説明

クリップ

【課題】クリップ内部への配線の進入防止を図ると共に、クリップのクリップ取付部材への取付けに際してクリップに仮止め機能を持たせることにより、その取付け作業の容易化を図る。
【解決手段】クリップ本体11は、樹脂製の外側クリップ本体12とこの内側に配設される金属製の内側クリップ本体30とが内外に重ね合わされて構成される。外側クリップ本体12のU字形状の開口両端部位置からは一体的に一対の係止爪14が内方に向けて延設して形成され、係止爪14の内方先端部はクリップ本体11が保持されるクリップ取付部材のリブが挿入されると拡開変形してそのバネ圧で当該リブに挟持されるようになっている。外側クリップ本体12の一対の係止爪14の内方先端部はクリップ取付部材が挿入される前の自由形態状態では接合する状態として配設されており、かつ、係止爪14の開口側奥部にはクリップ取付部材の仮止めのための空所24が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリップに関する。特に、車両のインストルメントパネルなどの樹脂部品に成形されたリブや鋼板ボデーの端部に形成されたフランジに取り付けてワイヤハーネスなどを所定の配線状態に保持するためのクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネス用のクリップについては、たとえば特開平11−55835号公報(特許文献1)に開示されているクリップが公知である。このクリップは、クリップ取付部材のリブに挟持状態で保持される部位であるクリップ本体と、該クリップ本体と一体的に形成されワイヤハーネス等の配線を支持することのできる支持部とから成り、クリップ本体の基本概略形状は開口を有するU字形状であり、外側の樹脂製のクリップ本体の内側に金属製の内側クリップが組み込まれて形成されている。そして、この金属製の内側クリップに形成されている一対の係止爪が、クリップ本体の開口部より内部に挿入されるクリップ取付部材のリブに挟持して係止し、それによってクリップ本体がクリップ取付部材に保持されるようになっている。
【0003】
図11に前記特許文献1に開示されているクリップとほほ同じ構成のクリップの正面図を示す。図11に示すとおり、クリップ本体50は全体形状としてU字状となるように結合された一対の脚片52と、これに連なりU字状の開口部から内側に延設された係止爪53と、平板状のハーネス支持部54とが樹脂により一体に成形された構成となっている。また、これらの脚片52の内側には金属製の内側クリップ56が組み込まれており、この内側クリップ56は、図11に示すように全体形状としてU字状となるように結合された一対の挟持片58を備えている。そして、挟持片58には、図12に示すように、それぞれ係止爪60が個々に切り起こされた状態で一体成形されており、係止爪60の先端部には、図12に示すように、櫛歯状の係止歯62がそれぞれ形成され、図13に示すように、互いの歯と溝が噛み合った状態で突合されている。
【特許文献1】特開平11−55835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたクリップは、ワイヤハーネスの外周にハーネス支持部54をテープなどで巻き付けることにより、ワイヤハーネスの所定箇所に複数個取り付けられた状態で車両メーカーに搬入されることが多い。特許文献1に開示された発明のクリップの更に従来技術として示されている旧タイプのクリップでは、内側クリップ56の係止爪60の先端に隙間があったため、このようなワイヤハーネスの搬送中などにおいてクリップ本体50の開口部64から脚片52の間に電線が噛み込むことがあり、係止爪60などによって電線の皮膜が傷つけられたり、極端な場合は断線の原因となっていた。これに対して、特許文献1に開示された発明では、係止爪60の先端部に形成された係止歯62が噛み合った状態で突合されているため、係止爪60に隙間が無く、クリップ内部に対する電線の進入を確実に防止することができ、金属製の内側クリップの係止爪60による電線の被膜損傷などを未然防止することが可能となっている。
【0005】
ところで、ワイヤハーネスを車両のインストルメントパネルに取り付ける場合には、ワイヤハーネスの外周に取り付けられた複数のクリップをパネルの所定箇所に係止することにより行うが、パネルへの取付位置がずれてしまってワイヤハーネスのたるみがでたり、ワイヤハーネスが引っ張られた状態で取り付けられてしまった場合などには、取付位置の調整が必要となる。そのため、本止めの前に、本止めよりも弱い保持力による仮止めをして、取付位置の調整が容易な状態で、ワイヤハーネスの取付状態を確認でき、リブに挿入する時に、持ちかえることができるようにすることが望ましい。
