クロムを付加したまたはクロム及びバナジウムを同時に付加したタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法
総べてのクロムを高原子価のものに酸化せしめるため過酸化ナトリウムを酸化剤として用いながら、テストサンプルを過酸化ナトリウムに融解し、熱水で洗脱し、及びタングステン酸の沈澱を阻止するためタングステンの主体を弗化水素アンモニウムによって配位し、分析中沈澱と混濁を防ぎ、極めてきれいな条件で滴定を行なって正確で信頼性のおける結果を得ることを特徴とする、クロムとバナジウムを単独にまたは同時に加えたタングステンマトリクス内のクロム含有量の決定方法。本発明においては、滴定分析の精度を上げるためには滴定時の溶液の清浄さが極めて重要であり、決定の間溶液が常に清浄であれば、クロムに対するバナジウムの干渉を正確に且つ量的に除去できる。バナジウムによる干渉は、過マンガン カリウムによる酸化の後第一鉄硫安によって滴定する減算方法によって除去される。本発明においては、極めて清浄な条件で決定がなされ、バナジウムの干渉は完全に且つ量的に除去され、クロムとバナジウムを夫々単独または同時に加えればタングステン マトリクス内のクロム含有量を正確に且つ速く決定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロムを付加したまたはクロム及びバナジウムを同時に付加したタングステン マトリクス内のクロム含有量決定方法に関するものである。以下に示す“分析のための最適条件”は新規な還元(redox)システム、即ち、タングステン システム内のクロムの正確なマクロ分析に適用できる従来の還元滴定を首尾よくなし得るシステムを意味する。本発明方法はシンプルであり、正確に且つ短時間でなし得る。一方、分析のための最適条件のため分析中のクロムとバナジウムの相互干渉は正確に且つ量的に除去でき、また、クロムとバナジウムが同時に付加されたタングステン マトリクス内のクロムとバナジウムの量を正確に測定できる。
【0002】
ここで示す“マトリクス”とは更に“媒体”または“ 基材”を意味する。また、“ タングステン マトリクス”とは分析のためのサンプルであり、分析がタングステン、例えばタングステン カーバイド等である場合を除いて総べての材料及び成分を意味する。
【背景技術】
【0003】
微細または超微細タングステン カーバイド粉の製造においては、多くの場合クロムとバナジウム コンパウンドを分離してまたは同時に加える必要がある。現在ではクロムとバナジウムのためのマクロ分析方法は知られていない。また、クロムとバナジウム間には干渉があるためクロムとバナジウムを同時に加えるとき、クロムとバナジウムの含有量を正確に測定することが一層困難である。タングステン業界の大企業では、X線蛍光分析器によって、 クロムとバナジウムの含有量を正確に同時に決定しており、この方法は短時間でなされ且つ正確である。然しながら、X線蛍光解析器は100万RMB元以上と高価であり、小さい、及び中間の大きさの企業ではこのような高価な装置を用いることはできない。
【0004】
タングステン システム内のクロムのマクロ分析のため多くの企業は従来の還元滴定を用いており、即ち、酸媒体内では触媒として硝酸銀を用い、指示薬としてマンガン塩を用い、低価クロムを酸化せしめる酸化剤として過硫酸アンモニウムを用い、高価マンガンをアタックするために塩化ナトリウムを用い、第一鉄標準溶液で滴定することによってクロム含有量を定めている。
【0005】
従来の還元滴定によって、クロムを単独に加えたタングステン マトリクス内のクロム含有量を定める方法を以下に示す。
【0006】
1.範囲
【0007】
この方法は、クロムを単独に加えたタングステン マトリクス内のクロム含有量を定めるために適したものであり、その測定範囲は0.05−1.00%である。
【0008】
2.原理
【0009】
サンプルを硫酸と硫安に溶かし、触媒として硝酸銀を用いて硫酸媒体内で過硫酸アンモニウムで酸化せしめ、次いでクロムを第一鉄標準溶液で滴定する。
【0010】
3.試薬
【0011】
3.1 硫安 AR
【0012】
3.2 燐酸 AR、(pl.68)
【0013】
3.3 硝酸銀溶液 AR、1.00%
【0014】
3.4 硫酸 AR、(pl.84)
【0015】
3.5 硝酸 AR、(pl.42)
【0016】
3.6 硫酸マンガン溶液 AR、1.00%
【0017】
3.7 過硫酸アンモニウム AR
【0018】
3.8 0− アニリン ベンゼン酸 AR、0.20%
【0019】
3.9 塩化ナトリウム溶液 AR、2.50%
【0020】
3.10 硫酸と燐酸の混酸溶液 (15+15+75) AR
【0021】
3.11 ジフェニルアミンスルフォン酸 ナトリウム AR、(2g/L)
【0022】
3.12 重クロム酸 カリウム標準溶液:AR、 c(1/6K2Cr2O7)=0.05 mol/L
【0023】
3.13 第一鉄標準溶液
【0024】
3.13.1 調合:第一鉄硫安60グラムを計量し、これを2000ミリリットルの水内に溶かし、250ミリリットルの硫酸(3.4)を加えて冷却し、水によって5000ミリリットルに希釈し、十分に振とうする。
【0025】
3.13.2 測定:500ミリリットルのエレンマイヤーフラスコ内に20ミリリットル溶液(3.13.1)を入れ、100ミリリットルの水を加え、硫酸と燐酸の混酸溶液(3.10)15ミリリットルを加え、十分に振とうし、指示薬としてジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム(3.11)を2滴加え、溶液が安定した赤紫色を示すようになる迄重クロム酸 カリウム標準溶液(3.12)で滴定する。
【0026】
計算:第一鉄溶液の標準濃度は数1によって計算される。
【0027】
【数1】
【0028】
ここでc1 は重クロム酸カリウム標準溶液の濃度、(mol/L)である。
【0029】
V1 は消費された重クロム酸カリウム標準溶液のミリリットル量である。
【0030】
V2 は加えられた第1鉄硫安溶液のミリリットル量である。
【0031】
4.サンプル
【0032】
サンプルをその組成が変化しないよう乳鉢内ですりつぶし、直径0.18mmの孔を有するスクリーンを通す。
【0033】
5.分析手順
【0034】
5.1 測定回数
【0035】
測定のため2つのサンプルを計量する。
【0036】
5.2 サンプル重量
【0037】
サンプル0.4グラムを0.0001グラムの精度で計量する。
【0038】
5.3 測定
【0039】
5.3.1 500ミリリットルのエレンマイヤー フラスコ内にサンプル(5.2)を入れ、硫安(3.1)8グラムと、硫酸(3.4)12ミリリットルと、硝酸(3.5)5ミリリットルとを加え、電気炉内で加熱して完全に分解し、取り出して冷却する。
【0040】
