説明

クラッドアルミニウム合金板の製造方法

【課題】互いのアルミニウム合金の接合強度(密着性)が高い、ブレージングシートなどのクラッドアルミニウム合金板を比較的安価に製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】双ロール1、2の各ロール表面にアルミニウム合金溶湯A、Bを各々別個に供給して、各ロール表面にて各合金溶湯A、Bの凝固を開始させるとともに、双ロールのキス点X近傍に至るまでに、高融点側合金溶湯の凝固殻B1形成を予め完了させて、前記キス点近傍Xにおいて、供給された高融点側合金溶湯Bが低融点側合金溶湯Aおよび凝固殻A1に接触しないようにするとともに、低融点側合金の溶湯温度を特定の温度として、低融点側合金溶湯Aおよび凝固殻A1とを、高融点側合金溶湯の凝固殻と接触させ、互いに融点の異なるアルミニウム合金同士を接合して一体化させ、A2、B2の2層のアルミニウム合金からなるクラッドアルミニウム合金板6を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造によって、熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートなど、互いに融点の異なるアルミニウム合金同士を接合して一体化させたクラッドアルミニウム合金板を製造する方法を提供するものである。本発明では、特許請求の範囲や、以下の説明において、高融点側のアルミニウム合金を高融点側合金、低融点側のアルミニウム合金を低融点側合金とも言う。
【背景技術】
【0002】
従来から周知の通り、特性が互いに異なる金属同士を積層して、複数の特性を兼備させたクラッド金属板は、同種や異種などの種々の金属同士で実施され、種々の用途において使用されている。また、まれには、同じ金属同士を積層してクラッド金属板とすることもある。
【0003】
クラッドアルミニウム合金板(アルミニウムのクラッド板)分野では、心材(芯材)に対してろう材、犠牲陽極材、中間材を各々選択的に積層した、2層あるいは3層の構造の熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートが代表的である。また、例えば、耐食性や表面光沢性に優れた1000系の純アルミニウム(以下、アルミニウム合金とも言う)と、各種のアルミニウム合金を積層した2層構造のクラッド板(合わせ板)も公知である。純アルミニウムとクラッドされるアルミニウム合金としては、成形性に優れた3000系や5000系アルミニウム合金、高強度の2000系や6000系、7000系などのアルミニウム合金がある。
【0004】
これらクラッドアルミニウム合金板の一般的な製造方法は、クラッドする各層のアルミニウム合金板を予め各々製造した後、これらのアルミニウム合金板を積層して、熱間圧延し、接合するものである。しかし、この方法では、各層のアルミニウム合金板を個別に予め鋳造した上で、これら鋳塊を積層して圧延し、製造する必要がある。その上、前記積層圧延の際に、各層の界面が剥離を起こさないように、圧下率を抑え、パス数を多く圧延する必要がある。
【0005】
このため、どのようなクラッドアルミニウム合金を選択するにせよ、クラッドアルミニウム合金板の製造には、非常に工程がかかり、コスト高となっていた。これは、それぞれ個別に製造された板材を、爆発力により密着させる、爆着法によるクラッドアルミニウム合金板の製造方法でも同様である。
【0006】
上記課題を解消する方法として、最近では、相対して互いに反対方向に回転する一対のロールによる双ロール式連続鋳造により、直接所定板厚のクラッドアルミニウム合金板(複層アルミニウム合金板)を製造する技術が知られている。
【0007】
この双ロールによるクラッドアルミニウム合金板の連続鋳造方法は、一方のロール表面に、一方のアルミニウム合金溶湯を供給してロール表面にて(外層)凝固シェルを形成させるとともに、他方のロール表面に、もう一方のアルミニウム合金溶湯を供給してロール表面にて(内層)凝固シェルを形成させる。そして、これら(内外層の)凝固シェル同士を、双ロールのキス点にて一体に複合化させてクラッドアルミニウム合金板などを製造するものである。
【0008】
例えば、特許文献1では、互いに密度差のある二種のアルミニウム合金を、双ロールに溶湯を供給するための一つの湯溜りに注入して、双ロール連鋳にて鋳造し、クラッドアルミニウム合金板を製造する方法が提案されている。しかし、このような一つの湯溜りに二種のアルミニウム合金を注入する方式では、密度差が小さいような材料同士のクラッドアルミニウム合金板は製造できない問題点がある。
【0009】
また、特許文献1では、湯溜り内で、二種のアルミニウム合金溶湯が互いに混合し易く、クラッド材の界面の数100μmの範囲での波打ったり、濃度勾配が付くなど一定にならない問題点があった。特許文献1では、この課題に対して、湯溜り内への二種のアルミニウム合金溶湯供給ノズルの深さ(高さ)を変えるとともに、湯溜り内に水平な隔離板を設けている。これによって、隔離板の下側に内部凝固アルミニウム合金を、隔離板の上側に内部凝固アルミニウム合金を分配して、二種のアルミニウム合金溶湯の混合を抑制しているが、しかし、現実には、二種のアルミニウム合金溶湯の混合を抑制できない。
【0010】
これに対して、アルミニウム合金のクラッド板の製造において、特許文献2では、心材を連続鋳造した後に、皮材を連続的に積層する方法も提案されている。しかし、この方式では、同じ組成の皮材を両面に積層させるため、2層のクラッド板や異種合金の皮材を合わせることが出来ないという問題がある。また、縦型にしても横型にしても、装置が大きくなる問題もある。
【0011】
また、特許文献3では、双ロールの双方から各々キス点に向けて供給する2枚の皮材薄板間に、溶融アルミニウム合金を供給して凝固させて心材とし、3層のクラッドアルミニウム合金板を製造する方法も提案されている。しかし、この方法でも、やはり、皮材となる薄板を予め製造しておく必要があるため、工程削減およびコスト低下に結びつかない。また、心材が高融点の場合、薄い皮材に心材溶湯が接触して皮材が最溶融し、界面の境界が安定しなかったり、最悪の場合皮材が溶けきってしまう恐れもある。
【特許文献1】特開平5−277661号公報
【特許文献2】特開平4−52052号公報
【特許文献3】特開2005−254329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
クラッドアルミニウム合金板を製造する場合、クラッドされるアルミニウム合金同士は、全く同じ組成で無い限り、程度問題はあるが、互いに必ず融点の差がある。この融点の差が小さければ、ロール表面との接触(冷却)にて凝固形成された、低融点(低温)側のアルミニウム合金の凝固殻は、温度差が小さい、高融点(高温)側のアルミニウム合金溶湯と接触しても、再溶融しない。このため、低融点側のアルミニウム合金凝固殻が高融点(高温)側のアルミニウム合金溶湯と溶融混合したりすることを防止乃至抑制できる。
【0013】
しかし、前記のように例示したクラッドアルミニウム合金板では、通常、クラッドされるアルミニウム合金同士の融点の差が比較的大きい。このため、ロール表面との接触(冷却)にて凝固形成された、低融点(低温)側のアルミニウム合金の凝固殻は、温度差が大きい、高融点(高温)側のアルミニウム合金溶湯と接触して再溶融しやすい。
【0014】
このため、低融点側合金凝固殻が高融点(高温)側合金溶湯と溶融混合することを防止乃至抑制できずに、互いのアルミニウム合金が混じり合う。このため、互いのアルミニウム合金の界面が不明瞭となったり、互いのアルミニウム合金の界面が数100μmの範囲で波打ったり、濃度勾配が付くなど、互いのアルミニウム合金の界面が一定(均一)とならずに、入り乱れることとなる。このように、互いのアルミニウム合金の界面が一定(均一)とならない場合、クラッドアルミニウム合金板に要求される機械的特性や成形性、耐食性などの諸特性を阻害し、クラッドアルミニウム合金板としての価値を失わせる。
【0015】
また、用途によっては、双ロール連続鋳造方法により製造したクラッドアルミニウム合金板は、更に、薄肉化するために圧延加工(冷間圧延)したり、あるいは製品形状に成形加工したりする必要性がある。しかし、この際に、互いのアルミニウム合金の界面が一定とならない場合、界面での接合強度の不足や不均一から、界面での剥離が生じ、圧延加工や成形加工ができない問題も生じる。
【0016】
このため、従来のクラッドする互いのアルミニウム合金同士を、互いの溶湯から出発した合わせ鋳造方式によって、クラッドアルミニウム合金板を製造する双ロール連続鋳造方法においては、互いのアルミニウム合金溶湯が互いに混合し易く、クラッド材の界面が一定にならない問題点が避けがたい。また、前記した、従来の一つの湯溜り内へ二種以上のアルミニウム合金溶湯を供給する方式では、アルミニウム合金溶湯供給ノズル高さを変える、あるいは仕切り板を設けるなどの湯溜り内の構造上の工夫をしたとしても、アルミニウム合金溶湯同士の混合が避けがたい。
【0017】
これに対して、前記した、従来のクラッドアルミニウム合金板の一方の皮材薄板を予め製造しておく方式では、互いのアルミニウム合金溶湯の混合は防止できる。しかし、薄板を予め別個に製造しておく必要があるため、同時に互いのアルミニウム合金溶湯からクラッドアルミニウム合金板を製造する双ロール連続鋳造方法に比して、工程が多くなり、かつ製造コストが大きく増す。このため、前記した従来の圧延によるクラッドアルミニウム合金板製造法などに比して、工程削減およびコスト低下には結びつかず、クラッドアルミニウム合金板を双ロール連続鋳造方法で製造する意味自体がなくなる。
