説明

クランプ、分岐管継手、および血液回路

【課題】分岐配管を挟み潰した箇所から主配管側の位置に流体が滞留したとしても、この流体の滞留量を少なくすることができるクランプ、分岐管継手、および血液回路を提供する。
【解決手段】第1凸部32が形成された第1挟持部26と、第2凸部33が形成された第2挟持部27と、第1挟持部26および第2挟持部27に連なる連結部29と、第2挟持部27に形成されて第1挟持部26を係合可能な係合部30aとを備え、分岐管継手14の主管部21を第1凸部32と第2凸部33と連結部29との間で保持し、第2挟持部27のうち第2凸部33を挟んで連結部29とは反対側には分岐挿通口35を開設して分岐管継手14の分岐管部22を挿通し、第1挟持部26を係合部30aへ係合すると、第1凸部32と第2凸部33とが近接し、第1凸部32と第2凸部33とで分岐管部22のうち主管部21寄りの箇所を挟み潰して、分岐管部22の流体の流れを遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性チューブを挟持して、その部位における流体の流れを遮断するためのクランプ、そのクランプを備えた分岐管継手、及びこれらを備えた血液回路に関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析治療などに用いられる血液回路は、流体として血液を内部に流動させる流体用配管(例えば可撓性を有するチューブ)を備え、該流体用配管の途中に分岐管継手を接続して分岐配管を分岐し、該分岐配管を通して薬液を血液内に投与したり輸血や点滴を行ったりできるように構成されている。そして、分岐配管の途中にはクランプを備え、該クランプにより分岐配管を挟み潰して薬液投与、輸血、点滴を停止できるように構成されている。
【0003】
しかしながら、分岐配管のうちクランプにより挟み潰される箇所と分岐管継手との間には血液が滞留し易く、この滞留した血液が凝固して血栓を形成し易い。そこで、分岐管継手の分岐配管部側の接続ポートをクランプ内に臨ませ、分岐配管のうちクランプにより挟み潰される箇所を分岐管継手側に近づけたり(例えば、特許文献1および特許文献2参照)、あるいはクランプの代わりに三方活栓を利用して分岐配管を遮断したりして(例えば、特許文献3参照)、分岐管継手内および分岐配管内の血液の滞留量、ひいては血栓の形成量を少なく抑えようとすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3122020号公報
【特許文献2】実用新案登録第3123147号公報
【特許文献3】特許第3718396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1,2に記載のクランプおよび分岐管継手の構造では、クランプが分岐配管を挟み潰す箇所から分岐管継手の分岐基部までの距離が分岐配管の直径よりも十分に長く設定されており、分岐管継手内における流体の滞留量を少なくしているとは言い難い。また、上記特許文献3に記載の三方活栓では、構造が複雑になってしまい、血液回路などの流体供給系統の製造コストが増大する虞があり、好ましくない。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、分岐配管を挟み潰した箇所から主配管側の位置に流体が滞留したとしても、この流体の滞留量を少なくすることができるクランプ、分岐管継手、および血液回路を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、第1凸部が形成された一端部と、前記第1凸部と対向する第2凸部が形成された他端部と、前記一端部および前記他端部に連なる中間部と、前記他端部に形成されて前記一端部を係合可能な係合部と、を備え、前記中間部を撓ませて一端部を係合部へ係合すると、第1凸部と第2凸部とが近接し、第1凸部と第2凸部との間に挿通された可撓性チューブを挟持して、該可撓性チューブの挟持部位における流体の流れを遮断するクランプにおいて、