5.3.2 200ミリリットルに水で薄め、硫酸(3.4)5ミリリットルと、燐酸(3.2)5ミリリットルと、硫安溶液(3.6)の1または2滴と、硝酸銀溶液(3.3)3ミリリットルとを加え、加えた試薬の夫々のため十分に振とうし、電気炉内で加熱して5〜10分間沸騰し、取り出して冷却し、少量の過硫酸アンモニウム(3.7)の少量を加え、赤紫色の過マンガン酸が現れる迄電気炉内で加熱酸化し、更に5〜8分間沸騰し、取り出して冷却し、塩化ナトリウム(3.9)10ミリリットルを加え、小泡が発生しなくなる迄加熱を続け、取り出して冷却する。
【0041】
5.3.3: 0− アニリン ベンゼン酸 インジケータ (3.8)を4滴加え、溶液が鮮紅色から最終的にブライト グリーンに変る迄第一鉄標準溶液(3.13)で滴定する。
【0042】
6.結果の計算:
【0043】
クロム含有量は数2で計算する。
【0044】
【数2】
【0045】
ここでV は消費された第一鉄標準溶液のミリリットル量である。
【0046】
c は第一鉄標準溶液の濃度、mol/Lである。
【0047】
m はサンプル重量、グラムである。
【0048】
0.01733は c[FeSO4 ・(NH4)2 SO4 ]=1.00 mol/L の濃度の第一鉄標準溶液の1ミリリットルに対する等価クロムの質量である。
【0049】
7.許容差%
【0050】
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0051】
然しながら、一般にこの方法には幾つかの問題がある。(A)多量の沈澱物がサンプル溶液の還元プロセスの間に生じ、この沈澱物に関する問題は以下の通りである。
【0052】
1.滴定終点に厳しく影響し過剰滴定を容易に生じ、結果が実際値より高くなり、再現性に乏しくなる。2.沈澱物がテストされた素子のイオンの少量を不確実ながら吸収し、結果が実際値より低くなり、再現性に乏しくなる。3.沈澱物内にバナジウムの一部が共に沈澱し、クロムに対するバナジウムの干渉を完全に消すことができず、得られたクロムの量の精度が影響される。4.酸化−還元の間、サンプル溶液が長い間加熱にさらされ、沈澱物が容易にジャンプし且つスプラッシュし、サンプル液が減少し、再測定が必要となり、更に、上記の欠点を除くため実験者は総べての時間加熱炉前に立ち、エレンマイヤーフラスコの振とうを続けなければならず、そのための労力が極めて大きくなる。(B)過剰な酸化剤及び還元剤が酸化−還元の間に完全に消費されたか否かは、実験者の経験によって正しく定められ、その結果は十分に反映される。(C)分析時間は長く、効率は低い。
【0053】
加えられたクロムとバナジウムの正確な量は硬合金(hard alloy)の下流製品の品質に直接影響するため、上記従来の還元滴定によってタングステン システム内のクロムのマクロ分析の欠点を除くため、及びより正確に、速く、効率良く分析する方法を得るための十分に現実的な方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0054】
本発明の目的はクロムを付加したまたはクロム及びバナジウムを同時に付加したタングステン マトリクス内のクロム含有量決定方法を得るにある。本発明によれば、タングステン システムにおける従来の還元滴定によってクロム含有量を決定し、酸化−還元プロセスにおいて発生する沈澱を消し、極めて明確な条件で測定を行ない、バナジウムの干渉を完全に且つ量的に防ぎ、その結果、クロムを単独にまたはクロムとバナジウムを同時に加えたタングステン マトリクス内のクロムの含有量を正確且つ迅速に決定できる。
【0055】
本発明の単独にまたは同時に加えたクロムとバナジウムを有するタングステン マトリクス内のクロム含有量を定める方法はテストサンプルを過酸化ナトリウムに融解し熱水で洗脱し、クロム全体を酸化剤である過酸化ナトリウムによって高原子価のものに酸化せしめ、タングステン酸の沈澱を防ぐため弗化水素アンモニウムによってタングステンの主体を配位し、分析の間沈澱と混濁を防ぎ、極めてきれいな条件で滴定を行ない、正確で信頼性のある結果を得ることができる。滴定分析を正確に行なうためには溶液の清潔さは極めて重要である。測定の溶液が常に清潔であればクロムの測定に対するバナジウムによる干渉を正確にかつ量的に排除できる。バナジウムによる干渉は、過マンガン 酸カリウムによる酸化の後第一鉄硫安標準溶液により滴定する減法方法によって排除消去する。
【0056】
従来の還元滴定によってクロム含有量を定めるために用いられる硝酸銀、過硫酸アンモニウム、マンガン塩、塩化ナトリウム及び他の試薬の代りに、本発明においては酸化−還元プロセスを十分に行なうため錯剤(Complexing agent)及び酸化剤を用い、一方溶液は測定の間常に清浄ならしめ、クロムとバナジウム間の相互干渉を正確に消去でき、決定精度がより高いレベルに改良され、正確で速い再現可能な結果を得ることができる。その理由は以下に示すとおりである。
【0057】
(A)タングステンの主体に調和する弗化水素アンモニウム化合物を用いて、タングステン酸沈澱物を作るサンプル溶液の酸性化の間タングステン酸の沈澱を防ぐことができる。
【0058】
(B)酸化剤である過酸化ナトリウムを、サンプル融解プロセス完成及びクロム酸化のため用い、酸化剤によって沈澱物を作ることなくサンプル溶液を加熱せしめる。
【0059】
(C)錯剤及び酸化剤は広範囲の量でも測定に影響しない。
【0060】
(D)分析の間、サンプル溶液を常に清浄にすれば、クロムとバナジウム間の相互干渉を量的に阻止でき、クロムとバナジウムを同時に添加したタングステン マトリクス内のクロムとバナジウムの含有量を正確に決定できる。
【0061】
(E)分析サイクルを従来の還元滴定分析時間の約4分の1と大きく短縮でき、作業効率を大きく改良できる。従来の分析プロセスでは、サンプルの融解に長時間必要であり、後に加熱と冷却を繰り返す必要があり、過剰な酸化剤の完全な除去の確認にも時間を必要とし、処理時間は少なくとも3〜5時間またはそれ以上となり、沈澱物の飛散やジャンプによる再測定が必要な場合にはそれに約1日かかることになり、効率が極めて悪くなる。本発明においては、洗脱テスト溶液の溶塊(melt lump)が温水によって完全に洗脱できないときのみ弱い加熱が3〜5分間必要となるがその後、総べての時間冷温状態で測定をなし得るため、飛散やジャンプの問題を生ぜず、分析は50分程度で済み、効率は極めて高くなる。
【0062】
本発明はタングステン マトリクスに対する従来の還元滴定によるクロムの決定に適用し、分析条件を最良とすることによってクロムとバナジウムを同時に加えたタングステン マトリクス内のクロムとバナジウムの含有量を正確に決定でき分析条件を最良としない場合に比べより正確で再現性の良いものとなり、分析時間もより短くなる。この方法の測定範囲はクロムが0.050〜1.00%、バナジウムが0.050〜1.00%である。相対誤差は5%以下であり、これは産物とプロセスに対し望まれる条件を完全に万足するものである。
【0063】
分析の間沈澱と濁りを阻止でき、滴定を極めて明確な条件で行なうことができ、正確で信頼性のある結果が得られる。滴定を行なうときの溶液の清浄さが正確な滴定分析のためには極めて重要であり、測定中溶液は常に清浄であればバナジウムによるクロムの決定に対する干渉が正確に且つ量的に除去される。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明においてはクロムとバナジウムを単独または同時に付加した(例えばタングステン カーバイド等の)タングステン マトリクス内のクロム含有量を還元滴定によって決定する。
