クリップ
【課題】挿入力を増大させることなく、係止保持力を向上させる。
【解決手段】被取付部材50に設けられた取付孔51に取り付けられるクリップ10であって、取付孔51に挿入される軸部21と、軸部21の先端部からその反対の端部側に向け傾斜をなして片持ち状に突出し、取付孔51を弾性変形して通過するとともに取付孔51を抜けると弾性復帰して取付孔51の挿入側とは反対側の周縁部に係止される一対の弾性係合片22と、弾性係合片22の取付孔51への挿入先側の面に突設され、弾性係合片22の先端部が軸部21から遠ざかる方向へと弾性変形したときに先端部が互いに当接状態となる一対の変形規制突部30とを備えている。
【解決手段】被取付部材50に設けられた取付孔51に取り付けられるクリップ10であって、取付孔51に挿入される軸部21と、軸部21の先端部からその反対の端部側に向け傾斜をなして片持ち状に突出し、取付孔51を弾性変形して通過するとともに取付孔51を抜けると弾性復帰して取付孔51の挿入側とは反対側の周縁部に係止される一対の弾性係合片22と、弾性係合片22の取付孔51への挿入先側の面に突設され、弾性係合片22の先端部が軸部21から遠ざかる方向へと弾性変形したときに先端部が互いに当接状態となる一対の変形規制突部30とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば被取付部材の取付孔に差し込んで係止するワイヤーハーネス保持用のクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両に配索されるワイヤーハーネスを車体に固定するために用いられるワイヤーハーネス保持用のクリップとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。このクリップはワイヤーハーネスに巻回して結束するバンド部と、バンド部から立設した軸部と、軸部の先端から羽根状に折り返した一対の係止部とを備えている。係止部は、軸部に接近・離間する方向に弾性変形可能とされ、その先端部には軸部に沿って直線的に延びる平板部が形成されている。このクリップは、車体側に設けられた取付孔に係止部が弾性変形して挿通し、貫通した係止部が弾性復帰するともに係止部の先端に設けられた平板部が取付孔の内周縁部に引っ掛かる。これにより、クリップは取付孔に対して引き抜き不能に係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−129445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなクリップにおいて、取付孔に対する係止保持力の更なる向上が要求されている。この係止保持力は係止部の剛性に依存しているため、係止部の剛性を高くし、係止部が軸部に接近・離間する方向に弾性変形しにくい構成とすれば、取付孔に対するクリップの係止保持力は向上するものの、挿入力が大きくなるという背反がある。このため、係止部の剛性を低くし、係止部が容易に弾性変形する構成とすれば、挿入力は低く抑えられるものの、係止保持力は低下する。また、係止部が片持ち状の弾性片からなるため、例えば、取付孔に係止状態にあるクリップに対して当該取付孔から抜き去ろうとする外力が加わった場合、係止部の強度が低いと係止部は抜き去り方向とは反対方向に向かって反転し、係止機能そのものが損なわれる虞がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、挿入力を増大させることなく、係止保持力を向上させたクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被取付部材に設けられた取付孔に取り付けられるクリップであって、前記取付孔に挿入される軸部と、前記軸部の先端部から基端部に向け前記軸部から遠ざかる方向に傾斜をなして片持ち状に突出し、前記取付孔を弾性変形して通過するとともに前記取付孔を抜けると弾性復帰して前記取付孔の挿入側とは反対側の周縁部に係止される一対の弾性係合片と、前記弾性係合片の前記取付孔への挿入先側の面に突設され、前記弾性係合片が前記軸部から遠ざかる方向へと弾性変形したときに先端部が互いに当接状態となる一対の変形規制突部とを備えることに特徴を有する。
【0007】
このような構成によれば、弾性係合片が軸部から遠ざかる方向へと弾性変形したときに当該弾性係合片の取付孔への挿入側の面に突設された一対の変形規制突部の先端部が互いに当接状態となるから、この当接した状態からさらに弾性係合片が軸部から遠ざかる方向へと弾性変形しようとすると変形規制突部が互いに押し合って干渉し、それ以上の変形が阻止される。例えば取付孔に係止状態にある本発明のクリップに対して当該取付孔から抜き去ろうとする外力が加わった場合には、弾性係合片の軸部から遠ざかる方向への弾性変形が規制された状態にあるから、当該弾性係合片が抜き去り方向とは反対方向に反転することが出来ず、クリップが取付孔から抜き去られるのを阻止することができる。このようにして、クリップの取付孔に対する係止保持力を向上させることができる。また、弾性係合片そのものの剛性を高めることなく係止保持力を向上させているから、変形規制突部が設けられていない場合と比較して、弾性係合片の軸部に接近する方向への弾性変形のし易さに影響を与えることなく、クリップの挿入力が増大するのを抑えることができる。
【0008】