【0018】
本発明は、従来のクラッドアルミニウム合金板の一方の皮材薄板を予め製造しておく方式ではなく、クラッドする互いのアルミニウム合金同士を互いの溶湯から出発した合わせ鋳造方式によって、クラッドアルミニウム合金板を製造する双ロール連続鋳造方法を対象とする。そして、このような合わせ鋳造方式によってクラッドアルミニウム合金板の連続鋳造方法の上記した諸問題を解決することを目的とする。
【0019】
即ち、本発明は、クラッドする互いのアルミニウム合金同士を互いの溶湯から出発した合わせ鋳造方式によって、クラッドアルミニウム合金板を製造する双ロール連続鋳造方法であっても、アルミニウム合金溶湯の互いの混合を抑制でき、界面が一定で、互いのアルミニウム合金同士の接合強度(接合性、密着性)に優れたクラッドアルミニウム合金板を得ることができる製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的を達成するために、本発明クラッドアルミニウム合金板の製造方法の要旨は、一対の双ロールを用いた連続鋳造によって、互いに融点の異なるアルミニウム合金同士を接合して一体化させたクラッドアルミニウム合金板を製造する方法であって、前記双ロールの各ロール表面に、融点の異なるアルミニウム合金溶湯を各々別個に供給して、各ロール表面にて各アルミニウム合金溶湯の凝固を開始させるとともに、前記双ロールのキス点近傍に至るまでに、高融点側のアルミニウム合金溶湯の凝固殻形成を予め完了させて、前記キス点近傍において、供給された高融点側のアルミニウム合金溶湯が、低融点側のアルミニウム合金溶湯およびその凝固殻に接触しないようにするとともに、低融点側のアルミニウム合金溶湯およびその凝固殻とを、低融点側のアルミニウム合金溶湯温度を、高融点側のアルミニウム合金液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、前記高融点側のアルミニウム合金溶湯の凝固殻と接触させ、互いに融点の異なるアルミニウム合金同士を接合して一体化させ、2層のアルミニウム合金からなるクラッドアルミニウム合金板を製造することである。
【0021】
ここで、三層のアルミニウム合金からなる多層のクラッドアルミニウム合金板を製造する、本発明の好ましい態様は、上記要旨の製造方法によって製造した2層クラッドアルミニウム合金板を更に第二の一対の双ロール間に導入し、この2層クラッドアルミニウム合金板を一方のロール表面に接触させるとともに、他方のロール表面に、この2層クラッドアルミニウム合金板のロールと接触していない積層アルミニウム合金よりも低融点の第三のアルミニウム合金溶湯を供給して、このロール表面にて前記第三のアルミニウム合金溶湯の凝固を開始させるとともに、第二の双ロールキス点近傍において、この第三のアルミニウム合金溶湯温度を、前記2層クラッドアルミニウム合金板のロールと接触していない積層アルミニウム合金の液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、このアルミニウム合金溶湯溶湯および凝固殻とを、前記2層クラッドアルミニウム合金板のロールと接触していない積層アルミニウム合金の凝固殻と接触させ、前記2層クラッドアルミニウム合金板に、更に第三のアルミニウム合金を接合して一体化させ、必要により、この工程を繰り返して、3層以上のアルミニウム合金からなるクラッドアルミニウム合金板を製造することである。
【0022】
本発明は、上記各要旨の製造方法によって製造する実施態様として、前記アルミニウム合金クラッド板が、心材に対してろう材、犠牲陽極材、中間材を各々選択的に積層した、2層あるいは3層の構造の熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートであることが好ましい。
【0023】
そして、前記2層構造の熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートや、前記3層構造の熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートを作るための前段階としての2層クラッドアルミニウム合金板を作る際に、前記心材とろう材とを積層する場合には、高融点側合金を心材、低融点側合金をろう材と各々し、心材と犠牲陽極材とを積層する場合には、高融点側合金を犠牲陽極材、低融点側の合金を心材と各々し、心材と中間材とを積層する場合には、高融点側合金を中間材、低融点側合金を心材と各々し、ろう材と中間材とを積層する場合には、高融点側合金を中間材、低融点側合金をろう材と各々することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、互いに融点の異なるアルミニウム合金同士を接合して一体化させたクラッドアルミニウム合金板を製造する場合に、低融点側合金の融点に比して、高融点側合金の溶湯温度が高くなることを前提としている。即ち、低融点側合金の凝固層なり凝固殻の再溶融が、高融点側合金と接触して生じることを前提としている。ただ、低融点側合金であっても、高融点側合金の固相線温度が異常に低いときに、この高融点側合金の溶湯温度が、低融点側合金の融点よりも低ければ、低融点側合金の凝固層なり凝固殻の再溶融が起こりにくい。このような場合は殆どないかもしれないが、この場合も、本発明の範囲には含みうる。
【0025】
本発明では、双ロールを用いた連続鋳造によって、融点の異なるアルミニウム合金同士を積層して一体化させたクラッドアルミニウム合金板を製造するに際して、双ロールの各ロール表面にアルミニウム合金溶湯を各々別個に供給して、各ロール表面にて各アルミニウム合金溶湯の凝固を開始させる。そして、双ロールのキス点近傍に至るまでに、高融点側(溶湯温度が高い側)のアルミニウム合金溶湯の凝固殻形成を予め完了させておくことを第一の特徴とする。
【0026】
これによって、双ロールのキス点近傍に至るまでに、高融点側合金溶湯が、低融点側(溶湯温度が低い側)の合金溶湯および凝固殻に接触しないようにする。その上で、前記キス点近傍において、高融点側合金凝固殻と低融点側合金溶湯および凝固殻とを接触させ、各々のアルミニウム合金同士を積層して一体化させる。
【0027】
このため、アルミニウム合金溶湯の互いの混合、特に、高融点側合金溶湯が低融点側合金溶湯および凝固層あるいは凝固殻に接触して、より高温の高融点側合金溶湯によって、低融点側合金溶湯が混合したり、低融点側合金凝固層あるいは凝固殻が溶融混合したりすることが防止乃至抑制される。また、低融点側合金凝固層あるいは凝固殻が溶融混合により、先に凝固させた低融点側凝固層あるいは凝固殻の厚さが減ることも起こらない。これによって、互いのアルミニウム合金の界面が一定(均一)なクラッドアルミニウム合金板を得ることができる。また、同じ合金溶湯、あるいは同じ融点を持つ合金溶湯を重ねてクラッドアルミニウム合金板を製造する場合は、それぞれの溶湯を高融点合金、低融点合金と設定して鋳造することができる。融点差が小さいほど、低融点と称される溶湯と高融点と称される凝固殻との接触距離を短くする必要はあるが、界面の波打ちや濃度勾配は起こらず、一定な界面となる。
【0028】
次に、本発明では、この第一の特徴に加えて、低融点側合金溶湯およびその凝固殻とを、高融点側合金溶湯の凝固殻と接触させる際の、低融点側合金溶湯温度を、高融点側のアルミニウム合金の液相線温度との関係で一定の範囲に規定することを第二の特徴とする。
【0029】
低融点側と高融点側とのアルミニウム合金2層を合わせる際に、その境界層において、本発明では、前記第一の特徴の通り、高融点側合金の凝固殻に対し、低融点側合金の液相と凝固殻との3相を接触させる。しかし、この場合に、高融点側合金の凝固殻に接触する低融点側合金溶湯の温度が、高融点側合金の液相線温度に対して低すぎ、高融点側合金の液相線温度未満であれば、例え互いに接触しても、高融点側合金の界面は、再溶融せずに完全固相のままとなりやすい。この結果、互いの界面が溶着状態になりにくく、互いのアルミニウム合金2層が強固には接合(密着)せずに、接合強度が不足しやすい。このため、アルミニウム合金2層界面の剥離や、熱処理した際や熱処理後にアルミニウム合金2層界面のフクレが発生しやすく、クラッドアルミニウム合金板として不良となりやすい。
【0030】
一方、高融点側合金の凝固殻に接触する低融点側合金溶湯の温度が高融点側合金の液相線温度に対して高すぎた場合には、逆に、高融点側合金の多くが溶け出し、互いの界面が2層の混合合金となるとともに、低融点側合金が汚染される可能性が高くなる。このため、やはり、互いのアルミニウム合金2層が強固には接合(密着)せずに、接合強度が不足しやすく、クラッド板としての性能が保てなくなる。
【0031】
これら第一および第二の特徴によって、本発明によれば、同時に互いのアルミニウム合金溶湯からクラッドアルミニウム合金板を製造する双ロール連続鋳造方法において、互いのアルミニウム合金の接合強度(密着性)が高い、クラッドアルミニウム合金板を比較的安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明におけるクラッドアルミニウム合金板(鋳造板)の製造方法につき、各要件ごとに具体的に説明する。
【0033】
(双ロール式連続鋳造法)