前記可撓性チューブのうち流体の本流路が形成される主配管を第1凸部と第2凸部と中間部との間で保持し、
前記一端部のうち第1凸部を挟んで中間部とは反対側、または他端部のうち第2凸部を挟んで中間部とは反対側には、可撓性チューブのうち主配管からT字状に分岐された分岐配管が挿通される分岐挿通口を開設し、
前記第1凸部と第2凸部とで分岐配管のうち主配管寄りの箇所を挟み潰すように構成されたことを特徴とするクランプである。
【0008】
請求項2に記載のものは、前記一端部または他端部のうち分岐挿通口が開設された箇所の側縁から分岐挿通口に亘ってスリット状の挿入開口を分岐配管の管径よりも狭い幅で開設し、分岐配管を一端部または他端部の側方から挿入開口へ通して分岐挿通口へ嵌合可能としたことを特徴とする請求項1に記載のクランプである。
【0009】
請求項3に記載のものは、前記挿入開口の縁部には複数の返し突起を突出端が分岐挿通口寄りに位置する状態で突設したことを特徴とする請求項2に記載のクランプである。
【0010】
請求項4に記載のものは、両端に一対の開口を開放した主管部と、該主管部からT字状に分岐した分岐管部とを備え、少なくとも分岐管部を可撓性部材により形成し、主管部内および分岐管部内に流体を流動可能とし、分岐管部をクランプにより挟み潰して分岐管部内の流体の流れを遮断可能とした分岐管継手であって、
前記クランプは、第1凸部が形成された一端部と、前記第1凸部と対向する第2凸部が形成された他端部と、前記一端部および前記他端部に連なる中間部と、前記他端部に形成されて前記一端部を係合可能な係合部と、を備え、
前記主管部を第1凸部と第2凸部と中間部との間で保持し、
前記一端部のうち第1凸部を挟んで中間部とは反対側、または他端部のうち第2凸部を挟んで中間部とは反対側には分岐挿通口を開設し、該分岐挿通口に前記分岐管部を挿通し、
前記中間部を撓ませて一端部を係合部へ係合すると、第1凸部と第2凸部とが近接し、第1凸部と第2凸部とで分岐管部のうち主管部寄りの箇所を挟み潰して、分岐管部の挟み潰し部位における流体の流れを遮断するように構成されたことを特徴とする分岐管継手である。
【0011】
請求項5に記載のものは、血液が流体として内部を流動する可撓性チューブを備えた血液回路であって、
前記可撓性チューブには、一端に動脈側穿刺針を接続するとともに、他端に静脈側穿刺針を接続した主配管を備え、該主配管の途中には分岐管継手を備えて分岐配管を分岐し、
前記分岐管継手は、両端に主配管を接続する主管部と、該主管部からT字状に分岐し、分岐配管を接続する分岐管部と、を備え、少なくとも分岐管部を可撓性部材により形成し、該分岐管部をクランプにより挟み潰して分岐管部内の流体の流れを遮断可能とし、
前記クランプは、第1凸部が形成された一端部と、前記第1凸部と対向する第2凸部が形成された他端部と、前記一端部および前記他端部に連なる中間部と、前記他端部に形成されて前記一端部を係合可能な係合部と、を備え、
前記主管部を第1凸部と第2凸部と中間部との間で保持し、
前記一端部のうち第1凸部を挟んで中間部とは反対側、または他端部のうち第2凸部を挟んで中間部とは反対側には分岐挿通口を開設し、該分岐挿通口に前記分岐管部を挿通し、
前記中間部を撓ませて一端部を係合部へ係合すると、第1凸部と第2凸部とが近接し、第1凸部と第2凸部とで分岐管部のうち主管部寄りの箇所を挟み潰して、分岐管部の挟み潰し部位における流体の流れを遮断するように構成されたことを特徴とする血液回路である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、クランプは、第1凸部が形成された一端部と、第1凸部と対向する第2凸部が形成された他端部と、一端部および他端部に連なる中間部と、他端部に形成されて一端部を係合可能な係合部と、を備え、主管部を第1凸部と第2凸部と中間部との間で保持し、一端部のうち第1凸部を挟んで中間部とは反対側、または他端部のうち第2凸部を挟んで中間部とは反対側には分岐挿通口を開設し、該分岐挿通口に分岐管部を挿通し、中間部を撓ませて一端部を係合部へ係合すると、第1凸部と第2凸部とが近接し、第1凸部と第2凸部とで分岐管部のうち主管部寄りの箇所を挟み潰して、分岐管部の挟み潰し部位における流体の流れを遮断するように構成されたので、分岐配管(分岐管部)内のうちクランプの挟持箇所よりも主配管側(主管部側)の位置に流体が滞留したとしても、この流体の滞留量を少なくすることができる。