説明

クリーニング機能付き搬送部材の製造方法


【課題】 クリーニング層の膜厚を高精度に均一化でき、塵埃捕集性能を高めることができるクリーニング機能付き搬送部材の製造方法を提供する。


【解決手段】 回転テーブル31上に載置された搬送部材(シリコンウエハ)1を回転させながら塗布用ノズル4を水平移動させ、この塗布用ノズル4から吐出するクリーニング層形成用のワニス20を上記搬送部材1上に略円形軌跡に沿って塗布するクリーニング機能付き搬送部材の製造方法であって、上記塗布用ノズル4の先端における上記回転テーブル31の回転方向aと対向する側に、回転方向aに対して水平面内で横断する方向へ延びてワニス塗布表面を均らす均し部42を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、フラットパネルディスプレイ、プリント基板等の製造装置や検査装置等、塵埃等の異物を嫌う基板処理装置に搬送して、この装置の所要個所をクリーニングするためのクリーニング機能付き搬送部材に関する。

【背景技術】
【0002】
半導体、フラットパネルディスプレイ、プリント基板等の各種の基板処理装置では、各搬送系に基板を物理的に接触させながら搬送するようになっている。その際、基板や搬送系に異物が付着していると、後続の基板を次々に汚染(クロスコンタミ)するため、定期的に装置の稼働を停止して、基板処理装置内部を洗浄処理する必要があった。このため、稼働率の低下や多大な労力が必要という問題があった。

【0003】
この問題に対して、特開平10−154686号公報に記載されるように、基板処理装置内に粘着性物質を固着した基板を搬送して、装置内に付着する異物をクリーニング除去する方法や、特開平11−87458号公報に記載されるように、板状部材を搬送して、基板裏面に付着する異物を除去する方法が提案されている。これらの方法では、定期的に装置を停止する必要がなく、稼動率の低下や多大な労力を回避でき、特に前者の方法は、後者の方法に比べて、異物の除去性にすぐれている。

【0004】
ところで、半導体デバイスの微細化に伴い、半導体の製造工程や検査工程では、ウエハの表面だけでなく、裏面への異物の付着も問題となっている。洗浄工程で裏面から表面への異物の乗り移りが起こり、結果的に製品歩留りを低下させるからである。

現在の配線間隔(デザインルール)は0.18μmのものが主であるが、この配線間隔と同じか、より大きいサイズの異物が付着すると、断線等の不良が起こりやすく、特に、0.2〜2.0μm程度の粒子径の異物が問題である。しかし、前記の提案方法を含め、これまでの報告では、除去したい異物の粒子径が明確になっておらず、異物数そのものを積極的に減らす手段として、まだ不十分であった。

【0005】
本発明者らは、このような観点より、鋭意検討を続けた結果、クリーニング部材としてシリコンウエハ等の搬送部材上に、重合硬化する粘着剤やポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂からなる実質的に粘着性を有しない薄膜状のクリーニング層を設けて、クリーニング機能付き搬送部材とするにあたり、上記クリーニング層の膜厚を均一に制御し、膜厚のばらつきが10%以下となるようにして異物との物理的な接触面積を増やす構成としたときに、0.2〜2.0程度の粒子径の異物を効率的に除去できることを見出し、これを先行発明として既に提案している(特願2004−246375号)。

【0006】
この先行発明において、上記のクリーニング層は、シリコンウエハ等の搬送部材上に、重合硬化する粘着剤やポリアミック酸樹脂等からなるクリーニング層形成用のワニスを、直接塗布したのち、重合硬化やイミド化等の所要の工程を経ることにより、形成される。また、支持シート上に上記同様のワニスを塗布したのち、上記同様の工程を経ることで、支持シート上にクリーニング層を有するクリーニングシートを作製し、これを上記の搬送部材上に支持シートを介して貼り合わせることにより、形成される。

【0007】
ここで、搬送部材または支持シートを被塗物として、これらの上に上記クリーニング層形成用のワニスを塗布する際には、公知のスピンコーティング法、ノズルコーティング法が用いられる。このうち、スピンコーティング法は、ワニスが遠心力により径方向外方へ吹き飛ばされて無駄になる量が多く、歩留りが悪くなる。ノズルコーティング法は、このような欠点がなく、上記ワニスの塗布方法として望ましい。

ノズルコーティング法は、回転テーブル上に載置した被塗物上に水平移動可能なノズルにより、ワニスを被塗物の中心部または外周部から螺旋形に塗布するもので、いわゆる、円コーターとして知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−310155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、本発明者らの研究によると、上記公知のノズルコーティング法でクリーニング層を形成する場合、以下のような問題があることがわかった。

ノズルコーティング法では、図7および図8に示されるように、円筒形の塗布用ノズル400が使用されることが多い。この場合、塗布用ノズル400における先端面400aと移動方向で対向する周面400bとの境界が円弧状になっているため、回転テーブル上に載置した被塗物であるウエハを回転させながら塗布用ノズル400の吐出孔402からワニスを吐出した際、ワニス塗布表面が均されずに回転方向前方で捲られる状態となり、これが原因で膜厚を高精度に均一化させにくかった。

【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、ノズルコーティング法により均一な膜厚を有する、特に膜厚のばらつきが10%以下となるクリーニング層を形成することにより、基板処理装置内に付着する0.2〜2.0程度の粒子径の異物を効率的に除去できるクリーニング機能付き搬送部材の製造方法を提供することを課題とする。