【0065】
1.適用性
【0066】
この方法はクロムとバナジウムを単独または同時に付加した(例えばタングステン カーバイド等の)タングステン マトリクス内のクロム含有量を還元滴定によって決定するために有用である。この測定範囲は0.005〜1.00%である。
【0067】
2.原理
【0068】
テストサンプルを過酸化ナトリウムに融解し、熱水により洗脱し、過酸化ナトリウムを酸化剤として用いてクロム全体を高原子価のものに酸化し、タングステンの主体を弗化水素アンモニウムによって配位(coordinate)し、アルカリ溶液を硫酸によって中和し、適当な酸度に調節し、ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウムを指示薬として用い、第一鉄硫安標準溶液を滴定のために用いる。バナジウムによる干渉は、過マンガン カリウムによる酸化の後第一鉄硫安によって滴定する減算方法によって除去する。
【0069】
3.試薬
【0070】
3.1 過酸化ナトリウム AR
【0071】
3.2 弗化水素飽和アンモニウム AR
【0072】
3.3 硫酸 AR、(1+1)
【0073】
3.4 燐酸 AR、(pl.68)
【0074】
3.5 過マンガン カリウム溶液 AR、(10g/L)
【0075】
3.6 亜硝酸ナトリウム溶液 AR、(100g/L)
【0076】
3.7 ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液 AR、(10g/L)
【0077】
3.8 クロム標準溶液:AR、c(1/6K2Cr2O7)=0.05 mol/L
【0078】
3.9 第一鉄標準溶液
【0079】
3.9.1 調合:第一鉄硫安60グラムを500ミリリットルのビーカに計量し、350ミリリットルの硫酸(5+95)を加え完全に溶ける迄攪拌し、この時点で溶液が濁っているときはこれを濾紙で濾過し、硫酸(5+95)で5000ミリリットルに希釈し、十分に混合する。
【0080】
3.9.2 測定:500ミリリットルのエレンマイヤーフラスコ内に20ミリリットルの3 アリコートのクロム標準溶液(3.8)を入れ約100ミリリットルに水で希釈し、硫酸と燐酸(1+1+5)の混合溶液15ミリリットルを加えジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液(3.7)を2滴加え、溶液が赤紫色からブライト グリーンに変るようになる迄第一鉄硫安標準溶液(3.9.1)で滴定する。
【0081】
計算:第一鉄溶液の標準濃度は数1によって計算する。
【0082】
【数1】
【0083】
ここでc1 は重クロム酸カリウム標準溶液の濃度、(mol/L)である。
【0084】
V1 は重クロム酸カリウム標準溶液のミリリットル量である。
【0085】
V2 は消費された第一鉄硫安溶液のミリリットル量である。
【0086】
結果として3校正(three calibration)算術平均値が得られる。
【0087】
4.サンプル
【0088】
サンプルをその組成が変化しないようこれを乳鉢内ですりつぶし、直径0.18mmの孔を有するスクリーンを通す。
【0089】
5.分析手順
【0090】
5.1 サンプル重量
【0091】
サンプル1〜3グラムを0.0001グラムの精度で計量する。
【0092】
5.2 測定
【0093】
5.2.1 30ミリリットルの鉄るつぼ内にサンプル(5.1)を入れ、750℃のマッフル炉内で焼成することによって酸化して三酸化タングステンとし、取り出して冷却し、過酸化ナトリウム(3.1)の4−7グラムを加え十分に攪拌し、これを少量の過酸化ナトリウム(3.1)でカバーし、700℃のマッフル炉に入れて10分間融解し、取り出して冷却する。
【0094】
5.2.2 50ミリリットルの熱水を加えておいた250ミリリットルのビーカ内に入れ、溶塊を洗脱した後水でるつぼを洗い、溶塊を完全に分解した後250ミリリットルのフラスコに移し、水で希釈し、十分に振とうする。
【0095】
5.2.3 乾式濾過し、100ミリリットル溶液を500ミリリットルエレンマイヤーフラスコに(2 アリコート(two aliquots)の100ミリリットルの濾液にバナジウム混合物を有する例においても)入れ、弗化水素飽和アンモニウム溶液(3.2)を加え十分に振とうし、10 ミリリットル以上の硫酸溶液(3.3)で中和して中性化し、十分に振とうし、燐酸(3.4)5ミリリットルを加えて十分に振とうし、水で希釈して約200ミリリットルとし、室温に冷却する。
【0096】
5.2.4 ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液(3.7)を2滴加え、溶液が鮮紅色から最終的にブライト グリーンに変る迄第一鉄硫安標準溶液(3.9)で滴定する。消費される量をV1で示す。
【0097】
5.2.5 バナジウム混合物を有するサンプルに弗化水素飽和アンモニウム溶液(3.2)の10ミリリットルを加えて他の濾液100ミリリットルとし、十分に振とうし、10ミリリットル以上の硫酸溶液(3.3)で中和して中性化し、十分に振とうし、燐酸(3.4)5ミリリットルを加えて十分に振とうし、水で希釈して約200ミリリットルとし、室温に冷却し、第一鉄硫安標準溶液(3.9)をV1ミリリットル加えて十分に振とうし、数分間静止し、過マンガン カリウム溶液(3.5)を安定した赤色が数分間現れる迄滴定し、赤色があせる迄亜硝酸ナトリウム溶液(3.6)を加えながら振とうし、更に1滴を加え、十分に振とうし、ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液(3.7)を2滴加え、溶液が鮮紅色から最終的にブライト グリーンに変る迄第一鉄硫安標準溶液(3.9)で滴定する。消費された量をV2で示す。
【0098】
6.結果の計算:クロムの含有量は数3で計算する。
【0099】
クロムの含有量は数3で計算する。
【0100】
【数3】
【0101】
ここでV1はクロムを単独に加えた例の滴定において第一鉄標準溶液の消費された量、または、クロムとバナジウムを同時に加えた例においてクロムとバナジウムを共に滴定した場合に消費された第一鉄標準溶液のミリリットル量である。
【0102】
V2はクロムとバナジウムを同時に加えた例におけるバナジウムの滴定によって消費された第一鉄標準溶液のミリリットル量である。
【0103】
c[FeSO4 ・(NH4)2 SO4]は第一鉄標準溶液の濃度 mol/L である。
【0104】
m はサンプル重量、グラムである。
【0105】
