説明

クロストリジウム遺伝子

本開示内容は、プロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする必須クロストリジウムディフィシレ遺伝子の同定と、抗微生物剤の同定における使用、そして、サブユニットワクチンにおける抗原としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする必須クロストリジウムディフィシレ遺伝子の同定と、抗微生物剤の同定における使用、そして、サブユニットワクチンにおける抗原としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クロストリジウムは、重要なヒトの病原体となりうる絶対嫌気性菌であるグラム陽性菌属である。例えば、C.ディフィシレは、軽度の抗生物質関連の下痢/大腸炎から生命を脅かす状態、例えば偽膜性大腸炎まで変化する状態を有する院内感染の主要な原因である。疾患は、C.ディフィシレを増殖させ、毒素が媒介する疾患を引き起こす、腸微生物相を減少させる広域スペクトル抗生物質の投与によって顕在化する。治療は通常、抗生物質療法、すなわちバンコマイシンまたはメトロニダゾールを用いるが、これらは疾患を悪化させ得る。腸の天然の微生物相を妨げずに特異的にC.ディフィシレを殺すかまたは無能化する薬剤の開発、または、脆弱な患者を保護するサブユニットワクチンが非常に求められている。C.ディフィシレは、熱、放射線、化学物質性の消毒薬および乾燥に抵抗力がある胞子を形成する。さらに、胞子は抗生物質治療に抵抗力があり、C.ディフィシレを強い不応性微生物病原体にする。さらに、ヒトの疾患を引き起こすクロストリジウム種の例は、ボツリヌス菌中毒を引き起こす毒素を生産するC.ボツリヌス、食中毒および壊疽を含む多くの症状を引き起こすC.パーフリンジェンス、および、破傷風を引き起こすC.テタナス(破傷風菌)である。
【0003】
クロストリジウム感染を制御しうる薬剤の同定が強く望まれ求められており、この微生物および/または胞子の生存に必須であるタンパク質をコードする遺伝子を同定することで促される。これは、必須タンパク質の活性を中和する小分子インヒビターの同定、必須タンパク質を標的とし不活性化するワクチンの開発、または、必須タンパク質を結合し不活性化する治療用モノクローナル抗体の開発のいずれかによる。
【0004】
ワクチンは多種多様な感染症から保護する。したがって、多くの近年のワクチンは病原体の防御抗原から作られており、この抗原は分子クローニングによって単離し、精製される。これらのワクチンは「サブユニットワクチン」として知られている。サブユニットワクチンの開発は近年多くの研究の焦点となっていた。新規な病原体の出現および抗生物質抵抗性の成長は、新規なワクチンを開発する必要性と、サブユニットワクチンの開発において有用な更なる候補分子を同定する必要性をもたらした。同様に、ゲノムおよびプロテオミクス研究による新規のワクチン抗原の発見は、特に細菌病原体に対する新規のサブユニットワクチン候補物質の開発を可能にしている。しかしながら、サブユニットワクチンは殺したかまたは弱毒化した病原体ワクチンの副作用を回避する傾向があるが、その「純粋な」状態とは、サブユニットワクチンが保護を与えるために十分な免疫原性を常に持っているとは限らないことを意味する。
【0005】
ソルターゼB(Sortase B)(SrtB)またはサブファミリ-2ソルターゼは、表面タンパク質を細菌細胞壁エンベロープのペプチドグリカンに固定するグラム陽性細菌において見られる膜システイントランスペプチダーゼである。これはペプチド転移反応を引き起こすものであり、この反応では、表面タンパク質基質が保存性の高い細胞壁局在化シグナルで切断され、細菌表面上に表出するためのペプチドグリカンと共有結合でつなげられる。ソルターゼは、配列、膜トポロジ、ゲノム位置決めおよび切断部位選択性に基づいて異なるクラスおよびサブファミリに分類される。ソルターゼBは、保存性の高いNPQTNモチーフのスレオニンとアスパラギンとの間で表面タンパク質前駆体を切断し、その後ペプチドグリカンに共有結合する。それはヘム鉄結合表面タンパク質IsdCを細胞壁エンベロープに固定するために必要であり、ソルターゼBをコードする遺伝子はS.アウレウスおよびB.アンスラシスのisd遺伝子座内に位置する。また、発病に関与しうる。ソルターゼBは、分泌のためのシグナルペプチドおよび膜固定のためのストップトランスファシグナルとして機能するN末端領域を含有する。C末端には、触媒TLXTCシグネチャー配列を含有する。このXは通常セリンである。SrtBをコードする遺伝子およびその標的は通常、同じ遺伝子座に集まっている。
【0006】
本開示内容は、630株のC.ディフィシレ・ソルターゼB遺伝子であるCD2718の特徴づけと、この遺伝子がC.ディフィシレ細胞の生存に必須の遺伝子であるという発見に関する。
【0007】
本発明の態様によると、図1aに示すヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるポリペプチド、または、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で図1aを含むヌクレオチド配列にハイブリダイズし、プロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子の、該ポリペプチドの活性を調節する薬剤を同定するための使用が提供される。