【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の先行発明を踏まえて、さらに検討を続けた結果、ノズルコーティング法における塗布用ノズルの先端面に、ワニス塗布表面の均し部を設ける、例えばノズル先端面と周面との境界を斜めに切り欠き、この切り欠き部分を被塗物の回転方向に対し垂直に設けて上記均し部とすることにより、回転する被塗物上に上記ノズルから塗布されるワニスを上記均し部で均すことができ、これによりワニスの塗布厚さが均一に制御されて膜厚のばらつきの低い、特に上記ばらつきが10%以下のクリーニング層を形成でき、基板処理装置内に付着する0.2〜2.0程度の粒子径の異物を効率的に除去できるクリーニング部材が得られることを知り、本発明を完成した。

【0011】
本発明は、搬送部材上に直接または支持シートを介して薄膜状のクリーニング層が形成されてなるクリーニング機能付き搬送部材の製造装置において、上記クリーニング層を形成するためのワニスを搬送部材または支持シートからなる被塗物の上に塗布する装置として、上記被塗物を水平に支持する回転テーブルと、この回転テーブル上に載置された上記被塗物の上に垂直姿勢に配置されると共に、上記被塗物の径方向で水平移動可能に設けられて、上記ワニスを上記被塗物の上に吐出して略円形軌跡に沿う状態に塗布する塗布用ノズルと、このノズル先端における上記回転テーブルの回転方向と対向する側に、この回転方向に対して水平面内で横断する方向へ延びて、ワニス塗布表面を均らす均し部とを具備することを特徴とするクリーニング機能付き搬送部材の製造装置に係るものである。

【0012】
また、本発明は、搬送部材上に直接または支持シートを介して薄膜状のクリーニング層が形成されてなるクリーニング機能付き搬送部材の製造方法において、上記クリーニング層を形成するためのワニスを搬送部材または支持シートからなる被塗物の上に塗布するにあたり、上記被塗物を水平に支持する回転テーブルと、この回転テーブル上に載置された上記被塗物の上に垂直姿勢に配置されると共に、上記被塗物の径方向で水平移動可能に設けられたワニス塗布用ノズルと、このノズル先端における上記回転テーブルの回転方向と対向する側に、この回転方向に対して水平面内で横断する方向へ延びるワニス均し部とを具備する塗布装置を使用して、上記被塗物を回転させながらその上に上記ワニスを上記塗布用ノズルから吐出して略円形軌跡に沿う状態に塗布すると共に、その塗布表面を上記均し部で均らすことにより、膜厚のばらつきの低いクリーニング層を形成することを特徴とするクリーニング機能付き搬送部材の製造方法に係るものである。

【0013】
特に、本発明は、膜厚のばらつきが10%以下であるクリーニング層を形成する上記構成のクリーニング機能付き搬送部材の製造方法を提供できるものである。
また、本発明は、上記の方法により製造されたクリーニング層の膜厚のばらつきが10%以下であるクリーニング機能付き搬送部材と、上記クリーニング層が実質的に粘着性を有しない上記構成のクリーニング機能付き搬送部材を提供できるものである。

さらに、本発明は、基板処理装置内に、上記構成のクリーニング機能付き搬送部材を搬送することを特徴とする基板処理装置のクリーニング方法と、またこのクリーニング方法によりクリーニングされた基板処理装置を提供できるものである。

【発明の効果】
【0014】
このように、本発明は、回転テーブル上に被塗物を載置し、この回転テーブルを介して被塗物を回転しながら塗布用ノズルを水平移動させながらワニスを吐出して塗布する際、ノズル先端側の均し部がへら作用として働き、被塗物の回転に伴って塗布表面を均して平坦化させるので、膜厚のばらつきがなくなり、特に膜厚のばらつきが10%以下であるクリーニング層を形成でき、基板処理装置内に付着する0.2〜2.0程度の粒子径の異物を効率的に除去できるクリーニング機能付き搬送部材を製造できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態として、搬送部材として円形のシリコンウエハを使用し、このウエハを被塗物としてこのウエハ上にクリーニング層形成用のワニスを直接塗布する方法により、ウエハ上に薄膜状のクリーニング層が形成されたクリーニング機能付き搬送部材を製造する方法について、図面に基づいて、説明する。

図1は、上記クリーニング機能付き搬送部材の製造に用いる装置の要部である、ノズルコーティング装置を示す側面図である。このノズルコーティング装置は、例えば、ウエハ支持用の回転テーブル機構3と、塗布用ノズル4とを備えている。

【0016】
回転テーブル機構3は、ウエハ1が載置される中空円盤形の回転テーブル31と、図示しない回転駆動装置の回転力を受けて上記回転テーブル31を一体回転させる回転軸32とを備えており、上記回転テーブル31の中空部31aは、図示しない真空ポンプにより吸引される減圧室となっている。

回転テーブル31の上壁には、ウエハ1を吸着するための多数の吸引孔31bが形成されており、回転テーブル31上に載置されたウエハ1を吸着してこのウエハ1の反り変形等を是正した状態に支持するようになっている。また、回転テーブル31は、ウエハ1の裏面汚染を防止するため、このウエハ1の下面との接触面積を極力低減させることが重要であり、そのため、回転テーブル31の上面に、ウエハ1の下面に対して部分的に接触する突起(図示せず)等を形成した構造を採るのが好ましい。

【0017】
塗布用ノズル4は、回転テーブル31上に所定隙間を存して配置されると共に、回転テーブル31の半径方向へ水平移動可能に設定されており、回転テーブル31上に載置されたクリーニング層形成用のワニス20を吐出して塗布するものであり、このウエハ1の回転に伴って水平移動しながら上記ワニス20をウエハ1の中心部または外周部を塗布初期点として略円形軌跡を描くように塗布するようになっている。