0.01733は c[FeSO4 ・(NH4)2 SO4]=1.00 mol/L の濃度の第一鉄標準溶液の1ミリリットルに等価なクロムの質量、グラムである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロムを付加したまたはクロム及びバナジウムを同時に付加したタングステン マトリクス内のクロム含有量決定方法に関するものである。以下に示す“分析のための最適条件”は新規な還元(redox)システム、即ち、タングステン システム内のクロムの正確なマクロ分析に適用できる従来の還元滴定を首尾よくなし得るシステムを意味する。本発明方法はシンプルであり、正確に且つ短時間でなし得る。一方、分析のための最適条件のため分析中のクロムとバナジウムの相互干渉は正確に且つ量的に除去でき、また、クロムとバナジウムが同時に付加されたタングステン マトリクス内のクロムとバナジウムの量を正確に測定できる。
【0002】
ここで示す“マトリクス”とは更に“媒体”または“ 基材”を意味する。また、“ タングステン マトリクス”とは分析のためのサンプルであり、分析がタングステン、例えばタングステン カーバイド等である場合を除いて総べての材料及び成分を意味する。
【背景技術】
【0003】
微細または超微細タングステン カーバイド粉の製造においては、多くの場合クロムとバナジウム コンパウンドを分離してまたは同時に加える必要がある。現在ではクロムとバナジウムのためのマクロ分析方法は知られていない。また、クロムとバナジウム間には干渉があるためクロムとバナジウムを同時に加えるとき、クロムとバナジウムの含有量を正確に測定することが一層困難である。タングステン業界の大企業では、X線蛍光分析器によって、 クロムとバナジウムの含有量を正確に同時に決定しており、この方法は短時間でなされ且つ正確である。然しながら、X線蛍光解析器は100万RMB元以上と高価であり、小さい、及び中間の大きさの企業ではこのような高価な装置を用いることはできない。
【0004】
タングステン システム内のクロムのマクロ分析のため多くの企業は従来の還元滴定を用いており、即ち、酸媒体内では触媒として硝酸銀を用い、指示薬としてマンガン塩を用い、低価クロムを酸化せしめる酸化剤として過硫酸アンモニウムを用い、高価マンガンをアタックするために塩化ナトリウムを用い、第一鉄標準溶液で滴定することによってクロム含有量を定めている。
【0005】
従来の還元滴定によって、クロムを単独に加えたタングステン マトリクス内のクロム含有量を定める方法を以下に示す。
【0006】
1.範囲
【0007】
この方法は、クロムを単独に加えたタングステン マトリクス内のクロム含有量を定めるために適したものであり、その測定範囲は0.05−1.00%である。
【0008】
2.原理
【0009】
サンプルを硫酸と硫安に溶かし、触媒として硝酸銀を用いて硫酸媒体内で過硫酸アンモニウムで酸化せしめ、次いでクロムを第一鉄標準溶液で滴定する。
【0010】
3.試薬
【0011】
3.1 硫安 AR
【0012】
3.2 燐酸 AR、(pl.68)
【0013】
3.3 硝酸銀溶液 AR、1.00%
【0014】
3.4 硫酸 AR、(pl.84)
【0015】
3.5 硝酸 AR、(pl.42)
【0016】
3.6 硫酸マンガン溶液 AR、1.00%
【0017】
3.7 過硫酸アンモニウム AR
【0018】
3.8 0− アニリン ベンゼン酸 AR、0.20%
【0019】
3.9 塩化ナトリウム溶液 AR、2.50%
【0020】
3.10 硫酸と燐酸の混酸溶液 (15+15+75) AR
【0021】
3.11 ジフェニルアミンスルフォン酸 ナトリウム AR、(2g/L)
【0022】
3.12 重クロム酸 カリウム標準溶液:AR、 c(1/6K2Cr2O7)=0.05 mol/L
【0023】
3.13 第一鉄標準溶液
【0024】
3.13.1 調合:第一鉄硫安60グラムを計量し、これを2000ミリリットルの水内に溶かし、250ミリリットルの硫酸(3.4)を加えて冷却し、水によって5000ミリリットルに希釈し、十分に振とうする。
【0025】
3.13.2 測定:500ミリリットルのエレンマイヤーフラスコ内に20ミリリットル溶液(3.13.1)を入れ、100ミリリットルの水を加え、硫酸と燐酸の混酸溶液(3.10)15ミリリットルを加え、十分に振とうし、指示薬としてジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム(3.11)を2滴加え、溶液が安定した赤紫色を示すようになる迄重クロム酸 カリウム標準溶液(3.12)で滴定する。
【0026】
計算:第一鉄溶液の標準濃度は数1によって計算される。
【0027】
【数1】
【0028】
ここでc1 は重クロム酸カリウム標準溶液の濃度、(mol/L)である。
【0029】
V1 は消費された重クロム酸カリウム標準溶液のミリリットル量である。
【0030】
V2 は加えられた第1鉄硫安溶液のミリリットル量である。
【0031】
4.サンプル
【0032】
サンプルをその組成が変化しないよう乳鉢内ですりつぶし、直径0.18mmの孔を有するスクリーンを通す。
【0033】
5.分析手順
【0034】
5.1 測定回数
【0035】
測定のため2つのサンプルを計量する。
【0036】
5.2 サンプル重量
【0037】
サンプル0.4グラムを0.0001グラムの精度で計量する。
【0038】
5.3 測定
【0039】
5.3.1 500ミリリットルのエレンマイヤー フラスコ内にサンプル(5.2)を入れ、硫安(3.1)8グラムと、硫酸(3.4)12ミリリットルと、硝酸(3.5)5ミリリットルとを加え、電気炉内で加熱して完全に分解し、取り出して冷却する。
【0040】
5.3.2 200ミリリットルに水で薄め、硫酸(3.4)5ミリリットルと、燐酸(3.2)5ミリリットルと、硫安溶液(3.6)の1または2滴と、硝酸銀溶液(3.3)3ミリリットルとを加え、加えた試薬の夫々のため十分に振とうし、電気炉内で加熱して5〜10分間沸騰し、取り出して冷却し、少量の過硫酸アンモニウム(3.7)の少量を加え、赤紫色の過マンガン酸が現れる迄電気炉内で加熱酸化し、更に5〜8分間沸騰し、取り出して冷却し、塩化ナトリウム(3.9)10ミリリットルを加え、小泡が発生しなくなる迄加熱を続け、取り出して冷却する。
【0041】
5.3.3: 0− アニリン ベンゼン酸 インジケータ (3.8)を4滴加え、溶液が鮮紅色から最終的にブライト グリーンに変る迄第一鉄標準溶液(3.13)で滴定する。
【0042】
6.結果の計算:
【0043】
クロム含有量は数2で計算する。
【0044】
【数2】
【0045】
ここでV は消費された第一鉄標準溶液のミリリットル量である。
【0046】
c は第一鉄標準溶液の濃度、mol/Lである。
【0047】
m はサンプル重量、グラムである。
【0048】
0.01733は c[FeSO4 ・(NH4)2 SO4 ]=1.00 mol/L の濃度の第一鉄標準溶液の1ミリリットルに対する等価クロムの質量である。
【0049】
7.許容差%
【0050】
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0051】
然しながら、一般にこの方法には幾つかの問題がある。(A)多量の沈澱物がサンプル溶液の還元プロセスの間に生じ、この沈澱物に関する問題は以下の通りである。
