説明

クロメン化合物

本発明のクロメン化合物は、下記式:で示されるように、インデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を基本骨格として有し、該インデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造の7位の炭素原子に、メトキシフェニル基等の置換若しくは非置換のアリール基又はチエニル基等の置換若しくは非置換のヘテロアリール基からなる置換基を有している。このフォトクロミック化合物は、発色時の色調が中間色を示し、発色感度が高く、退色速度が速く、良好なフォトクロミック性の耐久性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、フォトクロミック眼鏡レンズの用のフォトクロミック化合物として有用な新規なクロメン化合物に関する。
【背景技術】
フォトクロミズムとは、ある化合物に太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所におくと元の色に戻る可逆作用のことである。この性質を有する化合物はフォトクロミック化合物と呼ばれ、フォトクロミックプラスチックレンズの材料として使用されている。
このような用途に使用されるフォトクロミック化合物においては、
(1)紫外線を照射する前の可視光領域での着色度(初期着色)が低い、
(2)紫外線を照射した時の着色度(以下、発色濃度と言う。)が高い、
(3)紫外線を照射し始めてから発色濃度が飽和に達するまでの速度が速い(発色感度が高い)、
(4)紫外線の照射を止めてから元の状態に戻るまでの速度(退色速度)が速い、
(5)この可逆作用の繰り返し耐久性がよい、
(6)使用されるホスト材料への分散性が高くなるように、硬化後にホスト材料となるモノマー組成物に高濃度に溶解する、
といった特性が求められている。
このような要求を満足し得るフォトクロミック化合物として、インデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を基本骨格として有するクロメン化合物が知られている(国際公開第99/15518号パンフレット及び国際公開第2001/60811号パンフレット参照)。
一方、フォトクロミックプラスチックレンズにおいては、グレーまたはブラウンなどの中間色に発色することが好まれており、このような中間色は、発色時の色調が異なる数種類のフォトクロミック化合物、具体的には430〜530nmに発色時の極大吸収を有する黄色〜赤色の化合物と、550〜650nmに発色時の極大吸収を有する紫色〜青色の化合物とを混合することによって得られている。
しかしながら、このような方法で色調調節を行なった場合には、混合された化合物のフォトクロミック物性の違いにより、種々の問題が生じる。例えば、黄色に発色する化合物の繰り返し耐久性が青色に発色する化合物のそれと比較して低い場合、長期にわたって使用していくと、徐々に発色色調が青色の強い色調へと変化してしまうという問題が発生し、また、黄色化合物の発色感度と退色速度が青色化合物のそれと比べて低い場合、発色途中の色調は青みが強く、退色途中の色調は黄色みが強い色調となってしまうという問題等が発生する。
このような問題は、発色時に2つ以上の吸収極大を有し、単一の化合物で中間色に発色する化合物を使用することにより解決できると考えられる。これまで発色時に2以上の吸収極大を有するフォトクロミック化合物として下記式(A)〜(C)に示すような化合物が知られているが、中間色に発色し且つ前記(1)〜(6)に示すような要求を満足するフォトクロミック化合物は知られていない。
即ち、下記式(A):

で示されるクロメン化合物(国際公開第96/14596号パンフレット参照)は、430〜530nmの吸収が、550〜650nmの吸収に比べて低く、発色色調としては中間色を示さない。
また、下記式(B):

で示されるクロメン化合物(国際公開第2000/35902号パンフレット)は、初期着色が高い上、繰り返し耐久性が低いという問題があった。
さらに、下記式(C):

で示されるクロメン化合物(国際公開第2001/19813号パンフレット参照)は、中間色に発色するものの、退色速度が遅い上、繰り返し耐久性が今一つ低いという問題があった。
【発明の開示】
そこで、本発明は、発色色調として中間色を示し、さらに上記した化合物に比べフォトクロミック特性をさらに向上させ、初期着色が少なく、発色感度が高く、退色速度が速く、且つ劣化時の着色の少なく、繰り返し使用した場合の発色濃度の低下が少ない、すなわちフォトクロミック性の耐久性に優れたクロメン化合物であり、さらに使用する基材となるモノマー組成物に高濃度で溶解し得るクロメン化合物を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、優れたフォトクロミック特性を与えることが知られているインデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を基本骨格として有するクロメン化合物において、インデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造の7位に特定の置換基を導入した場合には、その優れたフォトクロミック特性を損なうことなく中間色に発色するという知見を得、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、下記式:

で示されるインデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を基本骨格として有するクロメン化合物であって、前記ピラン構造の7位の炭素原子に、置換基として、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基が結合していることを特徴とするクロメン化合物が提供される。
また、本発明によれば、上記クロメン化合物を含有するフォトクロミック組成物が提供される。
本発明によれば、さらに、上記クロメン化合物が内部に分散した高分子成型体を構成部材として有するフォトクロミック光学物品が提供される。
本発明によれば、またさらに、少なくとも1つの面の全体にわたって又は部分的に高分子膜で被覆された光学基材を構成部材として有する光学物品であって、該高分子膜には、上記のクロメン化合物が分散していることを特徴とする光学物品が提供される。
本発明のクロメン化合物は、発色時の色調が中間色を示し、初期着色が小さく、発色感度が高く、発色濃度が高く、更に溶液中または高分子固体マトリックス中に分散させても速い退色速度を示すという優れたフォトクロミック性を示すばかりでなく、優れた耐久性を示す。したがって、例えば、本発明のクロメン化合物を用いてフォトクロミックレンズを作成した場合には、屋外へ出た時にすばやく、濃く中間色に発色して、屋外から室内に戻った時にすばやく退色して元の色調に戻り、さらに長時間使用可能な耐久性の高いフォトクロミックレンズを得ることが出来る。
図面の説明
図1は、実施例1のクロメン化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルである。
【発明を実施するための最良の形態】
(クロメン化合物)
本発明のクロメン化合物は、前記式、即ち、