したがって、血液回路を構成する可撓性チューブの分岐部分にクランプを使用した場合には、滞留血液や残留空気の影響で分岐箇所に血栓が形成される不都合、さらには血栓が分岐箇所から脱落して血液回路を分岐箇所とは異なる箇所で閉塞してしまう不都合を十分に抑えることができる。また、簡単な構造で分岐配管における流体の滞留量を少なくすることを実現することができ、流体供給系統(血液回路)の製造コストが高くなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】血液回路の概略図である。
【図2】分岐管継手の概略図である。
【図3】クランプの説明図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図4】(a)は挿入開口を備えたクランプの説明図、(b)は挿入開口に返し突起を突設したクランプの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
人工透析治療等のように体外循環による血液浄化療法に使用する血液回路1は、図1に示すように、流体の一種である血液や薬液を内部に流動させる可撓性チューブ(流体用配管)2を備え、該可撓性チューブ2を流体の本流路(具体的には血液の循環流路)が形成される主配管(第1経路)3と、該主配管3から分岐した分岐配管(第2経路)4とから構成している。また、主配管3の一端には動脈側穿刺針6を接続し、他端には静脈側穿刺針7を接続し、主配管3の途中には、血液ポンプ8が当接されるポンプ当接チューブ9と、ドリップチャンバー10,11と、血液浄化器12とを配設している。さらに、ポンプ当接チューブ9よりも動脈側穿刺針6側(言い換えると主配管3の上流側)には分岐管継手14を備え、該分岐管継手14から分岐配管4を主管部3に略直交する方向へ分岐している。そして、分岐配管4の途中には輸液チャンバー15を配設し、分岐配管4の先端には輸液容器16を接続し、プライミング時に分岐配管4を介して主配管3へ生理食塩水を供給するとともに、場合によっては血液が主配管3内を循環中、輸液剤の注入または輸血を行い得る構成とされている。
【0015】
次に、分岐管継手14について説明する。
分岐管継手14は、図2に示すように、両端に一対の開口を開放した主管部21と、該主管部21から側方へT字状に分岐し、先端に開口を開放した分岐管部22と、主管部21と分岐管部22とを内側に保持する状態で装着されたクランプ(配管用クランプ)23とを備えて構成されており、主管部21と分岐管部22とを略直交させている。また、主管部21の開口には主配管3を接続して主管部21を主配管3の一部として機能させ、分岐管部22の先端開口には分岐配管4を接続して分岐管部22を分岐配管4の一部として機能させ、主管部21内および分岐管部22内に血液や薬液などの流体を流動可能としている。さらに、分岐管部22を可撓性部材(例えば塩化ビニル樹脂)により形成し、クランプ23により分岐管部22を挟み潰して分岐管部22内の流体の流れを遮断可能としている。そして、主管部21の管径を分岐管部22の管径よりも大きく設定して主管部21と分岐管部22との間に段差部24を形成し、該段差部24にクランプ23の一部を係合可能としている。
【0016】