しかし、従来のワイヤハーネス用クリップはクリップの開口部64に取付部材のリブを一気に押し込んで挟着させる方式を採っており、特許文献1に開示されたクリップにおいても、開口部64からリブを一気に押し込んで挟着させる方式を採っており仮止め機能はなかった。そこで、取付位置が不適切であった場合には、取付位置の修正作業では、本止めを再度行う必要があった。
さらに、特許文献1に開示された発明では、金属製の内側クリップ56の係止爪60の先端部に形成された係止歯62が噛み合うように設定されているため、該クリップをクリップ取付部材のリブに係止させるとき、係止爪60の先端部に隙間があった旧タイプのクリップに比べて、係止爪60をより大きく変形させる必要が生じ、クリップをリブに係止するときの嵌め込み抵抗が増大するという問題が生じた。
【0006】
本発明は上述した従来の問題を解決するものとして提案するものであって、本発明が解決しようとする課題は、クリップ内部への配線の進入防止を図ると共に、クリップのクリップ取付部材への取付けに際してクリップに仮止め機能を持たせることにより、その取付け作業の容易化を図ることにある。
更に、併せて、クリップをクリップ取付部材に取付ける際の取付け抵抗の軽減を図りながらクリップ内部への配線の進入防止を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係るクリップは次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明に係るクリップは、クリップ取付部材のリブに挟持状態で保持される部位であるクリップ本体と、該クリップ本体と一体的に形成されワイヤハーネス等の配線を支持することのできる支持部とから成り、前記クリップ本体の基本概略形状は開口を有するU字形状で、該U字形状の開口両端部位置から一体的に一対の係止爪が内方に向けて延設して形成され、該係止爪の内方先端部は当該クリップが保持される前記クリップ取付部材のリブが挿入されると拡開変形してそのバネ圧で当該リブに挟持されるようになっており、前記クリップ本体は樹脂製の外側クリップ本体と該外側クリップ本体の内側に配設される金属製の内側クリップ本体とが内外に重ね合わされた状態として構成される形式のクリップであって、前記樹脂製の外側クリップ本体の一対の係止爪の内方先端部はクリップ取付部材が挿入される前の自由形態状態では接合する状態として配設されており、かつ、該係止爪の開口側奥部にはクリップ取付部材の仮止めのための空所が設けられていることを特徴とする。
この第1の発明によれば、樹脂製のクリップの係止爪の先端部がクリップ取付部材が挿入される前の自由形態状態では接合する状態として配設されているため、該クリップがワイヤハーネス等の配線に取り付けられた状態で搬送されるときに、配線の一部の電線がクリップ内部へ進入するのを防ぐことができる。また、仮止めのための空所が設けられているため、仮止めのためにリブを開口部へ挿入する時の初期抵抗が低減され、リブが開口部に挿入されると、リブは樹脂製の外側クリップの空所に面する部分の拡開変形により挟持され、さらに樹脂製の外側クリップの係止爪の内方先端部の拡開変形により挟持されることにより、クリップ本体がリブに仮止めされる。
【0008】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明のクリップであって、前記樹脂製の外側クリップ本体の一対の係止爪に対し、前記金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪が内接して配設されていることを特徴とする。
この第2の発明によれば、樹脂製の外側クリップの空所に面する部分の拡開変形及び樹脂製の外側クリップの係止爪の内方先端部の拡開変形により挟持されることにより、クリップ本体がリブに仮止めされる。このとき、樹脂製の外側クリップ本体の一対の係止爪に対し、金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪が内接して配設されているため、樹脂製の外側クリップの空所に面する部分が拡開変形すると、樹脂製クリップに内接する金属製クリップの係止爪の付け根部分も拡開変形される。また、樹脂製の外側クリップの係止爪の内方先端部が拡開変形すると、それに内接する金属製クリップの係止爪の中央部分も拡開変形される。その結果、樹脂製の外側クリップの変形のみにより仮止めを行う場合に比べて、仮止め時の挿入抵抗を増大させ、仮止めによる保持力を高めることができる。