で表されるインデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を基本骨格として有するものであり、該インデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造の7位の炭素原子に、置換基{当該置換基は後述する式(1)における基Rに相当する}として、
置換若しくは非置換のアリール基、
又は
置換若しくは非置換のヘテロアリール基
が結合していることを特徴とする。即ち、インデノ(2.1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を基本骨格として有するクロメン化合物は、優れたフォトクロミック特性を示すことが知られているが、本発明においては、このようなピラン構造の7位に上記特定の置換基を導入することによりその優れたフォトクロミック特性を維持しつつ、単一化合物でありながら濃い中間色に発色することが可能となったものである。
尚、以下の説明においては、前記式で表されるインデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を、単に「ピラン構造」と呼ぶ。
<置換若しくは非置換のアリール基>
上記ピラン構造の7位の炭素原子に結合する置換若しくは非置換のアリール基は、特に制限されないが、該基があまりにも嵩高くなってしまうと発色しにくくなってしまうという理由から、特に非置換アリール基としては、炭素数6〜10のものが好ましく、また置換アリール基としては、当該非置換のアリール基の水素原子の1〜7個、特に1〜4個が置換されているものが好ましい。
また、上記の置換アリール基における置換基としては、(s1)非置換アルキル基、(s2)非置換アルコキシ基、(s3)非置換アラルコキシ基、(s4)置換アミノ基、(s5)非置換アリール基、(s6)窒素原子をヘテロ原子として有し且つ当該窒素原子を介して前記非置換アリール基に結合している置換もしくは非置換の複素環基、(s7)該複素環基(s6)に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基、(s8)ハロゲン原子、(s9)シアノ基、(s10)ニトロ基、(s11)ヒドロキシ基及び(s12)トリフルオロメチル基から成る群より選ばれる少なくとも1種を例示することができる。
前記非置換アルキル基(s1)は、特に制限はされないが、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。好適なアルキル基を例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
前記非置換アルコキシ基(s2)は、特に制限されないが、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基を具体的に例示すると、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等を挙げることができる。
前記非置換アラルコキシ基(s3)としては、特に限定されないが、炭素数6〜10のアラルコキシ基が好ましい。好適なアラルコキシ基を具体的に例示すると、フェノキシ基、ナフトキシ基等を挙げることができる。
前記置換アミノ基(s4)としては、特に限定されないが、非置換アルキル基または非置換アリール基が置換したモノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、またはジアリールアミノ基が好ましい。好適な置換アミノ基を具体的に例示すると、メチルアミノ基、エチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、等を挙げることができる。
前記非置換アリール基(s5)は、特に制限はされないが、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。好適なアリール基を例示すると、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
前記置換または非置換の複素環(s6)或いは縮合複素環基(s7)として好適なものを具体的に例示すると、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N−メチルピペラジノ基、インドリニル基等を挙げることができる。
前記ハロゲン原子(s8)としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を挙げることができる。
本発明において、前記ピラン構造の7位の炭素原子に結合する非置換アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が特に好適であり、また置換アリール基としては、メチルフェニル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、トリメトキシフェニル基、モルホリノフェニル基、メトキシビフェニル基、ジメチルアミノフェニル基等が特に好適である。
<置換若しくは非置換のヘテロアリール基>
また、前記ピラン構造の7位の炭素原子に結合する置換若しくは非置換のヘテロアリール基は、特に限定されないが、やはり前記アリール基と同様、該基があまりに嵩高くなってしまうと発色しにくくなってしまうという理由から、非置換のヘテロアリール基としては、炭素数4〜12のものが好ましい。また、置換ヘテロアリール基としては、上記の非置換ヘテロアリール基の水素原子の1〜9個、特に1〜4個が置換されているものが好ましい。
上記の置換ヘテロアリール基における置換基としては、非置換アルキル基;非置換アルコキシ基;非置換アラルコキシ基;置換アミノ基;非置換アリール基;窒素原子をヘテロ原子として有し且つ当該窒素原子を介して当該ヘテロアリール基と結合する置換もしくは非置換の複素環基;該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基;ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;及びトリフルオロメチル基;から成る群より選ばれる少なくとも1種を例示することができる。なお、置換ヘテロアリール基における上記置換基の具体例としては、前述した置換基アリール基における置換基と同じものを例示することができる。
本発明において、前記ピラン構造の7位置に結合した非置換ヘテロアリール基としては、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾピロリニル基等が特に好ましく、置換ヘテロアリール基としては、メチルチエニル基、メトキシチエニル基、ジメチルチエニル基、ジメトキシチエニル基、ジメチルアミノチエニル基、ビフェニルアミノチエニル基、メチルフリル基、メトキシフリル基、ジメチルフリル基、ジメトキシフリル基、ジメチルアミノフリル基、ビフェニルアミノフリル基、メチルピロリニル基、メトキシピロリニル基、ジメチルピロリニル基、ジメトキシピロリニル基、ジメチルアミノピロリニル基、ビフェニルアミノピロリニル基、メチルピリジル基、メトキシピリジル基、ジメチルピリジル基、ジメトキシピリジル基、ジメチルアミノピリジル基、ビフェニルアミノピリジル基、メチルベンゾチエニル基、メトキシベンゾチエニル基、ジメチルベンゾチエニル基、ジメトキシベンゾチエニル基、ジメチルアミノベンゾフラニル基、ビフェニルアミノベンゾピロリニル基等が特に好適である。
上述したピラン構造の7位置に特定の置換基を有する本発明のクロメン化合物の中でも、発色時の色調が中間色を示し、発色感度が高く、退色速度が速く、良好なフォトクロミック性の耐久性を有するという観点から、下記式(1)で示されるクロメン化合物が好適である。