クランプ23は、弾性変形可能な材質、例えばポリプロピレンで形成された部材であり、図3(a)〜(c)に示すように、互いに対向する状態で配置された2つの長尺な挟持部(第1挟持部26(本発明における一端部に相当)、第2挟持部27(本発明における他端部に相当))と、両挟持部26,27の間に設定された配管保持空間部28と、第1挟持部26および第2挟持部27に連なり、各挟持部26,27の長手方向の一端同士(図3(b)中、左端同士)を連結する連結部29(本発明における中間部に相当)と、各挟持部26,27の長手方向の他端同士(図3(b)中、右端同士)を係合可能な係合機構30とを備えて構成されている。具体的には、第2挟持部27の他端(右端)を第1挟持部26の他端側(右端側)へ向けて緩やかに折り返し、この折り返し部(湾曲部)のうち第1挟持部26側に位置する先端には係合機構30の一部となる係合部(係合爪)30aを形成し、第1挟持部26の他端には、係合機構30の一部となる被係合片30bを形成している。そして、連結部29を撓ませて第1挟持部26と第2挟持部27とを近づけ、被係合片30b(第1挟持部26)を係合部30aへ係合して第1挟持部26の他端と第2挟持部27の他端とを係合可能としている。
【0017】
また、第1挟持部26には第1凸部32を配管保持空間部28側(クランプ23の内側)へ向けて突設し、第2挟持部27には、第1凸部32に対向する第2凸部33を配管保持空間部28側(クランプ23の内側)へ向けて突設し、各凸部32,33の先端を分岐管継手14の段差部24へ分岐管部22の直径方向に横断する状態で係合可能としている。そして、第1挟持部26と第2挟持部27とを近づけて被係合片30bと係合部30aとを係合した状態(図3(b)中、二点鎖線で示す挟持状態)では、両凸部32,33間の距離を分岐管部22の肉厚寸法の2倍よりも狭い間隔に設定し、被係合片30bを係合部30aから外して第1挟持部26と第2挟持部27とを離した状態(図3(b)中、実線で示す開放状態)では、両凸部32,33間の距離を分岐管部22の管径よりも十分に広い間隔、言い換えると、分岐管部22が潰れずに通液可能な常態を維持できる間隔に設定している。
【0018】
さらに、配管保持空間部28のうち凸部32,33よりも連結部29寄り(図3(b)中、左寄り)の位置には、配管保持空間部28を間に挟んで互いに連通する2つの主挿通口34を挟持部26,27の長手方向と交差する方向(具体的には、挟持部26,27の長手方向と直交する方向、且つ挟持部26,27の幅方向に沿う方向)へ向けて開放し、分岐管継手14の主管部21を両主挿通口34へ通して配管保持空間部28(詳しくは配管保持空間部28の連結部29側)へ挟持部26,27の長手方向と直交する姿勢で貫通させている。また、第2挟持部27のうち第2凸部33を挟んで連結部29とは反対側(第2凸部33よりも係合部30a寄り)に位置する折り返し部、言い換えると、配管保持空間部28の係合機構30側を覆う折り返し部には、分岐管部22を挿通可能な分岐挿通口35を開放し、分岐管部22を分岐挿通口35へ挿通して配管保持空間部28の外方(クランプ23の外方)へ延出可能としている。そして、分岐挿通口35の開口縁により分岐管部22、さらには分岐管継手14が第2挟持部27から離れることを規制して、第2凸部33を分岐管継手14の段差部24へ常時係合するとともに、第2凸部33と連結部29との間に主管部21を常時嵌合して保持している。
【0019】
このような構成のクランプ23を分岐管継手14に装着し、連結部29を撓ませて係合機構30により両挟持部26,27の他端同士を係合(言い換えると第1挟持部26を係合部30aへ係合)してクランプ23を挟持状態へ変換すると、第1凸部32と連結部29との間にも主管部21を嵌合し、該主管部21を第1凸部32と第2凸部33と連結部29とで保持する。さらに、第1凸部32と第2凸部33とが近接し、両凸部32,33で分岐管部22を横断する状態で挟み潰して可撓性チューブ2の一部である分岐配管4内の流体の流れ、具体的には輸液容器16から流下してくる輸液剤や輸血用血液の流れを分岐管部22の挟み潰し位置で遮断して、輸液剤や輸血用血液が主管部21、ひいては主配管3へ流入することを阻止する。