説明

クリップを用いる織機のためのクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置

【課題】クリップを用いる織機のためのクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置を提供する。
【解決手段】クリップ(5,6)の往復直線運動が、織機サイクルに関してのそれぞれの駆動ギヤ(9,10)の交互の同期回転により得られる。クリップ保持バンドは駆動ギヤのまわりに部分的に巻かれ、駆動ギヤは位置制御サーボ機構により駆動される。各サーボ機構は、それぞれの保持クリップ(5)及びドローオフクリップ(6)の駆動モータ(13,14)と、基準及び位相信号装置(17)からの同期信号を受ける作動装置(15,16)とを包含する。基準及び位相信号装置は、クローズドリング制御装置を介して、関連するモータ(13,14)の角度位置を制御するのに適当である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップを用いる織機のためのクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、クリップを用いる織機であって、一般には機械機関から成るクリップ駆動装置がサーボモータにより実施され、各サーボモータがこのサーボモータに割り当てたクリップの特定の運動ダイアグラムにゆだねた制御装置により駆動されるようにした織機に関する。
【背景技術】
【0003】
知られているように、よこ糸とたて糸とを織り交ぜた布を製造する機械は、一般的に、一連の機構、すなわち、たて糸を供給する機構、これらのたて糸の引張りを制御する機構、よこ糸を挿入する機構(よこ糸はたて糸に横方向に織り交ぜる)、オサ打ち機構(布を形成するために、オサによりよこ糸を連続して織前に押しつける)、及び布のドラッグイン機構(布を特定の割合で前方へ引張り、最終的には布を織機の外側にまでローリングする)を包含する。
【0004】
上述した織機によれば、よこ糸の挿入を制御する要素は一対のクリップから成り、これらのクリップはバンド又はロッドの端に取り付けられ、よこ糸をたて糸間に挿入して引き出すのに適当であり、それぞれのギヤホイールにより駆動される。これらのギヤホイールは、クリップの運動を生じせしめる。
【0005】
これらの一対のクリップは、一般には、それぞれのバンド又はロッドに一体に取り付けている保持クリップ及びドローオフクリップから成る。これらの保持クリップ及びドローオフクリップは、織機の側部からスタートし、直線運動でもって織機の中央部に達し、ここで、保持クリップはよこ糸の挿入ストランドをドローオフクリップに移す。その後、ドローオフクリップは保持クリップと一緒にたて糸口の外側のスタート位置に戻される。
【0006】
これらのクリップの上述した交互運動は、一般には、種々の型式の機構、例えば、球状の接続ロッド、コンジュゲートディスクデスモドロミックカム、エルボシャフトにより駆動されるスクリューシャフトにより駆動されるホイールにより、各クリップに与えられる。各クリップの走行範囲は製造される布の幅により設定され、したがってこの製造される布の幅にしたがって、適当な走行調節装置を備えなければならない。
【0007】
クリップの機械駆動ギヤは、織機の他の機構に剛に接続され、よこ糸挿入サイクルの必要にしたがって位相調節される。
【0008】
この位相調節は、計画セットアップ中に設定され、織機を特徴づける技術的要求にしたがって最適にされる。この位相調節は、しかし、織機が停止されているときを除いて、織機の作動中に非常に制限した範囲内に変えることはできない。
【0009】
他の技術的解決が、クリップの電気コントローラの使用に基づいて提案されている。これらの電気コントローラはリニアモータから成り、これらのリニアモータはモータの可動(能動)部品となるクリップ保持バンド又はロッドを必要とする。したがって、これらのリニアモータは複雑であり、これらのモータがしなければならない迅速な運動のためには不適当な質量を有する。
【0010】
他の場合においては、回転モータが使用されている。これらの回転モータは、クリップに対称で正反対の運動を与えるために、単一の制御装置によりテープタンジェントギヤを駆動せしめる。しかしながら、この場合においても、また、種々の欠点があり、第1に、これらの駆動回転モータは現代の高速織機により要求される、各クリップの独立した最適な運動を可能にすることができない欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、上述した欠点を除去し、より詳細には、クリップを用いる織機のためのクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置であって、各クリップの運動法則及び位相調整を他のクリップの運動と無関係に変えることができ、したがってこれらの広い範囲の異なる機能要求に適応させることができる駆動装置を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、クリップを用いる織機のためのクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置であって、交互運動に駆動せしめるクリップの質量を顕著に減少せしめることができ、したがって引き起こされる慣性を最小にすることができる駆動装置を提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、クリップを用いる織機のためのクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置であって、運動チェーンに存在する隙間及び弾性変形を最小にすることができ、したがってクリップを織機オサの最大幅の大きさにまで駆動させることを容易にすることができる駆動装置を提供することにある。