【0008】
核酸分子のハイブリダイゼーションは、2つの相補的な核酸分子が互いにある程度水素結合したときに生じる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、核酸を取り巻く環境の条件、ハイブリダイゼーション法の性質、および、使用する核酸分子の組成および長さに応じて変化しうる。ストリンジェンシーの特定の程度を達成するために必要なハイブリダイゼーション条件に関する計算は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001)、および、Tijssen, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology- Hybridization with Nucleic Acid Probes Part I, Chapter 2 (Elsevier, New York, 1993)において述べられている。Tは、核酸分子のある鎖の50%がその相補的な鎖にハイブリダイズする温度である。以下は、ハイブリダイゼーション条件の例示的な設定であり、限定するものではない。
【0009】
非常に高いストリンジェンシー(ハイブリダイズするために少なくとも90%の同一性を共有する配列を得る)
ハイブリダイゼーション: 5×SSC、65℃、16時間
洗浄2回: 各々、2×SSC、室温(RT)、15分
洗浄2回: 各々、0.5×SSC、65℃、20分
高ストリンジェンシー(ハイブリダイズするために少なくとも80%の同一性を共有する配列を得る)
ハイブリダイゼーション: 5×〜6×SSC、65℃〜70℃、16〜20時間
洗浄2回: 各々、2×SSC、室温、5〜20分
洗浄2回: 各々、1×SSC、55℃〜70℃、30分
低ストリンジェンシー(ハイブリダイズするために少なくとも50%の同一性を共有する配列を得る)
ハイブリダイゼーション: 6×SSC、室温、55℃、16〜20時間
洗浄少なくとも2回: 各々、2×〜3×SSC、室温、55℃、20〜30分
【0010】
本発明の一態様によれば、プロテアーゼ阻害活性を有する薬剤の同定のためのスクリーニング方法であって、以下の工程を含む方法が提供される。
i) 以下からなる群から選択される核酸分子によってコードされるポリペプチドを提供する、
a) 図1aに示すヌクレオチド配列を含む核酸分子、
b) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で上記(a)に示す配列にハイブリダイズし、プロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子
ii) 試験する少なくとも一の候補薬剤を提供する
iii) 上記の(i)と(ii)の組み合わせである調製物を形成する、そして、
iv) 該ポリペプチドの活性に対する該薬剤の効果を試験する。
【0011】
本発明のさらに好適な方法では、前記ポリペプチドは、図1bのアミノ酸配列またはその活性な一部を含むかまたはそれからなる。
【0012】
本発明の他の態様によれば、プロテアーゼポリペプチドと薬剤との結合を決定するためのモデリング方法であって、以下の工程を含む方法が提供される。
i) 図1bのアミノ酸配列を含むかこれからなるポリペプチドと薬剤とのフィッティング操作を行うための演算手段を提供する、そして、
ii) 該フィッティング操作の結果を分析し、薬剤とポリペプチドとの結合を定量化する。
【0013】
タンパク質の結合体の理論的な設定は当分野で知られており、タンパク質の機能的領域への化学的実体の結合を測定するため、また、タンパク質構造に対する突然変異の影響を測定するための、三次元のタンパク質構造のモデリングに利用されうる多数のコンピュータプログラムがある。これは、結合体にも、このような実体の結合部位にも適用してよい。タンパク質および/またはタンパク質リガンドの演算設定は、ある分子が標的タンパク質またはポリペプチドと十分に同じかどうか決定するために必要な様々な演算分析を必要とする。このような分析は、現在のソフトウェアアプリケーション、例えばQUANTA(Molecular Simulations社、ウォルサム、マサチューセッツ)バージョン3.3のMolecular Similarityアプリケーションで、そして、添付のユーザーズガイド、第3巻、134−135頁に記載されているように実行されてよい。Molecular Similarityアプリケーションは、異なる構造間、同一構造の異なる立体構造間、および同一構造の異なる部分間の比較を可能にする。各構造は名前で識別される。一構造は標的(すなわち固定構造)として識別される。残りすべての構造は実施(working)構造(すなわち可動構造)である。厳密なフィッティング法を用いた場合、実施構造が変換され、標的構造と最適なフィットが得られるように変えられる。
【0014】