前記各変形規制突部は前記弾性係合片の基部から先端側の離れた位置に向かって突設され、その各先端部は前記軸部の先方において互いに突き合わせ状態となるように対向して配されていることが望ましい。このような構成によれば、変形規制突部は弾性係合片の基部から軸部の先方に向かって突設されているから、取付孔の大きさにもよるものの、弾性係合片の先端部側から変形規制突部を突設するよりも、取付孔に挿入する際に変形規制突部が取付孔に接触する範囲を狭める、もしくは接触しない構成とすることができる。変形規制突部が取付孔に挿入する際に取付孔に当接しなければ、変形規制突部が障害となって挿入力が増大してしまうことを防止できる他、当接する場合に求められる変形規制突部の強度を考慮する必要がなく、変形規制突部を薄肉にするなど、軽量化及び材料費低減を図ることができる。また、変形規制突部を弾性係合片の基部から突設することで、例えば弾性係合片の先端部側から突設するよりも、変形規制突部が弾性係合片から突出する基端部から先端部までの長さを短くすることができ、これによっても軽量化及び材料費低減が可能となる。
【0009】
前記弾性係合片は、その延出端に挿入側の側面が前記軸部側に近づくように段差を有して延出する当接片が形成されており、前記弾性係合片が前記取付孔を抜けたときに前記当接片が前記取付孔の周縁部に当接することで係止されていることが望ましい。このような構成とすれば、変形規制突部が弾性係合片の軸部から遠ざかる方向への変形を規制する以前に、まず当接片が取付孔の周縁部に当接して係止し、変形規制突部と同方向における弾性係合片の変形を阻止するから、効果的に係止保持力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、挿入力を増大させることなく、係止保持力を向上させたクリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係るクリップの全体斜視図
【図2】クリップを構成する本体部及び係止部の斜視図
【図3】本体部及び係止部の背面図
【図4】図3のA−A断面図
【図5】クリップの平面図
【図6】本体部及び係止部の側面図
【図7】図6のB−B断面図
【図8】車両パネルにクリップを取り付けた状態を示す斜視図
【図9】同平面図
【図10】同側面図
【図11】図10のC−C断面図
【図12】実施形態2に係るクリップを構成する本体部及び係止部の斜視図
【図13】同側面図
【図14】図13のD−D断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図11によって説明する。
本実施形態におけるワイヤーハーネス保持用のクリップ10は、図示しないワイヤーハーネスを車両パネル50(被取付部材に相当する)に形成された取付孔51に取り付けるものである。以下の説明において、上下方向は、本実施形態における図1の上下方向を基準とする。
【0013】
クリップ10は、合成樹脂製であって、射出成形により全体が一体に形成されている。その構成は図1に示すように、ワイヤーハーネスに巻回されるバンド部11と、バンド部11の一端に連結された略箱状の本体部12と、本体部12のバンド部11とは反対側の面から突設された係止部20とを備えている。
【0014】
バンド部11は、図1に示すように、図示しないワイヤーハーネスの外周に巻き付けることのできる長さを有し、略一定の幅寸法で本体部12から下方に延出されており、その先端がやや先細りした態様をなしている。その厚さ寸法はバンド部11を図示しないワイヤーハーネスの周りに巻き付けることができる程度の可撓性を有するように設定されている。バンド部11の図1の手前側となる面には、後述する係止突部16を係止可能な係止溝部11Aが長手方向に沿って一定間隔に多数形成されている。
【0015】
本体部12は一側面がバンド部11の延出方向に沿った傾斜面13をなす扁平な角筒状をなし、その内部には、傾斜面13に開口する挿入口14Aから対向する面に開口する導出口14Bまで貫通するバンド挿通孔14が形成されている。バンド挿通孔14は、バンド部11をその先端から挿通可能であって、その内部にはバンド部11を係止する弾性舌片15が設けられている。
【0016】
弾性舌片15はバンド挿通孔14内の挿入口14A寄りの下面から上面に向かって僅かに立ち上がり、導出口14Bの略中央に向かって屈曲され、本体部12から僅かに突出した状態に形成されている。弾性舌片15の上面には、幅方向に延びる係止突部16が2つ、延出方向の略中間位置に間隔を開けて形成されている。係止突部16は、図4に示すように、断面三角形状であって、挿入口14A側からなだらかに傾斜して立ち上がり、導出口14B側はバンド挿通孔14の挿通方向に対して直交する方向に切り立った形態をなしている。
【0017】
係止部20は、本体部12の上面から突設された軸部21と、軸部21の先端から下方に向かって羽根状に延出する一対の弾性係合片22と、弾性係合片22の上面から軸部21の上方に向かって延びる変形規制突部30と、から構成されている。軸部21は、バンド挿通孔14の挿通方向に沿う方向に延びる一辺を有する略方形の板が、対をなして取付孔51の長手方向に沿って並列配置され、板間を繋いだ柱状をなしている。なお、軸部21のうちバンド挿通孔14の挿通方向に沿う方向の寸法は、取付孔51の短手方向の寸法と略同じとなるように設定されている。
【0018】
軸部21の頂部21Aからは、軸部21を構成する一対の板面を基部22Aとしてそれぞれ側方に向かって突出する弾性係合片22が一体に設けられている。弾性係合片22は、所定の角度をなして本体部12に向かって片持ち状に延出し、軸部21に対し接近・離間する方向に弾性変形可能とされている。各弾性係合片22の先端には軸部21の軸方向に沿って直線的に延び、弾性係合片22と同じ幅を有する平板状の当接片23が形成されている。取付孔51に係止部20を挿入すると、弾性係合片22が軸部21に接近する方向に弾性変形することで挿通可能となる。そして、弾性係合片22が取付孔51を貫通して弾性復帰すると、当接片23が取付孔51の内周縁部に引っ掛かり、車両パネル50に係止することができる。
【0019】