図1に、本発明における、縦型 (垂直型) の双ロール式連続鋳造法による合わせ鋳造を用いた、クラッドアルミニウム合金板製造の原理を模式的に示す。図1において、相対して水平に配置された、一対の双ロール1、2は、ロール1が例えば時計周り、ロール2が例えば反時計周りと、互いに反対方向に回転する。
【0034】
ここで、図1の互いのロールの大きさは同じである。但し、縦型 (垂直型) であろうと、横型 (水平型) であろうと、また、互いのロールの大きさが異なっていても、相対して互いに反対方向に回転する一対のロールによる双ロール式連続鋳造であれば、本発明におけるクラッドアルミニウム合金板製造の原理は、基本的に同じであり、作用効果は共通する。また、クラッドアルミニウム合金同士の種類が違っても、界面のアルミニウム合金間化合物生成状態などの界面の組織は当然異なってくるものの、本発明におけるクラッドアルミニウム合金板製造の原理はやはり同じであり、作用効果は共通する。
【0035】
図1において、Aが溶湯温度が比較的低温な低融点側アルミニウム合金溶湯(液相)、Bが溶湯温度が比較的高温な高融点側アルミニウム合金溶湯(液相)である。なお、双ロールに注湯する際の注湯(溶湯)温度は、融点の異なるアルミニウム合金の、互いの液相線温度を越える温度であれば、設備的に可能な温度で良く、特に制約がない。但し、以下の説明は、低融点側合金Aの融点に比して、高融点側合金Bの溶湯温度が高いことを前提として行う。
【0036】
(本発明第一の特徴)
本発明では、これら双ロールを用いた連続鋳造によって、融点の異なるアルミニウム合金A、B同士を積層して一体化させたクラッドアルミニウム合金板を製造するに際して、双ロールの各ロール1、2表面にアルミニウム合金溶湯A、Bを各々別個に供給して、各ロール1、2表面にて各アルミニウム合金溶湯の凝固を各々開始させる。そして、双ロールのキス点X近傍に至るまでに、高融点側(溶湯温度が高い側)のアルミニウム合金溶湯Bの凝固殻B1(凝固層、固相とも言う)形成を予め完了させておく。これによって、双ロールのキス点X近傍に至るまでに、高融点側合金溶湯Bが、低融点側(溶湯温度が低い側)の合金溶湯(液相)Aおよび凝固層A1(凝固殻、固相とも言う)に接触しないようにする。その上で、前記キス点X近傍において、高融点側合金凝固殻B1と低融点側合金溶湯Aおよび凝固層A1とを接触させ、結果、各々のアルミニウム合金A2、B2(固相)同士を積層して一体化させる。
【0037】
このために、図2に示すように、本発明では、これら融点の異なるアルミニウム合金溶湯A、Bを双ロールの各ロール1、2の表面に各々別個に供給する。これにより、初期のアルミニウム合金溶湯A、Bの互いの混合を防止乃至抑制する。ここでアルミニウム合金溶湯A、Bは各ロール1、2の表面と接触して冷却されて凝固を開始し、凝固殻A1、B1が生成する。更に、本発明では、点線で図示する双ロールのキス点X近傍に至るまでに、これら融点の異なるアルミニウム合金溶湯A、Bの内、特に、供給された高融点側合金溶湯Bの凝固殻B1の形成を予め完了させておく。
【0038】
これによって、図1のように、キス点X近傍に至るまでに、供給された高融点側合金溶湯Bが、高温の溶融した状態のままで、低融点側合金溶湯Aおよび凝固殻A1に接触しないようにする。この結果、キス点X近傍においては、高融点側合金凝固殻B1と、低融点側合金溶湯Aおよび凝固殻A1とを接触させ、各々のアルミニウム合金同士を積層して、互いに接合させて、クラッドアルミニウム合金板として一体化させる。キス点X近傍においては、より具体的には、図1のように、低融点側合金溶湯(液相)Aは、高融点側合金の凝固殻B1と、低融点側の凝固殻A1との間に供給されて、各々のアルミニウム合金A2、B2同士を互いに接合させ、クラッドアルミニウム合金板として一体化させる働きをする。このためには、低融点側合金溶湯Aおよびその凝固殻A1とを、高融点側合金溶湯の凝固殻B1と接触させる際に、後述する本発明第二の特徴の通り、低融点側合金溶湯Aの温度を、高融点側合金Bの液相線温度との関係で、一定の範囲にする必要がある。
【0039】
なお、キス点X近傍において、低融点側合金が、凝固殻A1が凝固未完了な凝固殻となっているか、あるいは凝固殻の生成が完了した凝固殻あるいは凝固層A2となっているかは、ロール2での冷却速度によるが、いずれでも良い。この点、本発明で言う、キス点X近傍において、供給された高融点側合金凝固殻が接触する、低融点側合金の凝固殻A1とは、凝固殻の生成が未完了な凝固殻だけでなく、生成が完了した凝固殻あるいは凝固層A2を含めて表現している。この点は、高融点側合金の凝固殻B1、B2でも同じである。したがって、A1、B1は凝固殻の生成が未完了な凝固殻のみを意味するものではない。
【0040】
ここで、供給された高融点側合金溶湯Bの凝固殻B1を、凝固層B1を経て、上記キス点近傍に至るまでに、予め形成させておくためには、後述する通り、先ず、双ロールの各ロール1、2の表面に、アルミニウム合金溶湯A、Bを各々別個に供給する必要がある。次に、ロール1側ではアルミニウム合金溶湯A、ロール2側ではアルミニウム合金溶湯Bという具合に、各ロール表面にて、各アルミニウム合金溶湯の凝固を各々開始させる必要がある。そして、特に、ロール2側の表面においては、高融点側合金溶湯Bを急冷凝固させて、上記キス点X近傍に至るまでに、凝固殻B1の形成を予め完了させておく必要がある。
【0041】
上記キス点X近傍では、高融点側合金溶湯Bの温度も当然低下している。しかし、その温度が例え下がったとしても、上記キス点X近傍に至るまでに、低融点側合金Aの融点に比して、高融点側合金Bの溶湯温度が高ければ、低融点側合金Aとの接触によって、低融点側合金溶湯Aおよび凝固殻A1あるいはA2の再溶融が生じる。これに対して、本発明では、上記キス点X近傍に至るまでに、高融点側合金溶湯Bの凝固殻B1の形成を予め完了させておくことによって、キス点X近傍におけるアルミニウム合金溶湯A、Bの互いの混合を防止乃至抑制する。これによって、低融点側のアルミニウム合金凝固殻A1あるいはA2が溶融混合し、凝固殻A1あるいはA2の厚さが減ることも起こらない。したがって、互いのアルミニウム合金の界面が一定なクラッドアルミニウム合金板を得ることができる。界面が一定なクラッドアルミニウム合金板は、要求される機械的特性や成形性、耐食性などの諸特性を満たし、しかも、これらの特性が幅方向や長手方向に均質となる。これによって、このようなクラッドアルミニウム合金板を比較的安価に製造できる利点も生む。
【0042】
一方、上記キス点X近傍に至るまでに、高融点側合金溶湯Bの凝固殻B1の形成を予め完了させられないと、アルミニウム合金溶湯A、Bの互いの混合が生じる。即ち、低融点側合金Aの融点よりも比較的高温な、高融点側合金溶湯Bが、低融点側合金溶湯Aおよび凝固殻A1に接触する。このため、低融点側合金溶湯Aが高融点側合金溶湯Bに混合したり、低融点側合金凝固殻A1が高融点側合金溶湯Bに溶融混合したりする。これによって、クラッドアルミニウム合金板の互いのアルミニウム合金の界面が一定とならなくなる。
【0043】
(本発明第二の特徴)
次に、本発明では、上記第一の特徴に加えて、低融点側合金溶湯Aおよびその凝固殻A1とを、高融点側合金溶湯の凝固殻B1と接触させる際の、低融点側合金溶湯Aの温度を、高融点側合金Bの液相線温度との関係で、一定の範囲に規定することを第二の特徴とする。
【0044】
即ち、低融点側合金溶湯Aの温度を、高融点側合金Bの液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、低融点側合金溶湯Aおよびその凝固殻A1とを、前記高融点側合金溶湯の凝固殻B1と接触させ、互いのアルミニウム合金A、B同士を接合して一体化させる。これによって、接合強度(密着性)の高い、2層のアルミニウム合金A、Bからなるクラッドアルミニウム合金板を製造する。
【0045】
低融点側と高融点側との合金A、B2層を合わせる際に、その境界層において、本発明では、前記第一の特徴の通り、高融点側合金の凝固殻B1に対し、低融点側合金の液相(溶湯)Aと凝固殻A1との3相を接触させる。しかし、この場合に、高融点側合金の凝固殻B1に接触する、低融点側合金溶湯Aの温度が、高融点側合金Bの液相線温度に対して低すぎ、高融点側合金Bの液相線温度未満であれば、例え互いに接触しても、高融点側合金凝固殻B1の界面は、再溶融せずに完全固相のままとなりやすい。この結果、互いの界面が溶着状態になりにくく、互いのアルミニウム合金A、B2層が強固には接合(密着)せずに、接合強度が不足しやすい。このため、アルミニウム合金2層界面の剥離や、熱処理した際や熱処理後にアルミニウム合金2層界面のフクレが発生しやすく、クラッドアルミニウム合金板として不良となりやすい。
【0046】
一方、高融点側合金の凝固殻B1に接触する低融点側合金溶湯Aの温度が、高融点側合金Bの液相線温度に対して高すぎ、この液相線温度+100℃を超えた場合には、逆に、高融点側合金Bの多くが溶け出し、互いの界面がA、B2層の混合合金となるとともに、低融点側合金Aが汚染される可能性が高くなる。このため、やはり、互いのアルミニウム合金2層が強固には接合(密着)せずに、接合強度が不足しやすく、クラッド板としての性能が保てなくなる。
【0047】
これら第一および第二の特徴によって、本発明によれば、同時に互いのアルミニウム合金溶湯からクラッドアルミニウム合金板を製造する双ロール連続鋳造方法において、互いのアルミニウム合金の接合強度(密着性)が高い、クラッドアルミニウム合金板を比較的安価に製造できる。