当業者は、標的と結合する能力について化学的実体または断片をスクリーニングする多様な方法の一つを利用してよい。スクリーニング方法は、機械が読み取り可能な記憶媒体から生じる、コンピュータスクリーン上の標的の視覚的検査によって開始されてよい。次いで、選択された断片または化学的実体は、結合ポケット内の様々な方向に置かれるか、留められる。
【0015】
当業者が個々の化学的実体または断片を連結するのを促す有用なプログラムには、CAVEAT (Molecular Recognition in Chemical and Biological Problems, Special Pub., Royal Chem. Soc, 78, pp. 182-196 (1989)のP. A. Bartlett et al, "CAVEAT: A Program to Facilitate the Structure- Derived Design of Biologically Active Molecules")が含まれる。CAVEATは、カリフォルニア大学バークレー校(カリフォルニア)から入手可能である。3Dデータベースシステム、例えばMACCS-3D(MDL Information Systems、サンリアンドロ、カリフォルニア)。これは、Y. C. Martin, "3D Database Searching in Drug Design", J. Med. Chem., 35, pp. 2145-2154 (1992)、および、HOOK(Molecular Simulations、バーリントン、マサチューセッツから入手可能)において概説される。
【0016】
一旦薬剤が最適に選択されるかまたは設計されると、上記のように、次いで、その結合性質を向上させるかまたは修飾するためにその原子または側鎖基のいくつかに置換を作製してよい。一般に、最初の置換は保存性が高い。すなわち、置換基は、元の基とおよそ同一のサイズ、形状、疎水性、および電荷を有するであろう。分子の演算分析および設計、並びにソフトウェアとコンピュータシステムは、米国特許第5978740号に記載され、これは出典明記によってここに援用される。
【0017】
本発明の一態様によれば、以下からなる群から選択されるポリペプチドが提供される。
i) 図1aに示すヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドまたはその抗原性断片、
ii) (i)に定義されるヌクレオチド配列に遺伝コードの結果として生成されるヌクレオチド配列によってコードされ、プロテアーゼ活性を有するポリペプチド、
iii) 図1bに示す、少なくとも一のアミノ酸残基の付加、欠失または置換によって修飾されているアミノ酸配列を含み、ワクチンとして使用するためのポリペプチド。
【0018】
修飾したポリペプチドまたは変異ポリペプチドは、一または複数の置換、付加、欠失、トランケーション、これらいずれかの組み合わせによってアミノ酸配列が異なっていてよい。好適な変異体の中には保存的アミノ酸置換によって参照ポリペプチドとは異なるものがある。このような置換は、所定のアミノ酸を同等の特徴を有する他のアミノ酸に置換するものである。以下のアミノ酸の非限定的な列挙は保存的置換(類似)と考える。a)アラニン、セリンおよびスレオニン、b)グルタミン酸およびアスパラギン酸、c)アスパラギンおよびグルタミン、d)アルギニンおよびリジン、e)イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびバリン、およびf)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン。最も好ましいのは、変化する参照ポリペプチドと同じ生物学的機能および活性を保持するかまたは亢進する変異体である。
【0019】
一実施態様では、変異ポリペプチドは、本明細書において例示される完全長アミノ酸配列と、少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性、なおより好ましくは少なくとも97%の同一性、および最も好ましくは少なくとも99%の同一性を有する。
【0020】
本発明の好適な実施態様では、前記ポリペプチドは図1aに示すヌクレオチド配列によってコードされる。
【0021】
本発明の他の好適な実施態様では、前記ポリペプチドは、図1bのアミノ酸配列またはその抗原性部分によって表される。
【0022】
本発明の他の態様によれば、ワクチンとして使用するための本発明によるポリペプチドをコードする核酸分子が、提供される。
【0023】
本発明の更なる態様によれば、微生物感染に対するワクチン接種に用いられるワクチン組成物であって、以下からなる群から選択されるポリペプチドを含有し、
i) 図1aに示すヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドまたはその抗原性断片、
ii) (i)に定義されるヌクレオチド配列に遺伝コードの結果として生成されるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