さて、弾性係合片22の取付孔51への挿入側に面する挿入面22Bからは、それぞれ軸部21の軸中心側に向かって前方に延出する変形規制突部30が設けられている。詳しく説明すると、変形規制突部30は、弾性係合片22の延出方向略中間位置を基端部31として上方に向かって立ち上がり、その後弾性係合片22の挿入面22Bに沿うように屈曲した上で軸部21の前方に向かって延出し、再び弾性係合片22の基部22Aの上方辺りで屈曲して、さらに軸部21の頂部21Aに沿って延びる平板状をなしている。それぞれの弾性係合片22から突設された変形規制突部30は、その延出端である先端部32が軸部21の上方において略軸中心となる位置で互いに突き合わせ状態となるように対向して配され、当該先端部32間には略均一な僅かな隙間が生じている。
【0020】
続いて、クリップ10の作用について図8ないし図11を用いて説明する。
まず、ワイヤーハーネスを結束するには、図示はしないが、ワイヤーハーネスにバンド部11を巻き付けた状態で、バンド部11をバンド挿通孔14の挿入口14Aから挿入する。バンド部11をバンド挿通孔14に挿通させ、ワイヤーハーネスを締め付けた状態で弾性舌片15の係止突部16にバンド部11の係止溝部11Aを引っ掛けることでワイヤーハーネスを結束した状態に係止することができる。
【0021】
次に、クリップ10を車両パネル50に取り付けるには、変形規制突部30側からバンド挿通孔14の挿通方向と取付孔51の短手方向とが一致するように係止部20の位置合わせをし、取付孔51に差し入れて押し込む。すると、一対の弾性係合片22が軸部21に接近する方向へと弾性変形しつつ取付孔51に挿入されていく。これと同時に、弾性係合片22の挿入面22Bから突設された変形規制突部30の基端部31は弾性係合片22と共に軸部21に近づく方向へと変位し、対向状に配された先端部32は一度互いに当接した後、当該先端部32間の隙間が広がるように離間する。弾性係合片22が取付孔51を貫通して弾性復帰すると、図8に示すように弾性係合片22の先端に設けられた当接片23が取付孔51の内周縁部に引っ掛かることで係止される。この際、変形規制突部30の先端部32は、図9及び図11に示すように互いに当接し、弾性係合片22がこの状態からさらに軸部21から離間する方向に変位するのを妨げる。以上のようにして、係止部20が取付孔51に係止されることで、クリップ10を車両パネル50に取り付けることができる。
【0022】
なお、この取り付けられたクリップ10を車両パネル50の取付孔51から本体部12側に抜き去ろうとする外力が加わった場合には、当接片23が取付孔51の内周縁部に引っ掛かった状態で、弾性係合片22はその基部22Aから抜き去り方向とは反対側となる上方に向かって反転しようとする。この弾性係合片22が反転するには、係止部20が取付孔51に係止された状態からさらに当該弾性係合片22が軸部21から離間する方向、即ち弾性係合片22が基部22Aを軸として外周に向かって広がる方向へ変位する必要がある。しかしながら、本実施形態ではすでに変形規制突部30の先端部32が互いに当接状態にあり、弾性係合片22がこれ以上に軸部21から遠ざかる方向へ変位するのを妨げるから、弾性係合片22の反転は阻止される。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、弾性係合片22が軸部21から遠ざかる方向へと弾性変形したときに当該弾性係合片22の挿入面22Bに突設された一対の変形規制突部30の先端部32が互いに当接状態となる。この当接した状態からさらに弾性係合片22が軸部21から遠ざかる方向へと弾性変形しようとすると変形規制突部30が互いに押し合って干渉し、それ以上の変形が阻止される。例えば取付孔51に係止状態にあるクリップ10に対して当該取付孔51から抜き去ろうとする外力が加わった場合には、弾性係合片22の軸部21から遠ざかる方向への変形が規制された状態にあるから、当該弾性係合片22が抜き去り方向とは反対方向に反転することが出来ず、係止部20が取付孔51から抜き去られるのを阻止することができる。このようにして、クリップ10の係止部20における係止保持力を向上させることができる。
【0024】
また、弾性係合片22そのものの剛性を高めることなく変形規制突部30をその挿入面22Bに突設することで係止部20の係止保持力を向上させているから、例えば変形規制突部30が設けられていない場合と比較して、弾性係合片22の軸部21に接近する方向への弾性変形のし易さに特段の影響を与えることなく、クリップ10の挿入力が増大するのを抑制することができる。即ち、クリップ10を取付孔51に挿入する際には、変形規制突部30の先端部32は互いに遠ざかる方向へと変位し、例え挿入途中に先端部32同士が当接することはあっても、干渉し合うことはないから、変形規制突部30が作用することにより挿入力が増大する虞はない。また弾性係合片22自体の厚さを厚くするのではなく、弾性係合片22の挿入面22Bから変形規制突部30を突出させて設けているから、当該弾性係合片22が弾性変形しにくくなることもないのである。
【0025】
また、弾性係合片22の延出端に当接片23を設け、この当接片23が取付孔51の内周縁部に引っ掛かることで係止される構成とすることで、変形規制突部30が弾性係合片22の軸部21から遠ざかる方向への変形を規制する以前に、まず当接片23が取付孔51の周縁部に当接して係止し、変形規制突部30と同方向における弾性係合片22の変形を阻止するから、効果的に係止保持力を向上させることができる。
【0026】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図12ないし図14によって説明する。
本実施形態は、実施形態1とは、変形規制突部30の先端部32が互いに連結されているところが相違する。他の構成については実施形態1と同様であるため、同一部分に同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0027】