上記式(1)式において、基Rが前述したピラン構造の7位に結合している置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基であり、基Rの数を示すpは、0〜3の整数であり、Rの数を示すqは0〜4の整数である。
<RおよびR
式(1)中、RおよびRは、互いに独立した基であって、それぞれ、下記(i−1)〜(i−8)の基であるか、または互いに結合して前記ピラン構造の13位にスピロ結合して下記(ii−1)〜(ii−4)の環を形成する基である。
およびRが互いに独立した基として存在する場合の各基の例:
(i−1)水素原子;
(i−2)ヒドロキシ基;
(i−3)置換若しくは非置換のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基;
(i−4)置換若しくは非置換のシクロアルキル基、例えばシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基;
(i−5)置換若しくは非置換のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基;
(i−6)ハロゲン原子、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子;
(i−7)式:−C(O)W
式中、Wはヒドロキシ基、炭素数1〜6の非置換アルキル基、炭素数1〜6の非置換アルコキシ基、非置換フェニル基、モノ置換フェニル基、非置換アミノ基、炭素数1〜6の非置換アルキル基1個を置換基として有するモノアルキルアミノ基、または炭素数1〜6の非置換アルキル基2個を置換基として有するジアルキルアミノ基である、
で表される基、好適には、カルボキシル基、アセチル基、エチルカルボニル基;
(i−8)式:−OR
式中、Rは、炭素数1〜6の非置換アルキル基、置換基として1個の非置換フェニル基を有する炭素数1〜3(置換基の炭素数を含まない)のモノ置換アルキル基、炭素数1〜6の非置換アルキル基を1個有するモノ置換フェニル基を置換基として有している炭素数1〜3(置換基の炭素数を含まない)のモノ置換アルキル基、炭素数1〜6の非置換アルコキシ基を1個有しているモノ置換フェニル基を置換基として有する炭素数1〜3(置換基の炭素数は含まない)のモノ置換アルキル基、置換基として炭素数1〜6のアルコキシ基を1個有する炭素数2〜4(置換基の炭素数は含まない)のモノ置換アルキル基、炭素数3〜7の非置換シクロアルキル基、置換基として炭素数1〜4のアルキル基を1個有する環構成炭素数が3〜7のモノ置換シクロアルキル基、炭素数1〜6のクロロアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、非置換アリル基、式:−CH(R)Xで表される基であり(Rは、水素原子または炭素数1〜3の非置換アルキル基であり、Xは−CN、−CFまたは−COOR10で示されるであって、R10は水素または炭素数1〜3の非置換アルキル基である)、及び式:−C(O)Yで示される基(但し、Yは水素原子、炭素数1〜6の非置換アルキル基、炭素数1〜6の非置換アルコキシ基、非置換アリール基、モノまたはジ置換アリール基、非置換フェノキシ基、置換基として炭素数1〜6の非置換アルキル基を1又は2個有するモノまたはジ置換フェノキシ基、置換基として炭素数1〜6の非置換アルコキシ基を1又は2個有するモノまたはジ置換フェノキシ基、非置換アミノ基、置換基として炭素数1〜6の非置換アルキル基を1又は2個有するモノ又はジ置換アミノ基、非置換フェニル基を置換基として有するモノ置換アミノ基、炭素数1〜6の非置換アルキル基が1個又は2個結合しているモノ又はジ置換フェニル基を置換基として有するモノ置換アミノ基、又は炭素数1〜6の非置換アルコキシ基が1個又は2個結合しているモノ又はジ置換フェニル基を置換基として有するモノ置換アミノ基である)
で表される基、好ましくは、メチルエーテル基、エチルエーテル基、プロピルエーテル基、フェニルメチルエーテル基、及び式:−C(O)Yで表される基Rを有しているもの(例えばアルデヒド基、カルボキシル基、フェニルカルボニル基);
およびRが互いに結合して独立してピラン構造の13位にスピロ結合して形成する環の例:
(ii−1)環を構成する炭素数が3〜20である置換若しくは非置換の脂肪族環、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロヘプタン環、ノルボルナン環、ビシクロノナン環、アダマンタン環;
(ii−2)前記脂肪族環(ii−1)に置換若しくは非置換の芳香族環または置換若しくは非置換の芳香族複素環が縮環した縮合多環、例えばフェナントレン環;
(ii−3)環を構成する原子数が3〜20である置換若しくは非置換の複素環、例えばチオフェン環、フラン環、ピリジン環;
(ii−4)前記複素環(ii−3)に置換若しくは非置換の芳香族環または置換若しくは非置換の芳香族複素環が縮環した縮合多環、例えばフェニルフラン環、ビフェニルチオフェン環;
本発明において、式(1)中の基Rおよび基Rは、互いに結合して環を形成していることが好ましく、退色速度が特に速くなるという観点からは、特に前記脂肪族環(ii−1)又は縮合多環(ii−2)を形成していることが好ましく、また、初期着色を低減する観点からは、前記脂肪族環(ii−1)を形成していることが好ましい。RおよびRが形成する脂肪族環(ii−1)として好適なものとしては、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロヘプタン環等の単環;ノルボルナン環、ビシクロノナン環等のビシクロ環;及びアダマンタン環等のトリシクロ環を例示することができ、これらは、メチル基等の炭素数4以下の低級アルキル基を置換基として少なくとも1個有していてもよい。また、RおよびRが形成する縮合多環(ii−2)として好適なものは、上記で例示した好適な脂肪族環(ii−1)に少なくとも芳香族環(例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環)が縮合したものを挙げることができる。尚、上述した環のどの炭素原子が前記ピラン構造の13位の炭素原子となっていてもよい。
本発明において、RおよびRが結合して形成する環として最も好適なものの代表例は、例えば下記式で表される。尚、下記式中、13で示された位置の炭素原子が前記ピラン構造の13位の炭素原子となる。

<RおよびR
前記式(1)中のRおよびRは、それぞれ独立した基であるか、或いは互いに結合して環を形成していてもよく、独立した基としては、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、非置換アルキル基、或いは炭素間二重結合もしくは三重結合を有する脂肪族基を挙げることができ、RとRが結合して形成する環としては、脂肪族炭化水素環もしくは芳香族炭化水素環を挙げることができる。
上記の置換もしくは非置換のアリール基または置換もしくは非置換のヘテロアリール基としては、前記ピラン構造の7位の炭素原子に結合する基として既に説明した基と同じ基(後述する基Rも、これと同じである)を挙げることができ、非置換アルキル基は、前述の基Rに関して説明した(i−3)の非置換アルキル基と同義である。
また、炭素間二重結合もしくは三重結合を有する脂肪族基としては、下記式(2)或いは下記式(3)で表される基が挙げられる。