【0009】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明のクリップであって、樹脂製の外側クリップの係止爪の内方先端部には突起片が形成されており、該突起片は、金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪に対して間隔を有した状態として配設されており、この間隔により前記クリップ取付部材が挿入されたとき前記突起片が内側クリップ本体に当接するまで弾性変形することを特徴とする。
この第3の発明によれば、樹脂製の外側クリップの係止爪の先端部の突起片が拡開変形すると、最初は突起片のみが該突起片が金属製の内側クリップの係止爪の中央部分に当接するまで変形し、以降は該突起片とそれに内接する金属製クリップの係止爪の中央部分が併せて拡開変形される。その結果、樹脂製の外側クリップの係止爪の内方先端部と内側の金属製クリップの係止爪を同時に変形させて仮止めを行うのに比べて、仮止め時の初期抵抗を低減させることができる。
【0010】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1から第3の発明のいずれかの発明のクリップであって、金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪の内方先端部はクリップ取付部材が挿入される前の自由形態状態では間隔を有した状態として配設されていることを特徴とする。
この第4の発明によれば、金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪の内方先端部が間隔を有した状態として配設される。これにより、従来、金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪の先端を接合状態として配線の進入の防止を図っていた場合に比べ、クリップをクリップ取付部材に取付ける際の取付け抵抗の軽減を図ることができる。すなわち、金属製の係止爪の先端が接合状態でクリップ取付部材のリブが挿入される場合に比べ、間隔を有した状態で挿入される場合は、係止爪のバネ変形は少なくて済み、挿入抵抗が小さくて済む。なお、本発明の場合、クリップ内部への配線の一部の電線の進入防止は、前述したように樹脂製のクリップの係止爪の先端を接合状態として配設することにより行っているが、この樹脂製の係止爪の変形抵抗は金属製の係止爪に比べ小さくて済むものである。
【0011】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1から第4の発明のいずれかの発明のクリップであって、金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪の内方先端部には櫛歯状の係止歯がそれぞれ形成されており、該係止歯の櫛歯は互いの歯と溝が対応する位置関係として設定されて配設されていることを特徴とする。
この第5の発明によれば、係止爪の内方先端部に形成された櫛歯状の係止歯の歯と溝が対応する位置関係として設定されて配設される。これにより、クリップ本体をリブに本止めした時に、互いの櫛歯がリブの反対側で交互にリブに押しつけられることとなり、係止歯を設定しない場合に比べて本止め時の係止力を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の各発明によれば、次の効果が得られる。
先ず、上述した第1の発明によれば、樹脂製の外側クリップの係止爪の先端部を接合する状態として配設されているため、配線の一部の電線がクリップ内部へ進入するのを防ぐことができる。
また、樹脂製の外側クリップの係止爪の開口側奥部には仮止めのための空所が設けられており、この仮止めのため空所によりクリップをクリップ取付部材のリブに仮止めすることができて、その取付け作業の容易化を図ることができる。
【0013】
次に、上述した第2の発明によれば、樹脂製の外側クリップ本体の一対の係止爪に対し、金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪が内接して配設されているため、主に樹脂製の外側クリップの変形により仮止めを行う場合に比べて、仮止め時の挿入抵抗を増大させ、仮止めによる保持力を高めることができる。
【0014】