弾性係合片22には、その挿入面22Bの延出方向略中間位置から上方に向かって立ち上がり、各先端部32が軸部21の頂部21A上で連結された変形規制突部30が形成されている。変形規制突部30の形状は実施形態1と略同じであって、図12及び図14に示すように、弾性係合片22の延出方向略中間位置を基端部31として上方に向かって立ち上がり、軸部21の頂部21Aの上方において各先端部32が互いに対向して配されている。先端部32間の間隔は実施形態1よりも広く、先端部32は互いに蛇腹状接続部33によって連結されている。
【0028】
蛇腹状接続部33は、変形規制突部30の幅寸法と略同じ幅を有し、変形規制突部30よりも肉厚の薄い平板を上下方向に交互に折り返した蛇腹状をなしている。蛇腹状接続部33は先端部32が互いに接近・離間する方向に弾性的に伸縮可能であって、伸長方向においては、係止部20が取付孔51を挿通する際に弾性係合片22が軸部21に接近する方向に弾性変形するのを許容するようにその範囲が設定されている。また、収縮方向においては、係止部20が取付孔51に係止された状態よりも弾性係合片22が軸部21から離間する方向に弾性変形するのを妨げるように弾性変形可能な範囲が設定されている。
【0029】
このような構成のクリップ10を車両パネル50に取り付けるには、実施形態1と同様に変形規制突部30側から係止部20を取付孔51に差し入れて押し込む。弾性係合片22が軸部21に接近する方向へと弾性変形しつつ取付孔51に挿入されていくのと同時に、変形規制突部30の基端部31が軸部21に近づく方向へと変位し、先端部32間の蛇腹状接続部33が弾性的に伸長する。弾性係合片22が取付孔51を貫通して弾性復帰すると、当接片23が取付孔51の内周縁部に引っ掛かることで係止される。この際、変形規制突部30の先端部32は何も外力が加わっていない自然状態よりも互いに近づき、蛇腹状接続部33は弾性的に収縮した状態にある。
【0030】
取付孔51に係止された状態のクリップ10を本体部12側に抜き去ろうとする外力が加わった場合には、弾性係合片22が抜き去り方向とは反対側となる上方に向かって反転しようとする。弾性係合片22が反転するには、係止部20が取付孔51に係止された状態からさらに弾性係合片22が軸部21から離間する方向に変位する必要があるのだが、本実施形態では蛇腹状接続部33においてすでにそれ以上の弾性収縮が不可能な状態にあるから、弾性係合片22の軸部21から離間する方向への変位が妨げられ、反転は未然に阻止される。このように変形規制突部30の先端部32が互いに連結された状態にあっても、実施形態1と同様に係止保持力を向上させることができる。
【0031】
なお、係止部20が取付孔51を挿通する際には、弾性係合片22が軸部21に接近する方向に弾性変形するのに伴って変形規制突部30の先端部32が互いに離間できるように、蛇腹状接続部33は伸長可能に先端部32間を連結している。これにより、蛇腹状接続部33が容易に伸長可能なものとすれば、実施形態1の先端部32が連結されていない場合と係止部20の挿入力を大差ないものとすることが可能である。
【0032】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0033】
(1)上記実施形態では、変形規制突部30は弾性係合片22の延出方向略中間位置を基端部31として挿入面22Bから立ち上がる構成としたが、これに限られず、例えば変形規制突部30の基端部31が弾性係合片22の基部22Aに対向する挿入面22Bに設けられていてもよい。このような構成によれば、変形規制突部30の延出長さを短くすることができるから、クリップ10としての軽量化及び材料費低減を図ることができる。また、取付孔51に挿入する際に変形規制突部30が取付孔51に当接する範囲が狭まる、もしくは接触しないから、変形規制突部30が取付孔51に接触することによる挿入力の増大を阻止することができる。
【0034】
(2)上記実施形態1では、弾性係合片22に何も外力が加わっていない自然状態にある場合、一対の変形規制突部30の先端部32間にはわずかな隙間が生じているが、これに限られず、例えば変形規制突部30の先端部32は自然状態において互いに当接していてもよい。ただし、弾性係合片22が軸部21側に弾性変位した際に先端部32が互いに離れる方向に変位可能な構成とする必要がある。
【符号の説明】
【0035】
10…クリップ
11…バンド部
11A…係止溝部
12…本体部
13…傾斜面
14…バンド挿通孔
14A…挿入口
14B…導出口
15…弾性舌片
16…係止突部
20…係止部
21…軸部
21A…頂部
22…弾性係合片
22A…基部
22B…挿入面
23…当接片
30…変形規制突部
31…基端部
32…先端部
50…車両パネル
51…取付孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば被取付部材の取付孔に差し込んで係止するワイヤーハーネス保持用のクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両に配索されるワイヤーハーネスを車体に固定するために用いられるワイヤーハーネス保持用のクリップとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。このクリップはワイヤーハーネスに巻回して結束するバンド部と、バンド部から立設した軸部と、軸部の先端から羽根状に折り返した一対の係止部とを備えている。係止部は、軸部に接近・離間する方向に弾性変形可能とされ、その先端部には軸部に沿って直線的に延びる平板部が形成されている。このクリップは、車体側に設けられた取付孔に係止部が弾性変形して挿通し、貫通した係止部が弾性復帰するともに係止部の先端に設けられた平板部が取付孔の内周縁部に引っ掛かる。