この塗布用ノズル4は、図4〜図6に示すように、例えば、長さLが160mm、直径Rが6mm、吐出孔41の内径rが2mmの円筒体からなり、このノズル4の先端側には、回転テーブル31の回転方向(図5,図6の矢印a)と対向する側に、この回転方向aに対し水平面内で横断する方向へ延びて、塗布面を均す均し部42が形成されている。

この均し部42は、例えば、塗布用ノズル4の先端面4aと、上記の回転方向aと対向する側の周面4bとの境界エッジを、半径方向の幅dが1mm、長さtが40mmで切欠した切り欠き面で構成されている。もちろん、この均し部42は、切り欠き面で構成するものに限らず、別途、へら状物を設けるなどしてもよい。

【0018】
つぎに、上記構成のノズルコーティング装置を要部とした製造装置を用いて、図2,図3に示すクリーニング機能付き搬送部材Mを製造する方法について、説明する。ここで、クリーニング機能付き搬送部材Mは、搬送部材としてのウエハ1と、このウエハ1の片面(もしくは両面)に形成された薄膜状のクリーニング層2とからなる。

【0019】
塗布用ノズル4の吐出孔41とウエハ1の上面との隙間を調整し、回転テーブル31を介してウエハ1を所定の回転速度で回転させながら、上記吐出孔41からウエハ1の上面にクリーニング層形成用のワニス20を吐出させる。

その際、ウエハ1の中心部を塗布初期点として半径方向外方へ水平移動させるか、逆にウエハ1の外周部(エッジ部)所定位置を塗布初期点として中心部へ水平移動させて、吐出したワニス20が重なり合うように略円形軌跡を描くように塗布する。

塗布用ノズル4の先端側には回転方向aに対向する周面4bを先端面41aまで斜めに切り欠いた均し部42が形成されているため、これがへらとして働き、ウエハ1の回転に伴って塗布面が均され、均一な塗布膜に調整される。

【0020】
クリーニング層形成用のワニス20は、特に限定はなく、広範囲のものを使用できる。代表的には、(A)重合硬化する粘着剤、(B)耐熱性樹脂形成用の樹脂溶液が挙げられる。これらの材料構成について説明すると、以下のとおりである。

(A)の重合硬化する粘着剤とは、紫外線、放射線、熱等の活性エネルギー源により、重合硬化して、分子構造が三次元網状化し、実質的に粘着性を示さなくなるものである。活性エネルギー源としては、特に紫外線が望ましい。このような重合硬化する粘着剤としては、例えば、感圧接着性ポリマーに分子内に不和飽和二重結合を1個以上有する化合物および重合開始剤を含有させてなるものが好ましい。

【0021】
上記の感圧接着性ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとしたアクリル系ポリマーが挙げられる。このアクリル系ポリマーの合成にあたり、共重合モノマーとして分子内に不飽和二重結合を2個以上有する化合物を用いたり、合成後のアクリル系ポリマーに分子内に不飽和二重結合を有する化合物を官能基間の反応で化合結合させる等して、アクリル系ポリマーの分子内に不飽和二重結合を導入してもよい。これにより、このポリマー自体も活性エネルギーによる重合硬化反応に関与させることもできる。

【0022】
また、上記の分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物(以下、重合性化合物という)としては、不揮発性でかつ重量平均分子量が10,000以下の低分子量体であるのが望ましく、硬化時の三次元網状化が効率良くなされるように、5,000以下の分子量を有しているのが特に望ましい。

このような重合性化合物には、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート等があり、これらの中から、1種または2種類以上が用いられる。

【0023】
さらに、上記の重合開始剤は、特に限定されず、公知のものを使用できる。例えば、活性エネルギーに熱を用いる場合は、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等の熱重合開始剤、光を用いる場合は、ベンゾイル、ベンゾインエチルエーテル、ジベンジル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等の光重合開始剤が挙げられる。

【0024】
また、(B)の耐熱性樹脂形成用の樹脂溶液とは、ポリイミドやフッ素系樹脂等の耐熱性樹脂を付与する樹脂溶液である。耐熱性樹脂の分子構造は特に限定されないが、クリーニングする基板処理装置を汚染する物質を含まない方がよい。

このような樹脂溶液としては、例えば、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体骨格を主鎖中に有するポリアミック酸樹脂の溶液が挙げられる。上記ポリアミック酸樹脂は、加熱によりイミド化して、耐熱性樹脂であるポリイミドを付与する。上記のポリアミック酸樹脂の溶液は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを実質的に等モル比にて適宜の有機溶剤中で反応させて得ることができる。

【0025】
上記のテトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフロオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物等が挙げられ、これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。

【0026】
また、上記のジアミン成分としては、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体骨格を有するジアミンとして、例えば下記の式(1)または式(2)で表わされる脂肪族ジアミン(式中、m1,m2は0以上の整数、nは1以上の整数、R単結合または有機基である)を用いるのが望ましい。また、これらの脂肪族ジアミンは単独で使用してもよいし、必要により、他のジアミンと併用してもよい。

【0027】
<式(1)で表わされる脂肪族ジアミン>
【化1】

【0028】
<式(2)で表わされる脂肪族ジアミン>
【化2】

【0029】
上記の脂肪族ジアミンと併用できる他のジアミンとしては、例えば、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエ−テル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、ヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,12−ジアミノドデカン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。

