25)と、該カム部材(25)の回転方向に形成されたカム面と、該カム面と当接して往復直線移動を行う作動部材(35)と、該作動部材(35)の往復直線移動によりクラッチを接離させるクラッチ駆動機構と、前記カム部材(25)の回転角度を検出するとともに検出可能な回転角度に対して不感帯を備える角度センサ(21)を具備するクラッチ駆動機構の制御装置において、
前記カム面は、
前記カム部材(25)の一方向の回転により前記作動部材(35)の直線移動を介して前記クラッチを接続させる第1カム面(25d,25a)と、
前記第1カム面(25a)に連続して形成され、前記カム部材(25)の回転により前記作動部材(35)の直線移動を介して前記クラッチを離断させる第2カム面(25b,25c)を備え、
前記角度センサ(21)は、
前記第1カム面(25d,25a)の角度範囲が検出可能な状態に設置された第1の角度センサ(21a)と、
前記第2カム面(25b,25c)の角度範囲が検出可能な状態に設置された第2の角度センサ(21b)とで構成され、
前記第1の角度センサ(21a)の不感帯と前記第2の角度センサ(21b)の不感帯とが重合しないように設置する
ことを特徴としたクラッチ駆動機構の制御装置。
【請求項2】
前記第2カム面(25b,25c)は、前記カム部材(25)の前記一方向の回転により前記作動部材(35)の直線移動を介して前記クラッチを離断させる請求項1に記載のクラッチ駆動機構の制御装置。
【請求項3】
カム部材(25)の現在位置から前記2つの角度センサの内のどちらを使用して角度検出を行うかを決定する判定手段(52)を備えて成る請求項1または請求項2に記載のクラッチ駆動機構の制御装置。
【請求項4】
前記第1カム面(25d,25a)と前記第2カム面(25b,25c)とは、異なる形状のフェース面である請求項1または請求項2に記載のクラッチ駆動機構の制御装置。
【請求項5】
前記第1の角度センサ(21a)は、第2カム面(25b,25c)側に不感帯を設け、前記第2の角度センサ(21b)は、第1カム面(25d,25a)側に不感帯を設ける請求項1または請求項2に記載のクラッチ駆動機構の制御装置。
【請求項6】
前記判定手段(52)は、前記カム部材(25)のリフト状態が最頂点か最下点かにより第1の角度センサ(21a)と第2の角度センサ(21b)の選択を切り換える請求項1または請求項2に記載のクラッチ駆動機構の制御装置。
【請求項7】
前記判定手段(52)は、前記カム部材(25)のリフト状態が最頂点と最下点において、カム部材(25)の回転方向により第1の角度センサ(21a)と第2の角度センサ(21b)の選択を切り換える請求項1に記載のクラッチ駆動機構の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−177421(P2012−177421A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40399(P2011−40399)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】