このとき、クランプ23は、主管部21を配管保持空間部28内に内包した状態で、分岐管部22のうち主管部21寄り(直近)の箇所を挟み潰すので、分岐配管4(分岐管部22)内のうちクランプ23の挟持箇所よりも主配管3側(主管部21側)の位置に血液(液体)などの流体が滞留したとしても、この流体の滞留量を、主管部相当部分を内包していない従来品に比較して少なくすることができる。したがって、血液回路1を構成する可撓性チューブ2の分岐部分にクランプ23を使用した場合には、滞留血液の影響で分岐箇所に血栓が形成される不都合、さらには血栓が分岐箇所から脱落して血液回路1を分岐箇所とは異なる箇所で閉塞してしまう不都合を十分に抑えることができる。また、簡単な構造で分岐配管4における流体の滞留量を少なくすることを実現することができ、流体が安定して流動可能な流体供給系統(血液回路1)の製造コストが高くなることを抑制することができる。
【0020】
さらに、第2凸部33を分岐管継手14の段差部24へ常時係合するとともに、第2凸部33と連結部29との間に主管部21を常時嵌合しているので、クランプ23が開放状態であったとしても、第2凸部33が分岐管部22の根元となる主管部21寄りの箇所から分岐管部22の先端寄りへずれてしまうことがない。したがって、クランプ23が不用意に分岐管部22の先端側を挟持してしまう不都合を阻止することができる。
【0021】
ところで、上記実施形態では、分岐挿通口35に分岐管部22を配管保持空間部28側から通し、この状態で主管部21を第2凸部33と連結部29との間へ押し入れて、配管保持空間部28内に分岐管継手14を保持(収容)する必要があったが、本発明はこれに限定されない。例えば、図4(a)に示す第2実施形態のクランプ23では、分岐挿通口35が開設された第2挟持部27の側縁から分岐挿通口35に亘ってスリット状の挿入開口37を開設し、該挿入開口37の開口幅を第2挟持部27の側縁から分岐挿通口35側ヘ向かうに連れて次第に縮幅している。さらに、分岐挿通口35側の幅寸法を分岐管部22の管径よりも狭く、且つ分岐管部22の肉厚寸法の2倍よりも広く設定している。
【0022】
このような挿入開口37を備えたクランプ23を分岐管継手14へ装着するには、まず、クランプ23を開放状態にしておき、分岐管継手14の主管部21を被係合片30bと係合部30aとの間へ通し、さらには第2凸部33と連結部29との間へ押し入れて主挿通口34へ挿通する。主管部21を配管保持空間部28内に保持したならば、分岐管継手14を主管部21の中心軸に沿ってスライドしたり主管部21の中心軸を中心にして回動したりして分岐管部22を第2挟持部27の側方、詳しくは第2挟持部27のうち挿入開口37側(図4(a)中、左側方)へ位置させて挿入開口37へ臨ませる。そして、分岐管部22を挿入開口37の開口幅方向に沿って押し潰し、この状態で分岐管継手14を主管部21の中心軸に沿ってスライドし、分岐管部22を第2挟持部27の側方から挿入開口37へ通して分岐挿通口35へ嵌合する。したがって、クランプ23の装着手順の自由度を増すことができる。また、分岐管継手14の分岐管部22に予め分岐配管4を接続していた場合であっても、クランプ23を容易に装着することができる。また、挿入開口37を通って分岐挿通口35へ嵌合された分岐管部22は、復元力によって元の形状へ復元し、挿入開口37へ戻らなくなる。したがって、分岐管部22が不用意にクランプ23から外れる不都合、ひいてはクランプ23が分岐管継手14から脱落する不都合を阻止することができる。なお、例えば、血液回路1を廃棄する時にクランプ23を分岐管継手14から外す場合には、分岐管部22を挿入開口37へ通過可能な程度まで十分に押し潰し、この状態で挿入開口37へ通してクランプ23の側方へ外す。分岐管部22をクランプ23の側方へ外したならば、主管部21を連結部29から離して被係合片30bと係合部30aとの間へ通して配管保持空間部28から外す。