【0048】
(図2)
図2は、融点の異なるアルミニウム合金溶湯A、Bの2層構造のクラッドアルミニウム合金板を、縦型双ロール式連続鋳造(合わせ鋳造)にて製造する本発明態様を示す。ここで、双ロール鋳造の方式は、図2のような縦型 (双ロールが略水平方向に並ぶ) でも、横型 (双ロールが略垂直方向に並ぶ) でも良い。また、後述する通り、これらロール同士の大きさ(ロール径)は図2のように同じでなくとも、互いに大小として変えても良い。この内、縦型では、凝固距離を大きく取ることができ、接触時間が長くなることから、鋳造速度の増加が可能となり、生産性が向上するなどの特徴がある。したがって、これら特徴を考慮して、横型と縦型とは使い分ける。
【0049】
双ロール1、2は、以下の本発明態様でも同様であるが、水冷などの冷却手段で冷却された鋳型ロールであり、鉄鋼や銅などのアルミニウム合金製からなる。これら双ロール1、2は、長手方向や幅方向の板の冷却速度を均一にし、板厚精度や表面平滑度、あるいは組織を均一にするために、双ロール1、2間で板(凝固殻、溶湯)を加圧する。このために、双ロール1、2は、バネ等の与勢手段14、14によって、矢印で示す互いに接近する方向、即ち、双ロール間隔を狭める方向に与勢されている。
【0050】
図2において、および図3〜7で示す以下の各態様においても、12、13は、融点の異なるアルミニウム合金溶湯A、B各々の耐火物製の給湯用ノズルあるいは鍋である。また、10、11は、周囲の耐火物製の堰、壁などから構成される、融点の異なるアルミニウム合金溶湯A、B各々のタンディッシュ(湯溜まりあるいは給湯用樋)である。
【0051】
本発明では、このように、融点の異なるアルミニウム合金溶湯A、Bを、別々の給湯用ノズルあるいは鍋12、13、そして別々のタンディッシュ10、11と分け、双ロールの各ロール1、2の表面にアルミニウム合金溶湯A、Bを各々別個に供給する。これによって、従来のように、融点の異なるアルミニウム合金溶湯A、Bを、互いに混合し易いような一つの湯溜りに注入するのではなく、上記したように、双ロールの各ロール1、2の表面にアルミニウム合金溶湯A、Bを各々別個に供給して、両者の混合を防止する。
【0052】
その上で、キス点X近傍に至るまでに、高融点側のアルミニウム合金溶湯Bの凝固殻B1の形成を予め完了させておき、キス点X近傍におけるアルミニウム合金溶湯A、Bの互いの混合をも防止乃至抑制する。すなわち、低融点側合金Aの融点に比して溶湯温度が高い高融点側合金Bの溶湯と、低融点側合金の凝固殻A1との接触、再溶融が防止乃至抑制される。そして、キス点X近傍において、高融点側合金凝固殻B1と、低融点側合金溶湯Aおよび凝固殻A1あるいは凝固殻A2とを接触させ、各々のアルミニウム合金同士A2、B2を積層して、互いに接合させたクラッドアルミニウム合金板6として一体化させる。
【0053】
また、このキス点X近傍においては、図2のように、低融点側合金溶湯(液相)Aは、高融点側合金凝固殻B1と低融点側の凝固殻A1との間(狭間、界面)に供給されて、アルミニウム合金A、B同士の接合と、クラッドアルミニウム合金板としての一体化を促進して、接合強度を増す働きをする。これは、以下に説明する図3から図7の態様においても同様である。
【0054】
この際、更に、このキス点X近傍において、低融点側合金溶湯Aの温度を、高融点側合金Bの液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、低融点側合金溶湯Aおよびその凝固殻A1とを、前記高融点側合金溶湯の凝固殻B1と接触させる。そして、互いのアルミニウム合金A、B同士を接合して一体化させ、接合強度(密着性)の高い、2層のアルミニウム合金A、Bからなるクラッドアルミニウム合金板を製造する。これは、以下に説明する図3から図7の態様においても同様である。
【0055】
(図3)
ここで、図3は、融点の異なるアルミニウム合金溶湯A、Bの互いの混合を更に防止するための本発明態様を示す。図3では、双ロール1、2に供給される高融点側合金溶湯Bが、低融点側合金溶湯Aおよび低融点側の凝固殻A1に接触しないように、双ロールのキス点X近傍に至るまでのロール間に、タンディッシュ11側から延長される、仕切り板(遮蔽板)15を設けている。これ以外は、前記図2の態様と同じである。
【0056】
この図3において、仕切り板15は、高融点側のアルミニウム合金凝固殻B1をスキミングして、高融点側のアルミニウム合金溶湯(液相)Bが、最終凝固部(ロールキス点直前) へ浸入しないようにしている。
【0057】
融点の異なるアルミニウム合金溶湯A、Bの融点の差が小さければ、最終凝固部に近づくに連れて、高融点側合金凝固殻B1が再溶融して、双ロールのキス点近傍の最終凝固部へ浸入する恐れがある。また、最終凝固(ロールキス点直前) までに、高融点側合金側の凝固殻B1上に、低融点側のアルミニウム合金溶湯Aが凝固し始め、ロールキス点Xでの加圧は、主に低融点合金同士の圧着となりやすく、接合強度が低下する。
【0058】
これらは、いずれもクラッド界面の密着性を低下させる。そこで、特に融点の異なるアルミニウム合金溶湯A、Bの融点の差が小さいときには、高融点側合金凝固殻B1と低融点側合金溶湯Aの接触長さを小さくするために、高融点合金をスキミングする仕切り板(遮蔽板)15を設けることが望ましい。
【0059】
(図4)
仕切り板(遮蔽板)15を設けた別の態様を図4に示す。図4は2層双ロール式連続鋳造(合わせ鋳造)だが、縦型と横型との中間の斜め型の本発明の別の態様をも示している。
【0060】
図4では、小径ロール2側(上側)から高融点側合金溶湯Bが供給され、大径ロール1側(下側)から低融点側合金溶湯Aが供給されている。そして、双ロールのキス点X近傍に至るまでのロール間に、タンディッシュ11側から延長される仕切り板(遮蔽板)15を設けて、高融点側のアルミニウム合金溶湯Bが、低融点側合金溶湯Aおよび凝固殻A1に接触しないようにしている。これら以外は、前記図2、3の態様と同じである。
【0061】
なお、この図4の溶湯供給の態様とは反対に、大径ロール1側(下側)に高融点側合金溶湯Bを供給し、小径ロール2側(上側)に低融点側合金溶湯Aを供給してもよい。この場合には、高融点側合金溶湯Bが、低融点側のアルミニウム合金溶湯Aおよび凝固殻A1に接触しないように、大径ロール1側(下側)の高融点側合金溶湯Bをスキミングするように、仕切り板15を高融点側の合金溶湯Bと接触させる変更が必要となる。
【0062】
(図5〜7)
図5〜7は、三層以上のアルミニウム合金からなる多層の積層構造のクラッドアルミニウム合金板を製造する態様を各々示している。
【0063】
(図5)
図5は、先ず2層のクラッドアルミニウム合金板を製造するまでの態様は、前記図2の態様と同じである。図5では、前記図2の態様における双ロール1、2で製造したクラッドアルミニウム合金板6を、下流側に設けた、相対して互いに反対方向に回転する双ロール3、4に更に導入する。
【0064】
この際に、クラッドアルミニウム合金板6における低融点側合金A2側をロール3表面に接触させつつ、双ロール3、4間を更に通過させる。その一方で、他方のロール4表面に、第3の積層アルミニウム合金であって、クラッドアルミニウム合金板6の高融点側合金Bよりも低融点側合金溶湯Cを別個に(独立して)供給する。18は給湯用ノズルあるいは鍋、17は供給用タンディッシュである。但し、ロール3表面に接触させる側のアルミニウム合金は、必ずしも、図5のように、低融点側合金A2側でなくとも、高融点側合金B2側であってもよい。これは、後述する図6から7も同様であって、第3の積層アルミニウム合金は、前記クラッドアルミニウム合金板のロールと接触していない積層アルミニウム合金よりも低融点であることが重要である。
【0065】
そして、双ロール3、4のキス点X2(双ロール1、2のキス点はX1)近傍において、クラッドアルミニウム合金板6の高融点側合金(固相、凝固殻)B2と、低融点側合金溶湯Cおよび生成した凝固殻C1とを接触させる。これによって、クラッドアルミニウム合金板6に、更に低融点側合金C2を積層して一体化させ、三層のアルミニウム合金からなる多層構造のクラッドアルミニウム合金板7を製造する。四層以上のアルミニウム合金からなる多層構造のクラッドアルミニウム合金板を製造するには、この工程を繰り返せば可能である。
【0066】
このキス点X2近傍においては、図5のように、低融点側合金溶湯(液相)Cは、高融点側合金固相B2と低融点側の凝固殻C1との間(狭間、界面)に供給されて、アルミニウム合金B、C同士の接合と、クラッドアルミニウム合金板としての一体化を促進して、接合強度を増す働きをする。これは、三層クラッドアルミニウム合金板だけでなく、以下に説明する四層以上のクラッドアルミニウム合金板の図7の態様においても同様である。
【0067】
ここで、キス点X1近傍では、低融点側合金溶湯Aの温度、キス点X2近傍では、低融点側合金溶湯Cの温度を制御する。即ち、キス点X1近傍においては、低融点側合金溶湯Aの温度を、高融点側合金Bの液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、低融点側合金溶湯Aおよびその凝固殻A1とを、高融点側合金溶湯の凝固殻B1と接触させる。また、キス点X2近傍においては、低融点側合金溶湯Cの温度を、高融点側合金Bの液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、低融点側合金溶湯Cおよびその凝固殻C2とを、高融点側合金溶湯の凝固殻B1と接触させる。そして、キス点X1近傍においては、互いのアルミニウム合金A、B同士を接合して一体化、キス点X2近傍においては、互いのアルミニウム合金B、C同士を接合して一体化させる。この結果として、接合強度(密着性)の高い、3層のアルミニウム合金A、B、Cからなるクラッドアルミニウム合金板を製造する。これは、以下に説明する図6や図7、図9の態様においても同様である。
