説明

クリール装置の設定方法

【課題】クリ−ル装置において、仕掛けられた給糸体に対応する有効な糸切れセンサの位置(段位置)を自動設定できるようにする。
【解決手段】段・列方向に並設された給糸体2支持用支持部材3a毎に糸切れセンサ9を備え、支持部材3aに仕掛けられた給糸体2から巻取装置7に向けて糸4を引き出すクリール装置1で、対応する列の糸切れセンサ9の信号を受ける制御器11と中央処理装置12とを接続してなり、連続稼働に先立ち、すべての糸切れセンサ9を作動状態にすると共に、巻取装置7を所定の速度で運転して給糸体2からの糸4の引き出しを行わせ、各糸切れセンサ9の出力信号に基づき、各制御器11が対応する列の複数の糸切れセンサ9のうちの糸4の引き出しを検知している糸切れセンサ9の段位置を該当列の制御器11に記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリール装置において、糸切れ検出のために必要な事項を設定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリール装置としては、特許文献1に記載されたものがある。一般に、クリール装置では多数の支持部材(ペグ)が多段多列状に設けられており、これらの支持部材に対して多数個の給糸体が整然と仕掛けられる。このクリール装置上の多数個の給糸体から糸を一斉に引き出し、これを巻取装置等によりビームに巻き取ることで、所定本数の糸が巻かれた巻糸ビームを形成することが行われる。
【0003】
また、クリール装置には、上記特許文献1にも記載されているように、各支持部材に対応して糸の出口部分に糸切れを検出する検出器(糸切れセンサ)が設けられている。さらにクリール装置には、各支持部材の列単位で1以上の列に対応して設けられ、対応する列の複数の糸切れセンサからの信号を受ける複数の制御器が設けられ、この各制御器はクリール装置や巻取装置等の装置全体を制御する中央処理装置に接続されている。
【0004】
各制御器は、対応する列のいずれかの糸切れセンサから糸切れ信号が発せられると、中央処理装置に対しその旨を示す信号を出力する。このとき、中央処理装置は巻取装置等を停止させて給糸体からの糸の引き出しを停止させ、糸の補修に備える。
【0005】
ところで、この種のクリール装置において、そこに設けられる給糸体の支持部材の数は、あらゆる仕様の巻糸ビームの形成に対応できるように、巻糸ビームに巻かれる糸本数として考えられる最大数のものに応じて設けられている。しかし、クリール装置に実際に仕掛けられる給糸体の数は、必ずしもそのような最大数とは限らず、むしろ、それよりも少ない場合が多いといえる。
【0006】
ただし、糸切れセンサは、全ての支持部材に対応して設けられているため、仕掛けられた給糸体の数が支持部材の数よりも少ない場合、給糸体が仕掛けられていない箇所の支持部材に対応する糸切れセンサ(有効ではない糸切れセンサ)は、常に糸の引き出しが行われていないことを示す信号(糸切れを示す信号)を出力することとなる。従って、クリール装置からの糸の引き出し(巻取装置による巻き取り)を開始するに当たり、有効ではない糸切れセンサによる影響を排除する必要がある。
【0007】
従来では、各糸切れセンサ毎または糸切れセンサの列毎に、オン/オフスイッチを設け、作業者が上記の有効ではない糸切れセンサのスイッチをオフにするという作業を行っていた。ところが、クリール装置の構成と実際に仕掛けられる給糸体の数との差が大きい場合に、作業者は、非常に多くの糸切れセンサのスイッチ操作を行わなければならなくなり、その作業は極めて煩雑なものとなる。
【0008】
例えば、糸切れセンサ毎にオン/オフスイッチが設けられたクリール装置であって、そのクリール装置が1000個の給糸体を搭載可能に構成されている場合において、実際に仕掛けられる給糸体の数が800個程度の場合、作業者は、約200個のスイッチの1つ1つに対しそれをオフとする操作を行わなければならず、非常に手間のかかる煩わしい作業であるといえる。
【0009】
また、上記のスイッチ設定作業は作業者の手作業で行われるため、設定ミス(スイッチの切り換え忘れ)も発生し易い。特に、仕掛けられる給糸体の数を増やす場合、それまでに給糸体が仕掛けられていなかった箇所にも給糸体が仕掛けられることになるが、この場合においてスイッチの切り換え忘れがあると、給糸体が仕掛けられているにもかかわらず、糸切れセンサが作動しないこととなる。この結果、その給糸体で糸切れが発生しても、作業者が気付くまでは糸切れが看過されることとなり、形成された巻糸ビームは部分的に糸本数の少ないものとなるため、次行程以降でその処理が問題となる。
【特許文献1】特開2001−26376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、多段多列状に配設された複数の給糸体支持用の支持部材と、各支持部材に対応して設けられた複数の糸切れセンサとを備えると共に、対応する列の糸切れセンサからの信号を受ける複数の制御器と糸切れセンサ全体の糸切れを監視するための中央処理装置とを接続してなるクリール装置において、仕掛けられた給糸体に対応する有効な糸切れセンサの位置を自動設定することにより、その設定のための作業による作業者の負担および設定ミスを無くすことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題のもとに、本発明は、多数の給糸体を支持するために多段多列状に配設された複数の支持部材を備えると共に、各支持部材に対応して設けられた複数の糸切れセンサを備え、各支持部材に仕掛けられた給糸体から巻取装置に向けて糸を引き出すクリール装置であって、対応する列の糸切れセンサからの信号を受ける複数の制御器と、この複数の制御器が接続されてクリール装置全体における糸切れを監視する中央処理装置とを備えてなるクリール装置において、クリール装置の連続稼働に先立ち、全ての糸切れセンサを作動状態にすると共に、上記巻取装置を所定の速度で運転して仕掛けられた給糸体からの糸の引き出しを行わせ、その状態での上記各糸切れセンサの出力信号に基づき、各制御器が、対応する列の複数の糸切れセンサのうちの糸の引き出しを検知している糸切れセンサを有効と判断してこの有効な糸切れセンサの段位置を記憶することを特徴としている。