これにより、クリップは取付孔に対して引き抜き不能に係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−129445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなクリップにおいて、取付孔に対する係止保持力の更なる向上が要求されている。この係止保持力は係止部の剛性に依存しているため、係止部の剛性を高くし、係止部が軸部に接近・離間する方向に弾性変形しにくい構成とすれば、取付孔に対するクリップの係止保持力は向上するものの、挿入力が大きくなるという背反がある。このため、係止部の剛性を低くし、係止部が容易に弾性変形する構成とすれば、挿入力は低く抑えられるものの、係止保持力は低下する。また、係止部が片持ち状の弾性片からなるため、例えば、取付孔に係止状態にあるクリップに対して当該取付孔から抜き去ろうとする外力が加わった場合、係止部の強度が低いと係止部は抜き去り方向とは反対方向に向かって反転し、係止機能そのものが損なわれる虞がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、挿入力を増大させることなく、係止保持力を向上させたクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被取付部材に設けられた取付孔に取り付けられるクリップであって、前記取付孔に挿入される軸部と、前記軸部の先端部から基端部に向け前記軸部から遠ざかる方向に傾斜をなして片持ち状に突出し、前記取付孔を弾性変形して通過するとともに前記取付孔を抜けると弾性復帰して前記取付孔の挿入側とは反対側の周縁部に係止される一対の弾性係合片と、前記弾性係合片の前記取付孔への挿入先側の面に突設され、前記弾性係合片が前記軸部から遠ざかる方向へと弾性変形したときに先端部が互いに当接状態となる一対の変形規制突部とを備えることに特徴を有する。
【0007】
このような構成によれば、弾性係合片が軸部から遠ざかる方向へと弾性変形したときに当該弾性係合片の取付孔への挿入側の面に突設された一対の変形規制突部の先端部が互いに当接状態となるから、この当接した状態からさらに弾性係合片が軸部から遠ざかる方向へと弾性変形しようとすると変形規制突部が互いに押し合って干渉し、それ以上の変形が阻止される。例えば取付孔に係止状態にある本発明のクリップに対して当該取付孔から抜き去ろうとする外力が加わった場合には、弾性係合片の軸部から遠ざかる方向への弾性変形が規制された状態にあるから、当該弾性係合片が抜き去り方向とは反対方向に反転することが出来ず、クリップが取付孔から抜き去られるのを阻止することができる。このようにして、クリップの取付孔に対する係止保持力を向上させることができる。また、弾性係合片そのものの剛性を高めることなく係止保持力を向上させているから、変形規制突部が設けられていない場合と比較して、弾性係合片の軸部に接近する方向への弾性変形のし易さに影響を与えることなく、クリップの挿入力が増大するのを抑えることができる。
【0008】
前記各変形規制突部は前記弾性係合片の基部から先端側の離れた位置に向かって突設され、その各先端部は前記軸部の先方において互いに突き合わせ状態となるように対向して配されていることが望ましい。このような構成によれば、変形規制突部は弾性係合片の基部から軸部の先方に向かって突設されているから、取付孔の大きさにもよるものの、弾性係合片の先端部側から変形規制突部を突設するよりも、取付孔に挿入する際に変形規制突部が取付孔に接触する範囲を狭める、もしくは接触しない構成とすることができる。変形規制突部が取付孔に挿入する際に取付孔に当接しなければ、変形規制突部が障害となって挿入力が増大してしまうことを防止できる他、当接する場合に求められる変形規制突部の強度を考慮する必要がなく、変形規制突部を薄肉にするなど、軽量化及び材料費低減を図ることができる。また、変形規制突部を弾性係合片の基部から突設することで、例えば弾性係合片の先端部側から突設するよりも、変形規制突部が弾性係合片から突出する基端部から先端部までの長さを短くすることができ、これによっても軽量化及び材料費低減が可能となる。
【0009】
前記弾性係合片は、その延出端に挿入側の側面が前記軸部側に近づくように段差を有して延出する当接片が形成されており、前記弾性係合片が前記取付孔を抜けたときに前記当接片が前記取付孔の周縁部に当接することで係止されていることが望ましい。このような構成とすれば、変形規制突部が弾性係合片の軸部から遠ざかる方向への変形を規制する以前に、まず当接片が取付孔の周縁部に当接して係止し、変形規制突部と同方向における弾性係合片の変形を阻止するから、効果的に係止保持力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、挿入力を増大させることなく、係止保持力を向上させたクリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係るクリップの全体斜視図
【図2】クリップを構成する本体部及び係止部の斜視図
【図3】本体部及び係止部の背面図
【図4】図3のA−A断面図
【図5】クリップの平面図
【図6】本体部及び係止部の側面図
【図7】図6のB−B断面図
【図8】車両パネルにクリップを取り付けた状態を示す斜視図
【図9】同平面図
【図10】同側面図
【図11】図10のC−C断面図
【図12】実施形態2に係るクリップを構成する本体部及び係止部の斜視図
【図13】同側面図
【図14】図13のD−D断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図11によって説明する。