iii) 図1bに示す、少なくとも一のアミノ酸残基の付加、欠失または置換によって修飾されているアミノ酸配列を含み、プロテアーゼ活性を有するポリペプチド、
場合によってアジュバントおよび/またはキャリアを含有する、ワクチン組成物が提供される。
【0024】
本発明の好適な実施態様では、前記組成物はアジュバントおよび/またはキャリアを含む。
【0025】
本発明の好適な実施態様では、前記アジュバントは、GMCSF、インターフェロンγ、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFαおよびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される。
【0026】
本発明のさらに他の実施態様では、前記アジュバントは、TLRアゴニスト、例えばCpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、一リン酸化リピドA、ポリI:Cおよびこれらの誘導体である。
【0027】
本発明の好適な実施態様では、前記アジュバントは、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)などの細菌細胞壁誘導体である。
【0028】
アジュバントは、免疫細胞の活性を調整することによって抗原に対する特定の免疫応答を増強する物質または手順である。アジュバントの例には、例として、共刺激分子、フロイントアジュバント、ムラミルジペプチド、リポソームに対するアゴニスト抗体が含まれる。ゆえに、アジュバントは免疫修飾物質である。キャリアは免疫原性分子であり、第二分子に結合すると後者に対する免疫応答を増強するものである。キャリアなる用語は、以下のように解釈される。キャリアは免疫原性分子であり、第二分子に結合すると後者に対する免疫応答を増強するものである。抗原の中には、本質的に免疫原性ではないが、キーホールリンペットヘモシアニンまたは破傷風毒素などの外因性タンパク質分子と結合すると抗体応答を生成することが可能なものがある。このような抗原はB細胞エピトープを含むが、T細胞エピトープを含まない。このようなコンジュゲートのタンパク質部分(「キャリア」タンパク質)により、後に抗原特異的B細胞を刺激するヘルパーT細胞を刺激し、プラズマ細胞に分化させ、抗原に対する抗体を生産させるT細胞エピトープが提供される。
【0029】
本発明の好適な実施態様では、前記微生物感染は、クロストリジウム菌種属の細菌種が原因となる。
【0030】
本発明の好適な実施態様では、前記細菌種は、C.ディフィシレ、C.ボツリヌス、C.パーフリンジェンスまたはC.テタニからなる群から選択される。
【0031】
本発明の更なる好適な実施態様では、前記クロストリジウム種は、C.ディフィシレである。
【0032】
本発明のワクチン組成物は、注射、例えば噴霧薬または点鼻薬の吸入による鼻腔内スプレーを含む任意の従来の手段によって投与されてよい。投与は、例えば、静脈内、腹膜内、筋肉内、腔内、皮下または皮内であってよい。本発明のワクチン組成物は有効量で投与される。
「有効量」は、単回または更なる投薬により、所望の応答を生産するワクチン組成物の量である。特定の細菌性疾患を治療する場合、感染性因子によって抗原刺激されると、所望の応答により保護が生じる。
【0033】
ワクチンの量は、もちろん、年齢、身体的条件、サイズおよび重量を含む個々の患者のパラメーター、治療の継続期間、(ある場合には)同時治療の性質、投与の経路、そして、健康専門家の知識および専門知識内の要因等に依存するであろう。これらの要因は当業者によく知られており、慣例的な実験のみにより対処されうる。個々の構成成分またはこれらの組み合わせの最大投薬量は、免疫を引き起こすために十分に用いられることが一般に好ましい。
つまり、妥当な医学見解に従って最も高い安全な用量である。しかしながら、患者が、医学上の理由、心理学的な理由または実質的な任意の他の理由のためにより低用量または許容できる用量を主張してもよいことは、当業者が当然理解できることであろう。
【0034】
被検体に投与されるワクチンの用量は、異なるパラメーターに従って、特に使用する投与様式および被検体の状態に従って、選択されうる。被検体における応答が用いた初回用量では不十分であった場合には、患者の耐性が許す範囲で高用量(または異なる局在運搬経路による事実上の高用量)が用いられてよい。
【0035】
通常、ワクチンの用量は、当分野の任意の標準的な手順によって、調製され、有効免疫量で投与される。ワクチン組成物の投与のための他のプロトコールは当業者に知られており、このとき用量、注射の計画、注射の部位、投与様式などは上記とは異なる。ワクチン組成物のヒト以外の哺乳動物への投与(例えば、試験目的または獣医学の治療目的のために)は、上記と実質的に同じ条件下で行われる。ここで用いる被検体は、哺乳動物、好ましくはヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジまたはヤギなどである。
【0036】
本発明の好適な実施態様では、少なくとも一の更なる抗菌薬を含有する本発明によるワクチン組成物が提供される。
【0037】