【0030】
上記のテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とは、実質的に等モル比にて有機溶媒中で反応させることができる。ブタジエン−アクリロニトリル共重合体骨格を有するジアミンを用いる場合、100℃以上の温度で反応させることで、ゲル化を防止できる。これより低い温度で重合させると、上記ジアミンの使用量によっては、ゲル分が系中に残存して目詰まりし、ろ過による異物の除去が困難となる場合がある。また、反応が不均一となり、樹脂の特性にばらつきを生じる場合がある。

また、上記テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を反応させる有機溶媒には、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒が用いられる。原材料や樹脂の溶解性を調整するために、トルエン、キシレン等の非極性溶媒を混合して用いることもできる。

【0031】
上記のクリーニング層形成用のワニス20を用いて、前記したノズルコーティング法により、ウエハ1上に均一に塗布膜を形成したのちは、上記ワニス20の材料構成に応じた適宜の処理工程を経ることにより、クリーニング層2を形成する。

このクリーニング層2の厚さとしては、その材質等により、また異物除去の対象となる基板処理装置の種類により、広い範囲で選択することができる。通常は、0.1〜100μmの範囲、特に1〜20μmの範囲にあるのがよい。

【0032】
上記の処理工程とは、前記(A)の重合硬化する粘着剤では、乾燥工程に続いて、紫外線、放射線、熱等の活性エネルギー源を照射して、粘着剤を重合硬化させる工程である。また、前記(B)の耐熱性樹脂形成用の樹脂溶液としてポリアミック酸樹脂の溶液を用いたものでは、乾燥工程に続いて、150℃以上の高温にて熱処理して、耐熱性樹脂としてのポリイミドに変換する工程である。

なお、上記ポリイミドに変換する工程においては、樹脂の酸化劣化を防ぐため、窒素雰囲気中や真空中等の不活性な雰囲気中で処理するのが望ましい。これによって、樹脂中に残った揮発成分を完全に除去することができる。

【0033】
このように形成されるクリーニング層2は、上記の重合硬化した粘着剤や、ポリイミド等の耐熱性樹脂からなり、実質的に粘着性を示さず、基板処理装置内に搬送したときに、装置の接触部と接着するおそれがなく、搬送性にすぐれている。

実質的に粘着性を示さずとは、例えば、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180度引き剥がし粘着力(JIS Z0237に準じて測定)が0.20N/10mm幅以下、通常0.01〜0.10N/10mm幅程度であることを意味する。

また、このクリーニング層2の動的粘弾性(試験法:JIS K7198)としては、使用温度領域で0.5Mpa以上、好ましくは1〜1,000Mpaである。このような動的粘弾性を有していることにより、装置接触部に接着するおそれのない、良好な搬送性が得られる共に、搬送系の付着異物の除去性能に好結果が得られる。

【0034】
本発明において、このようなクリーニング層2は、前記したノズルコーティング法により均一な塗布膜を形成したことにより、膜厚のばらつきが非常に低いものとなっている。特に膜厚のばらつきが10%以下に抑えられている、中でも膜厚のばらつきが7%以下、さらには5%以下に抑えられていることにより、断線等の不良の原因となりやすい0.2〜2.0μm程度の粒子径の異物を効率良く除去することができる。これに対し、上記のばらつきが高くなると、上記異物の除去性に問題を生じやすい。

【0035】
なお、上記の「膜厚のばらつき」とは、以下の意味である。すなわち、クリーニング層の材質や異物除去の対象となる基板処理装置の種類等に応じて、目的とする(つまり、狙いとする)膜厚〔t0〕を設定したとき、各測定点での実際の膜厚を〔tn〕とすると、〔t0〕−〔tn〕の絶対値を〔t0〕で除し、これに100倍を乗じた値である。

これを計算式で表わすと、下記のとおりである。

|〔t0〕−〔tn〕|
膜厚のばらつき〔R〕=───────────── × 100
〔t0〕

ここで、測定点は、クリーニング機能付き搬送部材を構成する搬送部材の形状により、適宜決定される。一般的に用いられる円形のシリコンウエハ等の搬送部材では、この上に設けられるクリーニング層に対して、ウエハ中心点よりウエハ外周部(エッジ部)までの直線上で複数の測定点を任意に選択する。この各測定点で膜厚〔tn〕を測定し、そのばらつき〔R〕を上記の計算式で求めて、その平均値を算出する。

【0036】
実際の測定方法は、以下のようである。

測定には、触針式表面粗さ測定装置(Tencor社製の「P−11」)を使用した。測定スピードは1μm/秒で触針を動かした。測定範囲は100μmで、触針の先端部の曲率は2μmであり、触針はダイヤモンド製である。
シリコンウエハ上にクリーニング層を設けたクリーニング機能付き搬送部材に対して、上記クリーニング層の一部をウエハ中心点よりウエハ外周部までカッター等で除去して、サンプル(測定試料)とした。このサンプルを用い、ウエハとクリーニング層の段差を測定し、これを膜厚とした。測定点は、10mm間隔で9点測定した。

【0037】
なお、上記の例では、搬送部材1としてシリコンウエハ(半導体ウエハ)を用いたが、搬送部材1としては、上記ウエハに限定されず、公知の種々のものを使用することができる。例えば、LCD、PDP等のフラットパネルディスプレイ用基板、その他、コンパクトディスク、MRヘッド等を挙げることができる。