式(2)或いは(3)中、
11は、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であり、nは1〜3の数であり、
13は、置換もしくは非置換のアリール基又は置換もしくは非置換ヘテロアリール基であり、mは1〜3の整数である。
上記の式(2)において、基R11が示す置換もしくは非置換アリール基及び置換もしくは非置換のヘテロアリール基も、先に述べたピラン構造の7位の炭素原子に結合する基と同じであり、基R12は、水素原子、非置換アルキル基、またはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)である。この非置換アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数4以下の低級アルキル基が挙げられる。また、nは1〜3の整数であるが、原料入手の観点からnは1であるのが好適である。
式(2)で示される炭素間二重結合を有する脂肪族基の好適例としては、フェニル−エチレニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エテニル基、(4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル)−エテニル基、(4−モルホリノフェニル)−エテニル基、(4−ピペリジノフェニル)−エテニル基、(4−ユーロリジノフェニル)−エテニル基、(4−メトキシフェニル)−エテニル基、(4−メチルフェニル)−エテニル基、(2−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エテニル基、(2−メトキシフェニル)−エテニル基、フェニル−1−メチルエテニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−1−メチルエテニル基、(4−メトキシフェニル)−1−メチルエテニル基、フェニル−1−フルオロエテニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−1−フルオロエテニル基、2−チエニル−エテニル基、2−フリル−エテニル基、2−(N−メチル)ピロリニル−エテニル基、2−ベンゾチエニル−エテニル基、2−ベンゾフラニル−エテニル基、2−(N−メチル)インドリル−エテニル基等を挙げることができる。
また、前記式(3)において、基R13が示す置換もしくは非置換のアリール基、及び置換もしくは非置換のヘテロアリール基も、前記R11と同様、先に述べたピラン構造の7位の炭素原子に結合する基と同じである。また、mは1〜3の整数であるが、原料入手の容易さの観点からmは1であるのが好適である。
式(3)で示される炭素間三重結合を有する脂肪族基の好適例としては、フェニル−エチリニル基、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エチニル基、(4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル)−エチニル基、(4−モルホリノフェニル)−エチニル基、(4−ピペリジノフェニル)−エチニル基、(4−ユーロリジノフェニル)−エチニル基、(4−メトキシフェニル)−エチニル基、(4−メチルフェニル)−エチニル基、(2−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)−エチニル基、(2−メトキシフェニル)−エチニル基、2−チエニル−エチニル基、2−フリル−エチニル基、2−(N−メチル)ピロリニル−エチニル基、2−ベンゾチエニル−エチル基、2−ベンゾフラニル−エチニル基、2−(N−メチル)インドリル−エチニル基等を挙げることができる。
とRが結合して形成する環としては、先に述べたように、脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環が挙げられるが、かかる脂肪族炭化水素環としては、特に制限はされないが、アダマンタン環、ビシクロノナン環、ノルボルナン環等が好適である。また、かかる芳香族炭化水素環としては、特に制限はされないが、フルオレン環等が好適である。
なお、本発明においては、R、Rの少なくとも1方は、置換もしくは非置換のアリール基、又は置換もしくは非置換のヘテロアリール基、またはこれら基を置換基として有する基であることが好ましく、最も好ましくは、R、Rの少なくとも1方は、下記(a)〜(j)に示される何れかの基であるのがよい。
(a)置換アミノ基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基;
(b)窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子を介してアリール基またはヘテロアリール基に結合している置換もしくは非置換の複素環基を、置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基;
(c)非置換アルコキシ基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基;
(d)前記(b)における複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基を、置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基;
(e)式(2)で示される基であって、基R11が、置換アミノ基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基である基;
(f)式(2)で示される基であって、基R11が、窒素原子をヘテロ原子として有し且つ該窒素原子を介してアリール基またはヘテロアリール基に結合している置換もしくは非置換の複素環基を、置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基である基;
(g)式(2)で示される基であって、基R11が、前記(e)における複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基を、置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基である基;
(h)式(3)で示される基であって、基R13が、置換アミノ基を置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基である基;
(i)式(3)で示される基であって、R13が、窒素原子をヘテロ原子として有し且つ該窒素原子を介してアリール基またはヘテロアリール基に結合している置換もしくは非置換の複素環基を、置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基である基;
(j)式(3)で示される基であって、基R13が、前記(h)における複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基を、置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基である基;
なお、上記(a)〜(d)における置換アリール基においては、置換基の位置は特に限定されず、その総数も特に限定されないが、アリール基がフェニル基であるときは、置換基の位置は3位または4位であることが好ましく且つその数は1であることが好ましい。さらに、フォトクロミック特性の耐久性が向上するという観点から、置換基の位置は4位が特に好ましい。当該置換アリール基の好適例としては、4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル基、4−モルホリノフェニル基、4−ピペリジノフェニル基、3−(N,Nジメチルアミノ)フェニル基、4−(2,6−ジメチルピペリジノ)フェニル基、4−メトキシフェニル基等を挙げることができる。
また、前記(a)〜(d)における置換ヘテロアリール基においては、置換基の位置は特に限定されず、その総数も特に限定されないが、その数は1であることが好ましい。当該置換ヘテロアリール基の好適例としては、4−(N,N−ジメチルアミノ)チエニル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フリル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)チエニル基、4−モルホリノピロリニル基、6−ピペリジノベンゾチエニル基、6−(N,Nジメチルアミノ)ベンゾフラニル基等を挙げることができる。
前記(e)〜(g)の式(2)で示される基において、式(2)中のR11は、前記(a)〜(d)の置換アリール基又は置換ヘテロアリール基と同義である。また、前記(h)〜(j)の式(3)で示される基において、式(3)中のR13は前記(a)〜(d)の置換アリール基又は置換ヘテロアリール基と同義である。
<R
前記式(1)におけるRは、置換または非置換のアリール基もしくは置換または非置換のヘテロアリール基であり、このような基Rは、前記ピラン構造の7位の炭素原子に結合している基として既に説明した通りである。
<R及びR
前記式(1)におけるR及びRは、互いに独立しており、非置換アルキル基、非置換アルコキシ基、非置換アラルコキシ基、非置換もしくは置換アミノ基、シアノ基、置換もしくは非置換のアリール基、ハロゲン原子、非置換アラルキル基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子とベンゾ環とが結合している置換もしくは非置換の複素環基、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基である。
上記で示したR及びRが示す各種の基の内、非置換アラルキル基は特に制限されないが、炭素数7〜11のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等を挙げることができる。また、置換もしくは非置換のアリール基は、前記ピラン構造の7位に結合した基で例示したものと同様であり、基Rにおける置換または非置換のアリール基と同義である。また、その他の置換基は、前記ピラン構造の7位に結合した基に関して、置換アリール基が有する置換基として示した基(s1)、(s2)、(s3)、(s4)、(s6)、(s7)および(s8)とそれぞれ同義である。
また、基Rの数(p)は0〜3であり、好ましくは2以下である。尚、Rが複数存在する場合(pが2以上のとき)には、複数存在するR同士は、互いに異なっていてもよい。Rが結合する位置は特に制限されないが、6位および/または8位が好ましい。
本発明において、基Rが6位あるいは8位に結合する場合においては、かかる基Rとしては、上述した置換基の中でも、Hammett数が−0.49〜−0.20の範囲にある中程度の電子供与性基、あるいはHammett数が−0.19〜−0.01の範囲にある弱い電子供与性基であるのが、初期着色を抑えながらダブルピーク性を強くすることができるため好ましい。Hammett数(σ)はm−およびp−置換安息香酸の解離定数Kaを基準に用いて、π電子系に結合した置換基の電子的効果を定量化したHammett則に基づいて定義される。
Hammett数−0.49〜−0.2の中程度の電子供与性基を具体的に挙げると、メトキシ基(σ=−0.28)、エトキシ基(σ=−0.21)、プロポキシ基(σ=−0.26)等のアルコキシ基、p−ジメチルアミノフェニル基(σ=−0.22)、p−ジエチルアミノフェニル基(σ=−0.22)等のp−アルキルアミノフェニル基等が挙げられる。
Hammett数−0.19〜−0.01の弱い電子供与性基としては、p−メトキシフェニル基(σ=−0.04)、o,p−ジメトキシフェニル基(σ=−0.08)等のアルコキシフェニル基、フェニル基(σ=−0.01)、1−ナフチル基(σ=−0.08)、2−ナフチル基(σ=−0.02)等のアリール基、p−モルホリノフェニル基(σ=−0.16)等のp−含窒素原子複素環アリール基、チエニル基(σ=−0.1)等のヘテロアリール基、メチル基(σ=−0.14)、エチル(σ=−0.13)基、プロピル基(σ=−0.12)等のアルキル基、シクロヘキシル基(σ=−0.16)等のシクロアルキル基が挙げられる。
また、基Rの数(q)は0〜4の整数であるが、2以下が好適である。尚、Rが複数存在する場合(qが2以上のとき)には、複数存在する基R同士は互いに異なっていてもよい。Rが結合する位置は特に制限されない。
本発明のクロメン化合物は、フォトクロミック特性が良好で中間色に発色し易いという効果の点から、下記式(4)で示されることが特に好適である。