【0023】
また、図4(b)に示すように、挿入開口37の縁部に複数の返し突起38を鋸歯状に突設し、各返し突起38の突出端が分岐挿通口35寄りに位置する状態に設定すれば、クランプ23を分岐管継手14へ装着する際に、分岐管部22を挿入開口37へ通す作業を一時中断したとしても、返し突起38が分岐管部22を引っ掛けることができ、分岐管部22が挿入開口37を逆戻りしてクランプ23の外方へ外れてしまうことがない。
【0024】
ところで、上記実施形態では、第2挟持部27に分岐挿通口35や挿入開口37を開設したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1挟持部26のうち第1凸部32を挟んで連結部29とは反対側(第1凸部32よりも被係止片30b側)に位置する箇所を第2挟持部27側へ湾曲し、この湾曲部分に分岐挿通口や挿通開口を開設してもよい。さらに、分岐管継手14の分岐管部22のみを可撓性部材で形成したが、本発明はこれに限定されない。要は、少なくとも分岐管部22を可撓性部材で形成して、クランプ23で押し潰すことができる構造であればよく、例えば、分岐管部22とともに主管部21を可撓性部材で形成してもよい。また、主管部21を直状に形成して分岐管継手14をT字状に設定したが、本発明はこれに限定されず、主管部を屈曲させたり湾曲させたりして分岐管継手をY字状に設定してもよい。さらに、上記実施形態においては、クランプ23を分岐管継手14に装着したが、本発明はこれに限定されない。例えば、分岐管継手を用いずに主配管から分岐配管を分岐した流体用配管(例えば、主配管と分岐配管とが一体成型された流体用配管)において、この分岐箇所に本発明のクランプ23を装着してもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、主管部(主配管)を第1凸部32と第2凸部33と連結部(中間部)29とで保持したが、本発明はこれに限定されない。要は、主管部(主配管)を第1凸部と第2凸部と中間部との間に保持していればよく、例えば、クランプ23の両側部に側板を設け、該側板と中間部とで主管部(主配管)を保持してもよい。なお、側板としては、クランプの一端部を係合部へ案内するためのガイド板や、主管部(主配管)の位置決め用(振れ止め用)の板であってもよいし、あるいは主管部(主配管)を保持する機能のみを備えた板であってもよい。さらには、主管部(主配管)を中間部に接着固定して保持してもよい。
【0026】
そして、上記実施形態では、クランプ23および該クランプ23が装着された分岐管継手14を血液回路1に適用したが、本発明はこれに限定されない。要は、内部に気体や液体などの流体を流動可能な流体用配管を備え、流体用配管には主配管と該主配管から分岐された分岐配管とを含んでいれば、どのような構成の流体供給系統に適用してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 血液回路
2 可撓性チューブ
3 主配管
4 分岐配管
6 動脈側穿刺針
7 静脈側穿刺針
8 血液ポンプ
9 ポンプ当接チューブ
10,11 ドリップチャンバー
12 血液浄化器
14 分岐管継手
15 輸液チャンバー
16 輸液容器
21 主管部
22 分岐管部
23 クランプ
24 段差部
26 第1挟持部
27 第2挟持部
28 配管保持空間部
29 連結部
30 係合機構
30a 係合部
30b 被係合片
32 第1凸部
33 第2凸部
34 主挿通口
35 分岐挿通口
37 挿入開口
38 返し突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1凸部が形成された一端部と、前記第1凸部と対向する第2凸部が形成された他端部と、前記一端部および前記他端部に連なる中間部と、前記他端部に形成されて前記一端部を係合可能な係合部と、を備え、前記中間部を撓ませて一端部を係合部へ係合すると、第1凸部と第2凸部とが近接し、第1凸部と第2凸部との間に挿通された可撓性チューブを挟持して、該可撓性チューブの挟持部位における流体の流れを遮断するクランプにおいて、