【0038】
また、上記の例では、搬送部材上にクリーニング層形成用のワニスを直接塗布したが、搬送部材に代えて支持シートを用い、この支持シート上にクリーニング層形成用のワニスを前記同様のノズルコーティング法で塗布してもよい。この塗布後、乾燥工程と重合硬化ないし熱処理工程等を経ることにより、支持シート上に膜厚のばらつきの低い、特に膜厚のばらつきが10%以下であるクリーニング層を有するクリーニングシートを作製する。これを支持シートを介して(支持シートを内側にして)前記の搬送部材上に貼り合わせ、本発明のクリーニング機能付き搬送部材を製造することができる。

【0039】
上記の支持シートとしては、その材質に特に限定はなく、例えば、ポリエステル系フィルム、ポリイミド系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリウレタン系フィルム、オレフィン−アクリル共重合系フィルム、オレフィン−酢酸ビニル共重合系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等からなる、厚さが通常10〜100μm程度のプラスチックフィルムが用いられる。

【0040】
このように製造される本発明のクリーニング機能付き搬送部材は、これを基板処理装置内に搬送するまでの間、クリーニング層の保護のために、その表面に保護フィルムを貼り合わせておくことができる。保護フィルムは、上記保護目的を達成できるものであれば、特に限定されない。厚さは、通常1〜100μmであるのがよい。

保護フィルムには、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、脂肪酸アミド系、シリカ系の剥離剤等で剥離処理された、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート等からなるプラスチックフィルムや、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等がある。また、剥離処理を施していない上記フィルムも使用できる。

【0041】
本発明のクリーニング機能付き搬送部材は、以上の構成からなり、その使用に際して、基板処理装置内に、常法に準じて搬送することにより、搬送性良好にして、基板処理装置内に付着する異物、特に断線等の不良の原因となりやすい0.2〜2.0μm程度の粒子径の異物を効率良く、クリーニング除去することができる。

ここで、クリーニングが行われる基板処理装置には、特に限定はなく、例えば、露光装置、レジスト塗布装置、現像装置、アッシング装置、ドライエッチング装置、イオン注入装置、PVD装置、CVD装置、外観検査装置、ウエハプローバ等の各種の処理装置を挙げることができる。本発明では、上記の方法により装置内の異物がクリーニング除去された上記の各基板処理装置を提供できるものである。

【0042】
以下に、本発明を実施例を記載して、より具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例にのみ限定されるものではない。以下、部とあるのは重量部を意味する。また、クリーニング部材の性能評価は、以下のように行った。

<クリーニング部材の性能評価>
除塵性については、クリーニング部材であるクリーニング機能付き搬送部材を、クリーニングシート製造用のライナーフィルム剥離装置(日東精機社製の「HR−300CW」)(以下、「装置A」という)に搬送して、この搬送前後の異物数を測定することで評価した。また、搬送性については、上記装置にてチャックテーブル上に搬送し、真空吸着を行い、真空を解除したのち、リフトピンにてクリーニング機能付き搬送部材をチャックテーブルから剥離できるかどうかで評価した。

【0043】
上記の除塵性の評価において、異物数の測定には、半導体製造用のパターンなしウエハ上異物検査装置(KLA Tencor社製の「SFS6200」)(以下、「装置B」という)を用いた。異物数の測定は、8インチシリコンウエハ(ミラー面)上の0.200um以上の異物(パーティクル)について行った。
搬送前後の異物数から、以下のように、異物除去率を求めた。

<異物除去率の測定算出>
クリーニング対象装置である装置Aへ、まず、新品のシリコンウエハを、そのミラー面を下向きにしてミラー面が搬送アームやチャックテーブルに接触するように搬送し(フェイスダウン搬送)、ミラー面に付着した異物数を測定する(異物数1)。つぎに、クリーニング機能付き搬送部材を数枚搬送し、再度、新品のウエハを上記と同様にフェイスダウン搬送し、ミラー面に付着した異物数を測定する(異物数2)。

上記の両測定値から、下記の式により、異物除去率を算出した。
このように算出した異物除去率を、クリーニング機能付き搬送部材の除塵性(クリーニング効果)のパラメータとして、性能評価した。

(異物数2)
異物除去率=100−────────×100
(異物数1)

【実施例1】
【0044】
アクリル酸2−エチルヘキシル75部、アクリル酸メチル20部およびアクリル酸5部からなるモノマー混合液から得たアクリル系ポリマー(重量平均分子量70万)100部に対して、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート(新中村科学社製の商品名「NKエステル4G」)200部、ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」)3部および光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティケミカルズ社製の商品名「イルガキュア−651」)3部を、均一に混合して、紫外線硬化型の粘着剤溶液Aを調製した。

【0045】
つぎに、図1に示すノズルコーテイング装置として、塗布用ノズルが図4〜図6に示す円筒体の長さL=160mm、直径R=6mm、吐出孔の内径r=2mm、均し部である切り欠き部分の長さt=40mm、切り欠き部分の径方向幅d=1mmであるものを使用して、この塗布用ノズルの切り欠き部分が回転テーブル上に載置した8インチシリコンウエハ(搬送部材)の回転方向と垂直となるように位置合わせしたうえで、上記ウエハを回転させながら、その上に紫外線硬化型の粘着剤溶液Aを、以下の条件で塗布した。

(イ)ノズル移動速度:1.0mm/s
(ロ)テーブル回転数:60rpm
(ハ)塗布方法 :ウエハ中心部からウエハエッジ部
(ニ)吐出量 :2.1ml/s

【0046】
このように搬送部材(8インチシリコンウエハ)上に紫外線硬化型の粘着剤溶液Aを均一に塗布したのち、ホットプレート(ASAP社製の「HB−01」)により、150℃で10分間乾燥し、その塗布面に片面が非シリコーン剥離剤で処理された厚さが25μmの長鎖ポリエステルフィルムからなる保護フィルム(以下、保護フィルムAという)の剥離処理面を貼り合わせた。これに中心波長365nmの紫外線を積算光量1,000mJ/cm2 で照射して、紫外線硬化したクリーニング層を形成した。