式中、R、R、R、R、R及びqは、それぞれ前記式(1)におけるものと同義でありであり、R14は、前記式(1)におけるRで示される基の中でHammett数が−0.49〜−0.01となる電子供与性の基であり、pは0〜2の整数である。また、上記の式(4)中、下記式(5):

で示される基は、それぞれ置換または非置換アルキル基、置換または非置換アルコキシ基、置換または非置換アミノ基から選ばれる少なくとも1種の置換基を有してもよい2価の脂肪族炭化水素環基であり、式(1)における基Rと基Rとが結合して形成する脂肪族環(ii−1)からなる2価の基に相当する。
本発明において、最も好適なクロメン化合物では、上記式(4)中の基Rが、「非置換アミノ基を置換基として有する置換アリール基もしくは置換ヘテロアリール基」、「窒素原子をヘテロ原子として有し且つ該窒素原子を介してアリール基またはヘテロアリール基に結合している置換もしくは非置換の複素環基を、置換基として有する置換アリール基又は置換ヘテロアリール基」、「非置換アルコキシ基を置換基として有する置換アリール基又はヘテロアリール基」又は「前記の置換アリール基または置換ヘテロアリール基であって、その複素環基には芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合して縮合複素環基が形成されている基」である。
本発明において特に好適なクロメン化合物を具体的に例示すれば、次のような化合物を挙げることができる。


本発明のクロメン化合物は、一般に常温常圧で無色、あるいは淡黄色、淡緑色の固体または粘稠な液体として存在し、次の(イ)〜(ハ)のような手段で確認できる。
(イ) プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)を測定することにより、δ:5.0〜9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づくピーク、δ:1.0〜4.0ppm付近にアルキル基及びアルキレン基のプロトンに基づくピークが現れる。また、それぞれのスペクトル強度を相対的に比較することにより、それぞれの結合基のプロトンの個数を知ることができる。
(ロ) 元素分析によって相当する生成物の組成を決定することができる。
(ハ) 13C−核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定することにより、δ:110〜160ppm付近に芳香族炭化水素基の炭素に基づくピーク、δ:80〜140ppm付近にアルケン及びアルキンの炭素に基づくピーク、δ:20〜80ppm付近にアルキル基及びアルキレン基の炭素に基づくピークが現われる。
<クロメン化合物の製造>
本発明のクロメン化合物の製造方法は、特に限定されず如何なる合成法によって得てもよい。たとえば前記式(1)で示されるクロメン化合物は次のような方法で好適に製造することができる。尚、以下の説明において、各式中の符号は、特記しないかぎり、前述した式で説明したとおりの意味を示す。
すなわち、下記式(6):

で示されるヒドロキシ−フルオレノン誘導体と、下記式(7):

で示されるプロパギルアルコール誘導体とを、酸触媒存在下で反応させる方法により好適に製造することができる。ヒドロキシ−フルオレノン誘導体とプロパギルアルコール誘導体との反応比率は、広い範囲から採用されるが、一般には1:10〜10:1(モル比)の範囲から選択される。また、酸触媒としては硫酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酸性アルミナ等が用いられ、ヒドロキシ−フルオレノン誘導体とプロパギルアルコール誘導体との総和100重量部当り0.1〜10重量部の範囲で用いられる。反応温度は、通常、0乃至200℃が好ましく、溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が使用される。かかる反応により得られた生成物の精製方法としては特に限定されない。例えば、シリカゲルカラム精製を行い、さらに再結晶により、生成物の精製を行なうことができる。
尚、前記式(6)で示されるヒドロキシ−フルオレン誘導体の合成法は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして合成することができる。
先ず、下記式(8):

で示されるカルボン酸誘導体を、Curtius転位、Hofmann転位、Lossen転位等の方法によりカルボン酸をアミンに変換し、これからジアゾニウム塩を調製する。このジアゾニウム塩を、Sandmeyer反応等によりブロマイドに変換し、得られたブロマイドをマグネシウムやリチウム等と反応させ有機金属試薬を調製する。この有機金属試薬を、下記式(9):