【0012】
また本発明では、上記有効な糸切れセンサの段位置の記憶に加え、各制御器が、上記有効な糸切れセンサの数を糸本数として記憶し、中央処理装置からの糸本数の検出値を要求する指令信号の出力に伴って、上記記憶した糸本数を示す信号を中央処理装置に対し出力するものとし、中央処理装置が、上記の各制御器から出力される信号から糸本数を計数し、その計数値と予め設定された糸本数とを比較し、その比較結果が一致しない場合には異常と判断するものとしてもよい。
【0013】
さらには、上記クリール装置が、中央処理装置と複数の制御器とを直列接続する伝送ラインと、中央処理装置と各制御器とをバス接続する別の伝送ラインとを備えるものとしてもよい。そして、上記中央処理装置からの指令信号が、上記直列接続の伝送ラインを介して最上流側の制御器に対し出力され、最上流側の制御器が、上記指令信号の入力に伴って上記バス接続の伝送ラインを介して記憶している糸本数を示す信号を出力すると共に、下流側の制御器に対し上記直列接続の信号伝送ラインを介して出力終了を示す信号を出力する処理動作を実行し、下流側の制御器は、上流側の制御器からの上記出力終了信号の入力に伴って上記最上流側の制御器と同じ処理動作を実行し、中央処理装置は、最下流側の制御器からの上記出力終了信号が入力された時点で上記比較を実行するものとしてもよい。
【0014】
なお、中央処理装置から出力される糸本数検出指令信号と各制御器から出力される出力終了信号とは同じ信号として構成できる。
【0015】
また、上記クリール装置を、各制御器に付設された表示ランプを備えると共に、各制御器に対し対応する列の支持部材の数(段数)が設定されるものとし、各制御器(11)が、上記で記憶された糸本数と設定された支持部材の数(段数)とを比較し、両者が一致するか否かを上記表示ランプによって視認可能とすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有効な糸切れセンサ、すなわち給糸体が仕掛けられている支持部材に対応して設けられて糸の引き出しを検知することが可能な糸切れセンサとそうでない糸切れセンサとが自動的に制御器に対して設定されるものであり、糸切れセンサ自体の作動・不作動をハード的に切り換えるものではないため、その様な切り換え作業が不要となる。従って、その設定動作は、作業者に対し何ら負担を掛けることなく、短時間で行われ、しかも手作業に伴う設定ミスという事態は発生しなくなる。
【0017】
有効な糸切れセンサの数(計数値)と設定値とを比較することにより、予定された数の糸が全て正常に引き出されており、かつその全ての糸が対応する糸切れセンサで正常に検知されていることが把握できる。すなわち、例えば、給糸体の仕掛け忘れや給糸体からの糸の引き出し異常、あるいは給糸体が正しく仕掛けられているにもかかわらず糸切れセンサに異常がある等の場合、上記比較結果が一致しないこととなり、これの異常が直ちに把握できるため、これらの異常を見過ごして連続稼働が開始されるということを防止することができる。
【0018】
各制御器が、対応する列の段数(支持部材の数)と有効な糸切れセンサの数とを比較し、その比較結果を視認可能とすることにより、上記の比較結果が一致しない場合において、その異常箇所の判別が容易に行える。すなわち、例えば、クリール装置上において給糸体を巻取装置に近い側から詰めて仕掛けた場合、給糸体が存在する列のうち、最終列を除いては有効なセンサの数と段数とが一致するはずである。従って、この最終列を除く列中の給糸体または糸切れセンサに異常がある場合、それが表示ランプにより簡単に判別可能となり、異常原因を修復する作業が短時間で行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔クリール装置1の機械的な構成〕
図1ないし図4は、本発明が適用されるクリール装置の一例としてのV字形のクリール装置1の機械的な構成を示している。図1ないし図4において、クリール装置1は、多数の給糸体2を支持するために、平面的に見て、V字形の形態の機枠3を有しており、これらの機枠3に取り付けられた給糸体枠3bは、上下(縦)方向に複数並設された支持部材3aを横方向に多数列備えている。
【0020】
すなわち、支持部材3aは、多段多列状にクリール装置1に配設されている。本実施例のクリール装置1では、支持部材3aは、縦方向の1列毎に10個設けられると共に、その支持部材3aの列が横方向にN列設けられ、合計10×N個の給糸体2を支持できるよう構成されているものとする。そして、整経工程では、必要な数の給糸体2が、上記の10×N個の支持部材3aに対して適当な位置に配置される。
【0021】
すべての給糸体2から引き出された糸4は、各支持部材3aに対応して設けられた複数の糸切れセンサ9を経由してから、筬5によって合流し、所定幅の1つのシート状となる。このシート状の糸4は、複数のガイドロール6を経て巻取装置7の巻取ビーム8に巻き取られる。
【0022】
糸切れセンサ9は、各列の10個の支持部材3a毎に設けられ、対応の支持部材3aに仕掛けられた給糸体2から引き出される糸4と接触して案内する部材を介し、糸4の引き出しに伴う糸振動や動きを検出するもの、あるいは糸4の張力を検出するもの等のものにより構成する。なお、本実施例では、各支持部材3aの列毎に制御器11が設けられ、各列の10個の糸切れセンサ9が、当該列に対応して設けられている制御器11に接続されているものとする。従って、制御器11の数は列数Nと一致する。これらの糸切れセンサ9および制御器11は、糸切れ検出装置10の一部を構成している。
【0023】
〔糸切れ検出装置10の電気的な構成〕
次に図5は、糸切れ検出装置10の電気的な構成を示している。クリール装置1は、仕掛けられたすべての給糸体2から引き出された多数の糸4の糸切れを検出するために、糸切れ検出装置10を備えている。
【0024】