次に、上述した第3の発明によれば、樹脂製の外側クリップの係止爪の内方先端部と内側の金属製クリップの係止爪を同時に変形させて仮止めを行うのに比べて、仮止め時の初期抵抗を低減させることができる。
【0015】
次に、上述した第4の発明によれば、金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪の内方先端部が間隔を有した状態として配設されることにより、従来、金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪の先端を接合状態として配線の進入の防止を図っていた場合に比べ、クリップをクリップ取付部材に取付ける際の取付け抵抗の軽減を図ることができる。
【0016】
次に、上述した第5の発明によれば、金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪の内方先端部に形成された櫛歯状の係止歯の歯と溝が対応する位置関係として設定されて配設されることにより、クリップ本体をリブに本止めした時に、互いの櫛歯がリブの反対側で交互にリブに押しつけられることとなり、櫛歯状の係止歯を設定しない場合に比べて本止め時の係止力を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は、本発明の一実施例であるワイヤハーネス用クリップの全体斜視図を示す。クリップ10はクリップ本体11と支持部位20とからなっている。クリップ本体11はクリップ10をクリップ取付部材のリブに挟持状態で取付けるための部位である。支持部位20はベルト21とバックル22とから構成されており、ワイヤハーネスに取付けるための部位である。クリップ本体11と支持部位20とは一体的に形成される。
図2はクリップ本体11の全体構造を示すものであり、全体の基本形状は一端が開口したU字形状とされている。クリップ本体11は外側に配設される樹脂製の外側クリップ本体12と内側に配設される金属製の内側クリップ本体30とからなっており、両クリップ本体12,30は内外に重ね合わされた状態として配設されて構成されている。
樹脂製の外側クリップ本体12は、図2に示すように、U字状に形成された脚片13と、これに連なりU字状の開口部26から内側に延設された係止爪14を備えている。一方、金属製の内側クリップ本体30は前記U字形の両脚片13の内側に組み込まれており、この内側クリップ本体30は、図2に示すように、全体形状としてU字状となるように結合された一対の挟持片32を備えている。
【0018】
図3から図6は金属製の内側クリップ本体30を示しており、図3は平面図、図4は正面図、図5は右側面図を示し、図6は内側クリップ本体30を正面右上方の方向から見た外観斜視図を示している。これらの図で示すように内側クリップ本体30の両挟持片32には、それぞれ係止爪36が内側に向けて切り起こされた状態で一体に形成されている。
また、両係止爪36の先端部には、図6に良く示されるように、櫛歯状の係止歯38がそれぞれ形成されている。両係止爪36の係止歯38は図3に示すように互いの歯と溝が対応するように設定されており、また、図5に示すように係止歯38の歯は相手側の係止歯38の溝部分に入り込むことなく、係止歯38の先端同士はラップせず、双方の歯の先端が一直線上に並ぶように突き合わされている。なお、係止歯38の先端には隙間を設けても良い。
【0019】
内側クリップ本体30には、樹脂製の外側クリップ本体12と係合させるために両挟持片32の両方の側縁に切り欠き形状の係合溝34が形成されている。
外側クリップ本体12における両脚片13の内側には、内側クリップ本体30の係合溝34と係合可能な係合部16がそれぞれ形成されている。また両係合部16の先端は、図2で示すように、係合部16と係合溝34が係合した状態において内側クリップ本体30における両挟持片32の内側に係合するようになっている。
外側クリップ本体12の係止爪14は、図2に示すように、内側クリップ本体30の両係止爪36に対して外側から被さるように位置して配設されており、両係止爪14の先端部には突起片15が形成されており、突起片15は付け根部分で内側クリップ本体30の係止爪36の中央部に接しており、突起片15の先端部分では係止爪36と隙間を有し、突起片15同士は先端部で隙間なしで突合されている。
また、係止爪14と突起片15は、開口部26の奥部で仮止め用の空所24を形成している。
【0020】