で示されるケトンと、−10〜70℃、10分〜4時間、有機溶媒中で反応させ、下記式(10):

で示されるアルコール体を得る。このアルコール体を中性〜酸性条件下で、10〜120℃で10分〜2時間反応させ、アルコールをスピロ化することにより、目的とするヒドロキシ−フルオレン誘導体を合成することができる。かかる反応において、前記有機金属試薬と前記式(10)で示されるケトンとの反応比率は、広い範囲から採用されるが、一般には1:10〜10:1(モル比)の範囲から選択される。反応温度は、通常−10〜70℃が好ましく、溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が使用される。また、アルコール体の中性〜酸性条件下でのスピロ化は、酢酸、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酸性アルミナ等の酸触媒を用いて行うことが好ましく、このような酸触媒は、アルコール体100重量部当り0.1〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。スピロ化に際しては、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等の溶媒が使用される。
また、前記一般式(7)で示されるプロパギルアルコール誘導体は、種々の方法で合成することができるが、例えば、前記一般式(7)に対応するケトン誘導体とリチウムアセチリド等の金属アセチレン化合物と反応させることにより、容易に合成できる。
以上のようにして合成される本発明のクロメン化合物は、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の一般の有機溶媒によく溶ける。このような溶媒に一般式(1)で示されるクロメン化合物を溶かしたとき、一般に溶液はほぼ無色透明であり、太陽光あるいは紫外線を照射すると速やかに発色し、光を遮断すると可逆的に速やかに元の無色にもどる良好なフォトクロミック作用を呈する。
また、本発明のクロメン化合物は、高分子固体マトリックス中でも同様なフォトクロミック特性を示す。かかる対象となる高分子固体マトリックスとしては、本発明のクロメン化合物が均一に分散するものであればよく、光学的に好ましくは、例えばポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
さらに、ラジカル重合性多官能単量体を重合してなる熱硬化性樹脂も上記高分子マトリックスとして用いることができる。このようなラジカル重合性多官能単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等の多価アクリル酸及び多価メタクリル酸エステル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシこはく酸ジアリル、ジアリルフマレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、トリメチロールプロパントリアリルカーボネート等の多価アリル化合物;1,2−ビス(メタクリロイルチオ)エタン、ビス(2−アクリロイルチオエチル)エーテル、1,4−ビス(メタクリロイルチオメチル)ベンゼン等の多価チオアクリル酸及び多価チオメタクリル酸エステル化合物;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA−モノグリシジルエーテル−メタクリレート、4−グリシジルオキシメタクリレート、3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−グリシジルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物;ジビニルベンゼン等を例示することができる。
また、上述したラジカル重合性多官能単量体を、ラジカル重合性単官能単量体と共重合させた共重合体も、前記高分子マトリックスとして使用することができる。このようなラジカル重合性単官能単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸エステル化合物;フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;メチルチオアクリレート、ベンジルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート等のチオアクリル酸及びチオメタクリル酸エステル化合物;スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレンダイマー、ブロモスチレン等のビニル化合物等が挙げられる。
本発明のクロメン化合物を上記高分子固体マトリックス中へ分散させる方法としては特に制限はなく、一般的な手法を用いることができる。例えば、上記熱可塑性樹脂とクロメン化合物を溶融状態にて混練し、樹脂中に分散させる方法、または上記重合性単量体にクロメン化合物を溶解させた後、重合触媒を加え熱または光にて重合させ樹脂中に分散させる方法、あるいは上記熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の表面にクロメン化合物を染色することにより樹脂中に分散させる方法等を挙げることができる。
本発明のクロメン化合物はフォトクロミック材として広範囲に利用でき、例えば、銀塩感光材に代る各種の記憶材料、複写材料、印刷用感光体、陰極線管用記憶材料、レーザー用感光材料、ホログラフィー用感光材料などの種々の記憶材料として利用できる。その他、本発明のクロメン化合物を用いたフォトクロミック材は、フォトクロミックレンズ材料、光学フィルター材料、ディスプレイ材料、光量計、装飾などの材料としても利用できる。
例えば、フォトクロミックレンズに使用する場合には、均一な調光性能が得られる方法であれば特に制限がなく、具体的に例示するならば、本発明のフォトクロミック材を均一に分散してなるポリマーフィルムをレンズ中にサンドウイッチする方法、あるいは、本発明のクロメン化合物を前記の重合性単量体中に分散させ、所定の手法により重合する方法、あるいは、この化合物を例えばシリコーンオイル中に溶解して150〜200℃で10〜60分かけてレンズ表面に含浸させ、さらにその表面を硬化性物質で被覆し、フォトクロミックレンズにする方法などがある。さらに、上記ポリマーフィルムをレンズ表面に塗布し、その表面を硬化性物質で被覆し、フォトクロミックレンズにする方法などもある。
更に本発明のクロメン化合物を含有する重合硬化性組成物からなるコーティング剤をレンズ基材の表面に塗布し、塗膜を硬化させてもよい。このとき、レンズ基材には予めアルカリ性溶液による表面処理あるいはプラズマ処理等の表面処理を施してもよく、更に(これら表面処理と併せて又はこれら表面処理を行なわずに)基材とコート膜との密着性を向上させるためにプライマーを施用することもできる。
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
下記の5−ヒドロキシ−(7H)ベンゾ(c)フルオレン誘導体

1.0g(0.0020mol)と、下記のプロパギルアルコール誘導体

1.1g(0.003mol)とを、トルエン70mlに溶解し、さらにp−トルエンスルホン酸を0.020g加えて加熱還流下、1時間攪拌した。反応後、溶媒を除去し、シリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製することにより、緑色粉末状の生成物1.1gを得た。収率は70%であった。
この生成物の元素分析値は、C:81.23%、H:6.92%、N:1.81%、O:10.04%であり、C5455NOの計算値(C:81.27%、H:6.95%、N:1.76%、O:10.02%)に極めてよく一致した。
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、図1に示すように、δ:1.0〜3.0ppm付近にテトラメチルシクロヘキサン環のメチル、メチレンプロトンに基づく18Hのピーク、δ:3.0〜4.0ppm付近にモルホリノ基のメチレンプロトン及びメトキシ基のメチルプロトンに基づく17Hのピーク、δ:5.6〜9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づく20Hのピークを示した。
さらに13C−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ:110〜160ppm付近に芳香環の炭素に基づくピーク、δ:80〜140ppm付近にアルケンの炭素に基づくピーク、δ:20〜60ppmにアルキルの炭素に基づくピークを示した。
上記の結果から単離生成物は、下記構造式で示される化合物であることを確認した。