【0052】
1.滴定終点に厳しく影響し過剰滴定を容易に生じ、結果が実際値より高くなり、再現性に乏しくなる。2.沈澱物がテストされた素子のイオンの少量を不確実ながら吸収し、結果が実際値より低くなり、再現性に乏しくなる。3.沈澱物内にバナジウムの一部が共に沈澱し、クロムに対するバナジウムの干渉を完全に消すことができず、得られたクロムの量の精度が影響される。4.酸化−還元の間、サンプル溶液が長い間加熱にさらされ、沈澱物が容易にジャンプし且つスプラッシュし、サンプル液が減少し、再測定が必要となり、更に、上記の欠点を除くため実験者は総べての時間加熱炉前に立ち、エレンマイヤーフラスコの振とうを続けなければならず、そのための労力が極めて大きくなる。(B)過剰な酸化剤及び還元剤が酸化−還元の間に完全に消費されたか否かは、実験者の経験によって正しく定められ、その結果は十分に反映される。(C)分析時間は長く、効率は低い。
【0053】
加えられたクロムとバナジウムの正確な量は硬合金(hard alloy)の下流製品の品質に直接影響するため、上記従来の還元滴定によってタングステン システム内のクロムのマクロ分析の欠点を除くため、及びより正確に、速く、効率良く分析する方法を得るための十分に現実的な方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0054】
本発明の目的はクロムを付加したまたはクロム及びバナジウムを同時に付加したタングステン マトリクス内のクロム含有量決定方法を得るにある。本発明によれば、タングステン システムにおける従来の還元滴定によってクロム含有量を決定し、酸化−還元プロセスにおいて発生する沈澱を消し、極めて明確な条件で測定を行ない、バナジウムの干渉を完全に且つ量的に防ぎ、その結果、クロムを単独にまたはクロムとバナジウムを同時に加えたタングステン マトリクス内のクロムの含有量を正確且つ迅速に決定できる。
【0055】
本発明の単独にまたは同時に加えたクロムとバナジウムを有するタングステン マトリクス内のクロム含有量を定める方法はテストサンプルを過酸化ナトリウムに融解し熱水で洗脱し、クロム全体を酸化剤である過酸化ナトリウムによって高原子価のものに酸化せしめ、タングステン酸の沈澱を防ぐため弗化水素アンモニウムによってタングステンの主体を配位し、分析の間沈澱と混濁を防ぎ、極めてきれいな条件で滴定を行ない、正確で信頼性のある結果を得ることができる。滴定分析を正確に行なうためには溶液の清潔さは極めて重要である。測定の溶液が常に清潔であればクロムの測定に対するバナジウムによる干渉を正確にかつ量的に排除できる。バナジウムによる干渉は、過マンガン 酸カリウムによる酸化の後第一鉄硫安標準溶液により滴定する減法方法によって排除消去する。
【0056】
従来の還元滴定によってクロム含有量を定めるために用いられる硝酸銀、過硫酸アンモニウム、マンガン塩、塩化ナトリウム及び他の試薬の代りに、本発明においては酸化−還元プロセスを十分に行なうため錯剤(Complexing agent)及び酸化剤を用い、一方溶液は測定の間常に清浄ならしめ、クロムとバナジウム間の相互干渉を正確に消去でき、決定精度がより高いレベルに改良され、正確で速い再現可能な結果を得ることができる。その理由は以下に示すとおりである。
【0057】
(A)タングステンの主体に調和する弗化水素アンモニウム化合物を用いて、タングステン酸沈澱物を作るサンプル溶液の酸性化の間タングステン酸の沈澱を防ぐことができる。
【0058】
(B)酸化剤である過酸化ナトリウムを、サンプル融解プロセス完成及びクロム酸化のため用い、酸化剤によって沈澱物を作ることなくサンプル溶液を加熱せしめる。
【0059】
(C)錯剤及び酸化剤は広範囲の量でも測定に影響しない。
【0060】
(D)分析の間、サンプル溶液を常に清浄にすれば、クロムとバナジウム間の相互干渉を量的に阻止でき、クロムとバナジウムを同時に添加したタングステン マトリクス内のクロムとバナジウムの含有量を正確に決定できる。
【0061】
(E)分析サイクルを従来の還元滴定分析時間の約4分の1と大きく短縮でき、作業効率を大きく改良できる。従来の分析プロセスでは、サンプルの融解に長時間必要であり、後に加熱と冷却を繰り返す必要があり、過剰な酸化剤の完全な除去の確認にも時間を必要とし、処理時間は少なくとも3〜5時間またはそれ以上となり、沈澱物の飛散やジャンプによる再測定が必要な場合にはそれに約1日かかることになり、効率が極めて悪くなる。本発明においては、洗脱テスト溶液の溶塊(melt lump)が温水によって完全に洗脱できないときのみ弱い加熱が3〜5分間必要となるがその後、総べての時間冷温状態で測定をなし得るため、飛散やジャンプの問題を生ぜず、分析は50分程度で済み、効率は極めて高くなる。
【0062】
本発明はタングステン マトリクスに対する従来の還元滴定によるクロムの決定に適用し、分析条件を最良とすることによってクロムとバナジウムを同時に加えたタングステン マトリクス内のクロムとバナジウムの含有量を正確に決定でき分析条件を最良としない場合に比べより正確で再現性の良いものとなり、分析時間もより短くなる。この方法の測定範囲はクロムが0.050〜1.00%、バナジウムが0.050〜1.00%である。相対誤差は5%以下であり、これは産物とプロセスに対し望まれる条件を完全に万足するものである。
【0063】
分析の間沈澱と濁りを阻止でき、滴定を極めて明確な条件で行なうことができ、正確で信頼性のある結果が得られる。滴定を行なうときの溶液の清浄さが正確な滴定分析のためには極めて重要であり、測定中溶液は常に清浄であればバナジウムによるクロムの決定に対する干渉が正確に且つ量的に除去される。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明においてはクロムとバナジウムを単独または同時に付加した(例えばタングステン カーバイド等の)タングステン マトリクス内のクロム含有量を還元滴定によって決定する。
【0065】
1.適用性
【0066】
この方法はクロムとバナジウムを単独または同時に付加した(例えばタングステン カーバイド等の)タングステン マトリクス内のクロム含有量を還元滴定によって決定するために有用である。この測定範囲は0.005〜1.00%である。
【0067】
2.原理
【0068】
テストサンプルを過酸化ナトリウムに融解し、熱水により洗脱し、過酸化ナトリウムを酸化剤として用いてクロム全体を高原子価のものに酸化し、タングステンの主体を弗化水素アンモニウムによって配位(coordinate)し、アルカリ溶液を硫酸によって中和し、適当な酸度に調節し、ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウムを指示薬として用い、第一鉄硫安標準溶液を滴定のために用いる。バナジウムによる干渉は、過マンガン カリウムによる酸化の後第一鉄硫安によって滴定する減算方法によって除去する。
【0069】
3.試薬
【0070】
3.1 過酸化ナトリウム AR
【0071】
3.2 弗化水素飽和アンモニウム AR
【0072】