外側クリップ本体12と支持部位20のバックル22とは樹脂で一体成形される。なお、ベルト21も一緒に一体成形で形成するのが好ましい。金属製の内側クリップ本体30は別に構成されて、外側クリップ本体12の両脚片13の内側に位置するように、かつ、外側クリップ本体12の両係止爪14に内接して内側クリップ本体30の係止爪36が位置するように側方から組み付けられる。これによって外側クリップ本体12の係合部16と内側クリップ本体30の係合溝34が前述したように係合する。なお、この実施例では両挟持片32の両側縁に係合溝34をそれぞれ形成しているので、外側クリップ本体12に対する内側クリップ本体30の組み付けに際しては、内側クリップ本体30の方向性に留意する必要がない。
また、樹脂製の外側クリップ本体12は、両係止爪14の先端部の突起片15同士が先端で隙間無く突合されているので、外側クリップ本体12に内側クリップ本体30を組み付ける際の挿入力が低減される。また、組み付け後のクリップ本体11の完成状態も内側クリップ本体30のバネで強制されるので安定しやすい。
【0021】
上述した構成のクリップ10はベルト21をワイヤハーネスに巻き付けてバックル22でベルト21を固定することにより、ワイヤハーネスに取り付けられる。なお、ワイヤハーネスに対しては、その長さ方向に沿った所定の複数箇所に対しクリップ10がそれぞれ取り付けられる。
ワイヤハーネスにはその両端や途中において分岐線(電線)を有するのが普通であり、ワイヤハーネスの運搬中などにおいて、一本もしくは複数本の電線が外側クリップ本体12の脚片13の間に進入しようとする場合がある。このような場合に、電線が仮に外側クリップ本体12の両係止爪14の間に入り込んだとしても、係止爪14の先端部に形成された樹脂製の突起片15が隙間無く突き合わされているので、電線は該突起片15によって確実に受け止められる。これにより、電線がクリップ10の開口部26からクリップ本体11内部に進入することは確実に阻止され、内側クリップ本体30の両挟持片32の内側まで電線が噛み込むことは防止され、電線の被膜の損傷あるいは断線といったトラブルを解消することができる。
【0022】
図7はクリップ10のクリップ取付部材のリブ40への仮止め状態を示し、図8は本止め状態を示す。この図7及び図8に示すように、ワイヤハーネスを車両のボデーなどに対して配線する場合は、ボデー側のクリップ取付部材のリブ40がクリップ本体11の開口部26から樹脂製クリップの突起片15及び金属製の内側クリップ本体30の係止爪36を押し開きながら両挟持片32の間に挿入される。これによって金属製の内側クリップ本体30の係止爪36及び樹脂製の外側クリップ本体12の突起片15がそれぞれクリップ取付部材のリブ40に係止し、クリップ本体11がクリップ取付部材側に保持され、ワイヤハーネスが所定の配線状態に保持される。クリップ本体11へのリブ40の挿入は、仮止め、本止めの順で実施される。
【0023】
仮止めは次のようにして行われる。まずクリップ取付部材のリブ40の取付位置にクリップ本体11の開口部26をリブに向けて押し当てる。リブ40の先端の幅は開口部26の空所24の入口の幅よりも広いが、空所24の案内形状があるため挿入に対する抗力は小さく、リブ40の先端が空所24に挿入されていく。そして、リブ40には抜き勾配がついており先端から付け根に向かって幅が広くなっているので、挿入に対する抗力が徐々に増加する。
このとき、リブ40の側面が外側クリップ本体12の係止爪14に押しつけられ、外側クリップ本体12の係止爪14が拡開変形しリブ40を挟持する。ここで、外側クリップ本体12の一対の係止爪14の空所24の反対側には金属製の内側クリップ本体30の一対の係止爪36が内接して配設されているため、樹脂製の外側クリップ本体12の空所24が拡開変形すると、外側クリップ本体12に内接する金属製の内側クリップ本体30の係止爪36の付け根部分も拡開変形される。そこで、金属製の内側クリップ本体30による挟持力も加わって、外側クリップ本体12の空所24でリブ40を挟持することとなる。
ここで、リブ40が外側クリップ本体12の係止爪14に挟持されているため、押し当てる方向のズレが生じた場合には、リブ40と係止爪14の摩擦力が抗力として働き、空所24を設けない構成に比べて、仮止め位置のズレが生じにくいという特徴がある。
さらにクリップ本体11をリブ40に押しつけると、リブ40の先端が樹脂製の外側クリップ本体12の係止爪14の先端部の突起片15に当たり、突起片15が金属製の内側クリップ本体30の係止爪36の中央部分に当接するまで変形し、続いて突起片15とそれに内接する内側クリップ本体30の係止爪36の中央部が併せて拡開変形される。この間も、リブ40の抜き勾配により、リブ40の側面により係止爪14の空所24に面した部分がさらに拡開変形されていく。