【0068】
即ち、接合強度(密着性)の高いクラッドアルミニウム合金板を製造するために、2層構造あるいは3層以上の構造に関わらず、各キス点X近傍においては、低融点側合金溶湯の温度を、高融点側合金の液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、低融点側合金溶湯およびその凝固殻とを、前記高融点側合金溶湯の凝固殻と接触させる。
【0069】
なお、図5では、双ロールのキス点X近傍に至るまでのロール間に、タンディッシュ11側から延長される仕切り板(遮蔽板)16を設けているが、これは、ロール4側(下側)から供給される低融点側のアルミニウム合金溶湯Cが、凝固した高融点側合金固相B2と過度に接触しないようにするためである。融点の異なる合金溶湯B、Cの融点の差が小さければ、双ロール3、4間の最終凝固部に近づくに連れて、高融点側合金固相B2が再溶融して、双ロールのキス点近傍の最終凝固部へ浸入し、クラッドアルミニウム合金板のB2とC2との界面が変動する恐れがある。また、最終凝固(ロールキス点直前) までに、高融点側の合金固相B2上に、低融点側合金溶湯Cが凝固し始め、ロールキス点X2での加圧は、主に低融点合金同士の圧着となりやすい。
【0070】
この図5のような、2段タンデムに並んだ双ロール1、2と双ロール3、4とを用いずとも、図2、3のような1段の双ロール1、2を2回以上通すことによっても、三層以上のクラッドアルミニウム合金板が製造できる。即ち、図2、3のような要領で、1段の双ロール1、2の1回目のパスで2層クラッドアルミニウム合金板を製造した後、双ロール1、2への2回目のパスで、別の第3の(3層目の)アルミニウム合金を、この図5の双ロール3、4の要領で積層することによって、順次積層アルミニウム合金を増していくことができる。
【0071】
(図6)
図6は、双ロールに大径ロールと複数の小径ロールとを使用している。即ち、クラッドアルミニウム合金板6における低融点側のアルミニウム合金A側のロール1を大径ロールとし、複数の小径ロール2、4を、大径ロール1の周縁に、大径ロール1の回転方向の上流側から下流側に向かって順に配置している。これによって、小径ロール2、4は、共通の大径ロール1と各々双ロールを構成している。このため、図6は、双ロール式連続鋳造(合わせ鋳造)だが、縦型と横型との中間の斜め型の本発明の態様となっている点では、図4と共通している。
【0072】
図6は、先ず2層のクラッドアルミニウム合金板を製造するまでの態様も、共通の大径ロール1を用いる点以外は、前記図5の態様と同じである。この図6では、前記図2の態様における双ロール1、2で製造したクラッドアルミニウム合金板6を、下流側に設けた、相対して互いに反対方向に回転する双ロール1と4とに更に導入する。
【0073】
この際に、クラッドアルミニウム合金板6における低融点側合金凝固殻A2側をロール1表面に接触させつつ、双ロール1、4間を更に通過させる。その一方で、他方のロール4表面に、第3の積層アルミニウム合金であって、クラッドアルミニウム合金板6の高融点側合金Bよりも低融点側合金の溶湯Cを別個に(独立して)供給する。
【0074】
そして、双ロール1、4のキス点X2(双ロール1、2のキス点はX1)近傍において、クラッドアルミニウム合金板6の高融点側合金固相B2と、低融点側合金溶湯Cおよび生成した凝固殻C1とを接触させる。これによって、クラッドアルミニウム合金板6に、更に低融点側合金C2を積層して一体化させ、三層のアルミニウム合金からなる多層のクラッドアルミニウム合金板7を製造する。
【0075】
これら図5、6の態様において、第3の積層アルミニウム合金Cは、前記した通り、クラッドアルミニウム合金板6のロールと接触していない積層アルミニウム合金よりも低融点(図5、6の場合は接触する高融点側合金Bよりも低融点)とする。第3の積層アルミニウム合金Cが、クラッドアルミニウム合金板6のロールと接触していない積層アルミニウム合金(高融点側合金B)よりも高融点の場合、クラッドアルミニウム合金板6の凝固アルミニウム合金B2が再溶融して、双ロールのキス点近傍の最終凝固部へ浸入し、クラッドアルミニウム合金板7のB2とC2との界面が変動する恐れがある。
【0076】
(図7)
図7は、四層以上のアルミニウム合金からなる多層構造のクラッドアルミニウム合金板を製造する態様を示す。図7では、三層のアルミニウム合金からなる多層のクラッドアルミニウム合金板7を製造する、双ロール1、4までの工程は同じで、これ以降もこの工程を繰り返している。即ち、図7では、前記図6の態様における双ロール1、4で製造したクラッドアルミニウム合金板7を、大径ロール1の下流側に設けた、相対して互いに反対方向に回転する双ロール5と大径ロール1の間に更に導入する。
【0077】
この際に、クラッドアルミニウム合金板6における低融点側合金凝固殻A2側をロール1表面に接触させつつ、双ロール1、5間を更に通過させる。その一方で、他方のロール5表面に、第4の積層アルミニウム合金であって、クラッドアルミニウム合金板6のアルミニウム合金Cよりも低融点の、アルミニウム合金溶湯Dを別個に(独立して)供給する。21は給湯用ノズルあるいは鍋、19は供給用タンディッシュである。
【0078】
そして、双ロール1、5のキス点X3近傍において、クラッドアルミニウム合金板6の固相アルミニウム合金C2と、低融点合金溶湯Dおよび生成した凝固殻D1とを接触させる。これによって、クラッドアルミニウム合金板6に、更に低融点のアルミニウム合金D2を積層して一体化させ、四層のアルミニウム合金からなる多層のクラッドアルミニウム合金板8を製造する。四層以上のアルミニウム合金からなる多層のクラッドアルミニウム合金板を製造するには、更にこの工程を繰り返せば可能である。
【0079】
これら図7の態様においても、第4の積層アルミニウム合金Dは、前記した通り、第3の積層アルミニウム合金Cの再溶融を防止するために、クラッドアルミニウム合金板6のロールと接触していない積層アルミニウム合金(アルミニウム合金C)よりも低融点とする。このように、第3以降の積層アルミニウム合金の融点も、クラッドアルミニウム合金板のロールと接触していない積層アルミニウム合金(接触するクラッドアルミニウム合金板のアルミニウム合金)よりも常に低融点とする。
【0080】
ここで、キス点X1近傍の低融点側合金溶湯Aの温度、キス点X2近傍の低融点側合金溶湯Dの温度の制御は、前記した図5、6の態様と同じである。そして、この図7の態様では、更に、キス点X3近傍において、第4の積層アルミニウム合金である、低融点側合金溶湯Dの温度を、第3の積層アルミニウム合金である、高融点側合金Cの液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、低融点側合金溶湯Dおよびその凝固殻D1とを、高融点側合金固相C2と接触させる。この結果、接合強度(密着性)の高い、4層のアルミニウム合金A、B、C、Dからなるクラッドアルミニウム合金板を製造できる。
【0081】
(その他の好ましい操業条件)
以下に、これらの図1〜7の各態様における、操業上の好ましい共通条件につき、説明する。なお、特別の場合以外は、図2の符号を用いて説明するが、図2の符号の部材に対応する図3〜7の部材にも共通し、図3〜7の部材符号に読み替えれば良い。
【0082】
(ロール冷却)
ここで、双ロールの各ロール1、2表面の温度は固相線温度以下のできるだけ低い方が良い。この温度が高過ぎた場合、特に、ロール2側の表面において、高融点側合金溶湯Bを急冷凝固させて、上記キス点近傍に至るまでに、凝固殻B1の形成を予め完了させることができない。このために、特に、高融点側合金溶湯Bが供給される、ロール2側の水冷などのロール冷却手段の能力(冷却能)を高めて、ロール2側の表面を上記固相線温度以下のできるだけ低い温度として、高融点側のアルミニウム合金溶湯Bを急冷凝固させて、上記キス点近傍に至るまでに、凝固殻B2の形成を予め完了させるようにする。
【0083】
これに対して、低融点側合金溶湯Aが供給される、ロール1側においても、上記キス点近傍に至るまでに、低融点側のアルミニウム合金溶湯Aを急冷凝固させて、凝固殻A1を予め生成を開始させておく必要がある。ただ、高融点側合金溶湯Bのように、凝固殻A1の形成を予め完了させるまでの必要はなく、図2で示すように、低融点側合金溶湯Aが残存していて良い。このため、低融点側合金溶湯Aが供給されるロール1側の水冷などのロール冷却手段の能力(冷却能)も、ロール2ほど高くなくても良いが、上記キス点近傍に至るまでに、凝固殻A1の生成を予め開始させる急冷凝固能は必要である。
【0084】
(冷却速度)
双ロール式連続鋳造は、他のベルトキャスター式、プロペルチ式、ブロックキャスター式などに比して、鋳造の際の冷却速度を大きくできる利点がある。但し、双ロール式でも、アルミニウム合金の種類にもよるが、鋳造板(鋳塊)の結晶粒の粗大化防止のためには、冷却速度は50℃/s以上のできるだけ大きい速度が好ましい。
【0085】