3.3 硫酸 AR、(1+1)
【0073】
3.4 燐酸 AR、(pl.68)
【0074】
3.5 過マンガン カリウム溶液 AR、(10g/L)
【0075】
3.6 亜硝酸ナトリウム溶液 AR、(100g/L)
【0076】
3.7 ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液 AR、(10g/L)
【0077】
3.8 クロム標準溶液:AR、c(1/6K2Cr2O7)=0.05 mol/L
【0078】
3.9 第一鉄標準溶液
【0079】
3.9.1 調合:第一鉄硫安60グラムを500ミリリットルのビーカに計量し、350ミリリットルの硫酸(5+95)を加え完全に溶ける迄攪拌し、この時点で溶液が濁っているときはこれを濾紙で濾過し、硫酸(5+95)で5000ミリリットルに希釈し、十分に混合する。
【0080】
3.9.2 測定:500ミリリットルのエレンマイヤーフラスコ内に20ミリリットルの3 アリコートのクロム標準溶液(3.8)を入れ約100ミリリットルに水で希釈し、硫酸と燐酸(1+1+5)の混合溶液15ミリリットルを加えジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液(3.7)を2滴加え、溶液が赤紫色からブライト グリーンに変るようになる迄第一鉄硫安標準溶液(3.9.1)で滴定する。
【0081】
計算:第一鉄溶液の標準濃度は数1によって計算する。
【0082】
【数1】
【0083】
ここでc1 は重クロム酸カリウム標準溶液の濃度、(mol/L)である。
【0084】
V1 は重クロム酸カリウム標準溶液のミリリットル量である。
【0085】
V2 は消費された第一鉄硫安溶液のミリリットル量である。
【0086】
結果として3校正(three calibration)算術平均値が得られる。
【0087】
4.サンプル
【0088】
サンプルをその組成が変化しないようこれを乳鉢内ですりつぶし、直径0.18mmの孔を有するスクリーンを通す。
【0089】
5.分析手順
【0090】
5.1 サンプル重量
【0091】
サンプル1〜3グラムを0.0001グラムの精度で計量する。
【0092】
5.2 測定
【0093】
5.2.1 30ミリリットルの鉄るつぼ内にサンプル(5.1)を入れ、750℃のマッフル炉内で焼成することによって酸化して三酸化タングステンとし、取り出して冷却し、過酸化ナトリウム(3.1)の4−7グラムを加え十分に攪拌し、これを少量の過酸化ナトリウム(3.1)でカバーし、700℃のマッフル炉に入れて10分間融解し、取り出して冷却する。
【0094】
5.2.2 50ミリリットルの熱水を加えておいた250ミリリットルのビーカ内に入れ、溶塊を洗脱した後水でるつぼを洗い、溶塊を完全に分解した後250ミリリットルのフラスコに移し、水で希釈し、十分に振とうする。
【0095】
5.2.3 乾式濾過し、100ミリリットル溶液を500ミリリットルエレンマイヤーフラスコに(2 アリコート(two aliquots)の100ミリリットルの濾液にバナジウム混合物を有する例においても)入れ、弗化水素飽和アンモニウム溶液(3.2)を加え十分に振とうし、10 ミリリットル以上の硫酸溶液(3.3)で中和して中性化し、十分に振とうし、燐酸(3.4)5ミリリットルを加えて十分に振とうし、水で希釈して約200ミリリットルとし、室温に冷却する。
【0096】
5.2.4 ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液(3.7)を2滴加え、溶液が鮮紅色から最終的にブライト グリーンに変る迄第一鉄硫安標準溶液(3.9)で滴定する。消費される量をV1で示す。
【0097】
5.2.5 バナジウム混合物を有するサンプルに弗化水素飽和アンモニウム溶液(3.2)の10ミリリットルを加えて他の濾液100ミリリットルとし、十分に振とうし、10ミリリットル以上の硫酸溶液(3.3)で中和して中性化し、十分に振とうし、燐酸(3.4)5ミリリットルを加えて十分に振とうし、水で希釈して約200ミリリットルとし、室温に冷却し、第一鉄硫安標準溶液(3.9)をV1ミリリットル加えて十分に振とうし、数分間静止し、過マンガン カリウム溶液(3.5)を安定した赤色が数分間現れる迄滴定し、赤色があせる迄亜硝酸ナトリウム溶液(3.6)を加えながら振とうし、更に1滴を加え、十分に振とうし、ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液(3.7)を2滴加え、溶液が鮮紅色から最終的にブライト グリーンに変る迄第一鉄硫安標準溶液(3.9)で滴定する。消費された量をV2で示す。
【0098】
6.結果の計算:クロムの含有量は数3で計算する。
【0099】
クロムの含有量は数3で計算する。
【0100】
【数3】
【0101】
ここでV1はクロムを単独に加えた例の滴定において第一鉄標準溶液の消費された量、または、クロムとバナジウムを同時に加えた例においてクロムとバナジウムを共に滴定した場合に消費された第一鉄標準溶液のミリリットル量である。
【0102】
V2はクロムとバナジウムを同時に加えた例におけるバナジウムの滴定によって消費された第一鉄標準溶液のミリリットル量である。
【0103】
c[FeSO4 ・(NH4)2 SO4]は第一鉄標準溶液の濃度 mol/L である。
【0104】
m はサンプル重量、グラムである。
【0105】
0.01733は c[FeSO4 ・(NH4)2 SO4]=1.00 mol/L の濃度の第一鉄標準溶液の1ミリリットルに等価なクロムの質量、グラムである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
総べてのクロムを高原子価のものに酸化せしめるため過酸化ナトリウムを酸化剤として用いながら、テストサンプルを過酸化ナトリウムで融解し、熱水で洗脱し、及びタングステン酸の沈澱を阻止するためタングステンの主体を弗化水素アンモニウムによって配位することを特徴とするクロムとバナジウムを単独にまたは同時に加えたタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項2】
下記の試薬、
3.1 過酸化ナトリウム AR
3.2 弗化水素飽和アンモニウム AR
3.3 硫酸 AR、(1+1)
3.4 燐酸 AR、(pl.68)
3.5 過マンガン カリウム溶液 AR、(10g/L)
3.6 亜硝酸ナトリウム溶液 AR、(100g/L)
3.7 ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液 AR、(10g/L)
3.8 クロム標準溶液:AR、c(1/6K2Cr2O7 )=0.05 mol/L
3.9 第一鉄標準溶液
を用いることを特徴とする請求項1記載のタングステン マトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項3】
第一鉄標準溶液の標準濃度を決定するための下記の手順