このようにして搬送部材(8インチシリコンウエハ)上に紫外線硬化したクリーニング層を有するクリーニング機能付き搬送部材Aを作製した。上記クリーニング層の膜厚は、15.9μmであり、膜厚のばらつきは、R=7.9%であった。

【0047】
また、上記クリーニング層の粘着力および動的粘弾性を調べるため、別途、以下のようにして測定試料を作製し、上記の両特性を測定した。

保護フィルムAの剥離処理面に、紫外線硬化型の粘着剤溶液Aをアプリケーターにより乾燥後の厚さが15μmとなるように塗布し、150℃で10分間クリーンオーブンにより乾燥させ、保護フィルム付き粘着剤Aを作製した。

この保護フィルム付き粘着剤Aの粘着剤面をシリコンウエハのミラー面に貼り合わせたのち、中心波長365nmの紫外線を積算光量1,000mJ/cm2 で照射して、紫外線硬化したクリーニング層を形成した。このクリーニング層について、シリコンウエハのミラー面に対する180度引き剥がし粘着力を測定(JIS Z0237に準じて測定)したところ、0.05N/10mm幅であった。

また、上記の保護フィルム付き粘着剤Aの粘着剤面に別の保護フィルムAを貼り合わせたのち、中心波長365nmの紫外線を積算光量1,000mJ/cm2 で照射して、紫外線硬化したクリーニング層を形成した。このクリーニング層について、両面側の保護フィルムA,Aを剥離して、動的粘弾性(試験法:JIS K7198)を測定したところ、1.5Mpaであった。

【0048】
装置Bにより、新品の8インチシリコンウエハのミラー面の0.200μm以上の異物を測定したところ、2個であった。つぎに、このシリコンウエハを、装置Aにミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、再び0.200μm以上の異物数を測定したところ、9,554個(異物数1)であった。

つぎに、クリ−ニング機能付き搬送部材Aを、上記の異物が付着していた装置Aに搬送したところ、支障なく搬送できた。その後に、装置Aに新品の8インチシリコンウエハをミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、0.200μm以上の異物数を測定したところ、2,041個(異物数2)であった。

このようにして測定した異物数1および異物数2から、異物除去率を算出したところ、78.6%であった。

【実施例2】
【0049】
ノズルコーテイング装置における塗布用ノズルとして、図4〜図6に示す円筒体の長さL=160mm、直径R=6mm、吐出孔の内径r=1mm、均し部である切り欠き部分の長さt=40mm、切り欠き部分の径方向幅d=1mmであるものを使用した以外は、実施例1と同様にして、クリーニング機能付き搬送部材Bを作製した。クリーニング層の膜厚は、15.5μmであり、膜厚のばらつきは、R=8.6%であった。

【0050】
装置Bにより、新品の8インチシリコンウエハのミラー面の0.200μm以上の異物を測定したところ、5個であった。つぎに、このシリコンウエハを、装置Aにミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、再び0.200μm以上の異物数を測定したところ、10,521個(異物数1)であった。

つぎに、クリ−ニング機能付き搬送部材Bを、上記の異物が付着していた装置Aに搬送したところ、支障なく搬送できた。その後に、装置Aに新品の8インチシリコンウエハをミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、0.200μm以上の異物数を測定したところ、2,549個(異物数2)であった。

このようにして測定した異物数1および異物数2から、異物除去率を算出したところ、75.8%であった。

【実施例3】
【0051】
ノズルコーテイング装置における塗布用ノズルとして、図4〜図6に示す円筒体の長さL=160mm、直径R=3mm、吐出孔の内径r=1mm、均し部である切り欠き部分の長さt=40mm、切り欠き部分の径方向幅d=0.5mmであるものを使用した以外は、実施例1と同様にして、クリーニング機能付き搬送部材Cを作製した。クリーニング層の膜厚は15.8μmであり、膜厚のばらつきは、R=9.2%であった。

【0052】
装置Bにより、新品の8インチシリコンウエハのミラー面の0.200μm以上の異物を測定したところ、4個であった。つぎに、このシリコンウエハを、装置Aにミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、再び0.200μm以上の異物数を測定したところ、9,934個(異物数1)であった。

つぎに、クリ−ニング機能付き搬送部材Cを、上記の異物が付着していた装置Aに搬送したところ、支障なく搬送できた。その後に、装置Aに新品の8インチシリコンウエハをミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、0.200μm以上の異物数を測定したところ、2,474個(異物数2)であった。

このようにして測定した異物数1および異物数2から、異物除去率を算出したところ、75.1%であった。

【実施例4】
【0053】
エチレン−1,2−ビストリメリテート,テトラカルボン酸二無水物30.0gを、窒素気流下、固形分濃度が30wt%となるように、溶媒である258gのN−メチル−2−ピロリドン中に、前記式(1)で表わされる脂肪族ジアミン(宇部興産社製の商品名「ATBN1300×16」、アミン当量900、アクリロニトリル含有量18%)65.8gおよび2,2′−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン15.0gと、120℃で混合して、反応させた。この反応後、冷却して、粘度:750cpのポリアミック酸樹脂溶液Aを得た。