この糸切れ検出装置10は、図5に示すように、複数(10×N個)の糸切れセンサ9および複数(N個)の制御器11のほかに、中央処理装置12を備える。糸切れセンサ9は支持部材3a毎に設けられ、その支持部材3aに仕掛けられた給糸体2からの糸4の引き出しを検知し、それを示す信号を出力する。各列の制御器11は、対応の列における10個の糸切れセンサ9からの信号を受ける。また、中央処理装置12は、全制御器11と接続されてクリール装置1全体の糸切れを監視する。
【0025】
図5において、#1、#2、・・、#Nは、各列の制御器11に対応しており、同時に各制御器11のアドレス番号にもなっている。これらの制御器11は、入力ポート15、出力ポート18、制御部16、記憶部17および表示ランプ21により構成されている。
【0026】
中央処理装置12とN個の制御器11とは、第1の伝送ライン13により直列接続されている。すなわち、#1の制御器11の入力ポート15は中央処理装置12に接続され、#1、#2、・・、#N−1の制御器11の出力ポート18はそれぞれ1つ下流側で後続の#2、・・、#Nの制御器11の入力ポート15に接続されている。また、#Nの制御器11の出力ポート18は中央処理装置12に接続されている。
【0027】
なお、この第1の伝送ライン13は、例えば中央処理装置12が各制御器11に対し糸本数や糸切れ等の情報を要求する際にその指令信号を出力するものである。そして、この第1の伝送ライン13を介して中央処理装置12から出力される指令信号は、まず#1の制御器11の入力ポート15に入力され、#2以降の下流側の制御器11に対しては、その入力ポート15に対し、1つ上流側の制御器11の出力ポート18から同様の信号が順次入力される。従って、ここでは、中央処理装置12に最も近い#1の制御器11が最上流側の制御器となる。
【0028】
また中央処理装置12と各制御器11とは、動作モード設定用の1本(1ビット)の第2の伝送ライン14によりバス接続されており、中央処理装置12からの動作モード設定用の信号は、第2の伝送ライン14を共通の信号伝送路として#1、#2、・・、#Nの制御器11の入力ポート15に並列的に入力される。
【0029】
この第2の伝送ライン14は、後述の有効な糸切れセンサ9の数(糸本数)およびその位置(糸位置)の検出/設定動作を実行するための動作モードおよび後述の糸切れ位置検出動作を実行するための動作モードを各制御器11に対し設定させるためのものであって、そのライン信号の出力状態によって各制御器11がいずれかのモードに設定されるものとする。なお、以下では、この第2の伝送ラインにおける信号の出力状態がOFFの場合に各制御器11が糸位置設定モードに設定され、ONの場合に糸切れ位置検出モードに設定されるものとする。
【0030】
このように各制御器11の入力ポート15には、第1の伝送ライン13を介しての中央処理装置12または上流側の制御器11からの信号及び第2の伝送ライン14を介しての中央処理装置12からの信号のほか、各列における10個の給糸体2の糸切れセンサ9からの信号を並列的に入力し、その入力処理を行う。
【0031】
さらに、各制御器11の出力ポート18は、第3の伝送ライン19によっても中央処理装置12に対してバス接続されている。この第3の伝送ライン19は、例えば糸切れに伴う停止信号や糸切れ位置の情報を示す信号を各制御器11から中央処理装置12へ送るために設けられる。
【0032】
本発明による有効な糸切れセンサ9の位置(糸位置)の設定は、クリール装置1の連続稼働を開始する前に行われる初期設定の事項であるが、このような初期設定の事項としてはこれ以外にアドレス設定等がある。各制御器11に対するアドレス設定は、各制御器11が、それぞれに設定されたアドレスを利用し、自己を特定しながら中央処理装置12との間で各種の信号をやり取りするために設定される。アドレス設定については、種々の手法があり、例えば、各制御器11にディップスイッチ等のハード的な設定装置を組み込み、作業者が各設定装置を操作することによって手動で設定するものとする等がある。本発明では、このアドレス設定の手法に関しては特に限定されず、どのようなものであってもよい。
【0033】
また,他の初期設定事項として、必要に応じて各列に搭載可能な給糸体2の数つまり支持部材3aの数(段数)を制御器11に対し設定することも行われる。この段数設定についてもその手法は特に限定されず、例えば、アドレス設定と同様に、各制御器11に組み込まれた手動操作されるスイッチにより設定する等であってもよい。前述のように、この例では、各制御器11が支持部材3aの列毎に設けられると共に上下方向に列設される支持部材3aの数(段数)は10段としてある。このため、各列の制御器11には、この支持部材3aの数である10が段数として設定される。
【0034】
なお、段数を設定する目的は、各制御器11に対し、各列の支持部材3aの数(段数)、すなわち各制御器11に接続されている糸切れセンサ9の数を把握させることにより、有効な糸切れセンサ9の位置及び数の検出に伴い、各制御器11が、自身に接続されている糸切れセンサ9の数とその中の有効な糸切れセンサ9の数とを比較できるようにし、両者の一致・不一致を制御器11に付設された表示ランプ21の点灯で視認できるようにするためである。これは、本来、全ての支持部材3aに対し給糸体2が仕掛けられているはずの列において、異常(例えば、給糸体2の仕掛け忘れ、あるいは給糸体2または糸切れセンサ9の異常)が発生した場合に、それを把握するのに有効である。
【0035】
上記のようにして、初期設定の段階でアドレス設定等が行われた後、本発明の有効な糸切れセンサ9の位置の設定動作が実行される。また、本実施例では、この有効な糸切れセンサ9の位置の設定動作に加え、有効な糸切れセンサ9の数(糸本数)の検出を行い、各制御器11で検出された糸本数の総数を中央処理装置12において設定値と比較する動作が実行される。以下では、この両動作を合せて「糸本数・位置検出動作」といい、その動作を実行する動作モードを糸本数・位置検出モードという。
【0036】