本発明の好適な実施態様では、前記薬剤は、第二の異なるワクチンおよび/または免疫原性薬(例えば細菌性ポリペプチドおよび/または多糖類抗原)である。
【0038】
本発明の更なる態様によれば、微生物感染または微生物感染から生じる状態の治療に用いるための、本明細書に記載のポリペプチドが提供される。
【0039】
本発明の好適な実施態様では、前記微生物感染はクロストリジウム感染である。
【0040】
本発明の好適な実施態様では、前記の微生物感染から生じる状態は、大腸炎、偽膜性大腸炎、下痢、壊疽、ボツリヌス菌中毒または破傷風からなる群から選択される。
【0041】
本発明の他の態様によれば、本発明に記載のポリペプチド、核酸分子またはワクチン組成物の有効量により、前記被検体に予防接種をすることを含む、被検体を免疫化する方法が提供される。
【0042】
本発明の好適な方法では、前記被検体はヒトである。
【0043】
本明細書の記載および特許請求の範囲の全体にわたって、「含む」、「含有する」、そしてこれら言葉の変形、例えば「含んでいる」、「含む」とは「を含むがこれに限らず」を意味し、他の部分、添加物、構成成分、整数または工程を除外する(および除外しない)ものではない。
【0044】
本明細書の記載および特許請求の範囲の全体にわたって、文脈で特別に示されない限り、単数は複数を包含する。特に、不定冠詞が使われる場合、明細書は、前後関係で示されない限り、単数だけでなく複数も考慮されると理解される。
【0045】
本発明の特定の態様、実施態様または実施例と関連して記載される形質、整数、特徴、化合物、化学的部分または基は、適合しない限り、ここに記載される他のいかなる態様、実施態様または実施例にもあてはまることが理解される。
【0046】
本発明の実施態様は、以下の図を参照して例としてのみ記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1aはプロセシングされたCD2718のヌクレオチド配列であり、図1bは、成熟CD2718のアミノ酸配列である。
【0048】
材料および方法
細胞株
Δ630erm:C.ディフィシレ株630(Mullany laboratory)の配列決定された株のエリスロマイシン耐性誘導体。
CA434:大腸菌ドナー細胞株。
【0049】
C.ディフィシレの遺伝子不活性化のClostron法はラクトコッカス・ラクティス由来の修飾したグループIIイントロンの再標的化に基づく。天然では、このグループIIイントロンは、ラクトコッカス・ラクティスのItrBに挿入している。目的の挿入のこの天然システムは、クロストリジウム内の対象とする遺伝子内にグループIIイントロンを標的化するミントンラボラトリーによって修飾されている(Heap et al., 2007)。
【0050】
CD2718のための標的は、TargeTronウェブサイト(http://wwvv.siqmaaldrich.com/iife-science/functional-genomics-and-rnai/tarqetron.html)上でSigmaによって提供されるアルゴリズムを使用して設計した。このプログラムからの出力により、3つの変性プライマーIBS、EBS2およびEBS15が生成され、これらは、EBSユニバーサルプライマーおよびTargeTron鋳型(Sigma)とともに、SOE PCRにおいて用いられる。このSOE PCRは、グループIIイントロンに変化(3つの変性プライマーに導入された)を組み込むものであり、これによりイントロンが選択遺伝子に標的化される。SOE PCRは、TargeTronガイドライン(Sigma)に従って実行した。
【0051】
次いで、PCR生成物は、製造業者のプロトコールに従って、MinEluteゲル抽出キット(Qiagen)を使用してゲル抽出し、pGEM T−Easy(Promega)にクローニングした。次いで、挿入物を配列決定し、その後、製造業者のプロトコールに従って、HindIII/BsrGI(NEB)を用いた制限酵素消化を行った。次いで、挿入物(グループIIイントロン)は、Heap et al., (2007)によって構築されたC.ディフィシレ特異的プラスミドであるpMTL007にライゲートした。ライゲーション物は0.025mm白色VSWPフィルター(Fisher)を用いて透析し、その後、ワンショットTOP10電気コンピテント細胞(Invitrogen)に電気穿孔した。次いで、挿入物を配列決定し、その後、再標的化pMTL007−CD2718プラスミドをCA434電気コンピテント大腸菌に移した。ミントンラボラトリーによって提供されるガイドラインと組み合わせて再標的化を行った。簡単にいうと、pMTL007−CD2718を保持する大腸菌ドナー(CA434株)は、嫌気的条件下で、1mlのペレット状の大腸菌(pMTL007−CD2718を保持する)を200μlのC.ディフィシレΔ630ermと再懸濁することによって、静止期C.ディフィシレΔ630ermと結合させた。この結合は、非選択BHIプレート上で終夜をかけて行った。結合混合物は、1mlのPBSに再懸濁し、C.ディフィシレサプリメント(Fluka)を含有するBHI(Brain Heart Infusion)プレート上で平板培養し、大腸菌でなく、C.ディフィシレの成長を促した。次いで、コロニーは、選択プレート(BHI+チアムフェニコール)上に移し、pMTL007−CD2718プラスミドの存在について選択した。次いで、pMTL007−CD2718のグループIIイントロンの再標的化は、IPTGによって誘導し、その後、リンコマイシンBHIプレートを用いて、染色体内の再標的化グループIIイントロンの存在について選択した(一旦活性化されると、グループIIイントロンはermB遺伝子を発現する)。pMTL007−CD2817プラスミドの喪失は、チアムフェニコール感受性を用いて試験した。リンコマイシン耐性でありチアムフェニコール感受性であるクローンをPCRとサザンブロットによってスクリーニングした。