なお、この冷却速度は、直接の計測は難しいので、鋳造された板 (鋳塊) の板厚方向全体にわたる複数点でのデンドライトアームスペーシング (デンドライト二次枝間隔、:DAS)の平均値から公知の方法(例えば、軽アルミニウム合金学会、昭和63年8.20発行、「アルミニウムデンドライトアームスペーシングと冷却速度の測定方法」などに記載)により求める。即ち、鋳造された板の鋳造組織における、互いに隣接するデンドライト二次アーム (二次枝) の平均間隔d を交線法を用いて計測し (視野数3 以上、交点数は10以上) 、このd を用いて次式、d = 62×C -0.337 (但し、d:デンドライト二次アーム間隔mm、C : 冷却速度℃/s) から求める。
【0086】
(ロール潤滑)
ロール潤滑剤を用いた場合、理論計算上は冷却速度が大きくても、実質的な冷却速度が小さくなりやすい。このため、双ロールとしては、潤滑剤によって表面が潤滑されていないロールを用いることが望ましい。また、潤滑剤を用いた場合、双ロール表面において、潤滑剤の濃度や厚みの不均一によって、冷却のムラが生じやすく、板の部位によっては凝固速度が不十分となりやすい。このため、マクロ偏析やミクロ偏析が大きくなり、板の強度延性バランスを均一にすることが困難となる可能性が高い。
【0087】
(ロール径)
ここで、効率化、量産化のためには、双ロールとして大径ロールを用いることが好ましく、双ロールのロール径Dは100Φmm以上が好ましい。ただ、このロール径Dは、図6以降の双ロールの大径ロールと小径ロールとの組み合わせなど、互いのロール径の大小関係でも決まる。なお、双ロールのロール径Dを大きくするほど、ロール周速v乃至鋳造速度が速くなり、このロール周速v乃至鋳造速度が速くなると、空隙などの鋳造欠陥の原因となる溶湯の渦流が発生しやすくなるので注意する。
【0088】
(鋳造速度)
ロール側の表面において、各高融点側合金溶湯を各々急冷凝固させて、上記キス点近傍に至るまでに、凝固殻などの形成を予め完了させるようにするためには、アルミニウム合金の種類やロール冷却能との関係もあるが、鋳造速度(ロールの周速v)は比較的遅い方が良い。この点、本発明では、鋳造速度乃至双ロールの周速vを20m/min以下とすることが好ましい。この鋳造速度乃至双ロールの周速vを大きくしすぎると、アルミニウム合金の種類やロール冷却能との関係もあるが、上記キス点近傍に至るまでに、高融点側のアルミニウム合金凝固殻B2を予め形成させることができにくい。
【0089】
(鋳造板厚)
本発明では、製造されるクラッドアルミニウム合金板(鋳造板)の板厚は自由に選択される。但し、最終的に、製品としての薄板を得たい場合には、鋳造板の板厚があまり厚いと、後で熱間圧延や冷間圧延などを必要とし、双ロール連続鋳造により板を製造する利点が損なわれる。
【0090】
(クラッドアルミニウム合金板の材質)
本発明で製造できるクラッドアルミニウム合金板の材質としては、上記した本発明製造条件を可能とする融点差があるアルミニウム合金同士であれば、種々のアルミニウム合金同士が、その特性と融点差とを考慮して選択可能である。
【0091】
例えば、アルミニウム合金は、AA乃至JISに規格化あるいは公知のアルミニウム合金が適用できる。1000系であれば融点は643〜657℃程度、2000系であれば融点は502〜640℃程度、3000系であれば融点は629〜657℃程度、4000系であれば融点は532〜630℃程度、5000系であれば融点は568〜652℃程度、6000系であれば融点は582〜655℃程度、7000系であれば融点は477〜657℃程度である。これら各規格アルミニウム合金の機械的特性や成形性、耐食性などの諸特性と、互いの融点差とを考慮して、アルミニウム合金同士のクラッドが選択可能である。
【0092】
(ブレージングシート製造の態様)
次に、熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシート(以下、単にブレージングシートとも言う)製造の態様について、以下に説明する。このブレージングシートにおいても、以上説明した本発明の実施態様が適用されるが、ブレージングシート特有の組み合わせる(積層する)合金の特性に基づく特有の必要条件もある。
【0093】
2層あるいは3層の積層構造のブレージングシートは、アルミニウム合金クラッド板として、心材に対してろう材、犠牲陽極材、中間材を各々選択的に積層した構成を有する。2層構造のブレージングシートは、具体的には、心材+ろう材あるいは心材+犠牲陽極材から構成される。
【0094】
また、3層積層構造のブレージングシートは、具体的には、心材の両面にろう材を積層したろう材+心材+ろう材、心材の片面づつにろう材と犠牲陽極材とを積層したろう材+心材+犠牲陽極材、あるいは心材の片面に中間材を介してろう材を積層したろう材+中間材+心材の3層構造から構成される。
【0095】
(2層積層構造)
これら心材、ろう材、犠牲陽極材、中間材として、汎用乃至使用されるアルミニウム合金組成からして、融点と、互いの溶湯温度の高低が必然的に定まる。したがって、前記した2層構造ブレージングシート作成や、3層構造ブレージングシートを作るための前段階としての2層構造の積層板作成において、積層合金同士の接合強度を上げるために、心材、ろう材、犠牲陽極材、中間材の組み合わせによって、いずれを低融点側合金と高融点側合金とするかが定まる。
【0096】
(心材+ろう材)
心材とろう材とを積層、接合する際には、前記図2〜図4の態様において、高融点側合金Bを心材とし、低融点側の合金Aをろう材とする。なお、この際、図8の態様としても良い。この図8は、前記図4の態様とは反対(逆)に、上側の合金Bを低融点側とし、下側の合金Aを高融点側としている。したがって、図8では、高融点側合金Aを心材とし、低融点側の合金Bをろう材とする。ここで、双ロール1、2のキス点X近傍に至るまでに、高融点側合金A側合金溶湯の凝固殻形成を予め完了させて、前記キス点X近傍において、供給された高融点側合金A側合金溶湯が、低融点側合金Bの溶湯およびその凝固殻に接触しないようにする点、低融点側合金Bの溶湯およびその凝固殻を高融点側合金A側の凝固殻と接触させる点は、これまでの態様と同じである。
【0097】
また、ブレージングシートが、2層構造あるいは3層構造であるかに関わらず、接合強度(密着性)を向上させるために、以下の説明する態様を含め、各キス点X近傍において、低融点側合金溶湯の温度を、高融点側合金Bの液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、低融点側合金溶湯およびその凝固殻とを、高融点側合金溶湯の凝固殻と接触させる点も、これまでの態様と同じである。
【0098】
(心材+犠牲陽極材)
心材と犠牲陽極材とを積層、接合する際には、前記図2〜図4の態様において、高融点側合金Bを犠牲陽極材とし、低融点側の合金Aを心材とする。この際、図8のように、高融点側合金Aを犠牲陽極材とし、低融点側の合金Bを心材としても良い。
【0099】
(心材+中間材)
心材と中間材とを積層、接合する際には、前記図2〜図4の態様において、高融点側合金Bを中間材とし、低融点側の合金Aを心材とする。この際、図8のように、高融点側合金Aを中間材とし、低融点側の合金Bを心材としても良い。
【0100】
(ろう材+中間材)
ろう材と中間材とを積層、接合する際には、前記図2〜図4の態様において、高融点側合金Bを中間材とし、低融点側の合金Aをろう材とする。この際、図8のように、高融点側合金Aを中間材とし、低融点側の合金Bをろう材としても良い。
【0101】
(3層積層構造)
これらの製造方法によって製造した2層積層構造クラッドアルミニウム合金板を、更に、3層積層構造ブレージングシートとする方法を以下に説明する。以下の説明では、図6や図9などの態様によって、2層構造から3層構造を連続的に製造する態様を主として説明する。
【0102】
ただ、このように2層構造から3層構造を連続的に製造せずとも、先ず、前記図2〜図4の態様によって、2層構造クラッドアルミニウム合金板を製造しておき、これを前記図2〜図4、あるいは図6や図9などの別個あるいは別工程の双ロールに、更には同じ双ロールに再び供給して、第三の合金層を、これまでの説明した融点関係によって、積層させても勿論良い。
【0103】
また、3層構造ブレージングシートを作るための前段階としての2層構造の積層板作成工程や、これに3層目の合金を積層して3層構造ブレージングシートを作成する工程での、低融点側合金と高融点側合金との組み合わせは、前記した2層構造ブレージングシート作成時の組み合わせが基本的に適用される。以下、3層構造ブレージングシートの組み合わせ(種類)毎に具体的に説明する。
【0104】
(ろう材+心材+ろう材の3層構造)
心材の両面にろう材を積層した、ろう材+心材+ろう材の3層構造の場合には、融点は心材≧ろう材の関係となる。このため、2層構造から3層構造を連続的に製造するためには、図6の態様で製造する。即ち、図6の態様において、先ず、双ロール1、2において、低融点側合金Aをろう材、高融点側合金Bを心材として、ろう材+心材の2層クラッドアルミニウム合金板を作る。
【0105】