この糸本数・位置検出動作に当たり、各制御器11は、糸本数・位置検出モードに設定される。このモード設定は、前述のように、第2の伝送ライン14における中央処理装置12からの信号の出力状態(ON/OFF)で切り換えられるものであり、この例では、ライン上の信号がOFFのときに糸本数・位置検出モードに設定されるものとする。なお、本実施例では、切り換えられる他のモード、すなわち、ライン上の信号がONのときに設定される動作モードを、給糸体2から引き出される糸4の糸切れの発生に伴って、その位置を検出するために行われる糸切れ位置検出動作を実行するモードとする。以下では、この糸本数・位置検出動作及び糸切れ位置検出動作について詳細に説明する。
【0037】
〔糸本数・位置検出動作〕
各制御器11に対する有効な糸切れセンサ9の位置(糸位置)の設定は、制御器11が、自身に接続されている複数(本実施例では10個)の糸切れセンサ9のうち、仕掛けられた給糸体2に対応する糸切れセンサ9の位置(段位置)を把握するために行われる。
【0038】
すなわち、前述のように、クリール装置1が10段×N列の支持部材3aを備えている場合について例示すると、クリール装置1には、最大で10×N個の給糸体2が搭載可能となっている。しかし、これはあくまでも最大搭載可能数であって、クリール装置1に実際に仕掛けられる給糸体2の数は、この10×N個よりも少ない場合が殆どである。仕掛けられる給糸体2の数が少ない場合、クリール装置1上では、支持部材3aに給糸体2が仕掛けられていない部分が存在することになる。
【0039】
これに対し、糸切れセンサ9は、支持部材3aに対応して設けられており、クリール装置1上において支持部材3aと同じ数(=給糸体2の最大搭載可能数)だけ設置されている。従って、給糸体2が仕掛けられていない位置にも糸切れセンサ9が存在するため、この糸切れセンサ9が作動状態であると、その出力信号は常に糸無し状態(糸切れ状態)を示すものとなる。従って、クリール装置1の連続稼働時に行われる糸切れ検出に当たり、この給糸体2に対応していない、つまり有効ではない糸切れセンサ9の信号を除外する必要がある。このため、各制御器11が、自身に接続された対応する列の糸切れセンサ9のうち、有効ではないものをその位置で設定(記憶)しておくことにより、糸切れ検出中は、この有効ではない糸切れセンサ9からの信号を無視することができる。
【0040】
また、有効な糸切れセンサ9の数(糸本数)を事前に把握することで、仕掛けられた全ての給糸体2からの糸4の引き出しが、糸切れセンサ9により正常に検知されているか否かを判断することができる。
【0041】
すなわち、予定された数の給糸体2が全て仕掛けられると共にその仕掛けられた給糸体2からの糸4の引き出しが正常に行われ、かつ、全ての糸切れセンサ9が正常に動作しているのであれば、上記した有効な糸切れセンサ9の位置を検出・設定するだけで十分である。しかし、場合によっては、給糸体2の仕掛け忘れにより給糸体2の数が予定の数よりも少なかったり、あるいは、給糸体2が全て正常に仕掛けられているにも関わらず、給糸体2からの糸4の引き出しの異常や糸切れセンサ9自体の異常が原因で、ある特定の給糸体2について糸4の引き出しを検知できなかったりする場合がある。さらには、糸切れセンサ9自体の異常や外乱の影響により、給糸体2が仕掛けられていない位置に対応する糸切れセンサ9が糸4の引き出しを検知したことを示す信号を出力する場合もある。
【0042】
全てが正常である場合、有効な糸切れセンサ9の数、すなわち糸4の引き出しを検知している糸切れセンサ9の数は、予定された仕掛けるべき給糸体2の数と一致するはずであるから、有効な糸切れセンサ9の数を計数し、その計数値を予定の給糸体2の数(設定値)と比較することにより、給糸体2が漏れなく全て仕掛けられ、かつ、仕掛けられた給糸体2からの糸4の引き出しが対応する糸切れセンサ9により正常に検出されているか否かを判別することができる。
【0043】
図6は、上述した糸本数・位置検出動作の手順を示している。図6において、糸本数・位置検出動作は、初期設定段階で、各制御器11に対するアドレス設定等の完了後に実行される。
【0044】
中央処理装置12は、所定のタイミング例えばアドレス設定の完了の時点、または段数設定の完了の時点で、糸本数・位置検出動作を開始(START)し、第2の伝送ライン14における信号の出力状態をOFFとする(ステップ301)。これにより各制御器11の制御部16は、第2の伝送ライン14における信号の出力状態(OFF)から糸本数・位置検出モードであると判断し、糸本数・位置検出モードに設定された状態となる(ステップ302)。なお第2の伝送ライン14における信号の出力状態がONの場合には、糸本数・位置検出モードをOFFとし、終了(END)に至る(ステップ308)。
【0045】
これに伴って、糸切れセンサ9が作動状態にされると共に、巻取装置7が正規の運転速度よりも低い速度で運転を開始し、各糸切れセンサ9による糸4について引き出し有無の検出が開始される(ステップ303)。糸切れセンサ9は、糸4の引き出しをその振動や動きによって検知し、それを示す信号を対応する制御器11に出力するものであり、各列における複数の糸切れセンサ9の検出信号は、対応する制御器11の入力ポート15へそれぞれ並列的に入力される。また、各制御器11は、その制御部16において対応する列の各糸切れセンサ9からの信号を監視し、その出力信号が糸4の引き出しを検知していない状態(具体的には、所定期間糸4の振動や動きが検知されない状態)となったことで、その糸切れセンサ9に対応する給糸体2からの糸4の引き出しが検知されていないと判断する。
【0046】
なお、上記のように、本実施例では、糸本数・位置検出動作にあたり、巻取装置7が低速で運転される。これは、初期設定の段階では、まだ仕掛けるべき予定の全ての給糸体2から糸4が正常に引き出される状態となっておらず、初期に引き出された糸2が正規の本数とはなっていない場合が多いためである。詳しくは、この初期設定の段階では、引き出された糸2が正規の本数でないと、これを正規に巻き取れる糸2から切り離して捨てるという処理が行われる。従って、この初期設定の段階で巻取装置7を高速で運転すると、このような捨糸(糸の無駄)が多くなってしまう。このため、そのような捨糸の量を少なくすべく巻取装置7を低速で運転して糸本数・位置検出動作を行うものである。但し、捨糸の量を考慮する必要が無い場合は、糸本数・検出動作において、巻取装置7を、正規の運転時の速度に近い速度、または同じ速度で運転してもよい。