【0054】
実施例1と同じ塗布用ノズル(円筒体の長さL=160mm、直径R=6mm、吐出孔の内径r=2mm、均し部である切り欠き部分の長さt=40mm、切り欠き部分の径方向幅d=1mm)を備えたノズルコーテイング装置により、上記ポリアミック酸樹脂溶液Aを、実施例1と同様の条件で、搬送部材である8インチシリコンウエハの上に塗布した。

このように塗布したのち、窒素雰囲気中、300℃で2時間熱処理することにより、ポリアミック酸樹脂からポリイミドに変換されたクリーニング層を有するクリーニング機能付き搬送部材Dを作製した。上記クリーニング層の膜厚は、15.1μmであり、膜厚のばらつきは、R=4.6%であった。

【0055】
また、上記クリーニング層の粘着力および動的粘弾性を調べるため、別途、以下のようにして測定試料を作製し、上記の両特性を測定した。

厚さが25μmの10mm角のSUS304箔に、ポリアミック酸樹脂溶液Aをスピンコーターにより乾燥後の厚さが15μmとなるように塗布し、90℃で10分間クリーンオーブンにより乾燥した。ついで、窒素雰囲気中、300℃で2時間熱処理して、ポリアミック酸樹脂をポリイミドに変換したのち、塩化第二鉄溶液に浸漬して基盤を溶解させ、ポリイミド皮膜からなるクリーニング層を形成した。

このクリーニング層について、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180度引き剥がし粘着力を測定(JIS Z0237に準じて測定)したところ、0.03N/10mm幅であった。また、動的粘弾性(引張り強さ)(試験法:JIS K7198)を測定したところ、420MPaであった。

【0056】
装置Bにより、新品の8インチシリコンウエハのミラー面の0.200μm以上の異物を測定したところ、5個であった。つぎに、このシリコンウエハを、装置Aにミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、再び0.200μm以上の異物数を測定したところ、11,051個(異物数1)であった。

つぎに、クリ−ニング機能付き搬送部材Dを、上記の異物が付着していた装置Aに搬送したところ、支障なく搬送できた。その後に、装置Aに新品の8インチシリコンウエハをミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、0.200μm以上の異物数を測定したところ、1,110個(異物数2)であった。

このようにして測定した異物数1および異物数2から、異物除去率を算出したところ、90.0%であった。

【実施例5】
【0057】
ノズルコーテイング装置における塗布用ノズルとして、実施例2と同じもの(円筒体の長さL=160mm、直径R=6mm、吐出孔の内径r=1mm、均し部である切り欠き部分の長さt=40mm、切り欠き部分の径方向幅d=1mm)を使用した以外は、実施例4と同様にして、クリーニング機能付き搬送部材Eを作製した。クリーニング層の膜厚は、15.7μmであり、膜厚のばらつきは、R=6.4%であった。

【0058】
装置Bにより、新品の8インチシリコンウエハのミラー面の0.200μm以上の異物を測定したところ、7個であった。つぎに、このシリコンウエハを、装置Aにミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、再び0.200μm以上の異物数を測定したところ、12,769個(異物数1)であった。

つぎに、クリ−ニング機能付き搬送部材Eを、上記の異物が付着していた装置Aに搬送したところ、支障なく搬送できた。その後に、装置Aに新品の8インチシリコンウエハをミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、0.200μm以上の異物数を測定したところ、2,378個(異物数2)であった。

このようにして測定した異物数1および異物数2から、異物除去率を算出したところ、81.4%であった。

【実施例6】
【0059】
ノズルコーテイング装置における塗布用ノズルとして、実施例3と同じもの(円筒体の長さL=160mm、直径R=3mm、吐出孔の内径r=1mm、均し部である切り欠き部分の長さt=40mm、切り欠き部分の径方向幅d=0.5mm)を使用した以外は、実施例4と同様にして、クリーニング機能付き搬送部材Fを作製した。クリーニング層の膜厚は、15.8μmであり、膜厚のばらつきは、R=5.7%であった。

【0060】
装置Bにより、新品の8インチシリコンウエハのミラー面の0.200μm以上の異物を測定したところ、8個であった。つぎに、このシリコンウエハを、装置Aにミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、再び0.200μm以上の異物数を測定したところ、9,752個(異物数1)であった。

つぎに、クリ−ニング機能付き搬送部材Fを、上記の異物が付着していた装置Aに搬送したところ、支障なく搬送できた。その後に、装置Aに新品の8インチシリコンウエハをミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、0.200μm以上の異物数を測定したところ、1,496個(異物数2)であった。

このようにして測定した異物数1および異物数2から、異物除去率を算出したところ、84.7%であった。

【0061】
比較例1
ノズルコーテイング装置における塗布用ノズルとして、図7,図8に示す円筒体の長さL=160mm、直径R=6mm、吐出孔の内径r=2mmであるものを使用した以外は、実施例4と同様にして、クリーニング機能付き搬送部材Gを作製した。クリーニング層の膜厚は、24.2μmであり、膜厚のばらつきは、R=18.5%であった。

【0062】
装置Bにより、新品の8インチシリコンウエハのミラー面の0.200μm以上の異物を測定したところ、7個であった。つぎに、このシリコンウエハを、装置Aにミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、再び0.200μm以上の異物数を測定したところ、12.486個(異物数1)であった。

つぎに、クリ−ニング機能付き搬送部材Gを、上記の異物が付着していた装置Aに搬送したところ、支障なく搬送できた。その後に、装置Aに新品の8インチシリコンウエハをミラー面を下側にしてフェイスダウン搬送したのち、装置Bにより、0.200μm以上の異物数を測定したところ、7,420個(異物数2)であった。