さらにクリップ本体11をリブ40に押しつけると、リブ40の先端が突起片15の先端より先へ進入し、リブ40の先端が金属製の内側クリップ本体30の係止爪36に直接当たるようになる。
リブ40の先端が内側クリップ本体30の係止爪36に当たるまで挿入するためには、外側クリップ本体12の空所24を拡開変形し、さらに突起片15を押し広げることが必要であり、リブ40を挿入するために必要な挿入抵抗はなだらかに増加する。
リブ40の先端が内側クリップ本体30の係止爪36に当った後、さらにリブ40を挿入するためには、係止爪36を直接押し広げることが必要となり挿入抵抗が急激に大きくなる。この挿入抵抗が急激に大きくなるところで仮止めが終了する。
【0024】
本止めでは、ワイヤハーネスの取り付けられた複数個のクリップ10をクリップ取付部材のリブ40の所定箇所に仮止めし、ワイヤハーネスの配線のたるみ、引っ張りが無いことを確認した上で、クリップ本体11をリブ40に挿入しやすいように持ちかえてリブ40に押しつけて、リブ40の先端部が金属製の内側クリップ本体30の係止爪36の先端に配設された係止歯38を通過するまで押し込む。本止めは、リブ40の先端が内側クリップ本体30の両挟持片32の付け根に達したところで終了する。本止め状態では、リブ40は、樹脂製の外側クリップ本体12の空所24、樹脂製の外側クリップ本体12の係止爪14の先端部の突起片15及び金属製の内側クリップ本体30の係止爪36の先端部の係止歯38により挟持される。
このように係止爪36の内方先端部に形成された櫛歯状の係止歯38の歯と溝が対応する位置関係として設定されて配設されることにより、クリップ本体11をリブ40に本止めした時に、互いの櫛歯がリブ40の反対側で交互にリブ40に押しつけられることとなり、櫛歯状の係止歯38を設定しない場合に比べて本止め時の係止力を高めることができる。
リブ40に仮止めされた位置が不適切なクリップ10がある場合は、このクリップ10を外して再度仮止めを行う。仮止めは本止めの場合に比べて、係止歯38による挟持がないので、本止め状態に比べて弱い力で外すことができ、取付位置の変更が容易である。
【0025】
以上、本発明の一実施例について説明したが、その他各種の形態で実施することができるものである。
たとえば、上記実施例では、外側クリップ本体12の係止爪14の先端部に設けた突起片15の先端が内側クリップ本体30の係止爪36との間で隙間を有する構成としたが、自由形態状態で突起片15が係止爪36に当接した構成とすることもできる。図9にその構成の変形実施例を示す。この変形実施例によれば、突起片15が係止爪36に当接した構成となっている。この変形実施例では上記実施例に比べて、仮止め時の保持力を高めることができる。
【0026】
上記実施例では、内側クリップ本体30の係止爪36が外側クリップ本体12の係止爪14に内接する状態で配設しているが、係止爪36、14同士を隣接させず、離した状態で配設する構成としても良い。
また、上記実施例では、内側クリップ本体30の係止爪36の先端は自由形態状態では間隔を有していないが、上記実施例によれば、樹脂製の外側クリップ本体12の係止爪14の先端部に形成された突起片15が隙間無く突き合わされていることにより、電線の進入を防ぐことができるので、内側クリップ本体30の係止爪36の先端は自由形態状態で間隔を有して配設される構成としても良い。
図10に係止爪36,14同士を離した状態で配設し、係止爪36の先端に間隔を設けた構成の変形実施例を示す。この変形実施例によれば、外側クリップ本体12の係止爪14の空所24に面する部分の拡開変形及び外側クリップ本体12の係止爪14の先端部の突起片15の拡開変形によっては、内側クリップ本体30はほとんど変形せず、もっぱら外側クリップ本体12の変形により、リブが挟持され、仮止めがなされることとなる。また、内側クリップ本体30の係止爪36の先端は自由形態状態で間隔を有して配設されることにより、従来の、金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪の先端を接合状態として電線の進入の防止を図っていた場合に比べ、クリップをクリップ取付部材に取付ける際の取付け抵抗の軽減を図ることができる。
【0027】
また、上記実施例では、内側クリップ本体30の係止爪36の先端には係止歯38が設けられているが、係止歯38を設けない構成としても良い。