[実施例2〜41]
実施例1と同様にして表1及び表2、表3、表4、表5、表6、表7、表8、表9、表10に示したクロメン化合物を合成した。得られた生成物について、実施例1と同様な構造確認の手段を用いて構造解析した結果、表1、2、3、4、5、6、7、8、9、10に示す構造式で示される化合物であることを確認した。また、表11、12及び13にこれらの化合物の元素分析値、各化合物の構造式から求めた計算値及びH−NMRスペクトルの特徴的なスペクトルを示した。
尚、以下の表中の化学式において、Meはメチル基、Etはエチル基である。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

[実施例42〜82、及び比較例1〜4]
実施例1で得られたクロメン化合物を、ラジカル重合性単量体等と混合してフォトクロミック重合性組成物を調製した。
即ち、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン/ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量532)/トリメチロールプロパントリメタクリレート/ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート(ダイセルユーシービー社、EB−1830)/グリシジルメタクリレートを、それぞれ、50重量部/15重量部/15重量部/10重量部/10重量部の重量比で含有するラジカル重合性単量体の混合物100重量部に対して、実施例1で得られたクロメン化合物1重量部を添加し十分に混合した後に、
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(重合開始剤):0.375重量部、
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4‘−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(重合開始剤):0.125重量部、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(安定剤):5重量部、
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤):7重量部、および
N−メチルジエタノールアミン(溶媒):3重量部
を添加し、十分に混合して、フォトクロミック重合性組成物を調製した。
次いで、得られたフォトクロミック重合性組成物の約2gを、MIKASA製スピンコーター1H−DX2を用いて、レンズ基材(CR39:アリル樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.50)の表面にスピンコートした。この表面がコートされたレンズを窒素ガス雰囲気中で出力120mW/cmのメタルハライドランプを用いて、3分間照射し、塗膜を硬化させた後にさらに120℃の恒温器にて加熱処理を行なうことでフォトクロミック硬化薄膜を得た。
得られたフォトクロミック硬化薄膜(膜厚30μm)に、光源として浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を用い、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して、下記条件で120秒間、光照射して発色させ、該硬化薄膜のフォトクロミック特性を評価した。
<光照射条件>
環境温度;20℃±1℃
硬化薄膜表面でのビーム強度
365nm;2.4mW/cm
245nm;24μW/cm
尚、フォトクロミック特性は、以下の特性で評価した。
(1)最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長。
該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
(2)初期着色{ε(0)}:前記最大吸収波長における光未照射状態の吸光度。
例えばメガネレンズのような光学材料においては、この値が低いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
(3)発色濃度{ε(120)−ε(0)}:前記最大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度{ε(120)}と上記ε(0)との差。
この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
(4)黄色/青色比:(3)で得られた発色濃度において、黄色周辺領域における最大吸収波長と、青色周辺領域における最大吸収波長の比。
この値が1に近いほど、ダブルピーク性が高いといえる。
(5)発色感度(sec.):光照射により、試料である硬化薄膜の前記最大波長における吸光度が飽和に達するまでの時間。
この時間が短いほど、発色感度に優れているといえる。
(6)退色半減期〔t1/2(min.)〕:120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大波長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。
この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
(7)残存率(%)={(A50/A)×100}:
光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。
すなわち、得られた硬化薄膜をスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により50時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A)および試験後の発色濃度(A50)を測定し、{(A50/A)×100}の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
(8)着色変化度(△YI)=YI(50)−YI(0):
光未照射時の色調の耐久性を評価するために、上記劣化促進試験前後の試料について、スガ試験機(株)製の色差計(SM−4)を用いて色差を測定した。劣化に伴う着色変化度を試験後の着色度の値{YI(50)}から試験前の着色度の値{YI(0)}を引いた差{△YI}を求め、耐久性を評価した。△YIが小さいほど光未照射時の色調の耐久性が高い。
また、クロメン化合物として実施例2ないし41で得られた化合物を用いた以外は、上記と同様にしてフォトクロミック重合体の硬化薄膜を得、その特性を評価した。その結果をまとめて表14、15および16に示す。
【表14】

【表15】

【表16】

さらに、比較のために、下記式(A)、(B)、(C)、(D)で示される化合物を用いて同様にしてフォトクロミック重合体の硬化薄膜を得、その特性を評価した(比較例1〜4)。その結果を表17に示す。

【表17】

[実施例83、84および比較例5]
2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン/ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量742)がそれぞれ80重量部/20重量部からなる重合性単量体100重量部に、実施例1或いは実施例9で得られたクロメン化合物を0.04重量部、重合開始剤としてパーブチルNDを1重量部添加し、十分に混合してフォトクロミック重合性組成物を調製した。
このフォトクロミック重合性組成物を、ガラス板とエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入し、注型重合を行った。重合は空気炉を用い、30℃〜90℃まで18時間かけ徐々に温度を上げていき、90℃で2時間保持した。重合終了後、重合体を鋳型のガラス型から取り外した。得られた重合体のフォトクロミック特性を、耐久性評価のための促進試験におけるキセノンフェードメーター照射時間を100時間に変えた以外は、実施例42と同様の方法で評価した。結果を表18に示した。
さらに比較のために、下記式(E)で示される化合物を用い同様にしてフォトクロミック重合体を得、その特性を評価し、結果を表18に示した(比較例5)。

【表18】

[実施例85、86]
実施例1〜41のクロメン化合物は単独でも中間色を示すものの、より好ましい中間色を作成するために、実施例1或いは実施例9で得られたクロメン化合物を、下記の化合物(F)、(G)および上述の化合物(B)、(D)と、表19に示す組成で混合した。

さらに実施例42と同様にして重合体組成物を調製し、コーティング硬化体を得た。得られた硬化体を屋外で発色させ、その時の発色色調を目視で確認した。結果を表19に示した。
【表19】

本発明のクロメン化合物を用いた実施例42〜84におけるフォトクロミック重合体では、比較例1、2、3、4および5のフォトクロミック重合体に比べて、発色感度、退色速度およびフォトクロミック性の耐久性のすべての点において優れている。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式