【0047】
次いで、各制御器11の制御部16は、第1の伝送ライン13を介して中央処理装置12または上流側の制御器11から出力される糸本数およびその位置の検出を指令する指令信号が入力されたか否かの判別を行う(ステップ304)。ここでは、この指令信号は単純なパルス信号(1ショットパルスのトリガ信号)とする。そして、中央処理装置12または上流側の制御器11からのこのパルス状の指令信号が入力されると、各制御器11の制御部16は、そのパルスの立上がりを検出して入力があった(指令信号ON)と判断し、ステップ305へ進む。また、指令信号の入力が確認されない場合(指令信号OFFの場合)、ステップ304の前に戻り、指令信号の入力が確認されるまでステップ304を繰り返す。すなわち、ステップ303の糸切れセンサ9による糸4の検出を継続した状態で上流側からの指令信号の入力に備えた待機状態となる。
【0048】
ステップ305では、各制御器11の制御部16が、上記指令信号のパルスの立上がりを検出した時点で糸4の引き出しを検知している糸切れセンサ9の数(糸本数)およびその位置(糸位置)を保持し、これを記憶部17に記憶させる。
【0049】
次いで、各制御器11は、上記ステップ305で記憶した有効な糸切れセンサ9の数(糸本数)に対応する信号として、その糸本数と同じ数のパルスを含むパルス列信号を、その出力ポート18から第3の伝送ライン19を介して中央処理装置12へ出力する(ステップ306)。
【0050】
そして、各制御器11は、上記第3の伝送ライン19への糸本数を示すパルス列信号の出力が終了した地点で、自身の糸本数・位置検出動作を終了したことを示す信号(出力終了信号)として、入力した指令信号と同じ1ショットパルス状の信号を下流側の制御器11へ出力すると共に(ステップ307)、糸本数・位置検出モードをOFFとし(ステップ308)、自身の処理動作を終了する。
【0051】
下流側の制御器11は、上流側の制御器11から上記の出力終了信号が出力されると、これを自身に対する糸本数および位置の検出を指令する指令信号と判断し、上記と同じ処理を実行する。
【0052】
このようにして最上流側の#1の制御器11から順に上記した糸本数・位置検出動作が実行され、各制御器11に対し、対応する列の糸切れセンサ9のうちの有効な糸切れセンサ9がその位置によって設定されると共に、各制御器11から中央処理装置12に対し、この有効な糸切れセンサ9の数、すなわち対応する列の給糸体2から引き出されている糸4のうちの糸切れセンサ9によって検知されている糸4の数(糸本数)を示すパルス状の信号が出力される。そして、最下流側の#Nの制御器11から上記出力終了信号が中央処理装置12に対し出力されると、中央処理装置12は、各制御器11で一通り上記処理動作が実行されたと判断し、続く比較動作を実行する。
【0053】
この中央処理装置12での比較動作は、前述のように、各制御器11毎に検出された糸本数の総数が、予定された仕掛けるべき給糸体2の数と一致するか否かを判断するものである。従って、中央処理装置12には、仕掛けられる給糸体2の数(総数)が予め設定値として入力されている。中央処理装置12は、上記のように上流側の制御器11から第3の伝送ライン19を介して順次出力される糸本数を示すパルス列信号のパルスの数(=糸本数の検出値)を内蔵されたカウンタ(図示せず)により計数し、最下流側の#Nの制御器11から上記出力終了信号が出力されるまでこの計数を継続する。そして、最下流側の#Nの制御器11からこの出力終了信号が出力された時点で、それまでの計数値と上記設定値とを比較し、この比較の結果、両者が一致した場合には、有効とすべき糸切れセンサ9が全て正常に動作し、かつ、予定の給糸体2が全て正常に仕掛けられて正常に引き出されていると判断され、糸本数・位置検出動作が正常に完了したと判断して次の動作に移行することができる。また、比較結果が一致しない場合は、糸切れセンサ9あるいは給糸体2のいずれかに異常が生じている可能性がある。このため、各給糸体2をチエックしたり、あるいは検出ミスの可能性もあるため、上記の糸本数・位置検出動作を再度実行したりしてみる等が考えられる。
【0054】
上記の糸本数・位置検出動作の過程で、各制御器11により、対応する列の支持部材3aの数(段数)と有効な糸切れセンサ9の数(糸本数)との比較を実行し、その比較結果を視認可能なように、制御器11に付設された表示ランプ21により表示させることもできる。これは、クリール装置1では、給糸体2は巻取装置7に近い方から詰めて仕掛けられるのが一般的であり、このような場合において、上記の中央処理装置12による比較動作の結果、検出された糸本数の計数値と設定値とが一致しないときに、どの部分に異常があるかを探すうえで有効である。
【0055】
具体的には前述のように、N×10個の支持部材3aを備えたクリール装置1において、仕掛けられる給糸体2の総数が〔10×(N−5)+4〕個であるとし、これらの給糸体2がクリール装置1上で巻取装置7に近い方の支持部材3aの列から順に詰めて仕掛けられたとする。この場合、クリール装置1上の巻取装置7から遠い方の4列には給糸体2は全く仕掛けられず、また、5列目は10段のうちの4段だけに給糸体2が仕掛けられることとなる。したがって、この場合では、クリール装置1上の巻取装置7から遠い方の5列については、仕掛けられた給糸体2の数(有効な糸切れセンサ9の数/糸本数)と支持部材3aの数とが一致しないため、この列に対応する制御器11に付設された上記表示ランプ21は、一致していないことを示す表示状態(例えば、消灯)となる。また、巻取装置7に近い方から(N−5)列については、すべての支持部材3aに給糸体2が仕掛けられるため、この列に対応する制御器11に付設された表示ランプ21は、検出された糸本数と支持部材3aの数とが一致することを示す表示状態(例えば、点灯)となる。
【0056】