【0014】
本発明の更に他の目的は、クリップを用いる織機のためのクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置であって、エネルギーの回収をなす衝撃交互運動を行う駆動ギヤを使用することにより、迅速かつ容易な調節を制御ターミナルから行うことができる駆動装置を提供することにある。
【0015】
本発明の更に他の目的は、クリップを用いる織機のためのクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置であって、製造することが簡単であると共にコンパクトであり、かつ複雑で高価な部品がなくて、公知技術よりも問題が少ない駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以上述べた目的は、請求項1による、クリップを用いる織機のためのクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置を製造することにより達成される。
【0017】
他の技術的特徴は、請求項2−8に記載されている。
【0018】
クリップを用いる織機のためのクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置の更に他の特徴及び利点は、例示的で非限定的な目的のために示されている下記の説明及び添付図面から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1及び図2を参照するに、1はクリップを用いる織機の入口におけるたて糸を総括的に示をし、2はよこ糸を総括的に示し、及び3は本発明にしたがってクリップを用いている織機の出口に形成される布を示す。
【0020】
また、4はたて糸ピッチを作る装置を示し、5は保持又は案内クリップを示し、6はドローオフクリップを示し、7及び8はそれぞれ右及び左バンドを示し、これらのバンドにはそれぞれのドローオフクリップ6及び保持クリップ5が取り付けられ、オサ11に隣接して滑動する。
【0021】
右バンド7はその駆動ギヤ9により駆動され、これに対し左バンド8はその駆動ギヤ10により駆動され、これらの両バンドはそれぞれの駆動ギヤのまわりに部分的に巻かれている。
【0022】
本発明によれば、クリップを用いる織機は、主駆動モータ12と、ドローオフクリップ6の駆動モータ13と、保持クリップ5の駆動モータ14と、モータ13及び14のそれぞれの作動装置15,16とを包含する。
【0023】
17はサイクル位相の基準及び信号装置を示し、18はクリップを用いる織機の全体のための電気制御ボックスを示し、19はたて糸1の供給及び制御装置を示し、及び20はモータ13及び14の作動装置15,16の制御ターミナル20を示す。
【0024】
本発明による、クリップを用いる織機及び関連するクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置の作動は、実質的に次のとおりである。
【0025】
たて糸1は制御装置19により供給されて前進し、ピッチ形成装置4はこれらのたて糸1を上又は下に位置させてたて糸口を形成せしめる。このたて糸口は、保持クリップ5及びドローオフクリップ6の交互の運動を通して横方向に挿入されるよこ糸にこれらのたて糸を織り交ぜることを可能にし、これにより布3を作る。
【0026】
クリップ5及び6はそれぞれバンド8及び7に組み付けられ、それから、これらのバンドがまわりに部分的に巻かれているギヤ9及び10によりこれらのバンドが駆動される。
【0027】
本発明によれば、クリップ5及び6の一直線の交互運動の制御は、織機サイクルに関してのそれぞれの駆動ギヤ9及び10の交互の同期した回転により行われ、これらの駆動ギヤはモータ13及び14により駆動され、これらのモータは位置制御装置を備えているそれぞれの作動装置15及び16に接続されている。
【0028】
これらの駆動ギヤ9,10及びサーボモータ13−15,14−16は織機の他の機関の同一の電気シャフトに接続されている。
【0029】
各サーボ制御装置13,14及び15,16は角度位置制御型式であり、それぞれの作動装置15,16を通して、基準及び位相信号装置17からの同期信号を受けるクローズドリングを備える。更に、各サーボ制御装置13,14及び15,16の機能モードは、エネルギーの回収をなす交互衝撃運動を有する。
【0030】
保持クリップ5及びドローオフクリップ6の運動法則は、したがって、製織方法の技術的要求により、及び種々の機械部品の走行及び加速の進行による動荷重から求める機械的機能の要求により予め設定される。
【0031】
この進行は、計画目的に対して応用自在及び順応自在な方法にすることができる適当なソフトウェアプログラムにより決定される。
【0032】
クリップ5及び6の運動のソフトウェアによるランニングは、また、適当なアルゴリズムを通して、運動位相を制御ターミナル20からの簡単な命令により、それ故迅速かつ容易に変えさせられることを可能にする。この可能性は、また、他の織機機関の運動に関してのクリップ5,6の運動の中断に加えて、織機の作動中のサイクル変化をプログラム化することを可能にする。
【0033】
最後に、一定の質量を有する他の機械的命令機関は、クリップ保持バンド7,8の駆動ギヤ9及び10と無関係に、直接の電気命令を通して排除することができ、したがって動荷重を相当に減少せしめ、一方、運動チェーン(連鎖)の排除による隙間の不存在は大きな幅のオサ11を有する機械を製造することを可能にする。
【0034】
上述した実施例と類似する、選択的な実施例によれば、クリップ5及び6の異なる調節可能な運動を得るために適当な2つの独立した制御装置は、種々の独立した命令を伝えるのに適当な単一の制御装置に代えることができる。より詳細には、保持クリップ5及びドローオフクリップ6のそれぞれの駆動モータ13及び14の作動装置15,16は、2つのモータ13及び14に対して独立した制御を伝えることができる単一の装置から成ることができる。