本実施形態におけるワイヤーハーネス保持用のクリップ10は、図示しないワイヤーハーネスを車両パネル50(被取付部材に相当する)に形成された取付孔51に取り付けるものである。以下の説明において、上下方向は、本実施形態における図1の上下方向を基準とする。
【0013】
クリップ10は、合成樹脂製であって、射出成形により全体が一体に形成されている。その構成は図1に示すように、ワイヤーハーネスに巻回されるバンド部11と、バンド部11の一端に連結された略箱状の本体部12と、本体部12のバンド部11とは反対側の面から突設された係止部20とを備えている。
【0014】
バンド部11は、図1に示すように、図示しないワイヤーハーネスの外周に巻き付けることのできる長さを有し、略一定の幅寸法で本体部12から下方に延出されており、その先端がやや先細りした態様をなしている。その厚さ寸法はバンド部11を図示しないワイヤーハーネスの周りに巻き付けることができる程度の可撓性を有するように設定されている。バンド部11の図1の手前側となる面には、後述する係止突部16を係止可能な係止溝部11Aが長手方向に沿って一定間隔に多数形成されている。
【0015】
本体部12は一側面がバンド部11の延出方向に沿った傾斜面13をなす扁平な角筒状をなし、その内部には、傾斜面13に開口する挿入口14Aから対向する面に開口する導出口14Bまで貫通するバンド挿通孔14が形成されている。バンド挿通孔14は、バンド部11をその先端から挿通可能であって、その内部にはバンド部11を係止する弾性舌片15が設けられている。
【0016】
弾性舌片15はバンド挿通孔14内の挿入口14A寄りの下面から上面に向かって僅かに立ち上がり、導出口14Bの略中央に向かって屈曲され、本体部12から僅かに突出した状態に形成されている。弾性舌片15の上面には、幅方向に延びる係止突部16が2つ、延出方向の略中間位置に間隔を開けて形成されている。係止突部16は、図4に示すように、断面三角形状であって、挿入口14A側からなだらかに傾斜して立ち上がり、導出口14B側はバンド挿通孔14の挿通方向に対して直交する方向に切り立った形態をなしている。
【0017】
係止部20は、本体部12の上面から突設された軸部21と、軸部21の先端から下方に向かって羽根状に延出する一対の弾性係合片22と、弾性係合片22の上面から軸部21の上方に向かって延びる変形規制突部30と、から構成されている。軸部21は、バンド挿通孔14の挿通方向に沿う方向に延びる一辺を有する略方形の板が、対をなして取付孔51の長手方向に沿って並列配置され、板間を繋いだ柱状をなしている。なお、軸部21のうちバンド挿通孔14の挿通方向に沿う方向の寸法は、取付孔51の短手方向の寸法と略同じとなるように設定されている。
【0018】
軸部21の頂部21Aからは、軸部21を構成する一対の板面を基部22Aとしてそれぞれ側方に向かって突出する弾性係合片22が一体に設けられている。弾性係合片22は、所定の角度をなして本体部12に向かって片持ち状に延出し、軸部21に対し接近・離間する方向に弾性変形可能とされている。各弾性係合片22の先端には軸部21の軸方向に沿って直線的に延び、弾性係合片22と同じ幅を有する平板状の当接片23が形成されている。取付孔51に係止部20を挿入すると、弾性係合片22が軸部21に接近する方向に弾性変形することで挿通可能となる。そして、弾性係合片22が取付孔51を貫通して弾性復帰すると、当接片23が取付孔51の内周縁部に引っ掛かり、車両パネル50に係止することができる。
【0019】
さて、弾性係合片22の取付孔51への挿入側に面する挿入面22Bからは、それぞれ軸部21の軸中心側に向かって前方に延出する変形規制突部30が設けられている。詳しく説明すると、変形規制突部30は、弾性係合片22の延出方向略中間位置を基端部31として上方に向かって立ち上がり、その後弾性係合片22の挿入面22Bに沿うように屈曲した上で軸部21の前方に向かって延出し、再び弾性係合片22の基部22Aの上方辺りで屈曲して、さらに軸部21の頂部21Aに沿って延びる平板状をなしている。それぞれの弾性係合片22から突設された変形規制突部30は、その延出端である先端部32が軸部21の上方において略軸中心となる位置で互いに突き合わせ状態となるように対向して配され、当該先端部32間には略均一な僅かな隙間が生じている。
【0020】
続いて、クリップ10の作用について図8ないし図11を用いて説明する。
まず、ワイヤーハーネスを結束するには、図示はしないが、ワイヤーハーネスにバンド部11を巻き付けた状態で、バンド部11をバンド挿通孔14の挿入口14Aから挿入する。バンド部11をバンド挿通孔14に挿通させ、ワイヤーハーネスを締め付けた状態で弾性舌片15の係止突部16にバンド部11の係止溝部11Aを引っ掛けることでワイヤーハーネスを結束した状態に係止することができる。
【0021】
次に、クリップ10を車両パネル50に取り付けるには、変形規制突部30側からバンド挿通孔14の挿通方向と取付孔51の短手方向とが一致するように係止部20の位置合わせをし、取付孔51に差し入れて押し込む。すると、一対の弾性係合片22が軸部21に接近する方向へと弾性変形しつつ取付孔51に挿入されていく。これと同時に、弾性係合片22の挿入面22Bから突設された変形規制突部30の基端部31は弾性係合片22と共に軸部21に近づく方向へと変位し、対向状に配された先端部32は一度互いに当接した後、当該先端部32間の隙間が広がるように離間する。弾性係合片22が取付孔51を貫通して弾性復帰すると、図8に示すように弾性係合片22の先端に設けられた当接片23が取付孔51の内周縁部に引っ掛かることで係止される。この際、変形規制突部30の先端部32は、図9及び図11に示すように互いに当接し、弾性係合片22がこの状態からさらに軸部21から離間する方向に変位するのを妨げる。以上のようにして、係止部20が取付孔51に係止されることで、クリップ10を車両パネル50に取り付けることができる。