次に、この2層クラッドアルミニウム合金板を、第二の双ロール1、4(ロール1は共通)において、ろう材A側を引き続き一方のロール1表面に接触させる。これとともに、他方のロール4表面に、心材合金よりも低融点のろう材合金溶湯を第三の合金溶湯Cとして供給して、このロール4表面にて、このろう材合金溶湯Cの凝固を開始させる。そして、これとともに、第二の双ロールキス点X2近傍において、このろう材合金溶湯Cの温度を、前記心材合金Bの液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、このろう材合金の溶湯Cおよび凝固殻C2とを、前記2層クラッドアルミニウム合金板のロール1と接触していない心材合金の凝固殻B2と接触させ、この2層クラッドアルミニウム合金板に、更にろう材合金Cを接合して一体化させ、3層の熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートを製造する。
【0106】
(心材+中間材+ろう材の3層構造)
心材の片面に中間材、この中間材にろう材を各々積層した、心材+中間材+ろう材の3層構造の場合には、融点は中間材≧心材≧ろう材の関係となる。このため、2層構造から3層構造を連続的に製造するためには、図6の態様で製造する。即ち、図6の態様において、先ず、双ロール1、2において、低融点側合金Aをろう材、高融点側合金Bを中間材として、中間材+ろう材の2層クラッドアルミニウム合金板を作る。次に、この2層クラッドアルミニウム合金板を、第二の双ロール1、4(ロール1は共通)において、ろう材A側を引き続き一方のロール1表面に接触させる。これとともに、他方のロール4表面に、中間材合金よりも低融点の心材合金溶湯を第三の合金溶湯Cとして供給して、前記したろう材+心材+ろう材の3層構造と同じ要領で、中間材合金の凝固殻B2と接触させ、2層クラッドアルミニウム合金板に、更に心材合金Cを接合して一体化させ、3層の熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートを製造する。
【0107】
また、別の態様として、低融点側合金Aを心材、高融点側合金Bを中間材として、先ず、心材+中間材2層クラッドアルミニウム合金板を作っても良い。この場合は、心材A側を引き続き一方のロール1表面に接触させる。これとともに、他方のロール4表面に、中間材合金よりも低融点のろう材合金溶湯を第三の合金溶湯Cとして供給して、前記したと同じ要領で、中間材合金の凝固殻B2と接触させ、2層クラッドアルミニウム合金板に、更にろう材合金Cを接合して一体化させ、3層の熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートを製造する。
【0108】
(犠牲陽極材+心材+ろう材)
心材の両面にろう材と犠牲陽極材とを各々積層した、犠牲陽極材+心材+ろう材の3層構造の場合には、融点は犠牲陽極材≧心材≧ろう材の関係となる。このため、2層構造から3層構造を連続的に製造するためには、図9の態様で製造する。即ち、図9の態様において、先ず、双ロール1、2において、この場合は図6とは逆に、高融点側合金Aを犠牲陽極材、低融点側合金Bを心材として、中間材+ろう材の2層クラッドアルミニウム合金板を作る。
【0109】
次に、この2層クラッドアルミニウム合金板を、第二の双ロール1、4(ロール1は共通)において、犠牲陽極材A側を引き続き一方のロール1表面に接触させる。これとともに、他方のロール4表面に、心材合金Bよりも低融点のろう材合金溶湯を第三の合金溶湯Cとして供給して、心材合金Bの凝固殻B2と接触させ、2層クラッドアルミニウム合金板に、更にろう材合金Cを接合して一体化させ、3層の熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートを製造する。
【0110】
(ブレージングシート用アルミニウム合金)
以下、ブレージングシート用アルミニウム合金の好ましい態様や組成につき説明する。ブレージングシートの内、心材は、好ましい組成を後述するJIS3000系アルミニウム合金からなる。ブレージングシートとしては、この心材の内側である冷媒に常時触れている側には、後述する犠牲防食材(犠材、内張材)として、例えば、Al−Zn組成のJIS7000系などのアルミニウム合金がクラッドされる。また、ブレージングシートとしては、例えば、Al−Si組成のJIS4000系などのアルミニウム合金ろう材がクラッドされる。
【0111】
ブレージングシートの場合、例えば心材アルミニウム合金板の板厚が0.2mmの場合、ろう材、犠牲防食材あるいは中間材などの厚さは通常20〜30μm程度の厚みとする。しかし、その被覆率は、使われる熱交部材の板厚(用途の仕様)によって異なり、これらの値に限定するものではない。
【0112】
このようなブレージングシートは、コルゲート加工を行ったフィン等の他のアルミニウム合金部材とともに、ブレージングや溶接により一体に組み立てられている。ブレージング工法としては、フラックスブレージング法、非腐食性のフラックスを用いたノコロックブレージング法等が行われ、600℃付近の温度に加熱してろう付けされる。
【0113】
(心材合金)
心材アルミニウム合金は、自動車ラジエータの要となり、薄肉化されても、疲労特性などに優れることが必要となる。また、チューブ材およびヘッダー材などの熱交換器用部材として、成形性、ろう付け性あるいは溶接性、強度、耐食性などの諸特性が要求される。
【0114】
このため、本発明に係る心材アルミニウム合金は、JIS3000系アルミニウム合金の中でも、質量%で、Mn:0.2〜4.0%を含有するとともに、Si:0〜1.5%、Cu:0〜1.5%、Mg:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Fe:0〜2.0%を各々選択的に含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金組成とすることが好ましい。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。ここで、心材アルミニウム合金は、更に、質量%で、Cr:0.03〜0.3%、Zn:0.2〜1.0%、Zr:0.03〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有しても良い。
【0115】
(ろう材合金)
心材Al合金板にクラッドされるろう材合金は、従来から汎用されているJIS4043、4045、4047などの4000系のAl−Si系合金ろう材など公知のろう材Al合金が使用できる。より具体的には、Si:6〜15%を含有するとともに、Zn:0〜10%、Mg:0〜2.0%を各々選択的に含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金組成とすることが好ましい。
【0116】
(犠牲防食材)
心材Al合金板にクラッドされる犠牲防食材合金は、従来から汎用されているAl−1質量%Zn組成のJIS7072などの7000系アルミニウム合金等、Znを含む公知の犠牲防食材Al合金が使用できる。より具体的には、Si:0〜1.5%、Mn:0〜4.0%、Mg:0〜4.0%、Ni:0〜2.0%、Fe:0〜2.0%、Zn:0〜10%などを、それぞれ選択的に含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金組成とすることが好ましい。
【実施例】
【0117】
以下に本発明の実施例を説明する。2層または3層構造のアルミニウム合金ブレージングシートを、双ロール連続鋳造法により製造し、各合金層の接合性(密着性)を評価した。
【0118】
表1に示すアルミニウム合金組成および融点の、心材、ろう材、犠牲陽極材、中間材を各々選択的に積層して、表2に示す2層または3層構造のアルミニウム合金ブレージングシートを、表3に示す鋳造条件で製造した。
【0119】
この双ロール連続鋳造法では、前記図4、6、8、9の連続鋳造機であって、内部に水冷冷却手段を設けた銅製鋳型ロールを用いて行った。そして、表1に示す通り、融点が犠牲陽極材=中間材≧心材≧ろう材の関係である、融点の異なるこれら各アルミニウム合金溶湯を、第一の双ロールでは(表2に示す通り)低融点側合金Aと高融点側合金Bとして積層して、2層構造または次の3層構造製造用のアルミニウム合金ブレージングシートを製造した。また、この3層構造製造用の(2層構造の)アルミニウム合金ブレージングシートを引き続き、第二の双ロールに供給するとともに、表2に示す通り、前記合金A、Bのいずれかをこの第二の双ロールに接触しない上側の高融点側合金固相として、第三の低融点側合金Cと積層し、3層構造のアルミニウム合金ブレージングシートを製造した。
【0120】
この際、表3に示す通り、第一の双ロールでの低融点側合金Aの各注湯温度を高融点側合金Bの液相線温度との関係で、また、第二の双ロールでの第三の低融点側合金Cの各注湯温度を第二の双ロールに接触しない上側の高融点側固相合金(合金A、Bのいずれか)の液相線温度との関係で、種々変化させた。
【0121】
ここで、本発明で規定している、高融点側合金Bの凝固殻B1と接触させる際の低融点側のアルミニウム合金溶湯A、Cの各温度は、前記図4、6、8、9の双ロール連続鋳造機では、タンディッシュへの注湯時の温度と殆ど変わらない(下がらない)。このために、表3では、高融点側合金Bの凝固殻B1と接触させる際の低融点側のアルミニウム合金溶湯A、Cの各温度を、タンディッシュへのアルミニウム合金溶湯A、Cの注湯温度とした。実際には、高融点側合金Bの凝固殻B1との接触時の温度よりも、タンディッシュへの注湯時の温度の方が低融点側のアルミニウム合金溶湯A、Cの各温度は制御、管理しやすい。したがって、低融点側のアルミニウム合金溶湯A、Cの各温度が、タンディッシュへの注湯時と、高融点側合金Bの凝固殻B1との接触時とで、殆ど変わらないようであれば、タンディッシュへの注湯時の温度で、高融点側合金Bの凝固殻B1との接触時の温度を代用しても良い。逆に、設備や操業条件によって、低融点側のアルミニウム合金溶湯A、Cの各温度が、タンディッシュへの注湯時と、高融点側合金Bの凝固殻B1との接触時とで、大きく変わるようであれば、タンディッシュへの注湯時の温度ではなく、高融点側合金Bの凝固殻B1との接触時の温度で制御する。