前記可撓性チューブのうち流体の本流路が形成される主配管を第1凸部と第2凸部と中間部との間で保持し、
前記一端部のうち第1凸部を挟んで中間部とは反対側、または他端部のうち第2凸部を挟んで中間部とは反対側には、可撓性チューブのうち主配管からT字状に分岐された分岐配管が挿通される分岐挿通口を開設し、
前記第1凸部と第2凸部とで分岐配管のうち主配管寄りの箇所を挟み潰すように構成されたことを特徴とするクランプ。
【請求項2】
前記一端部または他端部のうち分岐挿通口が開設された箇所の側縁から分岐挿通口に亘ってスリット状の挿入開口を分岐配管の管径よりも狭い幅で開設し、分岐配管を一端部または他端部の側方から挿入開口へ通して分岐挿通口へ嵌合可能としたことを特徴とする請求項1に記載のクランプ。
【請求項3】
前記挿入開口の縁部には複数の返し突起を突出端が分岐挿通口寄りに位置する状態で突設したことを特徴とする請求項2に記載のクランプ。
【請求項4】
両端に一対の開口を開放した主管部と、該主管部からT字状に分岐した分岐管部とを備え、少なくとも分岐管部を可撓性部材により形成し、主管部内および分岐管部内に流体を流動可能とし、分岐管部をクランプにより挟み潰して分岐管部内の流体の流れを遮断可能とした分岐管継手であって、
前記クランプは、第1凸部が形成された一端部と、前記第1凸部と対向する第2凸部が形成された他端部と、前記一端部および前記他端部に連なる中間部と、前記他端部に形成されて前記一端部を係合可能な係合部と、を備え、
前記主管部を第1凸部と第2凸部と中間部との間で保持し、
前記一端部のうち第1凸部を挟んで中間部とは反対側、または他端部のうち第2凸部を挟んで中間部とは反対側には分岐挿通口を開設し、該分岐挿通口に前記分岐管部を挿通し、
前記中間部を撓ませて一端部を係合部へ係合すると、第1凸部と第2凸部とが近接し、第1凸部と第2凸部とで分岐管部のうち主管部寄りの箇所を挟み潰して、分岐管部の挟み潰し部位における流体の流れを遮断するように構成されたことを特徴とする分岐管継手。
【請求項5】
血液が流体として内部を流動する可撓性チューブを備えた血液回路であって、
前記可撓性チューブには、一端に動脈側穿刺針を接続するとともに、他端に静脈側穿刺針を接続した主配管を備え、該主配管の途中には分岐管継手を備えて分岐配管を分岐し、
前記分岐管継手は、両端に主配管を接続する主管部と、該主管部からT字状に分岐し、分岐配管を接続する分岐管部と、を備え、少なくとも分岐管部を可撓性部材により形成し、該分岐管部をクランプにより挟み潰して分岐管部内の流体の流れを遮断可能とし、
前記クランプは、第1凸部が形成された一端部と、前記第1凸部と対向する第2凸部が形成された他端部と、前記一端部および前記他端部に連なる中間部と、前記他端部に形成されて前記一端部を係合可能な係合部と、を備え、
前記主管部を第1凸部と第2凸部と中間部との間で保持し、
前記一端部のうち第1凸部を挟んで中間部とは反対側、または他端部のうち第2凸部を挟んで中間部とは反対側には分岐挿通口を開設し、該分岐挿通口に前記分岐管部を挿通し、
前記中間部を撓ませて一端部を係合部へ係合すると、第1凸部と第2凸部とが近接し、第1凸部と第2凸部とで分岐管部のうち主管部寄りの箇所を挟み潰して、分岐管部の挟み潰し部位における流体の流れを遮断するように構成されたことを特徴とする血液回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−279495(P2010−279495A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134272(P2009−134272)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】