上記中央処理装置12による比較動作の結果、計数値と設定値とが一致しない場合、給糸体2の仕掛け忘れ、あるいはいずれかの給糸体2または糸切れセンサ9に異常が発生していると判断される。この異常箇所が、上記の巻取装置7に近い方から(N−5)列内である場合、点灯するはずの表示ランプ21(巻取装置7に近い方から(N−5)列内の支持部材3aの各列に対応する各制御器11に付設された表示ランプ21)のいずれかが消灯した状態となり、どの列に異常が生じているかが容易に把握でき、異常箇所の発見が容易に行える。また、上記異常箇所が、巻取装置7から遠い方の5列内である場合、上記(N−5)列に対応する表示ランプ21は全て点灯状態となる。この表示ランプ21の表示状態により、異常箇所が上記巻取装置7から遠い方の5列内であると把握することができ、作業者は、上記5列のみを調べれば済むため、この場合にも異常箇所の発見が容易に行える。
【0057】
〔糸切れ位置検出動作〕
上記により、各制御器11に対する有効な糸切れセンサ9の位置の設定が正常に完了した場合、初期設定が完了したと判断され、中央処理装置12は、クリール装置1および巻取装置7等の稼働を開始する。また、このクリール装置1の稼働中は、各糸切れセンサ9による対応する給糸体2からの糸4の引き出しが検出され、糸切れの監視が行われる。そして、糸切れが検出されると、中央処理装置12は、クリール装置1および巻取装置7等の作動を停止すると共に、糸切れ位置検出動作を実行する。
【0058】
なお、ここでいう糸切れ位置検出動作とは、クリール装置1の稼動中にいずれかの給糸体2から引き出される糸4に糸切れが発生した場合において、その糸切れが生じた給糸体2の位置を検出するために行われる動作である。また、上記の糸切れ検出は、各制御器11が、入力ポート15を介して接続された複数(10個)の糸切れセンサ9の出力信号を監視し、その出力信号が糸切れを示す状態となったことを確認することにより行われ、各制御器11は、この状態を確認した時点で、中央処理装置12に対し糸切れ検出を示す信号を出力する。
【0059】
図7は、この糸切れ位置検出動作の動作手順を示している。図7において、糸切れ位置検出動作の開始(START)後、先ず初期設定が完了しているか否かの判断が行われ(ステップ401)、前述のアドレス設定や有効な糸切れセンサ9の位置の設定等の初期設定が完了していない(NO)と判断された場合は、糸切れ位置検出動作が実行されずに終了(END)とされる。また、初期設定が完了している(YES)と判断された場合は、上記のようにクリール装置1や巻取装置7等の稼働が開始されると共に、ステップ402に進み、各制御器11の制御部16が、その状態における中央処理装置12からの第2の伝送ライン14における信号の出力状態を判断する。
【0060】
ステップ402では、初期設定が完了状態にあるという条件のもとで、第2の伝送ライン14における信号の出力状態を判別され、このライン信号の出力状態がOFFの場合は、各制御器11は、糸切れ位置検出モードには設定されず、ステップ403に進んで、糸切れセンサ9からの出力信号による給糸体2から引き出される糸4の糸切れの監視が行われる。なお、ここで、中央処理装置12からの第2の伝送ライン14における信号の出力状態がOFFの状態で糸切れ監視が行われるとしたが、この第2の電装ライン14における信号の出力状態は、前述の糸本数・位置検出モードを示す出力状態と同じである。しかしこの場合は、上記のように初期設定が完了状態にあるという条件が付加されており、この条件のもとでは、第2の伝送ライン14における信号の出力状態が同じくOFFであっても、各制御器11は、糸本数・位置検出モードに設定されず、糸切れ監視を行う状態となる。
【0061】
各制御器11による対応する糸切れセンサ9からの信号の監視の結果、いずれかの糸切れセンサ9からの信号が糸切れを示す状態となったことが検出されると、その糸切れを検出した制御器11は、直ちに中央処理装置12に対し糸切れ発生を伝えるべく、第3の伝送ライン19を介し、糸切れの発生を示すパルス状の信号を出力する(ステップ404)。なお、このパルス状の信号は、位置情報等を含んでいない単なるパルス信号(トリガ信号)である。
【0062】
中央処理装置12は、この糸切れを監視する状態で第3の伝送ライン19を介して上記パルス信号が入力されると、糸切れが発生したと判断し、巻取装置7等を停止させて給糸体2からの糸の引き出しを停止すると共に、第2の伝送ライン14における信号の出力状態を、糸切れ位置検出モードを示す状態つまりONの状態とする。
【0063】
糸切れを検出した制御器11は、その制御部16において第2の伝送ライン14における信号の出力状態が糸切れ位置検出モードを示す状態(ON)であるか否かを判別し(ステップ405)、第2の伝送ライン14上の信号がONの状態の場合は、糸切れ位置検出モードに設定された状態となる(ステップ406)。
【0064】
ここで、上記のように中央処理装置12が、第2の伝送ライン14における信号の出力状態を糸切れ位置検出モードを示すONの状態とすると、上記糸切れを検出した制御器11以外の全ての制御器11も、同様に糸切れ位置検出モードに設定された状態となる(ステップ406' )。そして、各制御器11は、糸切れ位置検出モードに設定された状態で、第1の伝送ライン13を介した中央処理装置12または上流側の制御器11からの糸切れ位置の出力を要求する指令信号の出力に備える(ステップ407、407' )。なお、この糸切れ位置の出力を要求する指令信号は、例えばパルス状の指令信号(1ショットパルスのトリガ信号)とすることができる。
【0065】
この状態で、中央処理装置12から上記した糸切れ位置の出力を要求する指令信号が出力され、上記糸切れを検出した制御器11が上流側の制御器11(最上流側の制御器11の場合は中央処理装置12)からこの上記指令信号を受けると(ステップ407)、この糸切れを検出した制御器11は、そのパルスの立上がりを検知し、その時点で、まず自身のアドレスに対応する信号として、例えばアドレスと一致する数のパルスを含むパルス列信号を出力する(ステップ408)。
【0066】
次いで、所定の時間間隔をおいて、糸切れを検出した糸切れセンサ9の段数(糸切れが発生した給糸体2の位置=糸切れ位置)を示す信号を出力する(ステップ409)。この信号も上記と同じパルス列信号とすればよい。
【0067】