なお、変形実施例として示した図9及び図10では、上記実施例の構成に対応する構成箇所には同一符号を付して示し、詳細構成の再度の説明は省略した。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例であるワイヤハーネス用クリップの全体斜視図を示す。
【図2】クリップ本体の全体構造の正面図を示す。
【図3】内側クリップ本体の平面図を示す。
【図4】同正面図を示す。
【図5】同右側面図を示す。
【図6】同外観斜視図を示す。
【図7】クリップの仮止め状態図を示す。
【図8】クリップの本止め状態図を示す。
【図9】外側の突起片が内側の係止爪に接触する変形実施例の正面図を示す。
【図10】外側と内側の係止爪が離れて配設され、内側の係止爪同士の先端が離れた変形実施例の正面図を示す。
【図11】従来のクリップの正面図を示す。
【図12】同クリップの内側クリップ破断図を示す。
【図13】同クリップの内側クリップ開口側側面図を示す。
【符号の説明】
【0029】
10 クリップ
11 クリップ本体
12 外側クリップ本体
13 脚片
14 係止爪
15 突起片
16 係合部
20 支持部位
21 ベルト
22 バックル
24 空所
26 開口部
30 内側クリップ本体
32 挟持片
34 係合溝
36 係止爪
38 係止歯
40 リブ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップ取付部材のリブに挟持状態で保持される部位であるクリップ本体と、該クリップ本体と一体的に形成されワイヤハーネス等の配線を支持することのできる支持部位とから成り、
前記クリップ本体の基本概略形状は開口を有するU字形状で、該U字形状の開口両端部位置から一体的に一対の係止爪が内方に向けて延設して形成され、該係止爪の内方先端部は当該クリップが保持される前記クリップ取付部材のリブが挿入されると拡開変形してそのバネ圧で当該リブに挟持されるようになっており、
前記クリップ本体は樹脂製の外側クリップ本体と該外側クリップ本体の内側に配設される金属製の内側クリップ本体とが内外に重ね合わされた状態として構成される形式のクリップであって、
前記樹脂製の外側クリップ本体の一対の係止爪の内方先端部はクリップ取付部材が挿入される前の自由形態状態では接合する状態として配設されており、かつ、該係止爪の開口側奥部にはクリップ取付部材の仮止めのための空所が設けられていることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップであって、
前記樹脂製の外側クリップ本体の一対の係止爪に対し、前記金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪が内接して配設されていることを特徴とするクリップ。
【請求項3】
請求項2に記載のクリップであって、
前記樹脂製の外側クリップの係止爪の内方先端部には突起片が形成されており、該突起片は、前記金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪に対して間隔を有した状態として配設されており、この間隔により前記クリップ取付部材が挿入されたとき前記突起片が内側クリップ本体に当接するまで弾性変形することを特徴とするクリップ。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3のいずれかに記載のクリップであって、
前記金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪の内方先端部はクリップ取付部材が挿入される前の自由形態状態では間隔を有した状態として配設されていることを特徴とするクリップ。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4のいずれかに記載のクリップであって、
前記金属製の内側クリップ本体の一対の係止爪の内方先端部には櫛歯状の係止歯がそれぞれ形成されており、該係止歯の櫛歯は互いの歯と溝が対応する位置関係として設定されて配設されていることを特徴とするクリップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−259363(P2008−259363A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100612(P2007−100612)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】