で示されるインデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を基本骨格として有するクロメン化合物であって、前記ピラン構造の7位の炭素原子に、置換基として、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基が結合していることを特徴とするクロメン化合物。
【請求項2】
下記式(1)で示される請求の範囲1に記載のクロメン化合物;

式中、
pは0〜3の整数であり、
qは0〜4の整数であり、
およびRは、互いに独立した基であって、それぞれ、下記(i−1)〜(i−8)の基であるか、または互いに結合して前記ピラン構造の13位にスピロ結合して下記(ii−1)〜(ii−4)の環を形成する基であり、
(i−1)水素原子;
(i−2)ヒドロキシ基;
(i−3)置換若しくは非置換のアルキル基;
(i−4)置換若しくは非置換のシクロアルキル基;
(i−5)置換若しくは非置換のアリール基;
(i−6)ハロゲン原子;
(i−7)式:−C(O)Wで示される基;
但し、Wはヒドロキシ基、炭素数1〜6の非置換アルキル基、炭素数1〜6の非置換アルコキシ基、非置換フェニル基、モノ置換フェニル基、非置換アミノ基、炭素数1〜6の非置換アルキル基1個を置換基として有するモノアルキルアミノ基、または炭素数1〜6の非置換アルキル基2個を置換基として有するジアルキルアミノ基である、
(i−8)式:−ORで示される基;
但し、Rは、炭素数1〜6の非置換アルキル基、置換基として1個の非置換フェニル基を有する炭素数1〜3(置換基の炭素数を含まない)のモノ置換アルキル基、炭素数1〜6の非置換アルキル基を1個有するモノ置換フェニル基を置換基として有している炭素数1〜3(置換基の炭素数を含まない)のモノ置換アルキル基、炭素数1〜6の非置換アルコキシ基を1個有しているモノ置換フェニル基を置換基として有する炭素数1〜3(置換基の炭素数は含まない)のモノ置換アルキル基、置換基として炭素数1〜6のアルコキシ基を1個有する炭素数2〜4(置換基の炭素数は含まない)のモノ置換アルキル基、炭素数3〜7の非置換シクロアルキル基、置換基として炭素数1〜4のアルキル基を1個有する環構成炭素数が3〜7のモノ置換シクロアルキル基、炭素数1〜6のクロロアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、非置換アリル基、式:−CH(R)Xで表される基であり(Rは、水素原子または炭素数1〜3の非置換アルキル基であり、Xは−CN、−CFまたは−COOR10で示されるであって、R10は水素または炭素数1〜3の非置換アルキル基である)、及び式:−C(O)Yで示される基(但し、Yは水素原子、炭素数1〜6の非置換アルキル基、炭素数1〜6の非置換アルコキシ基、非置換アリール基、モノまたはジ置換アリール基、非置換フェノキシ基、置換基として炭素数1〜6の非置換アルキル基を1又は2個有するモノまたはジ置換フェノキシ基、置換基として炭素数1〜6の非置換アルコキシ基を1又は2個有するモノまたはジ置換フェノキシ基、非置換アミノ基、置換基として炭素数1〜6の非置換アルキル基を1又は2個有するモノ又はジ置換アミノ基、非置換フェニル基を置換基として有するモノ置換アミノ基、炭素数1〜6の非置換アルキル基が1個又は2個結合しているモノ又はジ置換フェニル基を置換基として有するモノ置換アミノ基、又は炭素数1〜6の非置換アルコキシ基が1個又は2個結合しているモノ又はジ置換フェニル基を置換基として有するモノ置換アミノ基である);
(ii−1)環を構成する炭素数が3〜20である置換若しくは非置換の脂肪族環;
(ii−2)前記脂肪族環(ii−1)に置換若しくは非置換の芳香族環または置換若しくは非置換の芳香族複素環が縮環した縮合多環;
(ii−3)環を構成する原子数が3〜20である置換若しくは非置換の複素環;
(ii−4)前記複素環(ii−3)に置換若しくは非置換の芳香族環または置換若しくは非置換の芳香族複素環が縮環した縮合多環;
およびRは、互いに独立しており、それぞれ、下記式(2)もしくは式(3)で示される基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、又は置換もしくは非置換アルキル基であるか、或いは互いに結合して脂肪族炭化水素環もしくは芳香族炭化水素環を構成する基であり、


式(2)、(3)中、
11は、置換もしくは非置換アリール基又は置換もしくは非置換ヘテロアリール基であり、R12は、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基又はハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である;
13は、置換もしくは非置換のアリール基又は置換もしくは非置換ヘテロアリール基であり、mは1〜3の整数である;
は、置換若しくは非置換のアリール基又は置換若しくは非置換のヘテロアリール基であり、
及びRは、互いに独立しており、非置換アルキル基、非置換アルコキシ基、非置換アラルコキシ基、非置換もしくは置換アミノ基、シアノ基、置換もしくは非置換のアリール基、ハロゲン原子、非置換アラルキル基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子とベンゾ環とが結合する置換もしくは非置換の複素環基、又は該複素環基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基であり、R或いはRが複数存在する場合には、複数存在するR同士或いは複数存在するR同士は、それぞれ互いに異なっていてもよい。
【請求項3】
下記式(4):

式中、R、R、R、R、R及びqは、それぞれ前記式(1)におけるものと同義であり、
14は、前記式(1)におけるRに属する基の中でHammett数が−0.49〜−0.01となる電子供与性の基であり、pは0〜2の整数であり、
上記(4)式中の下記式(5);

で示される基は、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルコキシ基及び置換もしくは非置換アミノ基から選ばれる少なくとも1種の置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環基である、
で示される請求の範囲2に記載のクロメン化合物。
【請求項4】
請求の範囲1に記載のクロメン化合物を含有するフォトクロミック組成物。
【請求項5】
請求の範囲1に記載のクロメン化合物が内部に分散した高分子成型体を構成部材として有するフォトクロミック光学物品。
【請求項6】
少なくとも1つの面の全体にわたって又は部分的に高分子膜で被覆された光学基材を構成部材として有する光学物品であって、該高分子膜には、請求の範囲1に記載のクロメン化合物が分散していることを特徴とする光学物品。

【国際公開番号】WO2005/028465
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【発行日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514075(P2005−514075)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013712
【国際出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】