【実施例】
【0052】
sortaseノックアウトのための設定およびクローニングは成功し、プラスミドの第一選別は、チアムフェニコールを用いて成功裏に行った(pMTL007−CD2718プラスミドの存在について選択する)。しかしながら、イントロンの染色体への統合(リンコマイシン選別)およびプラスミドの喪失についてのその後の選別は成功しなかった。これは、3回別々に繰り返したが、リンコマイシン選別ではコロニーは検出されなかった。これは、イントロンの再標的化が成功しなかったことを示す。
【0053】
他の標的は、sortase CD2718の標的化と並行して成功裏に変異した。例えば、p−クレゾール産生に関与する遺伝子の2つの標的は成功裏に標的化され、変異体が同定された。したがって、C.ディフィシレ株Δ630ermおよびR20291(2006年のストークマンデヴィル病院発生由来の株)での遺伝子不活性化変異体の構築は成功した。これは、sortaseが微生物の生存に必須であり、それゆえに変異ができなかったことを示す。
【0054】
参考文献
1.Sebaihia, M. et at. The multidrug-resistant human pathogen Clostridium difficile has a highly mobile, mosaic genome. Nat Genet 38, 779-786 (2006)。
2.Heap, J. T., Pennington, O. J., Cartman, S. T., Carter, G. P. & Minton, N. P. The ClosTron: A universal gene knock-out system for the genus Clostridium. Journal of Microbiological Methods 70, 452-464 (2007)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1aに示すヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるポリペプチド、または、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で図1aを含むヌクレオチド配列にハイブリダイズし、プロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子の、該ポリペプチドの活性を調節する薬剤を同定するための使用。
【請求項2】
プロテアーゼ阻害活性を有する薬剤の同定のためのスクリーニング方法であって、
i) 以下からなる群から選択される核酸分子によってコードされるポリペプチドを提供する、
a) 図1aに示すヌクレオチド配列を含む核酸分子、
b) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で上記(a)に示す配列にハイブリダイズし、プロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子
ii) 試験する少なくとも一の候補薬剤を提供する
iii) 上記の(i)と(ii)の組み合わせである調製物を形成する、そして、
iv) 該ポリペプチドの活性に対する該薬剤の効果を試験する
工程を含む方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、図1bのアミノ酸配列またはその活性な一部を含むかまたはそれからなる、請求項2に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
プロテアーゼポリペプチドと薬剤との結合を決定するためのモデリング方法であって、
i) 図1bのアミノ酸配列を含むかこれからなるポリペプチドと薬剤とのフィッティング操作を行うための演算手段を提供する、そして、
ii) 該フィッティング操作の結果を分析し、薬剤とポリペプチドとの結合を定量化する
工程を含む方法。
【請求項5】
i) 図1aに示すヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドまたはその抗原性断片、
ii) (i)に定義されるヌクレオチド配列に遺伝コードの結果として生成されるヌクレオチド配列によってコードされ、プロテアーゼ活性を有するポリペプチド、