【0122】
共通の双ロール連続鋳造条件として、下ロール:φ1500mm、上ロール:φ250mmとし、ロール周速20m/minとした。また、ブレージングシートとしても、共通して、板幅:300mm、2層構造の場合は板厚3mm、3層構造の場合は板厚5mmとした。ここで、試験は、上記各図4、6、8、9のように、双ロールに供給される高融点側合金溶湯Bが、低融点側の金属溶湯Aおよび凝固殻A1に接触しないように、双ロールのキス点X近傍に至るまでのロール間に延在する、耐火物製の仕切り板(遮蔽板)15を設けて行った。
【0123】
ブレージングシートの各合金層の接合性(密着性)評価は、ブレージングシートから切り出した試験片(幅20mm×長さ100mm)の、試験片の一端を固定した上で、他端を左右に45°づつ繰り返し曲げる、繰り返し曲げにより行った。そして試験片に亀裂が発生するまでの曲げ(可能)回数を計測し、この曲げ回数が20回以上を○、20回未満、5回以上を△、4回以下を×として評価した。ここで20回以上の曲げ回数のものが、自動車の実用的なラジエータ用アルミニウム合金ブレージングシートの接合性を満たす。
【0124】
また、この繰り返し曲げにより亀裂が発生した試験片の亀裂破面部断面の10倍の顕微鏡による観察調査により、接合性(密着性)を評価した。即ち、互いの合金の界面が接合してかつ明瞭であるものを○、接合はしているものの界面が不明瞭であるものを△、界面は明瞭であるが隙間(空間)が存在するものを×として評価した。
【0125】
更に、製造したブレージングシートを1mmの厚さに冷間圧延後、500℃×1時間溶体化処理した後の、界面のフクレの有無でも接合強度を評価した。仮に、界面に細かい隙間(空間)が存在する場合には、この促進試験によって、界面の隙間の空気が膨張して、界面のフクレとなって目視可能となる。
【0126】
表3から明らかな通り、本発明条件内で製造された発明例1から7は、第1双ロールのキス点近傍において、低融点側Aのアルミニウム合金溶湯およびその凝固殻とを、この低融点側Aの溶湯温度(注湯温度)を、高融点側Bのアルミニウム合金の(表2の第1双ロールの高融点側合金の)液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、高融点側Bの溶湯の凝固殻と接触させている。また、3層の場合には、第2の双ロールキス点近傍において、3層目の低融点側Cのアルミニウム合金溶湯温度を、表2の第2双ロールの高融点側アルミニウム合金AまたはB(ロールと接触していない側の合金)の液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、低融点側Cの溶湯および凝固殻とを、前記高融点側合金の凝固殻と接触させている。この結果、2層または3層構造のアルミニウム合金ブレージングシートにおいて、繰り返し曲げ性に優れ、接合性が優れている。また、界面が接合してかつ明瞭で、かつフクレもなく、この接合性の高さを裏付けている。
【0127】
一方、低融点側Aのアルミニウム合金溶湯温度(注湯温度)が低すぎる、あるいは高すぎるなどして、本発明条件外で製造された比較例8から15は、上記発明例に比して、繰り返し曲げ性に劣り、接合性が劣っている。また、界面が不明瞭か、フクレが発生しており、この接合性の低さを裏付けている。
【0128】
したがって、以上の実施例から、本発明各要件あるいは好ましい条件の、接合強を高めるための臨界的な意義が裏付けられる。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0132】
以上説明したように、本発明によれば、アルミニウム合金溶湯からクラッドアルミニウム合金板を製造する双ロール連続鋳造方法において、互いのアルミニウム合金の接合強度(密着性)が高い、ブレージングシートなどのクラッドアルミニウム合金板を比較的安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明双ロール式連続鋳造方法(合わせ鋳造)の原理を示す説明図である。
【図2】本発明双ロール式連続鋳造方法(合わせ鋳造)の一実施態様を示す説明図である。
【図3】本発明双ロール式連続鋳造方法の他の態様を示す説明図である。
【図4】本発明双ロール式連続鋳造方法の他の態様を示す説明図である。
【図5】本発明双ロール式連続鋳造方法の他の態様を示す説明図である。
【図6】本発明双ロール式連続鋳造方法の他の態様を示す説明図である。
【図7】本発明双ロール式連続鋳造方法の他の態様を示す説明図である。
【図8】本発明双ロール式連続鋳造方法の他の態様を示す説明図である。
【図9】本発明双ロール式連続鋳造方法の他の態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【0134】
1、2、3、4、5:双ロール、X:双ロールキス点、A、B、C、D:アルミニウム合金溶湯(液相)、A1、B1、C1、D1:アルミニウム合金凝固殻(固相)、A2、B2、C2、D2:アルミニウム合金凝固殻(固相)、6、7、8:クラッドアルミニウム合金鋳造板、10、11:タンディッシュ、12、13:給湯用ノズル(鍋)、14:バネ、15、16、19:遮蔽板、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の双ロールを用いた連続鋳造によって、互いに融点の異なるアルミニウム合金同士を接合して一体化させたクラッドアルミニウム合金板を製造する方法であって、前記双ロールの各ロール表面に、融点の異なるアルミニウム合金溶湯を各々別個に供給して、各ロール表面にて各アルミニウム合金溶湯の凝固を開始させるとともに、前記双ロールのキス点近傍に至るまでに、高融点側のアルミニウム合金溶湯の凝固殻形成を予め完了させて、前記キス点近傍において、供給された高融点側のアルミニウム合金溶湯が、低融点側のアルミニウム合金溶湯およびその凝固殻に接触しないようにするとともに、低融点側のアルミニウム合金溶湯およびその凝固殻とを、低融点側のアルミニウム合金溶湯温度を、高融点側のアルミニウム合金液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、前記高融点側のアルミニウム合金溶湯の凝固殻と接触させ、互いに融点の異なるアルミニウム合金同士を接合して一体化させ、2層のアルミニウム合金からなるクラッドアルミニウム合金板を製造することを特徴とするクラッドアルミニウム合金板の製造方法。
【請求項2】
前記クラッドアルミニウム合金板の製造方法において、前記2層クラッドアルミニウム合金板を更に第二の一対の双ロール間に導入し、この2層クラッドアルミニウム合金板を一方のロール表面に接触させるとともに、他方のロール表面に、この2層クラッドアルミニウム合金板のロールと接触していない積層アルミニウム合金よりも低融点の第三のアルミニウム合金溶湯を供給して、このロール表面にて前記第三のアルミニウム合金溶湯の凝固を開始させるとともに、第二の双ロールキス点近傍において、この第三のアルミニウム合金溶湯温度を、前記2層クラッドアルミニウム合金板のロールと接触していない積層アルミニウム合金の液相線温度以上で、かつ、この液相線温度+100℃以下の温度として、このアルミニウム合金溶湯溶湯および凝固殻とを、前記2層クラッドアルミニウム合金板のロールと接触していない積層アルミニウム合金の凝固殻と接触させ、前記2層クラッドアルミニウム合金板に、更に第三のアルミニウム合金を接合して一体化させ、必要により、この工程を繰り返して、3層以上のアルミニウム合金からなるクラッドアルミニウム合金板を製造する請求項1に記載のクラッドアルミニウム合金板の製造方法。
【請求項3】
前記クラッドアルミニウム合金板の製造方法において、前記アルミニウム合金クラッド板が、心材に対してろう材、犠牲陽極材、中間材を各々選択的に積層した、2層あるいは3層構造の熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートであり、前記心材とろう材とを積層する場合には、高融点側合金を心材、低融点側合金をろう材と各々し、心材と犠牲陽極材とを積層する場合には、高融点側合金を犠牲陽極材、低融点側の合金を心材と各々し、心材と中間材とを積層する場合には、高融点側合金を中間材、低融点側合金を心材と各々し、ろう材と中間材とを積層する場合には、高融点側合金を中間材、低融点側合金をろう材と各々する、請求項1または2に記載のクラッドアルミニウム合金板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−125794(P2009−125794A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306172(P2007−306172)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(503420833)学校法人常翔学園 (62)
【Fターム(参考)】