なお、上記の所定の時間間隔は、アドレスを示す信号と糸切れ位置を示す信号とを区別するためのものであって、例えばこの時間間隔を500msecに設定し、中央処理装置12のカウンタには300msecを超えた時点で新たにパルスの入力がなければ、カウンとを一旦終了するように設定する。そうすれば、まず、アドレスに対応する数のパルスが全て入力された時点で一旦カウントを終了し、それを記憶した上でカウント値をリセットし、次いで糸切れ位置に対応するパルスのカウントが開始される。なおこの場合、当然ながらアドレスおよび糸切れ位置に対応するパルス列信号のパルス周期は300msecよりも短く設定される。
【0068】
このようにして糸切れを検出した制御器11は、上記のように自身のアドレスおよび糸切れ位置を情報として含む信号を出力した後、糸切れ位置出力終了を示す信号として、入力した指令信号と同じパルス状の信号を下流側の制御器11へ出力し(ステップ410)、糸切れ位置検出動作の終了(END)に至る。
【0069】
下流側の制御器11は、上記の上流側の制御器11から出力される糸切れ位置出力終了を示す信号を、自身に対する糸切れ位置の出力を要求する指令信号と判断し、上記と同様の処理を実行する。但し、糸切れを検出していない制御器11では、上記ステップ407' で上記指令信号を受けても、上記のような自身のアドレスおよび糸切れ位置の情報を含む信号の出力は行われず、糸切れ位置出力終了を示す信号のみを下流側へ出力し、糸切れ位置検出動作の終了(END)に至る(ステップ410' )。
【0070】
ここで、上記のように、この糸切れ位置検出動作における中央処理装置12または上流側の制御器11から出力される糸切れ位置の出力を要求するパルス状の指令信号は、前述の糸本数・位置検出動作における糸本数およびその位置の検出を指令する指令信号と同じ1ショットパルスのトリガ信号であり、この両司令信号自体には違いはない。このため、各制御器11は、そのときに設定されている動作モードに応じて処理内容を判断する機能を有している。
【0071】
詳しくは、各制御器11は、糸本数・位置検出モードの状態では、上記指令信号が入力されると、糸本数・位置検出動作の開始指令と判断し、糸切れ位置検出モードの状態では、上記指令信号が入力されると、糸切れ情報を出力する指令と判断する。従って、各制御器11に対する指令信号は、そのモードに対応する所定の処理を実行するためのきっかけとなる程度のものでよく、処理内容は制御器11側で判断されるため、中央処理装置12から第1の伝送ライン13を介して出力される信号は、パルス信号等の単純な信号でよいものとなる。
【0072】
中央処理装置12は、最下流側の#Nの制御器11から上記指令信号が出力されると、糸切れ位置の検出が終了したと判断し、再び第2の伝送ライン14における信号の出力状態が糸切れ位置検出モードを示すものではない状態とする。
【0073】
中央処理装置12には表示器20が付設されており、上記した糸切れに関する情報(アドレスおよび段数)が表示される。作業者は、この情報を読み取ることによって、糸切れした給糸体2を容易に特定できる。このため、修復作業が迅速に行える。なお、糸切れ修復作業が完了した後、作業者の操作によって巻取装置7等は、再び正規の運転を開始する。また、上記糸切れに関する情報は、必要に応じて中央処理装置12内にデータとして記憶し、過去複数回分の情報を確認できるようになっている。
【0074】
本発明は、上記実施例に限定されず、変形して実施することもできる。上記実施例では、第2の伝送ライン14を1本(1ビット)であるから、オン・オフ信号の組み合わせにより2つのモード設定が可能である。第2の伝送ライン14を2本(2ビット)とすれば、4つのモード設定が可能となり、例えば一方の第2の伝送ライン14および他方の第2の伝送ライン14における信号の各出力状態が、ON−ONの場合にアドレス設定モード、ON−OFFの場合に段数設定モード、OFF−ONの場合に糸本数検出モード、OF−OFFの場合に糸切れ検出モードとする等が考えられる。従って、この第2の伝送ライン14を2本とすれば、上記した糸本数検出動作および糸切れ検出動作以外に、上記の例示のように、手動でなく、アドレス設定動作、段数設定動作等をプログラムにより自動で行えるようになる。
【0075】
上記実施例では、第2の伝送ライン14における信号の出力状態に応じて各種のモードが設定されるとしたが、このモード設定については必ずしも第2の伝送ライン14における信号の出力状態のみによって決定されるものでなくてもよく、例えば、別の前提条件との組み合わせで決定されるものとしてもよい。すなわち、第2の伝送ライン14における信号の出力状態が同じであっても、その前提、例えば、初期設定が完了しているか否か、等によって異なるモードに設定されるようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施例では、制御器11が支持部材3aの各列に対応して設けられるものとしたが、これに限らず、制御器11は、支持部材3aの列を単位として複数列、例えば、2列または3列毎に設けられるものとしてもよい。さらには、各制御器11が対応する支持部材3aの列の数を同じとするものに限らず、例えば、隣り合う2つの制御器11、11のそれぞれに対応する支持部材3aの数が異なるものであってもよい。
【0077】
なお、各制御器11に複数の列が対応している場合に、有効な糸切れセンサ9の位置の設定は、列と位置の組み合わせ(例えば、対応する複数列のn列目のm段目)と設定されるものであってもよいし、単なる続き番号(例えば、制御器11に2列の糸切れセンサ9が対応している場合に、巻取装置7に近い列の上側から順に1〜20)と設定するようにしてもよい。なお、上記のような単なる続き番号で設定する場合、中央処理装置12において、この位置番号から、その制御器11に対応する複数列の何列・何段目の糸切れセンサ9かを把握できるように、各制御器11に対応する列数・段数の情報を設定しておくのが好ましい。
【0078】