【0035】
本発明の対象である、クリップを用いる織機のためのクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置の特徴及びその関連する利点は、上述の説明から明らかになったであろう。
【0036】
より詳細には、これらの特徴及び利点を述べれば次のとおりである。
【0037】
− 複雑及び/又は高価な機械部品がなくて、問題を非常に少なくした簡単でコンパクトな構成;
− クリップ駆動ギヤの交互運動の質量の相当な減少及びそれ故最小にした惰性;
− クリップを広い範囲の異なる機能的要求に対応させるために、織機の他のクリップの運動法則及び位相と無関係に、各クリップの運動法則及び位相を変えることができること;
− ターミナルから調節を行うことができること、及びそれ故調節を特別に迅速及び容易に行うことができること;
− 運動チェーンの最小にした隙間及び織機のオサ幅の最大大きさまでのクリップの最適な駆動;
− エネルギーの回収をなす交互衝撃運動を行うサーボ命令機能の使用;
− 種々の位相及び機能的要求内で、織機の各部品の運動を最適にするようにした、各クリップの独立した制御ソフトウェア。
【0038】
最後に、多数の他の変形を上述した駆動装置に対して行うことができ、本発明の新規な原理内に含まれるすべの変形は本発明の概念に含まれることは明らかである。また、本発明の実際の実施例において、上述した部品の材料、形状及び寸法は要求にしたがって変えることができ、また他の技術的に等価な代替物に変えることができることも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の対象であるクリップ保持バンド又はロッドの駆動装置を備えている、クリップを用いる織機の概略正面図である。
【図2】本発明による、図1のクリップを用いる織機の上方からの概略平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップ(5,6)を用いる織機のためのクリップ保持バンド又はロッド(7,8)の駆動装置であって、前記クリップ(5,6)が前記クリップ保持バンド又はロッド(7,8)に組み付けられ、前記クリップ保持バンド又はロッド(7,8)がそれぞれの駆動ギヤ(9,10)により駆動されるものにおいて、前記クリップ(5,6)が織機サイクルに関しての前記駆動ギヤ(9,10)の交互の同期回転による往復直線運動にしたがって駆動され、前記駆動ギヤ(9,10)が、制御ターミナル(20)に接続した少なくともひとつの位置制御サーボ機構により、各モータ(13,14)に対しての独立した駆動命令でもって直接に駆動されることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の駆動装置において、前記モータ(13,14)が前記駆動ギヤ(9,10)に直接に接続され、前記クリップ保持バンド(7,8)が前記駆動ギヤ(9,10)のまわりに部分的に巻かれていることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1記載の駆動装置において、前記位置制御サーボ機構の作動が減速位相でエネルギーの回収をなす型式であることを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項1記載の駆動装置において、前記位置制御サーボ機構の各々が、それぞれの前記クリップ(5,6)の少なくともひとつの駆動モータ(13,14)と、位相信号装置(17)からの同期信号を受ける少なくともひとつの作動装置(15,16)とを包含し、前記位相信号装置(17)が、クローズドリング制御装置により、関連する前記駆動モータ(13,14)の角度位置を制御することができることを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項1記載の駆動装置において、前記位置制御サーボ機構の駆動モータが織機の他の機械機関と同じ電気シャフトに取り付けられていることを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項4記載の駆動装置において、前記サーボ機構(13,14及び15,16)の命令の機能モードが減速位相中にエネルギーの回収をなす交互衝撃運動を有することを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項1記載の駆動装置において、前記サーボ機構が2つの独立した命令を伝えることができる制御装置を包含することを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
請求項1記載の駆動装置において、前記クリップ(5,6)の各々の運動法則が、製織方法の技術的要求及びシステム全体の機械的な機能要求を満足せしめる特定のアルゴリズムにより決められていることを特徴とする駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−169711(P2006−169711A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−356304(P2005−356304)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(505296577)スミト ソシエタ ペル アチオニ − ウニペルソナーレ (5)
【氏名又は名称原語表記】SMIT S.P.A. − UNIPERSONALE
【住所又は居所原語表記】VIALE DELL′INDUSTRIA 135, SCHIO, VICENZA, IYALY
【Fターム(参考)】