3.9.1 調合:第一鉄硫安60グラムを500ミリリットルのビーカーに計量し、350ミリリットルの硫酸(5+95)を加え、完全に溶ける迄攪拌し、溶液が濁っているときはこれを濾紙で濾過し、硫酸(5+95)で5000ミリリットルに希釈し、十分に混合し、
3.9.2 測定:500ミリリットルのエレンマイヤーフラスコ内に20ミリリットルの3 アリコートのクロム標準溶液(3.8)を入れ、約100ミリリットルに水で希釈し、硫酸と燐酸(1+1+5)の混合溶液15ミリリットルを加え、ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液(3.7)を2滴加え、溶液が赤紫色からブライト グリーンに変るようになる迄第一鉄硫安標準溶液(3.9.1)で滴定し、第一鉄溶液の標準濃度は数1によって計算し、
【数1】
ここでc1 は重クロム酸カリウム標準溶液の濃度、(mol/L)、
V1 は重クロム酸カリウム標準溶液のミリリットル量、
V2 は消費された第一鉄硫安溶液のミリリットル量であり、
結果として3校正算術平均値が得られることを含む
ことを特徴とする請求項2記載のタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項4】
分析が以下の工程
5.1 サンプル1〜3グラムを0.0001グラムの精度で計量し、
5.2 定量
5.2.1 30ミリリットルの鉄るつぼ内にサンプル(5.1)を入れ、750℃のマッフル炉内で焼成することによって酸化して三酸化タングステンとし、取り出して冷却し、過酸化ナトリウム(3.1)の4−7グラムを加え十分に攪拌し、これを少量の過酸化ナトリウム(3.1)でカバーし、700℃のマッフル炉に入れて10分間融解し、取り出して冷却し、
5.2.2 50ミリリットルの熱水を加えておいた250ミリリットルのビーカー内に入れ、溶塊を洗脱した後水でるつぼを洗い、溶塊を完全に分解した後250ミリリットルのフラスコに移し、水で希釈し、十分に振とうし、
5.2.3 乾式濾過し、100ミリリットルの溶液を500ミリリットルのエレンマイヤーフラスコに(2 アリコートの 100ミリリットルの濾液にバナジウムが混合する例においても)入れ、弗化水素飽和アンモニウム溶液(3.2)を加え、十分に振とうし、10ミリリットル以上の硫酸溶液(3.3)で中和して中性化し、十分に振とうし、燐酸(3.4)5ミリリットルを加えて十分に振とうし、水で希釈して約200ミリリットルとし、室温に冷却し、
5.2.4 ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液(3.7)を2滴加え、溶液が鮮紅色から最終的にブライト グリーンに変る迄第一鉄硫安標準溶液(3.9)で滴定し、消費される量がV1となるようにし、次いでクロム含有量を計算することを特徴とする請求項1記載のタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項5】
解析が更に以下の工程
5.2.5 バナジウムが混合するサンプルに弗化水素飽和アンモニウム溶液(3.2)の10ミリリットルを加えて他の濾液100ミリリットルとし、十分に振とうし、10ミリリットル以上の硫酸溶液(3.3)で中和して中性化し、十分に振とうし、燐酸(3.4)5ミリリットルを加えて十分に振とうし、水で希釈して約200ミリリットルとし、室温に冷却し、第一鉄硫安標準溶液(3.9)をV1ミリリットル加えて十分に振とうし、数分間静止し、過マンガン カリウム溶液(3.5)を安定した赤色が数分間現れる迄滴下し、赤色があせる迄亜硝酸ナトリウム溶液(3.6)を加えながら振とうし、更に1滴を加え、十分に振とうし、ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液(3.7)を2滴加え、溶液が鮮紅色から最終的にブライト グリーンに変る迄第一鉄硫安標準溶液(3.9)で滴定し、消費された量がV2となるようにし、
クロムの含有量を数3で計算し、
【数3】
ここでV1はクロムを単独に加えた例の滴定において第一鉄標準溶液の消費された量、または、クロムとバナジウムを同時に加えた例においてクロムとバナジウムを共に滴定した場合に消費された第一鉄標準溶液のミリリットル量であり、
V2はクロムとバナジウムを同時に加えた例におけるバナジウムの滴定によって消費される第一鉄標準溶液のミリリットル量であり、
c[FeSO4 ・(NH4)2 SO4]は第一鉄標準溶液の濃度 mol/L であり、
m はサンプル重量、グラムであり、
0.01733は c[FeSO4 ・(NH4)2 SO4]=1.00 mol/L の濃度の第一鉄標準溶液の1ミリリットルに等価なクロムの質量であることを特徴とする請求項4記載のタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項6】
アルカリ溶液が硫酸で中和され、好ましい酸度に調節されることを特徴とする請求項1記載のタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項7】
滴定が第一鉄硫安標準溶液によってなされることを特徴とする請求項1記載のタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項8】
バナジウムによる干渉を、過マンガン カリウムによる酸化の後第一鉄硫安によって滴定する減算方法によって除去することを特徴とする請求項1記載のタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項1】
総べてのクロムを高原子価のものに酸化せしめるため過酸化ナトリウムを酸化剤として用いながら、テストサンプルを過酸化ナトリウムで融解し、熱水で洗脱し、及びタングステン酸の沈澱を阻止するためタングステンの主体を弗化水素アンモニウムによって配位することを特徴とするクロムとバナジウムを単独にまたは同時に加えたタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項2】
下記の試薬、
3.1 過酸化ナトリウム AR
3.2 弗化水素飽和アンモニウム AR
3.3 硫酸 AR、(1+1)
3.4 燐酸 AR、(pl.68)
3.5 過マンガン カリウム溶液 AR、(10g/L)
3.6 亜硝酸ナトリウム溶液 AR、(100g/L)
3.7 ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液 AR、(10g/L)
3.8 クロム標準溶液:AR、c(1/6K2Cr2O7 )=0.05 mol/L
3.9 第一鉄標準溶液
を用いることを特徴とする請求項1記載のタングステン マトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項3】
第一鉄標準溶液の標準濃度を決定するための下記の手順
3.9.1 調合:第一鉄硫安60グラムを500ミリリットルのビーカーに計量し、350ミリリットルの硫酸(5+95)を加え、完全に溶ける迄攪拌し、溶液が濁っているときはこれを濾紙で濾過し、硫酸(5+95)で5000ミリリットルに希釈し、十分に混合し、