さらに中央処理装置12と各制御器11との間の情報のやり取りについては、前記特許文献1に開示されているように、シリアル通信によって行うものであってもよい。シリアル通信を使用する場合、糸本数の検出は、ポーリングによって中央処理装置12が上流側の制御器11から下流側の制御器11へと順に通信を行い、制御器11から与えられた数に関する情報を積算するようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、図1の形態いわゆるV字形のクリール装置1に限定されず、どのような形態のクリール装置にも適用できる。また、図1の例では、支持部材3aの列が2つの給糸体枠3bに分けて並置されているが、この場合に、第1の伝送ライン13による制御器11の並列接続を、給糸体枠3b毎に独立したものとし、給糸体枠3b毎に中央処理装置12を設けることもできる。すなわち、2本の第1の伝送ライン13が中央処理装置12に接続され、各第1の伝送ライン13が、それぞれ1つの給糸体枠3bに対応する制御器11を直列接続する。また、これとは別に、各給糸体列に対応する制御器11の全てを第1の伝送ライン13で直列接続してもよい。この場合、給糸体枠3b単位で接続するようにして、一方の給糸体枠3bの端部の給糸体列に対応する制御器11と他方の給糸体枠3bの端部の給糸体列に対応する制御器11とを接続するようにしてもよいし、給糸体枠3bとは無関係に給糸体列の位置に応じた順で接続するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】クリール装置1の平面図である。
【図2】クリール装置1の側面図である。
【図3】クリール装置1の給糸体2の支持部分の拡大断面図である。
【図4】クリール装置1の給糸体2の支持部分の拡大側面図である。
【図5】クリール装置1における糸切れ検出装置10のブロック線図である。
【図6】糸本数・位置検出動作のフローチャート図である。
【図7】糸切れ位置検出動作のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0081】
1 クリール装置
2 給糸体
3 機枠、3a 支持部材 3b 給糸体枠
4 経糸
5 筬
6 ガイドロール
7 巻取装置
8 巻取ビーム
9 糸切れセンサ
10 糸切れ検出装置
11 制御器
12 中央処理装置
13 第1の伝送ライン
14 第2の伝送ライン
15 入力ポート
16 制御部
17 記憶部
18 出力ポート
19 第3の伝送ライン
20 表示器
21 表示ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の給糸体(2)を支持するために多段多列状に配設された複数の支持部材(3a)を備えると共に、各支持部材(3a)に対応して設けられた複数の糸切れセンサ(9)を備え、各支持部材(3a)に仕掛けられた給糸体(2)から巻取装置(7)に向けて糸(4)を引き出すクリール装置(1)であって、対応する列の糸切れセンサ(9)からの信号を受ける複数の制御器(11)と、この複数の制御器が接続されてクリール装置(1)全体における糸切れを監視する中央処理装置(12)とを備えてなるクリール装置(1)において、
クリール装置(1)の連続稼働に先立ち、全ての糸切れセンサ(9)を作動状態にすると共に、上記巻取装置(7)を所定の速度で運転して仕掛けられた給糸体(2)からの糸(4)の引き出しを行わせ、その状態での上記各糸切れセンサ(9)の出力信号に基づき、各制御器(11)が、対応する列の複数の糸切れセンサ(9)のうちの糸(4)の引き出しを検知している糸切れセンサ(9)を有効と判断してこの有効な糸切れセンサ(9)の段位置を記憶する、ことを特徴とするクリール装置の設定方法。
【請求項2】
さらに各制御器(11)は、上記有効な糸切れセンサ(9)の数を糸本数として記憶し、中央処理装置(12)から糸本数の検出値を要求する指令信号が出力されると、上記記憶した糸本数を示す信号を中央処理装置(12)に対し出力し、中央処理装置(12)は、各制御器(11)から出力される信号から糸本数を計数し、その計数値と予め設定された糸本数とを比較し、その比較結果が一致しない場合には異常と判断する、ことを特徴とする請求項1記載のクリール装置の設定方法。
【請求項3】
上記クリール装置(1)が、中央処理装置(12)と複数の制御器(11)とを直列接続する伝送ライン(13)と、中央処理装置(12)と各制御器(11)とをバス接続する別の伝送ライン(19)とを備え、
上記中央処理装置(12)からの指令信号は、上記直列接続の伝送ライン(13)を介して最上流側の制御器(11)に対し出力され、最上流側の制御器(11)は、上記指令信号の入力に伴って上記バス接続の伝送ライン(19)を介して記憶している糸本数を示す信号を出力すると共に、下流側の制御器(11)に対し上記直列接続の信号伝送ライン(13)を介して出力終了を示す信号を出力する処理動作を実行し、下流側の制御器(11)は、上流側の制御器(11)からの上記出力終了信号の入力に伴って上記最上流側の制御器(11)と同じ処理動作を実行し、中央処理装置(12)は、最下流側の制御器(11)からの上記出力終了信号が入力された時点で上記比較を実行する、ことを特徴とする請求項2記載のクリール装置の設定方法。
【請求項4】
中央処理装置(12)から出力される糸本数検出指令信号と各制御器(11)から出力される出力終了信号とは同じ信号である、ことを特徴とする請求項3記載のクリール装置の設定方法。
【請求項5】
上記クリール装置(1)は、各制御器(11)に付設された表示ランプ(21)を備えると共に、各制御器(11)に対し対応する列の支持部材(3a)の数(段数)が設定されており、各制御器(11)は、上記で記憶された糸本数と設定された支持部材(3a)の数(段数)とを比較し、両者が一致するか否かを上記表示ランプ(21)によって視認可能とする、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項記載のクリール装置の設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−160499(P2006−160499A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357635(P2004−357635)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】