iii) 図1bに示す、少なくとも一のアミノ酸残基の付加、欠失または置換によって修飾されているアミノ酸配列を含み、ワクチンとして使用するためのポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、図1aに示すヌクレオチド配列によってコードされる、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、図1bのアミノ酸配列またはその抗原性部分を含むかまたはそれからなる、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項8】
ワクチンとして使用するための、図1bのアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項9】
微生物感染に対するワクチン接種に用いられるワクチン組成物であって、
i) 図1aに示すヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドまたはその抗原性断片、
ii) (i)に定義されるヌクレオチド配列に遺伝コードの結果として生成されるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、
iii) 図1bに示す、少なくとも一のアミノ酸残基の付加、欠失または置換によって修飾されているアミノ酸配列を含み、プロテアーゼ活性を有するポリペプチド、
からなる群から選択されるポリペプチドを含有し、
場合によってアジュバントおよび/またはキャリアを含有する、ワクチン組成物。
【請求項10】
前記組成物がアジュバントおよび/またはキャリアを含む、請求項9に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
前記アジュバントが、GMCSF、インターフェロンγ、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターロイキン12、インターロイキン23、インターロイキン17、インターロイキン2、インターロイキン1、TGF、TNFαおよびTNFβからなる群から選択されるサイトカインからなる群から選択される、請求項9または10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
前記アジュバントが、TLRアゴニスト、例えばCpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、一リン酸化リピドA、ポリI:Cおよびこれらの誘導体である、請求項9または10に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
前記アジュバントが、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリノミコラート(TDM)などの細菌細胞壁誘導体である、請求項9または10に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
少なくとも一の更なる抗菌薬を含有する、請求項9から13のいずれか一に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
前記薬剤が、第二の異なるワクチンおよび/または免疫原性薬である、請求項14に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
微生物感染または状態の治療に用いるための、請求項9から15のいずれか一に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
前記微生物感染がクロストリジウム属の細菌種によって生じる、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記細菌種が、C.ディフィシレ、C.ボツリヌス、C.パーフリンジェンスまたはC.テタニからなる群から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記クロストリジウム種がC.ディフィシレである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記状態が、大腸炎、偽膜性大腸炎、下痢、壊疽、ボツリヌス菌中毒または破傷風からなる群から選択される、請求項16から19のいずれか一に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2013−520193(P2013−520193A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554413(P2012−554413)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050337
【国際公開番号】WO2011/104531
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(510144742)
【氏名又は名称原語表記】LONDON SCHOOL OF HYGIENE & TROPICAL MEDICINE
【Fターム(参考)】