【0022】
なお、この取り付けられたクリップ10を車両パネル50の取付孔51から本体部12側に抜き去ろうとする外力が加わった場合には、当接片23が取付孔51の内周縁部に引っ掛かった状態で、弾性係合片22はその基部22Aから抜き去り方向とは反対側となる上方に向かって反転しようとする。この弾性係合片22が反転するには、係止部20が取付孔51に係止された状態からさらに当該弾性係合片22が軸部21から離間する方向、即ち弾性係合片22が基部22Aを軸として外周に向かって広がる方向へ変位する必要がある。しかしながら、本実施形態ではすでに変形規制突部30の先端部32が互いに当接状態にあり、弾性係合片22がこれ以上に軸部21から遠ざかる方向へ変位するのを妨げるから、弾性係合片22の反転は阻止される。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、弾性係合片22が軸部21から遠ざかる方向へと弾性変形したときに当該弾性係合片22の挿入面22Bに突設された一対の変形規制突部30の先端部32が互いに当接状態となる。この当接した状態からさらに弾性係合片22が軸部21から遠ざかる方向へと弾性変形しようとすると変形規制突部30が互いに押し合って干渉し、それ以上の変形が阻止される。例えば取付孔51に係止状態にあるクリップ10に対して当該取付孔51から抜き去ろうとする外力が加わった場合には、弾性係合片22の軸部21から遠ざかる方向への変形が規制された状態にあるから、当該弾性係合片22が抜き去り方向とは反対方向に反転することが出来ず、係止部20が取付孔51から抜き去られるのを阻止することができる。このようにして、クリップ10の係止部20における係止保持力を向上させることができる。
【0024】
また、弾性係合片22そのものの剛性を高めることなく変形規制突部30をその挿入面22Bに突設することで係止部20の係止保持力を向上させているから、例えば変形規制突部30が設けられていない場合と比較して、弾性係合片22の軸部21に接近する方向への弾性変形のし易さに特段の影響を与えることなく、クリップ10の挿入力が増大するのを抑制することができる。即ち、クリップ10を取付孔51に挿入する際には、変形規制突部30の先端部32は互いに遠ざかる方向へと変位し、例え挿入途中に先端部32同士が当接することはあっても、干渉し合うことはないから、変形規制突部30が作用することにより挿入力が増大する虞はない。また弾性係合片22自体の厚さを厚くするのではなく、弾性係合片22の挿入面22Bから変形規制突部30を突出させて設けているから、当該弾性係合片22が弾性変形しにくくなることもないのである。
【0025】
また、弾性係合片22の延出端に当接片23を設け、この当接片23が取付孔51の内周縁部に引っ掛かることで係止される構成とすることで、変形規制突部30が弾性係合片22の軸部21から遠ざかる方向への変形を規制する以前に、まず当接片23が取付孔51の周縁部に当接して係止し、変形規制突部30と同方向における弾性係合片22の変形を阻止するから、効果的に係止保持力を向上させることができる。
【0026】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図12ないし図14によって説明する。
本実施形態は、実施形態1とは、変形規制突部30の先端部32が互いに連結されているところが相違する。他の構成については実施形態1と同様であるため、同一部分に同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0027】
弾性係合片22には、その挿入面22Bの延出方向略中間位置から上方に向かって立ち上がり、各先端部32が軸部21の頂部21A上で連結された変形規制突部30が形成されている。変形規制突部30の形状は実施形態1と略同じであって、図12及び図14に示すように、弾性係合片22の延出方向略中間位置を基端部31として上方に向かって立ち上がり、軸部21の頂部21Aの上方において各先端部32が互いに対向して配されている。先端部32間の間隔は実施形態1よりも広く、先端部32は互いに蛇腹状接続部33によって連結されている。
【0028】
蛇腹状接続部33は、変形規制突部30の幅寸法と略同じ幅を有し、変形規制突部30よりも肉厚の薄い平板を上下方向に交互に折り返した蛇腹状をなしている。蛇腹状接続部33は先端部32が互いに接近・離間する方向に弾性的に伸縮可能であって、伸長方向においては、係止部20が取付孔51を挿通する際に弾性係合片22が軸部21に接近する方向に弾性変形するのを許容するようにその範囲が設定されている。また、収縮方向においては、係止部20が取付孔51に係止された状態よりも弾性係合片22が軸部21から離間する方向に弾性変形するのを妨げるように弾性変形可能な範囲が設定されている。
【0029】
このような構成のクリップ10を車両パネル50に取り付けるには、実施形態1と同様に変形規制突部30側から係止部20を取付孔51に差し入れて押し込む。弾性係合片22が軸部21に接近する方向へと弾性変形しつつ取付孔51に挿入されていくのと同時に、変形規制突部30の基端部31が軸部21に近づく方向へと変位し、先端部32間の蛇腹状接続部33が弾性的に伸長する。弾性係合片22が取付孔51を貫通して弾性復帰すると、当接片23が取付孔51の内周縁部に引っ掛かることで係止される。この際、変形規制突部30の先端部32は何も外力が加わっていない自然状態よりも互いに近づき、蛇腹状接続部33は弾性的に収縮した状態にある。
【0030】