このようにして測定した異物数1および異物数2から、異物除去率を算出したところ、40.6%であった。

【0063】
上記実施例1〜6のクリ−ニング機能付き搬送部材A〜Fおよび比較例1のクリ−ニング機能付き搬送部材Gについて、除塵性の評価結果(異物数1、異物数2および異物除去率)をまとめて示すと、下記の表1のとおりである。

【0064】
表1
┌────────┬────────┬────────┬─────────┐
│ │ 異物数1 │ 異物数2 │ 異物除去率 │
│ │ (個) │ (個) │ (%) │
├────────┼────────┼────────┼─────────┤
│ │ │ │ │
│ 実施例1 │ 9,554 │ 2,044 │ 78.6 │
│ │ │ │ │
│ 実施例2 │ 10,521 │ 2,549 │ 75.8 │
│ │ │ │ │
│ 実施例3 │ 9,934 │ 2,474 │ 75.1 │
│ │ │ │ │
├────────┼────────┼────────┼─────────┤
│ │ │ │ │
│ 実施例4 │ 11,051 │ 1,110 │ 90.0 │
│ │ │ │ │
│ 実施例5 │ 12,769 │ 2,378 │ 81.4 │
│ │ │ │ │
│ 実施例6 │ 9,752 │ 1,496 │ 84.7 │
│ │ │ │ │
├────────┼────────┼────────┼─────────┤
│ │ │ │ │
│ 比較例1 │ 12,486 │ 7,420 │ 40.6 │
│ │ │ │ │
└────────┴────────┴────────┴─────────┘

【0065】
上記の表1からも明らかなように、実施例1〜6の方法は、塗布用ノズルの先端側に均し部を設けて、ウエハ−ノズル間を狙い膜厚と同程度とすることで、塗布と同時にクリーニング層形成用のワニスを強制的にこそぎ取ることができ、これにより均一な膜厚のクリーニング層を形成できるので、特に0.200μm以上の粒子径を持つ異物に対して高い除去性が得られるクリーニング部材を製造できることがわかる。

【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のクリーニング機能付き搬送部材の製造方法に使用するノズルコーティング装置の一例を示す一部破断側面図である。
【図2】クリーニング機能付き搬送部材の一例を示す断面図である。
【図3】図2のクリーニング機能付き搬送部材の上面図である。
【図4】図1のノズルコーティング装置に使用する塗布用ノズルの正面図である。
【図5】図4の塗布用ノズルの下面図である。
【図6】図4の塗布用ノズルの側面図である。
【図7】従来の塗布用ノズルの正面図である。
【図8】図7の塗布用ノズルの下面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 被塗物(搬送部材:シリコンウエハ)
2 クリーニング層
4 塗布用ノズル
4a 塗布用ノズルの先端面
4b 塗布用ノズルの周面
20 クリーニング層形成用のワニス
31 回転テーブル
42 塗布用ノズルの均し部
a 回転テーブルの回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送部材上に直接または支持シートを介して薄膜状のクリーニング層が形成されてなるクリーニング機能付き搬送部材の製造装置において、上記クリーニング層を形成するためのワニスを搬送部材または支持シートからなる被塗物の上に塗布する装置として、上記被塗物を水平に支持する回転テーブルと、この回転テーブル上に載置された上記被塗物の上に垂直姿勢に配置されると共に、上記被塗物の径方向で水平移動可能に設けられて、上記ワニスを上記被塗物の上に吐出して略円形軌跡に沿う状態に塗布する塗布用ノズルと、このノズル先端における上記回転テーブルの回転方向と対向する側に、この回転方向に対して水平面内で横断する方向へ延びて、ワニス塗布表面を均らす均し部とを具備することを特徴とするクリーニング機能付き搬送部材の製造装置。

【請求項2】
搬送部材上に直接または支持シートを介して薄膜状のクリーニング層が形成されてなるクリーニング機能付き搬送部材の製造方法において、上記クリーニング層を形成するためのワニスを搬送部材または支持シートからなる被塗物の上に塗布するにあたり、上記被塗物を水平に支持する回転テーブルと、この回転テーブル上に載置された上記被塗物の上に垂直姿勢に配置されると共に、上記被塗物の径方向で水平移動可能に設けられたワニス塗布用ノズルと、このノズル先端における上記回転テーブルの回転方向と対向する側に、この回転方向に対して水平面内で横断する方向へ延びるワニス均し部とを具備する塗布装置を使用して、上記被塗物を回転させながらその上に上記ワニスを上記塗布用ノズルから吐出して略円形軌跡に沿う状態に塗布すると共に、その塗布表面を上記均し部で均らすことにより、膜厚のばらつきの低いクリーニング層を形成することを特徴とするクリーニング機能付き搬送部材の製造方法。

【請求項3】
膜厚のばらつきが10%以下であるクリーニング層を形成する請求項2に記載のクリーニング機能付き搬送部材の製造方法。

【請求項4】
請求項3の方法により製造されたクリーニング層の膜厚のばらつきが10%以下であるクリーニング機能付き搬送部材。

【請求項5】
クリーニング層が実質的に粘着性を有しない請求項4に記載のクリーニング機能付き搬送部材。

【請求項6】
基板処理装置内に請求項4または5に記載のクリーニング機能付き搬送部材を搬送することを特徴とする基板処理装置のクリーニング方法。

【請求項7】
請求項6の方法によりクリーニングされた基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−130429(P2006−130429A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323183(P2004−323183)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】