3.9.2 測定:500ミリリットルのエレンマイヤーフラスコ内に20ミリリットルの3 アリコートのクロム標準溶液(3.8)を入れ、約100ミリリットルに水で希釈し、硫酸と燐酸(1+1+5)の混合溶液15ミリリットルを加え、ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液(3.7)を2滴加え、溶液が赤紫色からブライト グリーンに変るようになる迄第一鉄硫安標準溶液(3.9.1)で滴定し、第一鉄溶液の標準濃度は数1によって計算し、
【数1】
ここでc1 は重クロム酸カリウム標準溶液の濃度、(mol/L)、
V1 は重クロム酸カリウム標準溶液のミリリットル量、
V2 は消費された第一鉄硫安溶液のミリリットル量であり、
結果として3校正算術平均値が得られることを含む
ことを特徴とする請求項2記載のタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項4】
分析が以下の工程
5.1 サンプル1〜3グラムを0.0001グラムの精度で計量し、
5.2 定量
5.2.1 30ミリリットルの鉄るつぼ内にサンプル(5.1)を入れ、750℃のマッフル炉内で焼成することによって酸化して三酸化タングステンとし、取り出して冷却し、過酸化ナトリウム(3.1)の4−7グラムを加え十分に攪拌し、これを少量の過酸化ナトリウム(3.1)でカバーし、700℃のマッフル炉に入れて10分間融解し、取り出して冷却し、
5.2.2 50ミリリットルの熱水を加えておいた250ミリリットルのビーカー内に入れ、溶塊を洗脱した後水でるつぼを洗い、溶塊を完全に分解した後250ミリリットルのフラスコに移し、水で希釈し、十分に振とうし、
5.2.3 乾式濾過し、100ミリリットルの溶液を500ミリリットルのエレンマイヤーフラスコに(2 アリコートの 100ミリリットルの濾液にバナジウムが混合する例においても)入れ、弗化水素飽和アンモニウム溶液(3.2)を加え、十分に振とうし、10ミリリットル以上の硫酸溶液(3.3)で中和して中性化し、十分に振とうし、燐酸(3.4)5ミリリットルを加えて十分に振とうし、水で希釈して約200ミリリットルとし、室温に冷却し、
5.2.4 ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液(3.7)を2滴加え、溶液が鮮紅色から最終的にブライト グリーンに変る迄第一鉄硫安標準溶液(3.9)で滴定し、消費される量がV1となるようにし、次いでクロム含有量を計算することを特徴とする請求項1記載のタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項5】
解析が更に以下の工程
5.2.5 バナジウムが混合するサンプルに弗化水素飽和アンモニウム溶液(3.2)の10ミリリットルを加えて他の濾液100ミリリットルとし、十分に振とうし、10ミリリットル以上の硫酸溶液(3.3)で中和して中性化し、十分に振とうし、燐酸(3.4)5ミリリットルを加えて十分に振とうし、水で希釈して約200ミリリットルとし、室温に冷却し、第一鉄硫安標準溶液(3.9)をV1ミリリットル加えて十分に振とうし、数分間静止し、過マンガン カリウム溶液(3.5)を安定した赤色が数分間現れる迄滴下し、赤色があせる迄亜硝酸ナトリウム溶液(3.6)を加えながら振とうし、更に1滴を加え、十分に振とうし、ジフェニルアミンスルフォネート ナトリウム溶液(3.7)を2滴加え、溶液が鮮紅色から最終的にブライト グリーンに変る迄第一鉄硫安標準溶液(3.9)で滴定し、消費された量がV2となるようにし、
クロムの含有量を数3で計算し、
【数3】
ここでV1はクロムを単独に加えた例の滴定において第一鉄標準溶液の消費された量、または、クロムとバナジウムを同時に加えた例においてクロムとバナジウムを共に滴定した場合に消費された第一鉄標準溶液のミリリットル量であり、
V2はクロムとバナジウムを同時に加えた例におけるバナジウムの滴定によって消費される第一鉄標準溶液のミリリットル量であり、
c[FeSO4 ・(NH4)2 SO4]は第一鉄標準溶液の濃度 mol/L であり、
m はサンプル重量、グラムであり、
0.01733は c[FeSO4 ・(NH4)2 SO4]=1.00 mol/L の濃度の第一鉄標準溶液の1ミリリットルに等価なクロムの質量であることを特徴とする請求項4記載のタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項6】
アルカリ溶液が硫酸で中和され、好ましい酸度に調節されることを特徴とする請求項1記載のタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項7】
滴定が第一鉄硫安標準溶液によってなされることを特徴とする請求項1記載のタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【請求項8】
バナジウムによる干渉を、過マンガン カリウムによる酸化の後第一鉄硫安によって滴定する減算方法によって除去することを特徴とする請求項1記載のタングステンマトリクス内のクロム含有量決定方法。
【公表番号】特表2012−511700(P2012−511700A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539881(P2011−539881)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/CN2009/075418
【国際公開番号】WO2010/066190
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511130874)チャンシー レア アース アンド レア メタルズ タングステン グループ コーポレーション (5)
【氏名又は名称原語表記】JIANGXI RARE EARTH AND RARE METALS TUNGSTEN GROUP CORPORATION
【住所又は居所原語表記】No.118,Beijing West Road,Nanchang,Jiangxi 330046, P.R.of China
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/CN2009/075418
【国際公開番号】WO2010/066190
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511130874)チャンシー レア アース アンド レア メタルズ タングステン グループ コーポレーション (5)
【氏名又は名称原語表記】JIANGXI RARE EARTH AND RARE METALS TUNGSTEN GROUP CORPORATION
【住所又は居所原語表記】No.118,Beijing West Road,Nanchang,Jiangxi 330046, P.R.of China
【Fターム(参考)】
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