取付孔51に係止された状態のクリップ10を本体部12側に抜き去ろうとする外力が加わった場合には、弾性係合片22が抜き去り方向とは反対側となる上方に向かって反転しようとする。弾性係合片22が反転するには、係止部20が取付孔51に係止された状態からさらに弾性係合片22が軸部21から離間する方向に変位する必要があるのだが、本実施形態では蛇腹状接続部33においてすでにそれ以上の弾性収縮が不可能な状態にあるから、弾性係合片22の軸部21から離間する方向への変位が妨げられ、反転は未然に阻止される。このように変形規制突部30の先端部32が互いに連結された状態にあっても、実施形態1と同様に係止保持力を向上させることができる。
【0031】
なお、係止部20が取付孔51を挿通する際には、弾性係合片22が軸部21に接近する方向に弾性変形するのに伴って変形規制突部30の先端部32が互いに離間できるように、蛇腹状接続部33は伸長可能に先端部32間を連結している。これにより、蛇腹状接続部33が容易に伸長可能なものとすれば、実施形態1の先端部32が連結されていない場合と係止部20の挿入力を大差ないものとすることが可能である。
【0032】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0033】
(1)上記実施形態では、変形規制突部30は弾性係合片22の延出方向略中間位置を基端部31として挿入面22Bから立ち上がる構成としたが、これに限られず、例えば変形規制突部30の基端部31が弾性係合片22の基部22Aに対向する挿入面22Bに設けられていてもよい。このような構成によれば、変形規制突部30の延出長さを短くすることができるから、クリップ10としての軽量化及び材料費低減を図ることができる。また、取付孔51に挿入する際に変形規制突部30が取付孔51に当接する範囲が狭まる、もしくは接触しないから、変形規制突部30が取付孔51に接触することによる挿入力の増大を阻止することができる。
【0034】
(2)上記実施形態1では、弾性係合片22に何も外力が加わっていない自然状態にある場合、一対の変形規制突部30の先端部32間にはわずかな隙間が生じているが、これに限られず、例えば変形規制突部30の先端部32は自然状態において互いに当接していてもよい。ただし、弾性係合片22が軸部21側に弾性変位した際に先端部32が互いに離れる方向に変位可能な構成とする必要がある。
【符号の説明】
【0035】
10…クリップ
11…バンド部
11A…係止溝部
12…本体部
13…傾斜面
14…バンド挿通孔
14A…挿入口
14B…導出口
15…弾性舌片
16…係止突部
20…係止部
21…軸部
21A…頂部
22…弾性係合片
22A…基部
22B…挿入面
23…当接片
30…変形規制突部
31…基端部
32…先端部
50…車両パネル
51…取付孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材に設けられた取付孔に取り付けられるクリップであって、
前記取付孔に挿入される軸部と、
前記軸部の先端部から基端部に向け前記軸部から遠ざかる方向に傾斜をなして片持ち状に突出し、前記取付孔を弾性変形して通過するとともに前記取付孔を抜けると弾性復帰して前記取付孔の挿入側とは反対側の周縁部に係止される一対の弾性係合片と、
前記弾性係合片の前記取付孔への挿入先側の面に突設され、前記弾性係合片が前記軸部から遠ざかる方向へと弾性変形したときに先端部が互いに当接状態となる一対の変形規制突部とを備えることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記各変形規制突部は前記弾性係合片の基部から先端側の離れた位置に向かって突設され、その各先端部は前記軸部の先方において互いに突き合わせ状態となるように対向して配されていることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記弾性係合片は、その延出端に挿入側の側面が前記軸部側に近づくように段差を有して延出する当接片が形成されており、
前記弾性係合片が前記取付孔を抜けたときに前記当接片が前記取付孔の周縁部に当接することで係止されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリップ。
【請求項1】
被取付部材に設けられた取付孔に取り付けられるクリップであって、
前記取付孔に挿入される軸部と、
前記軸部の先端部から基端部に向け前記軸部から遠ざかる方向に傾斜をなして片持ち状に突出し、前記取付孔を弾性変形して通過するとともに前記取付孔を抜けると弾性復帰して前記取付孔の挿入側とは反対側の周縁部に係止される一対の弾性係合片と、
前記弾性係合片の前記取付孔への挿入先側の面に突設され、前記弾性係合片が前記軸部から遠ざかる方向へと弾性変形したときに先端部が互いに当接状態となる一対の変形規制突部とを備えることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記各変形規制突部は前記弾性係合片の基部から先端側の離れた位置に向かって突設され、その各先端部は前記軸部の先方において互いに突き合わせ状態となるように対向して配されていることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記弾性係合片は、その延出端に挿入側の側面が前記軸部側に近づくように段差を有して延出する当接片が形成されており、
前記弾性係合片が前記取付孔を抜けたときに前記当接片が前記取付孔の周縁部に当接することで係止されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−236931(P2011−236931A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106506(P2010−106506)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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